052-228-1280 WEB予約 LINE予約

フケとかゆみが市販薬で治らない…皮膚科へ行く目安と病院での治療法

フケとかゆみが市販薬で治らない…皮膚科へ行く目安と病院での治療法

肩に落ちる白い粉、我慢できない頭皮のかゆみは、多くの方が一度は経験する身近な悩みです。市販のシャンプーや薬を試してみたものの、なかなか改善が見られず、一人で悩み続けていませんか。

症状は単なる乾燥や不潔さが原因ではなく、頭皮の病気が隠れていたり、間違ったセルフケアで悪化させていたりする可能性があります。

この記事では、市販薬でフケやかゆみが治らない場合に考えられる原因から、皮膚科を受診するべき目安、病院で受けられる診断と治療法までを詳しく解説します。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

運営ソーシャルメディア(SNSでは「こばとも」と名乗ることもあります)

XYouTubeInstagramLinkedin

著書一覧
経歴・プロフィールページ

こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

頭皮のフケとかゆみはなぜ起こるのか

フケやかゆみの症状に悩まされると、つい不潔にしているからだと考えがちですが、必ずしもそうではありません。

頭皮の健康状態は、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)の周期と密接に関わっていて、正常なサイクルが何らかの要因で乱れることで、フケやかゆみといったトラブルが発生します。

頭皮の乾燥によるフケ

パラパラと細かく、乾いたフケが肩に落ちる場合、主な原因は頭皮の乾燥である可能性が高いです。

健康な頭皮は、皮脂膜という天然のバリア機能によって、水分の蒸発を防ぎ、外部の刺激から守られていますが、洗浄力の強すぎるシャンプーの使用、頻繁な洗髪、エアコンによる空気の乾燥、季節の変わり目などが、バリア機能を低下させます。

バリア機能が弱まると、頭皮の水分が保持できなくなり、角質が細かく剥がれ落ちやすくなり、これが乾燥性のフケの正体です。また、乾燥した頭皮は非常に敏感な状態になっており、わずかな刺激にも反応してかゆみを感じやすくなります。

頭皮の乾燥を起こす主な要因

要因具体例頭皮への影響
誤ったヘアケア熱すぎるお湯での洗髪、洗浄力の強いシャンプー必要な皮脂まで洗い流し、バリア機能を低下させる
生活環境エアコンの長時間使用、湿度の低い季節空気の乾燥が頭皮の水分を奪う
体質的要因アトピー素因、加齢による皮脂分泌の減少もともと皮膚の水分保持能力が低い

皮脂の過剰分泌によるフケ

ベタベタとして湿り気があり、黄色っぽい大きな塊のフケが出る場合は、皮脂の過剰分泌が原因と考えられます。

皮脂腺から分泌される皮脂は、頭皮や髪を保護する役割を持っていますが、ホルモンバランスの乱れ、脂質の多い食事、ストレス、不規則な生活習慣などで過剰に分泌されると、古い角質や汚れと混じり合って、ベタついた脂性のフケとなります。

過剰な皮脂は、頭皮に常在する菌のエサとなり、菌が異常に増殖する原因にもなり、菌が作り出す物質が頭皮を刺激し、炎症やかゆみを起こすのです。

頭皮の常在菌(マラセチア菌)の増殖

頭皮には、マラセチア菌というカビ(真菌)の一種が常に存在していて、普段は特に問題を起こすことはありません。

しかし、皮脂が過剰に分泌されたり、汗をかいて高温多湿な環境が続いたりすると、マラセチア菌は皮脂をエサにして異常に増殖し、皮脂を分解する過程で遊離脂肪酸という刺激物質を生成します。

遊離脂肪酸が頭皮のターンオーバーを異常に早め、未熟な角質が大量に剥がれ落ちることでフケとなり、さらに、この物質は頭皮に炎症を起こし、強いかゆみの原因ともなります。

市販薬を使っても治らないフケ・かゆみのサイン

市販のフケ・かゆみ用シャンプーや塗り薬は手軽に入手でき、初期の軽い症状には有効な場合もありますが、一定期間使用しても改善しない、あるいは悪化する場合には注意が必要です。

