頭皮の乾燥、繰り返すフケ、我慢できないかゆみ、そして、かさぶた、これらはアトピー性皮膚炎が頭皮に現れた際の代表的な悩みです。頭皮は髪の毛に覆われているため、他の部位とは異なるケアが求められます。
特に毎日のシャンプーは、頭皮の状態を良くも悪くも左右する重要な習慣です。
この記事では、アトピー性頭皮の乾燥を防ぎ、フケやかゆみ、かさぶたを改善するためのシャンプー選びと、正しい洗い方の基本を詳しく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
アトピー性頭皮とは?フケ・かゆみ・かさぶたの原因
アトピー性頭皮は、アトピー性皮膚炎の症状が頭皮に現れた状態です。顔や首、肘や膝の裏側と同様に、頭皮も皮膚の一部であり、アトピー素因を持つ人は頭皮にも炎症を起こしやすい傾向があります。
アトピー性皮膚炎と頭皮の関係
アトピー性皮膚炎の基本的な特徴は、皮膚のバリア機能が低下していることです。アトピー素因を持つ人の皮膚は、バリア機能が弱いため、わずかな刺激にも敏感に反応し、炎症(赤み、かゆみ)を起こしやすくなり、頭皮も例外ではありません。
バリア機能が低下した頭皮は乾燥しやすく、シャンプーや汗、整髪料などの刺激にさらされることで、炎症が悪化しやすい状態です。
なぜフケが出るのか 乾燥とターンの乱れ
フケは、頭皮の古い角質が剥がれ落ちたもので、健康な頭皮でもフケは発生しますが、通常は非常に小さく目立ちません。しかし、アトピー性頭皮では、バリア機能の低下による乾燥が大きな原因となります。
頭皮が乾燥すると、角質が細かくパラパラと剥がれ落ちる乾燥性のフケが増加し、さらに、炎症が起こると皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が異常に早まります。
未熟な角質細胞が大量に作られ、それが大きな塊となって剥がれ落ちることで、目立つフケとなるのです。
フケの主な種類
- 乾燥性フケ:パラパラとした細かいフケ。主な原因は乾燥。
- 脂性フケ:ベタベタとした湿ったフケ。皮脂の過剰分泌やマラセチア菌の増殖が関与。
我慢できないかゆみと炎症の悪循環
アトピー性頭皮の最もつらい症状の一つが、強いかゆみで、皮膚の乾燥によってかゆみを感じる神経線維が皮膚の表面近くまで伸びてくることや、炎症によって放出される化学物質(ヒスタミンなど)によって起きます。
問題は、かゆいからといって掻いてしまうことです。掻く行為が物理的な刺激となり、皮膚のバリア機能をさらに破壊し、バリアが壊れると、外部からの刺激が入り込みやすくなり、炎症が悪化し、かゆみがさらに強くなる悪循環に陥ります。
かゆみと掻破の悪循環
| 段階 | 頭皮の状態 | 起こる現象 |
|---|---|---|
| 1. バリア機能低下 | 乾燥・敏感 | わずかな刺激でかゆみが発生 |
| 2. 掻破(かくこと) | バリア破壊 | 物理的刺激で皮膚が傷つく |
| 3. 炎症悪化 | 赤み・湿疹 | 刺激物が侵入し、かゆみ物質が放出 |
| 4. さらなるかゆみ | 我慢できないかゆみ | 再び掻いてしまう (2に戻る) |
かさぶたができてしまう理由
頭皮のかさぶたは、主に掻き壊しによってできます。強いかゆみのために頭皮を強く掻きむしると、皮膚が傷つき、血や浸出液(ジクジクとした液体)が出ることがあり、出液や血液が固まったものが、かさぶたです。
アトピー性頭皮では、炎症が慢性化しやすく、少しの刺激で皮膚が傷つきやすいため、かさぶたもできやすくなります。かさぶたができると、それがまた気になって剥がしてしまい、傷が治らずに炎症が長引く原因にもなります。
無理に剥がすと、健康な皮膚まで傷つけてしまうため注意が必要です。
頭皮アトピーを悪化させる日常のNG習慣
頭皮のアトピー症状は、良かれと思って行っている日常の習慣によって、知らず知らずのうちに悪化していることがあります。特にシャンプーやその後のケアは、頭皮に直接影響を与えるため、見直しが必要です。
間違ったシャンプーが刺激になる
