頭皮に生じるしつこいフケや耐え難いかゆみは、単なる乾燥や衛生面の問題ではなく、乾癬という皮膚疾患が原因である可能性があります。
多くの患者さんが、人目を気にしたり、美容院へ行くことをためらったりと、大きなストレスを抱えていますが、シャンプー選びや薬の塗り方を少し工夫することで、症状をコントロールし、快適な毎日を取り戻すことは十分に可能です。
この記事では、頭皮の乾癬の特徴から、ケア方法、薬の効果を最大限に引き出す使い方まで、今日から実践できる改善法を詳しく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
頭皮乾癬の正体と他の皮膚疾患との違い
頭皮のトラブルは外見上の変化を伴うため、多くの患者さんが不安を感じやすいものです。フケやかゆみが出る病気は乾癬だけではないため、まずはご自身の症状がどのような特徴を持っているのかを正しく理解する必要があります。
脂漏性皮膚炎との見分け方
頭皮にフケやかゆみが生じた際、最初によく間違われるのが脂漏性皮膚炎です。
脂漏性皮膚炎は、マラセチアというカビの一種が皮脂を分解することで炎症が起こりますが、乾癬は免疫システムの異常により皮膚のターンオーバーが過剰になることで発症します。
乾癬のフケは銀白色でカサカサしており、皮膚が少し盛り上がっていて、脂漏性皮膚炎のフケは黄色っぽく湿り気を帯びていることが多い傾向があります。
さらに、乾癬の場合はフケを無理に剥がすと下の皮膚から点状の出血が見られるアウスピッツ現象という特有のサインが現れることがありますが、脂漏性皮膚炎ではこのような現象は稀です。
乾癬と脂漏性皮膚炎の特徴比較
| 比較項目 | 頭皮の乾癬 | 脂漏性皮膚炎 |
|---|---|---|
| フケの状態 | 銀白色で乾燥しており、重なって厚くなる | 黄色味を帯びており、湿り気がある |
| 皮膚の状態 | 境界がはっきりした紅斑と盛り上がりがある | 境界が不明瞭で、全体的に赤みがある |
| 髪の生え際 | 生え際を超えておでこや耳の後ろまで広がる | 生え際の内側にとどまることが多い |
なぜ頭皮に症状が出やすいのか
乾癬は全身どこにでも発症する可能性がありますが、中でも頭皮は発症頻度が極めて高い部位で、頭皮という場所が持つ特殊な環境が関係しています。
頭皮は髪の毛によって常に覆われているため、湿気がこもりやすく、また紫外線が届きにくい場所です。本来、日光浴は乾癬の症状を和らげる効果がありますが、髪の毛が紫外線を遮断してしまいます。
さらに、クシで髪をとかしたり、無意識に手で触れたり、帽子の着脱を繰り返したりすることで、物理的な刺激を頻繁に受けます。
乾癬には、刺激を受けた場所に新しい発疹ができるケブネル現象という特性があるため、日常的な摩擦や圧迫が多い頭皮は症状が出やすく、治りにくいです。
見逃してはいけない初期サイン
頭皮の乾癬は、初期段階では単なる乾燥によるフケや、シャンプーが合わないことによるかゆみと誤解されがちですが、放置すると症状が悪化し、炎症が長期化することで脱毛を伴うこともあります。
初期のサインは、髪の生え際や耳の後ろが赤くなる、フケが雪のようにパラパラと落ちるのではなく塊のようにボロボロと落ちる、かゆみが強く夜も眠れないといった症状です。
また、頭皮に触れたときに明らかな凹凸や厚みを感じる場合も注意が必要で、気づいた段階で、市販薬で様子を見るのではなく、皮膚科を受診してください。
かゆみとフケが悪化する原因の理解
治療を行っているのになかなか良くならない場合、知らず知らずのうちに悪化要因を日常生活で作り出している可能性があります。
かゆみやフケがなぜ発生し、何が引き金となって増強するのかを知ることで、日々の行動を見直し、症状の波を穏やかにすることができます。
炎症のサイクルと免疫の関係
乾癬の症状である皮膚の盛り上がりやフケは、皮膚の細胞が通常よりもはるかに速いスピードで生まれ変わることで生じます。健康な皮膚が約45日かけて生まれ変わるのに対し、乾癬の患部ではわずか4日から5日で角層まで到達してしまいます。
急激な増殖は、体内の免疫細胞が何らかのきっかけで活性化し、TNF-αやIL-17、IL-23といった炎症を生じさせる物質(サイトカイン)を過剰に放出することによって起きます。