フケやかゆみが悪化している

市販薬を使い始めてから、かえってフケの量が増えたり、かゆみが強くなったりした場合は、すぐに使用を中止してください。製品に含まれる成分が、頭皮の状態に合っていない可能性があります。

頭皮が乾燥しているのに、皮脂を抑える効果の強いシャンプーを使い続けると、乾燥がさらに悪化し、症状を増悪させることがあり、また、特定の成分に対するアレルギー反応(接触皮膚炎)を起こしている可能性も否定できません。

赤みや湿疹、ただれといった症状が新たに出現した場合は、特に注意が必要です。

長期間(2週間以上)改善が見られない

市販薬のパッケージに記載された使用期間の目安を過ぎても、症状に全く変化が見られない場合も、皮膚科の受診を検討するタイミングです。フケやかゆみの原因が、市販薬の有効成分では対応できないものである可能性があります。

マラセチア菌が原因の脂漏性皮膚炎の場合、抗真菌成分が含まれていない製品では根本的な改善は期待できず、また、乾癬(かんせん)やアトピー性皮膚炎など、他の皮膚疾患が原因である場合、市販薬だけでの対応は困難です。

市販薬と処方薬の主な違い

項目市販薬処方薬
成分の強さ比較的マイルド症状に応じて強力な成分を使用可能
目的広範な軽い症状の緩和特定の原因疾患に対する治療
入手方法薬局・ドラッグストア医師の診察と処方箋が必要

フケ以外にも気になる症状がある

フケやかゆみに加えて、頭皮に他の症状が見られる場合は、専門的な診断が必要です。

頭皮全体が赤みを帯びている、ジクジクとした液体(滲出液)が出ている、黄色いかさぶたが付着している、髪の生え際や顔、胸、背中などにも同様の症状が広がっている、といったケースです。

このような症状は、脂漏性皮膚炎や尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎といった特定の皮膚疾患の兆候であることが多く、自己判断でケアを続けると症状をこじらせてしまう恐れがあります。

注意すべき頭皮の症状

  • 広範囲の赤み
  • ジクジクとした滲出液
  • 厚いかさぶたや出血
  • 明らかな抜け毛の増加

皮膚科を受診するべきタイミング

長引くフケやかゆみは、単に不快なだけでなく、QOL(生活の質)を大きく低下させる要因にもなります。どのタイミングで専門医に相談すればよいのか、目安を知っておくことで、適切な時期に治療を開始できます。

市販薬を2週間使用しても効果がない

前述の通り、市販のフケ・かゆみ対策製品を使用説明書通りに2週間続けても、全く症状が改善しない、あるいは悪化するというのは、受診を考えるべき最も分かりやすい目安です。

症状の原因が市販薬で対応できる範囲を超えていることを示唆しているので、専門医による正確な診断に基づいた、より効果的な治療法への切り替えが必要です。

自己判断で異なる市販薬を次々と試すことは、時間と費用の無駄になるだけでなく、頭皮の状態をさらに悪化させるリスクも伴います。

頭皮にかさぶたや出血が見られる

かゆみが強いと、無意識のうちに頭皮を掻きむしってしまい、頭皮が傷つき、かさぶたができたり、出血したりすることがあります。

このような状態は、皮膚のバリア機能が著しく損なわれているサインで、傷口から細菌が侵入して二次感染を起こし、毛嚢炎(もうのうえん)などを併発する危険性もあります。

また、尋常性乾癬など、特定の疾患では厚く銀白色のかさぶたができることもあり、出血やかさぶたがある場合は、悪化を防ぐためにも速やかな受診が重要です。

抜け毛が増えたと感じる

フケやかゆみを起こす頭皮の炎症は、毛根にもダメージを与え、ヘアサイクルを乱すことがあります。頭皮環境の悪化が長期間続くと、髪の毛が十分に成長する前に抜け落ちてしまう、脱毛症につながる可能性があります。

脂漏性皮膚炎が進行した場合、脂漏性脱毛症を併発することが知られています。シャンプーやブラッシングの際に、以前よりも明らかに抜け毛が増えたと感じる場合は、頭皮の炎症が深刻化しているサインかもしれません。

早めに皮膚科で相談してください。

フケ・かゆみを伴う代表的な頭皮の病気

市販薬で治らない頑固なフケやかゆみの背景には、特定の皮膚疾患が隠れていることが少なくありません。ここでは、フケやかゆみを主な症状とする代表的な皮膚疾患について解説します。

