女性の薄毛の悩みで多い「びまん性脱毛症」。髪が全体的に薄くなるこの症状は、男性の脱毛症とは異なり、特定部位だけでなく頭部全体の毛髪密度が低下します。
原因は一つではなく、ホルモンバランスの変化、生活習慣、栄養不足、ストレス、他の病気など、複数の要因が複雑に関係します。
ここでは、びまん性脱毛症を引き起こす主な原因と、クリニックで行う詳しい検査方法について解説し、ご自身の状態を理解する手助けをします。
遺伝とホルモン – 女性特有の抜け毛リスクに迫る
女性の薄毛、特にびまん性脱毛症には、遺伝的要因とホルモンの変動が深く関わっています。これらは女性特有のリスクとして、髪の健康に大きな影響を与えます。
女性ホルモンの影響とヘアサイクル

女性ホルモンであるエストロゲンは、髪の成長期(アナゲン期)を維持し、髪を太く健康に保つ働きがあります。
一方、プロゲステロンはヘアサイクルの調整に関与します。これらのホルモンバランスが整っている状態では、髪は正常なサイクルを保ちます。
しかし、様々な要因でホルモンバランスが崩れると、ヘアサイクルに乱れが生じ、抜け毛が増加する可能性があります。
特にエストロゲンの分泌量が減少すると、髪の成長期が短縮され、休止期(テルogen期)に入る毛髪が増え、結果として薄毛につながることがあります。
ホルモンバランスが髪に与える影響
ホルモン | 主な働き | 髪への影響(バランス正常時) |
---|---|---|
エストロゲン | 卵胞の発育、子宮内膜の増殖など | 髪の成長期維持、ハリ・ツヤ向上 |
プロゲステロン | 妊娠維持、体温上昇など | ヘアサイクルの調整補助 |
加齢とホルモンバランスの変化
女性はライフステージによってホルモンバランスが大きく変動します。特に更年期(一般的に40代後半から50代)には、卵巣機能の低下に伴いエストロゲンの分泌量が急激に減少します。この変化が、びまん性脱毛症の一因となることがあります。
加齢によるホルモンバランスの変化は、相対的に男性ホルモンの影響を受けやすくする可能性も指摘されています。これにより、FAGA(Female Androgenetic Alopecia:女性男性型脱毛症)と呼ばれる状態に近い症状が現れることもあります。
FAGA(女性男性型脱毛症)との関連
FAGAは、男性のAGA(男性型脱毛症)とは異なり、生え際の後退よりも頭頂部や分け目を中心に髪が薄くなる傾向があります。加齢による女性ホルモンの減少や、男性ホルモンへの感受性が高まることが原因と考えられています。
びまん性脱毛症とFAGAは厳密には区別しますが、ホルモンバランスの乱れが共通の要因となる場合があります。
ストレス・睡眠不足が毛周期に与える破壊力
現代社会において避けがたいストレスや睡眠不足は、自律神経やホルモンバランスを乱し、頭皮環境や髪の成長サイクル(毛周期)に悪影響を及ぼす、びまん性脱毛症の大きな原因です。
ストレスによる自律神経の乱れと血行不良
過度な精神的・肉体的ストレスは、交感神経を優位にし、血管を収縮させます。これにより、頭皮への血流が悪化(血行不良)し、毛母細胞へ酸素や栄養が十分に行き渡らなくなります。

栄養不足に陥った毛母細胞は正常な活動ができなくなり、髪の成長が妨げられ、抜け毛が増える原因となります。
ストレスが引き起こす主な身体反応
反応 | 内容 | 髪への影響 |
---|---|---|
自律神経の乱れ | 交感神経が優位になる | 血管収縮による頭皮の血行不良 |
ホルモンバランスの変化 | コルチゾール(ストレスホルモン)増加 | ヘアサイクルへの悪影響 |
免疫機能の低下 | 抵抗力が弱まる | 頭皮環境の悪化リスク |
睡眠不足とヘアサイクルの乱れ
髪の成長に重要な成長ホルモンは、主に睡眠中に分泌されます。特に、入眠後の深いノンレム睡眠時に多く分泌されるため、睡眠不足や睡眠の質の低下は、成長ホルモンの分泌を妨げます。
