052-228-1280 WEB予約 LINE予約

首にできた「しこり」は粉瘤かも?原因と皮膚科での手術を含めた治療法

首にできた「しこり」は粉瘤かも?原因と皮膚科での手術を含めた治療法

ふと首筋に触れたとき、皮膚の下に硬い感触を覚えて不安を感じた経験はないでしょうか。痛みがないからといって放置してしまいがちな首の隆起ですが、多くの場合、粉瘤と呼ばれる良性の腫瘍です。

見た目の問題だけでなく、ある日突然炎症を起こして強い痛みを伴うケースも少なくありません。ご自身で判断して無理に触ったり潰したりすることは大きなリスクを伴います。

この記事では、首にできる粉瘤の原因から、似た症状を持つ他の疾患との違い、手術を含めた医学的な解決策について詳しく解説していきます。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

運営ソーシャルメディア(SNSでは「こばとも」と名乗ることもあります)

XYouTubeInstagramLinkedin

著書一覧
経歴・プロフィールページ

こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

首のしこりの正体とは?

首周りに違和感を覚えて鏡を見ると、小さな膨らみができていることに気づくことがあります。単なるニキビなのか、それとも別の皮膚トラブルなのかを見極めるには、皮膚の下で何が起きているかを知る必要があります。

粉瘤ができる仕組みと皮膚の構造

皮膚は常に新陳代謝を繰り返し、古くなった角質は垢となって剥がれ落ちていきますが、何らかのきっかけで皮膚の表面にある表皮細胞が真皮と呼ばれる皮膚の深い層に入り込んでしまうことがあります。

本来であれば外に排出されるべき角質や皮脂が、皮膚の下にできた袋状の組織の中に溜まり続けてしまう状態が粉瘤です。

アテロームや表皮嚢腫とも呼ばれるこの腫瘍は、出口のない風船の中に老廃物を詰め込んでいくようなものであり、時間が経過するとともに内容物が増えて少しずつ大きくなる傾向があります。

袋の内側は表皮と同じ構造をしているため、角質を作り続ける機能を持ったまま皮膚の内部に留まってしまうのです。

皮膚の下で起こる変化と進行

段階状態特徴
初期段階微小な袋の形成皮膚の下に小さな硬さを感じる程度で、見た目には分かりにくいことが多いです。
成長期老廃物の蓄積袋の中に角質や皮脂が溜まり、徐々に隆起が目立ち始めます。中央に黒い点が見えることもあります。
停滞期大きさの固定ある程度の大きさで成長が止まることもあれば、数年かけてゆっくりと巨大化することもあります。

首にできやすい理由と生活習慣の影響

首という部位は、衣類の襟元やネックレスなどのアクセサリーによる摩擦を受けやすい場所です。皮膚への物理的な刺激が繰り返されることは、毛穴の出口が詰まったり、表皮が傷ついて内側に入り込んだりするきっかけになり得ます。

また、首は汗腺や皮脂腺が多く分布しているため、老廃物の排出量そのものが多いエリアでもあります。

さらに、日々の洗顔や入浴時に洗い残しが発生しやすかったり、整髪料などが付着したままになったりすることも、毛穴詰まりを起こす要因です。

うなじ周辺や耳の下などは自分では確認しづらいため、気づかないうちに袋が形成され、ある程度の大きさになってから初めて自覚するというパターンが多く見られます。

触った感触や見た目の特徴的な変化

粉瘤を触ったときの特徴として、皮膚の下にコリコリとした半球状の塊があることが挙げられます。

皮膚と癒着しているため、つまむと皮膚と一緒に持ち上がりますが、下の筋肉などの組織とは癒着していないため、指で押すと少し動くような可動性があるのが一般的です。

腫瘍の中央部分にヘソと呼ばれる黒い点が見られることがありますが、これは皮膚の開口部が酸化した角質で塞がれているものです。

強く圧迫すると、こ開口部からドロドロとした内容物が出てくることがあり、独特の不快な臭いを放ちます。この臭いは、袋の中に溜まった古い角質や皮脂が腐敗したことによるものです。

粉瘤と間違いやすい他の首の病気

皮膚の隆起すべてが粉瘤であるとは限りません。中には治療を急ぐ必要がないものもあれば、早急に専門的な検査を要するものも混在しています。

自己判断での安易なケアを避けるためにも、類似した症状を持つ疾患との細かな違いを理解しておくことが大切です。

脂肪腫との見分け方と違い

脂肪腫は、脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。粉瘤との最大の違いは、発生する深さと触感にあります。