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)

脂漏性皮膚炎は、フケやかゆみの原因として最も頻度の高い疾患の一つで、皮脂の分泌が盛んな頭皮や顔(鼻の周り、眉間)、胸、脇の下などに発症しやすい特徴があります。

頭皮では、ベタついた黄色っぽいフケや、乾燥したうろこ状のフケが見られ、赤みを伴うことが多く、主な原因は、皮脂の過剰分泌と、それをエサに増殖するマラセチア菌です。

ストレスや疲労、ビタミンB群の不足、不規則な生活なども悪化要因となり、乳児と思春期以降の成人に多く見られます。

脂漏性皮膚炎の主な症状

部位症状の特徴かゆみの程度
頭皮湿ったフケ、または乾いたフケ、地肌の赤み軽度から中等度
顔(鼻周り、眉など)赤み、皮膚が細かくむける軽度
胸、背中の中心部カサカサした赤みのある発疹軽度

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

尋常性乾癬は、皮膚が赤く盛り上がり、その上に銀白色の細かいフケのような鱗屑(りんせつ)が付着し、ポロポロと剥がれ落ちる慢性の皮膚疾患です。

頭皮は乾癬が発症しやすい部位の一つで、髪の生え際などに境界がはっきりした赤い発疹として現れることが多く、フケと混同されやすいですが、乾癬の鱗屑は厚く、無理に剥がすと点状に出血することがあります。

原因は完全には解明されていませんが、免疫系の異常が関与していると考えられていて、遺伝的な要因や、ストレス、感染症、薬剤などが発症のきっかけとなることがあります。

接触皮膚炎(せっしょくひふえん)

接触皮膚炎は、特定の物質が皮膚に触れることで炎症やかゆみを起こす疾患です。一般的に「かぶれ」として知られていて、シャンプーやリンス、ヘアカラー剤、整髪料などに含まれる成分が原因となることがあります。

原因物質に触れた部分に一致して、赤み、かゆみ、小さなブツブツ、水ぶくれなどの症状が現れ、新しいヘアケア製品を使い始めてから症状が出た場合は、この疾患を疑います。

原因物質の使用を中止すれば症状は改善しますが、特定するためには専門的な検査が必要な場合もあります。

接触皮膚炎を疑うべき状況

  • 新しいヘアケア製品を使い始めた
  • ヘアカラーやパーマをした後にかゆくなった
  • 特定の整髪料を使った日だけ症状が出る
  • 症状が髪の生え際や耳の後ろに集中している

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患です。皮膚のバリア機能が低下していることと、アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)が関係しています。

頭皮に発症すると、乾燥してカサカサしたフケが出たり、強いかゆみで掻き壊してジクジクしたりすることがあります。

特に耳の周りや首筋に症状が出やすく、多くは幼少期に発症しますが、成人になってから発症・再発するケースも少なくありません。

頭皮疾患の症状比較

疾患名フケの特徴主な症状
脂漏性皮膚炎黄色っぽくベタつく、または乾燥して細かい頭皮の赤み、かゆみ
尋常性乾癬銀白色で厚い鱗屑境界明瞭な赤い盛り上がり
接触皮膚炎原因物質に触れた部分のフケ、湿疹強いかゆみ、赤み、ブツブツ
アトピー性皮膚炎乾燥してカサカサしたフケ強いかゆみ、湿疹、耳切れ

皮膚科ではどのような診察や検査をするのか

皮膚科を受診すると、まず患者さんの症状や生活習慣について詳しく話を聞き、頭皮の状態を観察することから診断を始めます。自己判断で誤ったケアを続けることを防ぐためにも、専門医による客観的な評価は非常に重要です。

問診で症状や生活習慣を確認

問診では、症状に関する詳細な情報を伝えることが重要です。

いつから症状が始まったか、どのようなフケやかゆみか、市販薬の使用歴と効果、アレルギーの有無、普段の生活習慣(食事、睡眠、ストレス)、使用しているヘアケア製品などについて質問されます。

