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夏の汗・春の花粉でアトピーが悪化する理由と季節を乗り切るスキンケア対策

夏の汗・春の花粉でアトピーが悪化する理由と季節を乗り切るスキンケア対策

アトピー性皮膚炎の症状は、春の花粉による外部刺激と、夏の汗による皮膚のpH変化や塩分刺激によって深刻化します。肌のバリア機能が低下している患者さんにとって、これらの季節要因は痒みの増幅に直結する大きな脅威です。

本記事では、季節ごとの悪化メカニズムを解明し、低刺激な洗浄や保湿の徹底、生活環境の調整といった具体的な解決策を提示します。

対処法を実践することで、再燃のリスクを最小限に抑え、健やかな肌状態を維持できるようになります。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

春の花粉がアトピーを悪化させる理由と飛散シーズンを乗り切る防衛策

春先に肌が荒れるのは、皮膚のバリア機能が低下した隙間から花粉が侵入し、免疫システムが過剰に反応して炎症を起こすからです。これを防ぐには、外出時の物理的な遮断と、帰宅後速やかに花粉を洗い流す低刺激ケアが必要です。

スギやヒノキの花粉が皮膚の微細な隙間から侵入して痒みを引き起こします

春の暖かな陽気と共に舞い上がる花粉は、鼻や目だけでなく露出している皮膚全体に付着します。健康な肌であれば角質層がこれらを跳ね返しますが、アトピー肌ではそうはいきません。

皮膚の表面にあるバリアが脆くなっているため、花粉の粒子が肌の奥深くへと入り込んでしまいます。体内の免疫細胞がこれを異物と判断して攻撃を開始し、結果として強い痒みが発生します。

特に顔や首回りは花粉にさらされやすく、摩擦も多いため、炎症が起きやすい部位で、赤みや熱感を感じたら、肌内部でアレルギー反応が起きている可能性を考慮すべきです。

この時期の痒みは一度掻き始めると止まらなくなり、傷口からさらに花粉が入る悪循環を招きます。自分でも気づかないうちに肌の状態が深刻化するのが、春の花粉皮膚炎の怖さです。

飛散量が多い日は、短時間の外出であっても数万個単位の花粉が肌に降り注いでいます。これを防ぐには、まず肌が花粉という刺激物に対して無防備であることを再認識し、守る意識を持つ必要があります。

バリア機能が低下した肌は花粉以外の微細粒子にも過敏に反応してしまいます

春は花粉だけでなく、黄砂やPM2.5といった有害物質も大気中に多く浮遊しており、花粉よりも粒子が小さく、アトピー肌にとってはさらなる脅威として機能します。

バリアが壊れた肌は、これらの化学物質に対しても過剰に反応し、激しい皮膚炎を誘発させます。複数の刺激が重なることで、普段の治療薬が効きにくいと感じるケースも少なくありません。

大気が霞んで見えるような日は、肌の表面で目に見えない微細な炎症が次々と起きています。外出から戻った際に肌がピリつく感覚があれば、それは有害物質によるダメージのサインです。

黄砂などは付着するだけで酸化ストレスを肌に与え、老化や炎症を加速させてしまいます。季節の変わり目の不安定な肌にとって、外部環境の変化は想像以上に過酷な負担です。

粒子の付着をいかに防ぐかが、春のスキンケアにおける最大の課題となります。ただ潤いを与えるだけでなく、物理的なガードを徹底することが、トラブル回避の重要なポイントです。

外出時の服装選びや帰宅後の徹底洗浄が肌の炎症を最小限に抑えます

花粉から肌を守るためには、ツルツルとした素材の衣服を選び、花粉を付着させない工夫が必要で、ウールやフリースのような起毛素材は、花粉を吸い寄せるため避けるのが賢明です。

帽子や眼鏡を活用して、物理的に顔回りの露出面積を減らすだけでも、肌への負担は軽減されます。また、帰宅後は玄関で花粉を払い、すぐに浴室へ向かう習慣を徹底してください。

洗顔の際は、指が肌に触れないほどのたっぷりとした泡で、付着した粒子を包み込むように洗います。ゴシゴシ擦る動作は、花粉を肌に押し込む結果となるため、丁寧なすすぎを心がけましょう。

室内でも空気清浄機を稼働させ、床に落ちた花粉を舞い上げないように掃除を頻繁に行い、寝具も部屋干しに切り替えることで、就寝中の無意識な刺激を排除することが可能になります。

徹底的な除去と遮断を組み合わせることで、薬の効果をより高める環境が整います。日常の小さな積み重ねが、春の深刻な悪化を防ぐための最も効果的な防衛ラインとなるのです。

