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Sweet病

Sweet病

Sweet病(Sweet’s syndrome)とは、突然発症する発熱と、痛みを伴う赤い皮疹が特徴的なまれな炎症性疾患です。

この病気は、皮膚だけでなく、時に内臓にも影響を及ぼすことがあります。

主にSweet病が見られるのは、成人女性です。まれに、男性や子供にも発症する可能性があります。

原因は完全には解明されていませんが、感染症、薬剤反応、または悪性腫瘍との関連が指摘されています。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

Sweet病の病型

Sweet病は発症の背景や関連因子によって、主に4つの病型に分類されています。

古典型(特発性)Sweet病

古典型Sweet病は、明確な誘因なく発症する病型です。

この型は全体の約70%を占め、最も一般的な形態で、中年女性に多く見られる傾向があり、季節性の変動を示すことがあります。

悪性腫瘍関連Sweet病

悪性腫瘍に関連して発症するSweet病は、患者さんの約20%に見られます。

関連する悪性腫瘍頻度
血液系悪性腫瘍高い
固形腫瘍低い

この病型は、腫瘍の発見や再発の指標となる場合があるため、注意深い経過観察が必要です。

薬剤誘発性Sweet病

薬剤誘発性Sweet病は、特定の薬剤の使用によって引き起こされるSweet病です。

薬剤の投与開始後、数日から数週間で症状が出現することが多いとされています。

Sweet病を誘発する可能性のある代表的な薬剤

  • G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)
  • 抗生物質(特にミノサイクリン)
  • 抗てんかん薬
  • 経口避妊薬

