最近、頭皮のかゆみや抜け毛が気になり始めた方はいませんか? もしかしたらそれは、毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん)性脱毛症という、少し珍しい脱毛症のサインかもしれません。
この脱毛症は、毛穴の周囲に炎症が起こり、進行すると毛穴が失われてしまう瘢痕性脱毛症の一種です。

この記事では、毛孔性扁平苔癬性脱毛症の様々な症状について詳しく解説します。ご自身の状態と照らし合わせながら、早期発見・早期対処の参考にしてください。
「最近なんだか頭皮がかゆい…」それ、見過ごせない初期サインかも?

毛孔性扁平苔癬性脱毛症の初期症状として、頭皮のかゆみを訴える方は少なくありません。単なる乾燥やシャンプーの洗い残しと思いがちですが、持続的なかゆみや、特定の場所が繰り返し痒くなる場合は注意が必要です。
このかゆみは、毛穴の周囲で起きている炎症反応の現れかもしれません。
頭皮のかゆみの特徴
毛孔性扁平苔癬性脱毛症に伴うかゆみは、チリチリとした刺激感や、ムズムズするような不快感を伴うことがあります。特に、髪の生え際や頭頂部など、特定の部位にかゆみが集中することも特徴の一つです。
かゆみの程度は個人差があり、軽度で気づかない方もいれば、日常生活に支障をきたすほど強いかゆみを感じる方もいます。
かゆみを感じやすい部位
部位 | 特徴 | 考えられる要因 |
---|---|---|
髪の生え際(前頭部・側頭部) | 比較的初期からかゆみが出やすい | 炎症が起こりやすい部位の一つ |
頭頂部 | 進行とともに顕著になることがある | 毛包への影響が集中しやすい |
その他(後頭部など) | 個人差がある | 炎症の広がりによる |
かゆみと炎症の関係
頭皮のかゆみは、毛孔(毛穴)周囲の炎症が主な原因です。炎症が起こると、かゆみを引き起こす化学物質が放出され、神経を刺激します。この炎症を放置すると、毛包組織が破壊され、瘢痕化(はんこんか)につながる可能性があります。
そのため、初期のかゆみであっても、軽視せずに専門医に相談することが大切です。
見過ごしやすい初期のかゆみ
初期のかゆみは、他の頭皮トラブルと区別がつきにくいことがあります。例えば、脂漏性皮膚炎や乾燥性皮膚炎などでもかゆみは生じます。
しかし、毛孔性扁平苔癬性脱毛症の場合、かゆみに加えて、後述するような毛穴周囲の赤みや小さなブツブツ(丘疹)が見られることがあります。これらのサインを見逃さないようにしましょう。
髪の分け目が広くなった?抜け毛が気になる場所と特徴

毛孔性扁平苔癬性脱毛症が進行すると、抜け毛が増え、髪のボリュームダウンが目立つようになります。特に、髪の分け目が以前より広がって見えたり、地肌が透けて見えるようになったりすることで、異変に気づく方が多いです。
抜け毛の場所や特徴を把握することは、診断の手がかりとなります。
抜け毛が目立ちやすい部位
この脱毛症では、特定の部位に抜け毛が集中する傾向があります。多くの場合、前頭部から頭頂部にかけて、特に髪の生え際や分け目周辺で症状が顕著になります。側頭部や後頭部に広がることもありますが、比較的まれです。
主な好発部位
- 前頭部の生え際
- 頭頂部の分け目
- 側頭部(進行した場合)
抜け毛のパターンと特徴
毛孔性扁平苔癬性脱毛症による抜け毛は、毛根からごっそりと抜けるというよりは、炎症によって毛包が破壊され、新しい髪が生えてこなくなることで薄毛が進行します。
そのため、初期には細く短い毛が増え、徐々に毛量が減少していくように感じられます。また、脱毛斑(円形脱毛症のような限局した脱毛)を形成することは比較的少ないですが、複数の小さな脱毛部位が融合して広範囲に及ぶこともあります。
抜け毛の進行パターン例
進行段階 | 見られる特徴 | 注意点 |
---|---|---|
初期 | 特定の部位で抜け毛が増える、髪が細くなる | 他の脱毛症との区別がつきにくい |
中期 | 分け目が広がる、地肌が透けて見える | 毛孔周囲の赤みや鱗屑を伴うことが多い |
進行期 | 脱毛範囲が拡大し、毛穴が消失する | 瘢痕化が進むと毛髪再生が困難になる |
眉毛や他の体毛への影響
毛孔性扁平苔癬は頭皮だけでなく、眉毛、腋毛、陰毛など他の部位の毛包にも影響を及ぼすことがあります。特に眉毛の外側3分の1が薄くなる「眉毛外側脱毛」は、この疾患に特徴的な所見の一つとして知られています。
頭皮の症状と合わせて、他の部位の毛髪の状態も確認することが重要です。
毛穴の周りが赤い、ポツポツ…頭皮に現れるSOSサイン
毛孔性扁平苔癬性脱毛症の診断において、頭皮の視診は非常に重要です。毛穴の周囲に現れる赤み(紅斑)や、小さな盛り上がり(丘疹)、フケのようなもの(鱗屑)は、炎症が起きていることを示すSOSサインです。
これらの所見は、かゆみや抜け毛と並んで、この疾患を疑うきっかけとなります。
毛孔周囲の紅斑

