おしりにできたブツブツやかぶれは、見た目も気になり、かゆみや痛みを伴うこともあり、とても不快なものです。おしりは汗や摩擦などの刺激を受けやすく、肌トラブルが起こりやすい部位の一つです。
背景には、長時間座ることによる圧迫や、下着によるムレといった日常生活に潜む多くの原因が関係しています。
この記事では、おしりのブツブツやかぶれがなぜ起こるのか、多様な原因を詳しく掘り下げ、皮膚科ではどのような診断や治療を行うのか、さらに症状を繰り返さないために自分でできるセルフケアの方法まで、分かりやすく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
おしりのブツブツ・かぶれの正体とは?
おしりにできるブツブツやかぶれと一言でいっても、見た目や症状はさまざまです。赤く腫れていたり、かゆみが強かったり、黒ずんでしまったりと、状態によって考えられる原因も異なります。
見た目や症状で違う?主な種類を解説
おしりの皮膚に現れるトラブルは、いくつかの代表的な皮膚疾患に分類できます。
毛穴が赤く点々と盛り上がり、時に先端に小さな膿を持つことがあるのは毛嚢炎(もうのうえん)で、毛穴の奥に細菌が入り込んで軽い炎症を起こしている状態です。
広い範囲が赤くなり、かゆみやヒリヒリ感を伴う場合は、接触皮膚炎、いわゆるかぶれが考えられ、下着や汗、特定の化学物質などが肌への刺激となって起こります。
さらに、顔にできるものと同じように、皮脂腺が多いおしりにはニキビ(尋常性ざ瘡)ができることもあり、その他、あせも(汗疹)やアトピー性皮膚炎の症状の一部として湿疹が現れることもあります。
症状別考えられる皮膚トラブル
主な症状 | 考えられる主な皮膚トラブル | 簡単な特徴 |
---|---|---|
毛穴を中心とした赤いブツブツ、膿 | 毛嚢炎(もうのうえん) | 細菌感染による毛穴の炎症 |
広範囲の赤み、かゆみ、ヒリヒリ感 | 接触皮膚炎(かぶれ) | 外的刺激やアレルギーによる炎症 |
芯のある盛り上がり、膿、圧痛 | ざ瘡(ニキビ)、せつ(おでき) | 皮脂の詰まりや深い細菌感染 |
なぜおしりは肌トラブルが起きやすいのか
おしりの皮膚は、顔や腕などと比べて角層が厚く、比較的丈夫にできていますが、常に下着や衣類に覆われ、長時間座ることによる圧迫や摩擦にさらされているため、非常に過酷な環境に置かれています。
椅子に座っている間、おしりの特定の部分(坐骨結節部)には体重がかかり続け、血行が悪くなりがちで、血行不良は、皮膚の細胞に十分な栄養や酸素を届けにくくし、肌のターンオーバー(新陳代謝)を乱す一因です。
また、下着の中は汗や皮脂でムレやすく、細菌が繁殖しやすい高温多湿の状態です。
自己判断は危険?放置するリスク
おしりのブツブツやかぶれを、ただの肌荒れだと思って放置したり、市販薬で自己流のケアを続けたりするのは注意が必要です。
もし症状の原因が細菌や真菌(カビ)の感染だった場合、間違った薬、特に抗炎症作用のみのステロイド外用薬を使うことでかえって悪化させてしまう恐れがあります。
細菌感染にステロイド外用薬だけを使用すると、肌の免疫反応を抑えてしまい、菌の増殖を助長することがあります。
また、症状を繰り返すうちに、かゆみから強く掻き壊してしまい、傷跡がシミのような茶色い黒ずみ(炎症後色素沈着)として残ってしまうことも少なくありません。
一度できてしまった色素沈着を薄くするには、長い時間と根気強いケアが必要で、気になる症状が続く場合は、早めに皮膚科を受診し、正確な診断を受けることが、きれいに治すための最も確実な方法です。
考えられる主な原因
おしりのデリケートな肌は、日常のささいなことがきっかけでトラブルを起こします。ここでは、ブツブツやかぶれを起こす代表的な原因を詳しく見ていきましょう。
