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更年期の抜け毛(閉経期脱毛症)の治療と予防

更年期の抜け毛(閉経期脱毛症)の治療と予防

更年期を迎えると、多くの女性が体や心の変化とともに、髪の悩みも抱えやすくなります。特に抜け毛や薄毛は、女性ホルモンの変動と深く関わっており、「閉経期脱毛症」や「FAGA(女性男性型脱毛症)」として知られています。

Dr.小林智子

この記事では、当クリニックが提供する専門的な治療法と、ご自身で取り組める予防策について、多角的に解説します。諦める前に、まずは正しい知識を得て、適切なケアを始めましょう。

ホルモン補充+抗アンドロゲンで内側からケア – 内服薬戦略

更年期における女性の薄毛(FAGA)の大きな原因の一つは、女性ホルモンであるエストロゲンの減少と、相対的に男性ホルモンの影響が強まることです。

更年期と髪の悩みのイメージ

内服薬による治療は、このホルモンバランスの乱れに内側からアプローチし、抜け毛の進行を抑制し、発毛を促すことを目指します。

更年期における女性ホルモンの変動とFAGA

閉経が近づくにつれて卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌量が急激に減少します。

ホルモンバランス解説(エストロゲンとアンドロゲン)

このエストロゲンの減少は、髪の成長期を短縮させ、休止期に入る毛包の割合を増加させるため、全体として髪のボリュームダウンや薄毛につながります。

エストロゲン減少が招く頭髪への影響

エストロゲンは、髪の成長を促進し、その太さやハリ・コシを保つ上で重要な役割を担っています。そのため、エストロゲンが減少すると、髪が細くなったり、成長しにくくなったりするのです。これがFAGAの背景にある主要な要因と考えられています。

男性ホルモンの相対的優位と毛包の小型化(原因の一つ)

女性も副腎や卵巣で微量の男性ホルモン(アンドロゲン)を産生しています。エストロゲンが減少すると、この男性ホルモンの影響が相対的に強まります。

特定の男性ホルモンは毛包に作用し、毛包を徐々に小さく(小型化)させてしまうため、太く健康な髪が育ちにくくなります。この現象もFAGAの進行に関与します。

ホルモン補充療法(HRT)によるアプローチ

ホルモン補充療法(HRT)は、減少したエストロゲンを少量補うことで、更年期に伴う様々な症状を緩和する治療法です。

HRT(ホルモン補充療法)の概要

薄毛に対しても、エストロゲンを補給することで毛髪の成長期を維持し、抜け毛を減らす効果が期待できます。

HRTの目的と期待される効果

HRTの主な目的は、エストロゲン欠乏による症状の改善です。薄毛治療においては、髪の成長サイクルの正常化、毛髪の質の改善などが期待されます。

ただし、HRTは全身的な影響を考慮する必要があるため、婦人科医や専門医との連携のもと、慎重に適応を判断します。

クリニックでのHRT相談と検査の重要性

HRTを開始する前には、必ず医師による詳細な問診、婦人科系の検査(乳がん、子宮がん検診など)、血液検査などが必要です。当クリニックでは、患者様一人ひとりの健康状態や薄毛の悩みに合わせ、HRTの適否や種類、投与量を検討します。

HRTで用いられる主なホルモン剤の種類

ホルモン剤の種類特徴投与方法の例
エストロゲン製剤女性ホルモンそのものを補充内服、貼付剤、ジェル
エストロゲン・黄体ホルモン配合剤子宮のある女性に用いられる内服、貼付剤
組織選択的エストロゲン複合体(TSEC)骨や脂質代謝には良い影響を与え、乳房や子宮内膜への刺激を抑える内服

抗アンドロゲン薬(スピロノラクトンなど)の活用

抗アンドロゲン薬(スピロノラクトン)のイメージ

抗アンドロゲン薬は、男性ホルモンの作用を抑制する薬です。FAGA治療においては、毛包に対する男性ホルモンの影響を弱めることで、抜け毛を減らし、毛髪の成長を助ける効果が期待されます。代表的な薬剤としてスピロノラクトンがあります。

スピロノラクトンとは?FAGA治療への応用

スピロノラクトンは、元々は高血圧や浮腫の治療に用いられる利尿薬ですが、男性ホルモンの受容体への結合を阻害する作用も持っています。この作用を利用して、女性の薄毛治療、特にFAGAに対して処方されることがあります。

