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足の甲の湿疹・かゆみの原因は?サンダルのかぶれや靴擦れ、虫刺されかも

足の甲の湿疹・かゆみの原因は?サンダルのかぶれや靴擦れ、虫刺されかも

足の甲に赤いブツブツができていたり、我慢できないほどのかゆみに襲われたりして困った経験はないでしょうか。

夏場にサンダルを履いた際の摩擦やかぶれ、あるいは知らぬ間に刺された虫刺され、さらには季節を問わず発生する靴の中の蒸れなど、その原因は多岐にわたります。

足元の肌を保つためには、この部位特有の皮膚トラブルの原因を正しく理解し、症状に合わせた対処を早期に行うことが何よりも大切です。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

足の甲がかゆくなる皮膚の仕組み

足の甲は体の他の部位と比較しても、皮膚トラブルが起きやすい独自の構造的特徴を持っています。なぜこの部分に湿疹やかゆみが集中して発生しやすいのか、根本的な理由を皮膚の構造と生理機能の観点から掘り下げてみましょう。

皮膚バリア機能の低下と外部刺激

健康な皮膚の表面には、角層という薄い膜があり、外部からの細菌やアレルゲンといった異物の侵入を防ぐとともに、体内の大切な水分が過剰に蒸発するのを防ぐバリア機能が備わっています。

バリア機能が正常に働いている限り、日常生活における多少の刺激があっても、すぐに湿疹やかゆみといったトラブルにつながることはありません。

しかし足の甲は、夏場は強い紫外線やエアコンによる乾燥に直接さらされ、冬場は暖房による乾燥に加え、厚手の靴下やブーツによる圧迫を受け続けます。

こうした乾燥や物理的な摩擦といった要因が重なると、角層の細胞同士をつなぎ止めているセラミドなどの細胞間脂質が減少し、角層が乱れて隙間ができてしまい、バリア機能が低下した状態です。

バリア機能が低下すると、普段なら皮膚の表面でブロックされるはずのわずかな刺激物質が、角層の隙間を通って皮膚の奥深くまで容易に侵入し、免疫細胞を刺激し、炎症を起こすきっかけを作ります。

さらに、バリアが壊れた皮膚では神経線維が表皮の近くまで伸びてくるため、わずかな刺激でも敏感に感じ取り、強いかゆみとして脳に伝えてしまうのです。

足の甲特有の皮膚環境

同じ足の皮膚でも、足の裏と足の甲では性質が大きく異なります。足の裏は体重を支えるために角質層が非常に厚く丈夫にできていますが、対照的に足の甲の皮膚は非常に薄くデリケートです。

皮脂を分泌して天然の保湿クリームの役割を果たす皮脂腺も少ないため、非常に乾燥しやすい部位でもあります。乾燥して柔軟性を失った皮膚は、歩行時の皮膚の伸縮についていけず、目に見えない微細なひび割れを起こしやすいです。

加えて、足は心臓から最も遠い位置にあるため、重力の影響を受けて血液循環が滞りやすく、血流が悪くなると、皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が届きにくくなり、新しい皮膚が作られるサイクル(ターンオーバー)が乱れます。

その結果、古くて脆い角質がいつまでも肌表面に残ったり、逆に未熟な細胞が表面に出てきてしまったりして、バリア機能がさらに低下するという悪循環に陥りやすいのです。

足の部位による皮膚の特徴比較

比較項目足の甲足の裏
皮膚の厚さ非常に薄くデリケート体重を支えるため非常に厚い
皮脂腺少ない(乾燥しやすい傾向)全くない
汗腺体の他の部位と同程度にある非常に多く、常に発汗しやすい
主な外的ストレス靴のアッパー素材との摩擦、圧迫自身の体重による強い圧力、衝撃

アレルギー反応が起こす炎症

皮膚トラブルの中には、特定の物質に繰り返し触れることで、体の免疫システムがそれを敵だと記憶し、過剰に攻撃することで起こるものがあり、これがアレルギー反応による皮膚炎です。