粉瘤は皮膚の比較的浅い部分にできるため硬さを感じやすいのに対し、脂肪腫はより深い皮下組織にできることが多く、触ると柔らかいゴムのような感触があり、また、粉瘤にあるような中央の黒い開口部は脂肪腫には見られません。

脂肪腫は皮膚と癒着していないことが多いため、皮膚の上から触ると腫瘍の表面がツルツルしており、皮膚の下でスルスルと逃げるように動く特徴があります。

どちらも良性ですが、治療法のアプローチが異なるため、エコー検査などで深さや性状を確認することが必要です。

粉瘤と他の腫瘤の比較

疾患名触感可動性
粉瘤やや硬く、弾力がある皮膚と一緒に動く
脂肪腫柔らかく、扁平なことが多い皮膚の下で滑らかに動く
石灰化上皮腫石のように非常に硬い皮下でゴツゴツしている

リンパ節の腫れが原因の場合

首には多数のリンパ節があり、風邪を引いたときや虫歯があるとき、あるいは体調が優れないときに、反応して腫れることがあり、これをリンパ節炎と呼びます。

リンパ節の腫れは、多くの場合、複数のしこりが連なって触れたり、押すと痛みを感じたりします。粉瘤が皮膚の一部として浅い場所に感じるのに対し、リンパ節はもう少し奥にあるような感覚を覚えます。

また、リンパ節の腫れは原因となっている感染症や炎症が治まれば自然に小さくなりますが、粉瘤は自然治癒して消滅することはありません。短期間で大きくなったり小さくなったりを繰り返す場合は、リンパ節の反応である可能性を考慮します。

悪性腫瘍の可能性を考えるサイン

極めて稀ではありますが、首のしこりが悪性腫瘍、いわゆるがんの転移や原発巣である可能性もあります。悪性のしこりは、石のように硬く、周囲の組織と癒着して全く動かないという特徴を持つことが多いです。

また、表面が凸凹していたり、急激にサイズが大きくなったりする場合も注意が必要で、痛みがないからといって安心はできません。

無痛のまま急速に成長するものこそ、精密な検査を要することがあり、皮膚科では視診や触診だけでなく、必要に応じてダーモスコピーという拡大鏡を使ったり、超音波検査を行ったりして、良性か悪性かの鑑別を慎重に行います。

少しでも不安な要素がある場合は、組織の一部を採取して病理検査を実施することもあります。

医師へ相談すべき注意サイン

  • しこりが短期間で急激に大きくなっている
  • 触ると石のように硬く、全く動かない
  • 表面がただれたり、出血したりしている
  • 首のしこり以外に、発熱や体重減少などの全身症状がある
  • 過去に悪性腫瘍の治療を受けた経験がある

炎症性粉瘤への進行リスク

痛みのないしこりをそのままにしておくと、ある日突然激痛に襲われることがあり、これは袋の内部で細菌感染が起きたり、袋が破れて内容物が漏れ出したりすることで生じる強い炎症反応です。

静かな爆弾とも言えるこの状態がどのような結果を招くのかを見ていきましょう。

赤みや痛みが現れる炎症の兆候

通常の状態であれば痛みを感じない粉瘤ですが、袋の中に細菌が侵入すると感染を起こし、炎症性粉瘤と呼ばれる状態へと変化します。初期段階では患部がほんのりと赤みを帯び、触れると軽い痛みや熱感を感じるようになります。

この段階で処置を行えば症状を抑えることも可能ですが、放置すると炎症は急速に拡大し、細菌が増殖することで袋の中に膿が溜まり始め、ズキズキとした脈打つような痛みに変わっていきます。

首は常に動かす部位であるため、少し首を傾げたり服が擦れたりするだけでも強い不快感を伴うようになり、日常生活に支障をきたすことも珍しくありません。

破裂した際のリスクと膿の臭い

炎症が進み、袋の内圧が限界に達すると、皮膚の下で袋が破裂してしまうことがあり、皮膚表面が破れて内容物が外に噴き出すこともあります。

袋の中に溜まっていた角質や皮脂は、体にとっては異物として認識されます。これが袋の外、真皮や皮下組織に漏れ出すと、異物反応と呼ばれる激しい拒絶反応が起こり、患部は大きく腫れ上がり、赤紫色の痛々しい見た目となります。