女性ホルモン値を直接上げるわけではないため、HRTが適さない方や、HRTと併用して効果を高めたい場合に選択肢となります。

内服薬治療の注意点とクリニックでの管理

スピロノラクトンなどの内服薬治療は、医師の診断と処方が必要です。副作用として、血圧低下、電解質異常(特にカリウム値の上昇)、生理不順などが起こる可能性があるため、定期的な血液検査や体調チェックが重要です。

当クリニックでは、安全に治療を進めるために、きめ細やかなフォローアップを行います。

ミノキシジル外用を核にしたスカルプローション活用 – 外用薬アプローチ

ミノキシジル外用薬の使用シーン

ミノキシジルは、男女問わず薄毛治療に広く用いられている成分で、特に女性のFAGAに対してもその有効性が認められています。頭皮に直接塗布する外用薬として、発毛を促進し、抜け毛を抑制する効果が期待できます。

クリニックでは、患者様の状態に合わせたミノキシジル製品の選択や、正しい使い方を指導します。

ミノキシジルの発毛効果と作用

ミノキシジルは、毛包に直接作用して、毛母細胞の増殖を促し、血流を改善することで発毛効果を発揮すると考えられています。

もともとは血管拡張薬として開発された経緯があり、頭皮の毛細血管を拡張させ、毛根への栄養供給を高める働きも期待されます。

ミノキシジルとは?女性の薄毛治療における位置づけ

ミノキシジルは、日本皮膚科学会のガイドラインでも女性型脱毛症に対して推奨されている治療成分です。市販薬としても入手可能ですが、クリニックではより効果的な濃度や、他の有効成分と組み合わせた処方を行うことがあります。

女性の場合、男性よりも低濃度の製品(例:1%~2%)から開始することが一般的です。

毛母細胞への働きかけと血流改善効果

ミノキシジルは、毛包の成長期を延長させ、休止期から成長期への移行を促進します。また、毛包周囲の血管新生を促し、血流を増加させることで、毛髪の成長に必要な酸素や栄養素が毛母細胞に行き渡りやすくなります。

これにより、細く弱った髪の毛が太く長く成長するのを助けます。

ミノキシジル外用薬の一般的な特徴

項目説明注意点
作用機序毛母細胞活性化、血流促進詳細な機序は完全には解明されていない部分もある
使用方法1日1~2回、乾燥した頭皮に塗布用法・用量を守ることが大切
効果発現までの期間通常3~6ヶ月程度個人差があり、継続使用が必要

効果的なミノキシジル外用薬の選び方と使い方

ミノキシジル外用薬の効果を最大限に引き出すためには、適切な製品を選び、正しい方法で使用し続けることが重要です。自己判断ではなく、専門医のアドバイスを受けることをお勧めします。

クリニック推奨のミノキシジル濃度と製品タイプ

女性のFAGA治療では、一般的に1%濃度のミノキシジル外用薬から開始することが多いですが、状態によっては2%やそれ以上の濃度のものが推奨されることもあります。

製品タイプには、ローションタイプ、フォームタイプなどがあり、使用感や頭皮の状態に合わせて選択します。当クリニックでは、医学的根拠に基づき、最適な製品をご提案します。

正しい塗布方法と継続使用の重要性

ミノキシジル外用薬は、薄毛が気になる部分だけでなく、その周囲も含めて頭皮に直接、均一に塗布することが大切です。塗布後はマッサージを軽く行うと浸透が促されます。

効果を実感するまでには数ヶ月かかることが多く、効果維持のためには継続的な使用が必要です。途中で使用を中止すると、再び抜け毛が進行する可能性があります。

ミノキシジル以外の有効成分を含む頭皮ケアローション

ミノキシジル以外にも、頭皮環境を整えたり、毛髪の成長をサポートしたりする成分を含むスカルプローションがあります。

これらをミノキシジルと併用したり、ミノキシジルが体質に合わない場合の代替として検討したりすることがあります。

パントガール(内服)との併用も考慮した外用剤の選択

パントガールは、女性のびまん性脱毛症や分娩後脱毛症などに用いられる内服薬で、アミノ酸、ビタミンB群、ケラチンなど毛髪の成長に必要な栄養素を補給します。

ミノキシジル外用薬とパントガール内服薬を組み合わせることで、内外からのアプローチが可能となり、より高い治療効果が期待できる場合があります。クリニックでは、このような併用療法についてもご相談いただけます。

