最近、髪のボリュームが減った、分け目が目立つようになったと感じていませんか?それは「FAGA(女性男性型脱毛症)」かもしれません。FAGAは成人女性特有の薄毛の悩みであり、進行性のものです。
しかし、原因を正しく理解し、適切な対策や治療を早期に始めることで、改善が期待できます。

この記事では、FAGAの基礎知識から症状、原因、セルフチェック、クリニックでの検査・治療法、そして日常生活でできる予防策まで、詳しく解説します。
女性男性型脱毛症(FAGA)の基礎知識
女性の薄毛に関する悩みは、決して珍しいものではありません。その中でも、特に注意が必要なのがFAGA(Female Androgenetic Alopecia)、すなわち女性男性型脱毛症です。
ここでは、FAGAがどのようなものか、基本的な知識を解説します。
FAGAとは何か
FAGAは、主に成人女性に見られる進行性の脱毛症です。男性のAGA(男性型脱毛症)とは異なり、生え際が後退することは少なく、頭頂部や分け目を中心に髪の毛が全体的に細く、少なくなる(びまん性脱毛)のが特徴です。

髪の成長サイクルが乱れ、太く長く成長するはずの髪が十分に育たないまま抜け落ちてしまうことで、地肌が透けて見えるようになります。放置すると徐々に薄毛が進行するため、早期の認識と対策が重要です。
男性型脱毛症(AGA)との違い
FAGAとAGAは、どちらも男性ホルモンの影響が関与すると考えられていますが、症状の現れ方に違いがあります。AGAでは、額の生え際が後退したり、頭頂部がO字型に薄くなったりするパターンが典型的です。
一方、FAGAでは、特定の部位が完全に禿げることは稀で、頭部全体の髪が薄くなる傾向があります。
FAGAとAGAの主な違い

項目 | FAGA(女性) | AGA(男性) |
---|---|---|
主な症状部位 | 頭頂部、分け目中心、びまん性 | 生え際の後退、頭頂部 |
進行パターン | 全体的に薄くなる | M字、O字、U字など特定のパターン |
完全な脱毛 | 稀 | 起こりうる |
FAGAに悩む女性の割合
薄毛に悩む女性は少なくありません。特に40代以降、女性ホルモンの変化とともにFAGAを発症する人が増える傾向があります。正確な統計は難しいものの、加齢とともにそのリスクは高まると考えられています。
一人で悩まず、薄毛が気になり始めたら、専門のクリニックに相談することを検討しましょう。
抜け毛・薄毛の症状パターン
FAGAの症状は、ゆっくりと進行することが多いため、初期段階では気づきにくいことがあります。どのような変化が現れるのか、具体的な症状パターンを知っておくことが早期発見につながります。
頭頂部の薄毛が目立つ
FAGAの最も典型的な症状の一つが、頭頂部の薄毛です。頭のてっぺんやつむじ周りの髪のボリュームが減り、地肌が透けて見えるようになります。髪をかき上げたときや、鏡で頭頂部を見たときに、以前との違いを感じることがあります。
特に、強い光の下や濡れた状態だと、薄毛がより目立ちやすくなります。
分け目が広がる
いつも同じ位置で髪を分けている方は、その分け目が以前よりも太く、広くなったように感じることがあります。これは、分け目周辺の髪が細くなったり、本数が減ったりしているサインかもしれません。
分け目を変えてみても、なんとなく地肌が目立つ感じがする場合も注意が必要です。
髪全体のボリュームダウン
特定の部位だけでなく、髪全体の量が減ったように感じることもFAGAの特徴です。髪を束ねたときの太さが以前より細くなった、ヘアスタイルが決まりにくくなった、髪がペタッとしてしまう、といった変化が現れます。
これは、一本一本の髪が細く弱々しくなる(軟毛化)ことも影響しています。
ボリュームダウンのサイン
変化の種類 | 具体的な感覚 |
---|---|
髪を束ねた時 | ゴムで結んだ時の毛束が細くなった |
スタイリング時 | 髪が立ち上がりにくく、ペタッとする |
全体的な印象 | 髪が寂しくなった、地肌が透ける感じ |
抜け毛の増加を感じる時期
シャンプー時やブラッシング時、朝起きたときの枕元などで、抜け毛の量が増えたと感じることがあります。健康な人でも1日に50〜100本程度の髪は自然に抜けますが、明らかにそれ以上の抜け毛が続く場合は注意が必要です。
特に、細くて短い毛が多く抜けるようになったら、髪の成長サイクルが乱れている可能性があります。季節の変わり目など一時的な抜け毛増加とは区別し、持続する場合はFAGAの可能性を考えましょう。
自宅でできるFAGAセルフチェック:早期発見のポイント
FAGAは早期に対策を始めることが大切です。クリニックを受診する前に、まずは自宅でできる簡単なセルフチェックを行い、ご自身の髪や頭皮の状態を確認してみましょう。
鏡を使った確認方法
明るい場所で、手鏡と合わせ鏡を使って、頭頂部や分け目の状態を観察します。

鏡でのチェックポイント
- 分け目の幅が以前より広がっていないか?
