唇がヒリヒリ痛んだり皮がむけ続けたりする悩みは、正しい知識とケアで必ず解消できます。毎日塗っているリップクリームや意外な食べ物が原因で、知らず知らずのうちに唇の薄い粘膜を傷つけているケースは非常に多いです。
この記事では、繰り返す湿疹やかゆみの正体を突き止め、唇を守るための方法を詳しくお伝えします。専門的な視点から、症状を沈静化させる保湿手順やアレルギーのリスクを説明します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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繰り返す唇の湿疹やかゆみの原因を突き止めて根本から治しましょう
唇の湿疹やかゆみが長引く場合、まずはその原因が何であるかを正確に把握することが治癒への最短距離です。唇は非常にデリケートな部位であり、外部刺激に対して無防備であるため、炎症が起きやすい特性を持っています。
乾燥や物理的な摩擦、特定の物質に対するアレルギーなど、複数の要因が絡み合っていることが多いため、多角的な視点でのチェックが必要です。
唇の乾燥が湿疹や皮むけを引き起こすメカニズム
唇の表面を覆っている角層は、顔の他の部位に比べて極端に薄く、水分を保持する力が非常に低い組織です。そのため、空気が乾燥する冬場だけでなく、夏場のエアコンによる室内乾燥でも容易にバリア機能が低下します。
バリア機能が崩れると、外部からの刺激が直接内部へ伝わり、炎症反応として湿疹が生じます。炎症が起きると唇は急いで新しい皮膚を作ろうとしますが、未熟なまま剥がれ落ちるため、これが慢性的な皮むけの原因です。
さらに、めくれた皮を無理に指で剥がしてしまうと、未熟な真皮が露出してしまい、炎症がさらに悪化する悪循環に陥ります。負のループを断ち切るには、物理的に唇を保護し、水分を閉じ込めるケアが最優先となります。
唇は皮脂腺がほとんどないため、自力で潤いを保つことが困難な部位です。常に外部から油分を補い、擬似的なバリア膜を作ってあげることが重要です。
口唇炎の種類とそれぞれの特徴的な症状
唇に起こる湿疹の多くは医学的に口唇炎と呼ばれますが、原因によっていくつかの種類に分類されます。最も頻度が高いのは乾燥による剥離性口唇炎ですが、他にも接触皮膚炎や感染症など、多岐にわたるタイプがあります。
例えば、特定のリップ製品を使った後に腫れやかゆみが出る場合は、接触口唇炎の可能性が高いです。また、口の端が切れる口角炎は、胃腸の疲れや栄養不足、あるいは細菌感染が背景にあることが多く、対処法も異なります。
自分の症状がどのカテゴリーに当てはまるのかを知ることで、選ぶべき薬やケア方法が明確になります。症状が左右対称か、あるいは一部分だけかといった細かな観察が、正しいセルフケアや医師への相談において大きな助けとなります。
アトピー性皮膚炎を持っている方は、体質的に唇のバリア機能も弱い傾向にあり、慢性的な湿疹に悩みやすく、局所的なケアだけでなく、全身のスキンケアと連動させた対策を立てることが完治への近道です。
症状から見分ける口唇炎の分類
| 種類 | 主な症状 | 原因の例 |
|---|---|---|
| 剥離性口唇炎 | 大きな皮むけ、乾燥 | 空気の乾燥、なめる癖 |
| 接触口唇炎 | 強いかゆみ、赤み | 化粧品、金属、食品 |
| 光線口唇炎 | 慢性的な腫れ、角化 | 長期間の紫外線暴露 |
無意識に行っている習慣が唇の湿疹を悪化させるリスク
日常生活の中で無意識に行っている動作が、唇のトラブルを長期化させているケースが多々あります。代表的なものが、唇が乾いたと感じた際につい舌でなめてしまう行為です。
唾液が蒸発する際に、唇が本来持っていた水分まで一緒に奪い去ってしまうため、なめればなめるほど乾燥は深刻化します。さらに唾液に含まれる消化酵素が、薄い唇の粘膜を刺激して炎症を助長させるという側面もあります。
また、食事の後にナプキンやティッシュで唇を強くこすりすぎることも、微細な傷を作り湿疹を誘発します。唇の皮膚は非常にデリケートであるため、拭き取るのではなく、優しく押さえるようにして汚れを取り除くのが正解です。