頭皮環境を整えるその他の成分

頭皮の炎症を抑える成分(グリチルリチン酸など)、保湿成分(ヒアルロン酸、セラミドなど)、血行促進成分(センブリエキス、ビタミンE誘導体など)などが配合されたスカルプローションも、健康な髪を育むための頭皮ケアとして有効です。

シャンプー後の清潔な頭皮に使用することで、より効果を発揮します。

低出力レーザー&LED照射で毛包を刺激 ― 物理療法

薬物療法に加え、物理的な刺激によって毛包を活性化させる治療法も注目されています。

低出力レーザー(Low-Level Laser Therapy: LLLT)やLED(Light Emitting Diode)照射は、非侵襲的で痛みが少なく、副作用のリスクも低いとされるため、FAGA治療の選択肢の一つとしてクリニックで導入されています。

光線療法の髪への働きかけ

特定の波長の光エネルギーを頭皮に照射することで、毛母細胞のミトコンドリアを活性化させ、細胞分裂を促進したり、血流を改善したりする効果が期待されます。

これにより、毛髪の成長期が延長され、太く健康な髪の育成をサポートします。

低出力レーザーが毛母細胞を活性化する仕組み

低出力レーザーは、毛包の深部にまで到達し、細胞内のエネルギー産生工場であるミトコンドリアに吸収されます。これによりATP(アデノシン三リン酸)の産生が促進され、細胞活動が活発になります。

結果として、毛母細胞の増殖が促され、休止期にあった毛包が成長期へと移行しやすくなると考えられています。

LED照射の色と効果の違い

LED照射では、使用する光の色(波長)によって期待される効果が異なります。例えば、赤色LEDは血行促進やコラーゲン産生促進、抗炎症作用などが報告されており、毛髪治療にも応用されています。

青色LEDには殺菌作用があり、頭皮の炎症やニキビの改善に用いられることがあります。クリニックでは、目的に応じて適切な波長のLEDを選択します。

光線療法の主な期待効果

  • 毛母細胞の活性化
  • 頭皮の血行促進
  • 毛髪の成長期延長
  • 炎症の抑制

クリニックで行う低出力レーザー・LED治療

クリニックでは、医療用の専門機器を用いて、効果的かつ安全に低出力レーザーやLED照射治療を行います。治療は通常、週に1~2回程度の頻度で、数ヶ月間継続することが推奨されます。

治療の頻度と期間の目安

効果を実感するまでには個人差がありますが、一般的には3ヶ月から6ヶ月程度の継続治療が必要です。治療頻度は、初期は週に1~2回、その後は状態を見ながら月数回程度に調整することが多いです。

医師が頭皮の状態を定期的に確認し、最適な治療計画を提案します。

他の治療法との組み合わせ(対策の強化)

低出力レーザーやLED照射は、ミノキシジル外用薬やホルモン療法、栄養療法など、他のFAGA治療と組み合わせることで、相乗効果が期待できます。複数のアプローチを組み合わせることで、より包括的な薄毛対策が可能になります。

当クリニックでは、個々の状態に合わせたオーダーメイドの治療プランを重視しています。

家庭用機器の可能性と注意点

近年では、家庭用の低出力レーザー照射器やLED美容器も市販されています。手軽にケアできるというメリットがありますが、効果や安全性については製品ごとに異なるため、選択には注意が必要です。

家庭用機器を選ぶ際のポイント

家庭用機器を選ぶ際は、医療機器認証を受けているか、臨床データがあるか、出力や波長が適切かなどを確認することが重要です。また、使用方法や照射時間を守り、過度な期待はせず、あくまで補助的なケアとして位置づけるのが良いでしょう。

クリニックでの指導の必要性

家庭用機器を使用する場合でも、まずは専門医に相談し、自分の状態に適しているか、正しい使い方は何かといったアドバイスを受けることをお勧めします。

誤った使用は効果がないばかりか、稀に頭皮トラブルを引き起こす可能性も否定できません。クリニックでは、家庭用機器に関するご相談にも応じています。

たんぱく質・鉄・ビタミンD強化で毛母細胞を支える ― 栄養療法

健康な髪を育むためには、バランスの取れた食事が基本です。特に、髪の主成分であるたんぱく質、毛母細胞の分裂に必要な鉄分、そして毛包の機能維持に関わるビタミンDは、意識して摂取したい栄養素です。