足の甲は、靴やサンダルの素材に使われる化学物質、靴下に残留した洗濯洗剤や柔軟剤の成分、あるいはマッサージなどで塗布したクリームの成分など、多種多様な化学物質に日常的に触れる機会が多い部位です。

一度体が特定の物質をアレルゲン(アレルギーの原因物質)と認識してしまうと、次にその微量の物質に触れただけでも、記憶を持った免疫細胞が集まってきて強い炎症反応を起こします(アレルギー性接触皮膚炎)。

原因物質に触れてからすぐに症状が出るわけではなく、数時間から一、二日経ってから遅れて症状が現れることも多いため、患者さん自身が原因を特定することを難しくさせています。

サンダルや靴による接触皮膚炎

足の甲の湿疹でクリニックを受診される方の中で非常に多い原因が、日常的に履いている靴やサンダルによるものです。

履き物皮膚炎とも呼ばれるこれらのトラブルは、原因となっている履き物を特定し、避けない限り何度も繰り返してしまうという厄介な性質を持っています。

サンダルの素材によるアレルギー性接触皮膚炎

夏場に素足でサンダルを履くと、足の甲に赤いベルト状の湿疹ができることがあり、サンダルの素材自体に含まれる化学物質が原因となっているアレルギー性接触皮膚炎の典型的な症状です。

特に注意が必要なのは、革製品を柔らかく長持ちさせるためのなめし加工に使われる六価クロムなどの金属成分や、ゴム製品の弾力性を高めるために添加される加硫促進剤、あるいは素材を鮮やかに彩るための各種染料です。

このような化学物質は、乾燥した状態では皮膚に影響を与えにくいものの、足にかいた汗によって微量が溶け出すと、イオン化して皮膚のバリアを通過しやすくなり、皮膚の内部で強いアレルギー反応を起こします。

サンダルのストラップが当たっていた部分と完全に一致して赤み、かゆみ、あるいは小さな水ぶくれが現れるのが特徴です。

靴の染料や接着剤による刺激性接触皮膚炎

アレルギー体質でなくても、誰の肌にも起こりうるのが刺激性接触皮膚炎で、原因物質そのものが持つ毒性や強い刺激性によって、皮膚の細胞が直接傷つけられて起こる炎症です。

安価な靴やサンダルでは、製造過程で使用される強力な接着剤の成分や、質の良くない染料が完全に除去されずに残っていることがあり、直接皮膚に触れ続けることで化学熱傷(化学やけど)のような状態を起こします。

リスクが高まるのは、雨で靴の中まで濡れてしまった時や、夏場に大量の汗をかいて靴の中が蒸れているような状況です。

水分によってふやけた皮膚はバリア機能が極端に低下しており、そこに溶け出した刺激物質が浸透するため、非常に強い炎症につながりやすいです。

新しい靴を履いて足が色移りするような場合は、染料が皮膚に高濃度で付着していることを意味するため、直ちに使用を中止して足をよく洗う必要があります。

接触皮膚炎の2つのタイプの違い

特徴刺激性接触皮膚炎アレルギー性接触皮膚炎
発症する人強い刺激があれば誰にでも起こる特定の物質にアレルギーを持つ人のみ
症状が出るまでの時間触れてから比較的早く(数分〜数時間)触れてから遅れて(半日〜48時間後)
症状の範囲原因物質が触れた部分のみに限定触れた部分を超えて周囲に広がることも
原因の特定比較的容易(強い刺激物が原因)難しいことがある(パッチテストが必要)

ベルトやストラップの摩擦による物理的刺激

化学的な成分だけでなく、物理的な刺激も大きなトラブルの原因となり、足のサイズに合っていない大きすぎる靴やサンダルは、歩くたびに足が靴の中で前後左右に滑り、常に摩擦が繰り返されます。

足の甲は骨が出っ張っている部分があり、そうした部位は集中的に靴のアッパー素材や硬い縫い目とこすれ合います。

物理的刺激が繰り返されると、皮膚は防御反応として角質を厚く硬くしていきますが、それを超える刺激が加わると炎症を起こして赤くなったり、皮膚がめくれて傷になったりするのです。