毎日使うシャンプーが、頭皮の刺激源になっている可能性は非常に高く、洗浄力が強すぎるシャンプーは、アトピー性頭皮にとって大敵です。
洗浄力が強い石油系合成界面活性剤(ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Naなど)を含むシャンプーは、汚れだけでなく、頭皮を守るために必要な皮脂まで奪い去ってしまい、頭皮の乾燥が進み、バリア機能がさらに低下します。
また、香料、着色料、防腐剤(パラベンなど)といった添加物も、敏感な頭皮には刺激となり、かゆみや炎症を起こす原因です。
洗いすぎ・すすぎ残しのリスク
フケやかゆみが気になると、清潔にしようとして一日に何度もシャンプーをしたり、ゴシゴシと力を入れて洗いすぎたりすることがありますが、洗いすぎは必要な皮脂を取り除き、乾燥を助長します。
アトピー性頭皮の場合、シャンプーは基本的に1日1回で十分です。ただし、すすぎが不十分だと、シャンプー剤やコンディショナーの成分が頭皮に残り、刺激となって炎症やかゆみを起こします。
耳の後ろや生え際は、すすぎ残しが多い場所なので意識して洗い流すことが大切です。
頭皮ケアのセルフチェック
| チェック項目 | NG行動 | 推奨される行動 |
|---|---|---|
| シャンプーの回数 | フケが気になり1日2回以上洗う | 原則1日1回、ぬるま湯で優しく洗う |
| お湯の温度 | 熱いお湯(40℃以上)で洗う | ぬるま湯(38℃〜39℃程度)にする |
| すすぎ | 泡が消えたら終わりにする | 洗う時間の倍以上かけ、丁寧にすすぐ |
爪を立てて洗うことの危険性
かゆい部分を爪で掻きながら洗うと、一時的にスッキリするかもしれませんが、最も避けるべき行為の一つです。
アトピー性頭皮は非常にデリケートで傷つきやすくなっていて、爪を立てて洗うと、目に見えない無数の小さな傷が頭皮につき、そこから細菌が侵入したり、炎症が悪化します。
かさぶたを爪で剥がしてしまうこともあるので、シャンプーの際は、必ず指の腹を使い、頭皮をマッサージするように優しく洗うことを徹底してください。
汗や皮脂の放置
洗いすぎは良くありませんが、汗や皮脂を長時間放置することも問題です。汗に含まれる塩分やアンモニア、皮脂が酸化した物質(過酸化脂質)は、それ自体が頭皮への刺激物となります。
また、皮脂やフケをエサにするマラセチア菌(常在菌の一種)が増殖しやすくなり、炎症を悪化させることもあります。
運動などで大量に汗をかいた日や、皮脂でベタつきを感じる日は、その日のうちにシャンプーで優しく洗い流し、頭皮を清潔に保つことが重要です。
汗をかいた後の推奨行動
- できるだけ早くシャワーを浴びる
- シャワーが無理なら、濡らして固く絞ったタオルで頭皮を押さえるように汗を拭き取る
- 汗をかいた帽子や寝具はこまめに洗濯する
アトピー性頭皮のためのシャンプー選びの基本
アトピー性頭皮のケアにおいて、シャンプー選びは最も重要なポイントの一つです。どのような基準で選べば良いか、成分にも注目しながら解説します。
低刺激・弱酸性を選ぶ理由
健康な皮膚は弱酸性(pH4.5〜6.0)に保たれており、酸性の膜が外部の細菌の増殖を防ぐ役割の一部を担っています。
アトピー性皮膚炎の人は、皮膚がアルカリ性に傾きやすい傾向があり、バリア機能が低下しているため、シャンプーも健康な皮膚と同じ弱酸性のものを選ぶことが基本です。
また、アトピー性頭皮は非常に敏感なため、できるだけ刺激の少ない製品を選ぶ必要があります。
低刺激シャンプーの主な特徴
- アミノ酸系・ベタイン系の洗浄成分を使用
- 無香料・無着色
- アルコール(エタノール)フリー、または配合量が少ない
- アレルギーテスト済み、敏感肌用パッチテスト済み(全ての人に刺激がないわけではありません)
避けるべき成分と注目したい保湿成分
シャンプーを選ぶ際は、成分表示を確認する習慣をつけましょう。洗浄力が強い成分や、刺激になり得る添加物を避けることが大切で、乾燥を防ぐために保湿成分が配合されている製品を選ぶことも有効です。
