まぶたのかゆみや赤みは、日常生活において非常に不快な症状を起こします。皮膚が薄くデリケートな目元は、さまざまな刺激に対して過敏に反応しやすいため、正しい知識を持つことが重要です。
この記事では、まぶたがかぶれる原因、化粧品との関連性、効果的な治し方や日々の正しいケア方法について解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
まぶたの皮膚構造とトラブルが起きやすい理由
まぶたがかぶれやすいい理由には、特有の皮膚構造の薄さと機能に隠されています。目元の皮膚が持つ特殊な性質を理解することで、トラブルの予防につなげることができます。
皮膚の薄さとバリア機能の弱さ
まぶたの皮膚は、人体の中で最も薄い部分の一つで、顔の他の部分、頬や額などと比較しても薄さは際立っており、約0.6ミリメートルしかありません。これはゆで卵の薄皮程度の厚さです。
皮膚の表面にある角層は、外部の刺激から肌を守るバリアの役割を果たしますが、まぶたはこの角層も非常に薄く形成されているため、アレルゲンや刺激物質が内部に侵入しやすく、炎症反応を起こしやすい状態にあります。
わずかな刺激でも敏感に反応してしまうのは、この構造的な脆さが大きく関係しています。また、皮膚が薄いということは、塗布した薬剤の吸収率も非常に高いことを意味し、治療において副作用が出やすい理由の一つです。
顔の部位による皮膚の厚さ比較
| 部位 | 皮膚の厚さ(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| まぶた | 約0.6mm | 非常に薄くデリケート |
| 頬 | 約2.0mm | 適度な厚みがある |
| 足の裏 | 約4.0mm | 厚く頑丈 |
皮脂腺と汗腺の少なさによる乾燥
皮膚の潤いを保ち、保護膜を作るために重要な役割を果たすのが皮脂膜です。
皮脂膜は皮脂と汗が混ざり合って作られますが、まぶたには皮脂腺や汗腺が極めて少なく、天然の保護クリームである皮脂膜が形成されにくく、常に乾燥しやすい環境にさらされています。
肌の水分が蒸発するのを防ぐ力が弱いため、経皮水分蒸散量が他の部位よりも高く、潤いを留めておくことが困難です。乾燥した皮膚は角質の並びが乱れ、バリア機能がさらに低下し、外部からの刺激をダイレクトに受けやすくなります。
冬場の乾燥した空気はもちろん、夏場のエアコンによる乾燥もまぶたにとっては大敵です。また、涙に含まれる塩分も刺激となり、乾燥を加速させる要因となります。
瞬きによる摩擦刺激の影響
私たちは無意識のうちに、1分間に約20回、1日に換算すると約2万回もの瞬きを行っていて、絶え間ない運動は、眼球を乾燥から守り、ゴミを排除するために必要不可欠ですが、まぶたの皮膚にとっては大きな物理的負担となります。
皮膚が折り畳まれたり伸びたりを繰り返すことで、常に摩擦が生じている状態です。かぶれや炎症が起きている状態で瞬きを続けることは、傷口を常に擦っているのと同じような状況を作り出し、治癒を妨げる要因となります。
さらに、現代人はスマートフォンやパソコンの使用時間が長く、画面を凝視することで瞬きの回数が減少し、ドライアイになりがちです。
目が乾くと無意識に目をこする動作が増え、新たな摩擦刺激となって皮膚へのダメージを蓄積させ、慢性的な炎症へと発展していきます。
まぶたかぶれの主な原因と化粧品の関連性
まぶたのかゆみや赤みの原因を探る際、最も疑わしい要因の一つが日常的に使用する化粧品ですが、化粧品以外にも意外な物質が原因となっていることもあります。原因を特定し、排除することが治療への近道です。
接触皮膚炎の種類と特徴
まぶたのかぶれは接触皮膚炎と呼ばれ、大きく分けて刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の2種類です。
刺激性接触皮膚炎は、触れた物質そのものが持つ毒性や刺激性によって、誰にでも起こりうる炎症で、肌のバリア機能が低下している時ほど起こりやすく、洗浄力の強い石鹸や薬剤などがこれに該当します。
