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女性の円形脱毛症とは?

女性の円形脱毛症とは?

ある日突然、髪にコイン大の脱毛が見つかる円形脱毛症。多くの方が「ストレスが原因?」と考えがちですが、実は自己免疫疾患の一つと考えられています。

特に女性の場合、ホルモンバランスの変化も影響することがあり、一人で悩まず専門医に相談することが大切です。

Dr.小林智子

この記事では、円形脱毛症の基本的な知識から、女性特有のポイント、ご自身でのチェック方法、クリニックでの検査や治療法、そして心のケアに至るまで、詳しく解説します。。

概要 – 円形脱毛症とは何か、女性特有のポイントを押さえる

円形脱毛症は、頭部やその他の体毛のある部分に、円形または楕円形の脱毛斑が突然現れる病気です。

円形脱毛症とは

男女問わず発症しますが、女性の場合は妊娠・出産や更年期など、ライフステージにおけるホルモンバランスの変動が発症や症状の経過に関与することがあります。

また、甲状腺疾患やアトピー性皮膚炎といった自己免疫に関連する病気をお持ちの方に見られることもあります。一般的に考えられているストレスは、あくまで誘因の一つであり、主な原因は免疫系の異常と考えられています。

円形脱毛症の基本的な定義

円形脱毛症は、毛包組織に対する自己免疫反応によって毛が抜け落ちる後天性の脱毛症です。

毛包とは、毛を作り出す皮膚の器官のことで、この毛包がリンパ球という免疫細胞からの攻撃を受けてしまうことで、正常な毛の成長が妨げられ、脱毛が生じます。

多くの場合、自覚症状はほとんどありませんが、時に軽いかゆみや違和感を伴うこともあります。感染症ではないため、他人にうつることはありません。

女性に見られる円形脱毛症の特徴

女性の円形脱毛症では、男性と比較して甲状腺疾患の合併が多い傾向が報告されています。また、妊娠中や出産後に発症したり、症状が変化したりすることがあります。

これは、妊娠や出産に伴う急激なホルモン変動が免疫系に影響を与えるためと考えられています。さらに、女性は髪型によって脱毛斑を隠しやすい反面、容姿への影響から心理的な負担を感じやすい傾向もあります。

専門医は、こうした女性特有の背景も考慮して診療にあたります。

ホルモンバランスとの関連

女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンは、免疫機能にも影響を与えます。

ホルモンバランスとの関連

これらのホルモンの量が大きく変動する時期、例えば妊娠、出産、授乳期、更年期などは、円形脱毛症の発症や症状の悪化、あるいは逆に軽快といった変化が見られることがあります。

ただし、ホルモンバランスの乱れだけが直接的な原因ではなく、あくまで複数の要因が絡み合って発症すると理解することが重要です。気になる症状があれば、ホルモンの状態も含めて専門医に相談しましょう。

症状 – 円形の抜け毛だけじゃない、見逃しやすいサイン

円形脱毛症の最も代表的な症状は、境界明瞭な円形または楕円形の脱毛斑です。しかし、それ以外にも見逃しやすいサインがいくつか存在します。

早期に気づき、適切な対応をとるためには、これらのサインについて知っておくことが大切です。

典型的な脱毛斑の現れ方

多くの場合、自覚症状なく突然、コイン程度の大きさの脱毛斑が1つまたは複数出現します。脱毛斑の表面は滑らかで、炎症やフケなどは通常見られません。

症状 – 典型的な脱毛斑のイメージ

脱毛斑の辺縁部の毛を軽く引っ張ると容易に抜けることがあり、これは活動性の高い時期に見られる特徴です。脱毛斑は頭部だけでなく、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛など、毛のある部分ならどこにでも生じる可能性があります。

脱毛斑の大きさや数

脱毛斑の大きさは、小豆大のものから手のひら大、あるいはそれ以上のものまで様々です。数も単発のものから多発するものまであり、脱毛斑同士が融合して大きな不規則な形の脱毛になることもあります。