ただし、特定の成分が合わない場合もあるため、最初はサンプルや少量サイズで試してみることをお勧めします。
シャンプーの成分チェックポイント
| 分類 | 避けることを推奨する成分例 | 配合が推奨される成分例 |
|---|---|---|
| 洗浄成分 | ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na | ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルメチルアラニンNa(アミノ酸系) |
| 添加物 | 合成香料、合成着色料、パラベン | (なるべく無添加のもの) |
| 保湿成分 | (特になし) | セラミド、ヒアルロン酸、グリセリン、リピジュア |
薬用シャンプーと一般シャンプーの違い
ドラッグストアなどでは薬用シャンプー(医薬部外品)も多く販売されています。
一般のシャンプー(化粧品)が頭皮や髪を清浄にすることを主な目的としているのに対し、薬用シャンプーはフケ・かゆみを防ぐ、殺菌する、といった有効成分も一定濃度配合されています。
アトピー性頭皮の場合、有効成分が刺激になる可能性もゼロではありませんが、フケやかゆみが強い場合、医師の指導のもとで試してみるとよいでしょう。
シャンプーの分類と目的
| 分類 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| シャンプー(化粧品) | 洗浄、保湿 | 低刺激性や保湿性に特化した製品が多い。 |
| 薬用シャンプー(医薬部外品) | 洗浄+予防 | フケ・かゆみ防止や殺菌の有効成分を含む。 |
| 医療用シャンプー(医薬品) | 治療 | 医師の処方が必要。明確な治療効果を持つ。 |
フケ・かゆみ用シャンプーの選び方
フケ・かゆみに対応した薬用シャンプーを選ぶ場合、原因に合わせた有効成分が配合されているかを確認します。乾燥によるフケやかゆみには保湿成分や抗炎症成分(グリチルリチン酸2Kなど)が配合されたものが適しています。
一方で、皮脂が多くマラセチア菌の増殖が疑われる場合(脂性フケ)は、抗真菌成分(ミコナゾール硝酸塩、ピロクトンオラミンなど)が配合されたものが有効な場合があります。
ただし、アトピー性頭皮は乾燥がベースにあることが多いため、まずは低刺激で保湿を重視したシャンプーを選び、改善しない場合に医師に相談の上、抗真菌成分入りなどを検討してください。
乾燥を防ぐ正しいシャンプーの方法と洗い方
どんなに良いシャンプーを選んでも、洗い方が間違っていては効果が半減し、かえって頭皮を傷つけてしまうことがあります。アトピー性頭皮を守るためには、洗浄力に頼るのではなく、洗い方の技術で汚れを落とす意識が大切です。
洗う前の準備 ブラッシングと予洗い
シャンプーの前に、まずは乾いた髪をやさしくブラッシングします。毛先のもつれをほぐしてから、頭皮に近い部分から毛先に向かってとかします。
ブラッシングにより、髪についたホコリや汚れの多くを取り除くことができ、シャンプー時の泡立ちが良くなります。次に、シャンプーをつける前に、ぬるま湯(38℃程度)で頭皮と髪をしっかりと予洗いすることが大切です。
1分〜2分ほど時間をかけ、お湯だけで頭皮を優しくマッサージするように洗い、予洗いだけで髪の汚れの7割程度は落ちると言われています。
予洗いをしっかり行うことで、使用するシャンプーの量を減らすことができ、頭皮への負担軽減につながります。
適切なシャンプーの泡立て方と量
シャンプー剤を直接頭皮につけるのは避けてください。刺激が強すぎたり、すすぎ残しの原因になるので、シャンプーはまず手のひらに適量(製品の推奨量)を取り、両手で軽くなじませます。
できれば、少量のぬるま湯を加えて、手のひらである程度泡立ててから髪につけると、頭皮全体に均一に広がりやすくなります。泡立てが苦手な人は、泡で出てくるタイプのシャンプーを選ぶのも良い方法です。
指の腹を使った優しい洗い方
