春先や秋口に生じる顔の赤みやかゆみは、花粉皮膚炎というアレルギー性の疾患である可能性が高いです。
皮膚科では専門的な診断に基づき、炎症を鎮める外用薬や体内から反応を抑える内服薬を処方し、辛い皮膚症状を効率的に改善します。
単なる乾燥と放置せず適切な医療処置を受けることで、肌のバリア機能を回復させ、重症化を防ぐことができます。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
花粉症による肌荒れを皮膚科で受診すべき理由
花粉が原因で起こる肌荒れは花粉皮膚炎と呼ばれ、自己判断での対処は悪化を招く恐れがあります。皮膚科ではアレルギー検査や視診を通じて原因を特定し、医療用の抗ヒスタミン薬や外用薬を用いて、肌の炎症を速やかに沈静化させます。
自己判断によるスキンケアの限界とリスク
季節の変わり目に肌が敏感になり、かゆみや赤みが出る症状は多くの人を悩ませます。多くの方は市販の低刺激化粧品で対応しようとしますが、化粧品は治療を目的としたものではありません。
炎症が起きている肌に不適切な製品を塗り重ねると、さらにバリア機能が壊れる事態を招き、良かれと思って始めたケアが、結果的に接触皮膚炎を引き起こす原因になることも少なくありません。
皮膚科では医師が肌の状態を細かく観察し、その時の炎症レベルに合った処置を行います。
市販のスキンケア用品はあくまで健常な肌の維持を目的として設計されていて、すでに炎症が始まっている肌に対しては、成分そのものが刺激物として働き、炎症を助長させるリスクがあるのです。
また、多くの人が陥りやすいのが過剰な保湿で、べたつきを嫌って保湿を怠る、あるいは逆に油分を与えすぎて毛穴を詰まらせるなど、自己流のさじ加減は症状を複雑化させてしまいます。
医療機関ならではの高度な診断技術
皮膚科では問診に加え、血液検査などのデータを用いて原因物質を絞り込み、何が肌を刺激しているのかが明確になれば、日常生活での避け方もアドバイス可能です。
また、医療機関でのみ処方される薬剤は成分の有効性が高く、症状の重い場合でも対応でき、個人のライフスタイルに合わせ、眠気の少ない薬を選ぶなど細やかな調整が行われます。
皮膚科でできることの一つが、パッチテストやプリックテストといったアレルギー検査です。これにより、単なる花粉症なのか、それとも併発している別の物質が原因なのかを判別できます。
春先の肌荒れがスギ花粉だけではなく、PM2.5や黄砂といった環境物質の影響を受けていることもあり、こうした微細な要因の特定は、医療機関でこそ可能です。
花粉皮膚炎と一般的な肌荒れの識別点
| 項目 | 花粉皮膚炎 | 一般的な乾燥肌 |
|---|---|---|
| 発症時期 | 特定の飛散シーズン | 冬場の乾燥時期 |
| 主な部位 | 目の周りや首筋など | 頬や口周り、全身 |
| 主な症状 | 強いかゆみや腫れ | カサつきや粉吹き |
| 境界線 | 比較的明瞭に出る | 全体的にぼんやり出る |
| 痒みの質 | チクチク、ムズムズ | ピリピリ、ヒリヒリ |
皮膚科で実施する花粉症皮膚炎の主な治療法
皮膚科の治療は、アレルギー反応を内側から制御する内服薬と、患部の炎症を直接抑える外用薬を組み合わせが中心です。個人の症状に合わせて、保湿剤の選択やステロイドの強さを調整し、皮膚のバリア機能を最優先に回復させます。
体内からアレルギー反応を制御する内服薬
皮膚科で処方される抗ヒスタミン薬は、アレルギー症状の源となる物質の働きをブロックし、服用を続けることで、肌に感じる不快なかゆみを元から断ち切ることが可能になります。
最近の薬剤は副作用が少なく、日中の活動に影響を与えにくいものが主流となっていて、仕事の効率を落とさずに治療を継続できる点は、働く世代にとっても大きなメリットです。
抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代があり、現在皮膚科で主に使われるのは副作用が軽減された第二世代で、かつて問題だった強い眠気や口の渇きといった悩みは大幅に改善されました。