汗やムレによる刺激
おしりは体の部位の中でも汗腺が分布しており、特に臀部が合わさる部分は熱がこもりやすく汗をかきやすい場所です。夏場や運動時はもちろん、冬でも暖房の効いた室内や、厚着をしていると、思った以上に汗をかいています。
汗が下着の中にこもることで皮膚が長時間湿った状態になり、ムレてしまい、汗に含まれる塩分や尿素、アンモニアは、長時間肌に触れていると刺激となり、肌のバリア機能を直接的に低下させます。
バリア機能が弱った肌は、普段なら何でもないような少しの刺激にも敏感に反応し、かゆみや赤みを起こすあせも(汗疹)や、刺激性接触皮膚炎の原因です。
また、ムレによってふやけた角層は、物理的に非常に傷つきやすく、細菌が容易に侵入できる入り口を作ってしまうことにもなります。
日常生活で避けたいムレの原因
- 通気性の悪い化学繊維の下着やタイトな衣類の着用
- 汗をかいた後、濡れた衣類を着替えずに過ごす
- 長時間にわたるデスクワークや自動車の運転
- 吸湿性や通気性の低いビニールレザーなどの椅子やクッションの使用
下着や衣類の摩擦
硬い素材やタイトなデザインの下着、ジーンズなどの衣類は、歩いたり座ったりといった日常の動作のたびに皮膚とこすれ合い、絶えず物理的な刺激を与えています。
繰り返される摩擦が、肌の表面にある角層を徐々に削り取り、バリア機能を損なう大きな原因です。
特に、下着の縫い目やゴムの部分は圧力が集中しやすく、線状の赤みやかゆみ、繰り返すことで黒ずみ(摩擦黒皮症)を起こすことがあります。
肌が乾燥している状態では、皮膚の柔軟性が失われているため、さらに摩擦の影響を受けやすくなります。
素材選びだけでなく、自分の体にフィットしつつも締め付けすぎない、適切なサイズの衣類を選ぶことも、肌への負担を減らす上で非常に重要なポイントです。
おしりの肌トラブル 主な原因の概要
原因のカテゴリ | 具体的な要因 | 肌への影響 |
---|---|---|
物理的刺激 | 下着の摩擦、長時間の圧迫、衣類の縫い目 | 角層の損傷、バリア機能低下、血行不良 |
化学的刺激 | 汗、洗浄剤のすすぎ残し、洗剤の成分 | かゆみ、赤み、接触皮膚炎(かぶれ) |
細菌・真菌 | 黄色ブドウ球菌、アクネ菌、カンジダ菌など | 毛嚢炎、ざ瘡、カンジダ性間擦疹 |
間違ったスキンケアと洗いすぎ
おしりを清潔に保ちたいという思いから、ナイロンタオルやボディブラシで力を入れてゴシゴシこすったり、殺菌成分の入った洗浄力の強い石鹸で日に何度も洗いすぎたりしていませんか。
過度な洗浄は、肌を守るために本来必要な皮脂膜まで根こそぎ奪ってしまい、深刻な乾燥を招き、乾燥した肌はバリア機能が著しく低下し、外部からの刺激に非常に弱くなります。
また、シャンプーやボディソープのすすぎ残しも、洗浄成分が肌に長時間留まることで刺激となり、かぶれの原因になることがあります。体を洗う際は、背中からおしりにかけて、洗浄成分が残りやすいので特に注意深くすすぐ必要があります。
洗浄後は、優しく水分を拭き取り、顔と同じように保湿剤でケアをすることが、健やかな肌を保つための秘訣です。
アレルギー反応や接触皮膚炎
特定の物質が肌に触れることで、体の免疫システムが過剰に反応し、アレルギー性の炎症が起こることがあり、これをアレルギー性接触皮膚炎と呼び、強いかゆみを伴う赤みや小さなブツブツ、水ぶくれなどが現れます。
原因となる物質(アレルゲン)は人によって様々ですが、下着の素材(特定の化学繊維やその染料)、ゴムに含まれる化学物質、洗濯に使っている洗剤や柔軟剤の香料や成分、生理用ナプキンの素材などが考えられます。
