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頭皮の乾燥によるかゆみを改善する|正しいシャンプー方法と保湿ケアのコツ

頭皮の乾燥によるかゆみを改善する|正しいシャンプー方法と保湿ケアのコツ

頭皮のかゆみは、仕事中や睡眠中など、時と場所を選ばずに襲ってくる非常に厄介な悩みです。人前で頭をかくわけにもいかず、我慢することでストレスが溜まり、さらに症状が悪化するという悪循環に陥ることも少なくありません。

毎日丁寧にシャンプーをしているにもかかわらずかゆみが治まらない、あるいは清潔にしようと洗えば洗うほどかゆみが増してしまう。そのような経験を持つ方は非常に多くいらっしゃり、根本的な原因の多くは頭皮の乾燥です。

頭皮は顔と一枚の皮膚でつながっていますが、水分を保持する機能は顔の皮膚よりも低い傾向にあり、非常にデリケートな部位です。

本記事では、乾燥によるかゆみが発生する詳細なメカニズムと、今日からすぐに実践できる正しいシャンプー方法、そして効果を実感できる保湿ケアについて、詳しく解説します。

目次

頭皮が乾燥してかゆみが発生するメカニズム

頭皮は体の中で最も皮脂腺が多く、顔のTゾーンの2倍以上の皮脂が分泌されるため、一見すると乾燥とは無縁のように思えるかもしれません。

しかし、皮脂が多いのは表面だけで、内部の水分量は不足しているインナードライ状態に陥っているケースが非常に多く、しつこいかゆみの直接的な引き金となります。

バリア機能の低下と水分保持能力の欠如

頭皮の最外層にある角層は、厚さわずか0.02mmほどの薄い膜ですが、外部の刺激から体を守る強力なバリアとして機能しています。

角層内では、角質細胞がレンガのように積み重なり、その間をセメントのように埋めているのが細胞間脂質(セラミドなど)です。

そして角質細胞の中には天然保湿因子(NMF)という水分を抱え込む成分があり、さらに、頭皮表面は汗と皮脂が混ざり合った皮脂膜で覆われています。

3つの保湿因子が正常に働くことで、頭皮は潤いを保ち、外部からの異物侵入を防いでいますが、間違ったケアや環境要因によってこれらのバランスが崩れると、バリア機能が著しく低下します。

乾燥した頭皮では、レンガの役割をする角質細胞が乱れてめくれ上がり、隙間だらけの状態になり、この隙間から内部の水分がどんどん蒸発してしまうため、さらに乾燥が進むという負の連鎖が始まります。

バリア機能が低下したスカスカの角層は、シャンプーの成分や紫外線、雑菌、ほこりといったわずかな外部刺激も容易に透過させてしまい、これが炎症やかゆみとして知覚されるのです。

健康な頭皮と乾燥した頭皮の構造的違い

比較項目健康な頭皮乾燥した頭皮
角層の構造細胞が整然と並び、隙間がない細胞が乱れ、めくれ上がって隙間が多い
水分保持力NMFやセラミドが十分にあり、潤っている保湿因子が流出し、常に水分が不足している
外部刺激耐性強固なバリアで異物を跳ね返すバリアが機能せず、刺激が内部へ浸透する

かゆみ神経の伸長による知覚過敏

乾燥が進むと、皮膚の内部では目に見えない神経レベルの変化が起こります。

通常、かゆみを感じる知覚神経(C線維)の末端は、表皮と真皮の境界線付近に留まっていますが、頭皮が乾燥してバリア機能が破壊されると、表皮の角化細胞から神経を成長させる因子(NGF)が過剰に分泌されます。

因子の働きにより、神経線維が表皮の中へ向かって伸び始め、最終的には角層のすぐ下まで到達します。

普段なら何も感じないような髪の毛の接触や、わずかな温度変化、少しの汗といった些細な刺激でも、神経がダイレクトに反応して強いかゆみとして脳に伝達されてしまいて、かゆみ過敏の状態です。

一度この状態になると、少しかいただけでも強いかゆみが誘発され、かきむしることで皮膚が傷つき、さらにバリア機能が低下して神経が興奮するという、非常に治りにくいイッチ・スクラッチ・サイクル(かゆみと搔破の悪循環)に陥ります。