- 頭頂部の地肌が透けて見えないか?
- つむじ周りの髪の密度が低くなっていないか?
定期的に(例えば月に1回など)同じ条件で観察し、変化がないか記録しておくと比較しやすくなります。スマートフォンのカメラで撮影しておくのも良い方法です。
抜け毛の本数チェック
シャンプー時の排水溝や、ブラッシング後のブラシ、枕元の抜け毛などを意識的に確認します。1日の抜け毛が100本を超える日が続くようであれば、注意が必要です。
正確に数えるのは難しいですが、「最近明らかに増えた」と感じる場合は、専門家への相談を検討する目安になります。
抜け毛の目安
状態 | 1日の抜け毛本数(目安) | 注意度 |
---|---|---|
正常範囲 | 50~100本程度 | 低い |
注意が必要 | 100本以上が続く | 中~高い |
特に注意 | 細く短い抜け毛が多い | 高い |
髪質の変化に気づく
抜け毛の量だけでなく、髪質そのものの変化もFAGAのサインとなることがあります。
髪が細くなった?
以前と比べて髪の毛一本一本が細く、弱々しくなったように感じる場合、髪が十分に成長できていない可能性があります。指で髪を触ったときの感触や、光に透かしたときの太さを確認してみましょう。
ハリ・コシがなくなった?
髪にハリやコシがなくなり、全体的に元気がなく、スタイリングしてもすぐにペタッとしてしまう場合も注意が必要です。これも髪の軟毛化の兆候と考えられます。
チェック時の注意点
セルフチェックはあくまで目安です。一時的な体調の変化や季節的な要因で抜け毛が増えることもあります。
しかし、これらのサインが複数当てはまったり、長期間続いたりする場合は、自己判断せずに皮膚科や専門のクリニックに相談することが重要です。
専門医は、より詳しく頭皮や毛髪の状態を診断し、適切なアドバイスや治療法を提案してくれます。
ホルモンバランスと遺伝要素―原因を正しく理解する
FAGAの発症には、いくつかの要因が複雑に関係していると考えられています。主な原因とされるホルモンバランスの変化と遺伝的要因について理解を深めましょう。
女性ホルモンの影響
女性の体内では、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という二つの主要な女性ホルモンが、月経周期などに合わせてバランスを取りながら分泌されています。これらのホルモンは、髪の健康にも深く関わっています。
エストロゲンと髪の関係
エストロゲンには、髪の成長期を持続させ、髪を太く艶やかに保つ働きがあります。妊娠中に髪が豊かになることがあるのは、エストロゲンの分泌量が増えるためです。
しかし、加齢(特に更年期)や出産後、ストレス、過度なダイエットなどによってエストロゲンの分泌量が減少すると、相対的に男性ホルモンの影響が強まり、髪の成長期が短縮され、休止期に入る髪が増えることで薄毛につながることがあります。これがFAGAの主な原因の一つと考えられています。

ホルモンバランスが乱れる要因
要因 | 概要 |
---|---|
加齢(更年期) | 閉経前後に卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌が急激に減少する。 |
出産後 | 妊娠中に増加していた女性ホルモンが出産後に急減し、一時的に抜け毛が増える(分娩後脱毛症)。通常は半年~1年で回復するが、FAGAの引き金になることも。 |
ストレス | 過度なストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、血行不良を引き起こすなど、頭皮環境に悪影響を与える。 |
生活習慣の乱れ | 睡眠不足、栄養バランスの偏り、過度なダイエットなどもホルモンバランスに影響する。 |
遺伝的要因の可能性
男性のAGAと同様に、FAGAにも遺伝的な素因が関与する可能性が指摘されています。家族(特に母親や祖母)に薄毛の方がいる場合、FAGAを発症しやすい体質を受け継いでいる可能性があります。
ただし、遺伝的要因がすべてではなく、必ずしも発症するわけではありません。生活習慣やホルモンバランスなど、他の要因との組み合わせで発症すると考えられています。
遺伝が気になる場合でも、諦めずに適切なケアや治療を行うことが大切です。
その他の考えられる原因
ホルモンバランスや遺伝以外にも、以下のような要因がFAGAの発症や進行に関与する可能性があります。
その他の要因リスト
血行不良 | 頭皮への血流が滞ると、毛根に十分な栄養が届かず、髪の成長が妨げられます。 |
頭皮環境の悪化 | 皮脂の過剰分泌、乾燥、炎症などが頭皮環境を悪化させ、抜け毛の原因となることがあります。 |