また、アレルギー反応ではなくても、物質そのものが持つ刺激によって誰にでも炎症が起こる刺激性接触皮膚炎もあります。原因となる物質に触れている限り症状は改善しないため、何が原因かを特定することが治療の鍵となります。
新しい下着や洗剤を使い始めてから症状が出たなど、思い当たるものがあれば、使用を中止してみるのも一つの方法です。
症状別の原因と特徴
おしりに現れる症状は、原因によって見た目や感じ方が異なります。ここでは、代表的な症状を3つのタイプに分け、それぞれに考えられる原因や皮膚の状態について、さらに詳しく解説します。
赤いブツブツの場合
毛穴に沿ってできる赤いブツブツは、毛嚢炎の可能性が高いく、摩擦やムレによって傷ついた毛穴や、毛を剃った後の目に見えない小さな傷から、皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌などが侵入し、炎症を起こすことで発生します。
一つ一つが小さく、中心に膿を伴う(膿疱)こともあります。
通常は軽度の痛みやかゆみを伴う程度ですが、悪化すると炎症が毛穴の深部に及び、複数の毛嚢炎が融合して硬く腫れあがる「せつ」(一般に「おでき」と呼ばれるもの)になることもあり、強い痛みを伴います。
また、汗を出す管である汗管が詰まって炎症を起こすあせも(紅色汗疹)も、赤いブツブツとして現れ、こちらは、かゆみを伴うことが多く、特に汗を大量にかく夏場や運動後に多く見られるのが特徴です。
かゆみを伴うかぶれの場合
おしり全体、あるいは下着のゴムが当たる部分などが赤くなり、強いかゆみやジクジクした感じがある場合、接触皮膚炎(かぶれ)が強く疑われ、下着の素材や洗剤、生理用ナプキンなどが原因で起こります。
特に、汗をかいてムレることで、原因物質が皮膚に浸透しやすくなり、症状が誘発されやすくなります。
また、カビの一種であるカンジダ菌が異常増殖して起こる皮膚カンジダ症も、強いかゆみと赤みを起こし、これは、おしりの割れ目(臀裂部)や足の付け根(鼠径部)など、特に湿気がこもりやすい部分に好発するのが特徴です。
境界が比較的はっきりした赤みで、その周りに小さな赤いブツブツ(衛星病巣)が散在することがあります。
自己判断で市販のかゆみ止め(特にステロイド含有のもの)を使うとカンジダ菌を増殖させ、悪化することがあるため、正確な診断が非常に大切です。
接触皮膚炎の原因となりやすい物質
カテゴリ | 原因物質の例 | 含まれる製品の例 |
---|---|---|
繊維・染料 | 化学繊維(ナイロン等)、分散染料 | 下着、ストッキング、スポーツウェア |
化学物質 | ホルムアルデヒド(樹脂加工)、ラテックス | 衣類の形状記憶加工、ゴム製品 |
外用薬・化粧品成分 | 抗生物質、消毒薬、防腐剤、香料 | 塗り薬、ウェットティッシュ、ボディクリーム |
黒ずみや色素沈着を伴う場合
ブツブツやかぶれといった皮膚の炎症が長く続いたり、あるいは強い炎症が起きたりすると、肌は防御反応としてメラニン色素を作る細胞(メラノサイト)を活性化させます。
その結果、メラニンが過剰に生成され、炎症が治まった後も肌に沈着し、茶色っぽいシミのようになって残り、これが炎症後色素沈着です。
また、はっきりとした炎症がなくても、下着のゴムが常に当たる部分や、長時間座ることで圧迫される坐骨の部分などが、慢性的な弱い摩擦や圧迫を受け続けることで、徐々に皮膚が厚くなり、黒ずんでしまうことがあります(摩擦黒皮症)。
黒ずみは、病的なものではありませんが、美容的な観点から悩む方が多い症状で、一度できてしまうと改善には長い時間と地道なケアが必要になるため、まずは原因となる炎症や摩擦を早期に断ち切ることが最も重要です。
皮膚科での診断方法
おしりの肌トラブルで皮膚科を受診すると、どのようなことが行われるのでしょうか。正確な診断が、適切な治療への第一歩となりますので、できるだけ詳しく症状を伝えることが大切です。
