アトピー性皮膚炎による乾燥は、一般的な乾燥肌とは根本から異なります。
バリア機能の障害が皮膚の深部にあるため、どれほど丁寧にケアしても保湿剤の選び方や塗り方が合っていなければ改善しません。
この記事では、アトピー特有の乾燥が起こるしくみから、普通の乾燥肌との見分け方、医療機関でも推奨される保湿剤の成分・剤型の選び方、正しい塗り方、日常で避けるべき行動まで、わかりやすく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
アトピーの乾燥がひどくなるのは皮膚バリア機能の障害が原因
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が遺伝的な要因や慢性的な炎症によって損なわれています。健康な肌と同じケアをしても水分が逃げ続ける悪循環に陥りやすく、それがアトピーの乾燥はひどくなりやすい、根本的な原因です。
皮膚バリア機能とは何か、まずここから押さえたい
皮膚の最も外側にある角層は、細胞とその間を埋める脂質でできた精巧な防護壁です。健康な角層は水分をしっかり保持しながら、アレルゲンや細菌・刺激物の侵入を防ぎます。
セラミドは角層細胞間脂質の主成分で、いわば「レンガの目地」のような役割を果たしています。アトピー性皮膚炎の方では、この角層に含まれるセラミド量が少なく、構造がまばらになりやすいことが研究で明らかになっています。
結果として水分がスポンジの穴から抜けるように失われ続け、皮膚が常に乾燥した状態になります。この皮膚の水分保持力の低さが、アトピー特有のひどい乾燥を生み出しているのです。
炎症と乾燥が互いに悪化させ合う負のサイクル
バリア機能が低下すると、外部の刺激物やアレルゲンが皮膚内に侵入しやすくなり、免疫系がこれに反応して炎症を起こし、かゆみが生じます。
かいてしまうことで角層がさらに傷つき、バリア機能がさらに低下する。この繰り返しが、アトピーの乾燥を慢性化させる最大の要因です。
炎症を放置したまま保湿だけ頑張っても、根本的な改善が難しい理由はここにあります。皮膚科での治療と保湿ケアを両輪で進めることの大切さを、最初に認識しておいてください。
アトピーの乾燥が季節や環境で大きく変動する理由
バリア機能が弱い肌は、外気の湿度変化を直接受け冬場の、低湿度や暖房による乾燥、夏場の汗とその蒸発による水分の急激な喪失、どちらもアトピーの乾燥を悪化させます。
エアコンが稼働した室内でも湿度が40%を下回ると、皮膚からの水分蒸発量(経皮水分蒸散量、TEWL)が著しく増加するとされています。
室内の湿度を50〜60%程度に維持することが、アトピーの乾燥を抑えるための環境整備の基本です。加湿器の活用や濡れタオルを干すなど、すぐに実践できる方法を取り入れてみてください。
気温・湿度の変化に敏感な季節の変わり目には、保湿ケアを一段階丁寧にすることも症状の安定につながります。また、花粉の飛散や黄砂・PM2.5などの大気中の微粒子も、バリア機能が弱い肌には大きな刺激になります。
外出時には皮膚の露出を減らし、帰宅後は洗顔・手洗いを行い保湿ケアをする習慣が、季節性の悪化を防ぎます。アトピーの乾燥ケアは単なる保湿剤を塗るという行為にとどまらず、生活全体の見直しと連動したトータルなケアが必要です。
アトピーの乾燥肌と普通の乾燥肌、見た目が似ていても中身は全く違う
アトピーと普通の乾燥肌は、白い粉を吹いたような外観や皮膚の突っ張り感など、表面的な症状が似ていることがあります。しかし、原因は根本的に異なり、ケアの方法も変わってきます。正しい違いを理解することが、ケアを見直す出発点です。
普通の乾燥肌が起きる仕組み
普通の乾燥肌は、加齢・季節の変化・洗いすぎ・栄養不足などの要因で皮脂や天然保湿因子(NMF)が減少した状態です。バリア機能自体に問題があるわけではないため、原因を取り除いて保湿ケアを行えば比較的回復しやすい傾向があります。