さらに、かゆみが非常に強い場合には、短期間に限り抗ロイコトリエン薬を併用することもあり、複数の経路からアプローチすることで、頑固なかゆみを多角的に抑え込むことが可能になります。
炎症を鎮めてバリアを補う外用薬の使い分け
赤みや湿疹がひどい部位には、炎症を強力に鎮めるステロイド外用薬が選ばれることが多いです。短期間で炎症を抑え込むことで、皮膚のダメージを最小限に食い止める戦略が取られます。
炎症が落ち着いた段階で、ヘパリン類似物質などの医療用保湿剤へとスムーズに移行し、切り替えの判断を医師が行うことで、ステロイドの連用を避け、安全に治療を進められます。
保湿剤は単に水分を与えるだけでなく、肌の表面に膜を張って外部刺激を跳ね返す盾となり、医療用製剤を使用することで、市販品では得られない保護効果が期待できます。
ステロイド以外にも、非ステロイド系の消炎鎮痛剤や、タクロリムス軟膏といった新しい選択肢も増えていて、目の周りなどの皮膚が薄い場所でも、比較的安全に使用できるのが特徴です。
皮膚科では塗り薬のテクスチャーにも配慮され、ベタつく軟膏が苦手な方にはクリームやローションを処方するなど、継続して使いやすい形状を選ぶことで治療の成功率を高めます。
また、正しい塗り方の指導も行われます。指先でゴシゴシ擦り込むのではなく、置くように塗布するだけで、薬の浸透力と肌への優しさは驚くほど変わるものです。
症状が改善しない場合の追加的な選択肢
標準的な処置で改善が見られない場合、医師は二次的な要因を疑い、さらに詳細な調査を行い、カビによる感染や、金属などの別の接触源が隠れていないかを確認します。
重症化してしまった場合には、光線療法(紫外線療法)などが検討されることもあります。特定の波長の光を当てることで過剰な免疫反応を鎮め、肌の再生を強力に促す高度な治療法です。
また、最近ではデュピクセントなどの生物学的製剤による治療も、重度のアレルギー疾患に対して行われています。これは、自己注射などで対応でき、劇的な改善を見せることが多い最新医療です。
皮膚科で選ばれる標準的な薬剤
| 薬剤名 | 期待できる変化 | 活用場面 | 副作用リスク |
|---|---|---|---|
| 抗ヒスタミン薬 | かゆみの消失 | アレルギー反応の抑制 | 軽度の眠気など |
| ステロイド軟膏 | 赤みと腫れの改善 | 急性の強い炎症時 | 長期連用による皮膚菲薄化 |
| 医療用保湿剤 | 角質層の修復 | バリア機能の維持 | 極めて低い |
| 免疫調節薬 | 再発の防止 | ステロイドを控えたい時 | 塗布直後の熱感 |
皮膚科で処方される薬剤の種類と効果
処方される医薬品は市販薬よりも有効成分の純度や濃度が高く、効果が保証されています。抗ヒスタミン薬による全身的なコントロールと、ステロイドや保湿剤による局所的なケアを適切に併用し、短期間で健康な皮膚状態を取り戻します。
抗ヒスタミン薬がもたらす全身への作用
花粉が粘膜や皮膚に触れると、体内でヒスタミンが大量に放出されかゆみ神経を刺激し、我慢できないほどの不快感を生み出す原因となります。
抗ヒスタミン薬を服用すると、受容体との結合を邪魔し、かゆみの信号が脳に届くのを未然に防ぎ、無意識に肌を触る回数が減り、皮膚の修復がスムーズに進みます。
全身への効果が及ぶため、鼻水や目のかゆみにも同時に作用するのがこの薬の優れた点です。総合的なアレルギー対策として、内服治療は花粉シーズンの生活の質を支える基盤となります。
特筆すべきは、血管透過性の亢進を抑える作用で、皮膚の毛細血管からの液体の漏れ出しを防ぎ、顔の腫れぼったさや浮腫(むくみ)を改善する効果も期待できます。
服用を習慣化することで、アレルギー反応のピークそのものを低く抑えることができます。シーズン前から予防的に服用を開始する初期療法も、皮膚科では推奨される有効な手段の一つです。