炎症性サイトカインがかゆみの神経を刺激し、激しいかゆみを生じさせると同時に、皮膚の細胞分裂を異常に加速させるアクセルを踏み続けてしまうのです。
日常生活に潜む悪化のトリガー
乾癬の症状は一定ではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返し、この波を作り出しているのが、日常生活の中に潜む様々なトリガーです。
気候の変化や体調不良はもちろんのこと、精神的なストレスや食生活の乱れも免疫バランスを崩し、炎症を悪化させる要因となります。特に冬場の乾燥は大敵ですが、夏場の汗も放置すると刺激となり、かゆみを増強させます。
また、風邪や扁桃炎などの感染症にかかると、免疫系が活発になり、それに伴って乾癬の症状も急激に悪化することがあるので、ご自身の生活を振り返り、何が症状を悪化させているのかを把握することが重要です。
症状を悪化させる主な要因
- 精神的なストレスや過労による自律神経の乱れ
- 皮膚の乾燥や湿度の低下によるバリア機能の低下
- 感染症(風邪や扁桃炎など)による免疫反応の活性化
- 喫煙や過度なアルコール摂取による体内炎症の促進
- 物理的な刺激(掻きむしり、きつい帽子の着用、強いブラッシング)
掻くことがさらなる悪化を招く
かゆみがあると、どうしても患部を掻きたくなりますが、これは最も避けなければならない行為です。爪で皮膚を傷つけると、刺激によってさらに炎症が悪化し、範囲が広がるケブネル現象が起こります。
また、傷ついた皮膚から黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込むリスクも高まります。無意識に寝ている間に掻いてしまうことを防ぐために、爪を短く切り、寝るときに綿の手袋をするなどの対策も有効です。
かゆみが強い場合は、保冷剤をタオルで巻いて患部を冷やしたり、医師に相談して抗ヒスタミン薬などのかゆみ止めの飲み薬を処方してもらうなど、物理的に掻く以外の方法で対処することが大切です。
頭皮に優しいシャンプーの選び方
毎日の洗髪は頭皮ケアの基本ですが、使用するシャンプー剤の選択を誤ると、かえって頭皮を刺激し症状を悪化させる原因となります。洗浄力が強すぎず、かつ汚れはしっかり落とせるものを選ぶことが、頭皮環境を整えるための鍵です。
洗浄成分の種類と見極め方
シャンプーの主成分である界面活性剤には様々な種類があり、それぞれ洗浄力や刺激の強さが異なります。乾癬の患者さんには、必要な皮脂を取りすぎず、刺激の少ないアミノ酸系やベタイン系の洗浄成分が配合されたものが適しています。
アミノ酸系成分は人間の皮膚や髪を構成するタンパク質と同じ成分でできているため、肌への親和性が高く、バリア機能を守りながら洗うことができます。
市販の安価なシャンプーによく使われる高級アルコール系(石油系)は、泡立ちは良いものの脱脂力が強すぎて、乾燥や刺激を招く恐れがあるため注意が必要です。
成分表示を確認し、「ラウレス硫酸Na」などが上位にきているものは避けましょう。
主な洗浄成分の特徴と選び方
| 成分系統 | 代表的な成分名表示 | 乾癬頭皮への適合性 |
|---|---|---|
| アミノ酸系 | ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルメチルアラニンNa | 刺激が少なく保湿力があり適している |
| ベタイン系 | コカミドプロピルベタイン | 非常にマイルドで赤ちゃんにも使えるほど優しい |
| 高級アルコール系 | ラウレス硫酸Na、ラウリル硫酸Na | 洗浄力が強すぎるため乾燥を招きやすく不向き |
頭皮のpHバランスと低刺激性
健康な頭皮は弱酸性に保たれており、バランスが崩れるとバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなります。
アルカリ性の石鹸系シャンプーなどは、洗浄力は高いものの頭皮をアルカリ性に傾けてしまい、キューティクルを開いて髪のきしみを招いたり、乾燥を促進させたりすることがあります。
弱酸性のシャンプーを選ぶことが頭皮の健康維持には役立ち、また、香料や着色料、防腐剤などの添加物も、敏感な頭皮にはアレルゲンとなり刺激となる可能性があります。