成長ホルモンが不足すると、毛母細胞の分裂や修復が十分に行われず、髪の成長期が短くなり、休止期にとどまる毛髪が増加します。これがヘアサイクルの乱れにつながり、抜け毛や薄毛を進行させる原因となります。
質の高い睡眠を確保する生活習慣が、髪の健康維持には大切です。

睡眠と髪の成長の関係
質の高い睡眠は、以下の点で髪の健康に貢献します。
- 成長ホルモンの分泌促進
- 頭皮の血行改善
- 細胞の修復と再生
- ストレス軽減
食事バランスと貧血 – 髪を奪う栄養ギャップ
髪の毛は主にタンパク質(ケラチン)で構成されており、その成長には様々な栄養素が必要です。偏った食事や極端なダイエットは栄養不足を招き、びまん性脱毛症の原因となることがあります。特に女性は貧血にも注意が必要です。
髪の成長に必要な栄養素
健康な髪を育むためには、バランスの取れた食事が重要です。髪の主成分であるタンパク質はもちろん、その合成を助ける亜鉛、頭皮の血行を促進するビタミンE、細胞分裂をサポートするビタミンB群などが連携して働きます。
髪の健康に関わる主な栄養素とその働き

栄養素 | 主な働き | 多く含む食品例 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
亜鉛 | ケラチン合成の補助、細胞分裂促進 | 牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類 |
鉄分 | ヘモグロビンの成分、酸素運搬 | レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき |
ビタミンB群 | 代謝促進、頭皮環境の維持 | 豚肉、レバー、うなぎ、玄米 |
ビタミンE | 血行促進、抗酸化作用 | ナッツ類、アボカド、植物油 |
鉄欠乏性貧血と抜け毛の関係
女性は月経や妊娠・出産により、男性よりも鉄分を失いやすく、鉄欠乏性貧血になりやすい傾向があります。鉄分は血液中のヘモグロビンの主成分であり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
鉄分が不足すると、頭皮の毛母細胞への酸素供給が滞り、髪の成長が阻害され、抜け毛(特にびまん性の抜け毛)を引き起こす原因となります。
貧血の自覚症状(めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、倦怠感など)がない場合でも、潜在的な鉄欠乏状態(フェリチン値の低下)が抜け毛に関与していることもあります。
食事からの鉄分摂取を心がけるとともに、必要に応じてサプリメントの活用や医療機関での相談が対策として考えられます。
貧血のサインと対策
項目 | 内容 |
---|---|
主な症状 | めまい、立ちくらみ、倦怠感、顔面蒼白、抜け毛増加 |
食事対策 | 鉄分(ヘム鉄・非ヘム鉄)、ビタミンC(鉄吸収促進)、タンパク質を意識的に摂取 |
医療機関での対応 | 血液検査(ヘモグロビン、フェリチン値)、鉄剤処方など |
内科系疾患・薬の副作用 – 見落としがちな原因群
びまん性脱毛症の原因は、ホルモンバランスや生活習慣だけでなく、他の病気や服用している薬の影響である可能性も考えられます。これらは見落としやすい原因ですが、特定と対策のためには重要な視点です。
甲状腺機能異常と脱毛
甲状腺は、体の新陳代謝をコントロールするホルモンを分泌する器官です。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や甲状腺機能低下症(橋本病など)といった甲状腺機能の異常は、毛母細胞の活動に影響を与え、ヘアサイクルを乱すことがあります。
これにより、髪全体のボリュームが減る、びまん性の脱毛症状が現れることがあります。特に女性に多い疾患であり、原因不明の脱毛がある場合は、甲状腺機能の検査を検討することがあります。
甲状腺機能異常のタイプと主な症状
タイプ | 主な症状 | 髪への影響 |
---|---|---|
機能亢進症 | 動悸、体重減少、多汗、手の震え、眼球突出 | 髪が細くなる、抜け毛増加 |