髪を洗うというより、頭皮を洗うことを意識します。絶対に爪を立てず、指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするように洗います。
特に生え際、耳の後ろ、後頭部(襟足)は皮脂が溜まりやすく、かゆみも出やすい部分で、洗い残しやすすぎ残しも多い部分です。意識して丁寧に洗いましょう。
かさぶたができている部分は、無理に剥がそうとせず、泡を乗せて優しくなでる程度にとどめます。ゴシゴシと強くこする必要はなく、泡が汚れを浮かせてくれるので、指の腹で頭皮全体をまんべんなく動かすように洗えば十分です。
すすぎ残しを防ぐ徹底したすすぎ
シャンプーの工程で最も時間をかけるべきなのが、すすぎで、シャンプー剤が頭皮に残ると、それが刺激となってかゆみや炎症、フケの原因となります。泡が消えてからも、さらに1〜2分は時間をかけて、ぬるま湯で徹底的にすすぎましょう。
髪が密集している後頭部、耳の後ろ、生え際は念入りに行い、シャワーヘッドを頭皮に近づけ、指の腹で頭皮を軽くこするようにしながら、ぬるま湯を頭皮全体に行き渡らせます。
シャンプー後の頭皮ケアと乾燥対策
シャンプーで清潔にした後の頭皮は、非常にデリケートで乾燥しやすい状態なので、お風呂上がりの保湿ケアは顔や体だけでなく、頭皮にも必要です。
タオルドライの注意点
濡れた髪や頭皮は摩擦に弱いため、タオルでゴシゴシと強くこするのは厳禁です。
まずは乾いた清潔なタオルを頭にかぶせ、頭皮の水分を優しく押さえるように吸収させ、次に、髪の毛をタオルで挟み込み、ポンポンと軽く叩くようにして水分を取ります。
アトピー性頭皮の方は、タオルの素材にもこだわり、吸水性が高く肌触りの柔らかい綿100%のものなどを選びましょう。
タオルドライのポイント
- 吸水性の高い、清潔で柔らかいタオルを使用する
- 頭皮はこすらず、タオルを押し当てて水分を吸い取る
- 髪の毛はタオルで挟み、優しく叩くように拭く
ドライヤーの正しい使い方
髪を濡れたまま放置する自然乾燥は、頭皮のアトピーを悪化させ、濡れた状態が続くと、雑菌が繁殖しやすくなり、かゆみやニオイの原因となります。
また、水分が蒸発する際に頭皮の水分も一緒に奪ってしまい(過乾燥)、かえって乾燥を進ませます。シャンプー後は、できるだけ速やかにドライヤーで乾かすことが大切です。
ドライヤー使用時の比較
| 項目 | NGな使い方 | 推奨される使い方 |
|---|---|---|
| 頭皮との距離 | 10cm以内など、近すぎる距離で当てる | 頭皮から20cm以上離す |
| 温度 | 高温の温風を同じ場所に当て続ける | 温風と冷風を切り替えながら使う |
| 乾かす順序 | 毛先から乾かす | 乾きにくい根元(頭皮)から乾かす |
| 仕上げ | 熱いまま(8割乾き)で終える | 最後に冷風を当てて頭皮をクールダウンさせる |
頭皮用保湿ローションの活用
お風呂上がりに顔に化粧水をつけるのと同じように、頭皮にも保湿ケアが必要です。乾燥が気になる場合は、頭皮専用の保湿ローションや保湿スプレーを活用しましょう。
ドライヤーで髪を乾かす前、頭皮がまだ少し湿っている状態で使用するのが効果的で、セラミド、ヒアルロン酸、グリセリンなどの保湿成分が配合された、低刺激性の製品を選びます。
ローションを指に取り、かゆみや乾燥が気になる部分(生え際、頭頂部など)を中心に、頭皮に直接優しくなじませます。スプレータイプの場合は、髪をかき分けて頭皮に直接噴霧し、指の腹で軽くなじませます。
刺激の少ない寝具選び
睡眠中、頭皮は枕カバーと長時間触れています。枕カバーが清潔でないと、雑菌が繁殖し、頭皮の炎症を悪化させる原因となります。枕カバーはこまめに洗濯し、清潔を保ち、また、素材も重要です。
ゴワゴワした素材は摩擦刺激になりますし、化学繊維は汗の吸収が悪く蒸れやすいことがあります。肌触りが柔らかく、吸湿性・通気性に優れた綿(コットン)や絹(シルク)などの天然素材がおすすめです。
生活習慣で見直すべきポイント
