ほくろ切除のレーザーといえば、CO2レーザーによるものが一般的です。
CO2レーザーは炭酸ガスを光に変換するレーザーで、盛り上がりのあるほくろや、濃いほくろの切除を得意としています。
本記事では、CO2レーザーによるほくろ除去について、経過やダウンタイム、ヤグレーザーとの違いについて解説しました。
副作用や料金についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
CO2レーザーによるほくろ除去の方法1-2)
CO2レーザーは波長10600nm(10.6μm)の光を発し、水分に強く吸収される特性があります。
この特性を利用して、皮膚に照射すると皮膚内の水分が瞬時に熱エネルギーに変換されます。そのため、皮膚科治療において、ほくろやいぼの除去に効果的に用いられています。
蒸散作用を利用してほくろを除去
CO2レーザーをほくろに当てると、レーザーエネルギーは皮膚の水分に吸収され、高温エネルギーを発生させます。
この時の皮膚組織の温度は数百度にのぼります。ほんの一瞬の作用であるため、組織は瞬間的に気化・蒸発する仕組みです。
CO2レーザーを当てられたほくろ組織は一瞬にして気化します。この現象を“蒸散作用”といいます。
ピンポイントでの治療が可能
CO2レーザーは水分に吸収されやすい特性を持つため、他の組織よりも水分を多く含む、ほくろやイボの治療を得意としています。
また、照射範囲を微細に調整できるレーザーであるため、細かな部位やピンポイント除去も可能です。
熱による止血作用効果も
レーザーの照射中は、瞬間的に皮膚組織の温度が数百度にまでのぼり、血管や血小板を凝固させる作用が働くため、熱による止血効果が得られます。
出血しにくいため、周辺組織へのダメージを抑えられるのもCO2レーザーの大きなメリットのひとつです。
痛みについて
CO2レーザーは、やや痛みを感じやすい施術とされています。また、施術後の副作用として痛みを感じる場合もあります。
治療時には麻酔を用いるため痛みを感じにくい
CO2レーザーは痛みを感じやすい施術ではありますが、ほとんどのケースで麻酔や冷却処置を用いて治療を行うため、実際には照射時の痛みは感じにくくなっています。
麻酔を使用すれば、照射中の痛みはほぼ気にならなくすることができます。
施術後の組織の腫れや炎症による痛みについては、数日ほどで落ち着いてはきますが、痛み止めや炎症止めも処方します。
また、治療部位を冷却する方法がとられる場合もあります。
治療内容によって対応が異なるため、痛みが気になる方は施術前に医師に相談してください。
痛みを感じやすいケース
- 顔や手など、神経が多く通っている部位
- 照射部位が広範囲
- 肌が乾燥している
- ホルモンバランスが崩れている
CO2レーザーで痛みを感じやすいとされるのは、デリケートな部位や広い範囲の照射です。また、乾燥・ホルモンバランスの乱れなどの肌質も、痛みの感じやすさを左右する要因になります。
CO2レーザーによるほくろ除去の経過
CO2レーザーによるほくろ治療は、日帰りで行えます。
所要時間は施術箇所は範囲にもよりますが、レーザーのみで5分~30分程度、麻酔や処置を含めても1時間~2時間程度です。
CO2レーザーのほくろ除去の流れ
皮膚科でCO2レーザーによるほくろ除去を行う際は、まず、ほくろが悪性なものでないかを調べてからCO2レーザー施術を行います。
