前頭部線維化脱毛症(FFA)は、特に閉経後の女性に多く見られる進行性の脱毛症で、生え際の後退や眉毛の消失が特徴です。

この記事では、FFAの原因特定がなぜ重要なのか、そしてどのような検査方法で診断するのかを詳しく解説します。
早期発見と適切な対策のため、FFAに関する知識を深めましょう。
なぜ原因特定が重要か – 薄毛進行の分岐点

前頭部線維化脱毛症(FFA)の進行を食い止め、適切な対策を講じるためには、まずその原因を特定することが極めて重要です。原因が曖昧なままでは、効果的な治療法を選択できず、薄毛が進行してしまう可能性があります。
FFAは瘢痕性脱毛症の一種であり、毛包が破壊されると再生が難しくなるため、早期の対応が求められます。原因を明らかにすることは、個々の患者さんに合わせた治療計画を立て、症状の悪化を防ぐための第一歩となります。
FFAの多様な要因を理解する
FFAの発症には、単一の原因だけでなく、複数の要因が複雑に関与していると考えられています。そのため、多角的な視点から原因を探求する必要があります。

ホルモンバランスの変動、免疫系の異常、遺伝的素因、そして環境要因などが、それぞれ、あるいは相互に影響し合ってFFAを引き起こす可能性が指摘されています。
これらの要因を一つひとつ丁寧に検証し、患者さんごとの主要な原因を見極めることが、治療戦略を立てる上で大切です。
原因不明から原因特定への道筋
かつては原因不明とされることもあったFFAですが、近年の研究により、その発症に関わる可能性のある因子が徐々に明らかになってきました。
皮膚科専門医による詳細な問診、視診、そして後述する各種検査を通じて、原因特定への道筋を探ります。
原因が特定できれば、それに応じた治療法や生活習慣の改善指導を行うことが可能となり、薄毛の悩み解決に向けた具体的な対策を講じることができます。
ホルモンバランス・加齢の影響
FFAの発症には、特に女性ホルモンの変動が深く関わっていると考えられています。閉経期を迎える中高年女性に好発することから、エストロゲンの減少がFFAの一因となる可能性が示唆されています。

加齢に伴う身体の変化とホルモンバランスの乱れが、毛包の健康にどのような影響を与えるのかを理解することが、FFAの原因究明には必要です。
女性ホルモンと毛髪サイクルの関連
女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、毛髪の成長期を維持し、毛髪を太く健康に保つ働きがあります。
しかし、更年期に入りエストロゲンの分泌量が減少すると、毛髪サイクルが乱れやすくなります。成長期が短縮し、休止期が長くなることで、毛髪が細くなったり、抜けやすくなったりするのです。

FFAでは、このホルモンバランスの変化が、前頭部や側頭部の毛包に特異的な炎症反応を引き起こし、脱毛を促進する可能性があります。
更年期とFFA発症リスク
更年期は、多くの女性が身体的、精神的な変化を経験する時期です。ホルモンバランスの急激な変動は、FFAの発症リスクを高める要因の一つと考えられます。
実際に、FFA患者さんの多くが閉経後であるという報告は、この関連性を強く裏付けています。ただし、すべての更年期女性がFFAを発症するわけではなく、他の要因との組み合わせが重要となります。
ホルモン補充療法のFFAへの影響
ホルモン補充療法(HRT)がFFAに与える影響については、まだ明確な結論が出ていません。一部の研究では、HRTがFFAの進行を抑制する可能性が示唆されていますが、逆にHRTがFFAを誘発したとする報告も少数ながら存在します。
HRTを検討する際には、皮膚科医と婦人科医が連携し、個々の患者さんの状態やリスクを総合的に評価することが大切です。
加齢による毛包の変化
加齢とともに、毛包自体も老化し、その機能が低下します。毛包周囲の組織の線維化や、毛包幹細胞の働きの衰えなどが、脱毛を引き起こす要因となります。
FFAでは、これらの加齢変化に加えて、特有の炎症反応が毛包を攻撃することで、より深刻な脱毛が生じると考えられています。
ホルモンバランスと関連する脱毛症
ホルモンバランスの乱れは、FFA以外にも様々な脱毛症の原因となり得ます。以下の表は、代表的なものを示しています。
脱毛症の種類 | 主な関連ホルモン | 特徴的な症状 |
---|---|---|
女性型脱毛症(FAGA) | 男性ホルモン(相対的な影響) | 頭頂部のびまん性薄毛 |
産後脱毛症 | エストロゲン(急激な減少) | 出産後数ヶ月の一時的な脱毛 |
甲状腺機能異常に伴う脱毛 | 甲状腺ホルモン | びまん性脱毛、毛髪の質の変化 |
免疫異常と自己炎症ループの可能性
FFAの発症機序において、免疫系の異常が重要な役割を果たしていると考えられています。特に、毛包を異物と誤認して攻撃してしまう「自己免疫」の関与が疑われています。

