女性の薄毛の悩みの一つである脂漏性脱毛症は、頭皮の皮脂バランスの乱れや炎症が主な原因です。

この記事では、皮膚科専門医の視点から、効果的な治療法と今日から始められる予防策を詳しく解説します。適切な頭皮ケアと生活習慣の見直しで、健やかな髪を取り戻し、再発を防ぐための知識を深めましょう。
洗浄+保湿で皮脂バリアを再構築するホームケア入門
脂漏性脱毛症の治療と予防の基本は、毎日のホームケアです。特に重要なのは、頭皮の「洗浄」と「保湿」。これにより、過剰な皮脂や汚れを取り除きつつ、頭皮のバリア機能を正常に保ち、炎症や抜け毛のリスクを低減します。

間違ったケアは症状を悪化させる原因にもなるため、正しい知識を身につけることが大切です。
適切なシャンプー選びと正しい洗髪方法
シャンプー選びは、頭皮ケアの第一歩です。脂漏性脱毛症の方は、皮脂が多く、炎症を起こしやすい状態にあるため、洗浄力が強すぎず、かつ頭皮に優しい成分のシャンプーを選ぶことが重要です。
抗真菌成分(ミコナゾール硝酸塩、ケトコナゾールなど)配合の薬用シャンプーは、原因菌の一つであるマラセチア菌の増殖を抑える効果が期待できます。専門医に相談し、自分の頭皮の状態に合ったシャンプーを見つけましょう。
正しい洗髪方法も、頭皮環境を整える上で欠かせません。髪を濡らす前にブラッシングで汚れを浮かせ、ぬるま湯で予洗いします。シャンプーは手のひらで泡立ててから、指の腹でマッサージするように優しく頭皮を洗いましょう。

爪を立ててゴシゴシ洗うと、頭皮を傷つけ、炎症を悪化させる原因になります。すすぎ残しはフケやかゆみ、抜け毛の原因となるため、時間をかけて丁寧に洗い流すことが大切です。
シャンプー選びのポイント
ポイント | 説明 | 推奨成分例 |
---|---|---|
低刺激性 | 頭皮への負担が少ないアミノ酸系洗浄成分など | ココイルグルタミン酸Na |
抗真菌成分配合 | マラセチア菌の増殖を抑制 | ミコナゾール硝酸塩 |
無添加・弱酸性 | 香料、着色料、パラベンフリー。健康な頭皮に近いpH値 | – |
洗髪後の保湿ケアで頭皮の乾燥を防ぐ
シャンプーで皮脂や汚れを落とした後の頭皮は、乾燥しやすい状態です。乾燥はバリア機能の低下を招き、外部刺激に敏感になったり、かえって皮脂の過剰分泌を引き起こしたりすることがあります。そのため、洗髪後の保湿ケアが重要です。
頭皮用のローションや保湿剤を使用し、潤いを補給しましょう。セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が配合された製品がおすすめです。特に乾燥が気になる場合は、専門医に相談して適切な保湿剤を選んでもらうと良いでしょう。
保湿剤は、髪の毛ではなく頭皮に直接塗布し、優しくマッサージするようになじませます。
抗真菌ローション&低濃度ステロイドで炎症を即効ブロック
脂漏性脱毛症の症状が活発な時期には、かゆみや赤みといった頭皮の炎症を迅速に抑える治療が必要です。クリニックでは、原因となるマラセチア菌の増殖を抑える抗真菌薬や、炎症を鎮めるステロイド薬を主に使用します。