まずは問診と視診から
診察室に入ると、まず医師が症状について詳しく尋ねます。「いつから症状がありますか」「かゆみや痛みはありますか」「どのような時に悪化しますか」といった基本的な質問をします。
さらに、「普段どのような下着をつけていますか」「お仕事はデスクワークですか」「最近、洗剤や石鹸を変えませんでしたか」など、原因を特定するための手がかりとなる生活習慣に関する情報まで、聞き取ります。
その後、実際に患部の状態を直接目で見て診察(視診)し、ブツブツの形、色、大きさ、分布の仕方、皮膚全体の乾燥状態などを詳しく観察することで、多くの場合はある程度の診断の見当をつけることが可能です。
デリケートな部分の診察ですが、医師や看護師は診察に慣れていますし、プライバシーには十分に配慮しますので、安心して受診してください。
症状を詳しく調べるための検査
視診だけでは診断が難しい場合や、感染症が疑われる場合には、確定診断のために追加で検査を行います。
細菌感染による毛嚢炎が疑われる場合は、ブツブツの膿を綿棒で少し採取し、顕微鏡で細菌を確認したり、原因菌の種類や効果のある抗菌薬を調べるための培養検査を行ったりします。
また、カンジダなどの真菌症が疑われる場合は、患部の皮膚表面をピンセットやメスで優しくこすって角層をわずかに採取し、水酸化カリウム(KOH)溶液で溶かして顕微鏡で菌糸や胞子の有無を調べる検査(直接鏡検)を行います。
検査はその場で数分程度で結果がわかることが多く、迅速な診断に役立ちます。アレルギーが疑われる際には、原因として考えられる物質を背中に貼り付け、48時間後と72時間後に皮膚の反応を見るパッチテストを行うこともあります。
皮膚科で行う主な検査
検査名 | 何を調べるか | 検査方法 |
---|---|---|
直接鏡検(KOH法) | 真菌(カビ)の有無 | 患部の角層を採取し顕微鏡で観察する |
細菌培養同定検査 | 原因となっている細菌の種類 | 患部の膿などを採取し、専用の培地で培養する |
パッチテスト | アレルギー性接触皮膚炎の原因物質 | 疑われる物質の試薬を背中などに貼り反応を見る |
皮膚科で行う主な治療法
皮膚科での治療は、薬物療法が中心となりますが、同時に肌トラブルの原因となっている生活習慣を見直し、改善していくための指導も同じくらい重要です。ここでは、皮膚科で行われる代表的な治療法について解説します。
塗り薬による治療
おしりの肌トラブル治療の基本は、炎症を抑え、原因となっている菌を退治するための塗り薬(外用薬)です。接触皮膚炎や湿疹など、炎症やかゆみを抑える目的では、ステロイド外用薬が主に使用されます。
ステロイドと聞くと副作用を心配される方もいるかもしれませんが、皮膚科医は症状の重症度や部位に合わせて、5段階ある強さの中から適切なランクの薬を選択します。
医師の指導のもと、正しい量と期間で使用すれば、非常に効果的で安全な治療法です。細菌感染が原因の毛嚢炎には、抗菌薬の入った塗り薬を用い、また、カンジダ症には、ステロイドは無効であり、専用の抗真菌薬の塗り薬を使用します。
主な塗り薬の種類と働き
薬の種類 | 主な働き | 対象となる主な症状 |
---|---|---|
ステロイド外用薬 | 皮膚の炎症を強力に抑える | 接触皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎 |
抗菌薬(抗生物質)外用薬 | 原因となる細菌の増殖を抑える | 毛嚢炎、とびひ、せつ(おでき) |
抗真菌薬外用薬 | 原因となる真菌(カビ)の増殖を抑える | 皮膚カンジダ症、白癬 |
飲み薬による治療