毛包周囲にリンパ球を中心とした炎症細胞が浸潤し、毛包組織を破壊することで瘢痕化が進行し、永久的な脱毛に至ります。この自己免疫反応が持続することで、炎症と組織破壊が繰り返される「自己炎症ループ」が形成される可能性があります。
自己免疫疾患としてのFFA
FFAが自己免疫疾患の一つであるという考え方は、多くの研究者によって支持されています。自己免疫疾患とは、本来自分自身を守るべき免疫システムが、誤って自分の体の特定の組織や細胞を攻撃してしまう病気の総称です。
FFAの場合、攻撃の標的が毛包、特に毛包内の特定の部位であると考えられています。この自己免疫反応が、生え際や眉毛といった特定の部位に集中して起こる理由については、まだ完全には解明されていません。
毛包を標的とする免疫反応
FFAの病変部では、Tリンパ球という種類の免疫細胞が毛包周囲に集まっていることが確認されています。これらのTリンパ球が、毛包の細胞を攻撃し、炎症を引き起こすと考えられています。
具体的にどの毛包構成成分が免疫反応の標的となっているのか、詳細な研究が進行中です。この免疫反応を抑制することが、FFA治療の重要なターゲットとなります。
炎症性サイトカインの役割
炎症反応においては、サイトカインと呼ばれる様々なタンパク質が重要な役割を担います。サイトカインは細胞間の情報伝達物質として機能し、炎症を促進したり抑制したりします。
FFAの病変部では、炎症を引き起こすタイプのサイトカイン(炎症性サイトカイン)の産生が高まっていることが報告されています。
これらのサイトカインが、免疫細胞を活性化させ、炎症を持続させることで、自己炎症ループを形成し、FFAの進行に関与している可能性があります。
FFAと合併しやすい自己免疫疾患
FFA患者さんの中には、他の自己免疫疾患を合併しているケースも報告されています。これはFFAの自己免疫的側面を支持する一つの根拠となります。
合併しやすい自己免疫疾患 | 簡単な説明 |
---|---|
橋本病(慢性甲状腺炎) | 甲状腺に対する自己免疫疾患 |
尋常性白斑 | メラノサイトに対する自己免疫疾患 |
円形脱毛症 | 毛包に対する別のタイプの自己免疫性脱毛症 |
遺伝的素因と環境ストレスの相乗効果