脱毛の範囲や個数によって、円形脱毛症の種類が分類されます。

爪の異常

円形脱毛症の患者さんの中には、爪に小さな点状のへこみ(点状陥凹)や横方向の溝(ボー線条)、爪が薄くなる、もろくなるなどの変化が見られることがあります。

症状 – 爪の異常と脱毛の関係

これは、爪も皮膚の一部であり、毛髪と同様の組織から発生するため、免疫系の異常が爪にも影響を及ぼすことがあるためです。

爪の異常は、脱毛症状と同時に現れることもあれば、脱毛に先行して現れることもあります。これらの爪の変化は、診断の一助となることがあります。

円形脱毛症の種類と症状の広がり

種類主な症状・特徴脱毛の範囲
単発型円形の脱毛斑が1つだけ生じる頭部の一部
多発型円形の脱毛斑が2つ以上生じる頭部の広範囲
全頭型頭全体の毛髪がほぼ全て抜け落ちる頭部全体
汎発型頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛など全身の毛が抜け落ちる全身
蛇行型後頭部から側頭部の生え際に沿って帯状に脱毛する頭部の生え際

初期症状と見逃しやすいサイン

円形脱毛症の初期には、はっきりとした脱毛斑が現れる前に、頭皮にかゆみやピリピリとした違和感を感じる人がいます。また、抜け毛が増えたと感じることもありますが、季節の変わり目や洗髪時の抜け毛と区別がつきにくいこともあります。

美容院で指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。普段から自分の頭皮の状態に関心を持つことが早期発見につながります。

セルフチェックの仕方 – 鏡だけでできる頭皮観察ステップ

円形脱毛症を早期に発見するためには、定期的なセルフチェックが有効です。特別な道具は必要なく、鏡を使ってご自身の頭皮の状態を観察することから始めましょう。

特に、抜け毛が増えたと感じた時や、頭皮に違和感がある時は注意深く見てみましょう。

頭皮全体を観察するポイント

セルフチェックの仕方(鏡で頭皮を確認)

合わせ鏡を使うか、ご家族に協力してもらい、頭頂部、側頭部、後頭部など、頭皮全体をくまなくチェックします。特に見えにくい後頭部や髪の分け目などは念入りに確認しましょう。

  • 脱毛している部分はないか
  • 脱毛部分の形(円形か、不規則か)
  • 脱毛部分の地肌の色(赤みはないか、健康な肌色か)
  • 脱毛部分の境界(はっきりしているか、ぼやけているか)

抜け毛の状態を確認する

枕についた抜け毛や、シャンプー時の抜け毛の状態も観察しましょう。円形脱毛症の活動期には、毛根部分が細くなっていたり、毛髪が途中で切れていたりする「切れ毛」が見られることがあります。

また、脱毛斑の周囲の毛を軽く引っ張ってみて、簡単に数本抜けるようであれば、脱毛が進行している可能性があります。ただし、強く引っ張りすぎないように注意してください。

セルフチェック時の注意点

項目確認内容ポイント
頻度月に1回程度を目安に神経質になりすぎない程度で
照明明るい場所で観察する影にならないように注意
精神状態リラックスした状態で行う不安を煽らないように冷静に

受診のタイミング – 脱毛斑を見つけたらどう動く?

受診のタイミング(いつ皮膚科に行く?)

ご自身で脱毛斑を見つけたり、抜け毛の増加に気づいたりした場合、どのタイミングで医療機関を受診すべきか迷うかもしれません。

円形脱毛症は、早期に適切な対応を始めることで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることが期待できます。自己判断せずに、まずは皮膚科の専門医に相談することをお勧めします。

皮膚科専門医への相談を推奨するケース

以下のような場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

  • 初めて円形の脱毛斑を見つけた場合
  • 脱毛斑が複数ある、または徐々に大きくなっている場合
  • 脱毛斑の範囲が広い場合
  • 抜け毛の量が急に増えたと感じる場合
  • 頭皮にかゆみや痛みなどの自覚症状がある場合
  • 爪にも異常が見られる場合

特に、急速に脱毛が進行していると感じる場合は、放置せずに速やかに専門医の診察を受けてください。自己流のケアで時間を費やすよりも、正確な診断と適切な治療法についてアドバイスを受けることが重要です。