睡眠中の口呼吸も、夜間の唇の水分を奪い、朝起きた時の皮むけを招きます。寝ている間は無意識であるため対策が難しいですが、加湿器の導入や口閉じテープの使用など、環境を整える工夫によって改善できる可能性があります。
リップクリームや口紅が唇の湿疹やアレルギーを招く理由
良かれと思って毎日塗っているリップクリームや、華やかな口紅が、実は湿疹やかゆみの直接的な原因になっていることがあります。これを接触口唇炎と呼び、製品に含まれる特定の成分が肌に合わないことで引き起こされます。
唇は粘膜に近い組織であり、経皮吸収率が他の部位よりも非常に高いため、添加物の影響をダイレクトに受けてしまいます。今まで問題なく使えていたものでも、体調や環境の変化で突然合わなくなるケースも少なくありません。
注意が必要なリップケア製品の成分構成
市販のリップ製品には、使用感を高めるために多種多様な成分が配合されていますが、中には敏感な唇にとって強い刺激物となり得るものが含まれています。特に香料や色素、保存料はアレルギーの代表的な原因です。
スーッとした清涼感をもたらすメントールやカンフルは、健康な唇には心地よくても、炎症がある状態では刺激が強すぎます。また、タール系色素は発色が良い一方で、アレルギー反応を起こしやすい成分です。
天然成分を謳っている製品も、決して油断はできません。植物エキスや精油、あるいはミツロウといった成分に反応する方もいます。オーガニック製品は複雑な配合が多く、原因の特定が難しくなることもあります。
製品の裏面に記載されている全成分表示を確認する習慣をつけましょう。もし新しいリップを使ってかゆみや違和感が出た場合は、すぐに使用中止し、配合成分をメモしておくことで、将来的なリスクを回避できます。
防腐剤として使われるパラベンや、酸化防止剤も人によっては湿疹のトリガーとなります。トラブルを繰り返す方は、成分数が少なく、できる限りシンプルな構成のワセリンベースの製品から試していくことが最も安全な方法です。
薬用リップと化粧品リップの正しい使い分け
リップクリームを選ぶ際、薬用(医薬部外品)と化粧品のどちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。日常の乾燥予防には、保湿に特化した化粧品グレードの製品や、刺激の少ない薬用リップクリームが適しています。
しかし、すでに湿疹や皮むけが起きている場合は、炎症を抑える成分(グリチルレチン酸など)が配合された医薬品のリップクリームを選ぶ必要があります。医薬品は治療を目的としているため、短期間で症状を鎮める効果が期待できます。
注意したいのは、薬用成分そのものがアレルギーの原因になるケースです。例えば、ひび割れに効く尿素は角質を柔軟にしますが、炎症がひどい唇に使うと強い痛みを感じることがあります。
症状が落ち着いている時は、UVカット効果のあるリップを取り入れるのもよいですが、紫外線吸収剤が刺激になる場合もあるため、敏感肌の方は紫外線散乱剤を使用したノンケミカル処方のものを選ぶのが無難です。
リップ製品の種類と適した唇の状態
- 医薬品リップ:皮むけや湿疹がひどく、治療が必要な状態に適しています。
- 医薬部外品(薬用):荒れの予防や、日常的な保湿ケアに向いています。
- 化粧品リップ:健康な唇のツヤ出しや、軽い乾燥対策に使用します。
- ワセリン:全てのステージで使え、最も刺激が少ない保護剤です。
金属アレルギーが唇の炎症を引き起こす可能性
意外な原因として挙げられるのが、金属アレルギーです。口紅に含まれる酸化鉄などの成分や、歯の治療で使われている充填物(銀歯など)に含まれる金属が、唾液に溶け出して唇に触れることで、慢性的な湿疹を招くことがあります。
また、フォークなどの食器から溶け出す微量の金属が原因となることもあります。もし化粧品を変えても改善せず、原因が特定できない場合は、一度皮膚科で金属アレルギーのパッチテストを受けることをお勧めします。
食べ物や飲み物が唇の痒みや湿疹を誘発する意外な落とし穴
唇のトラブルは外部から塗るものだけでなく、口にする食べ物によっても起き、食べ物に含まれる刺激成分が直接唇に触れることによる炎症や、全身的なアレルギー反応の一環として唇に症状が出るケースがあります。
刺激物による直接的な粘膜ダメージを避ける工夫
