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産後の抜け毛(産後脱毛症)の治療と予防

産後の抜け毛(産後脱毛症)の治療と予防

出産後のホルモンバランスの変化は、多くの女性が経験する「産後の抜け毛」の主な原因です。一時的な現象とはいえ、鏡を見るたびに気になる方も多いでしょう。

Dr.小林智子

この記事では、皮膚科クリニックで行う産後脱毛症の治療法や、ご自宅でできる予防策、セルフケアについて詳しく解説します。

産後の抜け毛を食い止める内服薬治療 効果と安全性のガイド

産後の抜け毛、いわゆる産後脱毛症は、出産による急激なホルモンバランスの変化が主な原因で起こります。

産後のホルモンバランス変化

特に女性ホルモンであるエストロゲンの減少が、毛髪の成長期を短縮させ、休止期に入る毛髪の割合を増やすため、抜け毛が目立つようになります。

このタイプの抜け毛は通常、産後半年から1年程度で自然に回復することが多いですが、症状が長引く場合や、精神的なストレスが大きい場合には、皮膚科での治療を検討します。

内服薬による治療は、体の内側から毛髪の成長をサポートする方法の一つです。

ホルモンバランスと内服薬の関係

産後の抜け毛はホルモンバランスの変動が引き金となりますが、直接ホルモン剤を用いて治療することは一般的ではありません。むしろ、毛髪の成長に必要な栄養素を補給したり、頭皮の血行を促進したりする内服薬が中心となります。

内服薬治療

これらの薬は、ホルモンバランスが整うまでの期間、毛髪の健康を維持し、回復を助けることを目的としています。皮膚科クリニックでは、個々の状態や授乳の有無などを考慮し、安全に使用できる内服薬を選択します。

内服薬の種類と期待される効果

内服薬の種類主な成分期待される効果
ビタミン・ミネラル補充薬ビタミンB群, ビオチン, 亜鉛, 鉄など毛髪の成長に必要な栄養素を補給し、毛母細胞の働きをサポート
血行促進薬ビタミンE誘導体など頭皮の血流を改善し、毛根への栄養供給を促進
アミノ酸製剤L-シスチンなど毛髪の主成分であるケラチンの生成を助ける

内服薬治療の安全性と注意点

皮膚科で処方される産後脱毛症の内服薬は、一般的に安全性に配慮されたものが選ばれます。しかし、どのような薬にも副作用のリスクは存在します。例えば、胃腸の不快感などが報告されることがあります。

最も重要な注意点は、授乳中かどうかです。母乳を通じて赤ちゃんに影響を与える可能性のある薬は使用できません。そのため、治療を開始する前には、必ず医師に授乳中であることを伝え、相談することが必要です。

自己判断での市販薬の使用は避け、専門医の診断と処方に従いましょう。治療期間や費用についても、クリニックで事前に確認することが大切です。

授乳中の内服薬治療

授乳期間中は、使用できる内服薬が非常に限られます。多くの薬剤は母乳へ移行する可能性があるため、赤ちゃんへの影響を考慮して処方が慎重になります。ビタミン剤など、比較的安全性が高いとされるものであっても、医師の判断が必要です。

授乳中の抜け毛対策としては、内服薬以外の治療法、例えば外用薬や生活習慣の改善などを中心に進めることが多くなります。

授乳期にも使える外用薬と低刺激スカルプケアの選択肢

授乳中は内服薬の使用が制限されることが多いため、外用薬や日々のスカルプケアが産後の抜け毛対策の重要な柱となります。

頭皮に直接塗布する外用薬は、血行を促進したり、毛根に栄養を与えたりすることで、抜け毛を減らし、発毛を促す効果が期待できます。また、頭皮環境を健やかに保つためのシャンプー選びやケア方法も大切です。

授乳中の外用薬やスカルプケア

授乳中でも安心な外用薬の選び方

産後の抜け毛対策として用いられる外用薬には様々な種類がありますが、授乳中でも比較的安全に使用できるとされる成分があります。

ただし、「授乳中もOK」と表示されている市販の育毛剤であっても、念のため使用前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

皮膚科クリニックでは、個々の頭皮の状態や抜け毛の原因、授乳の状況などを総合的に判断し、適切な外用薬を提案します。

代表的な外用薬成分と作用

成分例主な作用使用上の注意点
パントテニールエチルエーテル毛母細胞の活性化、保湿比較的副作用は少ないとされる
センブリエキス血行促進、抗炎症植物由来成分だが、アレルギーに注意
グリチルリチン酸ジカリウム抗炎症、フケ・かゆみ抑制頭皮環境の改善を助ける