初診時に伝えるべき情報

初めて皮膚科を受診する際には、医師に正確な情報を伝えることが、的確な診断と治療につながります。以下の情報を整理しておくとスムーズです。

伝えるべき情報の例

情報カテゴリ具体的な内容
症状についていつから脱毛に気づいたか、脱毛斑の数や大きさの変化、抜け毛の量、かゆみなどの自覚症状の有無
既往歴・アレルギーこれまでに罹った大きな病気、現在治療中の病気(特に自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎、甲状腺疾患など)、アレルギーの有無
家族歴家族に円形脱毛症や自己免疫疾患の人がいるか
生活習慣最近の大きなストレスの有無、睡眠時間、食生活、喫煙・飲酒の習慣など
内服・外用薬現在使用している薬(市販薬、サプリメントを含む)、過去の円形脱毛症の治療歴(あれば)

これらの情報をメモなどにまとめて持参すると、伝え忘れを防ぐことができます。

原因 – 免疫バランスとホルモン変動が絡む要因

円形脱毛症の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、現在最も有力視されているのは「自己免疫疾患」としての側面です。

何らかのきっかけで免疫系が自身の毛包を異物と誤認し攻撃してしまうことで、毛髪の成長が阻害され脱毛が起こると考えられています。

この免疫系の誤作動には、遺伝的な要因や、ストレス、ホルモンバランスの変化などが複雑に関与しているとされます。

自己免疫疾患としての円形脱毛症

私たちの体には、外部から侵入する細菌やウイルスなどの異物を攻撃し、体を守る「免疫」というシステムが備わっています。

原因 – 自己免疫疾患とストレスの関係

自己免疫疾患とは、この免疫システムが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気の総称です。円形脱毛症の場合、免疫細胞であるTリンパ球が毛包を攻撃対象として認識し、炎症を引き起こすことで毛が抜け落ちると考えられています。

アトピー性皮膚炎や甲状腺疾患、尋常性白斑といった他の自己免疫疾患を合併しやすいことも、この説を裏付けています。

遺伝的要因の関与

円形脱毛症は家族内で発症することがあり、遺伝的な要因が関与していると考えられています。特定の遺伝子を持つ人が必ず発症するわけではありませんが、発症しやすい体質が遺伝する可能性が指摘されています。

近親者に円形脱毛症の方がいる場合、発症リスクがやや高まると言われています。

ストレスと円形脱毛症の関係

精神的なストレスや肉体的な疲労は、免疫系のバランスを崩す要因の一つとなり得ます。過度なストレスが長期間続くと、自律神経の乱れやホルモンバランスの変動を引き起こし、結果として円形脱毛症の発症や悪化の引き金になることがあります。

ただし、ストレスはあくまで誘因の一つであり、ストレスが直接的な原因で毛が抜けるわけではありません。ストレスを感じやすい状況にある方は、リフレッシュ方法を見つけるなど、上手にストレスを管理することが大切です。

その他の誘因

  • 感染症(ウイルス感染など)
  • 薬剤(インターフェロン治療など)
  • 疲労、睡眠不足
  • 出産、手術などの身体的負担

これらの誘因が単独で、あるいは複数組み合わさることで、免疫系に影響を与え、円形脱毛症の発症につながることがあります。

検査 – クリニック受診前に知りたい検査内容と流れ

円形脱毛症の診断は、主に問診と視診によって行われます。脱毛の状態や範囲、頭皮の様子などを詳しく観察することで、多くの場合診断がつきます。

しかし、他の脱毛症との鑑別や、合併症の確認、治療方針の決定のために、いくつかの検査を行うことがあります。事前にどのような検査があるのかを知っておくと、安心して受診できるでしょう。

クリニックでの血液検査や診察シーン

問診と視診

医師はまず、患者さんから症状の経過や既往歴、家族歴などを詳しく聞き取ります(問診)。その後、脱毛斑の形状、大きさ、数、分布、頭皮の色調や状態、毛髪の太さや密度などを目で見て確認します(視診)。

ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて、毛穴の状態や毛髪の形状を詳細に観察することもあります。これにより、脱毛の活動性や再生の兆候などを評価します。

血液検査

円形脱毛症は、甲状腺疾患や膠原病などの自己免疫疾患を合併することがあります。また、鉄欠乏性貧血などが脱毛の原因となることもあるため、これらの疾患の有無を確認するために血液検査を行うことがあります。