いわゆる靴擦れですが、我慢して履き続けると、傷口から細菌が入って感染を起こしたり、色素沈着が残ってしまったりする原因になります。

履き物に関連する主な原因物質リスト

  • 皮革製品のなめし加工に使われる六価クロム等の金属
  • ゴム製品(特に安価なもの)に含まれるメルカプトベンゾチアゾール等の加硫促進剤
  • 合成皮革や化学繊維を着色するための分散染料
  • 靴のパーツを強力に固定するためのエポキシ樹脂系やゴム系の接着剤
  • 装飾用の金属バックルや留め具に含まれるニッケルやコバルト

汗や蒸れが起こす皮膚トラブル

足は第二の心臓とも呼ばれますが、同時に発汗量が非常に多い部位でもあり、両足で一日にコップ一杯分(約200ml)もの汗をかくと言われています。

大量の汗が靴の中に閉じ込められ適切に処理されないと、足の甲の皮膚環境は急速に悪化し、さまざまな皮膚トラブルの温床となってしまいます。

あせも(汗疹)と多汗による皮膚への影響

大量にかいた汗が皮膚の表面にスムーズに排出されず、汗の通り道である汗管が詰まってしまうと、行き場を失った汗が皮膚の中で漏れ出し、周囲の組織を刺激して炎症を起こします。

これがあせも(汗疹)の発生メカニズムで、足の甲に小さな透明あるいは赤い水ぶくれが多数でき、チクチクとした刺すようなかゆみを伴うのが特徴です。

足の甲は通気性の悪い革靴やスニーカー、あるいはストッキングなどで長時間覆われていることが多いため、かいた汗が蒸発しにくく、あせもができやすい過酷な環境にあります。

緊張やストレスを感じると手足に大量の汗をかく精神性発汗が多い体質の方は、気温に関係なく一年中このリスクにさらされています。

蒸れによる皮膚常在菌のバランス崩壊

私たちの皮膚には普段から多くの細菌(常在菌)が棲んでおり、皮膚の健康を保っていますが、高温多湿な蒸れた環境下では、常在菌のバランスが崩れ、特定の細菌やカビが爆発的に増殖してしまうことがあります。

汗や皮脂、古くなった角質が混ざり合ったものは、これらの微生物にとって格好の栄養源となるのです。

増殖した細菌が汗や角質を分解する過程で、アンモニアや低級脂肪酸といった刺激物質が作り出され、これが足の臭いの原因となると同時に、皮膚そのものを刺激してかゆみや炎症を起こす原因にもなります。

蒸れてふやけた皮膚は傷つきやすく、そこから細菌がさらに奥深くへ侵入して蜂窩織炎(ほうかしきえん)のような重篤な感染症を起こすリスクもゼロではありません。

冬場の隠れ蒸れにご用心

足の蒸れというと夏のイメージが強いかもしれませんが、実は冬場も油断できません。防寒のために機密性の高いロングブーツや、保温性の高い化学繊維の厚手タイツ、靴下を重ね履きすることで、足元の通気性は極端に悪くなります。

暖房の効いたオフィスや電車内では足元も意外に高温になっており、知らず知らずのうちに大量の汗をかいています。

冬の皮膚はただでさえ乾燥してバリア機能が低下しがちで、そこに蒸れによる刺激が加わることで、夏以上に頑固で治りにくい湿疹(冬のあせも)が発生することがあるのです。

冬だからといって油断せず、室内に入ったら通気性の良い室内履きに替えるといったこまめな調整が求められます。

季節ごとの足の蒸れリスク要因

季節主なリスク要因皮膚への具体的な影響
高気温による大量発汗、素足での靴着用あせもが多発、細菌繁殖による強い臭いとかゆみ
ブーツ、厚手タイツ、暖房による「隠れ発汗」乾燥した肌への蒸れ刺激による頑固な皮膚炎
梅雨高湿度、雨で濡れた靴の長時間着用皮膚が長時間ふやけ、バリア機能が著しく低下する