機能低下症 | 倦怠感、むくみ、体重増加、便秘、皮膚乾燥 | 髪のパサつき、全体的な脱毛 |
膠原病や自己免疫疾患の影響
膠原病(全身性エリテマトーデス(SLE)など)やその他の自己免疫疾患では、免疫系が自身の組織(毛包を含む)を攻撃してしまうことがあります。これにより、毛包がダメージを受け、炎症が起こり、脱毛を引き起こす可能性があります。
これらの疾患に伴う脱毛は、円形脱毛症のような限局性のものから、びまん性の脱毛まで様々です。
薬剤性脱毛の可能性
特定の薬の副作用として脱毛が起こることがあります。これは「薬剤性脱毛」と呼ばれ、原因となる薬の服用中止または変更により改善することが多いです。
抗がん剤による脱毛がよく知られていますが、それ以外にも様々な薬で脱毛が報告されています。
脱毛を引き起こす可能性のある薬剤の例
以下は脱毛の副作用が報告されている薬剤の一部です。必ずしも全ての人に脱毛が起こるわけではありません。
- 抗がん剤
- 抗うつ薬、気分安定薬
- 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)
- 高血圧治療薬(一部のβ遮断薬など)
- インターフェロン製剤
- 経口避妊薬(ピル)の服用中止後
現在服用中の薬がある場合は、自己判断で中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。原因薬剤の特定と、代替薬への変更などを検討します。
血液検査でホルモン・鉄・亜鉛を数値化
びまん性脱毛症の原因を探る上で、血液検査は客観的な情報を得るための重要な手段です。

体内のホルモンバランス、栄養状態(特に鉄や亜鉛)、甲状腺機能などを数値で評価し、脱毛の原因特定や治療方針の決定に役立てます。
ホルモンバランスの評価
女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)や男性ホルモン(テストステロンなど)、また脳下垂体から分泌されるホルモン(LH、FSHなど)の値を測定します。
これにより、加齢やストレス、他の疾患によるホルモンバランスの乱れが脱毛に関与しているか評価します。特に、FAGAが疑われる場合には男性ホルモン値の確認が重要になります。
貧血・栄養状態のチェック(鉄・フェリチン・亜鉛)
ヘモグロビン値だけでなく、体内の貯蔵鉄を示すフェリチン値を測定することで、潜在的な鉄欠乏状態(隠れ貧血)を発見できます。フェリチン値が低い場合は、鉄欠乏が抜け毛の原因となっている可能性が高いと考えられます。
また、髪の主成分であるケラチンの合成に必要な亜鉛の血中濃度も測定し、栄養不足が髪の成長に影響していないかを確認します。
血液検査でチェックする主な項目
検査項目 | 目的 |
---|---|
女性ホルモン (E2, Pなど) | ホルモンバランスの評価、更年期の影響確認 |
男性ホルモン (テストステロンなど) | FAGAの可能性評価 |
ヘモグロビン、フェリチン | 貧血、鉄欠乏状態の確認 |
亜鉛 | 必須ミネラルの不足確認 |
甲状腺ホルモン (TSH, FT3, FT4) | 甲状腺機能異常のスクリーニング |
甲状腺機能やその他の内科系疾患のスクリーニング
甲状腺ホルモン(TSH、FT3、FT4)や自己抗体などを測定し、甲状腺機能異常の有無を確認します。また、必要に応じて、膠原病に関連する抗体検査など、他の内科系疾患のスクリーニング検査も行い、脱毛の原因を多角的に探ります。
マイクロスコープ画像で頭皮ダメージを可視化
マイクロスコープ(ダーモスコープ)検査は、肉眼では確認できない頭皮や毛穴の状態、毛髪の太さなどを数十倍から数百倍に拡大して観察する検査です。

頭皮の炎症、皮脂の詰まり、乾燥、血行の状態などを直接的に評価し、びまん性脱毛症の原因究明や適切な頭皮ケアの選択に役立ちます。
頭皮の色と炎症のチェック