できるだけ成分数が少なくシンプルな処方のものや、皮膚科医が推奨する敏感肌用として開発された製品を選ぶと安心です。
医薬部外品シャンプーの活用
フケやかゆみを防ぐ有効成分が配合された医薬部外品のシャンプーも市販されていて、抗炎症成分や抗真菌成分(ミコナゾール硝酸塩など)が含まれているものは、症状の緩和に役立つことがあります。
ただし、薬用シャンプーはすべての方に合うわけではなく、人によっては成分が合わずにかぶれてしまうこともあります。
使用後に赤みが増したり、ヒリヒリとした刺激を感じたり、かゆみが強くなったりした場合は直ちに使用を中止し、医師に相談することが大事です。
負担をかけない正しい洗髪の手順
良いシャンプーを選んでも、洗い方が間違っていては意味がありません。ゴシゴシと力を入れて洗うことは厳禁です。
頭皮をいたわりながら汚れを落とす、正しい洗髪の作法を身につけることで、薬の浸透も良くなり、治療効果の向上が期待できます。
洗髪前の準備と予洗いの重要性
シャンプー剤をつける前に、まずブラッシングで髪の絡まりをほどき、ホコリや大きなフケを落としておき、その後、ぬるま湯で髪と頭皮を十分に濡らす予洗いを時間をかけて行います。
この工程は単に髪を濡らすだけでなく、お湯で頭皮の毛穴を開かせ、皮脂汚れを緩めるために非常に重要です。時間をかけて、目安としては2分から3分程度しっかりとお湯を流します。
整髪料を多く使っている場合は、予洗いをさらに念入りに行うことで、シャンプーの泡立ちも格段に良くなり、摩擦を減らすことができます。
お湯の温度は熱すぎるとかゆみを誘発し、必要な皮脂まで溶かし出して乾燥の原因にもなるため、体温より少し高い38度から39度程度が好ましいです。
洗髪時のお湯の温度と影響
| 温度帯 | 頭皮への影響 | 推奨度 |
|---|---|---|
| 40度以上 | 皮脂を落としすぎ乾燥を招き、かゆみが増す | 避けるべき |
| 38度〜39度 | 汚れを浮かせつつ、頭皮への負担が少ない | 推奨される |
| 36度以下 | 皮脂汚れが落ちにくく、洗髪不足になる可能性がある | 汚れが多い場合は不向き |
爪を立てずに洗うテクニック
シャンプー剤は直接頭皮につけず、手のひらで十分に泡立ててから頭皮に乗せ、洗う際は、絶対に爪を立ててはいけません。指の腹を使い、頭皮を動かすように優しくマッサージしながら洗います。
この時、髪の毛同士を擦り合わせるのではなく、泡のクッションを利用して頭皮の汚れを吸着させるイメージで行います。特に乾癬の厚いフケ(鱗屑)がある場所は、気になって爪でカリカリと剥がしたくなりますが、これは絶対にやめてください。
無理に剥がそうとせず、泡で包み込んで優しくなでるように洗うことが大切です。分厚いフケも、毎日優しく洗うことで徐々にふやけて自然に取れやすくなります。
すすぎ残しを防ぐ徹底した流し方
シャンプーの洗浄成分が頭皮に残ると、刺激物となって炎症を起こすことがあるので、洗う時間の2倍から3倍の時間をかけて、ヌルつきが完全になくなるまで丁寧にすすぎます。
特に耳の後ろや襟足、生え際は泡が残りやすく、すすぎ残しが多い部分なので、意識して流すことが必要です。
シャワーヘッドを頭皮に近づけ、手にお湯を溜めながら地肌にお湯を行き渡らせるためすすぎを行うと、地肌に残った成分を効果的に洗い流すことができます。髪の長い方は、髪をかき分けてお湯を直接地肌に当てることが大切です。
ドライヤーを使った優しい乾かし方
洗髪後はタオルで優しく押さえるように水分を拭き取り、時間を置かずにすぐにドライヤーで乾かします。自然乾燥は頭皮の湿度が高い状態が長く続くため、マラセチア菌などの雑菌繁殖を招き、ニオイやかゆみの原因となります。
ドライヤーは頭皮から20センチ以上離し、一箇所に熱が集中しないように常にヘッドを振りながら風を当てます。
温風で8割程度乾かした後は、冷風に切り替えて仕上げると、キューティクルが引き締まり、頭皮の火照りを鎮めてかゆみを予防する効果があります。
外用薬の効果を最大化する塗り方
処方された薬を塗っているのに効果が感じられない場合、薬の選び方や塗り方に問題があることも少なくありません。頭皮は髪の毛があるため薬が届きにくく、工夫が必要です。
主な外用薬の種類と特徴