また、破裂した際に流れ出る膿や内容物は、腐敗したチーズや銀杏に例えられるような強烈な悪臭を放ち、臭いは周囲の人が気づくほど強いです。

炎症レベルによる症状の違い

レベル自覚症状見た目の変化
軽度押すと少し痛いわずかに赤くなる
中等度常にズキズキ痛む明らかに赤く腫れ、熱を持つ
重度激痛で触れられない皮膚が破れ、膿や内容物が排出される

自分で潰す行為が招く深刻な事態

膨らみが気になって、つい指で押し出そうとしてしまう患者さんが多くいらっしゃいますが、絶対に避けるべき行為です。無理に圧力をかけると、袋の壁が皮膚の中で破裂し、内容物が周囲の組織に散らばってしまいます(皮下破裂)。

皮下破裂により炎症の範囲が広がり、治癒までの期間が大幅に長引くことになり、また、汚れた手や不衛生な器具で触れることで新たな細菌を送り込んでしまい、感染を悪化させる原因にもなります。

さらに深刻なのは、無理に潰すことで袋の形状が複雑に変形したり、周囲の組織と強く癒着したりしてしまうことです。

こうなると、いざ手術で取り除こうとした際に完全な摘出が難しくなり、傷跡が大きくなったり、再発のリスクが高まったりするという悪循環に陥ります。

医療機関を受診するタイミングと検査

どのタイミングで病院へ行くべきか迷うことはよくありますが、まだ小さいから、痛くないからと先延ばしにするのではなく、専門家による評価を受けることが、結果として負担の少ない治療へと繋がります。

皮膚科医が診断で重視するポイント

初診時、医師はまず視診と触診によってしこりの性質を確かめ、表面に開口部があるか、色は周囲の皮膚と同じか、あるいは青黒く透けて見えないかなどを観察します。触診では、硬さ、大きさ、可動性、そして痛みの有無を確認します。

特に重要視されるのは、しこりが皮膚のどの深さにあるかという点です。粉瘤であれば皮膚の浅い層にあるため、皮膚をつまみ上げると一緒に持ち上がりますが、より深い層にある腫瘍との鑑別は触診だけでは難しい場合もあります。

また、患者さんから「いつからあるのか」「急に大きくなったか」「過去に炎症を起こしたことがあるか」といった経過を聞き取ることも、正確な診断を下すために欠かせない情報です。

エコー検査や画像診断の必要性

首という部位は、重要な血管や神経が密集しているデリケートな場所なため、見た目だけで判断してすぐにメスを入れることはリスクを伴います。皮膚科では超音波検査(エコー検査)を用いて、皮膚の下の状態を可視化します。

エコー検査を行えば、しこりの内部が液体なのか充実性の組織なのか、袋の大きさや形はどうなっているか、そして周囲の血管との位置関係はどうなっているかをリアルタイムで確認することが可能です。

炎症を起こしている場合、膿がどの範囲まで広がっているかを把握することは、切開する位置や深さを決める上で非常に役立ちます。

エコー検査でわかること

  • しこりの正確なサイズと深さ
  • 内容物の性質(液体か個体か)
  • 袋の壁の状態(破裂していないか)
  • 周囲の血管や神経との距離
  • 他の腫瘍との鑑別診断の助け

早期発見が治療期間を短縮する理由

粉瘤治療の鉄則は、炎症を起こしていない非炎症時に手術を行うことです。炎症がなく、サイズも小さいうちであれば、傷跡を最小限に抑える手術法を選択することができます。

また、袋が周囲と癒着していないため、手術時間も短く、術後の回復もスムーズです。

炎症を起こしてから受診した場合、まずは炎症を抑えるための処置が必要となり、根治手術ができるようになるまで数週間から数ヶ月待たなければならないことがあります。

さらに、炎症を繰り返した粉瘤は周囲の組織と癒着して硬くなるため、手術の難易度が上がり、切開線も長くならざるを得ません。

根治を目指すための手術療法アプローチ

薬を塗ったり飲んだりするだけでは、袋そのものを消すことはできず、再発を繰り返さないためには、物理的に袋を取り除く外科的な処置が必要です。技術の進歩により、以前に比べて傷跡を目立たせずに治療する方法が普及しています。