これらの外用薬は、症状の程度や範囲に応じて専門医が適切に処方します。
抗真菌外用薬の種類と役割
抗真菌外用薬は、脂漏性皮膚炎の原因の一つであるマラセチア菌の活動を抑制し、皮脂の分解に伴う炎症性物質の産生を減らすことで効果を発揮します。
ケトコナゾールやミコナゾールといった成分を含むローションやクリームが一般的に用いられます。これらの薬剤は、頭皮に直接塗布することで、菌の増殖を抑え、フケやかゆみ、赤みといった症状を改善します。
効果を実感するまでには数週間かかることもありますが、根気強く治療を続けることが大切です。医師の指示通りに、適切な量と回数を守って使用しましょう。
ステロイド外用薬の適切な使用法と注意点
ステロイド外用薬は、強力な抗炎症作用を持ち、頭皮の赤み、腫れ、かゆみなどの炎症症状を迅速に改善します。
脂漏性脱毛症の治療では、比較的効果がマイルドな低濃度のステロイド(例:吉草酸酢酸プレドニゾロンなど)が選択されることが多いです。
しかし、長期間の使用や不適切な使用は、皮膚の菲薄化や血管拡張などの副作用を引き起こす可能性があるため、必ず専門医の指導のもとで使用することが重要です。
症状が改善したら徐々に使用回数を減らしたり、より作用の弱い薬剤に変更したりするなど、医師がコントロールします。自己判断での中止や長期連用は避けましょう。
外用薬使用時の一般的な注意点
- 塗布前に頭皮を清潔にする
- 指示された量・回数を守る
- 広範囲に漫然と使用しない
- 副作用と思われる症状が出たら速やかに医師に相談する
皮脂分泌を内側から整える経口抗真菌薬・ホルモン調整薬
外用薬だけでは症状の改善が難しい場合や、炎症が広範囲に及ぶ場合には、内服薬による治療を検討します。

経口抗真菌薬は体の中からマラセチア菌の活動を抑え、ホルモン調整薬は皮脂分泌に関わるホルモンバランスを整えることで、脂漏性脱毛症の根本的な原因にアプローチします。
これらの内服薬は、専門医が患者さんの状態を慎重に評価した上で処方します。
経口抗真菌薬の役割と効果
イトラコナゾールやフルコナゾールなどの経口抗真菌薬は、皮膚の表面だけでなく、毛穴の奥に潜むマラセチア菌に対しても効果を発揮します。
これにより、外用薬では届きにくい部位の菌の増殖を抑制し、難治性あるいは広範囲の脂漏性皮膚炎の症状改善が期待できます。服用期間や用量は症状によって異なり、医師の指示に従うことが重要です。
肝機能への影響などを考慮し、定期的な血液検査を行うこともあります。
ビタミン剤による皮脂コントロール
皮脂の分泌をコントロールし、皮膚の新陳代謝を正常化するために、ビタミンB群(特にビタミンB2、B6)やビタミンC、ビオチンなどが処方されることがあります。ビタミンB2は脂質の代謝を助け、皮脂の過剰な分泌を抑える働きがあります。
ビタミンB6はタンパク質の代謝に関与し、健康な皮膚や髪の毛の生成をサポートします。
これらのビタミンは、食事からの摂取も重要ですが、症状によってはサプリメントや医薬品として補充することで、より効果的な皮脂コントロールを目指します。
これらのビタミン剤は、抗真菌薬やステロイド薬と併用されることも多く、頭皮環境の改善を多角的にサポートします。
皮脂バランスに関わる主なビタミン
ビタミン | 主な働き | 期待される効果 |
---|---|---|
ビタミンB2 | 脂質の代謝促進 | 皮脂分泌の正常化、皮膚炎の予防 |
ビタミンB6 | タンパク質の代謝、免疫機能維持 | 皮膚の健康維持、炎症抑制 |
ビオチン | 皮膚や粘膜の健康維持 | 皮膚炎の改善、コラーゲン生成促進 |
女性ホルモンと皮脂分泌の関連性
女性ホルモン、特にエストロゲンとプロゲステロンのバランスは、皮脂腺の活動に影響を与えます。エストロゲンには皮脂分泌を抑制する作用がある一方、男性ホルモン(アンドロゲン)は皮脂分泌を促進します。
女性でも副腎や卵巣で少量のアンドロゲンが作られており、ホルモンバランスが崩れるとアンドロゲンの影響が相対的に強まり、皮脂分泌が過剰になることがあります。
特に生理周期やストレス、更年期などでホルモンバランスが揺らぎやすい女性の場合、これが脂漏性脱毛症の一因となることもあります。
治療法として低用量ピルなどを用いてホルモンバランスを整えるアプローチもありますが、婦人科医との連携や慎重な判断が必要です。
光線療法・メソセラピー・PRP注入などクリニック施術の選択肢
標準的な薬物治療で効果が不十分な場合や、より積極的な頭皮環境の改善、発毛促進を希望する場合には、クリニックで行う専門的な施術が選択肢となります。