栄養療法(たんぱく質・鉄・ビタミンD)

これらが不足すると、髪が細くなったり、抜けやすくなったりする原因の一つとなります。

健康な髪の毛の主成分「ケラチン」とたんぱく質

髪の毛の約80~90%は、「ケラチン」というたんぱく質で構成されています。ケラチンは18種類のアミノ酸から成り立っており、これらのアミノ酸を食事から十分に摂取することが、丈夫で美しい髪を作るための第一歩です。

毎日の食事で意識したいたんぱく質の摂取

肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品など、良質なたんぱく質を毎食バランス良く取り入れることが大切です。特に、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を偏りなく摂取することで、ケラチンの合成に必要なアミノ酸を効率よく補給できます。

アミノ酸スコアの高い食品の選び方

アミノ酸スコアとは、食品に含まれる必須アミノ酸のバランスを示す指標です。スコアが100に近いほど、体内でのたんぱく質合成に効率よく利用される良質なたんぱく質と言えます。

鶏肉、鮭、卵、牛乳、大豆などはアミノ酸スコアが高い代表的な食品です。

髪の成長に重要な栄養素

栄養素主な役割多く含む食品例
たんぱく質(ケラチン)髪の主成分、構造維持肉、魚、卵、大豆製品
鉄分毛母細胞への酸素供給、細胞分裂促進レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき
ビタミンD毛包の成長サイクル調整、免疫機能鮭、いわし、きのこ類、卵黄

鉄分不足と抜け毛の関係

鉄分は、血液中のヘモグロビンの構成成分であり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。頭皮や毛母細胞も酸素を必要としており、鉄分が不足すると毛母細胞の働きが低下し、抜け毛や薄毛の原因となることがあります。

女性に多い隠れ貧血とFAGAへの影響(原因の一つ)

月経のある女性は特に鉄分が不足しやすく、自覚症状がない「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)」の方も少なくありません。フェリチン(貯蔵鉄)の値が低いと、髪の成長に十分な鉄が供給されず、FAGAの症状を悪化させる可能性があります。

クリニックでは血液検査で鉄分の状態も確認します。

鉄分の効率的な摂取方法と食事メニュー例

鉄分には、肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜や穀物に含まれる非ヘム鉄があります。ヘム鉄の方が吸収率が高いですが、非ヘム鉄もビタミンCや動物性たんぱく質と一緒に摂取することで吸収率が向上します。

例えば、レバニラ炒め(レバー:ヘム鉄、ニラ:ビタミンC)、あさりの味噌汁(あさり:ヘム鉄)などが良いでしょう。

ビタミンDの毛髪への役割

ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けることで知られていますが、近年では免疫機能の調整や細胞の増殖・分化にも関与することがわかってきました。

毛髪に関しても、毛包の成長サイクル(毛周期)の調節に重要な役割を果たしている可能性が示唆されています。

ビタミンDと毛包サイクルの関連性

研究段階ではありますが、ビタミンD受容体は毛包に存在し、毛髪の成長期から退行期への移行を制御する働きがあると考えられています。

ビタミンDが不足すると、毛包が正常なサイクルを維持できなくなり、休止期が長引いたり、成長期が短縮したりして薄毛につながる可能性があります。

日光浴と食事からのビタミンD確保

ビタミンDは、日光(紫外線)を浴びることで皮膚でも合成されます。適度な日光浴(1日15~30分程度、夏場は木陰でも可)はビタミンD生成に有効です。食事からは、鮭、いわし、さんまなどの青魚、きのこ類、卵黄などから摂取できます。

サプリメントを利用する場合は、過剰摂取に注意し、医師に相談しましょう。

ストレス緩和と深睡眠でホルモンゆらぎを整える ― 生活改善

ストレス・睡眠改善

更年期はただでさえホルモンバランスが大きく変動する時期です。これに加えて、過度なストレスや睡眠不足が重なると、自律神経の乱れを介してさらにホルモンバランスを悪化させ、抜け毛や薄毛を助長する可能性があります。