市販の保湿クリームをこまめに塗るだけでも肌の状態が改善してくることが多く、生活習慣の見直しと組み合わせることで短期間で落ち着くケースも少なくありません。
乾燥肌の段階であれば、ドラッグストアで入手できるケア製品でも十分に対応できることが多いです。一般的に、乾燥肌は秋から冬にかけて悪化し、保湿をしっかり行うことで翌春には落ち着くという季節的な変化を示します。
年齢とともに皮脂分泌量が減少する40代以降の方や、透析を受けている方、糖尿病の方なども乾燥肌になりやすく、このような場合も、根本にアトピーがあるかどうかの確認は大切です。
アトピーの乾燥肌が普通の乾燥肌より治りにくい本当の理由
アトピー性皮膚炎では、バリア機能の障害が慢性的な炎症と深く絡み合っています。保湿剤を丁寧に塗っても炎症が続いている限り角層の修復が追いつかず、かゆみで掻き壊すたびに悪化します。
また、フィラグリン(角層の水分保持に重要なタンパク質)の遺伝子変異を持つ方ではセラミドの産生自体が低下していることも確認されており、これが「いくらケアしても治らない」という感覚につながっています。
こうした構造的な問題があるため、市販の保湿剤のみでは限界があり、炎症を抑える治療薬との組み合わせが必要になることが多く、自己流のケアで改善が見られない場合は、一度皮膚科に相談することが大事です。
自分の乾燥がアトピーによるものかどうかを確かめるポイント
アトピーがあるかどうかを判断する際、乾燥だけでなく赤み・湿疹・強いかゆみが伴う、特定の部位に繰り返し症状が出る、幼少期からの症状がある、家族にアレルギー疾患がある、に複数当てはまる場合は、皮膚科への受診を検討してください。
自己判断でアトピーと決めつけてケアを続けることは、接触性皮膚炎・乾癬・脂漏性皮膚炎など別の皮膚疾患を見落とすリスクにもなります。保湿剤の効果を感じられない乾燥が続く方は、専門医の診断を受けることが回り道のようで実は近道です。
アトピー性皮膚炎の診断は、症状の部位・パターン・経過・家族歴などを総合的に評価して行われます。「市販薬でなんとかしよう」と長期間放置することで症状が慢性化し、皮膚が厚くなってしまうこともあります。
| 比較項目 | 普通の乾燥肌 | アトピーの乾燥肌 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 皮脂・保湿因子の減少 | バリア機能障害+免疫異常 |
| 炎症の有無 | ほぼなし | あり(赤み・湿疹・じくじく) |
| かゆみの程度 | 軽度または無し | 強く慢性的に続く |
| 好発部位 | 全身の乾燥しやすい部位 | 肘内側・膝裏・首など特定部位 |
| 市販保湿剤の効果 | 比較的得られやすい | 単独では限界がある |
| 対処のポイント | 保湿と生活習慣の改善 | 治療薬+保湿の両輪ケア |
アトピーのひどい乾燥肌に合った保湿剤の成分と剤型の選び方
保湿剤はどれも同じではありません。アトピー性皮膚炎の乾燥肌には、成分と剤型の選択が肌の状態を大きく左右します。「とりあえず保湿すればいい」という発想から一歩進み、肌状態に合った製品を選ぶことが、ケアの質を上げる第一歩です。
セラミド配合の保湿剤がアトピーに勧められる根拠
セラミドは角層の細胞間脂質の主成分で、水分を抱え込む働きと細胞同士をつなぐ働きを持ちます。アトピーの方ではセラミドが健常な方の半分以下しかないことが報告されており、外から補うことでバリア機能の回復を助ける効果が期待できます。
特に「ヒト型セラミド」と呼ばれる、人の皮膚と同じ構造を持つ成分は吸収されやすいです。市販品にもセラミド配合の保湿剤は増えてきましたが、濃度や種類によって効果には差があります。
商品ラベルに「セラミドNP」「セラミドAP」「セラミドEOP」といった成分名が記載されているものは、ヒト型セラミドとして肌なじみが良いとされています。