原因薬剤の中止により症状が改善することがこの型の特徴です。

妊娠関連Sweet病

妊娠中や産褥期に発症するSweet病で、比較的まれな病型です。

発症時期特徴
妊娠中主に第1三半期に多い
産褥期出産後数週間以内に発症

妊娠関連Sweet病は、胎児や母体への影響を考慮した慎重な管理が必要です。

Sweet病の症状

Sweet病の症状は、病型によって異なる特徴を示すことがありますが、共通する主要な症状として、突然の発熱と痛みを伴う皮疹が挙げられます。

古典型(特発性)Sweet病の症状

古典型Sweet病では、典型的な症状が突然現れることが多いです。

主な症状には、38℃以上の発熱、全身倦怠感、関節痛などが含まれます。

皮膚症状として、赤く盛り上がった痛みを伴う結節や斑が現れ、主に顔面、頸部、上肢に集中しやすい傾向があります。

症状特徴
発熱38℃以上
皮疹赤い有痛性の結節や斑
好発部位顔面、頸部、上肢
全身症状倦怠感、関節痛

悪性腫瘍関連Sweet病の症状

悪性腫瘍関連Sweet病では、基礎疾患である悪性腫瘍の影響により、症状がより重篤化する可能性があります。

皮膚症状は古典型と類似していますが、より広範囲に及ぶことがあり、また、口腔内潰瘍や結膜炎などの粘膜症状を伴うケースも報告されています。

発熱や全身倦怠感に加えて、悪性腫瘍に関連する症状(体重減少、夜間発汗など)が見られることも。

薬剤誘発性Sweet病の症状

薬剤誘発性Sweet病の症状は、原因となる薬剤の投与開始後、数日から数週間で現れます。

主な症状

  • 急性の発熱
  • 紅斑性の皮疹(時に水疱や膿疱を伴う)
  • 関節痛
  • 筋肉痛
  • 頭痛

特徴的なのは、原因薬剤の中止により症状が改善し、再投与で再発する点です。

妊娠関連Sweet病の症状

妊娠関連Sweet病では、妊娠中または産後に症状が現れ、皮疹は主に顔面、頸部、胸部に集中しやすく、時に四肢にも及ぶことがあります。

妊娠に伴う生理的変化により、症状が増幅されることがあるため、注意深い観察が必要です。

症状妊娠中産後
発熱中等度高度
皮疹限局性広範囲
全身症状軽度中等度

Sweet病の共通症状と注意点

全ての病型に共通する症状として、発熱と特徴的な皮疹が挙げられます。

また、Sweet病はまれに内臓症状を伴い、肺、腎臓、中枢神経系などに影響を及ぼす場合があり、このような症状が現れた際は、迅速な対応が必要です。

Sweet病の原因

Sweet病の原因は多岐にわたり、免疫系の異常反応が中心的な役割を果たしつつ、遺伝的素因や環境因子が複雑に絡み合って発症に至ります。

免疫系の異常反応

Sweet病の発症には、免疫系の過剰反応が深く関与しており、特に、好中球の活性化と炎症性サイトカインの過剰産生が重要な役割を果たします。

関与する免疫細胞主な作用
好中球皮膚への浸潤
T細胞サイトカイン産生
マクロファージ炎症反応の促進

これらの免疫細胞の異常な活性化により、皮膚組織に炎症が引き起こされ、特徴的な症状が現れます。

遺伝的要因

Sweet病の発症には、遺伝的な素因も関与している可能性があり、特定の遺伝子変異や多型が、発症リスクを高める可能性が指摘されています。

Sweet病との関連が示唆される遺伝子の例

  • IL-1β遺伝子
  • TNF-α遺伝子
  • HLA-B54遺伝子

これらの遺伝子変異は、免疫反応の調節に影響を与え、発症の素地を形成する可能性があります。

環境因子と誘発要因

環境因子や特定の状況が、Sweet病の発症を誘発する場合があり、これらの要因は、潜在的な素因を持つ個人において発症のトリガーとなることがあります。

誘発要因
感染上気道感染、消化器感染
薬剤G-CSF、抗生物質
自己免疫疾患関節リウマチ、炎症性腸疾患

悪性腫瘍との関連

Sweet病は、特定の悪性腫瘍と関連して発症する場合があり、腫瘍が産生する物質や、腫瘍に対する免疫反応が引き金となる可能性があります。

血液系悪性腫瘍、特に急性骨髄性白血病との関連が強いです。固形腫瘍との関連も報告されていますが、その頻度は比較的低いとされています。

妊娠関連Sweet病

妊娠中や産褥期に発症するSweet病は、ホルモンバランスの変化や免疫系の変調が原因で、エストロゲンやプロゲステロンの急激な変動が、免疫系に影響を与え、発症を誘発する可能性があります。

Sweet病の検査・チェック方法

Sweet病の正確な診断には、複数の検査とチェック方法を組み合わせることが不可欠です。臨床症状の評価、血液検査、画像診断、そして皮膚生検など、総合的なアプローチが求められます。

臨床症状の評価

Sweet病の診断では、問診を通じて、発熱や皮疹の発症時期、経過、関連する症状について情報を収集し、さらに、特徴的な紅斑や結節の性状、分布、痛みの有無などを確認します。

評価項目チェックポイント
発熱38℃以上の急性発熱
皮疹紅斑、結節、水疱の有無
痛み皮疹部位の圧痛
分布顔面、頸部、上肢の好発

血液検査

血液検査はSweet病の診断において極めて重要です。

典型的な所見として、白血球増多(特に好中球増多)、CRP上昇、赤血球沈降速度(ESR)の亢進が挙げられます。

主な血液検査項目

  • 白血球数(好中球数)
  • CRP(C反応性タンパク)
  • ESR(赤血球沈降速度)
  • 肝機能検査
  • 腎機能検査

画像診断

画像診断は、Sweet病に伴う内臓病変の評価に用いられ、胸部X線や CT スキャンにより、肺病変の有無を確認することが可能です。

また、超音波検査は、関節炎や筋炎の評価に役立つことがあります。

皮膚生検

皮膚生検は、Sweet病の確定診断に欠かせない検査です。

生検により得られた組織を病理学的に分析することで、特徴的な所見、真皮上層から中層にかけての好中球浸潤と浮腫が観察されます。

病理所見特徴
好中球浸潤真皮上層〜中層
浮腫真皮
血管炎通常は認めない
表皮変化軽度または無し

鑑別診断

Sweet病は他の皮膚疾患と類似した症状を呈することがあるため、感染症、自己免疫疾患、血管炎などとの鑑別が必要です。

抗核抗体や ANCA などの自己抗体検査、血液培養なども考慮され、診断は、これらの検査結果と臨床症状を総合的に判断して行われます。

Sweet病の治療方法と治療薬について

Sweet病の治療は、炎症を抑制し症状を緩和することが主な目的です。

全身性ステロイド療法

全身性ステロイド療法が、Sweet病の第一選択治療です。

強力な抗炎症作用を持つステロイドは、急性期の症状を迅速に改善する効果があります。

薬剤名一般的な投与量
プレドニゾロン0.5-1mg/kg/日
メチルプレドニゾロン1-2mg/kg/日

通常、症状の改善が見られるまで高用量で投与し、その後徐々に減量していきます。

ただし、長期使用による副作用のリスクがあるため、慎重な経過観察が必要です。

局所ステロイド療法

軽症例や限局性の病変に対しては、局所ステロイド療法が選択されることがあり、皮膚病変に直接塗ることで、全身性の副作用を最小限に抑えつつ症状を改善できます。

強力な外用ステロイド剤を1日1-2回塗布することが一般的です。局所療法は、全身療法との併用や、維持療法としても用いられます。

コルヒチン療法

コルヒチンは、抗炎症作用と好中球機能抑制作用を持つ薬剤です。

Sweet病の治療において、ステロイドの代替または補助療法として使用されることがあります。

投与方法用量
経口0.5-1.5mg/日

コルヒチンは、特に再発予防や長期管理において有効性が報告されており、ステロイドに比べて副作用が少ないことが利点ですが、効果発現までに時間がかかる場合があります。

その他の治療薬

Sweet病の治療には、症例に応じてさまざまな薬剤が使用されます。

  • ダプソン:抗菌薬であり、抗炎症作用も持つ
  • インドメタシン:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
  • シクロスポリン:免疫抑制剤
  • 抗TNF-α製剤:生物学的製剤