ほくろには悪性なものと良性なものがあり、CO2レーザーは組織が熱で蒸散されてしまうため、除去後は組織検査に出せないためです。
治療前に正確に良性と判断された場合のみ、CO2レーザー治療を行えます。検査で悪性が疑われた場合は、手術による切除を行います。
CO2レーザーによる良性のほくろ除去の流れ
麻酔は塗るタイプ、貼るタイプ、注射タイプがありますが、治療によっては麻酔を使用せずに冷却を行うこともあります。
ほくろにレーザーを照射して照射部位を蒸散(破壊)します。
一点に長時間照射し続けてしまうと穴が深くなり施術による傷跡が残ってしまう原因となるため、ほくろの組織をできる限り根元から取り去ると同時に、跡が残らないよう考慮しながら慎重にレーザーを照射していきます。
照射後は1~2週間ほど軟膏とテープを貼って過ごします。穴の空いた部位が次第に盛り上がっていき、3~6ヶ月ほどかけて皮膚の色味も周囲と馴染んでいきます。
術後にテープを貼るのが大切な理由
CO2レーザー照射後の部位は真皮部分が露出した状態のため、このまま乾燥放置してしまうと傷の治りが悪くなり、陥没や色素沈着を起こしてしまう可能性があります。
そのため、レーザー照射後の傷口には軟膏とテープを貼り、傷の治癒力を高めるとともに乾燥を防ぎます。
また、真皮部分が露出してしまっている状態は紫外線による色素沈着も起こしやすくなっているため、日焼けによる色素沈着を防ぐ目的でも、テープを貼るケアは非常に重要です。
ダウンタイム
CO2レーザーのダウンタイムは、他のレーザー治療と比べるとやや長めの3日~10日程度です。施術部位や範囲によって個人差があります。
CO2レーザーのダウンタイム中の様子
CO2レーザーのダウンタイムの主な症状は、「赤み」と「かさぶた」です。
軽度なものであれば3日程度で快方に向かいますが、照射部位が深い、または広範囲の場合は10日~数週間続くこともあります。
- 赤み
- 腫れ
- かさぶた
- 痛み
他にも、炎症による熱感や、それにともなう皮膚の乾燥により “つっぱり” や “かゆみ” もダウンタイムでよく見られる症状です。
ダウンタイム中の注意点
CO2レーザー照射後には、できる限りダウンタイムが短くなるよう、アフターケアに気を配りましょう。
アフターケアを怠るとダウンタイムが伸びるばかりか、色素沈着や傷を残してしまう恐れがあります。
- テープや軟膏を使ったケアは、医師の指示通り行ってください。
- 色素沈着の原因となるため、テープを貼る、帽子や日傘を使うなど紫外線対策に気をつけ、日に当たらないようにしましょう。
- 睡眠不足は肌の修復を遅らせてしまいますので、十分な睡眠をとりましょう。
- 肌の再生力を高めやすくなるため、栄養バランスの取れた食事をとるようにしましょう。
ほくろ除去の料金
CO2レーザーでのほくろ除去の料金は、ほくろの大きさや個数、クリニックによって差があるものの、1~3㎜程度のものであれば1個あたり3000~5000円程度が目安です。
5㎜程度のほくろでは1万円前後ほどが相場となり、サイズが大きくなるごとに料金は高くなります。
「5個まで〇万円」や「△万円で取り放題」などのメニューを展開しているクリニックもありますので、希望する治療方針や予算と相談しながら、複数のクリニックの料金を比較してみましょう。
ほくろ除去は保険適用になる?