炎症が起きている毛穴の周りは、赤みを帯びることがあります。この紅斑は、毛穴を取り囲むように現れるのが特徴で、一つ一つの毛孔が独立して赤く見えることもあれば、複数の毛孔の炎症が融合して広範囲に赤みが広がることもあります。
特に活動期には、この紅斑が顕著になる傾向があります。
毛孔性角化性丘疹
毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん)性脱毛症に特徴的な所見として、毛孔一致性の角化性丘疹(かくかせいきゅうしん)があります。これは、毛穴の開口部に角質が詰まって硬くなり、小さなトゲやザラザラとした突起のように見えるものです。

触るとブツブツとした感触があり、炎症を伴う場合は赤みを帯びることもあります。この丘疹は、毛包がダメージを受けていることを示す重要なサインです。
頭皮の視覚的サイン
サイン | 見た目の特徴 | 意味すること |
---|---|---|
毛孔周囲の紅斑 | 毛穴の周りが赤くなる | 毛包周囲の炎症 |
毛孔性角化性丘疹 | 毛穴に一致した小さなブツブツ、ザラザラ感 | 毛孔の角化異常、炎症 |
鱗屑 | フケのような細かい皮膚片 | 炎症や乾燥による角質の剥離 |
鱗屑(りんせつ)の出現
炎症や乾燥が続くと、頭皮の表面からフケのような鱗屑が剥がれ落ちてくることがあります。毛孔性扁平苔癬性脱毛症の鱗屑は、毛穴の周囲に付着していることが多く、やや厚みがあって剥がれにくいこともあります。
脂漏性皮膚炎のベタついた鱗屑とは異なり、乾燥した細かい鱗屑が特徴的です。
ただの抜け毛じゃない?「消えてしまう毛穴」に要注意
毛孔性扁平苔癬性脱毛症の最も深刻な特徴は、進行すると毛包が破壊され、最終的に毛穴そのものが消失してしまう「瘢痕性脱毛症」であるという点です。
一度瘢痕化してしまった毛穴からは、残念ながら新しい髪の毛が生えてくることはありません。そのため、いかに早期に発見し、炎症を抑えて瘢痕化の進行を食い止めるかが重要になります。
瘢痕性脱毛症とは

瘢痕性脱毛症は、毛包が炎症やその他の原因によって永久的に破壊され、その部分が線維組織(瘢痕組織)に置き換わってしまう状態を指します。毛包が失われるため、その部位からは毛髪が再生しません。
毛孔性扁平苔癬性脱毛症は、この瘢痕性脱毛症の代表的な疾患の一つです。
毛孔の消失と頭皮の変化
炎症が長期間続くと、毛包は徐々に破壊され、最終的には毛孔(毛穴の出口)が閉じて見えなくなります。脱毛部位の頭皮は、ツルツルとした光沢を帯び、やや硬くなることがあります。
健康な頭皮に見られる毛穴の凹凸がなくなり、のっぺりとした印象になります。このような変化が見られた場合、瘢痕化が進行している可能性が高いと考えられます。
瘢痕化のサイン
所見 | 説明 |
---|---|
毛孔の不明瞭化・消失 | 毛穴が見えにくくなる、または完全に見えなくなる |
頭皮の光沢・硬化 | 脱毛部の皮膚がツルツルと光り、硬く感じる |
象牙色の脱毛斑 | 脱毛部が白っぽく見えることがある |
早期発見・早期対処の重要性
瘢痕化が広範囲に進んでしまうと、治療による毛髪の回復は期待できません。しかし、炎症が活発な初期の段階で適切な治療を開始すれば、炎症を鎮静化させ、毛包の破壊を最小限に食い止め、瘢痕化の進行を遅らせることが可能です。
だからこそ、「ただの抜け毛」と自己判断せず、気になる症状があれば早めに皮膚科専門医に相談することが何よりも大切です。
ズキズキ、ピリピリ…感じていませんか?頭皮の不快な感覚