心身の調和を保つ生活習慣は、FAGA対策においても非常に重要です。

ストレスが引き起こすホルモンバランスの乱れ

ストレスを感じると、体は対抗するためにコルチゾールというホルモンを分泌します。

このコルチゾールが慢性的に高い状態が続くと、性ホルモンのバランスにも影響を及ぼし、エストロゲンの働きを弱めたり、男性ホルモンの影響を強めたりすることがあります。

慢性的なストレスと抜け毛の深刻な関係

持続的なストレスは、血管を収縮させ、頭皮への血流を悪化させます。これにより、毛母細胞に必要な栄養や酸素が届きにくくなり、髪の成長が妨げられます。

また、ストレスは免疫系にも影響を与え、頭皮環境の悪化を招くこともあります。

自律神経と女性ホルモンの相互作用

自律神経と女性ホルモンは、脳の視床下部という同じ司令塔によってコントロールされており、互いに密接に影響し合っています。

ストレスによって自律神経が乱れると、その影響がホルモン分泌にも及び、エストロゲンの減少を加速させたり、FAGAの進行を早めたりする可能性があります。

ストレスが髪に与える影響の経路

要因影響結果
コルチゾール増加ホルモンバランスの乱れエストロゲン作用低下、男性ホルモン作用相対的増加
血管収縮頭皮血流低下毛母細胞への栄養・酸素供給不足
免疫系への影響頭皮環境の悪化炎症、フケ、かゆみなど

質の高い睡眠によるホルモン環境の正常化

睡眠中には、成長ホルモンをはじめとする様々なホルモンが分泌され、体の修復や調整が行われます。質の高い睡眠を確保することは、ホルモンバランスを整え、髪の健やかな成長をサポートするために不可欠です。

睡眠不足がエストロゲン分泌に与える影響

慢性的な睡眠不足は、ホルモン分泌のリズムを乱し、エストロゲンの分泌低下につながることがあります。特に、深いノンレム睡眠中に多く分泌される成長ホルモンは、細胞の修復や再生を促し、毛母細胞の活性化にも関与しています。

深睡眠を促す生活習慣と寝室環境

質の高い睡眠を得るためには、規則正しい生活リズム、就寝前のカフェインやアルコールの制限、スマートフォンなどの光刺激を避けることが大切です。また、寝室を暗く静かで快適な温度・湿度に保つことも、深い睡眠を促す上で重要です。

快眠のためのヒント

  • 毎日同じ時刻に寝起きする
  • 寝る前にリラックスする時間を作る(読書、音楽、軽いストレッチなど)
  • 寝室の温度・湿度を快適に保つ
  • 自分に合った寝具を選ぶ

日常に取り入れやすいリフレッシュ方法

ストレスを完全に無くすことは難しいですが、上手に付き合い、こまめに解消していくことが大切です。自分に合ったリフレッシュ方法を見つけ、日常生活に取り入れましょう。

趣味や運動を通じたストレス対策

趣味に没頭する時間を持つことや、ウォーキング、ヨガ、水泳などの適度な運動は、気分転換になり、ストレスホルモンの低減に役立ちます。特に運動は血行を促進し、頭皮環境の改善にもつながります。

マインドフルネスや呼吸法の実践

マインドフルネス瞑想や深呼吸は、自律神経のバランスを整え、心を落ち着かせる効果があります。数分間でも意識的に行うことで、ストレスに対する抵抗力を高めることが期待できます。

これらは特別な道具も場所も必要とせず、手軽に実践できるストレス対策です。

頭皮マッサージと温冷ケアで血流アップ ― ホームリチュアル

日々の生活の中で手軽に取り入れられる頭皮ケアは、FAGAの進行を緩やかにし、治療効果を高める上で役立ちます。特に頭皮マッサージや温冷ケアは、頭皮の血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくする効果が期待できます。

正しい方法で行うことが大切です。

頭皮マッサージのメリットと正しい方法

頭皮マッサージ・ホームケア

頭皮マッサージは、硬くなった頭皮を柔らかくし、血流を改善することで、毛母細胞の活性化をサポートします。リラックス効果もあり、ストレス軽減にもつながります。

血行促進と毛根への栄養供給

マッサージによって頭皮の毛細血管が刺激されると、血流が良くなります。これにより、髪の成長に必要な酸素や栄養素が毛根部に行き渡りやすくなり、健康な髪の育成を助けます。また、老廃物の排出も促されます。