最近では、一回の服用で24時間効果が持続するタイプが主流となっており、飲み忘れのリスクも低減されています。
ステロイド外用薬の正しい知識と安全性
ステロイドに対して過度な不安を持つ方もいますが、適切な強さを限られた期間使う分には安全な薬です。皮膚科医は部位ごとの吸収率を熟知しており、副作用が出ない範囲で処方します。
顔の皮膚は薄いため、通常は弱いランクのものが選ばれ、数日から一週間程度の使用で十分な効果が得られます。ダラダラと弱い薬を使い続けるより、強い効果で一気に治すほうが合理的です。
指示された塗り方や量を守ることで、ステロイドは肌荒れ治療の強力な味方になります。
多くの人が誤解している点として、ステロイド自体が肌を弱くするという説がありますが、それは誤用した場合に限られます。適切な使用は、炎症によるダメージから肌を救う存在です。
医師は症状が改善するにつれて、薬のランクを下げるランクダウン療法を行い、段階的な離脱プロセスを経ることで、リバウンド現象を防ぎ、安定した肌状態へソフトランディングさせます。
また、ステロイドの副作用を気にする方には、塗る頻度を減らす間欠投与などの工夫も提案されます。
肌の再建を支える保湿剤の重要性
薬で炎症を止めた後は、自らの力で肌を維持できるようサポートが必要です。ヘパリン類似物質などの医療用保湿剤は、肌の角質細胞に浸透し、保持できる水分量を向上させます。
医療用の保湿剤は、市販の化粧品に含まれるような香料や着色料、防腐剤などの添加物が極限まで排除されているため、敏感になった花粉症の肌でも刺激を感じにくいです。
また、水分を保持するだけでなく、角質層の構造そのものを整える作用もあるので、キメが整うことで光を反射しやすくなり、見た目にも健康的なツヤのある肌へと導いてくれます。
冬の乾燥から春の花粉へと移り変わる時期は、一年で最も肌が疲弊している時期で、このタイミングで質の高い保湿を行うことは、夏に向けた紫外線対策の準備としても非常に有効な手段です。
保湿剤の主な種類と特性
- 肌の深部まで潤いを届けるローションタイプ:広範囲に塗りやすく浸透が早い
- 乾燥から肌を長時間守る油性の高い軟膏:密着力が高く水仕事にも強い
- 皮膚をコーティングして物理的刺激を遮断する保護剤:花粉の付着を直接防ぐ
- サッパリとした使用感の泡状スプレー:髪の生え際などにも塗布しやすい
花粉症皮膚炎における日常生活での注意点と対策
通院治療の効果を最大化させるには、暮らしの中で花粉を遮断し、肌への刺激を最小限に抑えることが必要です。洗顔方法の見直しや衣服の選択、室内環境の整備といった対策を継続することで、肌のバリア機能の回復を後押しします。
帰宅後すぐの洗浄と正しいスキンケア手順
屋外から戻った際は、肌に付着した花粉をできるだけ早く除去することが鉄則です。洗面所へ直行し、顔や首に付いた汚れを丁寧に洗い流す習慣を身につけてください。
洗顔の際は、摩擦を極力避けるため、洗顔料をしっかり泡立てて手で肌をこすらないようにします。ぬるま湯で優しくすすぐだけで、十分に花粉を落とすことができるため過度な洗浄は不要です。
洗浄後は、清潔なタオルで軽く叩くように水分を拭き取り、すぐに保湿剤を塗布します。乾燥が進む前にケアを完了させることで、外から侵入しようとする花粉をブロックする壁を作ります。
洗顔時の水温にも注意が必要です。熱すぎるお湯は必要な皮脂まで奪ってしまい、肌の乾燥を助長させるので、32度前後の、少しぬるいと感じる程度の温度が、最も肌に負担をかけない理想的な設定です。
また、クレンジング剤の選び方も重要です。オイルタイプよりも、摩擦が少なくて済むジェルタイプやミルクタイプを選ぶことで、敏感な時期の皮膚を優しく守りながら汚れを落とせます。
洗浄後の保湿は、60秒以内に行うのが理想的です。浴室を出た直後の水分が保持されているうちに蓋をすることで、保湿効果は数倍に跳ね上がり、バリア機能の回復を早めることができます。
外出時の物理的なバリアと保護対策