FFAの発症には、遺伝的な predisposition(素因)と、後天的な環境要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
特定の遺伝子を持つ人が必ずしもFFAを発症するわけではなく、何らかの環境的な引き金が加わることで発症に至るケースが多いと推測されます。
この遺伝的素因と環境ストレスの相乗効果を理解することは、FFAの予防や治療戦略を考える上で重要です。
FFA発症に関わる遺伝的背景
家族内でのFFA発症例が報告されていることから、遺伝的な要因が関与している可能性が指摘されています。
しかし、単一の遺伝子によってFFAが引き起こされるわけではなく、複数の遺伝子が複雑に関与する多因子遺伝疾患であると考えられています。
現在、FFAの発症リスクを高める可能性のある遺伝子領域の特定が進められていますが、まだ決定的なものは見つかっていません。遺伝的素因を持つ人は、持たない人に比べて、特定の環境要因にさらされた際にFFAを発症しやすい可能性があります。
家族内発症のケーススタディ
母娘や姉妹など、血縁関係のある複数の家族成員がFFAを発症するケースが稀に見られます。これらのケースは、FFAの遺伝的関与を示唆する重要な手がかりとなります。
ただし、家族内発症が見られる場合でも、生活環境やライフスタイルが類似していることも考慮する必要があり、遺伝要因と環境要因を切り分けて評価することは容易ではありません。
環境要因とライフスタイルの影響
FFAの発症や進行には、様々な環境要因やライフスタイルが影響を与える可能性があります。
特に、精神的なストレスは、免疫系やホルモンバランスに影響を及ぼし、FFAの引き金となったり、症状を悪化させたりする要因の一つとして考えられています。
その他、紫外線への曝露、特定の化粧品やヘアケア製品の使用、食生活の乱れなども、間接的に関与している可能性が否定できません。
ストレスと免疫系の相互作用
慢性的なストレスは、自律神経系や内分泌系を介して免疫系に影響を与え、免疫バランスを崩すことが知られています。これにより、自己免疫反応が誘発されたり、増強されたりする可能性があります。
FFAが自己免疫的な側面を持つことを考えると、ストレス管理はFFAの進行を抑制する上で無視できない要素です。
化学物質への曝露とアレルギー反応
一部の研究では、日焼け止めに含まれる特定の化学物質や、ヘアカラー剤、パーマ液などの化学物質への曝露が、FFAの発症に関連している可能性が指摘されています。
これらの化学物質がアレルギー反応や炎症反応を引き起こし、毛包にダメージを与えるという仮説です。しかし、これについてはまだ科学的なコンセンサスが得られておらず、さらなる研究が必要です。
考えられる環境トリガー
- 精神的・肉体的ストレス
- 紫外線(過度の日焼け)
- 特定の薬剤
- 感染症
まず受けたい頭皮トリコスコピー検査

FFAの診断において、頭皮トリコスコピー検査(ダーモスコピーとも呼ばれます)は、非常に有用で侵襲の少ない初期検査です。
特殊な拡大鏡を用いて頭皮や毛髪の状態を詳細に観察することで、FFAに特徴的な所見を見つけ出し、他の脱毛症との鑑別診断に役立ちます。
この検査は、皮膚科医がその場で行うことができ、患者さんの負担も少ないため、FFAが疑われる場合にはまず実施を検討する検査です。
トリコスコピーで観察できるFFAのサイン
トリコスコピーを用いると、肉眼では捉えにくい微細な変化を観察できます。
FFAに特徴的な所見としては、毛孔周囲の紅斑(赤み)、毛孔周囲の鱗屑(フケのようなもの)、毛包の開口部の消失、そして「empty follicle sign」(毛が抜けた後の毛穴が目立つ状態)などがあります。
また、眉毛の脱毛部位においても同様の所見が観察されることがあります。これらの所見は、FFAの活動性や進行度を評価する上でも重要な情報となります。
毛孔周囲の炎症所見
FFAの初期段階では、毛孔の周りに軽度の赤みや細かいフケのようなものが見られることがあります。これらは毛包周囲で炎症が起きていることを示唆するサインであり、トリコスコピーによってより明確に捉えることができます。
これらの所見は、FFAの活動期に見られる特徴です。
毛包構造の変化と瘢痕化の兆候
FFAが進行すると、毛包が破壊され、瘢痕組織に置き換わっていきます。トリコスコピーでは、毛包の開口部が失われたり、皮膚表面が平滑化したりする様子が観察できます。
これは瘢痕性脱毛症に共通する所見であり、FFAの診断を裏付ける重要な手がかりとなります。早期にこれらの兆候を発見することが、治療介入のタイミングを決定する上で大切です。
トリコスコピー検査のメリット
メリット | 詳細 |
---|---|
非侵襲的 | 皮膚を切ったり傷つけたりしない |
迅速な評価 | その場で結果がある程度わかる |
早期診断の補助 | 初期の微細な変化を発見しやすい |
血液・ホルモン検査でわかる内的シグナル