毛孔性扁平苔癬性脱毛症では、かゆみだけでなく、痛みや灼熱感といった頭皮の不快な感覚を伴うことがあります。これらの感覚は、炎症の程度や個人の感受性によって異なりますが、日常生活の質を低下させる要因となることもあります。
どのような感覚があるのかを知っておくことも、早期発見につながります。
頭皮の痛み(圧痛)
炎症が強い場合、頭皮に触れたり、髪をとかしたりする際にズキズキとした痛みを感じることがあります。これを圧痛(あっつう)と呼びます。特に、毛孔周囲の紅斑や丘疹が見られる部位で感じやすい傾向があります。
痛みの程度は、軽い違和感程度のものから、我慢できないほどの強い痛みまで様々です。
灼熱感やピリピリ感
頭皮がヒリヒリしたり、まるで日焼けした後のように熱っぽく感じたりする「灼熱感」も、毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん)性脱毛症の症状の一つです。
また、ピリピリとした刺激感や、電気が走るような感覚を訴える方もいます。これらの感覚は、炎症によって神経が過敏になっているために起こると考えられています。
頭皮の不快な感覚の種類
感覚 | 具体的な表現例 | 考えられる原因 |
---|---|---|
痛み(圧痛) | ズキズキする、触ると痛い | 強い炎症、神経の刺激 |
灼熱感 | ヒリヒリする、熱っぽい | 炎症による血管拡張、神経の刺激 |
ピリピリ感・刺激感 | チクチクする、電気が走るよう | 神経の過敏性亢進 |
感覚症状と炎症の関連
これらの痛みや灼熱感、ピリピリ感は、頭皮の炎症活動が活発な時期に強く現れる傾向があります。治療によって炎症が鎮まると、これらの不快な感覚も軽減していくことが一般的です。
もし、このような感覚が続く場合は、炎症が持続している可能性があるため、医師に伝えることが重要です。
これって私だけ?症状の出方には個人差があります
毛孔性扁平苔癬性脱毛症の症状は、全ての人に同じように現れるわけではありません。発症年齢、進行の速さ、症状の強さ、影響を受ける部位など、個人差が大きいのが特徴です。

特に、閉経後の女性に比較的多く見られる傾向がありますが、若い方や男性にも発症することがあります。
発症年齢と性差
毛孔性扁平苔癬性脱毛症は、一般的に40代から60代の女性、特に閉経期を迎えた女性に好発するといわれています。しかし、これはあくまで傾向であり、20代や30代の若い世代や、男性にも発症例が見られます。
性別や年齢だけで判断せず、特徴的な症状が見られた場合は専門医の診察を受けることが大切です。
症状の組み合わせと重症度
かゆみだけを強く感じる方もいれば、抜け毛が主症状で他の自覚症状はほとんどないという方もいます。また、紅斑や丘疹などの頭皮所見が顕著な場合もあれば、軽微な場合もあります。
これらの症状がどのように組み合わさって現れるか、またそれぞれの症状がどの程度の強さで現れるかは、人それぞれです。
症状の個人差の例
- かゆみが強いが、抜け毛は軽度
- 自覚症状は少ないが、頭皮の赤みや毛孔の消失が目立つ
- 前頭部の生え際のみに症状が限局する
- 頭頂部から側頭部へと広範囲に進行する
他の扁平苔癬との関連
毛孔性扁平苔癬は、皮膚や爪、口腔粘膜などに症状が現れる扁平苔癬という疾患の一種と考えられています。
そのため、頭皮の症状だけでなく、手足の爪の変形(縦筋、菲薄化、爪甲剥離など)や、口腔内の粘膜に白いレース状の模様やびらんが見られることがあります。
これらの症状が合併している場合は、毛孔性扁平苔癬性脱毛症の診断の手がかりとなることがあります。
扁平苔癬の関連症状