唐辛子などの香辛料に含まれるカプサイシンは、唇の神経を強く刺激し、血流を急激に増やして腫れやかゆみを引き起こします。湿疹がある状態で激辛料理を食べると、炎症がさらに深まり、回復を著しく遅らせる原因となります。
また、生のパイナップルやキウイなどの果物には、タンパク質を分解する強力な酵素が含まれていて、唇の薄い角層を溶かしてしまい、ヒリヒリとした痛みや皮むけを誘発します。特に完熟していない果物は刺激が強いです。
酸味の強いレモンやグレープフルーツなどの柑橘類も、ph値が低いため炎症部位にはしみます。食事の際は唇に直接触れないよう、一口サイズにして口の奥へ運ぶ、あるいはストローを活用するといった配慮が有効です。
塩分の強い食べ物(醤油のついた煎餅など)も、浸透圧の関係で唇から水分を奪います。唇が荒れている時は、なるべく薄味の和食を中心とし、油分で唇をコーティングしてから食事を始めるなどの防衛策を講じることが賢明です。
意外なところでは、紅茶やコーヒーに含まれる成分や、飲み物の温度も影響します。熱すぎる飲み物は火傷のようなダメージを与え、炎症を悪化させます。人肌程度の温度まで冷ましてから飲むように意識することで、唇への負担を軽減できます。
口腔アレルギー症候群と唇の腫れの関係
特定の果物や野菜を食べた直後に唇が腫れたり、イガイガしたりする場合は、口腔アレルギー症候群(OAS)を疑う必要があります。これは花粉症の人が、特定の食品に対しても免疫系が過剰に反応してしまう現象です。
例えば、シラカバ花粉症の方はリンゴや桃、ブタクサ花粉症の方はメロンやスイカで反応が出やすいことが知られています。花粉に含まれるアレルゲンの構造が、特定の果物に含まれるタンパク質と似ているために起こります。
単なる唇の荒れと思って放置していると、稀にアナフィラキシーショックのような重篤な症状に繋がることもあります。もし心当たりがある場合は、早めにアレルギー専門医に相談し、自分にとってのリスク食品を特定することが大切です。
このタイプのアレルギーは、加熱することでタンパク質の構造が変わり、反応が出にくくなることが多いのも特徴です。生の果物で症状が出る方は、コンポートやジャムなどの加工品に切り替えることで、唇の健康を守りつつ食事を楽しめます。
ビタミン不足が唇の粘膜再生を妨げる影響
唇の健康維持には、体の中からの栄養供給が欠かせません。特にビタミンB群は皮膚や粘膜の再生に深く関わっており、不足すると、唇が乾燥しやすくなったり、口角炎を繰り返したりといったトラブルが表面化します。
ビタミンB2やB6は、タンパク質の代謝を助け、健康な角層を作るために必要です。レバーや卵、納豆などに多く含まれますが、水溶性ビタミンであるため、体内に貯めておくことができず、毎日の食事から摂取する必要があります。
また、ビタミンCもコラーゲンの生成を助け、唇の弾力とバリア機能を高めるために大切です。ストレスや喫煙は体内のビタミンCを大量に消費するため、唇トラブルに悩む方は意識的に補給量を増やすことを検討する価値があります。
外食やインスタント食品に頼った生活が続くと、微量ミネラルである亜鉛も不足しがちになります。亜鉛は細胞分裂を正常に保つ役割があり、不足すると傷の治りが遅くなります。
唇の健康を支える栄養素と代表的な食品
| 栄養素 | 期待できる効果 | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| ビタミンB2 | 粘膜の修復、再生促進 | レバー、卵、納豆 |
| ビタミンB6 | 皮膚の代謝を正常化 | 鶏肉、魚、バナナ |
| ビタミンC | コラーゲン生成、抗酸化 | ブロッコリー、キウイ |
| 亜鉛 | 細胞分裂の正常化 | 牡蠣、赤身肉、カシューナッツ |
自宅でできる唇の湿疹を落ち着かせるための正しいケア手順
唇の湿疹を早く治すためには、特別な成分を補うことよりも、いかに刺激を排除してバリア機能を守るかが鍵となります。正しいクレンジングから保湿のタイミングまで、具体的なケア手順を習得することが、完治への第一歩です。
自己流のケアが、実は炎症を長引かせている原因になっていることもあります。
低刺激なクレンジングと洗顔のポイント