FFAの原因を探る上で、血液検査やホルモン検査は、体内の状態を把握するための重要な手がかりとなります。
全身性の疾患の有無、栄養状態、ホルモンバランスの乱れなどを評価し、FFAの発症や進行に関与する可能性のある内的要因を明らかにします。
特にFFAが他の自己免疫疾患と合併しやすいことや、ホルモン変動との関連が疑われることから、これらの検査は診断において重要です。
全身状態を評価する血液検査項目
一般的な血液検査では、貧血の有無、炎症反応の程度、肝機能、腎機能などを調べます。これらの項目は、全身の健康状態を把握し、脱毛を引き起こす可能性のある他の疾患を除外するために行われます。
例えば、甲状腺機能異常や膠原病なども脱毛の原因となるため、これらの疾患が疑われる場合には、関連する特殊な血液検査項目を追加することがあります。
自己免疫マーカーのスクリーニング
FFAが自己免疫的な側面を持つことから、抗核抗体(ANA)などの自己免疫マーカーを測定することがあります。
ANAは、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病で陽性となることが多いですが、FFA患者さんの一部でも陽性を示すことがあります。
ただし、ANAが陽性であっても必ずしも他の自己免疫疾患を合併しているとは限らず、結果の解釈には専門的な判断が必要です。
甲状腺機能検査の重要性
甲状腺ホルモンは、毛髪の成長に直接的な影響を与えるため、甲状腺機能の異常は脱毛の原因となります。
FFA患者さんの中には、橋本病(慢性甲状腺炎)などの甲状腺疾患を合併している場合があるため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離サイロキシン(FT4)、遊離トリヨードサイロニン(FT3)などの甲状腺機能検査を行うことが推奨されます。
主な血液検査項目とその目的
検査項目 | 主な目的 | FFAとの関連 |
---|---|---|
血算(赤血球、白血球、血小板) | 貧血、感染、炎症の有無 | 全身状態の把握 |
CRP、赤沈 | 炎症反応の程度 | FFAの活動性評価の参考 |
抗核抗体(ANA) | 自己免疫疾患のスクリーニング | 自己免疫的背景の評価 |
ホルモンバランスの評価
FFAが特に閉経後の女性に多いことから、女性ホルモンや男性ホルモンのバランスを評価するためのホルモン検査が行われることがあります。
これにより、ホルモン環境がFFAの発症や進行にどのように関与しているかを推測する手がかりを得ます。
女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)測定
エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの血中濃度を測定します。特に閉経期やその前後の女性では、これらのホルモン値が低下していることが一般的です。
FFAとの直接的な因果関係を証明するものではありませんが、ホルモン状態を把握することは、治療方針を検討する上で参考になります。
男性ホルモン(テストステロンなど)測定
女性でも副腎や卵巣で男性ホルモンが産生されており、そのバランスも毛髪に影響を与えます。女性型脱毛症(FAGA)では男性ホルモンの影響が指摘されていますが、FFAにおける男性ホルモンの役割はまだ明確ではありません。
しかし、総合的なホルモン状態を評価するために測定されることがあります。
組織生検で確定診断へとつなげる
FFAの診断において、頭皮の組織生検(皮膚生検)は確定診断に至るための最も確実な検査方法の一つです。