くり抜き法(ヘソ抜き法)の手順

くり抜き法は、直径4ミリ程度の円筒状の特殊なメスを使い、粉瘤の開口部を中心に小さな穴を開け、内容物と袋を抜き取る手術法です。この方法の最大の利点は、傷跡が非常に小さく済むことです。

従来の紡錘形に切除する方法では、腫瘍の直径よりも長い傷跡が残ることがありましたが、くり抜き法であればニキビ跡程度の凹みや小さな線状の傷で済みます。手術時間も短く、局所麻酔で行えるため、患者さんの体への負担も少ない術式です。

首などの目立つ部位においては、整容面でのメリットが大きいため、第一選択として検討されることが多い手法です。ただし、過去に強い炎症を繰り返して癒着が激しい場合などは適応とならないこともあります。

切開排膿が必要になるケースの判断

すでに強い炎症を起こし、パンパンに腫れ上がって膿が溜まっている状態のときは、いきなり袋を摘出する手術を行うことはできません。

炎症が起きている組織は脆く出血しやすいため、無理に手術をすると傷口が閉じにくかったり、感染が広がったりするリスクがあるためです。

このような場合は、まず皮膚を少しだけ切開して、溜まっている膿を外に出す切開排膿という処置を行うと、内圧が下がり、激しい痛みは速やかに軽減します。

膿を出し切った後は、抗生剤などで炎症を鎮静化させ、数ヶ月おいて皮膚の状態が落ち着いてから、改めて残っている袋を取り除く根治手術を計画します。二段階の治療が必要になりますが、安全に治療を進めるためには避けて通れない工程です。

手術方法の比較

術式特徴適応ケース
くり抜き法傷が小さく、縫合も最小限か不要炎症がなく、癒着が少ないもの
紡錘形切除術袋を確実に一塊で取り出せる大型のものや、癒着が強いもの
切開排膿膿を出して痛みを止める応急処置急性炎症を起こして化膿しているもの

従来の紡錘形切除術を選択する場面

くり抜き法が万能かというと、そうではありません。

粉瘤が非常に大きい場合や、過去の炎症によって袋の壁が周囲の組織とガチガチに癒着している場合、皮膚の一部が薄くなって破れそうな場合などは、従来の紡錘形切除術(葉状切除)の方が適していることがあります。

紡錘形切除術(葉状切除)では、粉瘤の直上の皮膚を紡錘形(ラグビーボールのような形)に切り取り、直視下で袋を剥離して摘出します。視野が広く確保できるため、取り残しのリスクを極限まで減らすことが可能です。

首の皮膚にはシワの方向(皮膚割線)があり、このラインに沿って切開することで、術後の傷跡を目立ちにくくする工夫がなされます。

手術後の経過と日常生活での注意点

手術が終われば全て完了というわけではありません。傷跡がきれいに治るかどうかは、自宅でのアフターケアにかかっていて、首は常に動く場所だからこそ、意識して守るべきポイントがあります。

傷跡をきれいに治すためのケア方法

手術後の傷口は、最初の数日間は不安定な状態にあるので、医師の指示に従って軟膏を塗り、ガーゼや保護テープで覆う処置を継続します。抜糸が終わった後、あるいは傷がふさがった後も重要になるのがテーピングです。

傷跡には、皮膚が引っ張られる力が加わると幅が広がり、赤く盛り上がってしまう肥厚性瘢痕という性質があります。

首は動かすたびに皮膚が伸縮するため、力がかかりやすい部位です。専用のテープを傷に対して垂直に貼ることで、傷にかかる張力を軽減し、平らで白い目立たない線状の傷跡へと導くことができます。

このケアは少なくとも3ヶ月から半年程度続けることが推奨されています。

術後の生活制限の目安

  • 当日の入浴はシャワーのみとし、患部は濡らさない
  • 激しい運動や飲酒は血流を良くし出血の原因となるため数日は控える
  • 首を大きく回すストレッチなどは抜糸まで避ける
  • 患部を締め付けるような衣服(タートルネックなど)は避ける
  • 自己判断でテープを剥がさず、医師の指示通りの期間継続する