特定の疾患や薬剤 | 甲状腺疾患や膠原病などの病気、あるいは服用している薬の副作用によって脱毛が起こることもあります。 |
これらの原因が単独、あるいは複合的に作用してFAGAを引き起こすと考えられます。正確な原因を特定するためには、専門医による診断が必要です。
クリニックで行う女性男性型脱毛症の検査方法
FAGAの診断と適切な治療方針の決定には、専門医による正確な検査が欠かせません。クリニックでは、問診や視診に加え、必要に応じて詳細な検査を行います。ここでは、一般的な検査方法とその目的について解説します。
問診と視診
まず、医師が患者さんの悩みや症状について詳しく話を伺います(問診)。いつから薄毛が気になり始めたか、どのような症状があるか、抜け毛の量、生活習慣、既往歴、家族歴、服用中の薬などを確認します。
その後、医師が直接、頭皮や毛髪の状態を目で見て確認します(視診)。
薄毛の範囲やパターン、頭皮の色や状態(赤み、フケ、湿疹などがないか)、毛髪の太さや密度などを観察し、FAGAの可能性や他の脱毛症との鑑別を行います。
マイクロスコープによる頭皮チェック
マイクロスコープ(ダーモスコピー)という特殊な拡大鏡を用いて、頭皮や毛穴、毛髪の状態を詳細に観察します。

肉眼では見えない毛穴の詰まり、頭皮の炎症、毛髪の太さの変化(細い毛が増えていないか)、毛髪の密度の低下などを客観的に評価できます。これにより、より正確な診断と、治療効果の判定に役立てます。
マイクロスコープで確認する主な項目
観察項目 | チェックポイント |
---|---|
頭皮の色・状態 | 炎症、赤み、乾燥、過剰な皮脂などがないか |
毛穴の状態 | 詰まり、汚れ、炎症がないか |
毛髪の太さ・密度 | 細い毛(軟毛)の割合、毛髪の本数、生えていない毛穴がないか |
血液検査の目的
薄毛の原因がFAGAだけでなく、他の全身性の疾患や栄養不足による可能性も考えられる場合、血液検査を行うことがあります。
ホルモン値の測定
女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)や男性ホルモン(テストステロンなど)、甲状腺ホルモンなどの値を測定し、ホルモンバランスの乱れや甲状腺機能異常がないかを確認します。
これにより、FAGAの背景にあるホルモン状態を把握したり、他のホルモン関連疾患による脱毛を除外したりします。
栄養状態の確認
髪の成長に必要な鉄分(フェリチン値を含む)、亜鉛、タンパク質などの栄養素が不足していないかを確認します。貧血や栄養不足が脱毛の原因となっている可能性も考慮します。
検査費用について
FAGAの診察や検査にかかる費用は、基本的に健康保険適用外の自由診療となることが多いです。ただし、薄毛の原因として他の皮膚疾患や内科的疾患が疑われる場合の検査には、保険が適用されることもあります。
初診料、再診料、マイクロスコープ検査、血液検査などの費用はクリニックによって異なります。受診前にクリニックのウェブサイトで確認したり、直接問い合わせたりすると良いでしょう。
カウンセリングは無料で行っているクリニックもあります。
一般的な検査費用の目安(自由診療の場合)
検査項目 | 費用目安(税込) |
---|---|
初診料・カウンセリング | 無料~5,000円程度 |
マイクロスコープ検査 | 無料~3,000円程度(診察料に含まれる場合あり) |
血液検査 | 5,000円~15,000円程度(検査項目による) |
※上記はあくまで目安であり、実際の費用はクリニックにご確認ください。
FAGA治療の選択肢と期待できる改善例

FAGAと診断された場合、進行を抑え、発毛を促すための治療を開始します。クリニックでは、患者さん一人ひとりの症状や原因、ライフスタイルに合わせた治療法を提案します。
主な治療の選択肢と、期待できる効果について解説します。
内服薬による治療
体の内側からFAGAの原因にアプローチする治療法です。主にホルモンバランスを整える薬や、髪の成長に必要な栄養を補うサプリメントなどが用いられます。
スピロノラクトンの効果と副作用
スピロノラクトンは、元々は高血圧や浮腫の治療薬ですが、男性ホルモン(アンドロゲン)の働きを抑制する作用があるため、FAGA治療にも応用されます。男性ホルモンが毛根に作用するのを阻害し、抜け毛を減らす効果が期待できます。
ただし、利尿作用があるため、頻尿や口渇、血圧低下などの副作用が現れることがあります。また、カリウム値を上昇させる可能性があるため、定期的な血液検査が必要です。医師の指導のもと、慎重に使用する必要がある内服薬です。
その他の内服薬
