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やけどの重症度 2度 3度とは?症状の見分け方と必要な処置の違い

やけどの重症度 2度 3度とは?症状の見分け方と必要な処置の違い

やけどは日常生活で誰もが経験しうる怪我ですが、重症度によって対処法が大きく異なります。

2度や3度と呼ばれるやけどは、皮膚の深い部分まで損傷が及んでいる可能性があり、適切な処置をしないと痕が残ったり、感染症を起こしたりする危険がありますが、見た目だけで重症度を正しく判断するのは難しいです。

この記事では、皮膚科専門医の観点から、やけどの2度と3度の具体的な症状の違い、ご自身やご家族がやけどをした際の正しい見分け方、重症度に応じた必要な初期処置について詳しく解説します。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

やけどの重症度 1度 2度 3度の違い

やけどは、深さによって重症度が分類されます。1度から3度まで、それぞれのやけどが皮膚のどの層まで達しているのか、特徴を整理します。

やけどの深さと重症度の分類

皮膚は、外側から 表皮、真皮、その下にある 皮下組織という層構造になっていて、やけどの重症度は、熱による損傷が層のどこまで達しているかによって決まります。

表皮は皮膚の最も外側にある薄い層で、外部の刺激から体を守るバリアの役割を担っていて、真皮はその下にあり、血管、神経、汗腺、毛包などが存在する厚い層です。

皮下組織は主に脂肪層で、さらにその下には筋肉や骨があります。

1度熱傷とは? 日焼けもやけどの一種

1度熱傷(I度熱傷)は、最も軽いやけどで、損傷が皮膚の最も浅い層である 表皮 にとどまっている状態で、 代表的な例が、夏の日差しによる日焼けです。

強い紫外線を浴びた後、皮膚が赤くなり、ヒリヒリとした痛みを伴いますが、水ぶくれ(水疱)はできません。

損傷が表皮に限局しているため、通常は数日で赤みや痛みは引き、皮膚が薄くむける(落屑)ことはあっても、痕を残さずに治癒するので、家庭での冷却処置や保湿で対応可能な場合がほとんどです。

1度熱傷の主な症状

  • 皮膚の赤み(発赤)
  • ヒリヒリとした痛み
  • 軽い腫れ
  • 水ぶくれは形成されない

2度熱傷 皮膚のどの深さまで達しているか

2度熱傷(II度熱傷)は、損傷が表皮を越え、その下の 真皮 にまで達した状態のやけどです。

真皮には血管や神経が豊富にあるため、2度熱傷は強い痛みと、特徴的な 水ぶくれ(水疱) の形成を伴い、水ぶくれは、損傷した血管から浸出液(しんしゅつえき)が漏れ出て、表皮と真皮の間に溜まることで作られます。

2度熱傷は、真皮のどの深さまで損傷が及んでいるかによって、さらに 浅達性(せんたつせい) と 深達性(しんたつせい) の2つに分けられます。

3度熱傷 最も深い損傷

3度熱傷(III度熱傷)は、やけどの中で最も重症な状態です。 損傷は表皮と真皮の全層を破壊し、さらにその下の 皮下組織(脂肪層) にまで達していて、場合によっては、筋肉や骨にまで損傷が及ぶこともあります。

皮膚の全層が熱によって壊死(えし)してしまうため、皮膚が本来持っているバリア機能や再生能力は完全に失われ、皮膚の自然な再生は期待できず、多くの場合、外科的な治療(手術)が必要です。