皮膚科で処方されるヘパリン類似物質含有製剤と組み合わせて使うことも、担当医と相談しながら検討しましょう。
ヘパリン類似物質・ワセリン・尿素配合製剤の特徴と使い分け
ヘパリン類似物質は、水分を引き寄せる吸湿作用と皮膚内に水分を閉じ込めるエモリエント作用を併せ持ちます。アトピーの保湿に広く用いられており、複数の剤型があるため、部位や季節によって使い分けられる柔軟性も魅力のひとつです。
ワセリンは皮膚表面に油の膜を形成して水分の蒸発を物理的に防ぎます。刺激が少ない半面、べたつきが強く夏場は使いにくいと感じる方もいます。
尿素配合製剤は古い角質を柔軟にする作用が高い一方、傷や湿疹のある部位に塗ると刺激を感じやすいため、炎症のない慢性的な乾燥部位への使用が中心です。
| 保湿剤の種類 | 主な働き | 向いている場面 |
|---|---|---|
| セラミド配合剤 | バリア機能の修復補助 | 日常的な全身保湿・予防的ケア |
| ヘパリン類似物質 | 吸湿+エモリエント作用 | 広範囲の乾燥・医師の処方下での使用 |
| ワセリン | 閉塞性の水分蒸発防止 | 刺激を避けたい部位・冬の乾燥対策 |
| 尿素配合剤 | 角質の柔軟化 | 炎症のない慢性乾燥・手足のかかと |
クリーム・ローション・軟膏、剤型ごとのメリットとデメリット
同じ成分でも剤型によって使い心地と保湿効果の持続性は大きく変わります。軟膏は油分が多くべたつきますが密閉性が高く保湿力は高め、湿疹が落ち着いた乾燥部位や就寝前のケアに向いています。
クリームは使用感が良く日常使いしやすい一方、防腐剤を含む製品では敏感な肌に刺激を与えることがあります。ローションは伸びがよく広範囲に塗りやすいですが、保湿効果の持続時間は軟膏やクリームより短めです。
季節・部位・肌の状態を考慮して使い分けることが、保湿効果を最大限に引き出すコツで、1種類の保湿剤だけで全身をカバーしようとするより、部位によって剤型を使い分けるアプローチが有効になります。
たとえば、顔や首など薄い皮膚にはローション、体幹や腕・脚にはクリームや軟膏、特に乾燥がひどい関節部位や手足には密閉性の高い軟膏を選ぶという組み合わせが、多くの方にとって現実的かつ効果的な方法です。
アトピーの乾燥肌に保湿剤を塗るタイミングと正しい量の目安
どれほど良い保湿剤を選んでも、塗るタイミングや量が不十分だと効果は半減します。アトピー性皮膚炎の管理において、保湿剤の正しい使い方は治療の一部として位置づけられており、日々の生活に無理なく組み込むことが改善への近道です。
入浴後10分以内が保湿のゴールデンタイムである理由
入浴で角層が水分を含んだ直後は、保湿剤が浸透しやすい状態になっていますが、何もしなければ蒸発によって急速に失われます。入浴後10分以内に保湿剤を塗ると、角層内に水分を閉じ込める効果が高まります。
タオルで水分を拭き取る際も、ゴシゴシこするのではなく軽く押さえるだけで角層へのダメージを大幅に減らせます。入浴後はすぐ保湿剤が塗れるよう、あらかじめ手の届く場所に置いておく工夫が、ケアを長続きさせるポイントです。
1回に塗る量の目安はフィンガーチップユニットで確認
保湿剤の量の目安として、医療の現場でよく用いられるのが「フィンガーチップユニット(FTU)」という考え方です。
人差し指の先端から第1関節までチューブから押し出した量(約0.5g)が1FTUで、手のひら2枚分の面積をカバーするとされていて、顔全体なら1FTU、体幹(前面)なら7FTUが目安になります。
多くの方は「塗ったつもり」の量が実際には不足しています。意識的に量を増やすことが大切で、塗り終わった肌がしっとりとした感触になる程度を目安にするとよいでしょう。
特に、肘の内側・膝の裏・首・耳の後ろといったアトピーの炎症が出やすい部位は、薄く塗ってしまいがちで、こうした部位には少し多めを意識して丁寧に広げ、塗り終わりの肌に白さや余分なべたつきが残らない程度が適量の目安です。
1日に何回塗るべきか、継続するためのコツ