なお、男性型脱毛症(AGA)治療でよく知られる「ミノキシジル」は、高い発毛効果が認められていますが、妊娠中や授乳中の女性に対する安全性は確立されていません。

そのため、産後の抜け毛治療において、特に授乳中の場合は、ミノキシジル外用薬の使用は原則として避けるべきです。治療法の選択にあたっては、必ず皮膚科医にご相談ください。

頭皮に優しいシャンプーとスカルプケア

産後の頭皮はデリケートになっていることがあります。洗浄力の強すぎるシャンプーや、添加物が多く含まれるシャンプーは、頭皮への刺激となり、かえって抜け毛を悪化させる原因にもなりかねません。

低刺激性のアミノ酸系シャンプーや、無添加・オーガニック系のシャンプーを選び、優しく洗うことを心がけましょう。

頭皮に優しいシャンプー方法

正しいシャンプーの方法

  • 洗髪前にブラッシングで髪のもつれを解き、汚れを浮かせる。
  • ぬるま湯で髪と頭皮を十分に予洗いする。
  • シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、指の腹で頭皮をマッサージするように優しく洗う。爪を立てない。
  • すすぎは時間をかけて、シャンプー剤が残らないように丁寧に行う。

シャンプー後のドライヤーも重要です。自然乾燥は頭皮に雑菌が繁殖しやすくなるため避け、ドライヤーで根元からしっかり乾かします。ただし、熱風を長時間当てすぎると頭皮や髪を傷めるので注意が必要です。

温風と冷風を使い分けるなど工夫しましょう。

産後脱毛症に効く栄養補助・サプリメント活用術

産後の抜け毛対策には、体の内側からのケアも重要です。特に、出産と授乳によって多くの栄養素が消費されるため、意識的な栄養補給が必要になります。

バランスの取れた食事が基本ですが、食事だけでは不足しがちな栄養素をサプリメントで補うことも有効な対策の一つです。

栄養補助・サプリメント

ただし、サプリメントはあくまで補助的な役割であり、過剰摂取は健康を害する可能性もあるため注意が必要です。

毛髪の成長に必要な栄養素

健康な髪を育むためには、様々な栄養素が関与しています。産後の抜け毛が気になる場合は、特に以下の栄養素を意識して摂取することが推奨されます。

注目すべき栄養素とその働き

栄養素主な働き多く含む食品例
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛ケラチンの合成を助ける、細胞分裂促進牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類
鉄分毛母細胞への酸素供給に関与レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき
ビタミンB群頭皮の新陳代謝促進、皮脂分泌調整豚肉、レバー、うなぎ、玄米、納豆
ビタミンCコラーゲン生成促進、鉄分の吸収を助ける果物(柑橘類、キウイ)、野菜(パプリカ、ブロッコリー)

サプリメント選びのポイントと注意点

産後にサプリメントを利用する場合は、いくつかの点に注意が必要です。まず、授乳中の方は、母乳への影響を考慮する必要があります。特定の成分が高濃度で含まれるサプリメントは、赤ちゃんに影響を与える可能性があります。

そのため、産婦人科医や皮膚科医に相談し、授乳中でも安全に摂取できるものを選ぶことが重要です。

また、サプリメントは医薬品ではなく、あくまで食品(栄養補助食品)です。抜け毛に対する直接的な「治療効果」を謳うことはできません。過剰な期待はせず、バランスの取れた食事を補完するものとして捉えましょう。

品質や安全性についても確認が必要です。信頼できるメーカーの製品を選び、表示されている摂取目安量を守ることが大切です。複数のサプリメントを併用する場合は、成分の重複や相互作用にも注意しましょう。

不明な点があれば、専門家(医師、薬剤師、管理栄養士)に相談してください。

ヘアサイクル回復を促す低出力レーザー・LED照射療法

近年、薄毛治療の選択肢として注目されているのが、低出力レーザー(Low Level Laser Therapy, LLLT)やLED(Light Emitting Diode)を用いた光線療法です。