これらの治療法は、炎症の抑制、血行促進、毛母細胞の活性化などを目的とし、脂漏性脱毛症による抜け毛や薄毛の改善を目指します。専門医が頭皮の状態や症状の進行度、患者さんの希望を総合的に判断し、最適な治療法を提案します。
ナローバンドUVB療法による炎症鎮静
ナローバンドUVB療法は、特定の波長の紫外線を頭皮に照射することで、免疫反応を調整し、炎症を鎮める治療法です。
主にアトピー性皮膚炎や乾癬の治療に用いられますが、脂漏性皮膚炎による頭皮のしつこい炎症やかゆみにも効果が期待できます。週に1~2回程度の照射を継続することで、ステロイド外用薬の使用量を減らせる可能性もあります。
この治療法は、副作用が比較的少なく安全性が高いとされていますが、効果には個人差があります。クリニックの専門医と相談し、適応があるか確認しましょう。
頭皮メソセラピーによる有効成分の直接導入
頭皮メソセラピーは、発毛や育毛に有効な成分(ビタミン、ミノキシジル、成長因子など)を極細の針を使って頭皮に直接注入する治療法です。
有効成分を直接毛根周囲に届けることで、血行を促進し、毛母細胞を活性化させ、抜け毛を減らし健康な髪の成長をサポートします。
脂漏性脱毛症においては、まず炎症をコントロールすることが先決ですが、炎症が落ち着いた後の発毛促進の一環として検討されることがあります。施術時には多少の痛みを伴うことがありますが、麻酔クリームを使用することで軽減できます。
頭皮メソセラピーで期待できること
期待される効果 | 主な注入成分例 | 治療のポイント |
---|---|---|
毛母細胞の活性化 | 成長因子、ミノキシジル | 定期的な施術が必要 |
頭皮の血行促進 | 各種ビタミン、アミノ酸 | 炎症が強い時期は避ける |
栄養補給 | ミネラル、ペプチド | 他の治療との併用も可能 |
PRP(多血小板血漿)注入療法の可能性
PRP療法は、患者さん自身の血液から成長因子を豊富に含む多血小板血漿(PRP)を抽出し、頭皮に注入する再生医療の一種です。PRPに含まれる成長因子が、毛包の再生や血管新生を促し、発毛を促進すると考えられています。
自身の血液を用いるためアレルギー反応のリスクが低いというメリットがあります。
脂漏性脱毛症による抜け毛や薄毛に対する効果については、まだ研究段階の部分もありますが、難治性のケースや他の治療で効果が得られなかった場合の選択肢として、一部の専門クリニックで導入されています。
治療効果や適応については、専門医と十分に話し合うことが重要です。
オメガ3×ポリフェノールで炎症を抑える食事アプローチ
脂漏性脱毛症の改善と予防には、薬物治療やクリニックでの施術だけでなく、日々の食生活も深く関わっています。特に、抗炎症作用を持つ栄養素を積極的に摂取することは、頭皮の炎症を内側からケアし、皮脂バランスを整える上で大切です。
オメガ3系脂肪酸やポリフェノールを多く含む食品を意識して取り入れ、健康な頭皮環境を目指しましょう。
オメガ3系脂肪酸の抗炎症効果と摂取源
オメガ3系脂肪酸(EPA、DHAなど)は、体内の炎症反応を抑制する働きがあり、皮膚の健康維持に役立ちます。青魚(サバ、イワシ、サンマなど)や亜麻仁油、えごま油、くるみなどに豊富に含まれています。