唇の荒れを悪化させる大きな要因の一つが、クレンジングによる摩擦と脱脂です。落ちにくいティントタイプのリップを使っている場合、落とそうとしてゴシゴシ擦る行為は、薄い唇の表面を削り取るようなダメージとなります。
炎症がある時は、ポイントメイクアップリムーバーをコットンにたっぷり含ませ、唇の上に10秒ほど優しく置いて、メイクを浮かせてから拭き取ってください。最小限の力で汚れを落とすことができ、摩擦を大幅に軽減できます。
洗顔時も、洗顔料が唇に残らないようぬるま湯でしっかりすすぎましょう。シャワーを直接顔に当てるのは水圧が強すぎるため、手で水をすくって優しく流すのが基本で、洗顔後は、水分が蒸発する前に素早く保湿することが鉄則です。
タオルで顔を拭く際も、唇を往復させるように拭くのはNGです。清潔なタオルを軽く押し当てるようにして、水分を吸わせるだけにしてください。
ワセリンを活用した密閉保湿の重要性
唇の湿疹治療において、最も信頼できるアイテムは「白色ワセリン」です。ワセリンは皮膚に浸透するのではなく、表面に物理的な膜を張ることで、内側の水分蒸発を100%近く遮断し、外部の刺激が直接触れるのを防いでくれます。
一般的なリップクリームには様々な成分が含まれていますが、白色ワセリンは不純物が極めて少なく、アレルギー反応を起こすリスクが最小限に抑えられています。炎症がひどい時期でも安心して使用できる唯一の保湿剤です。
塗布する際は、指先で少し温めて柔らかくしてから、唇の縦じわに沿って上から下へ優しく馴染ませてください。横方向に擦り付けると、めくれた角質を逆立ててしまい、痛みを誘発することがあるため注意が必要です。
就寝前は、唇の輪郭からはみ出すくらい広範囲に、厚めに塗るのがお勧めです。寝ている間の無意識な摩擦や、乾燥した空気から唇を完全に遮断することで、夜間の修復スピードを格段に上げることが可能になります。
日中も、飲食の後や会話が多い時の後など、こまめに塗り直しましょう。常に唇がワセリンの膜で覆われている状態をキープすることが大事です。
唇をなめる癖を改善するための意識改革
唇の湿疹が治らない最大の原因が、自分でも気づかないうちに唇をなめてしまう習慣であることは非常に多いです。唇が乾いた、違和感があると感じた瞬間に唾液で湿らせようとするのは、火に油を注ぐような行為だと理解しましょう。
唾液には消化酵素が含まれており、デリケートな唇のタンパク質を分解して炎症を助長させます。さらになめた後に水分が蒸発する過程で、唇内部の潤いまで一緒に連れ出してしまうため、なめるほどに乾燥は悪化し続けます。
この癖を治すには、なめたくなったら代わりにワセリンを塗る、という代替行動を徹底することです。常に保湿剤を手の届く場所に置いておき、唇に意識がいった瞬間に物理的な保護を行うようにしましょう。
皮膚科を受診するべき判断基準と治療法の選択肢
セルフケアを1週間続けても全く改善が見られない場合や、症状が急激に悪化する場合は、早急に皮膚科を受診してください。自己判断で市販の薬を使い続けると、かえって症状を複雑化させ、治癒を遅らせてしまう恐れがあります。
専門医は、視診や問診、必要に応じて検査を行うことで、湿疹の本当の原因を特定してくれます。
受診を検討するべき症状のサイン
受診を推奨するサインとしては、まず唇全体が真っ赤に腫れ上がり、強いかゆみや熱感を伴う場合です。強いアレルギー反応が起きている可能性が高く、内服薬による治療が必要になることもあります。
次に、小さな水ぶくれ(水疱)が密集してできたり、ジクジクとした汁が出たり、黄色いかさぶたができたりする場合です。ヘルペスウイルスや黄色ブドウ球菌による感染症の疑いがあり、抗ウイルス薬や抗生物質による処置が必要になります。
また、唇の縁(境界線)がぼやけてきたり、唇以外の口の周りにまで湿疹が広がってきたりした時も、早めの診断が重要です。痛みが強く、食事が満足に摂れないような状態であれば、躊躇せずに医療機関を頼るようにしましょう。
さらに、数ヶ月単位で同じ場所にずっと治らない亀裂やしこりがある場合は、稀に悪性腫瘍の前段階である可能性も否定できません。
皮膚科を受診する際は、現在使っているリップや口紅、歯磨き粉、あるいは最近飲み始めたサプリメントなどを持参、またはメモしていくと診断が非常にスムーズです。