アトピーの保湿は1日2回(朝・入浴後)を基本とし、乾燥がひどい時期や冬場は、昼間も乾きを感じたタイミングで塗り足すと肌の状態が安定しやすくなります。仕事中や外出先での保湿には、持ち歩きやすいチューブタイプのクリームが便利です。
継続の鍵は、塗り忘れを防ぐ仕組みづくりにあります。洗面台・バッグ・デスクの引き出しなど、生活の動線上に保湿剤を置くことで、塗り忘れが自然と減っていきます。
子どもの場合は、学校の先生に保湿ケアの必要性を伝え、体育の授業後や手洗い後に塗れる環境を整えてもらうことも有効です。アトピーの乾燥ケアは、毎日のルーティンとして位置づけることで、無理なく継続できるようになります。
| 塗るタイミング | 目的・ポイント |
|---|---|
| 入浴後10分以内 | 水分蒸発を防ぐ最重要タイミング |
| 朝(洗顔・洗手後) | 日中の乾燥・外部刺激への備え |
| 乾燥を感じたとき随時 | 塗り足しで水分量を最低限確保する |
| 就寝前 | 睡眠中の経皮水分蒸散を抑える |
アトピーのひどい乾燥を悪化させるNG行動と日常で避けるべき刺激
良い保湿剤を正しく使っていても、日常の何気ない行動が乾燥と炎症を悪化させていることがあります。アトピーの乾燥肌を安定させるには、やってはいけない行動を把握して、日常から一つひとつ取り除いていくことが大切です。
洗いすぎと熱いお湯がバリア機能をさらに壊す
皮膚の洗いすぎは、皮脂や角層の脂質を必要以上に取り除いてしまい、洗浄力の強い石けんやボディソープでゴシゴシ洗う習慣は、アトピーの乾燥を大幅に悪化させます。低刺激の洗浄剤を選んで手で泡立てると、皮膚への負担は大きく減ります。
熱いお湯は血管を拡張させてかゆみを引き起こし、皮脂を溶かして乾燥を促進します。入浴は38〜40℃程度のぬるめのお湯を使い、浸かる時間は10〜15分を目安にすることが、皮膚へのダメージを最小限に抑えるポイントです。
衣類の素材と洗剤選びが乾燥肌に与える見落としがちな影響
化学繊維や毛素材の衣類は、静電気の発生や摩擦によって皮膚を刺激しやすく、かゆみを誘発することがあります。アトピーの方には綿100%素材が基本的に推奨されます。
衣類の内側に付いたタグは皮膚への刺激になりやすいため、取り外すか、裏返しにして着用するだけで刺激が軽減できます。
洗剤の成分が衣類に残ると、かゆみを引き起こすことがあるので、すすぎを十分に行い、無添加・低刺激タイプの洗剤を選ぶとよいでしょう。柔軟剤は皮膚に残りやすい成分を含むものもあるため、使用を一度やめてみることも検討してください。
特に避けたい日常の刺激
- ナイロンタオルや固いブラシによる皮膚の摩擦洗い
- 42℃以上の熱いお湯での長時間入浴
- アルコールや防腐剤を多く含む化粧水・スキンケア製品の使用
- 香料入り洗剤・柔軟剤によって衣類に残る刺激成分
- 衣類内側に縫い付けられたタグやゴム部分による物理的な摩擦
ストレスと睡眠不足がアトピーの乾燥を悪化させるしくみ
精神的ストレスは、コルチゾールなどのストレスホルモンを増加させ、免疫系のバランスを乱します。アトピー性皮膚炎はもともと免疫の過剰反応が関与しているため、ストレスが加わると炎症が増悪しやすくなります。
かゆみが増してかき壊すことで乾燥が悪化し、さらに睡眠が乱れるという連鎖が起きやすい状態です。
睡眠中は成長ホルモンが分泌されて皮膚の修復が行われますが、睡眠不足や浅い眠りが続くと皮膚の回復が追いつかず、乾燥が慢性化しやすくなります。
かゆみで眠れない夜が続く場合は、就寝前の保湿ケアをより丁寧に行い、必要であれば医師にかゆみのコントロール方法について相談することも大切です。
また、入浴後にリラックスする時間を持つことで副交感神経が優位になり、睡眠の質が向上するとともに、ケアを楽しむ余裕が生まれます。アトピーの乾燥ケアは自分の皮膚と向き合うセルフケアの時間として捉えると、長続きしやすいです。