これらの食品を日常的に摂取することで、頭皮の炎症を和らげ、脂漏性脱毛症の症状改善をサポートする効果が期待できます。加熱に弱い性質を持つ油もあるため、ドレッシングとして生で摂取するなどの工夫も良いでしょう。
オメガ3系脂肪酸を多く含む食品
食品カテゴリー | 代表的な食品 | 摂取のポイント |
---|---|---|
青魚 | サバ、イワシ、サンマ、アジ | 刺身や焼き魚で効率よく |
植物油 | 亜麻仁油、えごま油 | 加熱せずドレッシングなどに |
種実類 | くるみ、チアシード | 間食やおやつに |
ポリフェノールの抗酸化力と頭皮への恩恵
ポリフェノールは、植物が持つ抗酸化物質で、活性酸素による細胞のダメージを防ぎ、炎症を抑える効果があります。
緑茶に含まれるカテキン、大豆製品に含まれるイソフラボン、ブルーベリーやブドウに含まれるアントシアニンなどが代表的です。
これらのポリフェノールを多く含む野菜や果物、豆類をバランス良く摂取することは、頭皮の老化を防ぎ、健康な状態を保つのに役立ちます。多様な種類のポリフェノールを摂るために、色とりどりの食材を選ぶことを心がけましょう。
皮脂バランスを整える食事の注意点
脂質の多い食事や高糖質の食事は、皮脂の分泌を過剰にし、脂漏性脱毛症を悪化させる可能性があります。揚げ物やスナック菓子、甘いものの摂りすぎには注意が必要です。
また、腸内環境の乱れも皮膚の状態に影響を与えるため、食物繊維を多く含む野菜やきのこ類、海藻類、発酵食品(ヨーグルト、納豆など)を積極的に摂り、腸内フローラを整えることも大切です。
バランスの取れた食事は、健康な頭皮と髪を育むための基本であり、治療効果を高める上でも重要な要素となります。
良質な睡眠と運動で自律神経を整え頭皮に血流アップ

健康な頭皮環境を維持し、脂漏性脱毛症の改善・予防を図るためには、自律神経のバランスを整え、頭皮への血流を促進する生活習慣が重要です。
特に、良質な睡眠と適度な運動は、ホルモンバランスや免疫機能にも良い影響を与え、頭皮のターンオーバーを正常化し、抜け毛のリスクを低減します。
睡眠不足が頭皮に与える悪影響
睡眠中は成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が活発に行われます。睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、頭皮の新陳代謝が悪化します。
これにより、頭皮のバリア機能が低下し、炎症が起きやすくなったり、毛髪の成長サイクルが乱れて抜け毛が増えたりする原因となります。
また、睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、皮脂の過剰分泌や血行不良を引き起こすこともあります。毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。
質の高い睡眠のためのヒント
- 就寝前のカフェインやアルコール摂取を控える
- 寝る1~2時間前に入浴しリラックスする
- 寝室の温度や湿度を快適に保つ
- スマートフォンやパソコンの使用は就寝1時間前までにする
有酸素運動による血行促進とストレス軽減効果
ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動は、全身の血行を促進し、頭皮にも十分な酸素と栄養を届けるのに役立ちます。血行が改善されると、毛母細胞が活性化され、健康な髪の成長が促されます。
また、適度な運動はストレス解消にも効果的です。ストレスは自律神経のバランスを乱し、皮脂の過剰分泌や免疫力の低下を引き起こすため、脂漏性脱毛症の悪化要因の一つと考えられています。
無理のない範囲で、楽しみながら続けられる運動を見つけ、生活習慣に取り入れましょう。
日常生活で取り入れやすい運動
運動の種類 | ポイント | 期待できる効果 |
---|---|---|
ウォーキング | 1日30分程度、やや早歩きで | 血行促進、気分転換 |
ストレッチ | 就寝前や起床後に行う | 筋肉の緊張緩和、リラックス |
ヨガ | 呼吸を意識しながら行う | 自律神経調整、ストレス軽減 |
ストレスコーピングとマインドフルネスでホルモン揺らぎをケア
ストレスは万病のもとと言われますが、脂漏性脱毛症にとっても大敵です。過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、ホルモン分泌に影響を与え、皮脂の過剰な分泌や頭皮の炎症を引き起こす可能性があります。
また、免疫機能の低下を招き、マラセチア菌の増殖を助長することも考えられます。そのため、自分に合ったストレス対処法(ストレスコーピング)を見つけ、実践することが、頭皮環境の安定、ひいては抜け毛の予防につながります。
ストレスが皮脂腺と免疫に及ぼす影響
ストレスを感じると、体はコルチゾールというホルモンを分泌します。
コルチゾールは、短期的には体を守る働きをしますが、慢性的なストレス下では過剰に分泌され続け、免疫機能を抑制したり、皮脂腺を刺激して皮脂分泌を増やしたりします。
これにより、頭皮のバリア機能が弱まり、外部からの刺激に敏感になったり、マラセチア菌が繁殖しやすい環境が作られたりして、脂漏性脱毛症の症状が悪化しやすくなります。
自分のストレスサインに早めに気づき、適切に対処することが大切です。
マインドフルネス瞑想による心身のリラックス法

