黄色腫(xanthoma)とは、血液中の脂質バランスが崩れることにより、皮膚や腱の組織にコレステロールや中性脂肪などが蓄積して形成される、黄色みを帯びた腫瘤性病変です。
この症状の背景には、遺伝的要因による代謝異常や二次性の脂質異常症が存在し、好発部位は眼瞼部、手掌部、肘頭部、膝蓋部などで、進行に伴って複数の部位に出現することも珍しくありません。
腫瘤は通常、境界明瞭で弾性軟な性状を呈し、表面は平滑で圧痛を伴わないことが特徴的です。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
黄色腫の病型
黄色腫には、主に眼瞼黄色腫、腱黄色腫、結節性黄色腫という3つの代表的な病型があります。
黄色腫の基本的な病型分類
黄色腫の病型分類においては、発生部位や形態的特徴に基づいて、眼瞼黄色腫、腱黄色腫、結節性黄色腫という3つの主要な分類があり、それぞれの特徴的な所見が診断の決め手です。
病型 | 好発部位 | 形態的特徴 |
---|---|---|
眼瞼黄色腫 | 上下眼瞼 | 平坦または軽度隆起性 |
腱黄色腫 | アキレス腱、手指伸筋腱 | 結節状、索状 |
結節性黄色腫 | 肘、膝、臀部 | 隆起性、結節状 |
眼瞼黄色腫の特徴と臨床所見
眼瞼黄色腫は、上下眼瞼の内眼角付近に好発する特徴的な黄色調の扁平な病変として現れ、加齢とともに徐々に拡大し、高コレステロール血症や糖尿病などの代謝異常を有する患者さんに多く見られます。
眼瞼黄色腫の特徴的な臨床所見は、両側性に出現することが多く、境界が比較的明瞭で、表面が滑らかな黄色調の斑状病変を呈することです。
病変の大きさは数ミリメートルから数センチメートルまでさまざまですが、対称性に見られます。
- 両側性に出現することが多い
- 境界明瞭な黄色調の斑状病変
- 表面は滑らかで平坦
- 内眼角付近に好発する
- 徐々に拡大する傾向がある
腱黄色腫の形態と特性
腱黄色腫は、アキレス腱や手指伸筋腱などの腱組織に沿って発生し、家族性高コレステロール血症などの遺伝性脂質代謝異常症との関連が深いです。
この病型の特徴として、触診で硬い結節状または索状の隆起として触知され、両側性に出現することが多く、アキレス腱部では著明な肥厚を示します。
腱黄色腫の発生メカニズムについては、異常に上昇したLDLコレステロールが腱組織内に蓄積することで、マクロファージの浸潤と泡沫細胞の形成が促進され、腱組織の肥厚や変形が起こります。
好発部位 | 臨床的特徴 | 触診所見 |
---|---|---|
アキレス腱 | 両側性肥厚 | 弾性硬 |
手指伸筋腱 | 索状隆起 | 可動性良好 |
膝蓋腱 | 結節状腫瘤 | 境界明瞭 |
結節性黄色腫の臨床的特徴
結節性黄色腫は、主に肘、膝、臀部などの圧力や摩擦を受けやすい部位に好発し、黄色みを帯びた隆起性の結節として現れる病型です。
大きな特徴は、個々の結節の大きさが様々で、数ミリメートルから数センチメートルまでの幅広い範囲に及ぶことが挙げられ、また複数の結節が集簇して見られることも珍しくありません。
結節性黄色腫の発生には、局所的な機械的刺激や圧力が関与しており、特に関節部周辺での発生頻度が高いことから、日常生活における物理的なストレスとの関連性が示唆されています。
- 黄色調の隆起性結節として出現
- 圧力や摩擦を受けやすい部位に好発
- 大きさは数ミリメートルから数センチメートル
- 複数の結節が集簇することがある
- 関節部周辺での発生頻度が高い
黄色腫の症状
黄色腫は、皮膚や腱の組織に脂質が蓄積することで特徴的な黄色みを帯びた隆起性病変として現れ、進行性に増大していきます。
黄色腫の主な症状と特徴
黄色腫の病変は通常無症状で進行しながら体表に黄色から橙色の色調変化を伴う扁平もしくは隆起性の結節として現れ、血中脂質値の上昇程度に応じて徐々に大きくなりながら、複数の部位に同時に見られることも多いです。
皮膚表面は滑らかで触診すると柔らかく弾力のある性状を示し、痛みを伴わない一方、病変の進行に伴って周囲組織との境界が明瞭となっていきます。
症状の性質 | 特徴的な所見 |
---|---|
色調 | 黄色~橙色 |
形状 | 扁平~隆起性 |
触感 | 弾力性軟 |
痛み | なし |
進行速度 | 緩徐 |
好発部位と形態的特徴
眼瞼部の黄色腫は上眼瞼に好発し、薄い皮膚を通して黄色みを帯びた平板状の隆起として観察され、進行とともに徐々に大きさを増しながら周囲との境界が明瞭になっていきます。
肘部や膝部などの関節部位では腱黄色腫として認められ、皮下組織の深部に及ぶ結節性病変として触知できます。