CO2レーザーによる美容目的でのほくろ除去は、保険適用とはなりません。
ほくろ除去が保険適用となる可能性があるのは「切除での治療」や「生活に支障をきたすと認められたホクロ」「悪性のほくろ」などの条件を満たしているものに限られます。
CO2レーザーによるほくろ除去のデメリット・副作用
CO2レーザーは皮膚を削り取るような方法でほくろを除去するため、少なからず皮膚に負担が生じます。
また、あまりに深く削り取りすぎると傷跡が残ってしまったり、副作用が強く出てしまったりする可能性がある一方で、浅く削ってしまうとほくろの組織を残してしまう恐れもあります。
照射後の炎症や色素沈着
CO2レーザーの照射後の皮膚は炎症を起こした状態になります。通常であれば、次第に快方に向かっていきますが、まれに炎症が長引いたり、痛みや腫れを引き起こしたりする場合があります。
強い炎症が長引いてしまうと皮膚へ色素沈着がおこるケースもあるため、照射後に強い炎症や痛みが現れた場合はすぐに医師に相談するようにしましょう。
もし色素沈着を起こしてしまったとしても、ケアを行えば徐々に薄くなり、周りの皮膚と馴染んでいきます。
再発の可能性がある
CO2レーザーによるほくろ治療は再発のリスクが低い治療法と言われていますが、完全に再発しないわけではありません。
CO2レーザーで治療したとしても、ほくろの組織(メラニン色素)が残っていると、再発してしまう可能性があります。
特に濃いほくろや皮膚の深い部分にまでメラニン色素が及んでいるほくろを治療した際には、再発しやすいとされています。
大きく深いほくろには不向き
大きく皮膚の深い部分にまでメラニン色素が存在していると、それだけ広範囲かつ、深く皮膚を削る必要があります。
しかし、傷が大きくなってしまうと、上手く治りきらずにケロイドのような跡が残ってしまったり、炎症が強く出てしまうことによる色素沈着が起ってしまったりする可能性があります。
そのため、大きく深いほくろの場合は、切除治療も検討していきます。
ヤグレーザーとの違い2)
ほくろ切除に用いられるレーザーには、CO2レーザーのほかにヤグレーザーがあります。
CO2レーザーが皮膚に含まれる水分に反応するのに対し、ヤグレーザーは皮膚にあるメラニン色素に反応する点で大きく異なります。
ほくろはメラニン色素からできているものであるため、「ヤグレーザーの方がほくろ除去に適しているのでは?」と思ってしまいがちですが、一概にそうとは言えません。
CO2レーザーとヤグレーザーの違い
CO2レーザー | ヤグレーザー | |
---|---|---|
波長 | 10600n㎜ | 1064nm |
作用 | 水分に反応し、熱エネルギーにより組織を蒸散 | メラニンやヘモグロビンに反応し、組織を破壊する |
切除能力 | 高い | 低い |
痛み | 強い | 弱い |
ダウンタイム | やや長め | 短い |
メリット | 広範囲かつ深い部分の皮膚に利用できる ヤグレーザーより再発が少ない | ピンポイントで照射できる 副作用が少ない |
デメリット | 副作用がやや強い | 切除能力が低い 濃いほくろは1度ではとりきれない |
得意なほくろ | 濃いほくろ 根が深いほくろ 盛り上がりのあるほくろ | 小さく薄いほくろ |
CO2レーザーは切除能力が優れているため、盛り上がりのあるようなほくろや濃いほくろの治療を得意としている一方で、副作用が強くダウンタイムが長いデメリットを持ちます。
対してヤグレーザーは副作用や痛みが少ないものの、切除能力が低いため濃いほくろには1回の治療では対応しきれず、複数回の治療が必要になるケースも多いです。
ヤグレーザーは、しみやそばかすのような薄いほくろに向いているレーザーと言えます。
まとめ
CO2レーザーによるほくろ除去は、効果的で一般的な治療法として知られています。
皮膚の水分に反応するCO2レーザーを当てられた部分は、瞬時にして高温状態となるため、ほくろ組織を一瞬にして蒸散させることができます。
多少の痛みやダウンタイムが生じる治療ではありますが、高温になるのは一瞬で、熱による止血作用も働くため、切開よりも副作用が少ないとされています。
ヤグレーザーと比較すると、CO2レーザーは切除能力が高い反面、副作用も強くなる傾向があります。一方、ヤグレーザーは副作用が少ないものの、濃いほくろの場合は複数回の治療が必要です。
CO2レーザーによるほくろ除去を検討されている方は、他の方法による除去の可能性も含め、専門医とよく相談し、自分に合った治療法を選んでいきましょう。
CO2レーザーによるほくろ除去についてよくある質問
参考文献
1) 皮膚科・形成外科領域の炭酸ガスレーザー-Jstage-
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslsm/38/2/38_jslsm-38_0018/_pdf
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https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/biyo2v.pdf
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