塗り薬だけでは改善が難しい場合や、症状が広範囲に及ぶ場合、あるいは炎症が強い場合には、飲み薬(内服薬)を併用します。
かゆみが非常に強く、掻きむしることで症状が悪化したり、夜も眠れなかったりするような場合には、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を処方し、掻き壊しによる悪循環を防ぐことができます。
また、毛嚢炎が多数できている場合や、大きく腫れてしまったせつ(おでき)など、細菌感染が重度の場合は、体の内側から菌を叩くために抗菌薬の飲み薬が必要です。
生活習慣の指導
薬による治療で現在の症状を抑えることと並行して、症状を悪化させたり、再発を招いたりする根本的な原因を取り除くための生活習慣の改善指導を行います。
ムレを防ぐための通気性の良い下着の選び方、肌を傷つけないための正しい体の洗い方、洗浄後の保湿ケアの重要性といったスキンケア指導が中心です。
また、長時間のデスクワークが多い方には、定期的に立ち上がって血行を促すストレッチをしたり、体圧を分散させるクッションの活用を提案したりすることもあります。
薬で症状を抑えるだけでなく、肌トラブルが起こりにくい環境を自分で作っていくことが、再発しにくい健康な肌を目指す上で不可欠です。
スキンケアで見直したいポイント
- 洗浄力のマイルドな弱酸性の石鹸やボディソープを選ぶ
- ナイロンタオルなどでのこすり洗いをやめ、手で優しく洗う
- ぬるめ(38~40度程度)のお湯で洗い、洗浄成分をしっかりすすぐ
- 入浴後は清潔なタオルで押さえるように水分を拭き、すぐに保湿剤を塗る
自宅でできるセルフケアと予防策
皮膚科での治療効果を高め、そして何より症状の再発を防ぐためには、日々のセルフケアを見直すことが最も重要です。少しの工夫と習慣化で、肌の状態は大きく変わることがあります。
正しいおしりの洗い方と保湿
おしりを清潔に保つことは大切ですが、洗いすぎは禁物です。入浴時には、石鹸やボディソープをよく泡立て、泡をクッションにして、ナイロンタオルなどは使わずに、手で優しくなでるように洗いましょう。
おしりの割れ目や足の付け根は、汚れや洗浄成分が残りやすいので、シャワーでぬるま湯をかけながら丁寧にすすぐことを意識してください。お風呂から上がったら、清潔で柔らかいタオルで、こすらずに押さえるようにして水分を拭き取ります。
肌が完全に乾いてしまう前の、まだ少し湿り気が残っているうちに保湿剤を塗るのが最も効果的です。乾燥は肌のバリア機能を低下させる最大の原因の一つなので、顔や手足と同じように、おしりも毎日保湿する習慣をつけましょう。
べたつきが気になる方は、ローションやジェルタイプの保湿剤がおすすめです。
保湿成分の種類と特徴
保湿成分の例 | 働き | 特徴 |
---|---|---|
セラミド | 角層細胞の間で水分を挟み込んで保持する | 肌本来のバリア機能をサポートする中心的な成分 |
ヘパリン類似物質 | 高い保湿力に加え、血行促進や抗炎症作用を持つ | 乾燥による肌荒れや色素沈着の改善にも効果が期待できる |
ワセリン | 肌表面に油性の膜を作り水分の蒸発を防ぐ | 刺激が極めて少なく、敏感な肌を保護する目的で使われる |
下着や衣類の選び方
肌に直接長時間触れる下着は、素材選びが非常に重要で、吸湿性・通気性に優れた綿(コットン)やシルクなどの天然素材を選び、汗を吸っても乾きにくいポリエステルなどの化学繊維は避けるのが望ましいです。
締め付けの強いデザインや、硬いレースが肌に当たるものも摩擦の原因となるため、できるだけゆったりとしたシームレスタイプや、縫い目が外側にあるデザインのものを選びましょう。
