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治りにくい多形慢性痒疹とは?激しいかゆみの原因と治療法を解説

治りにくい多形慢性痒疹とは?激しいかゆみの原因と治療法を解説

皮膚にかたいしこりができ、耐え難いかゆみが長期間続く多形慢性痒疹は、単なる湿疹とは異なり、非常に治りにくい皮膚疾患の一つです。

夜も眠れないほどのかゆみは、患者さんの生活の質を大きく低下させるだけでなく、精神的なストレスの原因にもなります。原因は皮膚の表面だけでなく、内臓の病気や免疫の異常が隠れている場合もあります。

この疾患を正しく理解し、根気強く治療に向き合うことが、症状改善への第一歩です。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

多形慢性痒疹の特徴と症状の現れ方

皮膚にかゆみのあるブツブツができても、通常の湿疹であれば市販薬や数日の経過で軽快することが多いですが、いつまでも治らず、皮膚が盛り上がって硬くなり、強いかゆみが続く場合は多形慢性痒疹の可能性があります。

皮膚が硬く盛り上がる結節の状態

多形慢性痒疹の最大の特徴は、皮膚に痒疹結節と呼ばれる硬いしこりができることです。最初は小さな赤いブツブツとして始まりますが、患者さんが強いかゆみに耐えきれず掻きむしってしまうことで、皮膚が防御反応を起こします。

皮膚の角質が厚くなり、小豆大から大豆大くらいの大きさの硬いイボのようなしこりへと変化し、中心部がくぼんでいたり、表面がガサガサしていたりすることが多く、触れるとゴツゴツとした感触があるのが特徴です。

結節は一つだけでなく、腕や脚、背中などに多数できることが一般的で、衣服が触れるだけでも強いかゆみが誘発されることがあります。

結節は一度できると非常に治りにくく、治療をして平らになったとしても、茶色や黒っぽい色素沈着として長く残ることがあります。

耐え難いかゆみと悪循環

この病気の最も辛い点は、他にはないほどの激しいかゆみです。蚊に刺された時のような一時的なかゆみとは異なり、体の奥から湧き上がってくるような強いかゆみが四六時中続きます。

入浴後や就寝時など、体が温まった時にかゆみが増強する傾向があり、あまりのかゆさに、血が出るまで掻きむしってしまい、それが皮膚を傷つけ、さらに神経を刺激してかゆみが増すという悪循環に陥ります(イッチ・スクラッチ・サイクル)。

サイクルを断ち切ることが治療において重要ですが、患者さん自身の意志だけで掻くのを我慢することは極めて困難です。

患者さんの中には、「痛みを感じるまで掻かないと気が済まない」と訴える方も多く、掻破行動が習慣化してしまうケースも見受けられます。

一般的な湿疹との症状の違い

比較項目多形慢性痒疹一般的な湿疹・皮膚炎
皮膚の状態硬く盛り上がったしこり(結節)が多発する赤み、ブツブツ、水ぶくれなど多様
かゆみの強さ非常に激しく、痛みを感じるまで掻いてしまう軽度から中等度で、波がある
経過数ヶ月から数年単位で続き、治りにくい数日から数週間で治まることが多い

好発部位と広がりの特徴

多形慢性痒疹のしこりは、手の届きやすい場所にできやすいです。腕の外側、太もも、すね、お尻、腰周り、背中などでで、かゆみを感じた時に無意識に手が伸びて掻いてしまう部位と一致します。

背中の中心部など手が届きにくい場所には発疹が少ないことがあります。最初は体の一部にあった発疹が、掻くことで徐々に周囲に広がり、全身に及ぶことも少なくありません。

また、衣服のゴムの締め付けや摩擦が起こりやすい場所にも症状が出やすく、日常生活での刺激が悪化要因です。

背中の肩甲骨の間など手が届かない部分には発疹ができず、その周囲を取り囲むように発疹ができるバタフライサインと呼ばれる現象が見られることもあり、物理的な掻破刺激が病変の形成にいかに大きく関わっているかを示しています。

利き手によって左右差が出ることもあり、右利きの人は左腕や左側の胴体に症状が強く出るといった傾向が見られる場合もあります。

激しいかゆみが発生する体の仕組み

単なる皮膚の炎症だけでは説明がつかないほどの激しいかゆみの裏には、皮膚内部の神経の変化が関わっています。かゆみを感じる神経が過敏になり、通常ならかゆみとして感じないような些細な刺激にも反応してしまう状態です。