外出時はマスクや眼鏡を活用し、露出する肌の面積を少しでも減らす工夫が重要で、ツルツルとした素材のコートを選ぶなど、花粉が吸着しにくい服装を心がけることも大切です。
化粧品についても、肌の保護という観点ではメリットがあり、低刺激な日焼け止めなどを塗っておくことで、花粉が直接皮膚の細胞に触れるのを物理的に妨げる効果が期待できます。
ただし、厚塗りのメイクはクレンジング時の負担を増やすため、落としやすい製品を選ぶのが賢明です。肌への優しさとバリア効果のバランスを考えたアイテム選びが、この時期の肌を救います。
首元は意外と盲点になりやすい場所です。シルクや綿などの天然素材のスカーフを巻くことで、花粉が首のシワに入り込むのを防ぎ、かゆみや赤みの発生を未然に防ぐことができます。
さらに、髪の毛も強力な花粉の運搬役となるので、外出時はまとめ髪にする、あるいは帽子を被ることで、顔に髪が触れて花粉を移してしまうのを防ぐことができます。
最近では花粉付着防止スプレーなども市販されています。外出直前に衣類や髪に吹きかけておくことで、物理的なバリアを多層化し、より確実な防御体制を整えることが可能です。
室内環境の整備と生活習慣の安定
外から持ち込んだ花粉は室内の床やソファに溜まりやすいため、こまめな掃除が不可欠です。空気清浄機を活用し、常に空気を循環させることで、浮遊する微細なアレルゲンを減らします。
また、十分な睡眠とバランスの取れた食事は、皮膚の再生力を高める上で非常に重要な役割を果たし、内側から肌の状態を整えることで、少々の刺激には動じない強靭なバリアを構築できます。
加湿器を使用して部屋の湿度を適切に保つことも、角質層の乾燥を防ぐための有効な手段です。
意外な落とし穴が洗濯物の外干しで、濡れた状態の衣類やタオルは花粉を引き寄せやすいため、この時期だけは部屋干しにするか、衣類乾燥機を活用してください。
食事においては、発酵食品や食物繊維を意識して摂取し、腸内環境を整えることもアレルギー症状の緩和に寄与します。腸の健康は皮膚の健康と密接にかかわっているため、内側からのアプローチも忘れずに行いましょう。
また、ストレスはアレルギー反応を増幅させる増悪因子です。ぬるめのお湯でリラックスする、好きな香りに包まれるなど、心の安らぎを保つことが、自律神経を介して肌の修復力を向上させます。
皮膚科での診察をスムーズに受けるための準備
納得のいく診察を受けるためには、自身の症状や生活習慣について医師に正しく伝えることが大切です。発症の時期や使用中の化粧品、過去の薬の反応などをあらかじめ整理しておくことで、より自分に合った治療プランの提案を受けられます。
自分の症状に関する情報の整理と記録
いつから症状が出始めたのか、どの場所が一番かゆいのか、といった情報を事前にメモしておきましょう。特定の天候や時間帯に悪化する場合、その事実も診断の有力な手がかりになります。
また、赤みや腫れがひどい時の状態を、スマートフォンで写真に撮っておくことも非常におすすめです。病院に着いたときには症状が引いていることもあるため、画像は視覚的な証拠となります。
どのような痛みやかゆみなのか、言葉で表現できるようにしておくと医師との疎通が深まります。
最近では健康管理アプリなどを利用して、日々の症状をグラフ化するのも有効で、一過性の症状なのか、それとも慢性的な傾向があるのかを医師がひと目で判断できるようになります。
家族にアレルギー体質の方がいるかどうかも大切な情報です。遺伝的な要因を確認することで、アトピー素因の有無などを考慮した、より踏み込んだ診断が期待できます。
過去に他の診療科で処方された薬がある場合は、お薬手帳を持参するのが確実です。
これまでのケアと使用中の製品の確認
現在使っている洗顔料や化粧水の製品名を把握しておくと、医師が成分による刺激を判断しやすくなり、可能であれば、現物を持参するか、パッケージの裏面の写真を提示してください。
