扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)

扁平疣贅(へんぺいゆうぜい　flat warts)とは、ヒトパピローマウイルス（HPV）による感染が原因で引き起こされる、主に顔のフェイスラインなどに好発する平らなイボのことです。

特に自覚症状はありませんが、その見た目から日常生活においてコンプレックスの原因になることも少なくありません。

この記事では扁平疣贅について詳しく解説していきます。

扁平疣贅の原因

扁平疣贅は、顔に好発するイボのことで、ヒトパピローマウイルス（ヒト乳頭腫ウイルス、human papillomavirus: HPV）が原因です。

通称「イボ」と呼ばれる尋常性疣贅も人パピローマウイルスが原因ですが、ウイルスのタイプ（株）が異なります。

ヒトパピローマウイルスが原因となる皮膚疾患

疾患名	原因となる主なヒトパピローマウイルス
尋常性疣贅	主にHPV-2,27, 57
扁平疣贅	HPV3,10
尖圭コンジローマ	HPV6,11
Bowen様丘疹症	HPV16
疣贅状表皮発育異常症	HPV5,8,17,20

ヒトパピローマウイルスには100種類以上あり、そのうち扁平疣贅の主な原因ウイルスはHPV-3、10です。主に扁平上皮細胞の核に感染し、数ヶ月潜伏。

ウイルスのゲノムにはがん遺伝子が含まれており、細胞の増殖を促し、表皮の基底層、有棘層、顆粒層の肥厚や過角化をもたらします。

HPV16や18は癌化をもたらしやすいことで知られていますが、HPV3、10は悪性腫瘍の発生リスクは低いタイプです。

扁平疣贅の症状

扁平疣贅は、フェイスラインや手背などに好発するイボの一種で、その名の通り表面が比較的平らなのが特徴です。

サイズは数ミリメートルから1センチメートル程度で、皮膚の色に近いかわずかに褐色調であること多く、触ると硬い質感を感じます。

通常は痛みなどの自覚症状を伴わないものの、場所によっては不快感があることも。

見られる部位

扁平疣贅は、顔（フェイスライン）や首、手背などの露出部位に現れる傾向があります。

特に若年層に多く見られ、成長の過程で自然に消失することもありますが、数年以上消えないことも多いです。

扁平疣贅の症状

症状の特徴	説明
色	皮膚に近い色か、わずかに暗い
形状	表面が平らで、軽度丸い形状
触感	硬質で、平滑
大きさ	数ミリメートル程度
痛み	通常はなし、但し部位により不快感あり

扁平疣贅の診断・チェック方法

扁平疣贅は、特徴的な見た目から視診や触診によって診断されることがほとんどですが、他の疾患との鑑別が難しいときは、皮膚生検が追加で行われることがあります。

扁平疣贅の鑑別疾患

• 伝染性軟属腫
• 扁平苔癬
• 尋常性乾癬
• 軟性線維腫
• 真珠様陰茎丘疹
• Bowen様丘疹症

皮膚生検

症状が明らかでなかったり、悪性合併症が疑われるときは、皮膚生検が推奨されます。皮膚生検は、疑わしい部位の一部を採取し、顕微鏡下で検査する方法です。

扁平疣贅では、顆粒層に核周囲の顕著な空胞化に扁平な好塩基性核が中心に位置する “フクロウの目細胞 “と呼ばれる所見が特徴的で、確定診断が可能となります。

扁平疣贅の治療方法と治療薬

扁平疣贅は必ずしも治療は必要でありませんが、見た目が問題になる方には、希望に応じて治療介入します。

薬物療法

薬物療法に含まれる薬剤

• サリチル酸外用、貼付剤：扁平疣贅の表面を軟化させ、徐々に剥がしていく。
• ヨクイニン内服：漢方の一つで、ウイルスの増殖を抑える。 

物理的治療法

物理的治療法には、いくつかの方法があります。

• 液体窒素による凍結療法：扁平疣贅の組織を凍結させ、自然に剥がれ落とす。
• 電気凝固法：扁平疣贅を焼き切る方法。
• CO2レーザー治療：疣贅を蒸散させて除去。

扁平疣贅の治療期間

扁平疣贅の治療期間は、選ぶ治療法によって異なります。

薬物療法では、治療開始から効果が現れるまでに数週間、完全にイボが消失するまでには3〜4月かかることが一般的です。

液体窒素による凍結療法やレーザー治療など物理的な方法は、基本的に1回の治療でイボが除去できますが、治療できる数に制限があることもあります。

また、除去後も再発を認めるケースも少なくありません。

治療期間に影響を与える要因

扁平疣贅の治療期間に影響を与える要因

• 扁平疣贅の大きさと数：疣贅が大きかったり多数あると、治療期間は長くなる傾向。
• 治療方法：外用薬、凍結療法、レーザー治療など、選択する治療方法によって期間が変わる。
• 個人の免疫応答：個人の免疫反応によっても治療期間は左右される。

治療の副作用やデメリット

扁平疣贅で用いられる治療にはいくつか種類があり、それぞれに副作用やデメリットがあります。

外用薬の副作用・デメリット

サリチル酸外用は塗布部位に炎症、赤み、かゆみ、または痛みを引き起こすことがあります。

また、貼付剤は広範囲に貼付してしまうと健常な皮膚までふやけてしまい、過剰に角層を剥離してしまう可能性も。

物理的治療法の副作用・デメリット

物理的治療法には、凍結療法、電気凝固術、CO2レーザー治療などがあります。

直接疣贅を除去するためには効果的ですが、治療後に痛みを伴うこと、傷跡や炎症後色素沈着が残る可能性があることが副作用及びデメリットです。

また、電気凝固術やCO2レーザー治療は、保険が適用されないため、高額な費用がかかるうえ、治療部位によっては回復に長い時間が必要なことがあります。

保険適用の有無と治療費の目安について

扁平疣贅の治療には、保険適用される治療と適用されない治療があります。

保険適用	保険適用外
サリチル酸（スピール膏）	電気凝固術
ヨクイニン	CO2レーザー治療
凍結療法

保険適用になる治療の治療費の目安

凍結療法の保険点数は以下のとおりです。

３カ所以下　210点

４カ所以上　270点

保険の適用を受けるためには専門医による診察や診断が必要で、この他、初診料あるいは再診料などがかかります。

詳しくはお問い合わせください。

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