アレルギー性接触皮膚炎は、特定の物質に対して免疫システムが過剰に反応することで起こり、これまでは問題なく使えていた化粧品でも、ある日突然、許容量を超えてアレルギー反応を示すことがあります。
遅延型アレルギーとも呼ばれ、原因物質に触れてから数時間から数日後に症状が現れるため、直前に使ったものが原因とは限らず、特定が難しいです。
接触皮膚炎の分類と違い
| 種類 | 発症の仕組み | 発症までの時間 |
|---|---|---|
| 刺激性接触皮膚炎 | 物質の刺激で細胞が傷つく | 接触後すぐに症状が出る |
| アレルギー性接触皮膚炎 | 免疫反応による炎症 | 接触後数時間から数日後 |
| 光接触皮膚炎 | 物質と紫外線の反応 | 日光に当たった後に発症 |
化粧品に含まれる成分とアレルゲン
アイメイクなどの化粧品には、鮮やかな発色を実現したり、長期間品質を保持したりするために、さまざまな化学物質が含まれていて、これがアレルゲンとなり、かぶれを起こすケースが多々あります。
特に注意が必要なのは、パラベンなどの防腐剤、合成香料、タール色素と呼ばれる着色料、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤です。また、金属アレルギーも見逃せません。
マスカラやアイライナー、アイシャドウに含まれる酸化鉄や酸化チタンなどの金属成分が、汗や涙に溶け出しイオン化して皮膚に浸透することでアレルギー反応を起こします。
二重まぶたを作るための接着剤(アイプチなど)に含まれるゴムラテックスやアクリル系樹脂も、強力な感作性を持つアレルゲンとして知られています。
オーガニックや無添加と記載されていても、植物エキスそのものが人によってはアレルゲンとなる可能性もあるため、注意が必要です。
化粧品アイテム別のかぶれリスク
- アイシャドウに含まれる金属成分やタール色素
- マスカラの防腐剤や繊維成分
- つけまつげ用接着剤のラテックスやアクリル樹脂
- クレンジング剤の強力な界面活性剤
- ビューラーの金属部分による金属アレルギー
花粉や空気中の浮遊物質の影響
化粧品を変えていないのにまぶたがかぶれる場合、空気中を漂う物質が原因である可能性を考慮します。スギやヒノキ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉は、花粉皮膚炎を起こす代表的な物質です。
花粉がまぶたや首などの露出部に付着することで、免疫細胞が反応しかゆみや赤みを生じさせ、春先や秋口など、特定の季節に症状が悪化する場合は花粉の影響を強く疑います。
また、大陸から飛来する黄砂やPM2.5、家の中のハウスダストなども同様に非常に粒子が細かく、皮膚の毛穴やシワに入り込みやすいため、洗顔だけでは完全に落ちにくいです。
さらに、コンタクトレンズを使用している場合、レンズに付着したタンパク汚れや保存液の成分がアレルギー性結膜炎を起こし、二次的にまぶたの皮膚まで炎症が波及することもあります。
かゆみや赤みの症状と進行レベル
まぶたのトラブルは、初期段階での対処が重要です。症状を放置すると、皮膚の状態は悪化の一途をたどり、治療に時間を要することになります。
初期症状としての違和感と乾燥
トラブルの始まりは、些細な違和感からスタートし、なんとなくまぶたが突っ張る感じがする、いつもより乾燥している気がする、といった自覚症状が現れます。
この段階では、見た目には大きな変化がないことも多く、単なる季節性の乾燥だと見過ごされがちですが、この時点で皮膚の微細な炎症は始まっており、バリア機能はすでに低下して外部刺激を受けやすい状態になっています。
いつもの化粧水が少ししみる、アイシャドウのノリが悪くなる、二重のラインが定まらないといったことも、初期の重要なサインです。
急性期の炎症反応と身体的苦痛
刺激が継続したり強いアレルゲンに触れたりすると、急性期の症状が現れ、まぶたが赤く腫れ上がり、強いかゆみや熱感を伴います。場合によっては、皮膚がただれたり、黄色い浸出液が出てじゅくじゅくした状態になったりすることもあります。