指の腹を使った優しいマッサージテクニック

頭皮マッサージは、爪を立てず、指の腹を使って優しく行うことが基本です。頭皮全体を、生え際から頭頂部へ、側頭部から頭頂部へと、下から上に引き上げるようなイメージで、心地よい圧で揉みほぐします。

シャンプー時や、育毛剤を塗布した後に行うと効果的です。

頭皮マッサージのポイント

ポイント内容目的
タイミングシャンプー時、育毛剤塗布後、リラックスタイムなど習慣化しやすく、効果を高める
強さ心地よいと感じる程度の圧頭皮を傷つけない、リラックス効果
方法指の腹で円を描くように、または頭皮を軽くつまむように血行促進、頭皮の柔軟性向上

温冷刺激による頭皮の活性化

温かい刺激と冷たい刺激を交互に与えることで、血管が拡張と収縮を繰り返し、血行が促進されます。これにより、頭皮の新陳代謝が活発になり、毛根の働きをサポートします。

シャンプー時の温冷シャワーの効果

シャンプーのすすぎの際に、お湯と冷水を交互に頭皮にかける温冷シャワーは、手軽にできる血行促進法です。最後は冷水で引き締めると、毛穴が引き締まり、頭皮がスッキリします。

ただし、急激な温度変化は刺激になる場合もあるため、体調を見ながら無理のない範囲で行いましょう。

頭皮ケアを意識した入浴法

湯船にゆっくり浸かることは、全身の血行を促進し、リラックス効果も得られるため、頭皮環境にも良い影響を与えます。入浴中に頭皮マッサージを取り入れるのも効果的です。

入浴後は、頭皮をしっかりと乾かすことが大切です。湿ったまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなります。

頭皮環境を健やかに保つシャンプー選び

毎日のシャンプーは、頭皮の汚れを落とし、清潔に保つための基本的なケアです。しかし、洗浄力が強すぎるシャンプーや、自分の頭皮タイプに合わないシャンプーは、かえって頭皮環境を悪化させ、抜け毛の原因になることもあります。

アミノ酸系などマイルドな洗浄成分のシャンプー

更年期の女性の頭皮は乾燥しやすく、デリケートになっていることがあります。そのため、洗浄力が穏やかで頭皮への刺激が少ないアミノ酸系やベタイン系の洗浄成分を主としたシャンプーを選ぶのがおすすめです。

必要な皮脂まで奪い過ぎず、頭皮のうるおいを保ちながら洗浄できます。

頭皮の乾燥やかゆみを防ぐ保湿成分

シャンプーに、ヒアルロン酸、セラミド、コラーゲンなどの保湿成分や、グリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症成分が配合されていると、頭皮の乾燥やフケ、かゆみを防ぎ、健やかな頭皮環境を維持するのに役立ちます。

FAGAの方は、頭皮ケアを重視したシャンプー選びが重要です。

効果判定と副作用チェックを並走させる ― 定期フォローアップ

FAGA治療は、効果が現れるまでに時間がかかることが多く、また、使用する薬剤によっては副作用の可能性も考慮しなければなりません。

そのため、治療を開始したらそれで終わりではなく、定期的にクリニックを受診し、治療効果の客観的な評価と、副作用の有無を確認していくことが非常に重要です。医師との連携のもと、根気強く治療を続けることが成功の鍵となります。

治療効果を客観的に評価する重要性

自分自身の感覚だけでは、治療効果を正確に把握することは難しい場合があります。クリニックでは、専門的な視点から頭皮や毛髪の状態を評価し、治療が順調に進んでいるかを確認します。

定期フォローアップ・遺伝子検査の相談シーン

定期的な頭皮写真撮影と比較

治療開始前と、治療開始後の定期的なタイミング(例:1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後など)で、頭皮の同じ部位を同じ条件で写真撮影し、比較することで、毛量の変化や髪質の改善度合いを客観的に評価します。

これにより、治療のモチベーション維持にもつながります。

クリニックでのマイクロスコープ検査

マイクロスコープ(拡大鏡)を用いて頭皮や毛穴の状態、毛髪の太さなどを詳細に観察します。これにより、肉眼では分かりにくい初期の変化や、毛包の状態、頭皮の炎症の有無などを把握し、治療方針の調整に役立てます。