春の花粉飛散シーズンに意識すべき生活習慣

対策項目具体的なアクション期待できる効果
衣類の選択表面が滑らかなポリエステル素材花粉の付着と室内への持ち込み防止
外出時のガードマスク、眼鏡、帽子の着用顔面への直接的な接触を大幅に軽減
帰宅時のルーチン洗顔と保湿を10分以内に行う付着したアレルゲンの早期除去

夏の汗でアトピーが痒くなるメカニズムと不快な症状を防ぐケアのコツ

夏の汗に含まれる塩分やアンモニアがバリアの壊れた肌を刺激し、さらに汗の蒸発に伴う乾燥が痒みを増幅させます。清潔を保ちつつ、汗をかいたら速やかに優しく拭き取ることが悪化防止の鍵です。

自分の汗に含まれる刺激成分が弱った肌のバリアを攻撃してしまいます

汗は本来、体温を調節するために必要不可欠なものですが、アトピー肌には毒となります。汗に含まれるナトリウムや尿素などの成分が、傷ついた皮膚にしみて強い炎症を招きます。

特に汗をかいたまま放置すると、水分だけが蒸発して刺激成分が濃縮され、痒みが倍増します。この痒みに耐えきれず掻き壊すと、そこからさらに汗が染み込み、症状が泥沼化します。

また、汗によって肌のpHがアルカリ性に傾くと、黄色ブドウ球菌などの雑菌が繁殖しやすくなり、これが原因でジュクジュクとした湿疹ができ、重症化を招くケースも多いです。

自分の汗で自分の肌が荒れるという現象は、アトピー患者さんにとって非常にストレスフルですが、汗そのものを止めることは難しいため、その後の処置が重要になってきます。

夏の肌トラブルを最小限にするには、汗を敵視するのではなく、適切な管理対象として捉えましょう。かいた汗をいかに早く、かつ優しく処理できるかが、運命を分ける分かれ道です。

汗を拭き取る際の強い摩擦がさらなる皮膚のダメージを誘発します

痒みを感じると、つい乾いたタオルでゴシゴシと力任せに汗を拭き取ってしまいがちですが、この摩擦行為こそが、すでに弱っている角質層に致命的なダメージを与えてしまいます。

乾いた布で擦ると、皮膚表面に微細な傷がつき、そこが新たな炎症の拠点となってしまいます。さらに、摩擦の刺激によって痒みの神経が過敏になり、さらに掻きたくなる衝動が生まれます。

汗を拭くときは、濡れたタオルや低刺激のシートを使い、肌を優しく押さえるように吸い取ります。水気を含んだ布であれば、肌に残った塩分を溶かし出しながら清潔に保つことが可能です。

外出先では水道水でさっと洗い流すのが理想的ですが、難しい場合は霧吹きを活用してください。水をスプレーしてから柔らかい布で吸い取れば、摩擦を最小限に抑えた清拭が行えます。

こうした丁寧な所作の一つひとつが、夏場の肌を保護するために必要な技術となり、急がず、焦らず、肌をいたわる気持ちを持って汗に対処することが、穏やかな夏への第一歩です。

汗をかいた後のインナードライ状態が隠れた悪化要因になっています

夏は汗で肌が湿っているため、潤っていると勘違いしがちですが、実は深刻な乾燥が進んでいます。汗が乾く時に肌内部の水分を一緒に連れ出してしまうため、肌の奥はカラカラの状態です。

このインナードライ状態は、バリア機能をさらに脆弱にし、わずかな刺激にも敏感に反応させます。見た目はテカっていても、内側はひび割れた砂漠のような状態であると認識すべきです。

そのため、夏であっても入念な保湿ケアを怠ることは、アトピーの再燃を招く大きな原因となります。ベタつきが気になる場合は、油分の少ないジェルやローションを使い、水分を補給しましょう。

冷房の効いた室内も、空気が乾燥しているため、肌の水分を容赦なく奪い去っていき、外では汗、中では乾燥という二重苦の中で、肌は常に悲鳴を上げている不安定な状態にあります。

一年中変わらない保湿の継続こそが、季節に振り回されない強い肌を作るための基礎となります。夏の保湿を面倒だと思わず、未来の肌への投資と考えて、丁寧に取り組んでいきましょう。

夏の汗トラブルを回避するための基本的な心得

  • 汗をかいたら5分以内に濡れタオルで優しく吸い取りましょう。
  • 通気性に優れた綿100パーセントの下着を選び、蒸れを徹底的に防ぎます。
  • 痒みを感じる前に保冷剤で患部を冷やし、毛細血管の拡張を抑えてください。