マインドフルネス瞑想は、「今、ここ」の瞬間に意識を集中させることで、ストレスや不安を軽減し、心身をリラックスさせる方法です。
呼吸に意識を向けたり、体の感覚に注意を払ったりすることで、頭の中の雑念から解放され、穏やかな気持ちを取り戻すことができます。1日数分からでも始められ、特別な道具も場所も必要ありません。
継続することで、ストレスに対する耐性が高まり、感情のコントロールがしやすくなると言われています。これにより、ホルモンバランスの乱れを防ぎ、頭皮環境の改善にも間接的に貢献する可能性があります。
簡単なマインドフルネス呼吸法
- 楽な姿勢で座るか横になります。
- 目を閉じるか、一点をぼんやりと見つめます。
- 自然な呼吸に意識を向けます。吸う息、吐く息を感じます。
- 思考が浮かんできても、判断せずにただ観察し、再び呼吸に意識を戻します。
- まずは3分から5分程度、続けてみましょう。
趣味や休息を通じたストレスマネジメント
自分なりのストレス解消法を持つことも重要です。趣味に没頭する時間を作る、好きな音楽を聴く、自然の中で過ごす、親しい友人と話すなど、心が安らぐ活動を取り入れましょう。
また、十分な休息と睡眠は、ストレスからの回復を助けます。忙しい日々の中でも、意識的にリラックスする時間を作り、心身のバランスを整えることが、健やかな頭皮と髪を育む上で欠かせません。
ストレスを溜め込まない生活習慣を心がけることが、脂漏性脱毛症の予防と改善に繋がります。
再発サインを見逃さないセルフ&専門モニタリング

脂漏性脱毛症は、一度症状が改善しても、体調の変化やストレス、不適切なヘアケアなどによって再発しやすい特徴があります。そのため、治療後も油断せず、頭皮の状態を日常的にチェックし、再発の兆候を早期に捉えることが重要です。
セルフケアと並行して、定期的に専門医の診察を受けることで、良好な状態を維持し、万が一再発した場合でも迅速に対応できます。
頭皮の日常的なセルフチェックポイント
毎日の洗髪時やスタイリング時に、頭皮の状態を意識的に観察する習慣をつけましょう。鏡を使ったり、家族に見てもらったりするのも良い方法です。
特に注意したいのは、フケの量や質(乾燥した細かいフケか、湿った大きなフケか)、頭皮の赤み、かゆみの有無、抜け毛の量の変化などです。これらの変化は、再発の初期サインである可能性があります。
早期に気づけば、生活習慣の見直しや適切なケアで、症状の悪化を防ぐことができます。
頭皮セルフチェック項目
チェック項目 | 観察ポイント | 注意すべき変化 |
---|---|---|
フケ | 量、色、大きさ、乾湿 | 急に増える、黄色っぽくなる、ベタつく |
かゆみ | 程度、頻度、部位 | 我慢できないほど強い、特定の部位が常に痒い |
赤み・湿疹 | 範囲、色調 | 赤みが広がる、ブツブツができる |
抜け毛 | 洗髪時やブラッシング時の量 | 明らかに増えたと感じる |
定期的な専門医による頭皮診断の重要性
セルフチェックだけでは見逃してしまう変化や、自分では判断が難しい頭皮の状態もあります。そのため、症状が落ち着いた後も、定期的に専門医の診察を受けることをお勧めします。
専門医は、マイクロスコープなどを用いて頭皮の状態を詳細に観察し、皮脂の量、毛穴の状態、炎症の有無などを客観的に評価します。これにより、自覚症状がない初期の再発サインを発見したり、現在のケア方法が適切であるかを確認したりすることができます。
医師からのアドバイスを受けながら、長期的な視点で頭皮の健康管理を行いましょう。
再発予防のための生活習慣の継続