低出力レーザー・LED照射療法

特定の波長の光を頭皮に照射することで、毛母細胞の活性化や血行促進を図り、ヘアサイクルの正常化をサポートします。

産後の抜け毛に対しても、回復を後押しする治療法として皮膚科クリニックで導入されるケースが増えています。

低出力レーザー・LED療法の仕組み

低出力レーザーやLEDの光エネルギーは、頭皮の深層部にある毛乳頭細胞や毛母細胞に到達し、細胞内のミトコンドリアを活性化させると考えられています。

これにより、細胞のエネルギー産生(ATP産生)が促進され、毛髪の成長に必要なタンパク質の合成や細胞分裂が活発になります。

また、血管拡張作用による血行促進効果も期待でき、毛根への栄養供給が改善されることで、休止期にある毛髪を成長期へと移行させやすくし、抜け毛の期間を短縮する可能性があります。

光線療法の種類と特徴

種類特徴主な照射方法
低出力レーザー (LLLT)特定の波長(主に赤色)のレーザー光を使用。エネルギー密度が高い。クリニックでの専用機器による照射、家庭用デバイス
LED照射赤色や近赤外線のLED光を使用。広範囲への照射が可能。クリニックでの専用機器による照射、家庭用ヘルメット型・ブラシ型デバイス

治療の実際と期待できる効果

クリニックでの低出力レーザー・LED照射療法は、通常、週に1~2回程度の頻度で、数ヶ月間にわたって継続することが推奨されます。1回の照射時間は10分~20分程度です。痛みや熱感はほとんどなく、リラックスして治療を受けられます。

この治療法は、男女問わず様々なタイプの脱毛症に有効性が報告されており、産後脱毛症においても、ヘアサイクルの乱れを整え、毛髪のボリューム回復を早める効果が期待されます。

ただし、効果の現れ方には個人差があり、他の治療法(内服薬、外用薬など)と組み合わせることで、より高い効果を目指す場合もあります。治療費用や期間については、クリニックによって異なるため、事前のカウンセリングで確認しましょう。

家庭用の低出力レーザー・LED照射デバイスも市販されていますが、クリニックで使用される機器とは出力や性能が異なる場合があります。

家庭用デバイスの使用を検討する場合も、まずは皮膚科医に相談し、ご自身の状態に適しているか、安全な使用方法についてアドバイスを受けることをお勧めします。

血行促進マッサージと温活で土台から強い頭皮へ

頭皮の血行は、健康な髪を育むための土台となります。血流が滞ると、毛根に必要な酸素や栄養素が十分に行き渡らず、毛髪の成長が妨げられ、抜け毛の原因となることがあります。

特に産後は、ホルモンバランスの変化や育児による疲労、ストレスなどから血行が悪くなりやすい状態です。頭皮マッサージや体を温める「温活」を取り入れることで、血行を促進し、抜け毛の予防・改善につなげましょう。

自宅でできる簡単頭皮マッサージ

頭皮マッサージ

頭皮マッサージは、特別な道具がなくても、指の腹を使って簡単に行えます。リラックス効果も期待できるため、入浴時や就寝前など、リラックスできる時間に行うのがおすすめです。

マッサージのポイント

  • 指の腹を使う: 爪を立てず、指の腹で優しく圧をかけます。
  • 心地よい強さで: 痛気持ちいい程度の力加減で行います。
  • 頭皮全体を動かすように: 頭蓋骨から頭皮を剥がすようなイメージで、ゆっくりと揉みほぐします。
  • 血行促進を意識: 生え際から頭頂部へ、側頭部から頭頂部へ、襟足から頭頂部へと、下から上へ向かってマッサージすると効果的です。

シャンプー時にマッサージを取り入れるのも良い方法です。ただし、髪が濡れている状態では摩擦が起きやすいので、力を入れすぎないように注意しましょう。

頭皮用のマッサージオイルやローションを使用すると、滑りが良くなり、保湿効果も期待できます。

体を温める「温活」のすすめ

温活(体を温める習慣)

「冷えは万病のもと」と言われるように、体の冷えは血行不良を引き起こし、頭皮環境にも悪影響を与えます。特に女性は筋肉量が少なく、冷えやすい傾向があります。

産後はさらにホルモンバランスの影響で自律神経が乱れやすく、体温調節がうまくいかなくなることもあります。意識的に体を温める「温活」を習慣づけ、全身の血行を改善しましょう。