フォローアップ時の主なチェック項目

項目確認内容目的
問診自覚症状の変化、体調、生活習慣治療効果の実感、副作用の有無、生活指導
視診・触診抜け毛の量、髪のハリ・コシ、頭皮の色や状態客観的な毛髪・頭皮状態の評価
画像検査頭皮写真、マイクロスコープ経時的な変化の記録、詳細な状態把握
血液検査(必要時)ホルモン値、肝機能、腎機能、電解質など内服薬の副作用モニタリング、全身状態の確認

副作用の早期発見と対策

どのような治療法にも、効果だけでなく副作用のリスクが伴う可能性があります。特に内服薬や一部の外用薬では、注意が必要です。定期的なチェックにより、万が一副作用が現れた場合でも早期に対応できます。

各治療法で起こりうる副作用の知識

治療開始前に、使用する薬剤や治療法によって起こりうる副作用について、医師から十分な説明を受け、理解しておくことが大切です。

例えば、ミノキシジル外用薬では初期脱毛やかゆみ、かぶれ、ホルモン補充療法では不正出血や乳房の張り、スピロノラクトンでは血圧低下や高カリウム血症などが報告されています。

些細な変化も見逃さない自己チェックと医師への相談

治療中に何か普段と違う体調の変化や気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに医師に相談してください。早期に発見し対処することで、副作用の重篤化を防ぐことができます。

治療計画の見直しと継続的なサポート

FAGA治療は、個々の患者様の状態や反応によって、治療計画を柔軟に見直していく必要があります。定期的なフォローアップは、そのための重要な機会です。

効果に応じた治療法の調整(ミノキシジル濃度の変更など)

一定期間治療を継続しても期待した効果が得られない場合や、逆に効果が十分で維持療法に移行できる場合など、状況に応じて治療法を調整します。

例えば、ミノキシジル外用薬の濃度を変更したり、内服薬の種類や量を調整したり、他の治療法との併用を検討したりします。

患者様との対話を通じた二人三脚の治療

当クリニックでは、患者様とのコミュニケーションを重視し、不安や疑問に丁寧にお答えしながら、納得のいく治療を進めていくことを心がけています。治療は長期間にわたることが多いため、信頼関係を築き、二人三脚でゴールを目指します。

遺伝子検査で“私仕様”の治療薬を選ぶ手がかり

近年、遺伝子情報を活用した個別化医療が様々な分野で進んでいます。

FAGA(女性男性型脱毛症)の分野でも、遺伝子検査を行うことで、薄毛のリスクや特定の治療薬への反応性を予測し、より個人に合った治療法を選択するための手がかりを得ようとする試みが行われています。

FAGA関連遺伝子の解析とは

FAGAの発症には、複数の遺伝子が関与していると考えられています。遺伝子検査では、これらの関連遺伝子を解析し、個々人が持つ遺伝的な傾向を調べます。

薄毛リスクや薬剤感受性に関わる遺伝的要因

例えば、男性ホルモン受容体の感受性に関わる遺伝子や、ミノキシジルの効果に関与するとされる酵素の遺伝子多型などを調べることで、FAGAになりやすい体質かどうか、あるいはミノキシジルが効きやすいタイプかどうかなどをある程度予測できる可能性があります。

遺伝子情報に基づく個別化治療の可能性

遺伝子検査の結果は、あくまで治療法選択の一つの参考情報です。

しかし、将来的には、遺伝情報に基づいて「この患者さんにはこの治療法が最も効果的で副作用が少ないだろう」といった、より精密な個別化治療(オーダーメイド治療)の実現につながることが期待されています。

遺伝子検査でわかる可能性のあること(例)

検査項目(例)わかること(可能性)治療への応用(参考)
アンドロゲン受容体遺伝子男性ホルモンへの感受性抗アンドロゲン薬の選択など
SULT1A1遺伝子(硫酸転移酵素)ミノキシジルの効果予測ミノキシジル治療の適応判断など
その他関連遺伝子特定の栄養素の必要性など栄養指導の個別化など
※遺伝子検査の結果は確定的ではなく、あくまで傾向を示すものです。