知覚神経の異常な増生

正常な皮膚では、かゆみを感じる神経の末端は表皮と真皮の境界付近に留まっていますが、多形慢性痒疹の患者さんの皮膚、特に硬くなったしこりの部分では、神経線維が異常に伸びて、皮膚の表面近くまで入り込んでいることが分かっています。

皮膚の表面近くまで神経が伸びてきているため、衣服が触れる、風が当たる、温度が変わるといったごくわずかな刺激でも、神経がダイレクトに反応し、強いかゆみとして脳に伝わります。

神経の過敏状態であり、皮膚の炎症が長引くことで神経成長因子という物質が放出され、神経が伸びてしまうと考えられています。

この状態は、皮膚の警報装置が誤作動を起こし続けているようなものです。本来は痛みとして感じるはずの刺激も、脳内での情報処理の過程でかゆみとして認識されてしまう神経回路の変調も起きていると推測されます。

炎症細胞とかゆみ物質の放出

硬くなったしこりの内部では、慢性の炎症が続いていて、好酸球やマスト細胞、T細胞といった炎症に関わる細胞が集まっており、ヒスタミンや各種のサイトカインといったかゆみを起こす化学物質を放出し続けています。

特にインターロイキン31という物質が、強いかゆみに関与していることが近年の研究で注目されています。かゆいから掻く、掻くことで細胞が刺激されさらにかゆみ物質が出る、という連鎖が皮膚の中で休むことなく続いているのです。

また、ストレスを感じた時に放出される神経伝達物質も、炎症細胞を刺激してかゆみを増強させることがわかっています。

皮膚局所の問題だけでなく、全身の神経系や免疫系のネットワークが複雑に絡み合って、治りにくいかゆみを作り出していて、ヒスタミンだけをブロックしてもかゆみが止まらないことが多いのは、複数の物質や細胞が関与しているためです。

かゆみを増強させる日常的な要因

  • 熱いお風呂に入ることによる体温の上昇と血行促進
  • 精神的なストレスや緊張状態、イライラ感
  • ウールや化学繊維など肌触りの悪い衣類による物理的な摩擦
  • 乾燥した空気や暖房による皮膚の乾燥進行
  • 香辛料の強い食事やアルコールの摂取

皮膚バリア機能の破綻

健康な皮膚は、表面の角質層がバリアとなって外部からの刺激を跳ね返し、内部の水分を守っていますが、多形慢性痒疹の患者さんの皮膚は、掻き壊しによってこのバリア機能が著しく低下しています。

バリアが壊れた皮膚は、ダニやホコリ、細菌などの外部刺激が容易に侵入できる状態です。

異物が侵入すると、免疫細胞が反応してさらに炎症が悪化し、かゆみが増し、また、水分を保持できずに極度に乾燥するため、乾燥そのものがかゆみの原因となります。

硬く厚くなった角質は一見丈夫そうに見えますが、機能的には非常に脆く、外部環境に対して無防備な状態で、バリア機能が低下していると、黄色ブドウ球菌などの細菌が繁殖しやすくなります。

多形慢性痒疹を起こす背景と原因

多形慢性痒疹は、ただ皮膚がかゆくなるだけの病気だと思われがちですが、背景にさまざまな要因が隠れていることがあります。原因が一つであるとは限らず、複数の要因が絡み合って発症することも珍しくありません。

基礎疾患との関連性

多形慢性痒疹の患者さんを詳しく検査すると、糖尿病や肝臓病、腎臓病などの内臓疾患が見つかることがよくあります。

糖尿病では末梢神経障害やかゆみに対する感受性の変化が起きやすく、腎不全による透析患者さんにも強いかゆみを伴う結節が生じることが知られ、肝臓の機能低下も、体内にかゆみの原因物質が蓄積することで症状を起こすことがあります。