今日からできる温活アイデア

温活方法具体的なアクションポイント
入浴38~40℃程度のぬるめのお湯に15分以上浸かるリラックス効果も。入浴剤を活用するのも良い。
温かい飲み物白湯、生姜湯、ハーブティーなどを飲む冷たい飲み物は避ける。カフェインの摂りすぎに注意。
服装腹巻、レッグウォーマー、靴下などで下半身を温める首、手首、足首の「三首」を冷やさない。
軽い運動ウォーキング、ストレッチ、ヨガなどを行う筋肉量を増やし、基礎代謝を上げる。無理のない範囲で。

頭皮マッサージと温活は、特別な費用をかけずに自宅で手軽に始められるケアです。継続することで、頭皮環境が整い、抜け毛の改善だけでなく、心身のリラックスにもつながります。

産後の抜け毛を防ぐ食事バランスと鉄分補給プラン

産後の体は、出産による体力消耗と、その後の授乳によって、通常時よりも多くの栄養素を必要とします。栄養バランスの偏りや特定の栄養素の不足は、毛髪の健康に直接影響し、抜け毛を助長する原因となり得ます。

健やかな髪を取り戻し、維持するためには、バランスの取れた食事が不可欠です。特に、産後の女性が不足しがちな鉄分の補給は重要なポイントとなります。

バランスの取れた食事の基本

健康な髪の成長には、特定の栄養素だけを摂取するのではなく、様々な食品から多様な栄養素をバランス良く摂ることが大切です。

主食(炭水化物)、主菜(タンパク質)、副菜(ビタミン・ミネラル)を揃えることを意識しましょう。

食事バランスの考え方

食事の要素役割主な食品例
主食 (炭水化物)エネルギー源ご飯、パン、麺類 (玄米や全粒粉を選ぶと、ビタミン・ミネラルも補給しやすい)
主菜 (タンパク質)髪や体の組織を作る材料肉、魚、卵、大豆製品 (豆腐、納豆など)
副菜 (ビタミン・ミネラル)体の調子を整える、髪の成長をサポート野菜、きのこ類、海藻類 (緑黄色野菜を意識的に)

忙しい育児の中では、毎食完璧な食事を用意するのは難しいかもしれません。作り置きを活用したり、冷凍野菜や缶詰などを上手に取り入れたりするのも良いでしょう。無理なく続けられる範囲で、バランスを意識することが大切です。

産後に重要な鉄分補給

バランスの良い食事と鉄分補給

鉄分は、血液中のヘモグロビンの成分となり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。頭皮の毛母細胞も、十分な酸素供給があってこそ活発に働きます。

出産時の出血や授乳により、産後の女性は鉄欠乏状態に陥りやすく、これが抜け毛の一因となることがあります。

鉄分には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や穀物に含まれる「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄の方が吸収率が高いですが、非ヘム鉄もビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。

鉄分補給におすすめの食品

  • ヘム鉄: レバー、赤身の肉(牛肉、マグロ、カツオ)、あさり
  • 非ヘム鉄: ほうれん草、小松菜、ひじき、大豆製品、切り干し大根
  • 吸収を高める食品: 果物、野菜(ビタミンC)、肉、魚(動物性タンパク質)

食事からの摂取が難しい場合や、貧血の症状が見られる場合は、サプリメントでの補給も考えられますが、自己判断せず、必ず医師に相談してください。鉄分の過剰摂取は体に負担をかける可能性もあります。

皮膚科や産婦人科で血液検査を受け、ご自身の状態を確認した上で、適切な対策をとることが重要です。

睡眠・ストレス改善でホルモン揺らぎを整えるセルフケア習慣

産後の抜け毛には、ホルモンバランスの変動が大きく関わっていますが、睡眠不足や育児によるストレスも、その変動を助長し、抜け毛を悪化させる要因となります。

質の高い睡眠を確保し、ストレスを上手に管理することは、ホルモンバランスを整え、健やかな髪を取り戻すための重要なセルフケアです。

睡眠不足が髪に与える影響

髪の成長に欠かせない成長ホルモンは、主に睡眠中に分泌されます。

特に、入眠後の深いノンレム睡眠時に多く分泌されるため、睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、成長ホルモンの分泌が減少し、毛髪の成長サイクルに悪影響を与えます。

また、睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こし、血行不良や皮脂の過剰分泌などを招き、頭皮環境を悪化させる可能性もあります。