入浴や運動などの生活制限期間

手術当日は、血行が良くなると傷口から出血する可能性があるため、長湯や激しい運動、アルコールの摂取は控える必要があります。

シャワーは当日から可能な場合が多いですが、患部を直接濡らしてよいかどうかは術式や傷の大きさによって異なります。翌日以降は、泡立てた石鹸で優しく洗浄し、清潔を保つことが感染予防になりますが、ゴシゴシと擦ることは厳禁です。

運動については、ジョギング程度であれば数日後から可能になることが多いですが、首に強い力がかかるウェイトトレーニングや、プールなどの水泳は、傷が完全にふさがる抜糸後(通常1週間から10日後)まで待ちましょう。

再発を防ぐために知っておくべきこと

粉瘤は良性腫瘍であり、袋を完全に取りきればその場所から再発することは理論上ありませんが、手術時に袋の一部が微小に残ってしまうと、そこから再び袋が形成されて再発するリスクがあります。

防ぐためには、炎症を起こしていない状態で、袋がしっかりとしている時期に手術を受けることが一番です。また、粉瘤ができやすい体質の人は、別の場所に新しい粉瘤ができることがあります。

防ぐ確実な予防法は現在の医学では確立されていませんが、皮膚を清潔に保ち、摩擦などの刺激を避けることは肌トラブル全般において有益です。

もし再び似たようなしこりを見つけた場合は、小さいうちに皮膚科を受診することで、簡単な処置で済ませることができます。

炎症が起きている場合の応急処置と対応

仕事が忙しくてすぐに手術を受けられない、あるいは病院の予約日まで日数があるという状況で、しこりが痛み出したとき、どのように対処すればよいのでしょうか。

自宅でできることと、やってはいけないことの境界線を知ることで、最悪の事態を回避します。

抗菌薬や塗り薬による保存的治療

炎症が軽度であれば、抗生物質(抗菌薬)の内服や、抗炎症作用のある塗り薬を使用することで症状を落ち着かせることができます。

あくまで一時的に細菌の勢いを抑えるためのものであり、袋そのものを消す治療ではありませんが、痛みや腫れを引かせる効果は期待できます。

市販の化膿止め軟膏なども一定の効果はありますが、皮膚の奥深くまで成分が届かないことも多いため、数日使用しても改善が見られない場合は医療機関で処方される内服薬が必要です。

薬によって一度炎症が治まれば、その後に計画的に手術を行うことが可能になります。痛みが引いたからといって治ったと勘違いせず、根本的な解決に向けて計画を立てることが大切です。

使用される薬剤の種類

種類目的効果
抗生物質(内服)体内から細菌を叩く広範囲の腫れや強い痛みを抑える
抗生物質(外用)表面の菌を抑制する軽度の赤みや、破裂後の感染予防
鎮痛剤痛みの緩和炎症が強く眠れない時などの対症療法

痛みが強い時期の過ごし方

ズキズキとした痛みが強いときは、患部の血流が良くなりすぎると痛みが増強するため、入浴はぬるめのシャワーで済ませ、体を温めすぎないように注意します。飲酒も血管を拡張させるため、炎症がピークの時期は控えるべきです。

また、患部を圧迫することも痛みを悪化させる要因となるので、首周りの開いた服装を選び、寝るときは枕が患部に当たらないよう高さを調整したり、タオルで工夫したりして圧迫を避けるようにします。

どうしても痛みが我慢できない場合は、市販の鎮痛剤(痛み止め)を服用して痛みをコントロールしながら、できるだけ早く皮膚科を受診してください。

冷却処置の良し悪しと判断基準

「冷やすと痛みが和らぐ」というのは一般的な応急処置ですが、粉瘤の炎症に関しては注意が必要で、急激に冷やしすぎると、皮膚の血行が悪くなりすぎて治癒が遅れたり、皮膚組織がダメージを受けたりすることがあるためです。

もし冷やすのであれば、氷を直接当てるのではなく、保冷剤をタオルで包み、気持ちいいと感じる程度に患部に当てるのが良いでしょう。温める行為は化膿を促進させてしまうため、炎症期には絶対に避けてください。

「お風呂で温めて膿を出そう」と考えるのは大変危険で、炎症を一気に悪化させる原因となります。冷やすのはあくまで痛みを紛らわせるための一時的な手段であり、根本的な治療ではないことを理解しておくことが大切です。

よくある質問

首のしこりは自然に治ることはありますか?