健康な頭皮は青白い色をしていますが、炎症があると赤みを帯びたり、血行不良の場合は黄色っぽく見えることがあります。マイクロスコープで頭皮の色を詳細に観察することで、炎症の有無や程度、血行の状態を評価します。
炎症は抜け毛の原因となるため、早期発見と対策が重要です。
毛穴の詰まりと皮脂の状態
毛穴に過剰な皮脂や古い角質が詰まっていると、毛髪の健やかな成長を妨げ、炎症を引き起こす原因にもなります。マイクロスコープで毛穴の状態を拡大して観察し、皮脂の分泌量や毛穴の詰まり具合を確認します。
これにより、適切なシャンプー方法やスカルプケア製品の選択が可能になります。
毛髪の太さと密度の確認
びまん性脱毛症では、毛髪が細くなる(軟毛化)傾向が見られます。マイクロスコープで個々の毛髪の太さを観察し、細い毛の割合や、1つの毛穴から生えている毛髪の本数(通常2〜3本)を確認します。
毛髪密度が低下しているか、軟毛化が進行しているかを評価することで、脱毛の進行度を把握します。
マイクロスコープで観察する主なポイント
観察ポイント | 評価内容 | 異常所見の例 |
---|---|---|
頭皮の色 | 炎症、血行状態 | 赤み、黄色っぽさ |
毛穴の状態 | 皮脂詰まり、角栓 | 毛穴周囲の汚れ、角栓の付着 |
毛髪の太さ | 軟毛化の進行度 | 細い毛の割合増加 |
毛髪密度 | 1毛穴あたりの本数 | 1毛穴あたり1本が多い、毛穴の間隔が広い |
トリコスキャン解析で成長期毛の割合を測定
トリコスキャン(Trichoscan)は、コンピューター画像解析を用いて毛髪の状態を定量的に評価する検査方法です。

特定の範囲の頭皮を撮影し、毛髪の密度、太さ、そして特に重要な「成長期毛の割合」を客観的な数値データとして算出します。
これにより、脱毛の進行度や治療効果をより正確に把握できます。
ヘアサイクルの評価
毛髪には、成長期(アナゲン期)、退行期(カダゲン期)、休止期(テロゲン期)というサイクルがあります。健康な頭皮では、全毛髪の約85~90%が成長期にあるとされています。
びまん性脱毛症では、この成長期毛の割合が減少し、休止期毛の割合が増加する傾向があります。トリコスキャンはこの割合を精密に測定し、ヘアサイクルの乱れ具合を評価します。
ヘアサイクルの各段階
- 成長期(アナゲン期):毛母細胞が活発に分裂し、髪が伸びる期間(2~6年)。
- 退行期(カダゲン期):毛母細胞の分裂が停止し、毛球が縮小する期間(約2週間)。
- 休止期(テロゲン期):毛髪の成長が完全に止まり、自然に抜け落ちるのを待つ期間(3~4ヶ月)。
毛髪密度と太さの客観的測定
トリコスキャンでは、一定面積あたりの毛髪の本数(毛髪密度)や、個々の毛髪の直径(太さ)も同時に測定します。これにより、マイクロスコープでの視覚的な評価に加え、具体的な数値データに基づいた診断が可能になります。
治療前後のデータを比較することで、治療効果を客観的に判定する指標としても活用します。
トリコスキャンによる主な測定項目
測定項目 | 評価内容 |
---|---|
成長期毛率 (%) | ヘアサイクルの状態、脱毛の活動性 |
休止期毛率 (%) | 脱毛の進行度 |
毛髪密度 (本/cm²) | 全体的な毛髪量 |
毛髪径 (μm) | 毛髪の太さ、軟毛化の程度 |
治療効果のモニタリング
トリコスキャン検査を治療開始前と治療中に定期的に行うことで、成長期毛の割合や毛髪密度、太さの変化を数値で追跡できます。
これにより、行っている治療が効果を発揮しているかを客観的に判断し、必要に応じて治療計画を調整するための重要な情報を提供します。
遺伝子検査が示す将来リスクプロファイル
近年、遺伝子検査技術の進歩により、個人の遺伝的背景が特定の疾患発症リスクにどの程度関与しているかを評価できるようになりました。
脱毛症の分野においても、遺伝子検査は、特にFAGA(女性男性型脱毛症)の発症リスクや、特定の治療薬への反応性を予測するための一助となる可能性があります。
FAGA(女性男性型脱毛症)リスクの評価