虫刺されとダニの影響

原因に全く心当たりがないのに、ある日突然、足の甲に強いかゆみを伴う赤い腫れが現れた場合、虫刺され(虫刺症)の可能性を疑う必要があります。

足の甲は地面に近い位置にあり、夏場は露出していることも多いため、さまざまな虫たちの格好のターゲットになりやすい部位です。

屋外レジャーに多い蚊やブユによる被害

公園での散歩、ガーデニング、キャンプ、屋外でのスポーツ観戦など、屋外で過ごした後に症状が出た場合は、蚊やブユ(地域によってはブヨ、ブトとも呼ばれます)による吸血被害の可能性が高いでしょう。

蚊に刺されると直後からかゆみが出ますが、ブユの場合は刺された時には気づかず、半日ほど経ってから耐え難い強いかゆみと痛み、そして赤いしこりが現れる遅延型のアレルギー反応を示すことが多いです。

ブユに刺されると、患部がパンパンに腫れ上がり、歩くのが辛くなるほどの痛みが出ることもあります。

また、症状が長引きやすく、搔きむしってしまうと結節性痒疹(けっせつせいようしん)と呼ばれる硬いイボのような状態になり、何年もかゆみが続く難治性の状態に移行してしまうリスクもあるため、初期対応が重要です。

家の中に潜む見えない敵、ダニ

家の中にも皮膚トラブルの原因となる虫は潜んでいて、カーペットや畳、布製のソファ、寝具などに生息するツメダニなどは、人間の皮膚の柔らかい部分を刺して体液を吸うことがあります。

足の甲は、リラックスしてソファでくつろいでいる時や、就寝中に布団から出ている時などに無防備になりやすく、ダニの被害に遭いやすい場所の一つです。

ダニによる虫刺されは、刺されてから数時間から翌日以降に、非常にかゆみの強い赤い発疹が現れるのが特徴です。太ももの内側やお腹など、衣服で覆われている柔らかい部分にも同時に症状が出ることがよくあります。

主な虫の種類と症状が現れるまでの時間

虫の種類主な生息場所症状出現までの目安特徴的な症状
屋外全般、屋内直後(即時型反応)比較的早めに治まるかゆみと赤み
ブユ(ブヨ)水辺、草むら、高原半日〜1日後(遅延型反応)強い腫れ、痛み、出血点、しこりが残る
ダニ(ツメダニ等)畳、カーペット、寝具数時間〜翌日以降しつこいかゆみ、腹部など柔らかい場所にも
ノミペット周辺、床、庭1〜2日後に出ることも膝下に集中、非常に強いかゆみ、水ぶくれ

ペットから移るノミのリスク

犬や猫などのペットを室内で飼っている場合、ノミが原因となるケースも少なくありません。ノミは普段はペットの体に寄生していますが、時として人間の血も吸います。

床やカーペットからジャンプして人間に飛びついてくるため、足首から下、特に足の甲が集中的に狙われやすいです。

ノミに刺されると、蚊とは比較にならないほど激しいかゆみに襲われ、赤いしこりや水ぶくれができることがあります。刺された痕が不規則にいくつも固まって現れるのも特徴の一つです。

虫刺されを防ぐための対策リスト

  • 屋外活動時は虫除けスプレー(ディートやイカリジン含有)を使用する
  • 草むらなどに入る際は、長ズボンと靴下を着用し肌の露出を減らす
  • 室内のカーペットや畳はこまめに掃除機をかけ、ダニの死骸やフンを除去する
  • 寝具は定期的に天日干しをするか、布団乾燥機を使用して乾燥させる
  • ペットの定期的なノミ・ダニ予防薬の投与を怠らない

その他の皮膚疾患

足の甲のかゆみを「ただのかぶれだろう」と軽く考え、市販薬を使い続けても一向に良くならない、あるいは悪化しているという場合、全く異なる皮膚疾患が隠れている可能性があります。