医療機関で処方される代表的な外用薬の種類
皮膚科での主な治療法は、炎症を鎮めるためのステロイド外用薬が中心となります。唇は薬剤の吸収が非常に良いため、通常は顔用の比較的マイルドな強さのステロイドが選ばれますが、数日の使用で劇的な改善が見られることが多いです。
また、かゆみが強すぎて寝られないような場合は、炎症を抑えるために抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服が併用されることもあります。感染症が合併している場合には、抗生物質入りの軟膏が処方され、菌の増殖を抑える治療が行われます。
注意点は、医師の指示通りに薬を使い切ることです。見た目が良くなったからといって自己判断で中止すると、炎症がくすぶっていてすぐに再発することがあります。決められた期間と回数を守ることが、完治させるための絶対条件となります。
ステロイドと聞くと副作用を心配される方もいますが、医師の管理下で唇という限られた部位に短期間使用する分には、過度な心配は不要です。
最近では、ステロイドではない免疫調整薬(タクロリムス軟膏など)が使われることもあります。ステロイド特有の副作用を避けつつ炎症を抑える効果があり、特にアトピー性皮膚炎に伴う慢性的な口唇炎の管理に役立ちます。
皮膚科で処方される代表的な薬剤
| 薬剤のタイプ | 主な役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| ステロイド外用薬 | 炎症、かゆみを強力に抑える | 長期連用を避け、医師の指示を守る |
| 抗生物質軟膏 | 細菌感染の治療、予防 | 細菌性の化膿がある場合に有効 |
| 白色ワセリン | 物理的な保護、保湿 | 副作用がほとんどなく、併用可能 |
唇の健康を維持し再発を防ぐためのライフスタイル改善策
唇の湿疹が一度治った後も、維持するためには日々の生活習慣を整えることが重要です。唇は体調の変化が真っ先に現れる繊細な場所であるため、健康なライフスタイルこそが、再発を防ぐための最強のディフェンスとなります。
睡眠不足や偏った食事、過度なストレスは、免疫力を低下させ、唇のバリア機能を弱める大きな要因です。
質の良い睡眠と粘膜修復を促進する関係性
唇の細胞が最も活発に生まれ変わるのは、眠っている間です。特に深い睡眠中に分泌される成長ホルモンは、傷ついた粘膜の修復を促し、新しい健康な角層を作るために欠かせない役割を果たしています。
睡眠不足が続くと、唇のターンオーバーが乱れ、古い角質がいつまでも表面に残ってガサガサになったり、逆に未熟な皮膚のまま露出して炎症を起こしやすくなったりします。毎日決まった時間に就寝し、十分な休息を取ることが大切です。
寝る前のスマートフォンの使用を控えるなど、入眠環境を整えることで、短時間でも質の高い睡眠を得られます。唇の再生力を高めるために、夜はしっかりと体を休め、修復のためのエネルギーを全身に届けられるように心がけてください。
寝室の湿度にも気を配りましょう。冬場などは加湿器を活用し、湿度が50%を下回らないように管理することで、睡眠中の唇からの過度な水分蒸発を防げます。
また、夜更かしによる自律神経の乱れは、口唇ヘルペスなどのウイルス感染を誘発する引き金にもなります。唇にピリピリとした違和感が出やすい方は、規則正しい生活を送り、免疫システムを正常に保つ意識が必要です。
ストレスマネジメントと唇トラブルの連動性
精神的なストレスは、体内のホルモンバランスを崩し、肌のバリア機能を著しく低下させます。唇が荒れやすい時期を振り返ってみると、仕事が忙しかったり、人間関係で悩んでいたりする時と重なることが多いのではないでしょうか。
ストレスを感じると、無意識に唇を噛んだり、なめたりといった物理的な刺激を自分自身に与えてしまう癖が出やすくなります。また、胃腸の働きが弱まり、栄養の吸収率が下がることで唇が栄養不足に陥るという悪循環も生まれます。
自分なりのリラックス方法を見つけ、こまめにストレスを発散させることが、結果的に唇の平和を守ることになります。アロマを焚いたり、ゆっくりとお風呂に浸かったり、軽い運動をしたりすることで、心の疲れを溜め込まないようにしましょう。