部位 | 主な症状 |
---|---|
皮膚 | 紫紅色の扁平な丘疹、強いかゆみ |
爪 | 縦筋、爪の菲薄化・脆弱化、爪甲剥離、翼状爪形成 |
口腔粘膜 | 頬粘膜・舌・歯肉などにレース状の白斑、びらん、潰瘍 |
他の脱毛症とどう違うの?症状で見分けるポイント

脱毛症には様々な種類があり、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。毛孔性扁平苔癬性脱毛症を他の脱毛症と正確に見分けることは、適切な治療方針を立てる上で非常に重要です。
ここでは、代表的な脱毛症との違いについて解説します。
円形脱毛症との違い
円形脱毛症は、突然円形や楕円形の脱毛斑が生じる自己免疫疾患です。毛孔性扁平苔癬性脱毛症も免疫系の異常が関与していると考えられていますが、症状の現れ方が異なります。
円形脱毛症では、脱毛斑の境界が比較的明瞭で、瘢痕化は通常起こしません(ただし、重症型では瘢痕化を伴うことも稀にあります)。
一方、毛孔性扁平苔癬性脱毛症では、毛孔周囲の炎症所見(紅斑、丘疹、鱗屑)が特徴的で、進行すると瘢痕化し毛孔が消失します。
脂漏性脱毛症との違い
脂漏性皮膚炎に伴う脱毛(脂漏性脱毛症)は、頭皮の皮脂分泌が過剰になり、炎症やフケが生じることで抜け毛が増える状態です。
かゆみやフケといった症状は毛孔性扁平苔癬性脱毛症と共通する部分もありますが、脂漏性皮膚炎のフケは湿って黄色っぽいことが多く、毛孔の消失や瘢痕化は起こりません。
また、脂漏性皮膚炎は頭皮全体に広がりやすいのに対し、毛孔性扁平苔癬性脱毛症は特定の部位(前頭部、頭頂部など)に症状が集中しやすい傾向があります。
脱毛症の鑑別ポイント
脱毛症の種類 | 主な特徴 | 毛孔性扁平苔癬との違い |
---|---|---|
円形脱毛症 | 境界明瞭な円形・楕円形の脱毛斑、通常は非瘢痕性 | 毛孔周囲の炎症所見、瘢痕化 |
脂漏性脱毛症 | 湿ったフケ、頭皮全体の炎症、非瘢痕性 | 乾燥した鱗屑、毛孔性丘疹、瘢痕化 |
牽引性脱毛症 | ポニーテールなど特定の髪型による物理的牽引が原因、生え際に多い、非瘢痕性(長期化すると瘢痕化の可能性も) | 明らかな物理的要因がない、毛孔周囲の炎症所見 |
専門医による正確な診断が重要
これらの脱毛症は、症状が似ている部分もあり、自己判断は禁物です。
特に毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん)性脱毛症のような瘢痕性脱毛症は、早期の的確な診断と治療介入がその後の経過を大きく左右します。
皮膚科専門医は、詳細な問診、視診、ダーモスコピー(拡大鏡を用いた頭皮観察)、場合によっては皮膚生検(頭皮の一部を採取して病理組織学的に調べる検査)などを行い、総合的に診断します。
気づいたら早めに。症状が進むとどうなるの?
毛孔性扁平苔癬性脱毛症は、進行性の疾患です。初期の段階で適切な対処をしなければ、炎症が持続し、毛包の破壊と瘢痕化が進んでしまいます。