皮膚は内臓の鏡とも言われる通り、体の内部の不調が頑固なかゆみや発疹として表面化している場合があるため、皮膚科だけでなく全身の健康状態を確認することが重要です。

まれなケースではありますが、悪性リンパ腫や胃がんなどの内臓悪性腫瘍が背景に隠れていて、随伴症状として痒疹が現れていることもあります。

関連性が高いとされる主な疾患

疾患カテゴリー関連する病名影響の現れ方
代謝・内分泌疾患糖尿病、甲状腺疾患皮膚の乾燥や代謝異常によるかゆみの誘発
内臓機能障害慢性腎不全、肝硬変、肝炎老廃物の蓄積やかゆみ物質の代謝不全
血液疾患貧血、一部の血液腫瘍全身性のかゆみが先行して現れることがある

アレルギー素因と虫刺されの影響

もともとアトピー性皮膚炎の素因を持っている方は、多形慢性痒疹を発症しやすい傾向にあります。アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能が弱く、アレルギー反応を起こしやすいため、些細なきっかけで重症化しやすいのです。

また、虫刺されがきっかけとなるケースも非常に多く見られ、ブヨや蚊などの虫に刺された後、その部位のアレルギー反応が収まらず、いつまでもかゆみが残って掻き続けているうちに、結節へと変化してしまうことがあります。

これを固定じんましんや結節性痒疹と呼ぶこともありますが、きっかけが虫刺されであっても、その後慢性化して多形慢性痒疹の状態へと移行することがあります。

虫刺されに対するアレルギー反応が過剰に出やすい体質の方の場合、一箇所の刺し傷から全身に過敏反応が波及し、刺されていない場所にまで痒疹が広がることがあります。

心因性要因とストレス

精神的なストレスも、この病気の形成に大きく関わっています。強いストレスを感じると、自律神経やホルモンバランスが乱れ、かゆみを感じやすくなります。

また、イライラや不安を解消するために、無意識に皮膚を掻いてしまうという行動面での影響も見逃せません。掻くことで一時的に気が紛れるため、掻く行為が習慣化してしまい、皮膚が傷ついてさらにかゆくなるという悪循環に陥ります。

仕事のプレッシャーや家庭内の悩み、睡眠不足などが背景にあり、それらが皮膚症状を悪化させていることも少なくありません。心と皮膚は密接につながっており、心の負担を取り除くことも治療の一環です。

確定診断に向けた検査の流れ

多形慢性痒疹を正しく診断し、似たような症状を持つ他の皮膚疾患と区別するためには、専門的な視点での診察と検査が必要です。

単に見た目だけで判断するのではなく、背景にあるかもしれない内臓病変を見落とさないためにも、いくつかの検査を行います。

視診と問診による情報の整理

まずは医師が皮膚の状態を詳しく観察し、結節の大きさ、数、硬さ、分布している場所、掻き壊しの程度などを確認します。

同時に、いつから症状が出始めたのか、かゆみの程度、きっかけとなる出来事はあったか、現在治療中の他の病気はあるか、服用している薬はあるかなどを問診で詳しく聞き取ります。

特に、夜眠れているかどうかは症状の重症度を判断する上で重要な指標です。また、家族にアレルギー疾患を持つ人がいるかどうかも、体質の確認に役立ちます。

さらに、患者さんが普段どのようなスキンケアを行っているか、どのような種類の石鹸や保湿剤を使っているかも確認します。

間違ったスキンケアが症状を悪化させている場合もあるため、細かな生活習慣の聞き取りは、治療方針を決めるだけでなく、悪化要因を取り除くためのアドバイスを行う上でも非常に重要です。

血液検査による全身状態の把握

背景に内臓の病気が隠れていないかを調べるために、血液検査を行い、肝機能、腎機能、血糖値、甲状腺ホルモンなどをチェックし、全身の健康状態を評価します。

また、アレルギーの関与を調べるために、非特異的IgE抗体の値や、特定のアレルゲンに対する反応を見ることもあります。好酸球の数が増えていないかを確認することで、アレルギー反応の強さを推測することも可能です。

もし血液検査で異常が見つかった場合は、皮膚の治療と並行して、内科などで基礎疾患の治療を行う必要があり、加えて、TARC(ターク)という血液中の数値を測定することもあります。

これはアトピー性皮膚炎の重症度を反映するマーカーですが、多形慢性痒疹の患者さんでも上昇していることがあります。

皮膚生検の実施と目的

  • 見た目だけでは診断が難しい場合に、他の皮膚腫瘍や特殊な皮膚病と区別するため
  • 局所麻酔をして、直径数ミリ程度の皮膚組織を採取する小手術を行う
  • 採取した組織を顕微鏡で観察し、炎症細胞の種類や神経の状態を確認する
  • 類天疱瘡などの水疱症が痒疹のように見えるケースを除外する
  • 確定診断を得ることで、より的確な治療方針を決定できる