アトピー性頭皮の症状は、シャンプーなどの外側からのケアだけでなく、体の内側からの影響も強く受けます。食事、ストレス、睡眠といった生活習慣全体を見直すことが、根本的な症状改善につながります。
食事と頭皮の健康
食べたものが血液となり、頭皮の健康状態を作ります。特定の食品がアトピーを直接悪化させると断定することは難しいですが、バランスの取れた食事は皮膚の健康維持に必要です。
皮膚や粘膜の健康を保つビタミンB群(レバー、豚肉、納豆など)、抗酸化作用がありターンオーバーを助けるビタミンA(緑黄色野菜など)やビタミンC(果物、野菜など)、血行を促進するビタミンE(ナッツ類、植物油など)は積極的に摂りましょう。
高脂肪食、高糖質食、アルコール、香辛料の強い刺激物などは、皮脂の分泌を増やしたり、かゆみを誘発したりする可能性があるため、摂りすぎには注意してください。
食事に関する推奨と注意点
| 分類 | 積極的に摂りたい食品例 | 過剰摂取に注意したい食品例 |
|---|---|---|
| ビタミン類 | 緑黄色野菜、果物、納豆、玄米 | (特になし、バランス良く) |
| タンパク質 | 魚、大豆製品、鶏むね肉 | 加工肉、脂身の多い肉 |
| 脂質 | 青魚(EPA/DHA)、亜麻仁油 | 揚げ物、スナック菓子、動物性脂肪 |
| その他 | 海藻類、きのこ類(食物繊維) | 白砂糖、アルコール、香辛料 |
ストレス管理の重要性
ストレスはアトピー性皮膚炎の明確な悪化因子です。ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、免疫機能に影響を与えたり、かゆみを感じやすくなったりし、また、ストレスによって無意識のうちに頭皮を掻いてしまうこともあります。
現代社会でストレスをゼロにすることは困難ですが、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
睡眠と肌のターンオーバー
皮膚のターンオーバー(新陳代謝)は、主に睡眠中に活発に行われます。睡眠不足が続くと、ターンオーバーが乱れ、皮膚のバリア機能の修復が追いつかなくなります。
また、睡眠不足は自律神経やホルモンバランスの乱れにもつながり、症状を悪化させる可能性があります。毎日決まった時間に寝る、寝る前のスマートフォン操作を控えるなど、質の良い睡眠を十分にとることを心がけましょう。
物理的な刺激を避ける工夫(帽子、整髪料)
日常生活での物理的な刺激も、頭皮アトピーを悪化させます。帽子の着脱による摩擦や、帽子の中の蒸れは頭皮によくありません。帽子をかぶる場合は、通気性の良い素材を選び、汗をかいたらこまめに脱いで換気しましょう。
また、ヘアワックスやスプレーなどの整髪料は、頭皮に直接つくと毛穴を塞いだり、化学成分が刺激になったりすることがあります。
整髪料使用時の注意点
- 頭皮には絶対につけず、毛先を中心に使用する
- できるだけ低刺激性の製品を選ぶ
- 使用した日は必ずシャンプーでしっかり洗い流す
- 症状が悪い時は使用を控える
皮膚科での頭皮アトピー治療
フケ、かゆみ、かさぶたといった症状は、アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患(脂漏性皮膚炎、尋常性乾癬など)でも起こることがあります。
セルフケアを続けていても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、自己判断を続けず、皮膚科専門医を受診してください。
セルフケアで改善しない場合は受診を
シャンプーや生活習慣を見直しても、強いかゆみが続く、フケが減らない、かさぶたやジクジクした湿疹が広がる、といった場合は、炎症が慢性化している可能性が高いです。
かき壊しによって細菌感染(とびひなど)を併発すると、治療が複雑になるので、適切な治療を受けかゆみと炎症の悪循環を断ち切りましょう。
皮膚科で行う主な検査
皮膚科では、まず問診(症状の経過、アトピー素因の有無、使用中のシャンプーなど)と視診(頭皮の状態の確認)を行います。