朝起きた時に目が開けにくいほどパンパンに腫れることもあり、見た目の変化が著しいため、外出が億劫になるなど日常生活に支障をきたします。かゆみは非常に強く、特に体が温まった時や夜間に増強しやすいです。
我慢できずに掻いてしまうことで皮膚が傷つき、さらにヒスタミンなどの炎症物質が放出されるという悪循環(イッチ・スクラッチ・サイクル)に陥ります。
症状の進行度と特徴的な状態
| 進行度 | 主な症状 | 皮膚の状態 |
|---|---|---|
| 軽度 | 乾燥、軽いつっぱり感 | カサカサしている |
| 中等度 | 赤み、かゆみ、軽い腫れ | 少し熱を持っている |
| 重度 | 強い腫れ、ただれ、浸出液 | 皮膚が破れている |
慢性化による皮膚の苔癬化
炎症とかゆみが長期間続くと、皮膚は絶えず続く刺激に対する防御反応として、表皮を厚く硬く変化させていき、これを苔癬化(たいせんか)と呼びます。
まぶたの皮膚が象の肌のようにゴワゴワとし、深いシワ(網目状のシワ)が刻まれたような状態になり、メラノサイトが活性化し、色素沈着を起こして茶色くくすんで見えることもあります。
一度苔癬化してしまうと、皮膚の柔軟性が失われているため、元の柔らかい皮膚に戻るまでには長い時間と根気強い治療が必要です。
また、慢性的な皮膚の肥厚は、二重のラインを変形させたり、まぶたが重く下がる眼瞼下垂のような見た目を起こしたりすることもあります。
慢性化させないためには、症状が出たり治まったりを繰り返している段階で放置せず、根本的な原因を突き止め治療を行うことが重要です。
自宅でできる間違ったケアと正しい対処法
良かれと思って行っているケアが、実はまぶたのかぶれを悪化させている可能性があります。日常生活の中で無意識に行っている習慣を見直し、皮膚への負担を最小限に抑えることが治癒への近道です。
クレンジングと洗顔の見直し
アイメイクをしっかり落とそうとするあまり、洗浄力の強いオイルクレンジングでゴシゴシと擦っていませんか。この行為は、バリア機能が壊れたまぶたにとって最大の攻撃となります。
かぶれがある時は、石鹸やお湯で落ちるメイクに切り替え、強力なクレンジング剤の使用を控えましょう。どうしてもクレンジングが必要な場合は、ミルクタイプやクリームタイプなど、洗浄力がマイルドで肌への摩擦が少ないものを選びます。
拭き取りタイプのクレンジングシートは、繊維による摩擦刺激が強いため、かぶれている時は絶対に使用を避けてください。洗顔時も、洗顔料をしっかり泡立て、たっぷりの泡をクッションにして、手が直接肌に触れないように優しく洗います。
熱いお湯は必要な皮脂まで奪ってしまうため、体温より少し低いぬるま湯ですすぐことを徹底し、すすぎ残しがないよう、特に目頭や目尻は注意深く流します。
避けるべきNG行動リスト
- クレンジング時に強くこする
- 熱いお湯で顔を洗う
- かゆい時に爪でかく
- 古い化粧品を使い続ける
- 自己判断で市販薬を乱用する
保湿ケアの重要性と選び方
バリア機能が低下したまぶたには、十分な保湿が必要ですが、化粧水や乳液に含まれる多種多様な成分がかえって刺激になることもあります。炎症が起きている時は、成分が極めてシンプルで刺激の少ない保湿剤を選びます。
最も安全性が高いのは白色ワセリンです。ワセリンは皮膚に浸透せず、表面に油膜を作って水分の蒸発を防ぎ、花粉やほこりなどの外部刺激から物理的に保護してくれます。
使用する際は、米粒半分程度の少量を指先で温めて柔らかくし、優しく押し込むように塗布し、横に擦るのではなく、スタンプを押すように乗せるのがコツです。
ヒルドイドなどのヘパリン類似物質も有効ですが、血行促進作用があるため、赤みや痒みが強い急性期に使用すると、血流が良くなりすぎて痒みが増すことがあります。
保湿剤のタイプと特徴
| 保湿剤 | 特徴 | 使用のポイント |
|---|---|---|
| 白色ワセリン | 保護作用が高く刺激が少ない | 少量を薄く伸ばす |
| ヘパリン類似物質 | 保水力が高くバリア改善 | 赤みが強い時は避ける |
| セラミド配合乳液 | 角層の水分保持機能を補う | 敏感肌用を選ぶ |
アイメイクの一時中断と再開のタイミング