過酷な季節のアトピー肌を支える正しい洗浄と低刺激な保湿ケアの習慣

アトピー肌を守る基本は、皮脂を落としすぎないマイルドな洗浄と、速やかなバリア修復です。お湯の温度や拭き取り方といった細かな点を見直すことで、季節の刺激に負けない土台を作ることができます。

お湯の温度設定一つで肌のバリア機能が守れるかどうかが決まります

毎日の入浴やシャワーにおいて、お湯の温度設定は非常に重要な意味を持っています。40度を超える熱いお湯は、肌に必要な天然保湿因子やセラミドを一瞬にして流し去ってしまいます。

理想的な温度は38度以下のぬるま湯であり、これは体温に近い、肌への負担が少ない設定です。熱いお湯を浴びた直後の爽快感は一瞬ですが、その後の乾燥と痒みは長時間持続してしまいます。

特に冬から春、春から夏への移行期は、体感温度が変わるため注意深く調整を行いましょう。ぬるま湯に浸かることで、副交感神経が優位になり、痒みの原因となるストレスも軽減されます。

また、長風呂も角質層をふやけさせ、バリア機能を一時的に低下させるため、10分程度を目安にします。お風呂から出た瞬間に乾燥が始まるため、脱衣所での素早い動作が大切です。

毎日の習慣だからこそ、温度計で正確に測るくらいの慎重さが必要で、お湯の温度に気を配るだけで、スキンケアの効果は驚くほど向上し、肌の落ち着きを取り戻せます。

石鹸を泡立てて手のひらで洗うことで摩擦による微細な傷を防ぎます

体を洗う際、ナイロンタオルやスポンジでゴシゴシ擦るのは、アトピー肌にとっては厳禁です。どんなに柔らかい素材であっても、道具を使うこと自体が肌表面を削ってしまいます。

最も安全な洗浄道具は、自分自身の清潔な手のひらで、石鹸をしっかりと泡立てて、泡をクッションにしながら撫でるように洗うことで、汚れだけを吸着して落とすことが可能になります。

石鹸の種類も、洗浄力が強すぎるものは避け、アミノ酸系や保湿成分配合の低刺激なものを選んでください。汚れが目立たない部位は、お湯で流すだけでも十分な清潔を保つことができます。

特に炎症が起きている部位は、石鹸がしみることもあるため、無理に洗う必要はありません。肌の自浄作用を信じ、過剰なケアによる二次被害を防ぐ勇気を持つことも、時には必要です。

洗う順番も、心臓から遠い部位から始め、顔や首などのデリケートな場所は最後に行いましょう。摩擦を極限まで減らした洗浄習慣が、一年を通じた肌の安定に大きく寄与することになります。

入浴後すぐに保湿剤を塗布することで水分の蒸散を物理的に遮断します

お風呂から上がった直後の肌は、水分をたっぷり含んでいますが、放置すると数分で過乾燥に陥ります。タオルで優しく水分を拭き取ったら、1分以内に保湿剤を塗り始めるのが鉄則です。

このタイミングを逃すと、角質層の隙間から水分がどんどん逃げ出し、塗る前の状態よりも乾燥してしまいます。保湿剤はケチらず、肌がしっとりと吸い付くような量を使ってください。

塗り方も重要で、円を描くように擦り込むのではなく、皮膚の溝に沿って一方方向に伸ばすことで、毛穴を塞がず、かつ均一にバリア膜を形成させることが可能になります。

季節によって保湿剤のテクスチャーを使い分けるのも有効です。春は保護力の高いクリーム、夏は浸透の早いローションといった具合に、自分の肌のコンディションに合わせて調整しましょう。

保湿は単なる作業ではなく、今日一日頑張った肌への報酬であり、明日のための防護服作りです。この時間を大切にすることで、季節の変化に動じない、しなやかな肌質へと変化していきます。

効果的な保湿ケアを実践するためのチェックリスト

確認項目合格基準不合格時の改善策
お湯の温度38度以下のぬるま湯給湯器の設定を固定する
洗浄方法手で優しく洗っているタオルやスポンジを捨てる
保湿の速さ入浴後3分以内脱衣所に保湿剤を常備する

睡眠の質と腸内環境を見直して内側からアトピーの再燃を防ぐ土台作り

肌の修復は睡眠中に行われ、免疫の安定は腸内環境が司っています。良質な睡眠時間の確保と、発酵食品などを取り入れた食事習慣が、外部刺激に動じない強い肌を内側から育て上げます。