手掌部や足底部に出現する線状黄色腫は、皮膚の襞に沿って黄色の線状隆起として認められ、時間経過とともに徐々に明瞭化しながら、触診で明確な硬結として触知できるようになることが特徴です。
病変の進行と性状変化
初期の病変は皮膚の色調変化としてわずかに認められる程度ですが、時間経過とともに徐々に隆起性となって明確な境界を持つ結節へと変化していき、さらに進行すると複数の病変が融合して大きな腫瘤を形成することもあります。
進行段階 | 病変の性状 |
---|---|
初期 | 淡い黄色調の色素沈着 |
中期 | 明確な境界を持つ扁平隆起 |
後期 | 大きな結節性病変 |
多発期 | 複数の病変が融合 |
黄色腫の原因
黄色腫は、血中の脂質代謝異常を背景として、コレステロールやその他の脂質が皮膚や軟部組織に蓄積することで発症する疾患で、遺伝的要因や後天的な代謝異常など、複数の要因が複雑に関与しています。
脂質代謝異常と黄色腫の関連性
脂質代謝異常は黄色腫発症の根本的な原因で、特に血中のLDLコレステロールやトリグリセリドの上昇が、皮膚組織における脂質の蓄積を促進することで、黄色腫の形成に直接的に関与しています。
血中脂質の異常は、遺伝的な要因による一次性高脂血症や、生活習慣病などに起因する二次性高脂血症など、様々な背景から生じます。
脂質代謝異常の種類 | 主な特徴 | 関連する黄色腫 |
---|---|---|
家族性高コレステロール血症 | LDL受容体の異常 | 腱黄色腫 |
原発性高脂血症 | アポリポ蛋白の異常 | 結節性黄色腫 |
二次性高脂血症 | 基礎疾患に伴う異常 | 眼瞼黄色腫 |
遺伝的要因による黄色腫の発症機序
遺伝的要因による黄色腫の発症には、LDL受容体遺伝子の変異やアポリポ蛋白遺伝子の異常など、様々な遺伝子変異が関与していることが、遺伝学的研究により明らかにされてきました。
家族性高コレステロール血症では、LDL受容体の機能異常により血中のLDLコレステロールが効率的に回収されないことで、持続的な高コレステロール血症が起こり、黄色腫が発症します。
遺伝性の脂質代謝異常症では、若年期から高脂血症を呈することが多く、早期からの黄色腫形成がみられることから、家族歴の詳細な聴取が診断において重要です。
- LDL受容体遺伝子の変異
- アポリポ蛋白E遺伝子の多型
- PCSK9遺伝子の機能獲得変異
- ABCG5/ABCG8遺伝子の変異
- リポ蛋白リパーゼ遺伝子の異常
後天的要因と生活習慣病の影響
後天的な要因による黄色腫の発症には、糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、肝疾患、腎疾患といった基礎疾患が深く関与し、疾患に伴う代謝異常が脂質代謝に影響を及ぼすことで、二次的に黄色腫が形成されます。
生活習慣病との関連では、過度の飲酒や不適切な食生活、運動不足などの生活習慣の乱れが、脂質代謝異常を起こし発症リスクを高める要因です。
後天的要因 | 代謝への影響 | 発症機序 |
---|---|---|
糖尿病 | インスリン抵抗性 | 脂質代謝異常 |
甲状腺機能低下症 | 代謝低下 | コレステロール上昇 |
肝疾患 | 脂質代謝障害 | リポ蛋白異常 |
炎症反応と組織学的変化
黄色腫の形成過程では、血中の酸化LDLがマクロファージに取り込まれることで泡沫細胞が形成され、これらの細胞が組織内に蓄積することで特徴的な黄色調の病変が形成されます。
組織における炎症反応の過程では様々な炎症性メディエーターやサイトカインが放出され、更なる炎症細胞の遊走や活性化を促進することで、病変の進行や拡大につながることが示唆されています。
- 酸化LDLの組織内蓄積
- マクロファージの活性化
- 泡沫細胞の形成
- 炎症性サイトカインの産生
- 組織リモデリングの進行
黄色腫の検査・チェック方法
黄色腫の診断は、特徴的な皮膚症状の視診による臨床診断を起点として、血液検査による脂質異常の確認、皮膚生検による組織学的検査、そして各種画像検査を組み合わせることで、総合的な診断を確立していきます。
初診時の診察と視診のポイント
初診時診察において、黄色腫の視診による臨床所見の詳細な観察は診断の第一歩で、病変の形態、色調、分布、大きさなどの特徴を評価することが重要です。
視診では、黄色調を呈する皮疹の性状や分布パターンを注意深く観察し、特に眼瞼部、関節部、腱付着部などの好発部位における病変の有無を確認します。
診察項目 | 観察のポイント | 臨床的意義 |
---|---|---|
皮疹の色調 | 黄色~橙色の程度 | 脂質蓄積の程度 |