かぶれを早く治すためには、原因となる可能性のあるアイメイクを完全に中止することが最も効果的です。マスカラ、アイライナー、アイシャドウはもちろん、二重のりやつけまつげも控えます。
メイクがお肌に合わないことが原因であれば、使用を続ける限り症状は改善しませんし、メイク道具自体に雑菌やアレルゲンが付着している可能性もあります。
仕事などでどうしてもメイクが必要な場合は、目元を避けて眉毛とリップメイクだけで仕上げる、あるいはフレームの太いメガネをかけて目元を目立たなくするなどの工夫をしましょう。
症状が治まり、皮膚の赤みやかゆみが完全に消えてから、一つずつ慎重にメイクを再開します。新しい化粧品を試す際は、一度に全てを変えるのではなく、一品ずつ試して数日間反応を見ることが大切です。
皮膚科での治療法と処方薬の解説
セルフケアで改善が見られない場合や、症状が強い場合は、皮膚科での専門的な治療が必要です。ここでは主な治療薬について解説します。
ステロイド外用薬の効果と副作用
まぶたのかぶれ治療において、基本となるのはステロイド外用薬です。
ただし、ステロイドには強力な抗炎症作用があり、短期間で赤みやかゆみを抑え、掻き壊しによる悪化を防ぐことができますが、まぶたは皮膚が薄く薬の吸収率が腕などの皮膚に比べて何倍も高いため、副作用が出やすい部位でもあります。
長期連用による皮膚の菲薄化(さらに薄くなること)や毛細血管拡張、眼圧上昇などのリスクを考慮し、顔や目の周りには、効果がマイルドなランクのステロイド、あるいは眼科用の軟膏が選択されます。
副作用を恐れて極端に少量を塗ると効果が出ず、かえって治療期間が長引くことがあるので、医師の指示する量を、指示された期間だけしっかりと使用することが、副作用を防ぎながら治療効果を最大化する鍵です。
タクロリムス軟膏(免疫抑制剤)の活用
ステロイド外用薬の副作用を懸念する場合や、アトピー性皮膚炎などで慢性的な症状が続き長期間の治療が必要な場合には、タクロリムス軟膏(プロトピック)が処方されることがあります。
タクロリムス軟膏は過剰な免疫反応を抑える薬で、分子量が大きく正常な皮膚からは吸収されにくく、ステロイドのような皮膚菲薄化や眼圧上昇などの副作用がないため、皮膚の薄いまぶたや首などの治療に非常に適しています。
ただし、使い始めにヒリヒリとした刺激感や熱感、かゆみを感じることが多くあります。
刺激感は副作用ではなく薬が効いている証拠でもあり、皮膚の状態が良くなるにつれて1週間程度で消失していくのが一般的ですが、事前にこの特徴を理解しておくことが治療継続のポイントです。
主な処方薬の分類
| 薬剤名 | 作用機序 | 注意点 |
|---|---|---|
| ステロイド外用薬 | 強い抗炎症作用 | 長期連用による副作用 |
| タクロリムス軟膏 | 免疫反応の抑制 | 使用初期の刺激感 |
| 抗ヒスタミン内服薬 | かゆみの伝達ブロック | 眠気が出ることがある |
原因特定のためのパッチテスト
原因物質を特定し、再発を防ぐために行われるのがパッチテストです。
疑わしい化粧品や金属、化学物質などを背中や腕に専用のシールで貼り付け、48時間後や72時間後、さらには1週間後の皮膚反応を判定し、どのアレルゲンに反応しているかを客観的に知ることができます。
自分が日常的に使用している化粧品を持参してテストを行うことも可能です。原因が判明すれば、その成分を含まない製品を選ぶことで、かぶれを未然に防ぐことができます。
難治性のまぶたかぶれに悩んでいる場合や、化粧品を変えても症状が繰り返される場合は、一度パッチテストを受けることを検討しましょう。
再発を防ぐための生活習慣と予防策
一度治っても、同じ生活を続けていれば再発する可能性が高くなります。まぶたの健康を守り続けるためには、日々の生活習慣を見直し、アレルゲンや刺激から身を守る環境を整えることが必要です。
低刺激性・敏感肌用化粧品の選び方
化粧品を選ぶ際は、「低刺激性」「敏感肌用」「アレルギーテスト済み」などの表示がある製品を選びます。