スピロノラクトンの他にも、患者さんの状態に応じて、血行を促進する薬や、髪の成長に必要なビタミン、ミネラル、アミノ酸などを配合したサプリメント(パントガールなど)が処方されることがあります。
これらは、単独または他の治療法と組み合わせて用いられます。
外用薬(塗り薬)
頭皮に直接塗布することで、毛根に働きかけ、発毛を促進する治療法です。
ミノキシジルの役割と注意点
ミノキシジルは、毛母細胞を活性化させ、髪の成長期を延長する効果が認められている代表的な発毛成分です。血管を拡張して頭皮の血行を促進する作用もあります。女性用には、男性用よりも低い濃度の製品(1%など)が推奨されています。
効果を実感するまでには数ヶ月以上の継続使用が必要です。副作用として、使用初期に一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」や、頭皮のかゆみ、かぶれなどが起こることがあります。
心臓や腎臓に疾患のある方、妊娠中・授乳中の方は使用できません。使用前には必ず医師に相談しましょう。
メソセラピーとは
メソセラピーは、発毛・育毛に有効な成分(ミノキシジル、成長因子、ビタミン、アミノ酸など)を、注射や特殊な機器を用いて頭皮に直接注入する治療法です。
内服薬や外用薬だけでは効果が不十分な場合や、より積極的な発毛効果を期待する場合に選択肢となります。成分が毛根に直接届くため、高い効果が期待できる一方、注入時に多少の痛みを伴うことがあります。
複数回の施術が必要となることが一般的です。
治療費用と期間の目安
FAGA治療は自由診療のため、クリニックや治療内容によって費用が異なります。また、効果を実感するまでには時間がかかり、継続的な治療が必要です。
各治療法の費用比較(月額目安)
治療法 | 費用目安(月額・税込) | 備考 |
---|---|---|
内服薬(スピロノラクトン等) | 5,000円~15,000円程度 | 処方される薬の種類による |
外用薬(ミノキシジル) | 7,000円~15,000円程度 | 濃度や製品による |
育毛サプリメント | 5,000円~10,000円程度 | 補助的な位置づけ |
メソセラピー | 20,000円~80,000円程度 | 1回あたりの費用。複数回必要 |
※上記はあくまで目安です。組み合わせ治療の場合は費用が異なります。詳細は各クリニックにご確認ください。
治療期間と効果実感
FAGA治療は、効果が現れるまでに時間がかかります。一般的に、内服薬や外用薬の場合、効果を実感し始めるまでに最低でも3ヶ月~6ヶ月程度の継続が必要です。
メソセラピーは比較的早く効果を感じる方もいますが、やはり数回の施術と期間を要します。治療効果には個人差があるため、焦らず根気強く治療を続けることが大切です。医師と相談しながら、治療経過を確認していくことが重要です。
オンライン診療の活用
最近では、FAGA治療に対応したオンライン診療を行うクリニックも増えています。通院の手間が省け、自宅にいながら医師の診察を受け、薬を処方してもらうことが可能です。
特に、忙しくて定期的な通院が難しい方や、近隣に専門クリニックがない方にとって便利な選択肢となります。
ただし、初診は対面での診察が必要な場合や、オンライン診療では行えない検査(マイクロスコープや血液検査など)がある場合もありますので、事前にクリニックの情報をよく確認しましょう。
生活習慣から始める予防戦略
FAGAの進行を抑え、健やかな髪を育むためには、クリニックでの治療と並行して、日々の生活習慣を見直すことも非常に重要です。

ここでは、今日から始められる予防戦略について解説します。
バランスの取れた食事
髪の毛は主にタンパク質(ケラチン)でできており、その生成には様々な栄養素が必要です。特定の食品だけを摂取するのではなく、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
髪に必要な栄養素
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品例 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分ケラチンの材料 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
亜鉛 | ケラチンの合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類 |
鉄分 | 頭皮への酸素供給を助ける | レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき |
ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促進 | 豚肉、レバー、うなぎ、マグロ、カツオ |
ビタミンC・E | 抗酸化作用、血行促進 | 果物、野菜、ナッツ類、植物油 |
過度なダイエットや偏った食事は、髪に必要な栄養が不足する原因となります。3食きちんと、多様な食品を摂取するよう心がけましょう。
質の高い睡眠
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や新陳代謝が活発に行われます。これには髪の成長も含まれます。質の高い睡眠を十分にとることは、健やかな髪を育むために必要です。
就寝前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用を控え、リラックスできる環境を整え、毎日決まった時間に寝起きするなど、睡眠習慣を見直しましょう。
ストレスマネジメント
過度なストレスは、自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させる可能性があります。また、ホルモンバランスにも影響を与え、FAGAの要因となり得ます。
ストレスを完全になくすことは難しいですが、自分に合った方法でストレスを溜め込まないようにすることが大切です。
ストレス解消法の例
- 軽い運動(ウォーキング、ヨガなど)
- 趣味に没頭する時間を作る
- ゆっくり入浴する
- 友人や家族と話す
- 瞑想や深呼吸
正しいヘアケア方法
毎日のヘアケアが、頭皮環境を悪化させる原因になっていることもあります。正しい方法を実践し、頭皮を健やかに保ちましょう。
シャンプーの選び方と洗い方
洗浄力の強すぎるシャンプーは、頭皮に必要な皮脂まで奪い、乾燥やバリア機能の低下を招くことがあります。アミノ酸系など、マイルドな洗浄成分のシャンプーを選びましょう。
洗髪時は、爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないように丁寧に洗い流します。シャンプーは1日1回程度にし、洗いすぎにも注意が必要です。
頭皮マッサージのすすめ
頭皮マッサージは、血行を促進し、毛根への栄養供給を助ける効果が期待できます。シャンプー時や、育毛剤を塗布した後などに、指の腹を使って頭皮全体を優しく揉みほぐしましょう。
ただし、強く擦りすぎると頭皮を傷つける可能性があるので、力加減には注意が必要です。
これらの生活習慣の改善は、FAGAの予防だけでなく、治療効果を高める上でも重要です。無理のない範囲で、できることから取り入れてみましょう。
よくある質問
FAGAに関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- FAGAは治りますか?
-
FAGAは進行性の脱毛症であり、「完治」するというよりは、治療によって「進行を抑制し、症状を改善させる」ことを目指します。早期に治療を開始し、継続することで、薄毛の進行を食い止め、発毛を促すことが可能です。
治療効果には個人差がありますが、多くの場合、適切な治療により見た目の改善が期待できます。ただし、治療を中断すると再び薄毛が進行する可能性があるため、医師と相談しながら長期的に付き合っていくことが大切です。
- 治療の副作用が心配です。
-
FAGA治療に用いられる薬(ミノキシジル外用薬やスピロノラクトン内服薬など)には、確かに副作用の可能性があります。例えば、ミノキシジルでは頭皮のかゆみやかぶれ、初期脱毛など、スピロノラクトンでは頻尿や低血圧、不正出血などが報告されています。
しかし、副作用の頻度や程度は個人差があり、必ずしもすべての人に現れるわけではありません。
クリニックでは、治療開始前に副作用について詳しく説明し、治療中も定期的に診察や検査を行うことで、副作用の早期発見と適切な対応に努めます。心配な点は遠慮なく医師にご相談ください。
- 保険は適用されますか?
-
FAGAの治療は、美容目的とみなされることが多く、原則として健康保険が適用されない自由診療となります。診察料、検査料、薬剤費などが全額自己負担となります。
ただし、薄毛の原因が甲状腺疾患など他の病気によるものであると診断された場合、その病気の治療には保険が適用されることがあります。費用については、治療開始前にクリニックでよく確認することが重要です。
FAGAの概要について理解できたら、次はFAGAの具体的な症状について以下の記事で勉強していきましょう。
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