2度熱傷(II度)の症状と見分け方

2度熱傷は、非常に強い痛みを伴うことが多く、水ぶくれ(水疱)ができるのが特徴ですが、2度熱傷の中でも浅いものと深いものでは、症状やその後の経過が異なります。

2度熱傷の共通する特徴 水ぶくれと痛み

2度熱傷の最もわかりやすいサインは 水ぶくれ(水疱) で、熱湯や油がかかった、アイロンや鍋に触れたなど、比較的はっきりとした原因で生じることが多いです。

真皮層には、痛みを感じる神経の末端(神経終末)が豊富に分布していて、2度熱傷では、神経が熱によって刺激されたり、露出したりするため、非常に強い痛みを感じます。

水ぶくれの内部は、体から染み出た浸出液で満たされており、外部の細菌から傷口を守る役割も果たしています。

2度熱傷(浅達性・深達性)の主な症状比較

特徴浅達性2度熱傷 (SDB)深達性2度熱傷 (DDB)
損傷の深さ真皮の浅い層(乳頭層)まで真皮の深い層(網状層)まで
水ぶくれ(水疱)できる(緊張が強いことが多い)できる(破れやすいこともある)
水ぶくれの底ピンク色、鮮やかな赤色白っぽい、赤色がまだら
痛み非常に強い(知覚過敏)強い、または鈍い(神経損傷のため)
湿潤状態湿潤している(浸出液が多い)湿潤、またはやや乾燥気味

浅達性2度熱傷(SDB)の見分け方

浅達性2度熱傷(SDB: Superficial Dermal Burn)は、真皮の中でも比較的浅い 乳頭層(にゅうとうそう) までの損傷で、水ぶくれを形成し、底(水ぶくれが破れた場合に見える面)は、ピンク色や鮮やかな赤色をしています。

これは、真皮の血管網がまだ保たれており、血流が残っているためです。 指などで圧迫すると、一時的に白くなり、離すとすぐに赤みが戻ります(毛細血管再充満時間が良好)。

神経の末端が激しく刺激されるため、痛みは非常に強く、空気が触れるだけでも痛む(知覚過敏)ことがあります。 適切な治療を行えば、通常は1~2週間程度で、痕を残さずに(あるいはごくわずかな色素沈着で)治癒することが多いです。

深達性2度熱傷(DDB)の見分け方

深達性2度熱傷(DDB: Deep Dermal Burn)は、損傷が真皮の深い 網状層(もうじょうそう) にまで達した状態です。 浅達性2度熱傷よりも深刻で、治癒の経過も大きく異なります。

水ぶくれの底は、血流が悪くなっているため、白っぽく見えたり、赤みがまだらになったりします。 圧迫しても白くなりにくく、赤みの戻りも遅くなります。

真皮の深い部分にある神経や血管、毛包なども損傷を受けているため、痛みは浅達性2度熱傷ほど強く感じないこともあります(鈍い痛み、あるいは感覚が鈍くなる)。

治癒までには3~4週間以上と時間がかかり、治った後も、皮膚が盛り上がった 肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん) や ケロイド 、ひきつれ(拘縮)などの傷跡が残りやすい、重症度の高いやけどです。

2度熱傷の判断で迷うケース

熱湯や油などによる高温のやけどは、比較的すぐに症状が現れ、重症度の判断がしやすいです。

注意が必要なのが 低温やけど で、湯たんぽ、カイロ、ノートパソコン、スマートフォンの充電器など、体温より少し高い程度の温度(44℃~50℃程度)のものに長時間触れ続けることで生じます。

低温やけどは、じんわりと熱が皮膚の奥深くまで伝わるため、痛みや赤みなどの初期症状が軽いにもかかわらず、気づいた時には皮膚の深い部分が深達性2度熱傷や、時には3度熱傷になっていることがあります。

見た目が赤くなっている程度でも、水ぶくれができていなくても、圧迫すると白くなるが戻りが遅い、あるいは感覚が鈍い場合は、深いやけどの可能性があり、注意が必要です。

3度熱傷(III度)の深刻な症状

3度熱傷は、やけどの中で最も重症度が高く、命に関わることもある状態です。皮膚の全層が破壊されるため、2度熱傷とは全く異なる特徴的な症状が現れます。

3度熱傷の特徴 痛みがない?