比較的刺激の少ない成分で作られていますが、全ての人にかぶれが起きないわけではないので、成分表示を確認し、過去にかぶれたことのある成分が入っていないかチェックする習慣をつけてください。
香料や着色料、エタノールフリーのものはリスクを減らすことができ、また、クレンジングによる負担を減らすために、お湯で簡単に落とせるフィルムタイプのマスカラやアイライナーを選ぶことが非常に有効です。
日焼け止めを使用する場合も、紫外線吸収剤を含まない「ノンケミカル」タイプを選ぶと肌への負担が軽減します。新しい化粧品を使う前には、顔に使用する前に二の腕の内側などで簡易的なパッチテストを行いましょう。
化粧品選びのチェックポイント
- 「お湯で落ちる」タイプを選ぶ
- 無香料・無着色のものを選ぶ
- 過去に合わなかった成分を確認
- サンプルで相性を確認する
- 開封後長期間経過したものは捨てる
手や指による接触を減らす意識
私たちは無意識のうちに、1日に何度も顔を触っていますが、手には目に見えない雑菌や汚れ、さまざまな化学物質が付着しています。
汚れた手でまぶたを触ったりこすったりすることは、直接的な刺激となるだけでなく、とびひなどの細菌感染症のリスクも高めます。
特にマニキュアやジェルネイルをしている場合、爪先のレジン成分がまぶたに触れることでアレルギーを起こすこともありますし、長い爪で皮膚を傷つける恐れもあります。
意識的に顔を触らないようにする、目をこする癖を直す、どうしても触れる必要がある時は必ず手を洗って清潔にしてからにする、といった行動変容が重要です。
また、メイクブラシやチップなどの道具も定期的に洗浄し、雑菌の繁殖を防ぐことも忘れてはいけません。
室内環境とアレルゲンの除去
アレルギーの原因がハウスダストやダニ、ペットの毛などの場合、室内の清掃を徹底することが予防につながります。寝具はダニの温床になりやすいため、こまめに洗濯し、布団乾燥機や掃除機をかけてダニの死骸やフンを除去します。
特に枕カバーは顔に直接触れるため、毎日交換するか、清潔なタオルを巻いて使用します。花粉の時期には、空気清浄機を活用し、外から帰宅したらすぐに洗顔をして花粉を落とす習慣をつけましょう。
洗濯物の部屋干しなども花粉付着を防ぐのに有効です。また、コンタクトレンズを使用している人は、レンズケースを毎日洗浄・乾燥させ、定期的に交換することで清潔を保ちます。
1dayタイプのコンタクトレンズを使用することも、アレルゲンの蓄積を防ぐ有効な手段です。生活環境全体を見渡し、リスク因子を減らしていくことが、健やかな目元を維持するために役立ちます。
環境対策の実施項目
| 対象 | 対策方法 | 頻度 |
|---|---|---|
| 寝具 | 洗濯と天日干し | 週に1回以上 |
| 室内空気 | 空気清浄機の稼働 | 24時間常時 |
| コンタクト | レンズとケースの洗浄 | 毎日使用後 |
病院に行くべきタイミングと他の病気の可能性
まぶたのかぶれは「たかがかぶれ」と軽視されがちですが、中には他の病気が隠れている場合や、早急な処置が必要な場合があります。自己判断で様子を見ることなく、医療機関を受診すべきサインを見逃さないようにしましょう。
皮膚科受診の目安となる症状
市販薬やセルフケアで1週間以上様子を見ても改善しない場合、または症状が悪化している場合は、迷わず皮膚科を受診してください。
まぶただけでなく顔全体や全身に発疹が広がっている場合、強い痛みや熱感を伴う場合、目が開かないほど腫れている場合は、重度のアレルギー反応や感染症の疑いがあります。
また、ステロイド外用薬を使用しても効果がない場合も、診断が間違っている可能性があります。自己判断で薬を塗り続けると、かえって症状を複雑化させ、治療を難しくしてしまいます。
専門医による正確な診断と適切な治療を受けることで、症状の長期化や、掻き壊しによる色素沈着、シワなどの後遺症を防ぐことが可能です。
まぶたかぶれと似た症状を示す疾患
まぶたに赤みやかゆみが出る病気は、接触皮膚炎だけではありません。アトピー性皮膚炎の症状が目の周りに強く出ることもありますし、脂漏性皮膚炎が眉毛やまぶたの縁に生じることもあります。