鑑別が必要な他の疾患

多形慢性痒疹と似た症状を示す病気はいくつかあり、見分けることが大切です。疥癬(かいせん)というダニによる感染症も激しいかゆみと結節を作ることがありますが、他人に感染するため全く対応が異なります。

また、水疱性類天疱瘡という自己免疫疾患の初期症状として、痒疹のような結節が現れることもあり、アトピー性皮膚炎が重症化して痒疹を伴っている場合もあります。

誤って診断すると治療効果が上がらないばかりか、症状を悪化させる恐れもあるため、皮膚科専門医による慎重な鑑別が必要です。

現在の主な治療法と選択

多形慢性痒疹治療の目標は、かゆみを抑えて日常生活を取り戻し、皮膚のしこりを平らにして再発を防ぐことで、塗り薬、飲み薬、光線療法など、さまざまな手段を組み合わせて治療を行います。

外用療法による局所の炎症抑制

治療の基本となるのは、ステロイド外用薬です。皮膚の炎症を強力に抑えるために、最もランクの高いストロンゲストクラスや、その次の「ベリーストロング」クラスのステロイド軟膏がよく使われます。

ただし、硬くなった結節の上からただ塗るだけでは、薬の成分が深部まで浸透しにくいことがあるため、薬を塗った上から亜鉛華軟膏を重ねてガーゼで覆う重層療法や、ステロイド成分を含むテープ剤を貼る密封療法が行われます。

テープ剤は薬の浸透を良くするだけでなく、物理的に爪が患部に触れるのを防ぐ効果もあり、掻き壊しの防止にも役立ちます。

外用薬の効果を最大限に引き出すためには、塗る量も重要で、薄く伸ばしすぎると十分な効果が得られません。人差し指の第一関節分くらいの量を、手のひら2枚分の面積に塗るのが目安(1FTU)です。

結節に対しては、少し盛り上がるくらい厚めに塗ることもあります。また、入浴直後の皮膚が柔らかくなっている時に塗布することで、薬剤の浸透率を高めることができます。

内服療法によるかゆみのコントロール

塗り薬だけでは抑えきれない強いかゆみに対しては、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服し、かゆみで夜眠れない患者さんには、鎮静作用のある抗ヒスタミン薬を選ぶこともあります。

また、体質改善を目的として漢方薬が処方されることもあり、さらに、重症の場合は、免疫抑制剤の内服が検討されることもありますが、副作用のリスクなどを十分に考慮した上で慎重に使用されます。

抗ヒスタミン薬には多くの種類があり、効果の出方には個人差があり、一つの薬が効かなくても、別の種類の薬に変えたり、量を調整したりすることで効果が現れることもあります。

諦めずに医師と相談し、ご自身に合った薬を見つけることが大切です。

外用薬とテープ剤の使い分け

薬剤の種類特徴とメリット使用時の注意点
ステロイド軟膏全身の広範囲に塗りやすく、保湿効果もある硬いしこりには浸透しにくく、衣服に付着することがある
ステロイドテープ密閉効果で浸透力が高く、掻き壊しを物理的に防ぐかぶれることがあり、貼る手間がかかる
活性型ビタミンD3軟膏ステロイドと併用することで皮膚の正常化を助ける効果が出るまで時間がかかり、単独ではかゆみ止め効果が弱い

局所注射による直接的なアプローチ

盛り上がりが強く、塗り薬やテープ剤でもなかなか平らにならない頑固な結節に対しては、ステロイド薬を直接しこりの中に注射する治療法があり、病変部に直接高濃度の薬剤を届けることができるため、高い効果が期待できます。

注射時の痛みは伴いますが、数回の治療でしこりが顕著に縮小し、かゆみも速やかに軽減することが多いです。

数が限られている場合や、症状が強い部位に対して選択される有効な手段ですが、副作用のリスクを避けるために、一度に大量の注射を行うことはできません。通常は2週間から4週間の間隔を空けて、経過を見ながら慎重に行います。