トリコスコピーや血液検査などである程度の推測は可能ですが、最終的な診断を下し、他の類似した脱毛症と正確に鑑別するためには、病変部の皮膚組織を少量採取し顕微鏡で詳細に調べる病理組織学的検査が重要となります。
この検査により、FFAに特徴的な毛包周囲の炎症や線維化の所見を確認できます。
生検の実施と病理組織学的評価
頭皮の組織生検は、局所麻酔下で行われる比較的簡単な手技です。通常、脱毛が活発に進行している生え際などから、直径数ミリ程度の小さな皮膚片を採取します。
採取された組織は、特殊な処理を施された後、薄くスライスされ、染色されてプレパラートが作成されます。このプレパラートを病理医が顕微鏡で観察し、毛包の状態、炎症細胞の種類と分布、線維化の程度などを詳細に評価します。
FFAに特徴的な病理所見
FFAの病理組織像では、毛包の特に峡部(isthmus)から漏斗部(infundibulum)にかけて、リンパ球を主体とする炎症細胞の浸潤が見られます。また、毛包周囲のコラーゲン線維が増加し、線維化が進行している様子も確認できます。
進行すると、毛包構造が破壊され、立毛筋だけが残存する瘢痕組織に置き換わります。これらの所見は、FFAの診断を強く支持するものです。
他の瘢痕性脱毛症との鑑別
瘢痕性脱毛症には、FFA以外にも円板状エリテマトーデス(DLE)や毛孔性扁平苔癬(LPP)など、様々な種類があります。これらの疾患は臨床症状が類似している場合があり、鑑別が難しいことも少なくありません。
組織生検は、これらの疾患に特徴的な病理所見を比較検討することで、より正確な鑑別診断を可能にします。例えば、LPPでは毛包上皮細胞の液状変性やアポトーシスがより顕著に見られることがあります。
組織生検でわかること
- 炎症細胞の種類と分布
- 毛包の破壊の程度
- 線維化(瘢痕化)の進行度
- 立毛筋の状態
組織生検の一般的な流れ
ステップ | 内容 |
---|---|
1. 同意取得と準備 | 検査の説明、局所麻酔 |
2. 皮膚組織の採取 | パンチバイオプシー等で数mmの皮膚を採取 |
3. 止血と縫合(必要な場合) | 採取部位の処置 |
4. 病理検査室へ提出 | 採取した組織を検査室へ |
5. 病理診断 | 顕微鏡での詳細な評価、診断報告 |
結果を活かすための検査後コンサルティング
各種検査によって得られた結果は、それ自体がゴールではありません。
FFAの診断が確定し、その原因や進行度に関する情報が得られた後、皮膚科医とのコンサルティングを通じて、これらの結果を今後の治療や対策にどのように活かしていくかを具体的に話し合うことが極めて重要です。