産後は、赤ちゃんの授乳やお世話で、まとまった睡眠時間を確保することが難しい時期です。しかし、可能な範囲で睡眠の質を高める工夫をすることが大切です。

睡眠の質を高める工夫

工夫具体的な方法
短時間でも休息赤ちゃんが寝ている間に一緒に昼寝をする、目を閉じて横になるだけでも効果あり
寝る前の環境寝室を暗く静かにする、スマートフォンやPCの使用を寝る1時間前にはやめる
リラックスぬるめのお風呂に入る、軽いストレッチをする、アロマを焚く、カフェインを避ける

ストレスと抜け毛の関係

ストレスは、自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こす大きな要因です。強いストレスや慢性的なストレスは、血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させたり、男性ホルモンの分泌を促して皮脂の過剰分泌を招いたりすることがあります。

これらは、抜け毛や薄毛につながる可能性があります。

慣れない育児や生活環境の変化、自身の体調の変化など、産後はストレスを感じやすい時期です。ストレスをゼロにすることは難しいですが、自分に合った方法で上手にストレスを発散し、溜め込まないようにすることが重要です。

ストレス軽減のためのヒント

  • 完璧を目指さない: 育児も家事も「まあ、いっか」と許容範囲を広げる。
  • 休息時間を確保する: 家族やパートナー、地域のサポートなどを利用して、短時間でも自分の時間を作る。
  • 話を聞いてもらう: パートナー、友人、家族、地域の相談窓口など、悩みを話せる相手を見つける。
  • 軽い運動や趣味: 気分転換になるような活動を取り入れる。
  • 専門家のサポート: ストレスが強いと感じる場合は、一人で抱え込まず、カウンセリングや心療内科など専門家の助けを求めることも検討する。

睡眠とストレスの管理は、産後の抜け毛対策だけでなく、心身の健康を保つためにも非常に大切です。無理のない範囲で、できることから少しずつ取り入れてみましょう。

産後脱毛症ゼロを目指す家庭でのヘアダメージ回避テクニック

産後の抜け毛はホルモンバランスの変化が主な原因ですが、日々のヘアケア習慣が髪や頭皮にダメージを与え、抜け毛を助長してしまうこともあります。

特に産後の髪はデリケートになっている可能性があるため、ダメージを避けるための工夫が必要です。ここでは、家庭でできるヘアダメージ回避のテクニックを紹介します。

洗髪時のダメージを最小限に

毎日のシャンプーは、頭皮や髪の汚れを落とすために必要ですが、方法によってはダメージの原因にもなります。

洗いすぎに注意

1日に何度もシャンプーすると、頭皮に必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥や刺激につながることがあります。基本的には1日1回で十分です。

ゴシゴシ洗わない

爪を立てたり、強くこすったりすると、頭皮や毛根を傷つけてしまいます。指の腹で優しくマッサージするように洗いましょう。

熱いお湯を避ける

高温のお湯は頭皮を乾燥させやすく、刺激になります。38℃前後のぬるま湯が適温です。

すすぎは丁寧に

シャンプー剤やコンディショナーが残っていると、毛穴詰まりや頭皮トラブルの原因になります。時間をかけてしっかりすすぎましょう。

ドライヤーとブラッシングの注意点

洗髪後のドライヤーや日常的なブラッシングも、使い方によっては髪に負担をかけます。

正しいドライヤーの使い方

正しいドライヤー方法
ポイント理由
タオルドライをしっかりドライヤー時間を短縮し、熱ダメージを軽減するため。ただし、ゴシゴシ擦らない。
根元から乾かす頭皮を湿ったままにせず、雑菌の繁殖を防ぐ。毛先は乾きやすいので後回しに。
ドライヤーを離す頭皮や髪から15~20cm程度離し、同じ場所に熱風を当て続けない。
温風と冷風を活用8割程度乾いたら冷風に切り替えると、キューティクルが引き締まり、ツヤが出る。

優しいブラッシング方法

ブラッシングは、髪の絡まりを解き、ホコリを落とし、頭皮の血行を促進する効果がありますが、無理に行うと切れ毛や抜け毛の原因になります。

毛先からとかす

根元から一気にとかすと、絡まっている部分に力がかかり、切れ毛の原因になります。まず毛先の絡まりを優しく解き、徐々に根元に向かってとかしましょう。

濡れた髪は特に優しく

髪が濡れているときはキューティクルが開いて傷みやすい状態です。目の粗いコームや手ぐしで優しく扱いましょう。

静電気を防ぐ

乾燥する季節は静電気が起きやすく、髪にダメージを与えます。天然毛のブラシや木製のコームを使う、洗い流さないトリートメントで保湿するなどの対策が有効です。

ヘアスタイルや生活習慣の見直し

日常的なヘアスタイルや生活習慣も、髪への負担に関わることがあります。

髪を強く引っ張る髪型を避ける

ポニーテールやきついお団子など、髪を強く引っ張り続ける髪型は、毛根に負担をかけ、「牽引性脱毛症」の原因になることがあります。時々は髪を下ろしたり、ゆるめのスタイルにしたりしましょう。