同様に、ボトムスもスキニージーンズのようなタイトなものは避け、特に夏場は通気性の良いスカートやワイドパンツなどを選ぶと、肌への負担を大幅に軽減できます。
新しい下着や衣類は、一度洗濯してから着用すると、製造過程で付着したホルムアルデヒドなどの化学物質を除去できるため、より安心です。
おしりの肌に優しい下着の素材
おすすめの素材 | メリット | 注意点 |
---|---|---|
綿(コットン) | 吸湿性・通気性が高く、肌触りが非常に良い | 一度濡れると乾きにくい性質がある |
絹(シルク) | 吸湿・放湿性に優れ、人肌に近い成分で刺激が少ない | 高価で、デリケートなため洗濯に注意が必要 |
長時間座る人向けの対策
デスクワークや運転など、日常的に長時間座っている方は、おしりが圧迫されて血行が悪くなり、熱や湿気がこもりやすくなっています。
これを防ぐためには、意識的に1時間に1回は立ち上がって少し歩いたり、軽いストレッチをしたりして、おしりにかかる圧力を解放し、血行を促すことが重要です。
また、椅子に敷くクッションを工夫するのも非常に有効です。
通気性の良いメッシュ素材でできたものや、体圧を効果的に分散させる機能があるジェルクッション、中央に穴の開いたドーナツ型のクッションなどを活用すると、おしりへの負担を大きく減らすことができます。
生活習慣全般で見直したいこと
- 十分な睡眠時間を確保し、肌のターンオーバーを促す
- ストレスを溜めず、適度な運動や趣味で発散する
- 体を締め付けない服装を心がける
- 便秘を避け、腸内環境を整える
食生活や生活習慣の見直し
肌の健康は、体の内側からのケアも切り離せません。皮脂の分泌を過剰にする揚げ物などの脂質の多い食事や、糖分の多いお菓子、刺激の強い香辛料などは、肌の炎症を悪化させることがあります。
バランスの取れた食事を基本とし、特に肌の新陳代謝を助けるビタミンB群、抗酸化作用がありコラーゲンの生成を助けるビタミンC、血行を促進するビタミンEなどを積極的に摂るようにしましょう。
また、便秘は腸内環境の悪化を招き、有害物質が体内に溜まることで肌荒れにつながることもあるため、食物繊維や水分を十分に摂り、腸の調子を整えることも、おしりの肌トラブル改善に間接的に役立ちます。
さらに、睡眠不足やストレスもホルモンバランスを乱し、肌のバリア機能を低下させるため、規則正しい生活を心がけることが大切です。
肌の健康をサポートする栄養素と食品
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品の例 |
---|---|---|
ビタミンB群 | 皮膚や粘膜の健康維持、皮脂分泌の調整 | 豚肉、レバー、うなぎ、玄米、納豆 |
ビタミンC | コラーゲンの生成補助、抗酸化作用、色素沈着の抑制 | パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ、柑橘類 |
ビタミンE | 血行促進、抗酸化作用、バリア機能の維持 | アーモンドなどのナッツ類、かぼちゃ、アボカド |
おしりのブツブツ・かぶれに関するよくある質問
最後に、患者さんからよく寄せられる質問と回答をまとめました。
- 赤ちゃんのおむつかぶれも同じ原因ですか?
-
赤ちゃんのおむつかぶれは、おしっこやうんちに含まれるアンモニアや酵素といった化学的な刺激、おむつによる物理的なムレや摩擦が主な原因で起こる刺激性接触皮膚炎の一種です。
大人の場合も、汗の成分による刺激、下着によるムレや摩擦が原因となる点で、根本的な発生の仕組みは非常に似ています。
ただし、赤ちゃんの皮膚は大人よりもずっと薄くデリケートでバリア機能が未熟なため、より症状が出やすく、悪化しやすいという違いがあります。
- 症状が改善しない場合、どうすればよいですか?