また、市販の塗り薬を試した場合は、その名称と使った後の変化についても正確に伝えます。効果があったか、逆にかぶれてしまったかという反応は、今後の治療方針を決める重要な要素です。
サプリメントや常用している薬がある場合も忘れずに共有しましょう。薬の飲み合わせや全身状態を把握することで、安全性が高く無駄のない処方を受けることが可能になります。
健康食品やハーブティーの中には、特定の薬剤の効果を強めたり弱めたりするものがあり、些細なことと思わず、口にしているものはすべて医師に伝えてください。
また、エステティックサロンでの施術や美容皮膚科でのレーザー治療を最近受けた場合も申告が必要です。
診察当日のメイクと診察時の身だしなみ
正確な視診を受けるためには、ノーメイクでの受診が基本となります。ファンデーションで肌の色味が隠れてしまうと、炎症の広がりや程度を医師が正しく評価できなくなるからです。
もし仕事帰りなどでどうしてもメイクを落とせない場合は、診察室に入る前にクリニックの洗面所で落とせるよう、少し早めに到着するなどの配慮をすると診察がスムーズに進みます。
また、首や腕など全身の状態を診ることもあるため、着脱しやすい服装で行くことも大切です。
受診前にチェックしておきたい持ち物リスト
| 持ち物 | 目的 | 補足 |
|---|---|---|
| お薬手帳 | 重複処方の防止 | アプリ形式でも可能 |
| 症状の写真 | ピーク時の確認 | 照明が明るい場所で撮影 |
| 愛用中の化粧品名 | 刺激物質の確認 | 成分表の写真があると最高 |
| 健康診断の結果 | 体質の把握 | アレルギー項目の有無を確認 |
花粉症皮膚炎と似た症状を示す他の疾患
肌荒れの原因がすべて花粉とは限らず、他の疾患と混同されるケースも少なくありません。皮膚科では専門的な視点から症状を鑑別し、疾患に合わせた治療法を導き出します。
乾燥肌から進行する皮脂欠乏性湿疹
空気が乾燥する時期に、肌のバリア機能が低下して生じるのが皮脂欠乏性湿疹です。花粉皮膚炎とかゆみの症状は似ていますが、主にスネや背中など皮脂の少ない部位に多く現れる特徴があります。
しかし、乾燥によって傷ついた肌は花粉が侵入しやすい状態でもあるため、両者が同時に起きることもあります。医師は皮膚の水分量やキメの状態を確認し、アレルギーか乾燥かを見極めます。
治療においても、抗アレルギー薬が必要か、あるいは徹底した保湿だけで改善するかは大きな違いです。
湿疹が進行すると、皮膚がひび割れて亀裂が生じることがあり、こうなると単なる痒みではなく強い痛みを感じるようになり、治療期間も長引いてしまいます。
加齢とともに皮脂の分泌量は自然に減少するため、中高年の方に多く見られる疾患でもあるので、年齢に応じた保湿習慣を身につけることが予防の第一歩です。
脂漏性皮膚炎や大人ニキビとの識別
鼻の周りや眉間に赤みや皮剥けが生じる脂漏性皮膚炎は、真菌の関与が疑われる疾患です。また、花粉が毛穴に詰まって生じるニキビも、花粉シーズンの肌荒れとしてよく相談されます。
これらの疾患はステロイドだけでは改善しないことが多く、抗菌薬やビタミン剤などの特別な処置が必要で、自己判断で間違った薬を塗ると症状をこじらせるため、早めの相談が大切です。
皮膚の状態は複数の要因が複雑に絡み合っていることがほとんどなので、専門的な診察によって一つひとつのトラブルを紐解いていくことが、健やかな肌への最短ルートとなります。
脂漏性皮膚炎の場合、強い痒みよりも「独特のベタつき」や「大きなフケのような皮剥け」が目立ち、ステロイドを漫然と使うと、真菌が増殖してかえって悪化することがあるのです。
また、大人ニキビはホルモンバランスの乱れが関与しやすく、治療には塗り薬だけでなく漢方薬やビタミン剤の内服が有効な場合もあります。
アトピー性皮膚炎の季節的な増悪
もともとアトピー性皮膚炎を抱えている方は、花粉の時期に急激に症状が悪化する傾向があります。これは敏感な皮膚が大量のアレルゲンにさらされることで、過剰な反応を示すためです。