症状が進行すると、美容的な問題だけでなく、精神的な苦痛も大きくなる可能性があります。
炎症の慢性化と毛包破壊
毛孔性扁平苔癬性脱毛症の根本には、毛包をターゲットとしたリンパ球などの免疫細胞による攻撃があります。この攻撃が続くと、毛包周囲に慢性的な炎症が生じます。
炎症が長期化すると、毛包は徐々に萎縮し、最終的には破壊されてしまいます。破壊された毛包は、再生能力を失います。
瘢痕化の進行と不可逆的な脱毛
破壊された毛包の跡は、線維組織に置き換わります。これが瘢痕化です。瘢痕化した部分の頭皮は硬くなり、毛孔は完全に消失します。一度瘢痕化が完成してしまうと、その部分から再び髪の毛が生えてくることはありません。
これが、毛孔性扁平苔癬性脱毛症が「不可逆的な脱毛症」と言われる所以です。脱毛範囲が広がるほど、元の状態に戻すことは困難になります。
美容面・整容面への影響
髪は容姿の印象を大きく左右する要素の一つです。特に女性にとって、薄毛や脱毛は深刻な悩みとなり得ます。
前頭部の生え際や分け目が後退したり、頭頂部の地肌が目立ったりすることで、ヘアスタイルが制限されたり、人前に出ることに抵抗を感じたりするようになることもあります。
ウィッグや帽子でカバーするなどの対策が必要になる場合もあります。
心理的・社会的な影響
見た目の変化は、自信の喪失や抑うつ気分、不安感など、心理的な負担につながることがあります。また、他人の目が気になり、社会的な活動への参加意欲が低下するなど、QOL(生活の質)にも影響を及ぼす可能性があります。
毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん)性脱毛症は、単なる美容上の問題ではなく、患者さんの心にも大きな影響を与える疾患であることを理解する必要があります。
進行した場合の影響
影響の側面 | 具体的な内容 |
---|---|
毛髪・頭皮 | 広範囲の脱毛、毛孔消失、頭皮の瘢痕化 |
美容・整容面 | ヘアスタイルの制限、ウィッグ等の必要性 |
心理面 | 自信喪失、抑うつ、不安、ストレス |
社会生活 | 対人関係への影響、社会参加の意欲低下 |
だからこそ、初期のサインを見逃さず、できるだけ早く皮膚科専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが、進行を食い止め、QOLを維持するために非常に重要です。
よくある質問 (FAQ)
- 毛孔性扁平苔癬性脱毛症は遺伝しますか?
-
毛孔性扁平苔癬性脱毛症の明確な遺伝性は確立されていません。しかし、家族内での発症例も報告されており、何らかの遺伝的素因が関与している可能性は否定できません。
多くの場合、遺伝的要因だけでなく、免疫系の異常や環境要因などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- この脱毛症は治りますか? 完治は難しいのでしょうか?
-
残念ながら、毛孔性扁平苔癬性脱毛症を完全に治癒させる治療法は現在のところ確立されていません。主な治療目標は、炎症を抑えて症状の進行を食い止め、瘢痕化を防ぐことです。
早期に治療を開始し、炎症をコントロールできれば、脱毛の進行を遅らせたり、停止させたりすることは可能です。しかし、既に瘢痕化してしまった毛包から毛髪を再生させることは困難です。
- シャンプーや育毛剤で改善しますか?
-
一般的な市販のシャンプーや育毛剤だけで毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん)性脱毛症を改善することは難しいです。この疾患は毛包周囲の特殊な炎症が原因であるため、専門的な治療が必要です。
ただし、頭皮を清潔に保ち、刺激の少ないシャンプーを使用することは、頭皮環境を整える上で大切です。自己判断で様々な製品を試す前に、まずは皮膚科専門医に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
- 症状が悪化する要因はありますか?
-
ストレス、睡眠不足、不規則な生活、喫煙などは、免疫系のバランスを崩し、炎症を悪化させる可能性があります。また、頭皮への過度な刺激(強くこする、頻繁なパーマやカラーリングなど)も避けるべきです。
紫外線も炎症を助長することがあるため、外出時には帽子や日傘などで頭皮を保護することも心がけると良いでしょう。
- 診断にはどのような検査が必要ですか?
-
診断は、まず詳細な問診と頭皮の視診(ダーモスコピーを含む)によって行われます。特徴的な所見(毛孔周囲の紅斑、角化性丘疹、鱗屑、瘢痕化など)が確認されれば、毛孔性扁平苔癬性脱毛症が疑われます。
確定診断のためには、頭皮の一部を採取して病理組織検査を行う「皮膚生検」が必要となることが多いです。これにより、毛包周囲のリンパ球浸潤や瘢痕化の程度などを詳しく調べることができます。
毛孔性扁平苔癬性脱毛症の症状についてご理解いただけたでしょうか。この脱毛症の原因や、クリニックで行われる詳しい検査方法については、以下の記事で解説していますので合わせてお読みください。
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