子どものアトピー乾燥肌への保湿ケア、親が知っておきたい注意点
子どものアトピー性皮膚炎による乾燥肌は、大人と同様に早期からの保湿ケアが重要です。ただし、使う製品・量・塗り方には年齢に応じた配慮が必要で、乳幼児では特に使用成分への注意が求められます。
乳幼児期からの保湿ケアがアトピー予防に果たす役割
近年の研究では、アトピーリスクの高い乳児に対して生後早期から保湿剤を継続的に塗ることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げる可能性があることが示されています。
皮膚バリアが壊れた状態が長く続くほど、食物アレルギーなど他のアレルギー疾患のリスクも高まるとされており、早期からの皮膚ケアは将来の健康を支える取り組みです。
ただし、乳児の肌に合うかどうかは個人差もあるため、まずは皮膚科医と相談しながら適切な製品を見つけていきましょう。焦らず、長期的な目線でケアを継続することが大切です。
特に、両親のどちらかがアトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎などを持つ場合、子どもへの遺伝リスクが高まるとされています。
リスクが高い乳児ほど、出生後からの積極的な保湿ケアが将来のアレルギーマーチ(アレルギー疾患が次々と現れる状態)を予防する可能性があると考えられています。
子どもの肌に使う保湿剤を選ぶときに確認したいこと
特に乳幼児の皮膚は大人より薄く成分の吸収率が高いため、香料・着色料・防腐剤が少ない製品を選ぶことが望ましく、市販のベビー用保湿剤でも医師が処方するヘパリン類似物質製剤でも、低刺激・無添加であることが製品選びの基準です。
新しい保湿剤を使い始める際は、腕の内側など目立たない部位に少量塗って24〜48時間様子を見るパッチテストを行ってください。赤みや湿疹が出た場合はすぐ使用を中止し、皮膚科医に相談しましょう。
| 年齢の目安 | ケアのポイント | 注意事項 |
|---|---|---|
| 乳児期(0〜1歳) | 入浴後に全身保湿を習慣化する | 無添加・低刺激製品を選択 |
| 幼児期(1〜5歳) | 乾燥しやすい部位を重点的に保湿 | 塗る行為をポジティブな体験に |
| 学童期(6歳〜) | 自分で塗る習慣を少しずつ育てる | 学校への保湿剤持参と塗り忘れ対策 |
子どもへの保湿剤の塗り方と親が気をつけたいポイント
子どもの保湿ケアを習慣にするには、お風呂上がりの決まった時間に、リラックスした雰囲気で行うことが大切です。塗る行為をポジティブな体験として積み重ねることで、子ども自身も自然と受け入れてくれるようになります。
塗る際は、手のひらで体温を伝えながらなでるように広げます。関節の内側・首・耳の後ろなど湿疹が出やすい部位は念入りに行いましょう。学童期以降になれば、自分で塗る習慣をつけさせることで将来のセルフケア力にもつながります。
アトピーの乾燥肌を治療薬と保湿剤で同時にケアするプロアクティブ療法
アトピー性皮膚炎の管理で近年注目されているのがプロアクティブ療法です。炎症が出てから対処するのではなく、寛解(症状が落ち着いた状態)を維持するために予防的に治療薬を使う方法で、保湿剤との組み合わせが成功の鍵になります。
炎症を先手で抑えることで乾燥の悪化を断ち切る
従来の「症状が出たら塗り、よくなったらやめる」というやり方(リアクティブ療法)では、炎症が繰り返し再燃しやすいという課題がありました。
一方、プロアクティブ療法では症状が落ち着いた後も週2〜3回の頻度でステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などを炎症の出やすい部位に継続的に塗り、再燃を予防します。
炎症が繰り返されるほどバリア機能は低下し、乾燥が慢性化します。先手で炎症を抑え続けることで、乾燥と炎症の負のサイクルを断ち切る効果が期待できます。