ターンオーバーの乱れとフケの発生

頭皮の細胞は、基底層で生まれてから徐々に表面へ押し上げられ、最終的に垢となって剥がれ落ちるまで、約28日から40日のサイクルで生まれ変わっています(ターンオーバー)。

頭皮の乾燥は、正常なサイクルを大きく乱す要因です。

乾燥によってダメージを受けた頭皮は、急いでバリア機能を修復しようとして、細胞の生成スピードを異常に早めてしまい、十分に成熟していない不完全な細胞が角層に積み重なることになります。

細胞同士の結びつきが弱いため、通常であれば目に見えない微細な垢として剥がれ落ちるはずが、大きな塊としてボロボロと剥がれ落ちるようになり、これが乾性のフケの正体です。

肩にパラパラと落ちる細かいフケは乾燥のサインであり、同時にこのフケ自体が頭皮を刺激して、さらなるかゆみを誘発する原因物質にもなり得ます。

日常生活に潜む頭皮乾燥の主な原因

特別なことをしていなくても、日々の何気ない習慣の積み重ねが、知らず知らずのうちに頭皮の乾燥を招いていることがあります。

洗浄力の強すぎるシャンプーの使用

市販されている多くのシャンプーは、さまざまな髪質や好みに対応するため、非常に多様な種類があり、中には、強い爽快感や高い洗浄力を売りにしている製品も少なくありません。

スタイリング剤や頑固な皮脂汚れを落とす力には優れていますが、頭皮のバリア機能を維持するために不可欠な皮脂膜や、細胞間脂質といった大切な保湿成分までも根こそぎ洗い流してしまうリスクがあります。

特に注意が必要なのは、パッケージの成分表示の最初の方にラウレス硫酸ナトリウムやラウリル硫酸ナトリウムと記載されている高級アルコール系の洗浄成分を主成分とするシャンプーです。

脱脂力が非常に強いため、乾燥肌の人や、年齢とともに皮脂分泌量が低下してきた世代の方が毎日使用すると、頭皮の乾燥を急速に悪化させる可能性があります。

洗い上がりの「キュキュッ」とする感覚は、実は必要な潤いまで奪われている危険信号かもしれないのです。

誤った洗髪習慣と熱すぎるシャワー

良かれと思って毎日欠かさず行っている洗髪方法が、実は乾燥を助長しているケースは後を絶ちません。

清潔志向のあまり1日に朝晩2回シャンプーをする、かゆいからといって爪を立ててゴシゴシと強く洗う、といった行為は、デリケートな頭皮の角層を物理的に傷つけ、バリア機能を破壊します。

また、シャワーの温度設定も極めて重要です。冬場などは熱いお湯で洗いたくなるものですが、42度を超えるような熱いお湯は、頭皮に必要な皮脂を必要以上に溶かし出してしまいます。

食器洗いをする際に熱いお湯を使うと、手の油分があっという間に奪われて手荒れを起こすのと全く同じ現象が、頭皮でも起こっていると考えてください。

見直すべき洗髪の習慣チェックリスト

  • 40度以上の熱いお湯ですすぎを行っている
  • 朝も夜も洗うなど、1日に2回以上洗髪している
  • 爪を立てて頭皮を強くかきむしるように洗っている
  • シャンプーの原液を直接頭皮につけて泡立てている
  • すすぎ時間が短く、ぬるつきが残ったまま終えている

空気の乾燥と季節特有の環境要因

外部環境の変化も頭皮の水分量にダイレクトに影響します。冬は外気の湿度が著しく低下し、さらに室内では暖房器具の使用によって空気が極度に乾燥し、肌と同様に頭皮からも常に水分が奪われ続けています。

顔や手には保湿クリームを塗って対策をしていても、頭皮は無防備なままという方が多く、気づかないうちに重度の乾燥状態に陥りがちです。

夏場は湿気が多く乾燥しにくいと思われがちですが、冷房の効いた室内に長時間いることで、冬場と同じように乾燥が進みます。

加えて、頭頂部は体の中で最も太陽に近い場所にあり、顔の数倍以上の紫外線を浴びるので、皮膚の細胞にダメージを与えてバリア機能を破壊し、炎症(日焼け)を起こして乾燥を加速させます。