具体的には、甲状腺ホルモン、自己抗体、血算、鉄関連の項目などを調べます。アトピー性皮膚炎の合併が疑われる場合は、IgE抗体の値を調べることもあります。

主な血液検査項目

検査項目調べる内容円形脱毛症との関連
甲状腺ホルモン (TSH, FT3, FT4)甲状腺機能甲状腺疾患の合併確認
自己抗体 (抗核抗体など)自己免疫疾患の有無他の自己免疫疾患の合併確認
血算・フェリチン貧血の有無、鉄貯蔵量鉄欠乏による脱毛との鑑別

皮膚生検(必要な場合)

診断が難しい場合や、他の脱毛症との鑑別が困難な場合には、皮膚生検を行うことがあります。これは、脱毛部の皮膚を局所麻酔下に少量採取し、顕微鏡で組織の状態を詳しく調べる検査です。

毛包周囲の炎症細胞の種類や程度などを確認し、確定診断に役立てます。通常、円形脱毛症の診断で皮膚生検まで行うことは稀ですが、症状が非典型的であったり、治療への反応が乏しかったりする場合に検討されます。

治療 – 投薬から光線療法まで段階的アプローチ

円形脱毛症の治療法は、脱毛の範囲や進行度、患者さんの年齢や健康状態、希望などを総合的に考慮して選択します。一つの治療法で効果が見られない場合でも、他の治療法を試すことで改善が期待できることもあります。

専門医とよく相談し、納得のいく治療法を選ぶことが大切です。治療の目標は、脱毛の進行を抑え、発毛を促し、QOL(生活の質)を維持することです。

治療法の種類と選択基準

円形脱毛症の治療は、日本皮膚科学会のガイドラインに基づいて行われることが一般的です。脱毛範囲が狭い場合は外用薬や局所注射が中心となり、範囲が広い場合や進行が速い場合は内服薬や光線療法などが検討されます。

治療 – 投薬から光線療法まで

治療効果には個人差があり、副作用の可能性も考慮しながら、段階的に治療法を調整していきます。

代表的な治療法とその概要

治療法概要主な対象
ステロイド外用療法炎症を抑えるステロイド薬を脱毛部に塗布する。軽症~中等症、小児
ステロイド局所注射ステロイド薬を脱毛部の皮内に直接注射する。脱毛斑が限局している成人
局所免疫療法 (SADBE, DPCP)特殊な化学物質を塗布し、人工的にかぶれを起こさせて発毛を促す。広範囲な脱毛、保険適用外
ステロイド内服療法炎症を抑えるステロイド薬を経口で服用する。急速に進行する重症例(短期間)
光線療法 (エキシマライト、PUVA等)特定の波長の紫外線を脱毛部に照射する。広範囲な脱毛、他の治療で効果不十分な場合
JAK阻害薬(内服・外用)免疫反応に関わるJAKという酵素の働きを抑える新しい薬。広範囲かつ難治性の成人(一部保険適用)

ステロイド治療の役割と注意点

ステロイドは、円形脱毛症の治療において重要な役割を果たす薬剤です。その強力な抗炎症作用と免疫抑制作用により、毛包への攻撃を抑え、発毛を促す効果が期待できます。外用薬、局所注射、内服薬といった形で用いられます。

外用薬は比較的副作用が少なく、初期治療や軽症例でよく用いられます。局所注射は、外用薬よりも効果が高いとされますが、注射時の痛みや、皮膚の萎縮、陥凹といった副作用の可能性があります。

内服薬は、急速に進行する重症例に短期間用いられることがありますが、全身性の副作用(易感染性、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、満月様顔貌など)に注意が必要で、医師の厳重な管理のもとで使用します。