頭皮の乾癬治療には、主にステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬、そして2つを配合した配合剤が用いられます。
ステロイドは炎症を強力に抑える即効性があり、かゆみや赤みを素早く鎮める薬剤です。ビタミンD3は皮膚細胞の過剰な増殖を正常化させる働きがあり、盛り上がった発疹を平らにする効果があります。
症状の強さや部位、生活スタイルに合わせて、単独あるいは組み合わせて使用し、最近では、1日1回で済む配合剤のローションなども登場しており、患者さんの負担が軽減されています。
薬の形状(基剤)による使い分け
| 形状タイプ | メリット | 使用時の注意点 |
|---|---|---|
| ローション | サラッとしており、髪の生えている部分に広げやすい | アルコールを含むものは、掻き傷があると染みることがある |
| クリーム・軟膏 | 保湿力が高く、厚いフケがある部分にしっかり付着する | 髪に付くとベタつきやすく、洗い流しにくい場合がある |
| ゲル・シャンプー | 頭皮用に開発されたものが多く、使用感が比較的良い | 製品によって使い方が異なるため医師の指示に従う |
髪をかき分けて患部に届ける
薬を塗る際の最大のポイントは、髪の毛ではなく頭皮に薬を塗ることです。髪の上から擦り込んでも、薬液が髪に付着するだけで患部には届きません。
面倒でもクシや指を使って髪を確実にかき分け、露出した頭皮の患部に直接薬を置くように塗布します。ローションタイプの場合、容器の先端を頭皮にトントンと軽く当てて薬液を出し、指の腹で優しく広げます。
このとき、強く擦り込む必要はなく、優しくなじませるだけで十分浸透します。もしローションが染みて痛い場合は、刺激の少ないエマルジョンタイプやクリームタイプに変更できるか医師に相談してください。
確実な塗布のための手順
- 鏡を見ながら、患部の場所を正確に確認する
- クシを使って髪を分け、患部を露出させる(スライスを取る)
- 容器の先を頭皮に近づけるか、指先に薬を取ってチョンと乗せる
- 指の腹で優しくなじませる(擦り込まない)
- 次の患部へ移動し、同様の手順を繰り返す
塗る回数とタイミングの重要性
薬の効果を最大限に発揮させるには、医師から指示された回数を守ることが大事です。
一般的には1日1回から2回の塗布が指示されます。特にお風呂上がりは、皮膚が水分を含んで柔らかくなっており、毛穴も開いているため、薬の浸透が非常に良いゴールデンタイムです。
水分を拭き取った後、なるべく早めに塗布することをおすすめします。自己判断で回数を減らしたり、調子が良いからといって急に中止したりせず、継続的にケアを行うことが寛解への近道です。
また、副作用を心配して極端に薄く塗る方がいますが、これでは効果が得られません。
頭皮環境を整える生活習慣の工夫
皮膚は内臓の鏡とも言われるように、体内の状態を反映します。外側からのケアだけでなく、食事、衣服、ストレス管理といった生活全般を見直すことで、炎症が起こりにくい体質へと導くことができます。
無理なく続けられる範囲で、生活の中に改善点を取り入れていきましょう。
食事が炎症に与える影響
乾癬はメタボリックシンドロームとの関連が深いことが多くの研究で示されています。肥満は脂肪細胞から炎症性物質を分泌させ、体内の炎症レベルを高めて薬の効果を弱めることがあります。
高カロリーな食事、特に動物性脂肪や糖質の摂りすぎには注意が必要です。
代わりに、抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸を多く含む青魚(サバ、イワシ)やアマニ油、抗酸化作用のあるビタミン類が豊富な緑黄色野菜を積極的に摂取するよう心がけます。
また、香辛料などの刺激物はかゆみを誘発することがあるため、症状が強い時期は控えたほうが無難です。
過度なアルコール摂取も血管を拡張させかゆみを増強させるだけでなく、治療薬の効果に影響を与えることがあるため、適量を守り、休肝日を設けましょう。
積極的に摂りたい食材と控えたい食材
| 分類 | 食材・要素 | 理由 |
|---|---|---|
| 摂りたいもの | 青魚(サバ、イワシ等) | EPAやDHAが含まれ、炎症を抑える働きが期待できる |
| 摂りたいもの | 緑黄色野菜 | ビタミンや抗酸化物質が豊富で皮膚の健康を保つ |