FAGAの発症には、男性ホルモンに対する感受性に関わる遺伝子が影響していると考えられています。遺伝子検査では、アンドロゲンレセプター遺伝子など、FAGAのリスクに関連する特定の遺伝子多型(個人間の遺伝子のわずかな違い)を調べます。
これにより、将来的にFAGAを発症しやすい遺伝的素因を持っているかどうかを評価できます。ただし、遺伝的リスクが高いからといって必ず発症するわけではなく、環境要因や生活習慣も大きく関与します。
治療薬への反応性予測
一部の薄毛治療薬(例:フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなど)の効果には個人差があり、その差に遺伝的要因が関与している可能性が指摘されています。
遺伝子検査によって、特定の薬剤が効きやすい体質か、あるいは副作用が出やすい体質かなどを予測できる場合があります。
これにより、より個別化された治療計画の立案に役立つ情報が得られる可能性がありますが、まだ研究段階の部分も多く、検査結果の解釈には専門的な知識が必要です。
遺伝子検査の位置づけと限界
脱毛症における遺伝子検査は、あくまで発症リスクや治療反応性を予測するための一つの参考情報です。診断を確定するものではなく、検査結果だけで治療方針が決まるわけではありません。
問診、視診、血液検査、マイクロスコープ検査など、他の検査結果と総合的に判断することが重要です。
また、遺伝情報は生涯変わらない個人的な情報であり、検査を受けるかどうかは、その意義と限界を十分に理解した上で慎重に判断する必要があります。
遺伝子検査でわかること(可能性)
- FAGAの遺伝的発症リスク
- 特定の治療薬に対する効果の予測
- 特定の治療薬に対する副作用リスクの予測
よくある質問 (FAQ)
- びまん性脱毛症は治りますか?
-
びまん性脱毛症の原因は多岐にわたるため、「完治」という表現が適切かは原因によります。しかし、原因を特定し、適切な対策や治療を行うことで、抜け毛を減らし、毛髪の状態を改善することは十分に可能です。
例えば、栄養不足やホルモンバランスの乱れが原因であれば、それらを改善することで症状は良くなります。早期に原因を突き止め、適切な対応を始めることが重要です。
- 検査にはどのくらいの費用と時間がかかりますか?
-
検査内容によって費用や時間は異なります。血液検査やマイクロスコープ検査は比較的短時間で済みますが、結果が出るまでに数日かかる場合があります。
トリコスキャンや遺伝子検査は、実施している医療機関が限られ、費用も比較的高額になる傾向があり、結果判明までにも時間がかかります。
初診時に、医師と相談の上、必要な検査とその費用、期間について詳しく確認してください。保険適用となる検査と自費診療となる検査があります。
- 市販の育毛剤だけで様子を見ても良いですか?
-
市販の育毛剤には頭皮環境を整える成分が含まれているものもありますが、びまん性脱毛症の原因が内科的疾患やホルモン異常など、体の内部にある場合、育毛剤だけでの改善は難しいことが多いです。
原因がわからないまま自己判断でケアを続けると、かえって症状を悪化させたり、適切な治療開始が遅れたりする可能性があります。
まずは皮膚科を受診し、原因を特定するための検査を受けることをお勧めします。
- 検査結果はすぐにわかりますか?
-
マイクロスコープによる頭皮の視診はその場で結果をお伝えできます。血液検査やトリコスキャン、遺伝子検査は、外部の検査機関に依頼する場合もあり、結果が出るまでに数日から数週間程度かかることが一般的です。
結果が出ましたら、再度ご来院いただき、医師から詳しく説明します。
この記事では、びまん性脱毛症の様々な原因と、その特定に役立つ検査方法について解説しました。原因に応じた適切な治療や予防法については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
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