事前に自分の症状や気になる点をメモしておくと、伝え漏れがなくスムーズです。

問診で伝えるべきポイント

  • 症状が始まった時期
  • フケの性質(乾燥、ベタつき)やかゆみの強さ
  • これまで試した市販薬やセルフケア
  • アレルギー歴や他の病気の有無
  • 食事、睡眠、ストレスなどの生活状況

視診で頭皮の状態を直接観察

問診の後は、医師が直接頭皮の状態を観察する視診が行われ、フケの性状(乾いているか、湿っているか)、色、大きさ、頭皮の赤みの範囲や程度、湿疹や傷の有無、毛穴の状態などを詳しく確認します。

髪の毛をかき分けて、頭皮全体をくまなく見ることで、疾患特有の所見がないかを探し、乾癬に特徴的な境界明瞭な赤い発疹や、脂漏性皮膚炎でよく見られる髪の生え際の赤みなどをチェックします。

ダーモスコピー検査による拡大観察

必要に応じて、ダーモスコピー(またはダーモスコープ)という特殊な拡大鏡を用いた検査を行います。

ダーモスコピーは、皮膚の表面を数十倍に拡大して観察できる機器で、肉眼では見えにくい微細な皮膚の変化や血管の状態などを詳しく調べることができます。

炎症のパターンや毛穴の状態を詳細に評価し、脂漏性皮膚炎や乾癬といった疾患の鑑別診断に大切な検査です。

ダーモスコピーで観察する主な点

観察項目何がわかるか診断の助けになる疾患
血管の形や分布炎症のパターン乾癬、脂漏性皮膚炎
毛穴の状態皮脂の詰まり、炎症の有無脂漏性皮膚炎、毛嚢炎
鱗屑(フケ)の付き方角化の異常乾癬

真菌検査で原因菌を特定

脂漏性皮膚炎など、マラセチア菌の関与が疑われる場合には、真菌検査を行うことがあり、頭皮からフケや皮膚の一部を少量採取し、顕微鏡でカビ(真菌)がいないかを確認する簡単な検査です。

マラセチア菌が異常に増殖していることが確認できれば、診断が確定し、抗真菌薬を用いた的確な治療を開始できます。

皮膚科で行われるフケ・かゆみの主な治療法

皮膚科での治療は、正確な診断に基づいて、症状の原因に直接アプローチすることを目的とします。市販薬とは異なり、医師の処方する薬は有効成分の濃度や種類が豊富で、個々の症状に合わせたきめ細やかな治療が可能です。

炎症を抑えるステロイド外用薬

頭皮の赤みやかゆみが強い場合、まずは炎症を速やかに鎮めることが重要で、中心的な役割を果たすのが、ステロイドの外用薬です。ステロイドには優れた抗炎症作用があり、つらいかゆみや赤みを効率的に抑えます。

頭皮は髪の毛があるため、軟膏やクリームよりも、ローションタイプや液体タイプのものが処方されることが一般的です。

指示通りに適切な強さの薬を適切な期間使用すれば、非常に効果的で安全性の高い治療法で、自己判断で中止したり、漫然と使用を続けたりすることは避けてください。

原因菌を抑える抗真菌薬の外用薬

脂漏性皮膚炎のように、マラセチア菌の増殖が原因であると診断された場合、菌を殺したり増殖を抑えたりする抗真菌薬が処方されます。

ケトコナゾールなどの成分が含まれたローションやシャンプータイプの薬剤が用いられ、ステロイドが炎症を抑える対症療法であるのに対し、抗真菌薬は原因に直接作用する治療法です。

症状が改善した後も、再発を予防するために定期的な使用を指示されることもあります。

主な外用薬の種類と役割

薬剤の種類主な成分期待される効果
ステロイド外用薬ベタメタゾン、モメタゾンなど赤み、かゆみなどの炎症を強力に抑える
抗真菌薬外用薬ケトコナゾール、ミコナゾールなど原因となるマラセチア菌の増殖を抑える
保湿剤ヘパリン類似物質、尿素など頭皮の乾燥を防ぎ、バリア機能をサポートする

かゆみを和らげる抗ヒスタミン薬の内服

夜も眠れないほどのかゆみや、無意識に掻きむしってしまうほどの強いかゆみがある場合、かゆみを抑えるための内服薬(抗ヒスタミン薬)が処方されることがあります。

かゆみの原因となる体内物質であるヒスタミンの働きをブロックすることで、つらいかゆみを和らげ、かゆみが軽減することで、掻き壊しによる症状の悪化を防ぎ、頭皮が良い状態を保つのを助けます。