アトピー素因がある場合、肌のバリアを司るフィラグリンというタンパク質の働きが低下していることが多いため、花粉が皮膚の深層部まで容易に侵入し、激しい炎症を起こしてしまいます。
この場合、通常の治療に加えてプロアクティブ療法(症状がない時も薬を使い、再発を防ぐ手法)が有効です。季節的な変動を予測した先回りした治療が、辛いシーズンを乗り越える鍵となります。
症状別の診断のアプローチ
- 血液検査で特定のアレルギーの有無を調べる:客観的なアレルゲンの特定
- 皮膚を一部採取して顕微鏡で菌を確認する:水虫やカンジダの判別
- 接触試験を行って化粧品かぶれを否定する:具体的な刺激物の特定
- ダーモスコピーによる詳細な観察:毛細血管の拡張や炎症状態の把握
マスクによる物理的な接触皮膚炎
花粉対策で長時間着けているマスクの素材が原因で、かぶれや赤みが出るケースも増えています。耳の裏や頬など、マスクが当たる部分に限定して症状が出る場合は、接触皮膚炎の疑いが強いです。
花粉のせいだと思い込んで対策を誤ると、刺激が続いて症状が固定化してしまうリスクがあります。医師と相談し、マスクの素材変更や保護クリームの使用を検討することで、速やかな改善が見込めます。
また、マスク内部の湿度が上がることで細菌が増殖し、肌荒れを誘発することもあります。定期的にマスクを交換する、あるいはガーゼを一際挟むなどの工夫も、有効な対策の一つです。
よくある質問
花粉症の肌トラブルに関して寄せられる、代表的な疑問にお答えします。不安を一つずつ解消し、納得して治療を進めるための材料として役立ててください。
- 花粉症の自覚がなくても皮膚科を受診して大丈夫ですか?
-
鼻水や目のかゆみが出ず、皮膚だけにアレルギー反応が現れる花粉皮膚炎の方は決して少なくありません。肌の違和感は体が発している重要なサインですので、遠慮なく専門医を頼ってください。
早期の受診が、肌のバリア機能の完全な崩壊を防ぎ、将来的な敏感肌への移行を食い止めることにも繋がります。症状が一つであっても、背景には全身的な免疫の乱れが隠れている場合があるのです。
- 処方された薬を塗ってもすぐにかゆみが止まらないのはなぜですか?
-
外用薬が皮膚の深い層に浸透し、細胞の炎症を鎮めるまでには一定の時間が必要となります。
また、一度壊れた肌のバリア機能が修復されるまでには数日から数週間のサイクルがかかるため、治療を継続することが重要です。
もし数日経っても全く変化がない場合は、薬の強さが合っていない可能性もあるため、再度医師に相談することをおすすめします。
アレルギー反応に加えて、極度の乾燥や細菌感染が併発している場合などは、追加の処置が必要です。また、塗り方が薄すぎたり、塗る回数が足りなかったりすることも原因になります。
- これまで平気だったのに今年から急に肌が荒れ始めたのはなぜですか?
-
アレルギーは体内の許容量を超えたタイミングで突然発症することがあります。また、年齢とともに肌の皮脂量が減り、外的刺激に弱くなっていたり、多忙による疲労で免疫バランスが崩れていたりすることも原因の一つです。
環境の変化、例えば引っ越しや転職、住居の建て替えなどもアレルゲンとの接触頻度を変える大きな要因になります。目に見えない環境の変化が、肌に過敏な反応を起こしているかもしれません。
- 市販の保湿剤を使っていますが、処方薬に変えたほうが良いでしょうか?
-
市販の保湿剤で満足な結果が得られていないのであれば、一度処方薬に切り替える価値は十分にあります。
医療用保湿剤は、有効成分の含有量や基剤の安定性が厳格に管理されており、より高い保護効果や浸透力が期待できるためです。
市販品の中には、使用感を重視して揮発性の高いアルコールなどが含まれている場合があり、健康な時には心地よくても、花粉症の時期には刺激となって肌を傷つけてしまうことがあります。
以上
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