足の甲にもできる水虫(体部白癬)

水虫(白癬)というと、足の指の間がジュクジュクしたり、足の裏の皮がむけたりするイメージが強いですが、足の甲の皮膚にも感染します。

専門的には体部白癬(たいぶはくせん)と呼びますが、原因菌は同じ白癬菌というカビ(真菌)の一種で、足の甲の水虫は、小さな赤い発疹から始まり、徐々に周囲へ円を描くように広がっていくのが特徴です。

輪の中心部分は比較的治っているように見え、縁の部分が堤防のように少し盛り上がって赤くなり、カサカサしたフケのようなものが付着したり、小さな水ぶくれができたりします。

通常の湿疹と勘違いしてステロイド外用薬を塗ってしまうと、皮膚の免疫力が抑えられ、カビにとっては好都合な環境となり、爆発的に増殖して症状が急激に悪化してしまうので注意が必要です。

乾癬や掌蹠膿疱症などの慢性炎症性疾患

体質的な要因が大きく関わる慢性の皮膚疾患が、足の甲に症状として現れることもあります。

乾癬(かんせん)は、境界がはっきりした赤い発疹の上に、銀白色の乾いたカサブタが厚く付着する病気で。擦れやすい部位に出る傾向があり(ケブネル現象)、靴とこすれる足の甲も好発部位の一つです。

また、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、手のひらや足の裏に無菌性の(菌がいない)膿をもった小さな水ぶくれが繰り返しできる病気ですが、足の側面から甲にかけて症状が広がってくることも珍しくありません。

内臓疾患や血行障害が関与するケース

まれに、皮膚以外の体の不調が足のかゆみとして現れていることがあります。糖尿病、肝臓病、腎臓病などが進行すると、体内にかゆみの原因となる物質が蓄積し、全身に強いかゆみが出ることがあり、足の甲も例外ではありません。

また、立ち仕事などで足の静脈の血液がうまく心臓に戻らずに滞る下肢静脈瘤があると、膝から下の血行が悪くなり、皮膚が栄養不足に陥って炎症を起こしやすくなります(うっ滞性皮膚炎)。

足の甲やすねに湿疹ができ、茶色く色素沈着を起こして硬くなっていき、この場合、皮膚の治療と並行して、弾性ストッキングの着用など血流を改善する治療が必要です。

かぶれと水虫の見分け方の目安

チェック項目一般的な湿疹・かぶれ水虫(体部白癬)
発疹の形全体的に赤く、境界がぼやけていることが多い輪郭がはっきりした円形や地図状になりやすい
症状の広がり方原因物質が触れた範囲に全体的に広がる中心が治りながら、縁が外側へ広がっていく
発生部位の左右差両足の同じような場所にできることが多い片足だけに症状が出ることが比較的多い
ステロイドへの反応一時的にでも赤みやかゆみが引くことが多い塗ると一時的に引くこともあるが、すぐに悪化・拡大する

自宅でできるセルフケアと応急処置

夜間や休日など、すぐには皮膚科を受診できない状況で足の甲にかゆみや湿疹が出てしまった場合、自宅でどのようなケアを行うかが、その後の経過を大きく左右します。

患部を清潔に保つための正しい洗い方

皮膚トラブルの基本は、患部を清潔に保つことですが、良かれと思ってゴシゴシと念入りに洗うのは逆効果です。

炎症を起こしている皮膚は非常にデリケートになっており、ナイロンタオルなどで強くこすると、傷ついた皮膚をさらに痛めつけ、バリア機能を破壊してしまいます。

洗う際は、低刺激性の石鹸やボディソープを使い、手のひらでたっぷりと泡立て、泡をクッションにして、手で優しくなでるように洗うのがポイントです。

指の間や甲のしわの部分には汚れやアレルゲンが溜まりやすいので、泡を行き渡らせるように洗います。すすぎは、石鹸成分が残らないようにぬるま湯で十分に行いましょう。

かゆみを抑える冷却方法と保湿ケア

どうしても我慢できない強いかゆみがある場合、冷やすことが最も安全で即効性のある応急処置です。保冷剤をタオルやハンカチで包み、患部に当てることで、皮膚の神経の興奮を鎮め、かゆみを一時的にマヒさせることができます。