また、皮膚筋炎という膠原病の一種では、ヘリオトロープ疹と呼ばれる特徴的な紫紅色のむくみが上まぶたに現れることがあり、これは内臓病変と関連することもある重要なサインです。
他にも、単純ヘルペスウイルスによる感染症や、片側にピリピリとした痛みを伴う眼瞼帯状疱疹なども、初期にはかぶれと似た症状を示すことがあります。
それぞれの疾患は治療法が全く異なるため、誤ってかぶれの薬を使用すると症状を劇的に悪化させる危険性があるので、素人判断せず、鑑別診断を受けることが大切です。
注意すべき類似疾患
| 疾患名 | 特徴的な症状 | 原因 |
|---|---|---|
| アトピー性皮膚炎 | 慢性的な乾燥とかゆみ | バリア機能異常とアレルギー |
| 眼瞼帯状疱疹 | 片側性の痛みと水疱 | 水痘・帯状疱疹ウイルス |
| 皮膚筋炎 | 紫紅色の腫れ(むくみ) | 自己免疫疾患 |
眼科との連携が必要なケース
まぶたの症状だけでなく、目の中(眼球)にも異常を感じる場合は、眼科的なアプローチも必要です。
白目が充血している、目やにが多く出る、目がゴロゴロする、視界がぼやけるといった症状は、アレルギー性結膜炎や角膜炎などを併発している可能性があります。
皮膚科ではまぶたの皮膚治療を行いますが、目の粘膜や眼球の治療は眼科の専門領域です。アレルギー性結膜炎がある場合、目をこすることでまぶたの皮膚炎が悪化するため、点眼薬による治療を並行して行う必要があります。
症状によっては、皮膚科と眼科の両方を受診することをお勧めします。どちらの科を先に受診すべきか迷う場合は、まず皮膚の症状が強ければ皮膚科、目の痛みや見え方に異常があれば眼科を選ぶのが一般的です。
よくある質問
- かぶれている時にメイクをしても良いですか?
-
かぶれや炎症がある時期のメイクは避けるべきです。 化粧品の成分が傷ついた皮膚の隙間から入り込み、炎症をさらに悪化させるリスクが高いためです。
また、メイクそのものだけでなく、落とす際のクレンジングによる摩擦や洗浄成分も、治癒を遅らせる大きな要因となります。
仕事などでどうしても必要な場合は、ポイントメイクを控え、目元を避けて眉とリップのみにするか、フレームのある眼鏡を活用して目元を目立たなくする工夫をしましょう。
- 市販の薬を使っても治らないのはなぜですか?
-
原因が特定できていないか、薬の強さが症状に合っていない可能性があります。 市販薬にはさまざまな成分が含まれており、その中のかぶれ止め成分や添加物自体が肌に合わないこともあります。
また、症状の原因が感染症(ヘルペスなど)であった場合、ステロイド成分が入った市販薬を使うとウイルスの増殖を助けてしまい、急激に悪化します。
1週間使用しても改善しない場合は使用を中止し、皮膚科を受診して正確な診断を受けることが重要です。
- ワセリンを塗るとべたついて痒くなりますが、どうすれば良いですか?
-
塗布量が多すぎるか、ワセリンによる密封効果で熱がこもっている可能性があります。 ワセリンは米粒半分程度の極少量を、手のひらで温めてから優しく押し込むように塗布するのがコツです。
厚く塗りすぎると、皮膚呼吸を妨げるような感覚や、熱のこもりによる痒みを生じることがあります。
それでも痒みが増す場合は、ワセリンの使用を一時中断し、よりサラッとした使用感の敏感肌用乳液やクリームに切り替えることを検討します。医師に相談し、自分に合った保湿剤を処方してもらうのも良い方法です。
- まぶたの色素沈着は治りますか?
-
炎症が治まれば、時間をかけて徐々に薄くなることが多いです。 色素沈着は、長期間の炎症や、こするという物理的刺激によってメラニンが過剰に生成され、真皮に落ちてしまった結果です。
まずは炎症を完全に鎮め、絶対にこすらない生活を徹底することが改善への第一歩です。美白剤などの使用は、炎症があるうちは刺激になることがあるため、医師の指示に従い、皮膚の状態が安定してから慎重に開始します。
場合によっては数ヶ月から年単位の時間がかかることもありますが、正しいケアを続ければ改善は期待できます。
以上
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