病変の形態 | 平坦・隆起の程度 | 病型の鑑別 |
分布パターン | 対称性・非対称性 | 全身性疾患の有無 |
触診による病変の硬さや可動性の確認も診断において欠かせない要素で、腱黄色腫の診断では、アキレス腱部の触診所見が決め手となることが多いです。
血液検査による脂質異常の評価
血液検査は黄色腫の診断において不可欠な検査項目で、特に脂質プロファイルの詳細な評価を行うことで、背景にある代謝異常の程度や種類を把握できます。
基本的な脂質検査項目は、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪などです。
- 空腹時採血による脂質プロファイルの評価
- アポリポ蛋白検査による詳細な脂質代謝評価
- 肝機能検査による代謝状態の確認
- 甲状腺機能検査による内分泌状態の評価
- 血糖値検査による糖代謝異常の確認
皮膚生検と病理組織学的検査
皮膚生検による組織学的検査は、黄色腫の確定診断において中心的な役割を果たし、非典型的な症例や診断が困難な症例において、決定的な情報を提供することがあります。
生検組織の病理学的検査では、泡沫細胞の存在や脂質の蓄積状態、炎症細胞の浸潤程度などを詳細に観察することで、病変の性質や進行度を評価することが可能です。
病理所見 | 観察項目 | 診断的意義 |
---|---|---|
泡沫細胞 | 数と分布 | 脂質蓄積の程度 |
炎症細胞 | 種類と程度 | 活動性の評価 |
線維化 | 程度と範囲 | 慢性度の判定 |
画像検査による病変の評価
画像検査は腱黄色腫などの深部病変の評価に有用で、超音波検査やMRI検査などを用いることで、病変の広がりや深さを正確に把握できます。
超音波検査では、腱の肥厚度や内部エコー性状の変化を評価することができ、アキレス腱黄色腫の診断において有用です。
MRI検査は深部組織における脂質の蓄積状態を評価し、大きな病変や複数の病変が存在する場合の全体像の把握に優れています。
- 超音波検査による腱の肥厚度評価
- MRIによる深部病変の範囲確認
- CT検査による石灰化の評価
- 軟部組織X線撮影による病変の評価
- 関節エコーによる付着部病変の確認
遺伝子検査と家族歴の調査
家族性高コレステロール血症などの遺伝性疾患が疑われる症例では、遺伝子検査による確定診断が大切で、LDL受容体遺伝子やアポリポ蛋白遺伝子などの解析が診断の確実性を高めます。
家族歴の詳細な聴取は、遺伝性疾患の可能性を評価する上で可能性のある重要な情報源となり、特に若年発症例や家族内発症例では、遺伝子検査の実施をすることが必要です。
黄色腫の治療法と治療薬について
黄色腫の治療には、原因となる脂質異常症に対する薬物療法を中心とした内科的治療と、皮膚症状に対する外科的切除を組み合わせて行います。
薬物療法による内科的治療
スタチン系薬剤による治療は高コレステロール血症を背景とする黄色腫に対して第一選択薬で、血中脂質値の正常化を通じて皮膚症状の進行抑制や退縮をもたらします。
フィブラート系薬剤は高トリグリセリド血症を伴う症例において効果を発揮し、スタチン系薬剤との併用療法によってより効果的な脂質低下作用が期待できることから、複合型脂質異常症における重要な治療選択肢です。
エゼチミブなどのコレステロール吸収抑制薬は、腸管からのコレステロール吸収を選択的に阻害することで脂質異常症の改善に寄与し、他の脂質低下薬との相乗効果も期待できることから、治療効果の増強を目指す際の併用薬として注目されています。
薬剤分類 | 主な作用機序 | 代表的な副作用 |
---|---|---|
スタチン系 | HMG-CoA還元酵素阻害 | 筋肉痛、肝機能障害 |
フィブラート系 | PPARα活性化 | 消化器症状、腎機能障害 |
エゼチミブ | コレステロール吸収阻害 | 頭痛、腹痛 |
胆汁酸吸着薬 | 胆汁酸再吸収阻害 | 便秘、消化不良 |
外科的治療のアプローチ
皮膚外科的手術による治療は、美容的な問題や機能障害を起こす大きな病変に対して実施され、局所麻酔下での切除術が一般的です。
腱黄色腫に対する手術療法では、関節機能への影響を考慮しながら病変の完全切除を目指します。
手術方法 | 適応となる病変 | 手術時間の目安 |
---|---|---|
単純切除術 | 小型~中型の限局性病変 | 30分~1時間 |
分層切除術 | 広範な平板状病変 | 1~2時間 |
腱鞘切除術 | 腱周囲の結節性病変 | 2~3時間 |
レーザー治療 | 表在性の色素沈着 | 15~30分 |
治療効果の評価と経過観察