ただし、保冷剤を直接肌に当てたり、長時間冷やし続けたりすると凍傷になる恐れがあるため、断続的に行うよう注意してください。

乾燥がかゆみの主な原因となっている場合や、入浴後には、徹底した保湿ケアが大切で、保湿剤は肌のバリア機能を補い、外部刺激から皮膚を守ってくれます。入浴後、肌がまだ少し湿り気を帯びている5分以内に塗るのが最も効果的です。

主な保湿剤のタイプと特徴

タイプ主な成分例特徴と使い分け
軟膏ワセリンなど刺激が少なく保護力が最強。ベタつくのが欠点。傷があっても使える。
クリームヘパリン類似物質、尿素など伸びが良く使いやすい。保湿力と使用感のバランスが良い。
ローションヘパリン類似物質、尿素などさらっとしていて広範囲に塗りやすい。夏場向き。傷があると染みることがある。

市販薬を使用する際の選び方と注意点

ドラッグストアには数多くのかゆみ止め外用薬が販売されていますが、自分の症状に合ったものを選ぶのは容易ではありません。

すでにかき壊してジュクジュクしている場合や、ひっかき傷がある場合は、細菌感染を防ぐために抗生物質が配合された軟膏タイプを選ぶのが無難です。

かゆみが強い場合はステロイド外用薬が有効ですが、ステロイドには強さのランクがあります。足の甲の皮膚は薄いため、薬の成分が吸収されやすく、あまり強いランクのものを長期間使い続けると副作用のリスクも高まります。

また、水虫にステロイドを使うと劇的に悪化するので、原因がはっきりしないまま、自己判断で漫然と薬を使い続けることは避け、数日使って効果がなければ使用を中止する決断も大切です。

日常で意識したいセルフケアのポイント

  • 帰宅後はできるだけ早く足を洗い、付着した汚れやアレルゲンを落とす
  • 入浴後は時間を空けずに、すぐに保湿剤を塗って水分の蒸発を防ぐ
  • 室内では締め付けのない、通気性と吸湿性に優れた綿やシルクの靴下を履く
  • 寝ている間の無意識の搔き壊しを防ぐため、手の爪は常に短く滑らかに切っておく
  • 原因と疑われる新しい靴やサンダルの使用を一旦中止して様子を見る

皮膚科を受診すべき症状のタイミング

多くの皮膚トラブルはセルフケアで改善に向かいますが、中には専門医による診断と治療が不可欠なケースもあります。

我慢できないほどの強いかゆみや痛みが続く場合

仕事や学業に手がつかないほどのかゆみや、夜中に何度も目が覚めてしまうほどのかゆみは、体が発している重症のサインです。睡眠不足はストレスとなり、さらにかゆみを増強させるという悪循環に陥ります。

また、かゆみだけでなく、ズキズキとした痛みを伴う場合や、患部が熱を持って赤くパンパンに腫れ上がっている場合は、皮膚の深い部分で細菌感染を起こしている可能性があり、早急に抗生物質による治療が必要な緊急性の高い状態です。

市販薬で改善が見られない、または悪化する場合

市販薬を説明書通りに5〜6日使用してみても症状が改善に向かわない、あるいはかえって範囲が広がったり赤みが強くなる場合は、選択した薬が症状に合っていないか、原因の自己診断が間違っている可能性が高いです。

水虫(白癬)や特定の細菌感染症では、一般的なかゆみ止めがかえって害になることがあるので、この段階で自己判断に見切りをつけ、専門家に診断を受けることが、確実に治す近道となります。