3度熱傷(III度熱傷)の最も大きな特徴は、やけどした部分自体の 痛みがない ことです。

損傷は皮膚の全層(表皮、真皮)を貫通し、皮下組織にまで達していて、皮膚にある痛みを感じる神経の末端が完全に破壊されてしまうため、その部分をつねったり、針で刺したりしても痛みを感じなくなります。

ただし、やけどの範囲は均一ではなく、3度熱傷の周囲には2度熱傷や1度熱傷が混在していることがほとんどです。やけどをした本人は、周囲の浅いやけどによる強い痛みを感じているため、痛みがない ことに気づかない場合もあります。

3度熱傷の主な症状

  • やけどした部分の痛みがない(無痛覚)
  • 皮膚が白、黒、褐色などに変色
  • 皮膚が乾燥し、硬くなる(革様)
  • 水ぶくれは形成されない(熱源が強すぎ、水分が蒸発するため)
  • 圧迫しても赤みは戻らない

見た目の特徴 白、黒、褐色

3度熱傷の見た目は、2度熱傷のピンク色や赤色とは全く異なり、皮膚は熱によってタンパク質が変性し、白くろう(蝋)のようになり、これは、血管も破壊されて血流が完全に途絶えているためです。

また、火災などで直接炎に触れた場合は、皮膚が焦げて炭化し、黒くなることもあります。高温の油や金属によるやけどでは、褐色になることもあります。

水分が失われ、皮膚は乾燥して硬くなり、まるで革のようになり、革様(かわよう)変化 と呼びますが、水ぶくれは通常できません。熱が強すぎて、水ぶくれを作るための浸出液や表皮自体が蒸発・破壊されてしまうためです。

なぜ3度熱傷は緊急性が高いのか

3度熱傷は、局所の損傷だけでなく、全身状態に深刻な影響を及ぼすため、極めて緊急性が高い状態です。

皮膚のバリア機能が完全に失われるため、細菌が体内に侵入しやすくなり、重度の 感染症 を起こすリスクが非常に高く、皮膚からの水分蒸発を防ぐ機能が失われるため、体液が大量に失われ、脱水症状 や ショック状態 に陥る危険があります。

3度熱傷は皮膚の再生能力が失われているため、自然には治らず、損傷した皮膚(壊死組織)は硬くなり、関節の動きを妨げる 拘縮を起こします。

3度熱傷の治療には、多くの場合、壊死した組織を取り除き、自分の他の部位から健康な皮膚を移植する 植皮術という手術が必要です。

2度熱傷と3度熱傷の比較まとめ

項目2度熱傷(深達性)3度熱傷
損傷の深さ真皮 深層まで皮下組織 またはそれ以深
痛みあり(鈍い場合も)なし(神経破壊のため)
色調白っぽい、まだらな赤白(ろう様)、黒(炭化)、褐色
水ぶくれできるできない(ことが多い)
治癒時間がかかる(瘢痕が残る)自然治癒はしない(手術が必要)

2度・3度熱傷の重症度を判断するもう一つの基準

やけどの重症度は、深さ(度数)だけでなく、どれくらいの範囲に及んでいるかも非常に重要で、深さが2度や3度でなくても、範囲が広ければ入院治療が必要になることがあります。

体表面積(TBSA)の計算方法

やけどの重症度を評価する際、深さ(1度、2度、3度)と範囲の2つの要素で判断し、やけどの範囲は、体全体の表面積に対して、やけどが何パーセント(%)を占めているか(TBSA: Total Body Surface Area、熱傷面積)で表します。

2度熱傷や3度熱傷が広範囲に及ぶ場合、体液の喪失や感染のリスクが飛躍的に高まるため、専門的な治療(入院や手術)が必要です。

成人の場合、2度熱傷が体表面積の15~20%以上、あるいは3度熱傷が2~10%以上になると、入院治療の適応とされます。

簡易的な範囲の測り方 手掌法

緊急時や病院外で、やけどの範囲を迅速に把握するための簡易的な方法として 手掌法(しゅしょうほう) があり、 これは、やけどをした患者さん本人の 手のひら(指の部分も含む) の面積を、体表面積の約1%とみなして計算する方法です。