乾燥とかゆみを防ぐ正しいシャンプー方法

毎日のシャンプーは、頭皮ケアの基本中の基本であり、正しい方法で行うことで乾燥とかゆみを劇的に改善できる可能性があります。重要なのは、ただ汚れを落とすだけでなく、頭皮のうるおいを守りながら優しく洗い上げることです。

シャンプー前のブラッシングと予洗い

いきなり髪を濡らすのではなく、まず乾いた状態で軽くブラッシングを行うことから始め、髪の絡まりをほどき、頭皮や髪に付着したほこりや汚れを浮き上がらせることができます。

目の粗いブラシを使い、頭皮を強くこすらないように優しくとかします。

次に行う予洗いは、シャンプーの工程で最も大切で、38度前後のぬるま湯を使い、1分から2分程度かけて、髪と頭皮を十分に濡らしていきます。水溶性の汚れの約8割は、この予洗いだけで落とすことが可能です。

ただ髪を濡らすだけでなく、シャワーヘッドを地肌に近づけ、指の腹で頭皮を軽く揉みほぐすようにお湯を行き渡らせましょう。

十分な予洗いを行うことで、その後のシャンプー剤の泡立ちが良くなり、使用量を減らして頭皮への負担を最小限に抑えることができます。

頭皮に優しいマッサージ洗いの実践

シャンプー剤を手に取ったら、決してそのまま頭皮につけてはいけません。原液が特定の場所に付着すると刺激が強く、すすぎ残しの原因にもなるので、まず手のひらにお湯を少し加えしっかりと泡立て、頭皮全体に乗せて洗っていきます。

洗う際の意識は、髪の毛を洗うのではなく、頭皮を洗うことです。指の腹(指紋の部分)を頭皮に密着させ、頭皮そのものを動かすようなイメージで、優しく揉みほぐしながら洗います。

円を描くように、あるいはジグザグに小さく動かしながら、生え際から頭頂部に向かって少しずつ位置をずらしていきます。

かゆみがある箇所は、つい爪を立ててかきたくなりますが、頭皮に微細な傷をつけ、バリア機能をさらに破壊する行為です。

正しい洗髪手順とコツ

手順動作とコツ重要ポイント
予洗い38度程度のぬるま湯で2分間しっかりと流す髪の根元までお湯を到達させ、汚れを浮かす
泡立て手のひらで空気を含ませるように十分に泡立てる原液が直接頭皮に触れないようにする
本洗い指の腹で頭皮を動かすようにマッサージ洗いする爪を立てず、赤ちゃんの肌を扱うように優しく
すすぎ洗った時間の3倍を目安に、完全に洗い流すヌルつきが消えてからも、さらにダメ押しで流す

すすぎ残しを防ぐ徹底的なすすぎ

シャンプーによる頭皮トラブルの最大の原因の一つが、すすぎ残しです。

どんなに低刺激で高価なシャンプーを使っていても、その洗浄成分が頭皮に残ってしまえば、長時間にわたって頭皮を刺激し続ける異物となり、かゆみや炎症の直接的な原因となります。

泡が消えたからといって、すすぎが完了したと思ってはいけません。指を通したときにヌルっとした感触が完全になくなるまで、時間をかけて丁寧に洗い流します。

特に、耳の後ろ、襟足(首の後ろ)、生え際は、泡が残りやすいゾーンなので、意識的にシャワーを当て、手で確かめながらしっかりと流してください。

下を向いて流すだけでなく、上を向いたり横を向いたりと、頭の角度を変えながらお湯を当てることで、まんべんなく流すことができます。

洗髪後の適切なスピードドライ

洗髪後濡れたままの状態で、長時間放置することは避けましょう。濡れた頭皮は高温多湿で、常在菌の中でも悪さをする菌が増殖しやすい環境で、これがニオイやかゆみの原因です。