プロアクティブ療法の基本的な流れ
- 急性期:ステロイド外用薬などで炎症を速やかに鎮静化させる
- 寛解後:週2〜3回の頻度で同じ部位に継続使用しながら保湿を並行する
- 長期安定期:保湿中心のスキンケアに移行し、再燃がないか経過を観察する
保湿剤と治療薬を一緒に使う際の塗り方の順番
保湿剤と外用薬(ステロイドや免疫調節薬)を同時に使う場合、外用薬を先に塗り、その後に保湿剤を重ねることが推奨されています。先に保湿剤を塗ると薬の吸収が変化する可能性があるためで、塗る順番は意外と見落とされがちなポイントです。
外用薬と保湿剤を同時に重ねるか、数分おいてから塗るかは担当医の指示に従ってください。保湿を欠かさないことが炎症の再燃を防ぐ大きな柱となり、毎日の保湿の習慣が、薬の効果を最大限に引き出すことにもつながります。
ステロイド外用薬の塗りすぎへの恐怖感から、少量しか塗らないために薬効が不十分になり、炎症が長引き乾燥が悪化するというケースが少なくありません。使う量や頻度について不安がある場合は、担当医に率直に相談しましょう。
皮膚科でのフォローアップを続けることの大切さ
プロアクティブ療法は、治療薬の種類・強さ・使用頻度について医師の判断が必要なため、セルフケアだけでは実施が難しい方法です。
自己判断でステロイド外用薬を長期間使い続けることには皮膚萎縮などの副作用リスクがある一方、怖がって全く使わないでいると炎症が悪化して乾燥が進みます。
定期的に皮膚科を受診して肌の状態を医師に確認してもらいながら、保湿ケアと治療薬の使用を状態に応じて調整することが、アトピーの乾燥肌を長期的に安定させる道です。
よくある質問
- アトピー性皮膚炎の乾燥肌に市販の保湿剤は効果がありますか?
-
市販の保湿剤でも、アトピー性皮膚炎の乾燥にある程度の効果は期待できます。特にセラミド配合の製品や、低刺激・無添加処方のものは角層のバリアを補う働きが期待でき、日常的な保湿ケアとして活用できます。
ただし、アトピーには炎症が伴うことが多く、市販の保湿剤だけで炎症を鎮めることはできません。かゆみが強い・赤みが続く・掻き壊しがある状態であれば、皮膚科で処方薬と組み合わせたケアを検討することが大切です。
- アトピーの乾燥肌に保湿剤を塗りすぎると悪化することはありますか?
-
適切な保湿剤を正しく使っている限り、塗りすぎが乾燥そのものを悪化させることは基本的にありません。塗る量が少なすぎることの方が問題になるケースが多く、十分な量を使うことが推奨されています。
ただし、防腐剤・香料・アルコールを多く含む製品や、尿素配合製剤を湿疹のある部位に使うと刺激になることがあります。成分の確認と、少量からのパッチテストを習慣にすることが安心への近道です。
- アトピーによるひどい乾燥肌は完治しますか?
-
アトピー性皮膚炎は体質的な素因(バリア機能の弱さ・免疫の過剰反応)が関わっているため、完治という概念は普通の乾燥肌とは異なります。
ただし、適切な治療と保湿ケアを継続することで、症状がほとんど気にならない寛解状態を長期間維持することは十分に可能です。
子どもの場合、成長とともに症状が軽快することも少なくありません。大人の場合も、環境の整備・保湿の習慣化・皮膚科でのフォローアップを地道に続けることで、日常生活への影響を大幅に減らすことができます。
- アトピーの乾燥肌に食事や栄養素は関係しますか?
-
食事と皮膚の健康は無関係ではありません。オメガ3系脂肪酸(青魚・亜麻仁油など)は炎症を抑える方向に働くとされており、皮膚の脂質環境の改善に関与する可能性が指摘されています。
ビタミンD・亜鉛・ビオチンなども皮膚のバリア機能に関係する栄養素として研究されています。
ただし、特定の食品を食べれば乾燥が劇的に改善するというわけではなく、バランスの良い食事全体が皮膚の健康を支えます。
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