| 控えたいもの | スナック菓子、脂身の多い肉 | カロリー過多や炎症の促進につながりやすい |
ストレスを溜めない工夫
ストレスは自律神経のバランスを崩し、免疫系に直接作用して乾癬の悪化因子となりますが、ストレスを完全になくすことは現代社会では困難で、重要なのは、ストレスを溜め込まずに上手に発散する方法を持つことです。
軽い運動や趣味の時間を持つこと、十分な睡眠をとることは、自律神経を整え、皮膚の回復力を高める助けとなります。入浴はシャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることでリラックス効果が高まります。
ただし、長風呂は肌の乾燥を招くこともあるため、入浴剤を活用して保湿ケアを同時に行うのも良いアイデアです。
今日からできるストレスケア
- ぬるめのお湯にゆっくり浸かりリラックスする
- ウォーキングなどの軽い有酸素運動を行う
- 就寝前のスマートフォンの使用を控える
- 好きな音楽を聴いたり、アロマを活用する
- 悩みがあるときは一人で抱えず誰かに話す
衣類や枕カバーの素材選び
頭皮や首周りに触れる素材も、刺激の少ないものを選ぶことが大切です。
化学繊維やウールなどは繊維が硬く、チクチクとした物理的刺激になりやすいため、直接肌に触れる帽子や枕カバーは、吸湿性が高く肌触りの良い綿(コットン)やシルク素材のものを選ぶと良いでしょう。
帽子を被る際は、通気性の良いものを選び、室内では脱ぐなどして頭皮が蒸れないように注意します。蒸れは雑菌の繁殖を助け、かゆみの原因です。
また、洗濯洗剤や柔軟剤の成分が残留していると刺激になることもあるため、洗剤の使用量を守り、しっかりすすぐことも忘れずに行います。
やりがちな間違いと注意点
良かれと思って行っているケアが、症状を長引かせる原因になっていることがあります。ここではよく見られる注意点をまとめます。
清潔にしすぎるという落とし穴
フケが気になると、どうしても「不潔だから出るのではないか」「洗えば落ちる」と考えてしまい、1日に何度もシャンプーをしたくなりますが、過度な洗髪は頭皮に必要な皮脂まで奪い去り、乾燥を招いてバリア機能を破壊します。
その結果、皮膚は失われた油分を補おうとして過剰に皮脂を分泌したり、乾燥によるかゆみが増してさらに掻いてしまったりする悪循環に陥ります。
基本的に洗髪は1日1回で十分で、もし汗をかいて気持ち悪い場合は、お湯だけで流す湯シャンを取り入れるなど、洗いすぎない工夫が必要です。
フケを無理に剥がす行為
鏡を見ると、浮き上がったフケやカサブタを取り除きたくなる衝動に駆られます。特にシャンプー前などにクシでガリガリと鱗屑を剥がしてから洗おうとする方がいますが、絶対に避けましょう。
無理に剥がすとその下の未熟な皮膚が露出し、点状の出血や浸出液が出ることがあります。傷ついた皮膚を修復しようと細胞分裂がさらに加速し、フケが以前よりも増え、患部が拡大するケブネル現象を起こします。
自然に剥がれ落ちるのを待つか、ワセリンやオイルを塗って十分にふやかしてから優しく洗うなど、皮膚を傷つけないケアを徹底することが、フケを減らす最短のルートです。
自己判断での治療中断
薬を使い始めて症状が少し良くなり、フケやかゆみが治まると、つい薬を塗るのをやめてしまったり、通院を中断してしまったりすることがありますが、乾癬は見た目が良くなっても、皮膚の奥深くではまだ炎症の火種が残っていることが多いです。
この段階で完全に治療をやめてしまうと、少しの刺激ですぐに再燃してしまいます。医師が「薬を減らしても良い」「週末だけの塗布にしよう(プロアクティブ療法)」と判断するまでは、根気強く治療を続けることが重要になります。
良い状態を長く保つ(寛解維持)ためには、自己判断せず、医師と相談しながら減薬のプロセスを進めることが必要です。
日々の行動チェックリスト
- 1日に2回以上シャンプーをしていないか
- 無意識に頭皮を掻いたり、フケを剥がしていないか
- 薬を髪の毛ではなく、頭皮に塗れているか
- 少し良くなったからといって薬を中断していないか
- 睡眠不足や不規則な生活が続いていないか
頭皮乾癬に関するよくある質問
診察室で患者さんから頻繁に寄せられる質問と回答をまとめました。
- 頭皮の乾癬は他人にうつりますか?