また、水分が自然に蒸発する際、気化熱とともに角層内部の大切な水分まで一緒に奪ってしまい、過乾燥を起こします。

お風呂から上がったら、まず清潔なタオルで髪と頭皮の水分を優しく吸い取り、ゴシゴシとこするのではなく、タオルで頭を包み込んで軽く押さえるようにして水分を吸収させ、その後、すぐにドライヤーで乾かします。

ドライヤーは頭皮から20cm以上離し、一箇所に熱が集中しないように常に振りながら風を当てます。8割程度乾いたら冷風に切り替えて仕上げると、頭皮や髪への熱ダメージを防ぎ、キューティクルを引き締める効果も期待できます。

皮膚科医が勧める頭皮の保湿ケア

顔が乾燥したらすぐに化粧水や乳液で保湿をするように、乾燥してバリア機能が低下した頭皮にも、外部からの保湿ケアが必要です。シャンプーを見直してもかゆみがなかなか改善しない場合、積極的な保湿が非常に有効な手段となります。

頭皮用保湿ローションの選び方

頭皮は髪の毛で密に覆われているため、顔用のこってりとしたクリームなどは塗りにくく、髪がベタついて見た目も悪くなりがちなので、さらっとした使用感で浸透性の高い、頭皮専用の保湿ローションを選ぶことが重要です。

使いやすさを考慮すると、髪をかき分けて頭皮に直接塗布できるノズル式のボトルや、広範囲に塗布できるスプレータイプが便利でおすすめです。

成分としては、もともと人間の皮膚にあり、水分を強力に保持するセラミドやヒアルロン酸、コラーゲンなどが配合されたものが基本で、低下したバリア機能を補い、外部刺激から頭皮を守ります。

さらに、すでにかゆみが強い場合は、炎症を抑える有効成分であるグリチルリチン酸ジカリウムやアラントインなどが配合された医薬部外品を選ぶと、より高い効果が期待できます。

敏感肌の方は、アルコール(エタノール)フリー、無香料、無着色といった低刺激処方の製品を選びましょう。

目的に合わせた保湿成分の選び方

成分カテゴリ主な成分名こんな方におすすめ
高保湿成分セラミド、ヒアルロン酸、リピジュア乾燥が強く、フケが気になる方
抗炎症成分グリチルリチン酸2K、アラントイン赤みやかゆみがすでに出ている方
血行促進成分センブリエキス、トコフェロール(ビタミンE)抜け毛も気になり、育毛も考えたい方

保湿効果を最大化するタイミングと塗り方

頭皮の保湿ケアを行うゴールデンタイムは、洗髪後、タオルドライを終えてドライヤーをかける直前です。

このタイミングは、頭皮の汚れが落ちて清潔な状態であり、かつ適度な水分を含んで柔らかくなっているため、保湿成分が角層の奥まで浸透しやすくなっています。

塗り方のコツは、髪をいくつかのブロックに分け、分け目を作って頭皮をしっかりと露出させることです。

そこにノズルを近づけて直接塗布するか、指先に取ってから馴染ませ、気になる部分だけでなく、頭皮全体に行き渡るように数カ所に分けて塗布しましょう。

その後、指の腹を使って優しく揉み込むようにマッサージを行うと、血行も促進されます。

オイルケアの注意点と正しい活用法

乾燥がひどい場合、植物性オイルなどを用いたケアを取り入れる方もいますが、使用には少し注意が必要です。

ホホバオイルやアルガンオイル、椿油などは、皮脂に近い成分を含み、肌なじみが良く保護効果も高いオイルですが、オイルを頭皮に塗りっぱなしにすると、時間が経つにつれて酸化し、過酸化脂質という刺激物質に変化してしまうことがあります。

また、頭皮に常在するマラセチア菌などの真菌は油分をエサにして増殖するため、オイルの与えすぎは脂漏性皮膚炎などのトラブルを誘発するリスクもあります。

オイルを使用する場合は、シャンプー前の頭皮クレンジング&マッサージとして使用し、その後にしっかりと洗い流す方法が最も安全で効果的です。

洗い流さない保湿ケアとしては、基本的には水分ベースのローションを優先し、オイルは毛先に使うなど使い分けを意識しましょう。

頭皮環境を根本から改善する生活習慣

皮膚は内臓の鏡と言われるように、頭皮の健康状態もまた、体の内側の状態を色濃く反映しています。

外側からのスキンケアだけでなく、体の内側からのインナーケア、つまり生活習慣の改善こそが、乾燥やかゆみを根本から解決し、再発を防ぐ鍵です。

健やかな角層を作る食事と栄養素

皮膚は、日々食べたものから作られていて、栄養バランスの偏った食事や過度なダイエットを続けていると、健康な皮膚を作るための材料が不足し、バリア機能が低下した脆い角層しか作られなくなります。