治療開始後の効果判定には、血中脂質値の推移と皮膚症状の変化を総合的に評価することが必要で、定期的な血液検査と皮膚所見の観察を通じて治療方針の微調整を行います。
- HMG-CoA還元酵素阻害薬による初期治療反応 2~4週間で評価
- フィブラート系薬剤の効果発現 4~8週間で判定
- 外科切除後の経過観察 3~6ヶ月間の慎重な観察
- 複合的治療における効果判定 6ヶ月~1年での総合評価
- 再発予防のための長期フォローアップ 年1~2回の定期診察
治療における留意点と予後
黄色腫の治療においては、基礎疾患である脂質異常症のコントロールが最も大切であり、薬物療法の継続性と定期的な効果判定が治療成功の鍵です。
薬物療法における用量調整は、血中脂質値の変動や肝機能検査値を参考にしながら慎重に行う必要があり、特にスタチン系薬剤使用時には筋症状の出現に注意を払いながら投与量を決定します。
- 服薬アドヒアランスの確認と指導
- 副作用の早期発見と対応
- 定期的な血液検査による経過観察
- 皮膚症状の写真記録による評価
- 併存疾患の管理と治療調整
薬の副作用や治療のデメリットについて
黄色腫の治療では、脂質異常症の改善を目的とした薬物療法や外科的治療が行われますが、治療法にはそれぞれ特有の副作用やリスクがあります。
脂質低下薬による副作用
スタチン系薬剤は、黄色腫の原因となる脂質異常症の治療において中心的な役割を果たしていますが、筋肉症状や肝機能障害などの副作用に注意を払い、定期的な経過観察が不可欠です。
長期的なスタチン系薬剤の使用では、筋肉痛や筋力低下といった筋肉症状が出現することがあり、高齢者や腎機能低下のある患者さんでは、より慎重な経過観察を必要とします。
副作用の種類 | 症状 | 発現頻度 |
---|---|---|
筋肉症状 | 筋肉痛、脱力感 | 5-10% |
肝機能障害 | 肝酵素上昇 | 1-5% |
消化器症状 | 腹部不快感 | 3-7% |
スタチン系薬剤による肝機能障害は一過性で軽度であることが多いものの、まれに重症化することがあるため、定期的な肝機能検査によるモニタリングを行います。
フィブラート系薬剤のリスク
フィブラート系薬剤は、高トリグリセリド血症の改善が目的ですが、腎機能障害や胆石形成のリスクがあり、腎機能が低下している患者さんでは慎重に使用します。
薬剤による筋肉障害は、スタチン系薬剤との併用時により高頻度に発現することがあるため、併用療法を行う際には特に注意深い観察が必要です。
- 腎機能障害の悪化
- 横紋筋融解症のリスク
- 胆石形成の促進
- 消化器症状の出現
- 肝機能検査値の上昇
PCSK9阻害薬の副作用プロファイル
PCSK9阻害薬は、比較的新しい脂質低下薬として注目されていますが、注射部位反応や上気道感染などの副作用が報告されています。
注射部位反応は、発赤や腫れ、かゆみなどの局所症状として現れることが多く、症状は通常一時的なものですが、投与を継続する上で患者さんの負担となることがあります。
副作用 | 特徴 | 対処方法 |
---|---|---|
注射部位反応 | 発赤、腫脹 | 投与部位の変更 |
上気道感染 | 咽頭痛、鼻閉 | 経過観察 |
アレルギー反応 | 発疹、掻痒感 | 投与中止検討 |
外科的治療に伴うリスク
外科的治療は美容的な改善を目的として行われることがありますが、手術部位の感染や瘢痕形成、色素沈着などの合併症のリスクがあり、手術の適応は慎重に判断する必要があります。
また、手術後の瘢痕形成は、患者さんによって治癒過程が異なり、ケロイドや肥厚性瘢痕を形成することがあるため、術前に十分な説明と同意を得ることが大切です。
- 手術部位感染のリスク
- 瘢痕形成の可能性
- 術後の色素沈着
- 局所麻酔による副作用
- 術後の腫脹や出血
長期的な副作用モニタリング
脂質低下薬の長期使用に伴う副作用は、時として潜在的で進行性の経過をたどることがあるため、定期的な血液検査や身体診察による継続的なモニタリングが必要です。
肝機能や腎機能、筋酵素の値については、治療開始初期は頻回に、その後も定期的に検査を行うことで、副作用の早期発見と対応が可能となります。
フィブラート系薬剤とスタチン系薬剤の併用療法では、単剤使用時と比較して副作用のリスクが高まるため、より慎重なモニタリングと経過観察が大切です。
保険適用と治療費
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
内科的治療における費用
治療内容 | 保険適用後の自己負担額(3割負担の場合) |
---|---|
スタチン系薬剤(月額) | 2,000円~8,000円 |