遺伝子検査でわかること

現在の遺伝子検査でわかることは限定的であり、結果の解釈には専門的な知識が必要です。しかし、治療方針を決定する上での有益な情報の一つとなり得ます。

ホルモン感受性やミノキシジル反応性の予測

前述の通り、特定の遺伝子型を持つ人は、男性ホルモンの影響を受けやすかったり、ミノキシジルによる発毛効果が出やすかったりする傾向が示唆されています。これらの情報は、治療法を選択する際の判断材料の一つになります。

特定の栄養素の必要性に関する情報

一部の遺伝子検査では、例えばビタミンDの代謝に関わる遺伝子などを調べることで、その栄養素が不足しやすい体質かどうか、積極的に摂取すべきかどうかなどの情報が得られることもあります。

これは、栄養療法の個別化に役立つ可能性があります。

クリニックでの遺伝子検査の進め方と活用法

当クリニックでも、FAGA遺伝子検査を希望される患者様にご提供しています。検査は簡単な手順で行うことができます。

検査の流れと結果の解釈

多くの場合、口腔内(頬の内側)の粘膜を綿棒のようなものでこすって細胞を採取するか、少量の唾液を採取するだけで検査は完了します。採取した検体は専門の検査機関に送られ、数週間で結果が報告されます。

結果については、医師が専門的な知見に基づいて丁寧に説明し、今後の治療方針にどのように活かせるかを一緒に考えます。

治療方針決定における参考情報としての位置づけ

遺伝子検査の結果は、治療法を決定する上での絶対的なものではありません。あくまで、問診、視診、各種検査結果などと総合的に判断するための一つの参考情報として活用します。

遺伝的な要因だけでなく、生活習慣やホルモンバランスなど、FAGAの原因は多岐にわたるため、総合的なアプローチが重要です。

よくある質問

更年期の抜け毛治療はいつから始めるべきですか?

抜け毛や薄毛が気になり始めたら、できるだけ早めに専門医にご相談いただくことをお勧めします。FAGAは進行性の脱毛症であるため、早期に適切な対策を始めることで、進行を遅らせ、より良い治療効果が期待できます。

「まだ大丈夫だろう」と自己判断せず、まずは現状を正確に把握することが大切です。

ホルモン補充療法に抵抗があるのですが、他の方法はありますか?

はい、ホルモン補充療法(HRT)以外にも、ミノキシジル外用薬、スピロノラクトンなどの抗アンドロゲン薬内服、低出力レーザー治療、栄養療法、生活習慣の改善など、様々な治療選択肢があります。

HRTが適さない方や希望されない方には、これらの治療法を単独で、あるいは組み合わせて行うことを提案します。

ミノキシジル外用薬はどのくらいで効果が出ますか?副作用は?

ミノキシジル外用薬の効果が現れるまでには、通常3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要です。効果の現れ方には個人差があります。

主な副作用としては、使用開始初期に一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」や、頭皮のかゆみ、かぶれ、フケなどが見られることがあります。多くは軽微で一過性ですが、症状が強い場合や長引く場合は医師にご相談ください。

ミノキシジル使用時の注意点

  • 用法・用量を守る
  • 初期脱毛の可能性を理解しておく
  • 頭皮に異常を感じたら相談する
食事や生活習慣の改善だけで抜け毛は止まりますか?

バランスの取れた食事や質の高い睡眠、ストレス管理などの生活習慣の改善は、髪の健康を保ち、抜け毛を予防する上で非常に重要です。

しかし、FAGAのようにホルモンバランスの乱れや遺伝的要因が関与している場合、生活習慣の改善だけでは進行を完全に止めることが難しい場合もあります。

生活習慣の改善は治療の基本として取り組みつつ、必要に応じて専門的な治療を併用することが、より効果的な対策となります。

クリニックでの治療は保険適用されますか?

更年期の抜け毛(FAGA)の治療は、美容目的とみなされることが多く、原則として健康保険の適用外となり、自費診療となります。

ただし、頭皮の炎症や湿疹など、他の皮膚疾患を伴う場合は、その部分の診察や治療に保険が適用されることもあります。治療費については、カウンセリングの際に詳しくご説明いたしますので、ご不明な点はお気軽にお尋ねください。

参考文献

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来院予約

当院(こばとも皮膚科:愛知県名古屋市栄)では、更年期の抜け毛の治療を行っております。

以下のページで現地住所(アクセス)や診療時間および来院予約をいただけます。院長は女医(皮膚科専門医)ですのでご安心して治療いただけると思います。

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