特に意識して摂取したいのが、皮膚の代謝を助け、粘膜を健康に保つビタミン類、細胞の主要な材料となる良質なタンパク質です。

ビタミンB群(特にB2、B6)は、過剰な皮脂分泌をコントロールし、皮膚のターンオーバーを正常化する働きがあり、ビタミンAやベータカロテンは、皮膚や粘膜の潤いを保ち、乾燥を防ぐ役割を果たします。

亜鉛は新しい細胞が生まれる際の細胞分裂に不可欠なミネラルです。

栄養素を、サプリメントだけに頼るのではなく、日々の食事からバランスよく取り入れることが、自らうるおう力を持った強い頭皮を育てることにつながります。

頭皮のうるおいを守るために摂りたい食材

栄養素期待される効果積極的に摂りたい食品
タンパク質皮膚や髪の基礎となる材料肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
ビタミンB群皮脂バランス調整、代謝促進豚肉、レバー、納豆、カツオ、マグロ、バナナ
ビタミンA・C・E抗酸化作用、血行促進、乾燥予防緑黄色野菜(人参、かぼちゃ)、アーモンド、柑橘類

質の高い睡眠によるダメージ修復

睡眠は、日中に紫外線や乾燥、摩擦などでダメージを受けた頭皮を修復するための大切な時間です。

入眠してから最初の3時間に深く眠ることで、成長ホルモンが集中的に分泌され、細胞の修復や再生を促す天然の美容液のような役割を果たします。

慢性的な睡眠不足が続くと、修復作業が追いつかなくなり、バリア機能が低下したままの未熟な角層が増えて、乾燥やかゆみが治りにくい状態が続きます。

睡眠時間を確保するだけでなく、寝る直前のスマートフォンの使用を控える、入浴で体を温めるなどして、睡眠の質を高める工夫も大切です。

ストレス管理と血行促進

精神的なストレスは、頭皮環境にダイレクトに悪影響を及ぼし、強いストレスを感じると自律神経の交感神経が優位になり、血管が収縮してしまいます。

頭皮は体の末端にあるため、血流が悪くなると真っ先に栄養が行き渡らなくなり、新陳代謝が滞って乾燥が進み、また、ストレスを感じると分泌されるホルモン(コルチゾール)は、皮膚のバリア機能を低下させることも分かっています。

適度な運動や趣味の時間を持つなどして、ストレスを溜め込まない生活を心がけましょう。

入浴時に湯船にゆっくり浸かることや、簡単な頭皮マッサージを行うことも、リラックス効果と血行促進効果の両方が得られるため、非常に有効なケアです。

皮膚科を受診すべき症状とタイミング

ここまでご紹介したセルフケアを実践しても症状が改善しない場合、単なる乾燥だけではない、専門的な治療が必要な皮膚疾患が隠れている可能性があります。

自己判断で間違ったケアを続けると、症状をこじらせて長引かせてしまうこともあります。

単なる乾燥と間違えやすい皮膚疾患

かゆみとフケという症状は多くの頭皮トラブルに共通しており、ご自身で原因を特定するのは困難です。

乾燥とは逆に皮脂の過剰分泌が原因で起こる脂漏性皮膚炎も、フケとかゆみを伴い、乾燥だと思い込んで油分を補うケアをすると、かえって炎症を悪化させてしまいます。

また、アトピー性皮膚炎の症状が頭皮に強く出ている場合や、乾癬(かんせん)という皮膚の炎症性疾患、あるいはシャンプーや毛染めによる接触皮膚炎(かぶれ)の可能性もあります。