これらの薬剤は、ステロイド療法が効果不十分な場合や、副作用のために使用できない場合に選択されることがあります。

原因治療

Sweet病が他の疾患や薬剤に関連して発症している場合は、原因への対応が不可欠です。

悪性腫瘍関連型では、背景にある腫瘍の治療が必要で、薬剤誘発性の場合は、原因薬剤の中止や変更を検討します。

Sweet病の治療期間と予後

Sweet病は多くの場合、治療すれば良好な経過をたどりますが、再発のリスクや基礎疾患の影響など、注意すべき点もあります。

治療期間の一般的な目安

Sweet病の治療期間は、典型的なケースでは、治療開始後数日から2週間程度で症状の改善が見られ、完全な寛解までには数週間から数か月を要します。

治療段階期間
初期改善数日〜2週間
完全寛解数週間〜数か月
維持療法個別に判断

病型別の治療期間と予後

各病型によって、治療期間と予後に違いが見られます。

古典型(特発性)Sweet病:比較的短期間で改善することが多く、予後も良好です。

悪性腫瘍関連Sweet病:基礎疾患の経過に影響されるため、治療期間が長期化することがあります。

薬剤誘発性Sweet病:原因薬剤の中止により速やかに改善することが多いですが、再投与による再発に注意が必要です。

妊娠関連Sweet病:通常、出産後に自然軽快する傾向がありますが、経過観察が大切です。

再発リスクと長期予後

Sweet病は再発の可能性がある疾患です。

再発リスクに影響を与える要因

  • 基礎疾患の存在
  • 治療の中断や不適切な減量
  • ストレスや感染症
  • 遺伝的素因

再発率は報告によって異なりますが、30〜50%程度とされています。

長期予後は概ね良好ですが、再発を繰り返す場合や内臓病変を伴う場合は、より慎重な管理が必要です。

予後因子影響
早期診断・治療良好
基礎疾患の管理重要
再発予防継続的な注意
内臓病変慎重な経過観察

薬の副作用や治療のデメリットについて

Sweet病の治療にはさまざまな薬剤が使用され、これらの薬には副作用のリスクがあります。

全身性ステロイド療法の副作用

全身性ステロイド療法は効果的ですが、長期使用による副作用のリスクが高いです。

短期間の使用でも、一部の副作用が現れる可能性があります。

短期的な副作用長期的な副作用
食欲増進骨粗鬆症
不眠糖尿病
気分変動高血圧
胃部不快感白内障

局所ステロイド療法のデメリット

局所ステロイド療法は全身性の副作用は少ないですが、長期使用には注意が必要です。

皮膚萎縮や毛細血管拡張などの局所的な副作用が生じる場合があり、特に、顔面や間擦部など皮膚の薄い部位での使用には慎重さが求められます。

また、広範囲に使用する場合、全身性の影響が生じる可能性も。

コルヒチン療法の副作用

コルヒチンは比較的安全な薬剤ですが、以下のような副作用に注意が必要です。

  • 消化器症状(悪心、嘔吐、下痢)
  • 骨髄抑制
  • 筋肉痛
  • 末梢神経障害

特に、腎機能や肝機能が低下している患者さんでは、副作用のリスクが高まる可能性があります。

その他の治療薬の副作用

Sweet病の治療に使用される他の薬剤にも、それぞれ特有の副作用があります。

薬剤主な副作用
ダプソン溶血性貧血、肝機能障害
シクロスポリン腎機能障害、高血圧
抗TNF-α製剤感染症リスクの上昇

これらの薬剤を使用する際は、定期的な血液検査や臓器機能のモニタリングが不可欠です。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

保険適用の有無

Sweet病の通常の診察や一般的な検査、多くの薬剤治療は保険適用の対象です。

ただし、保険適用の範囲は常に一定ではなく、治療内容や使用する薬剤によって変わる可能性があります。

一般的な治療費の目安

一般的な治療費の目安

項目概算費用(3割負担の場合)
初診料1,000円〜2,000円
再診料500円〜1,000円
血液検査2,000円〜5,000円
皮膚生検5,000円〜10,000円
外用薬(1回分)500円〜2,000円
内服薬(1週間分)1,000円〜3,000円

保険適用の可否については、個々の状況によって異なる場合があります。詳細は診察時に担当医師に直接お尋ねください。

以上

参考文献

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Cohen PR, Kurzrock R. Sweet’s syndrome: a review of current treatment options. American journal of clinical dermatology. 2002 Apr;3:117-31.

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