治療効果と副作用のバランスを考慮し、専門医が適切な使用法を判断します。

保険適用となる治療法

円形脱毛症の治療法の中には、健康保険が適用されるものと、適用されないもの(自費診療)があります。

保険適用の治療は、ステロイド外用薬、ステロイド局所注射、一部の抗アレルギー薬や血流改善薬の内服、エキシマライトなどの光線療法(施設基準あり)などです。

最近では、条件を満たせばJAK阻害薬の内服薬や外用薬も保険適用となりました。局所免疫療法や一部の特殊な治療は、原則として保険適用外となります。

治療を開始する前に、どの治療法が保険適用となるのか、費用はどの程度かかるのかを専門医に確認しましょう。

予防 – 生活習慣とストレス管理で再発リスクを下げる

円形脱毛症は、一度治っても再発することがある病気です。残念ながら、確実に再発を防ぐ方法は確立されていませんが、日々の生活習慣を見直し、心身のバランスを整えることで、再発のリスクを低減できる可能性があります。

特に、免疫機能の安定には、バランスの取れた食事、質の高い睡眠、そして上手なストレス管理が重要です。

バランスの取れた食事と栄養

健康な毛髪を育むためには、バランスの取れた食事が基本です。特定の食品だけを摂取するのではなく、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどを偏りなく摂ることが大切です。

特に、髪の主成分であるタンパク質(肉、魚、大豆製品、卵など)、頭皮の健康を保つビタミンB群(レバー、緑黄色野菜、穀類など)、抗酸化作用のあるビタミンC・E(果物、野菜、ナッツ類など)、そしてミネラルの一種である亜鉛(牡蠣、レバー、赤身肉など)は積極的に摂取したい栄養素です。

頭皮環境を整えるための栄養素

栄養素主な働き多く含む食品例
タンパク質髪の主成分肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛髪の成長促進、免疫力維持牡蠣、レバー、牛肉
ビタミンB群頭皮の新陳代謝促進レバー、うなぎ、マグロ、納豆

質の高い睡眠の確保

睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が行われます。頭皮や毛髪の健康維持にも、質の高い睡眠は欠かせません。

毎日同じ時間に寝起きする、寝る前にカフェインやアルコールの摂取を控える、スマートフォンやパソコンの使用を就寝直前まで行わないなど、睡眠環境を整える工夫をしましょう。

睡眠不足は自律神経の乱れや免疫力の低下にもつながり、円形脱毛症の誘因となる可能性があります。

ストレスとの上手な付き合い方

現代社会においてストレスを完全に避けることは難しいですが、ストレスを溜め込まずに上手に発散する方法を見つけることが重要です。

適度な運動、趣味への没頭、友人や家族との会話、リラクゼーション(瞑想、ヨガ、アロマテラピーなど)など、自分に合ったストレス解消法を日常生活に取り入れましょう。

ストレスが過度にかかると、免疫バランスが崩れ、円形脱毛症の再発リスクを高める可能性があります。

ストレス軽減のためのヒント

  • 軽い運動(ウォーキング、ストレッチ)
  • 趣味の時間を持つ
  • 十分な休息をとる
  • 信頼できる人に相談する

心のケアとサポート – 見た目の悩みを共有できる環境づくり

心のケアとサポート

円形脱毛症は、時に見た目に大きな変化をもたらし、患者さんの心に深い悩みやストレスを与えることがあります。特に女性の場合、髪は容姿の重要な一部と捉えられることが多く、脱毛による精神的な負担は計り知れません。

治療と並行して、心のケアにも目を向けることが、QOL(生活の質)を維持し、前向きに治療に取り組むために大切です。

脱毛による心理的影響への理解

脱毛が始まると、他人の目が気になる、自信を失う、外出が億劫になる、抑うつ的な気分になるなど、様々な心理的な影響が現れることがあります。これらの感情は決して特別なものではなく、多くの方が経験する自然な反応です。

一人で抱え込まず、まずはその気持ちを認めることが大切です。必要であれば、専門医やカウンセラーに相談することも検討しましょう。

ウィッグやカバーメイクの活用

脱毛斑が気になる場合、ウィッグ(かつら)やヘアピース、帽子、スカーフ、あるいは専用のカバーメイク製品などを活用することで、見た目の悩みを軽減し、精神的な負担を和らげることができます。