しこりが平坦化してくれば、注射から塗り薬やテープ剤へと切り替えて維持療法を行います。

難治例に対する新しい治療の選択肢

従来の治療法では十分な効果が得られない場合や、副作用でステロイドが使いにくい患者さんのために、さらに進んだ治療法もあります。諦めかけていた症状に対しても、別のアプローチを試みることで改善の道が開けることがあります。

紫外線療法(ナローバンドUVB)

紫外線の持つ免疫抑制作用を利用した治療法です。特定の波長(ナローバンドUVB)の紫外線を患部や全身に照射し、光線は皮膚の過剰な免疫反応を抑え、かゆみを感じる神経の興奮を鎮める効果があります。

また、硬くなった皮膚を柔らかくする作用も期待できます。副作用が比較的少なく、妊婦さんや子供、内臓疾患のある高齢者でも受けられることが多いのが利点です。

週に1回から2回程度の通院が必要ですが、塗り薬と併用することで治療効果を高め、薬の減量につながることもあります。

紫外線療法は即効性があるわけではありませんが、回数を重ねるごとに確実にかゆみが減り、皮膚がきれいになっていくのを実感できる治療法です。

全身型照射装置を備えているクリニックであれば、背中や下半身など広範囲に病変がある場合でも、短時間で効率的に治療を行うことができます。

生物学的製剤という新たな光

近年、アトピー性皮膚炎や痒疹のメカニズム解明が進み、かゆみや炎症を起こす特定の物質(サイトカイン)をピンポイントでブロックする注射薬が登場しています。

これを生物学的製剤と呼び、インターロイキン4や13、31といった物質の働きを抑える薬剤が、従来の治療で効果が不十分だった重症の多形慢性痒疹に対しても高い効果を示すことが分かってきました。

高価な薬剤であり、使用できる施設や条件は限られますが、長年の苦しみから解放される可能性を秘めた強力な選択肢です。

この治療法は、体の免疫システム全体を抑え込むのではなく、病気の原因となっている分子だけを狙い撃ちにするため、従来の免疫抑制剤に比べて重篤な副作用が少ないと考えられています。

自己注射が可能な製剤もあり、通院の負担を減らすこともできます。

液体窒素による冷凍凝固療法

  • イボ治療によく使われる液体窒素を、痒疹結節に押し当てる方法
  • 超低温で皮膚表面の神経や炎症細胞にダメージを与え、かゆみを麻痺させる
  • 一時的に水ぶくれやかさぶたができるが、その後新しい皮膚が再生する
  • 激しいかゆみを一時的にでも強制的に止めるために行われることがある
  • 色素沈着が残るリスクがあるため、整容面を気にする場合は相談が必要

生活習慣の見直しとスキンケア

病院での治療と同じくらい大切なのが、自宅での毎日のケアで、いくら良い薬を使っても、生活の中で皮膚への刺激が続いていれば、治療効果は半減してしまいます。皮膚をいたわり、かゆみを誘発しない環境を作ることが、治癒への近道です。

徹底した保湿ケアの重要性

多形慢性痒疹の患者さんの皮膚は、バリア機能が低下し乾燥していて、乾燥はかゆみの閾値を下げ、敏感な状態を作り出します。入浴後や朝の着替え時など、1日に2回以上は保湿剤をたっぷりと塗ることが必要です。

保湿剤はすり込むのではなく、皮膚に乗せるように優しく広げ、しこりの部分だけでなく、その周囲や全身の皮膚を保湿することで、新たな結節ができるのを防ぐ予防効果も期待できます。

季節を問わず、年間を通じて保湿を続ける習慣をつけることが大切です。

保湿剤には、ワセリンのように膜を作って水分蒸発を防ぐタイプや、ヘパリン類似物質やセラミドのように水分を抱え込むタイプなどがあります。使用感の好みや季節に合わせて使い分けることで、継続しやすくなります。

べたつきが気になる夏場はローションやフォームタイプ、乾燥が強い冬場はクリームや軟膏タイプを選ぶなど、医師に相談して自分に合った保湿剤を見つけてください。

衣類や寝具の選び方

直接肌に触れる衣類の素材選びは非常に重要です。ウールやナイロン、アクリルなどの化学繊維は、繊維の先端が皮膚を刺激し、チクチクとしたかゆみを起こす原因となります。

肌着は綿100%やシルクなど、肌触りが滑らかで吸湿性の良い天然素材のものを選びましょう。また、縫い目やタグが肌に当たって刺激になることもあるので、縫い目が外側になっている下着を選んだり、タグを切り取ったりする工夫も有効です。