市販の保湿ローションだけでは治すことが難しく、それぞれの原因に合わせた専門的な薬剤による治療が必要です。

早期の皮膚科受診が推奨されるサイン

セルフケアを2週間程度続けても全く改善が見られない、日に日に悪化していると感じる場合は、迷わず皮膚科を受診してください。

夜も眠れないほど激しいかゆみがある、頭皮が赤くただれている、かくと汁(浸出液)が出る、かさぶたができている、フケが厚い層になってこびりついている、といった症状は危険信号です。

皮膚科では、ダーモスコピーを使い頭皮の状態を詳細に観察し、正確な診断を行います。

治療には、炎症を素早く抑えるための適切な強さのステロイド外用薬や、かゆみを内側から抑える抗ヒスタミン薬の内服、カビが原因であれば抗真菌薬などが処方されます。

こんな症状があれば早めの受診を

  • 我慢できない強いかゆみが1週間以上続いている
  • 市販のかゆみ止めを使っても効果が一時的ですぐぶり返す
  • 頭皮に明らかな赤み、ブツブツ、ただれ、かさぶたがある
  • 枕に大きなフケや、血、黄色い汁が付着する
  • かゆみと同時に抜け毛が急激に増えたと感じる

頭皮の乾燥とかゆみに関するよくある質問

最後に、日々の診療の中で患者様から頻繁に寄せられる、頭皮の乾燥やかゆみに関する疑問について、詳しくお答えします。

毎日シャンプーしない方が、乾燥を防げて良いのでしょうか?

確かに洗いすぎは乾燥を招きますが、洗髪を控えすぎると、古くなった皮脂や汗が頭皮に蓄積し、それが酸化して過酸化脂質という刺激物質に変化します。これが新たな炎症やかゆみの原因となることがあります。

基本的には1日1回、その日の汚れはその日のうちに落とすのが理想です。乾燥がひどい場合は、洗浄力が非常にマイルドなアミノ酸系シャンプーを使用し、38度以下のぬるま湯で、こすらず優しく洗うようにしてください。

場合によっては、2日に1回はお湯だけで洗う湯シャンを取り入れるのも一つの選択肢ですが、頭皮の状態をよく観察しながら行う必要があります。

顔に使っている化粧水や乳液を、そのまま頭皮につけても大丈夫ですか?

使えないことはありませんが、できれば頭皮専用のものが望ましいです。

顔用のスキンケア製品、特に乳液やクリームには、油分が多く含まれていることがあり、これを髪のある頭皮に塗ると、髪がベタついて不潔に見えてしまったり、毛穴を塞いでしまったりする可能性があります。

また、頭皮は顔よりも毛穴が大きく数も多いため、成分が浸透しやすいです。頭皮環境に合わせて開発された、低刺激でさらっとした使い心地の専用ローションの方が、トラブルも少なく効果的にケアできるでしょう。

かゆくてたまらない時、冷やすのは効果的ですか?

かゆみは温まると増強し、冷やすと軽減する性質があります。我慢できないほどのかゆみを感じた時は、保冷剤を清潔なタオルやハンカチで包み、かゆい部分に当てて冷やしてください。

皮膚の温度を下げることで、興奮したかゆみ神経を一時的に鎮めることができます。

かいてしまうと皮膚が傷つき、バリア機能がさらに壊れてかゆみが悪化する悪循環に陥るため、かきそうになったら冷やすを習慣にすることは、症状を悪化させないための素晴らしい工夫です。

ドライヤーの熱が頭皮に悪そうで、自然乾燥にしています。良くないですか?

自然乾燥は避けてください。濡れた頭皮は、雑菌にとって高温多湿の絶好の繁殖環境となり、菌が異常繁殖することで、ニオイやかゆみ、炎症が発生しやすくなります。

また、長時間水分が肌に付着していると、角層がふやけて一時的にバリア機能が低下し、水分がようやく蒸発する際、角層内部にもともとあった大切な水分まで一緒に抱え込んで蒸発してしまう過乾燥という現象を起こします。

洗髪後はタオルで優しくしっかりと水分を取り、ドライヤーの温風と冷風をうまく使い分けながら、短時間で乾かし切ることが、頭皮の健康を守るためには不可欠です。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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