紫外線対策

強い紫外線は頭皮や髪にダメージを与えます。外出時は帽子や日傘を利用しましょう。

パーマやカラーリング

産後のデリケートな時期は、パーマ液やカラー剤の刺激が負担になることがあります。抜け毛が気になる間は控えるか、頭皮への負担が少ない方法を美容師に相談しましょう。

ダメージ回避テクニックを実践することで、産後の抜け毛の悪化を防ぎ、健康な髪が育つ土台を守ることができます。

よくある質問

産後の抜け毛はいつまで続きますか?

産後の抜け毛(産後脱毛症)は、一般的に産後2~3ヶ月頃から始まり、産後6ヶ月頃にピークを迎えることが多いです。その後、徐々に抜け毛は減少し、多くの場合、産後1年~1年半頃までには自然に元の状態に戻ります。

ただし、回復の時期には個人差があり、栄養状態、睡眠、ストレスなどの影響も受けます。

1年以上経っても抜け毛が改善しない場合や、脱毛範囲が広がっているように感じる場合は、他の原因も考えられるため、一度皮膚科クリニックにご相談ください。

授乳中でも使える育毛剤はありますか?

はい、授乳中でも比較的安全に使用できるとされる成分を含む育毛剤(外用薬)はあります。例えば、パントテニールエチルエーテルやセンブリエキス、グリチルリチン酸ジカリウムなどが配合された製品が挙げられます。

しかし、製品によっては母乳への影響が懸念される成分が含まれている可能性も否定できません。市販の製品を選ぶ際も、自己判断せず、購入前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

皮膚科では、授乳中であることを考慮し、安全性の高い外用薬の処方や、他の治療法(低出力レーザーなど)の提案を行います。ミノキシジル外用薬は、授乳中の使用は原則として推奨されません。

治療にはどのくらいの費用がかかりますか?

産後の抜け毛(産後脱毛症)の治療費用は、治療法や治療期間、通院頻度、そして保険適用の有無によって大きく異なります。

費用に関する目安

スクロールできます
治療法保険適用費用の目安(クリニックにより異なる)
診察・検査原因特定のため保険適用の場合あり初診料・再診料 + 検査費用 (数千円程度~)
内服薬(ビタミン剤など)症状により保険適用の場合あり / 自費の場合あり数千円/月~
外用薬(育毛剤)多くは自費診療数千円~1万円以上/月
低出力レーザー・LED照射自費診療1回あたり数千円~数万円 (コース設定の場合あり)

産後脱毛症そのものは生理的な現象とみなされることが多く、美容目的の治療と判断される場合は自費診療となることが一般的です。

ただし、抜け毛の原因として他の皮膚疾患などが疑われる場合の検査や治療には、保険が適用されることもあります。詳細な費用については、治療を開始する前に、必ずクリニックで確認してください。

シャンプーを変えるだけで抜け毛は減りますか?

シャンプーを変えるだけで産後の抜け毛が完全になくなるわけではありません。主な原因はホルモンバランスの変化にあるためです。しかし、頭皮環境を整えることは、抜け毛の悪化を防ぎ、健康な髪が育つための土台作りとして非常に重要です。

洗浄力の強すぎるシャンプーや、自分の肌に合わないシャンプーは、頭皮を乾燥させたり、炎症を起こしたりして、抜け毛を助長する可能性があります。

低刺激のアミノ酸系シャンプーなど、頭皮に優しいものを選び、正しい方法で洗髪することは、産後のデリケートな頭皮を健やかに保つ上で有効な対策と言えます。シャンプー選びに迷う場合は、皮膚科医に相談するのも良いでしょう。

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来院予約

当院(こばとも皮膚科:愛知県名古屋市栄)では、産後の抜け毛の治療を行っております。

以下のページで現地住所(アクセス)や診療時間および来院予約をいただけます。院長は女医(皮膚科専門医)ですのでご安心して治療いただけると思います。

診療時間・アクセス・来院予約について

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