-
自己判断でのケアを続けても一向に改善しない場合、診断そのものが間違っているか、ケアの方法が現在の症状に合っていない可能性があります。
かぶれだと思って市販薬を使っていても、実は真菌(カビ)が原因だったというケースは少なくありません。
また、非常にまれですが、おしりの治りにくい皮膚症状が、糖尿病や内臓の病気などが背景に隠れているサインである可能性もゼロではありません。専門医による正確な診断を受け、適切な治療方針を立て直すことが重要です。
長引く症状は色素沈着などの跡を残す原因にもなりますので、早めの相談をお勧めします。
- 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
-
治療期間は、症状の種類や重症度、原因となっている生活習慣をどの程度改善できるかによって大きく異なります。
軽度の毛嚢炎やあせもであれば、適切な治療とセルフケアを始めることで、1週間から2週間程度で快方に向かうことが多いです。
ただし、アレルギーの原因が特定できない慢性的な接触皮膚炎や、長期間繰り返している症状、そして一度できてしまった炎症後色素沈着などは、改善に数ヶ月単位の時間が必要になることもあります。
- おしりのニキビは顔のニキビと違うのですか?
-
基本的には同じもので、ニキビ(尋常性ざ瘡)は、毛穴に皮脂が詰まり、そこでアクネ菌が増殖して炎症を起こす病気です。おしりも背中などと同様に皮脂腺が多いため、ニキビができやすい部位の一つです。
ただし、おしりの場合は衣類による摩擦やムレといった外的刺激が常に加わるため、顔のニキビよりも治りにくく、炎症が強くなったり、跡に残りやすかったりする傾向があります。
治療法は顔のニキビに準じますが、こうした外的刺激を減らすための生活習慣の改善がより重要になります。
以上
参考文献
Furukawa H, Oyama A, Funayama E, Hayashi T, Yamamoto Y. Skin necrosis around bilateral buttock of hikikomori teenager. International Journal of Culture and Mental Health. 2014 Jan 2;7(1):43-5.
Berger EM, Orlow SJ, Patel RR, Schaffer JV. Experience with molluscum contagiosum and associated inflammatory reactions in a pediatric dermatology practice: the bump that rashes. Archives of dermatology. 2012 Nov 1;148(11):1257-64.
Ryan P, Sondike SB. Buttock spots. Clinical pediatrics. 2006 Nov;45(9):867-70.
Wallengren J. Prurigo simplex or “Itchy red bump” disease: review and case series. Acta Dermato-Venereologica. 2021 Sep 3;101(9):235.
Gohara MA, Schaffer JV, Abbasi NR, Kingsley MM, Sheehan JM, Arndt KA. Inflammatory Dermatoses (Rashes). the Patient History. 2012:199.
Browne F, Dunne K. Important Rashes to Recognise in Infants and Children. Pitfalls in Paediatrics-E-Book: Pitfalls in Paediatrics-E-Book. 2024 Feb 9:68.
Fahrenholtz HD, Miller JJ, Bunn BB. Infant with diaper rash and white bumps. American Family Physician. 2014 Jun 15;89(12):973-4.
Gohara MA, Schaffer JV, Abbasi NR, Kingsley MM, Sheehan JM, Arndt KA. Inflammatory Dermatoses (Rashes). the Patient History. 2012:199.
Long K, Ortega M, Pierce R, Arinze P, Propst M, Pierce L, Becevic M. Bugs, bumps, and bacteria: The role of virtual collaborative learning network in pediatric dermatology. Missouri Medicine. 2023 Jan;120(1):59.
Franz R. No Such Thing as a Simple Rash: The Serious Side of Rashes. Dermatology Nursing. 2000 Jun 1;12(3):203-.