検査結果を患者さん自身が正しく理解し、納得した上で治療に進むことが、より良い成果につながります。
診断結果の丁寧な説明
医師は、トリコスコピー、血液検査、組織生検などの結果を総合的に判断し、FFAの診断の根拠や、現在の病状について患者さんに分かりやすく説明します。
専門用語を避け、図や写真などを用いながら、なぜFFAと診断されたのか、どのような状態なのかを丁寧に解説することが求められます。患者さんが疑問や不安に思う点を解消し、病気への理解を深めることが大切です。
検査結果に基づく個別化された治療提案
FFAの治療法は一つではありません。検査結果から得られた情報(炎症の程度、線維化の進行度、ホルモン状態、合併症の有無など)を基に、個々の患者さんに最も適していると考えられる治療法を提案します。
治療法の選択肢、それぞれの効果、副作用、費用、期間などについて詳細な情報を提供し、患者さんの希望やライフスタイルも考慮しながら、共同で治療計画を立てていきます。
生活習慣改善へのアドバイス
FFAの進行には、ストレスや生活習慣が関与している可能性も指摘されています。検査結果を踏まえ、食事、睡眠、運動、ストレス管理など、日常生活で見直すべき点について具体的なアドバイスを行います。
例えば、抗炎症作用のある食品の摂取を心がける、十分な睡眠時間を確保する、適度な運動を取り入れる、リラクゼーション法を試すなど、実践可能な対策を一緒に考えます。
コンサルティングで確認すべきこと
確認事項 | 具体的な内容 |
---|---|
診断名と根拠 | なぜFFAと診断されたのか |
現在の病状 | 進行度、活動性など |
治療法の選択肢 | 効果、副作用、期間、費用 |
生活上の注意点 | 食事、ストレス対策など |
今後の見通し | 治療目標、定期的なフォローアップ |
継続的なフォローアップの重要性
FFAは慢性的な経過をたどることが多く、一度治療を開始した後も、定期的な診察と検査によるフォローアップが重要です。治療効果の評価、副作用のモニタリング、そして必要に応じた治療法の調整を行います。
また、症状が安定していても、再燃の兆候がないかを確認し、早期に対応することで、良好な状態を維持することを目指します。
患者さんと医師が長期的な視点で協力し、根気強く治療に取り組むことが、FFAの進行を抑制し、QOL(生活の質)を維持するために大切です。
よくある質問
- FFAは治るのでしょうか
-
FFAは瘢痕性脱毛症であり、一度破壊された毛包は再生しないため、完全に「治る」という表現は難しい場合があります。
しかし、早期に適切な治療を開始することで、脱毛の進行を止めたり、遅らせたりすることは可能です。
治療の目標は、炎症を抑え、さらなる毛包破壊を防ぎ、現状を維持すること、そして場合によっては一部の毛髪の再成長を促すことです。根気強い治療と生活習慣の見直しが重要です。
- 検査にはどのくらいの費用と時間がかかりますか
-
検査費用や時間は、実施する検査の種類や医療機関によって異なります。トリコスコピーは比較的短時間で、費用もそれほど高額ではありません。血液検査は項目数によって費用が変動します。
組織生検は、手技料と病理診断料がかかり、結果が出るまでに1~2週間程度要することが一般的です。詳細については、受診する皮膚科クリニックにお問い合わせください。多くの場合、健康保険が適用されます。
- 眉毛の脱毛もFFAの症状ですか
-
はい、眉毛の外側3分の1(または全体)の脱毛は、FFAの非常に特徴的な症状の一つです。生え際の後退と同時に、あるいは先行して眉毛の脱毛が起こることがあります。まつ毛や体毛の脱毛が見られることもあります。
眉毛の脱毛に気づいた場合も、FFAの可能性を考えて皮膚科専門医に相談することをお勧めします。
- ストレスはFFAの直接的な原因になりますか
-
現時点では、ストレスがFFAの直接的な単独の原因であるとは証明されていません。
しかし、FFAの発症や悪化には、免疫系の異常やホルモンバランスの乱れが関与していると考えられており、精神的・肉体的ストレスはこれらのシステムに影響を与える可能性があります。
そのため、ストレスはFFAの誘因や増悪因子の一つとなり得ると考えられています。ストレスを上手に管理することは、FFAの対策においても大切です。
- FAGA(女性型脱毛症)との違いは何ですか
-
FFAとFAGA(女性男性型脱毛症、あるいは女性型脱毛症)は、どちらも女性に見られる脱毛症ですが、原因や症状の現れ方が異なります。
FAGAは主に頭頂部の毛髪がびまん性に薄くなるのが特徴で、男性ホルモンの影響が関与しているとされます。一方、FFAは前頭部や側頭部の生え際が帯状に後退し、眉毛の脱毛を伴うことが多く、瘢痕性の脱毛症である点が大きな違いです。
正確な診断のためには、皮膚科専門医による診察が重要です。
FFAとFAGAの主な違い
項目 前頭部線維化脱毛症(FFA) 女性型脱毛症(FAGA) 主な脱毛部位 前頭部・側頭部の生え際、眉毛 頭頂部 脱毛の性質 瘢痕性(毛包破壊) 非瘢痕性(毛包ミニチュア化) 炎症所見 毛孔周囲の紅斑・鱗屑など 通常は顕著でない
FFAの原因についてある程度理解できたら、治療法や予防について以下の記事で一緒に勉強してきましょう。
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