市販外用薬の主な成分とその役割

成分系統主な作用と期待できる効果使用上の重要な注意点
ステロイド系強力な抗炎症作用で赤み、腫れ、かゆみを速やかに抑える長期連用で皮膚が薄くなるなどの副作用リスク。感染症(水虫など)には禁忌。
抗ヒスタミン系アレルギー反応に関わるヒスタミンの働きを抑え、かゆみを鎮めるステロイドほどの即効性や強さはないが、比較的安全性が高く使いやすい。
非ステロイド系抗炎症(NSAIDs)炎症を引き起こす物質の生成を抑え、軽度の赤みや痛みを鎮める効果はマイルド。まれにかぶれを起こす人もいるため、合わないと感じたら中止する。

症状の範囲が広がったり、全身症状が現れた場合

最初は足の甲の一部だけだった湿疹が、足首を超えてすねやふくらはぎへ、あるいは反対側の足や腕にまで広がってくるような場合は、体の中でアレルギー反応が連鎖的に広がっている可能性があります。

これを自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)と呼び、非常に強いかゆみを伴う厄介な状態で、ここまで進むと塗り薬だけでは抑え込むのが難しく、内服薬による全身的な治療が必要です。

また、発熱や倦怠感など、皮膚以外の全身症状を伴う場合も、単なる皮膚炎ではない可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください。

すぐに皮膚科受診を検討すべき危険サイン

  • 夜も眠れないほどの激しいかゆみが続いている
  • 患部が熱を持ち、急速に赤く腫れ上がってきた
  • 黄色いドロドロした膿や汁が出て止まらない
  • 発疹の範囲が日ごとに拡大し、全身に広がってきた
  • 発熱や寒気、関節痛など、全身の不調を伴っている

受診時に医師に伝えてほしい情報メモ

伝えるべき項目診断の助けとなる具体的な内容の例
いつから「3日前の朝から急に」「1ヶ月前から良くなったり悪くなったり」など
きっかけの心当たり「新しいサンダルをおろした」「川辺でバーベキューをした」「草むしりをした」など
これまでの対応「市販の○○という軟膏を5日間塗った」「保冷剤で冷やしていた」など(薬を持参するとベスト)
症状の変化「最初は小さな赤い点だったが、水ぶくれになって破れた」「だんだん範囲が広がってきた」など

足の甲の湿疹・かゆみに関するよくある質問

最後に、日々の診療の中で患者さんからよく寄せられる足の甲のトラブルに関する質問について、Q&A形式でお答えします。

毎日きれいに足を洗っているのに、なぜかゆくなるのでしょうか?

洗いすぎがかえって皮膚を痛めている可能性があります。

洗浄力の強すぎるボディソープを使ったり、ゴシゴシこすったりすると、皮膚を守るために必要な皮脂や保湿成分まで洗い流され、バリア機能が低下して乾燥し、少しの刺激でもかゆみを感じる敏感な肌になってしまいます。

低刺激の石鹸をよく泡立て、手で優しく洗う習慣に変えてください。

搔きむしった跡が茶色く残ってしまいました。消すことはできますか?

茶色い跡は炎症後色素沈着といって、炎症によって過剰に作られたメラニン色素が肌に残ってしまった状態で、消す特効薬はありませんが、時間をかけて徐々に薄くしていくことは可能です。

最も大切なのは、これ以上絶対に搔かないことです。搔くたびに新たな炎症が起き、色素沈着が濃くなってしまい、また、紫外線は色素沈着を悪化させるため、日焼け対策も重要です。

職場では革靴が必須です。蒸れを防ぐ良い方法はありますか?

一日中同じ革靴を履き続けると、靴の中の湿度は極めて高くなります。可能であれば、自分のデスクにいる間だけでも通気性の良いサンダルやスリッパに履き替えるのが最も効果的です。

それが難しい場合は、吸湿・速乾性に優れた機能性素材の靴下を選び、昼休みなどに一度新しい靴下に履き替えるだけでも、足の不快感や皮膚への負担を大幅に軽減できます。

同じ靴を毎日履かず、数足をローテーションさせて靴を乾燥させることも大切です。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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