深い眠りが成長ホルモンの分泌を促し傷ついた皮膚を修復させます

私たちの体は、寝ている間に成長ホルモンを放出し、日中に受けたダメージを修復しています。アトピー肌の修復もこの時間に行われるため、睡眠不足は治癒を遅らせる最大の原因です。

特に夜22時から深夜2時までの時間は、肌の再生が活発になるゴールデンタイムで、この時間に深い眠りについていることが、翌朝の肌のコンディションを大きく左右します。

しかし、アトピーの方は痒みで目が覚めてしまうことも多いため、就寝前の環境作りが不可欠です。寝室を涼しく保ち、肌当たりの良い寝具を選ぶことで、中途覚醒のリスクを減らしましょう。

また、寝る前のスマホ操作は脳を覚醒させ、睡眠の質を著しく低下させます。ブルーライトによる刺激を避け、リラックスした状態で入眠できるよう、自分なりの入眠儀式を持つことが大切です。

質の高い睡眠は、精神的な安定ももたらし、痒みへの過剰な反応を抑える効果も期待できます。十分な休息を取ることが、高価な美容液を使うよりもずっと価値のあるスキンケアになります。

腸内の善玉菌を増やす食生活が免疫の過剰反応を鎮める助けとなります

最近の研究では、腸内環境とアトピー性皮膚炎には密接な関係があることが明らかになっています。腸内フローラが乱れると、免疫バランスが崩れ、些細な刺激でも炎症が起きやすくなります。

納豆や味噌、キムチといった発酵食品を積極的に摂ることで、善玉菌を優位に保て、体内の炎症物質が減少し、結果として肌の痒みが和らぎます。

逆に、糖分の多いお菓子や加工食品は、悪玉菌を増やして炎症を助長させるため注意が必要です。バランスの良い和食を中心とした食生活が、アトピー肌の改善には最も適しています。

また、食物繊維を豊富に摂取して便通を整えることも、体内の毒素を排出するために重要です。腸がきれいになれば、肌も必然的にきれいになるという法則は、多くの患者さんが実感しています。

今日食べたものが、数週間後の自分の肌を作っているという意識を常に持っておきましょう。食卓を整えることは、アトピーという病気と向き合い、克服するための前向きな挑戦となります。

日々のストレスを上手に発散して痒みの神経が過敏になるのを防ぎましょう

精神的なストレスが溜まると、自律神経が乱れて痒みの神経が敏感になり、普段なら気にならない刺激でも激しく反応します。ストレスとアトピーは、切っても切れない深い関係にあります。

自分がどのような状況でストレスを感じ、いつ肌を掻きたくなるのかを分析してみてください。日記をつけるなどして自分のパターンを知ることで、早めに対策を打つことが可能になります。

好きな音楽を聴く、散歩をする、深呼吸をするといった簡単なリフレッシュ方法をいくつか持っておきましょう。ストレスをゼロにすることは不可能ですが、溜め込まずに流すことは可能です。

また、アトピーであること自体をストレスに感じすぎないことも、心の健康には必要で、完璧を求めすぎず、少しずつ肌が良くなっている部分に目を向けて、自分を褒めてあげてください。

心が穏やかであれば、痒みに襲われた時も冷静に対処でき、掻き壊しの被害を最小限に抑えられます。内側の安定こそが、外側のバリアを支える強力なバックアップとなります。

内側からの肌質改善をサポートする食材リスト

  • 大豆製品:イソフラボンや良質なタンパク質が肌の再生を助けます。
  • 青魚:オメガ3脂肪酸が炎症反応を鎮め、肌の潤いを保持します。
  • 緑黄色野菜:ビタミン類が粘膜の健康を保ち、バリア機能を強化します。

痒みのピークを冷静に乗り切るための応急処置と傷を深くしない物理防御

強烈な痒みに襲われた際は、患部を冷やして神経の昂ぶりを抑えるのが最も効果的です。また、爪を短く整えたり保護具を活用したりすることで、無意識の掻き壊しによる致命的な悪化を防げます。

痒い部分を冷やすことで知覚神経を麻痺させ一時的に鎮静させます

アトピーの痒みは、熱を持つことでさらに強くなる性質があります。痒くてたまらなくなった時は、保冷剤をタオルで包み、患部を5分から10分程度冷やして血管を収縮させましょう。

冷たさの刺激が脳に届くことで、痒みの信号がブロックされ、驚くほど楽になることがあります。お風呂上がりの痒みや寝起きの痒みなど、体温が上がっている時に特に効果的な手法です。

ただし、長時間冷やしすぎると凍傷の恐れがあるため、必ず布越しに当て、様子を見ながら行ってください。また、冷やした後は肌が乾燥しやすいため、軽く保湿を行うことも忘れないことが大事です。