粉瘤が自然に消滅して治ることはありません。粉瘤は皮膚の下にできた袋状の構造物であり、その袋が存在し続ける限り、内部に角質や皮脂が溜まり続けます。

一時的に炎症が治まってしこりが小さくなったように感じることがあっても、袋自体は残っているため、再び大きくなったり炎症を繰り返したりする可能性が高いです。

完全に治すためには、医療機関での手術による摘出が必要です。

手術中の痛みはどの程度ですか?

手術中は局所麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。麻酔の注射をする際にチクリとした痛みと、薬液が入るときに押されるような感覚がありますが、数秒から数十秒程度で終わります。

麻酔が効いてしまえば、触られている感覚は残りますが、切られたり縫われたりする痛みはありません。

手術の傷跡は目立ちますか?

皮膚を切開する以上、傷跡が完全になくなることはありませんが、目立たないようにするための技術が進歩しています。

くり抜き法であれば、数ミリ程度の小さな穴で済むため、時間の経過とともにニキビ跡のような目立たない状態になることが期待できます。

また、首のシワに沿って切開するなどの工夫や、術後のテーピングケアをしっかりと行うことで、他人の目にはほとんど分からないレベルまで改善させることが可能です。

日帰りで手術を受けることはできますか?

ほとんどの場合、日帰りでの手術が可能です。粉瘤の手術自体は、大きさや部位にもよりますが、通常15分から30分程度で終了します。入院の必要はなく、手術当日から普段通りの生活に戻れることが大半です。

ただし、巨大な粉瘤や、全身麻酔が必要となるような特殊なケース、あるいは重篤な基礎疾患をお持ちの方の場合は、総合病院などでの入院手術を勧められることもあります。

以上

参考文献

Hosokawa T, Tanami Y, Sato Y, Adachi N, Asanuma H, Oguma E. Sonographic Findings of Cervical Chondrocutaneous Branchial Remnants—A Comparison With Dermal Lesions/Cysts and a Literature Review: A Pilot Study. Journal of Ultrasound in Medicine. 2024 Mar;43(3):587-98.

Takita H, Takeshita T, Shimono T, Tanaka H, Iguchi H, Hashimoto S, Kuwae Y, Ohsawa M, Miki Y. Cystic lesions of the parotid gland: radiologic-pathologic correlation according to the latest World Health Organization 2017 Classification of Head and Neck Tumours. Japanese journal of radiology. 2017 Nov;35(11):629-47.

Kato H, Kawaguchi M, Ando T, Kaneko Y, Hyodo F, Matsuo M. Hypointense head and neck lesions on T2-weighted images: correlation with histopathologic findings. Neuroradiology. 2020 Oct;62(10):1207-17.

Trinh CT, Nguyen CH, Chansomphou V, Chansomphou V, Tran TT. Overview of epidermoid cyst. European journal of radiology open. 2019 Jan 1;6:291-301.

Inouef Y, Ono T, Kayashima K, Johno M. Hereditary perioral pigmented follicular atrophoderma associated with milia and epidermoid cysts. British Journal of Dermatology. 1998 Oct 1;139(4):713-8.

Shimizu M, Weerawanich W. Sonographic diagnosis in the head and neck region: from an educational lecture presented at the 56th General Assembly and Annual Scientific Congress of the Japanese Society for Oral and Maxillofacial Radiology. Oral radiology. 2019 May 15;35(2):101-26.

Dutta M, Saha J, Biswas G, Chattopadhyay S, Sen I, Sinha R. Epidermoid cysts in head and neck: our experiences, with review of literature. Indian Journal of Otolaryngology and Head & Neck Surgery. 2013 Jul;65(Suppl 1):14-21.

Mittal MK, Malik A, Sureka B, Thukral BB. Cystic masses of neck: a pictorial review. Indian Journal of Radiology and Imaging. 2012 Oct;22(04):334-43.

Sabhalok SS, Shetty LS, Sarve PH, Setiya SV, Bharadwaj SR. Epidermoid and dermoid cysts of the head and neck region. Plastic and Aesthetic Research. 2016 Nov 4;3:347-50.

Jyothi SR, Sathyaki DC, Mohan M, Swaroop DM, Manjunath K, Shah WA, Nazir F, Rout MR. Epidermoid cysts of head and neck. Journal of Evolution of Medical and Dental Sciences. 2013 Sep 30;2(39):7533-7.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次