寝具も同様に、肌に優しい素材を選び、こまめに洗濯して清潔を保つことで、ダニやホコリによる刺激を減らすことができます。

洗濯の際には、洗剤や柔軟剤の成分が衣類に残らないように、すすぎを十分に行うことも大切です。

香料の強い柔軟剤や洗浄力の強すぎる洗剤は、敏感になった皮膚には刺激となる可能性があるので、低刺激性の製品を選び、必要最小限の使用量に留めるよう心がけましょう。

日常生活で避けるべき悪化要因リスト

カテゴリ避けるべきもの・こと理由
入浴習慣熱すぎるお湯、ナイロンタオルでの摩擦血行促進によるかゆみの増強、バリア機能の破壊
食事激辛料理、過度なアルコール血管拡張とかゆみ物質の放出促進
環境急激な温度変化、極度の乾燥自律神経の乱れと皮膚へのストレス

爪のケアと掻き壊し対策

「掻かないようにする」というのは理想ですが、現実には無意識に掻いてしまうものです。そこで、掻いてしまっても皮膚へのダメージを最小限にする対策が必要で、爪は常に短く切り、角をやすりで滑らかに整えておきましょう。

夜間、就寝中に掻いてしまうのを防ぐために、綿の手袋をして寝るのも一つの方法です。また、かゆい時は冷たいタオルや保冷剤で患部を冷やすと、神経の興奮が鎮まり、かゆみが和らぐことがあります。

叩いたりつねったりするのは、皮膚組織を傷つけ炎症を広げるため控えましょう。どうしても我慢できない時は、掻く代わりに保湿剤を塗って優しくなでる、あるいは軽く圧迫するといった代替行動をとることも一つのテクニックです。

治りにくい多形慢性痒疹に関するよくある質問

最後に、この病気について患者さんから診察室でよく寄せられる質問にお答えします。

この病気は他人にうつるのでしょうか?

ウイルスや細菌による感染症ではないため、家族や周囲の人と同じタオルを使ったり、一緒に入浴したりしても感染することはありません。

プールや温泉の利用も感染予防の観点からは問題ありませんが、見た目の問題や、温まることによるかゆみの悪化には注意が必要です。

周囲の目を気にされる患者さんも多いですが、感染性はないという点を周囲の方にも理解してもらうことが、精神的な負担軽減につながります。

治療を始めてどれくらいで治りますか?

数ヶ月で落ち着く方もいれば、年単位での治療継続が必要な方もいます。皮膚の硬いしこりが完全に平らになり、色味が消えるまでには長い時間がかかります。

治療を開始して数週間から1ヶ月程度で、まずは「激しいかゆみ」が和らぎ、夜眠れるようになることを目指します。かゆみが治まれば掻き壊しが減り、徐々に皮膚の状態も改善に向かいます。

ステロイドの塗り薬を長く使って副作用は大丈夫ですか?

多形慢性痒疹のしこりは非常に皮膚が厚くなっているため、薬の吸収が悪く、強めのステロイドが必要ですが、全身への影響が出ることは稀です。

局所的な副作用として皮膚が薄くなるなどはあり得ますが、定期的に診察を受け、皮膚の状態を確認しながら薬の種類や回数を調整することでリスクを管理します。

自己判断で急にやめるとリバウンドで悪化することがあるため、減量や中止のタイミングは必ず医師と相談してください。

アトピー性皮膚炎とは違うのですか?

多形慢性痒疹とアトピー性皮膚炎は別の病気ですが、密接な関係があります。アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能異常を背景とした湿疹病変が主ですが、多形慢性痒疹は独立した硬い結節が特徴です。

ただし、アトピー性皮膚炎の患者さんが、重症化して多形慢性痒疹を併発することはよくあり、また、アトピーの素因がなくても、虫刺されや内臓疾患をきっかけに多形慢性痒疹だけを発症することもあります。

治療薬は共通するものも多いですが、結節に対する治療アプローチなど異なる点もあるため、区別して管理することが重要です。

以上

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