眠気が出にくいタイプの薬も多くありますので、日中の活動への影響が気になる方は医師に相談してください。

頭皮環境を整える生活習慣の指導

薬による治療と並行して、フケやかゆみを起こす根本的な原因を改善するための生活習慣指導も重要な治療の一部です。

医師や看護師から、食事内容、睡眠時間、ストレス管理、そして毎日のシャンプーの方法に至るまで、アドバイスを受けます。

薬で一時的に症状を抑えても、生活習慣が乱れたままだと再発を繰り返す可能性が高いので、治療を機に、自身のライフスタイルを見直すことが、長期的な頭皮の健康につながります。

頭皮の健康に役立つ栄養素

  • ビタミンB群(皮脂のコントロール)
  • ビタミンA(皮膚のターンオーバー正常化)
  • ビタミンC(抗酸化作用)
  • タンパク質(皮膚の材料)
  • 亜鉛(皮膚の新陳代謝を助ける)

治療と並行したい自宅でのセルフケア

皮膚科での治療効果を最大限に高め、再発を防ぐためには、日々のセルフケアが非常に大切です。医師からの指導を基本としながら、ご自身の頭皮と向き合い、いたわるようなケアを心がけましょう。

正しいシャンプーの方法を実践する

毎日のシャンプーは、頭皮を清潔に保つ基本ですが、洗い方が間違っていると逆効果になります。まず、シャンプー前にお湯で髪と頭皮を十分に予洗いし、汚れを浮かせるのがポイントです。

シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗いましょう。爪を立ててゴシゴシ洗うのは、頭皮を傷つける原因になるので厳禁で、すすぎは、洗い残しがないように時間をかけて丁寧に行います。

シャンプー剤やコンディショナーが頭皮に残ると、かゆみや炎症の原因となります。洗髪後は、ドライヤーで頭皮からしっかりと乾かし、雑菌が繁殖しにくい環境を保つことも重要です。

シャンプー選びのポイント

頭皮タイプおすすめのシャンプー注意点
乾燥肌・敏感肌アミノ酸系、低刺激性のもの洗浄力が強すぎないか確認する
脂性肌皮脂を適度に洗浄するもの必要な皮脂まで落としすぎないように注意
フケ・かゆみが気になる抗真菌成分や抗炎症成分配合のもの医師に相談の上、症状に合ったものを選ぶ

栄養バランスの取れた食生活を心がける

健やかな頭皮は、体の中から作られます。特に、皮膚の新陳代謝をサポートするビタミンB群(レバー、豚肉、青魚、納豆など)は積極的に摂取したい栄養素です。

また、皮膚の材料となる良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)や、抗酸化作用のあるビタミンA(緑黄色野菜)、ビタミンC(果物、野菜)、ビタミンE(ナッツ類)もバランス良く摂ることが大切です。

皮脂の分泌を促進する脂っこい食事や糖質の多いもの、過度なアルコールや香辛料などの刺激物は、症状を悪化させる可能性があるため、摂りすぎには注意しましょう。

十分な睡眠とストレス管理

睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスや自律神経の乱れを起こし、皮脂の過剰分泌や免疫機能の低下につながり、頭皮環境を悪化させ、フケやかゆみを増悪させる大きな要因となります。

質の良い睡眠を十分にとることは、皮膚のターンオーバーを正常に保つために必要です。寝る前にスマートフォンを見るのをやめたり、リラックスできる音楽を聴いたりするなど、自分なりの入眠儀式を見つけるのも良いでしょう。