外出先でも冷たいペットボトルなどを代用することで、パニックにならずに痒みを制御でき、冷却による鎮静法を知っているだけで、痒みに対する恐怖心を大幅に減らせます。

痒みは「痛み」に似た信号であるため、冷やすことは理にかなった物理的な鎮痛手段で、我慢して掻きむしる前に、まずは冷凍庫へ向かう習慣を身につけて、肌を保護しましょう。

爪を短く滑らかに磨き上げることで掻いた時の破壊力を最小化します

どれほど意志が強くても、寝ている間の無意識な掻きむしりを完全に止めることは不可能なので、掻いてしまった時の被害をいかに小さくするかを考えるのが現実的な対策です。

爪は白い部分が見えないほど短く切り、切り口をやすりで滑らかに磨き上げてください。角が尖っていると、一掻きで皮膚の深い層まで切り裂き、出血や浸出液の原因となってしまいます。

毎日1分の爪ケアが、1週間の治療期間を短縮させると言っても過言ではありません。爪先を丸く整えることで、皮膚を「切る」のではなく「撫でる」程度の刺激に留めることができます。

また、指先や爪の間は雑菌が溜まりやすいため、こまめに洗うことも重要で、傷口に菌が入ると、とびひのような感染症を併発し、アトピーの症状をさらに複雑にしてしまいます。

爪のケアは地味な作業ですが、患者さんにとって最も信頼できる盾となります。自分自身の身を守るための最低限のマナーとして、常に指先を美しく整えておくことが強く推奨されます。

綿の手袋や専用の保護チューブを装着して寝室の戦いに備えましょう

夜間の激しい掻き壊しを防ぐためには、物理的なガードを導入することが非常に有効です。綿100パーセントの手袋を着用して寝ることで、爪による直接的なダメージを遮断できます。

手袋が脱げてしまう場合は、手首の部分を医療用のテープで軽く固定するのも一つの方法で、また、関節などの特定の部位がひどい場合は、専用の筒状包帯を巻くと保護効果が高まります。

これらのアイテムは、薬の浸透を助けるODT(密封療法)のような役割も果たしてくれます。

最初は違和感があって眠りにくいかもしれませんが、慣れてしまえば守られている安心感に変わります。特に子供のアトピーケアにおいては、この物理的防御が治癒のスピードを大きく左右します。

自分の弱さを道具で補うことは、治療戦略の一環で、あらゆる手段を尽くして肌の連続性を保つことが極めて重要です。

痒みのピークを乗り切るための緊急三原則

原則実行方法注意点
冷却保冷剤をタオルで巻いて患部に当てる10分以上の連続使用は避ける
保護綿手袋や包帯で掻きむしり箇所を覆う蒸れすぎないよう通気性を確保する
安静深呼吸をして体温を上げないようにする興奮すると血管が開き痒みが増す

よくある質問

アトピー性皮膚炎の方が夏の汗をかいた際、石鹸を使って頻繁に洗っても大丈夫ですか?

石鹸の使いすぎは、肌のバリアを支える皮脂まで奪ってしまうため避けるべきです。汗を流すのが目的であれば、38度以下のぬるま湯で洗い流すだけで十分な清潔を保てます。

石鹸を使用するのは1日1回に留め、それ以外の汗対策は濡れタオルで押さえるなどの方法に切り替えましょう。

春の花粉によるアトピー悪化を防ぐため、洗濯物は部屋干しにしたほうが良いですか?

花粉の飛散時期は部屋干しを強く推奨します。外に干すと繊維の隙間に花粉が入り込み、着用中ずっと肌を刺激し続けることになります。

布団乾燥機などを活用し、寝具や衣服を外気に触れさせない工夫が、春の再燃を防ぐためには非常に有効です。

アトピー性皮膚炎の症状が出ている時に日焼け止めを塗っても刺激になりませんか?

日焼けはアトピーを悪化させるため対策は必要ですが、製品選びには注意が必要です。紫外線吸収剤フリー(ノンケミカル)で、石鹸で落とせる低刺激なものを選びましょう。

炎症がひどい場所には、日焼け止めよりも帽子や日傘などの物理的なガードを優先させるのが賢明です。

夏の汗による痒みが強い場合、アトピー肌でも市販の制汗剤を使用しても良いですか?

市販の制汗剤に含まれるアルコールや香料は、アトピー肌には強すぎる刺激となることが多いです。汗を止めるよりも、吸湿性の高い下着をこまめに着替える方が、肌への負担は少なくなります。

どうしても使いたい場合は、敏感肌用のパウダータイプを狭い範囲でテストしてから使用してください。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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