唇の痒みや湿疹は、体からの休養を求めるサインかもしれません。症状が現れた時は、単に薬を塗るだけでなく、自分の生活ペースが過剰になっていないかを見直す機会と捉え、心身を労わる時間を意図的に作るようにしてください。
正しい水分補給が唇の弾力を維持するメカニズム
外側からの保湿と同じくらい重要なのが、内側からの水分補給です。体が脱水気味になると、生命維持に直接関係のない末端の組織である唇などは、優先的に水分供給が遮断され、急速に乾いて弾力を失ってしまいます。
一度に大量の水を飲むのではなく、1時間ごとにコップ一杯程度の常温の水をこまめに飲むのが理想的です。血液の循環が良くなり、唇の粘膜にも栄養と酸素が十分に行き渡り、内側からふっくらとした健康状態を作れます。
カフェインを多く含む飲み物やアルコールは利尿作用があり、逆に体内の水分を奪ってしまうことがあるため、摂りすぎには注意が必要です。
再発を防ぐための生活習慣チェック表
- 睡眠時間:毎日6時間以上、質の良い睡眠を確保できているか。
- 食生活:ビタミンB群やCを含む食品を毎食取り入れているか。
- 湿度管理:室内が乾燥しすぎていないか(加湿器を活用)。
- 接触回避:無意識に唇をなめたり触ったりしていないか。
- 水分量:1日1.5リットル程度の水をこまめに飲んでいるか。
Q&A
- 唇の湿疹を早く治すために、市販の薬用リップを使い続けても問題ありませんか?
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症状が1週間以上続く場合や悪化している場合は、市販の薬用リップを漫然と使い続けることは避けてください。
薬用成分そのものが刺激になり、接触皮膚炎を誘発している可能性があるためです。特にメントールなどの清涼成分が含まれているものは、荒れた唇には負担が大きすぎます。
まずは不純物の少ない白色ワセリンに切り替えて様子を見るか、速やかに皮膚科を受診して、適切な強さの外用薬を処方してもらうことをお勧めします。
- 特定の食べ物を食べた後に唇の湿疹やかゆみが出る場合、どのような原因が考えられますか?
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特定の食べ物の後に症状が出る場合は、口腔アレルギー症候群や、物理的な接触による皮膚炎が疑われます。
唐辛子などの香辛料や、パイナップル、キウイ、トマトといった酸味や酵素の強い食品は、唇の粘膜に直接ダメージを与えることがあります。また、果物と花粉症の交差反応によって腫れが生じることも多いです。
原因と思われる食品を特定するために、食事記録をつけるとともに、医療機関でのアレルギー検査を検討してください。
- 唇の湿疹がひどい時に、口紅やグロスなどのメイクをしても大丈夫でしょうか?
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炎症が起きている期間は、口紅やグロスなどのメイクは原則として控えるべきです。
化粧品に含まれる色素、香料、防腐剤、界面活性剤などの成分が、バリア機能の低下した唇から浸入し、さらなる悪化を招くリスクが非常に高くなります。
どうしても血色を良く見せたい場合は、皮膚科で処方された軟膏やワセリンで厚く保護した上から、刺激の少ない成分で構成された低刺激な製品を、直接触れないように薄く重ねる程度に留めましょう。
- マスクの着用が原因で、唇の湿疹やかゆみが悪化することはありますか?
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マスクの着用は唇の湿疹に大きく影響します。布や不織布との物理的な摩擦が刺激になるだけでなく、マスク内の呼気によって湿度が上昇し、外した瞬間に急激に乾燥するという変化が唇への大きな負担です。
また、マスクの素材や、洗濯に使用した洗剤に対するアレルギー反応が唇に現れることもあります。
対策としては、マスクの下にワセリンで保護膜をしっかり作ることや、低刺激な綿素材のインナーマスクを使用することが有効です。
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