また、適度な運動や趣味の時間を作るなど、日頃から上手にストレスを発散する方法を見つけておくことも、頭皮の健康を守る上で非常に重要です。

フケとかゆみに関するよくある質問

最後に、患者さんからよく寄せられる質問と回答をまとめました。受診前の参考にしてください。

子供のフケがひどいのですが、大人と同じ病気でしょうか

乳児期には、ホルモンの影響で皮脂分泌が活発になり、脂漏性皮膚炎を発症することがよくあり、頭に黄色いかさぶたのようなものが付着するのが特徴です。

また、学童期のお子様では、頭をしらみが原因で痒がっていることや、乾燥によるフケ、アトピー性皮膚炎の可能性も考えられます。

大人とは原因が異なる場合もあるため、自己判断せず、一度専門医に診てもらうことをお勧めします。

治療にはどのくらいの期間がかかりますか

脂漏性皮膚炎の場合、適切な治療を開始すれば、通常1〜2週間でかゆみや赤みは改善し始め、1ヶ月程度でフケもかなり落ち着いてくることが多いです。

ただし、この疾患は再発しやすいため、症状が改善した後も、医師の指示に従ってケアを続けることが大切です。

尋常性乾癬のように慢性的な経過をたどる疾患では、症状をコントロールしながら長く付き合っていく必要があります。

毎日シャンプーすると頭皮が乾燥しそうで心配です

基本的には、毎日シャンプーをして頭皮を清潔に保つことが推奨されます。特に、脂漏性皮膚炎のように皮脂や汗が原因で悪化する疾患の場合は、余分な皮脂や汚れをその日のうちに洗い流すことが重要です。

ただし、頭皮の乾燥が気になる場合は、洗浄力がマイルドなアミノ酸系のシャンプーを選んだり、お湯の温度をぬるめに設定したりする工夫が有効です。洗いすぎによる乾燥が心配な場合でも、2日に1回は洗髪を心がけましょう。

以上

参考文献

Suzuki K, Inoue M, Cho O, Mizutani R, Shimizu Y, Nagahama T, Sugita T. Scalp microbiome and sebum composition in Japanese male individuals with and without androgenetic alopecia. Microorganisms. 2021 Oct 11;9(10):2132.

Hiruma M, Cho O, Hiruma M, Kurakado S, Sugita T, Ikeda S. Genotype analyses of human commensal scalp fungi, Malassezia globosa, and Malassezia restricta on the scalps of patients with dandruff and healthy subjects. Mycopathologia. 2014 Jun;177(5):263-9.

Barak-Shinar D, Green LJ. Scalp seborrheic dermatitis and dandruff therapy using a herbal and zinc pyrithione-based therapy of shampoo and scalp lotion. The Journal of clinical and aesthetic dermatology. 2018 Jan 1;11(1):26.

Kamamoto CS, Nishikaku AS, Gompertz OF, Melo AS, Hassun KM, Bagatin E. Cutaneous fungal microbiome: Malassezia yeasts in seborrheic dermatitis scalp in a randomized, comparative and therapeutic trial. Dermato-endocrinology. 2017 Jan 1;9(1):e1361573.

Grimshaw SG, Smith AM, Arnold DS, Xu E, Hoptroff M, Murphy B. The diversity and abundance of fungi and bacteria on the healthy and dandruff affected human scalp. PloS one. 2019 Dec 18;14(12):e0225796.

Misery L, Rahhali N, Duhamel A, Taieb C. Epidemiology of dandruff, scalp pruritus and associated symptoms. Acta Dermato-Venereologica. 2013;93(1):80-1.

Kerr K, Darcy T, Henry J, Mizoguchi H, Schwartz JR, Morrall S, Filloon T, Wimalasena R, Fadayel G, Mills KJ. Epidermal changes associated with symptomatic resolution of dandruff: biomarkers of scalp health. International journal of dermatology. 2011 Jan;50(1):102-13.

Locker KC, Bacon RA, Caterino TL, Breyfogle L, Alperet DJ, Sarkar P, Piliang M, Davis MG. Understanding the dandruff flare‐up: A cascade of measurable and perceptible changes to scalp health. International Journal of Cosmetic Science. 2025 Apr 2.

Harding CR, Moore AE, Rogers SJ, Meldrum H, Scott AE, McGlone FP. Dandruff: a condition characterized by decreased levels of intercellular lipids in scalp stratum corneum and impaired barrier function. Archives of dermatological research. 2002 Jul;294(5):221-30.

Schwartz JR, Messenger AG, Tosti A, Todd G, Hordinsky M, Hay RJ, Wang X, Zachariae C, Kerr KM, Henry JP, Rust RC. A comprehensive pathophysiology of dandruff and seborrheic dermatitis–towards a more precise definition of scalp health. Acta dermato-venereologica. 2013;93(2):131-7.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次