脂漏性脱毛症の再発を防ぐためには、治療中だけでなく、症状が改善した後も健康的な生活習慣を継続することが何よりも大切です。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレスマネジメント、そして正しい頭皮ケア。
これらを日常生活の一部として定着させることが、再発リスクを低減し、健やかな頭皮と髪を維持するための鍵となります。
もし生活習慣が乱れたり、強いストレスを感じたりした際には、特に頭皮の状態に注意を払い、必要であれば早めに専門医に相談しましょう。
よくある質問
脂漏性脱毛症の治療や予防に関して、患者様からよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。ご自身の状況と照らし合わせながら、参考にしてください。
- 脂漏性脱毛症は完治しますか
-
脂漏性脱毛症は、体質や生活習慣が関与していることが多く、症状をコントロールして良い状態を維持することは可能ですが、「完治」という表現は難しい場合があります。
適切な治療とセルフケア、生活習慣の改善によって、症状を長期間抑え、快適に過ごすことは十分に可能です。大切なのは、症状が落ち着いても油断せず、予防的なケアを続けることです。
- 市販の育毛剤を使っても良いですか
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脂漏性脱毛症の症状がある場合、まずは炎症を抑える治療を優先することが重要です。炎症がある状態で刺激の強い育毛剤を使用すると、かえって症状を悪化させる可能性があります。
育毛剤の使用を検討する場合は、まず専門医に相談し、頭皮の状態を確認してもらった上で、適切な製品を選ぶようにしましょう。炎症が治まった後に、頭皮環境を整えるタイプの育毛剤や、医師が推奨するものを試すのが良いでしょう。
- 治療期間はどのくらいかかりますか
-
治療期間は、症状の重症度や範囲、治療への反応性、生活習慣の改善度合いなどによって個人差があります。一般的には、外用薬による治療で数週間から数ヶ月で症状の改善が見られることが多いです。
しかし、根本的な皮脂バランスの乱れや生活習慣の問題が解決されないと再発しやすいため、症状が改善した後も継続的なケアや定期的な診察が推奨されます。専門医と相談しながら、焦らず治療に取り組むことが大切です。
治療期間に影響する要素
要素 説明 症状の重症度 炎症の強さ、抜け毛の程度など 治療法の選択 外用薬、内服薬、クリニック施術など 生活習慣の改善 食事、睡眠、ストレス管理、ヘアケアの適切性 - 抜け毛は治療すれば元に戻りますか
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脂漏性脱毛症による抜け毛は、毛根が完全にダメージを受けていなければ、炎症が治まり頭皮環境が改善することで、再び髪が生えてくる可能性があります。
ただし、長期間炎症が続いたり、毛根へのダメージが大きかったりすると、回復が難しい場合もあります。早期に適切な治療を開始し、根気強くケアを続けることが、毛髪回復の可能性を高めます。
専門医は、抜け毛の状態や頭皮の状態を診察し、発毛治療の必要性についてもアドバイスします。
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