-
乾癬はウイルスや細菌による感染症ではなく、ご自身の免疫システムの異常によって起こる炎症性の病気です。
タオルや帽子を共有したり、一緒にお風呂に入ったり、理美容室でカットをしたりしても、他人に感染することは絶対になく、温泉やプールに入ることも問題ありません。
- ヘアカラーやパーマをしても大丈夫ですか?
-
症状が落ち着いている時期であれば可能です。ただし、頭皮に強い炎症やかき傷、出血がある時期に行うと、薬剤の刺激で症状が悪化する危険性があ頭皮の状るので、態が悪いときは控えた方がいいでしょう。
症状が落ち着いていて施術を行う場合は、事前に事情を伝え、頭皮に保護クリームを塗ってもらう、頭皮に薬剤がつかないように塗布してもらう、低刺激の酸性カラーやヘアマニキュアを選んでもらうなど、相談してください。
- 食事制限だけで乾癬を治すことはできますか?
-
食事療法は、治療の補助的な役割を果たします。
しかし、肥満や偏った食生活は炎症を悪化させる大きな要因となるため、改善することで薬の効果が出やすくなったり、再発のリスクを下げたりすることは十分に可能です。
極端なダイエットや特定の食品だけを食べるような偏った方法は避け、バランスの良い食事を心がけながら、皮膚科での標準的な治療と並行して行ってください。
- ずっと薬を使い続けなければなりませんか?
-
乾癬は慢性的な病気であるため、長期的な付き合いが必要ですが、常に強い薬を毎日塗り続けるわけではありません。
症状が良くなれば、薬を塗る回数を減らしたり(1日1回から2日に1回へ)、弱い薬に切り替えたりする維持療法へと移行します。また、週末だけ薬を塗って再発を防ぐ方法もあります。
最終的には保湿剤だけで良い状態を保つことを目標に、医師と相談しながら一人ひとりに合わせた治療計画を立てていきます。
以上
参考文献
Kubota K, Kamijima Y, Sato T, Ooba N, Koide D, Iizuka H, Nakagawa H. Epidemiology of psoriasis and palmoplantar pustulosis: a nationwide study using the Japanese national claims database. BMJ open. 2015 Jan 1;5(1):e006450.
Takahashi H, Nakamura K, Kaneko F, Nakagawa H, Iizuka H, Japanese Society for Psoriasis Research. Analysis of psoriasis patients registered with the Japanese Society for Psoriasis Research from 2002–2008. The Journal of dermatology. 2011 Dec;38(12):1125-9.
Saeki H, Nakagawa H, Ishii T, Morisaki Y, Aoki T, Berclaz PY, Heffernan M. Efficacy and safety of open‐label ixekizumab treatment in Japanese patients with moderate‐to‐severe plaque psoriasis, erythrodermic psoriasis and generalized pustular psoriasis. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. 2015 Jun;29(6):1148-55.
Mosca M, Hong J, Hadeler E, Brownstone N, Bhutani T, Liao W. Scalp psoriasis: a literature review of effective therapies and updated recommendations for practical management. Dermatology and therapy. 2021 Jun;11(3):769-97.
Van de Kerkhof PC, De Hoop D, De Korte J, Kuipers MV. Scalp psoriasis, clinical presentations and therapeutic management. Dermatology. 1998 Dec 18;197(4):326-34.
Chan CS, Van Voorhees AS, Lebwohl MG, Korman NJ, Young M, Bebo Jr BF, Kalb RE, Hsu S. Treatment of severe scalp psoriasis: from the Medical Board of the National Psoriasis Foundation. Journal of the American Academy of Dermatology. 2009 Jun 1;60(6):962-71.
Papp K, Berth‐Jones J, Kragballe K, Wozel G, De La Brassinne M. Scalp psoriasis: a review of current topical treatment options. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. 2007 Oct;21(9):1151-60.
Camela E, Ocampo‐Garza SS, Cinelli E, Villani A, Fabbrocini G, Megna M. Therapeutic update of biologics and small molecules for scalp psoriasis: a systematic review. Dermatologic Therapy. 2021 Mar;34(2):e14857.
Ruano J, Suárez-Fariñas M, Shemer A, Oliva M, Guttman-Yassky E, Krueger JG. Molecular and cellular profiling of scalp psoriasis reveals differences and similarities compared to skin psoriasis. PLoS One. 2016 Feb 5;11(2):e0148450.
Blakely K, Gooderham M. Management of scalp psoriasis: current perspectives. Psoriasis: targets and therapy. 2016 Mar 29:33-40.