必要に応じて、フケの一部を採取して顕微鏡で真菌(カビ)の有無を調べる検査や、アレルギーの原因を探るために血液検査(IgE抗体価など)を行うこともあります。
検査を通じて、症状の原因がアトピーによるものか、他の疾患の可能性があるかを診断することが可能です。
外用薬(ステロイドなど)による治療
頭皮アトピーの治療の基本は、薬物療法による炎症の鎮静化で、最も一般的に用いられるのは、ステロイド外用薬です。頭皮は髪の毛があるため、軟膏やクリームよりも塗りやすいローションタイプやスプレータイプが処方されます。
ステロイドには炎症を強力に抑える作用があり、かゆみや赤みを迅速に改善します。
頭皮用外用薬の主な種類
| 薬剤の種類 | 主な作用 | 剤形(頭皮用) |
|---|---|---|
| ステロイド外用薬 | 抗炎症作用(かゆみ、赤みを抑える) | ローション、スプレー、シャンプー剤 |
| 非ステロイド性抗炎症薬 | 比較的軽度な炎症を抑える | ローション |
| 抗ヒスタミン薬(内服) | かゆみを抑える | 錠剤、シロップ |
このほか、かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服を併用することもあります。
ステロイドに抵抗がある方もいますが、炎症を長引かせるほうが皮膚へのダメージは大きくなるので、まずは短期間でしっかり炎症を抑え、症状が改善したら保湿ケアや低刺激シャンプーでの維持に切り替えていくのが良い方法です。
アトピー性頭皮に関するよくある質問
アトピー性頭皮に関して、患者さんから寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- シャンプーは毎日しない方が良いですか?
-
基本的には1日1回のシャンプーを推奨します。汗や皮脂、ホコリ、花粉などの汚れは、放置すると頭皮への刺激物となり、アトピーを悪化させる原因になります。
洗浄力の強すぎるシャンプーを避け、低刺激性のシャンプーで優しく洗い、しっかりすすぐことが大切です。
ただし、症状が非常に悪化していてシャンプーがしみる場合や、ほとんど汗をかかなかった日などは、医師の指示に従い、ぬるま湯での洗浄(湯シャン)にとどめる日があっても良いでしょう。
- 頭皮がベタつくのに乾燥しているのはなぜですか?
-
これは、インナードライ(乾燥性脂性肌)と呼ばれる状態かもしれません。
頭皮のバリア機能が低下して内部が乾燥すると、皮膚は水分を補おうとして、かえって皮脂を過剰に分泌することがあり、表面はベタつくのに、角質層は乾燥しているという状態になります。
この場合、皮脂を取り除こうと洗浄力の強いシャンプーを使うと、さらに乾燥が進み悪循環に陥ります。低刺激のシャンプーで優しく洗い、洗髪後に頭皮用の保湿ローションでしっかり保湿ケアをすることが改善につながります。
- 子どもの頭皮アトピーで気をつけることは?
-
大人と同様に、低刺激のシャンプーで優しく洗うことが基本です。子どもは汗をかきやすいため、汗をかいたらこまめにシャワーで流すか、濡れタオルで拭き取ってあげてください。
また、かゆい時に無意識に掻いてしまうため、爪は常に短く切っておき、シャンプーや保湿剤は、子ども専用の低刺激製品を選びましょう。
かさぶたを無理に剥がしたりせず、症状が続く場合は小児科または皮膚科を受診し、適切な外用薬を処方してもらうことが大切です。
- コンディショナーやトリートメントは使っても良いですか?
-
使用しても問題ありませんが、使い方に注意が必要です。コンディショナーやトリートメントは、主に髪の毛の保護や補修を目的としています。成分が頭皮に残ると、毛穴を詰まらせたり、刺激になったりすることがあります。
アトピー性頭皮の方は、製品を頭皮に直接つけず、毛先を中心になじませるように使用し、その後、シャンプー時と同様に、頭皮に成分が残らないよう、ぬるま湯で徹底的にすすぎ流してください。
以上
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