フィブラート系薬剤(月額) | 1,500円~6,000円 |
血液検査(1回) | 2,000円~5,000円 |
超音波検査(1回) | 3,000円~8,000円 |
外科的治療にかかる費用
皮膚外科での切除手術は、病変の大きさや数、手術の複雑さによって費用が異なり、手術後の経過観察や創傷処置にも費用が発生しますが、保険診療の対象です。
手術の種類 | 費用の目安(3割負担の場合) |
---|---|
小切除術 | 3万円~8万円 |
大切除術 | 10万円~20万円 |
レーザー治療 | 5万円~15万円/回 |
術後処置 | 1,000円~3,000円/回 |
検査費用の内訳
定期的な血液検査や画像検査は、治療効果の判定に重要な役割を果たします。
- 一般的な治療開始時の検査費用 8,000円~15,000円
- 脂質代謝関連の詳細検査 5,000円~12,000円
- 画像診断(エコー検査) 3,000円~8,000円
- 皮膚生検 5,000円~10,000円
- フォローアップ検査 2,000円~5,000円
以上
参考文献
Zak A, Zeman M, Slaby A, Vecka M. Xanthomas: clinical and pathophysiological relations. Biomedical Papers of the Medical Faculty of Palacky University in Olomouc. 2014 Jun 1;158(2).
Shafer WG. Verruciform xanthoma. Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology. 1971 Jun 1;31(6):784-9.
Caputo R, Veraldi S, Grimalt R, Gianotti R, Tosti A, Varotti C, De Kaminsky AR. The various clinical patterns of xanthoma disseminatum: considerations on seven cases and review of the literature. Dermatology. 1995 Oct 7;190(1):19-24.
Bertoni F, Unni KK, McLeod RA, Sim FH. Xanthoma of bone. American journal of clinical pathology. 1988 Oct 1;90(4):377-84.
ALTMAN J, Winkelmann RK. Xanthoma disseminatum. Archives of Dermatology. 1962 Nov 1;86(5):582-96.
Parker F. Xanthomas and hyperlipidemias. Journal of the American Academy of Dermatology. 1985 Jul 1;13(1):1-30.
Philipsen HP, Reichart PA, Takata T, Ogawa I. Verruciform xanthoma—biological profile of 282 oral lesions based on a literature survey with nine new cases from Japan. Oral oncology. 2003 Jun 1;39(4):325-36.
Gong HZ, Zheng HY, Li J. Xanthoma disseminatum. The Lancet. 2018 Jan 20;391(10117):251.
Montgomery H, OSTERBERG AE. Xanthomatosis: correlation of clinical, histopathologic and chemical studies of cutaneous xanthoma. Archives of Dermatology and Syphilology. 1938 Mar 1;37(3):373-402.
Santa Cruz DJ, Martin SA. Verruciform xanthoma of the vulva: report of two cases. American journal of clinical pathology. 1979 Feb 1;71(2):224-8.