最近では、自然で質の高い医療用ウィッグも増えており、専門のサロンで相談することも可能です。これらを利用することで、安心して社会生活を送るための一助となります。

ご自身に合った方法を見つけ、治療中も自分らしい生活を送ることを目指しましょう。

カバー方法の選択肢

カバー方法特徴メリット
ウィッグ(全頭)頭全体を覆うタイプ広範囲の脱毛に対応、髪型を大きく変えられる
ヘアピース(部分用)脱毛部分をピンポイントでカバー手軽、自毛に馴染ませやすい
帽子・スカーフ手軽におしゃれにカバー通気性が良いものも、ファッション性が高い
カバーメイク専用のパウダーやスプレーで地肌を目立たなくする生え際や分け目など細かい部分に使いやすい

患者会やサポートグループの利用

同じ悩みを持つ人々と交流することは、孤独感を和らげ、精神的な支えとなることがあります。

円形脱毛症の患者会やサポートグループでは、情報交換をしたり、互いの経験を共有したりすることで、前向きな気持ちを取り戻すきっかけが得られるかもしれません。

オンラインのコミュニティなども存在しますので、自分に合った形で参加を検討してみるのも良いでしょう。専門医に相談すれば、関連情報を提供してくれることもあります。

よくある質問

円形脱毛症は治りますか?

円形脱毛症は、多くの場合、自然に治癒したり、適切な治療によって改善したりします。ただし、脱毛の範囲や種類、個人の体質によって治癒までの期間や治療効果には差があります。

軽症の単発型であれば数ヶ月で自然に治ることもありますが、全頭型や汎発型など重症の場合は治療が長期にわたることもあります。根気強く治療を続けることが大切です。

専門医とよく相談し、ご自身に合った治療法を見つけましょう。

子供でも円形脱毛症になりますか?

はい、円形脱毛症は子供でも発症します。小児の円形脱毛症は、アトピー素因(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などになりやすい体質)を持つお子さんに見られることが多い傾向があります。

治療法は成人と同様にステロイド外用などが中心となりますが、年齢や症状に応じて慎重に選択します。

お子さんの場合、精神的な影響も大きいため、学校生活などへの配慮も重要です。専門医に相談し、適切なサポートを受けましょう。

治療にはどのくらいの期間がかかりますか?副作用はありますか?

A3 治療期間は、症状の重症度や治療法、個人の反応によって大きく異なります。数ヶ月で改善するケースもあれば、1年以上かかる場合もあります。治療法によっては副作用が現れる可能性もあります。

例えば、ステロイド外用薬では皮膚の菲薄化やかぶれ、ステロイド局所注射では注射部位の痛みや陥凹、ステロイド内服薬では全身性の副作用(易感染性、糖尿病など)のリスクがあります。

JAK阻害薬にも、感染症や肝機能障害などの副作用の可能性があります。治療開始前に、専門医から治療期間の目安や、予想される効果、そして副作用について十分に説明を受け、理解した上で治療を進めることが重要です。

市販の育毛剤は効果がありますか?

一般的に市販されている育毛剤の多くは、壮年性脱毛症(AGA)や女性のびまん性脱毛を対象としたものであり、自己免疫疾患である円形脱毛症に対する直接的な治療効果は期待できません。

円形脱毛症の治療は、免疫の異常を抑えることが主眼となります。自己判断で市販薬を使用する前に、まずは皮膚科専門医の診断を受け、適切な治療法について相談することをお勧めします。

医師の指示のもとで、補助的に頭皮環境を整える目的の製品を使用することはありますが、それが主たる治療となることはありません。

円形脱毛症は遺伝しますか?

円形脱毛症の発症には遺伝的な要因が関与していると考えられています。家族や親族に円形脱毛症の方がいる場合、発症リスクが一般よりもやや高くなることが知られています。

ただし、特定の遺伝子があれば必ず発症するというわけではなく、遺伝的素因に加えて、ストレスや感染症、ホルモンバランスの変化など、様々な環境要因が複合的に作用して発症すると考えられています。

遺伝的背景があるからといって過度に心配する必要はありませんが、気になる場合は専門医に相談してみましょう。

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円形脱毛症の具体的な症状の現れ方や、他の脱毛症との違いについて、より詳細な情報をお求めの方は、こちらの「円形脱毛症(女性)の症状」も合わせてご覧ください。写真や図解を交えながら、様々な症状のパターンを解説しています。

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