やけどの範囲が、患者さん自身の手のひら5枚分であれば、熱傷面積は約5%と推定できます。この方法は、やけどの範囲が比較的狭い場合や、まだら(飛び散った)場合に特に有用です。

成人と小児の違い 9の法則と5の法則

やけどの範囲が広い場合に、成人でよく用いられる計算方法が 9の法則(Rule of Nines) で、体の各部位を9%(またはその倍数)として計算する方法です。

頭頸部全体で9%、片腕で9%、片脚で18%(9%×2)、体の前面(胸と腹)で18%、体の後面(背中と腰)で18%、陰部で1%となり、合計すると100%になります。

ただし、小児は成人と比べて頭部の占める割合が大きく、下肢の割合が小さいため、9の法則は適用できません。

小児の場合は、年齢に応じて体表面積の比率を補正した 5の法則 や、より詳細な Lund & Browder(ランド・アンド・ブラウダー)の図 を用いて計算します。

成人における 9の法則 の目安

部位割合 (%)説明
頭頸部9頭と首全体
片腕(上肢)9腕一本(手を含む)
片脚(下肢)18脚一本(足を含む) (9% x 2)
体幹(前面)18胸と腹 (9% x 2)
体幹(後面)18背中と腰 (9% x 2)
陰部1

やけどをした直後の応急処置(ファーストエイド)

やけどをしてしまったら、パニックにならずにすぐ行うべきことがあります。重症度にかかわらず、最初に行う冷やす、という処置が、その後の経過を大きく左右します。

まずは すぐに冷やす 流水が基本

やけどをしたと認識したら、何よりもまず、すぐに 冷やす ことが最も重要です。 やけどの原因(熱湯、油、火など)から離れたら、すぐに水道の蛇口などから流れる水(流水)を、やけどした部分に直接当て続けます。

衣服を着ている上からやけどをした場合でも、服を脱がそうと時間をかけるよりも、まずは服の上から水をかけることを優先してください。 冷やす時間は、最低でも15分から30分程度、痛みが和らぐまで続けることが目安です。

冷やすことの目的

  • 熱による皮膚組織の損傷が深くなるのを防ぐ
  • やけどによる炎症を抑える
  • 痛みを和らげる(鎮痛効果)
  • 創部を洗浄し、清潔にする

冷やす際の注意点 冷やしすぎない

冷やすことは非常に重要ですが、冷やしすぎ には注意が必要です。 やけどの範囲が広い場合(体表面積の10%を超える目安)や、小児、高齢者の場合は、長時間冷やしすぎると、体温が下がりすぎて 低体温症 を起こす危険があります。

また、氷や保冷剤(アイスノンなど)を直接やけどした部分に当てるのは避けてください。冷えすぎて血流が悪くなり、かえって損傷を深くしたり、凍傷を起こしたりする可能性があります。

氷などを使う場合は、必ずタオルや布で包み、直接皮膚に当たらないように注意し、冷やすのは、基本的にやけどをした局所のみです。

やってはいけないNG処置

やけどに関しては、多くの民間療法が知られていますが、多くは医学的に誤っており、かえって症状を悪化させる危険があります。

アロエ、味噌、醤油、油(ごま油、オリーブオイルなど)、馬油、歯磨き粉などを塗る行為は、感染の原因になったり、皮膚の炎症を悪化させたりするため、絶対にやめましょう。

また、服が皮膚にくっついてしまっている場合、無理に剥がそうとすると、水ぶくれの皮や、時には皮膚そのものを一緒に剥がしてしまい、損傷を悪化させます。

このような場合は、無理に剥がさず、服の上から冷やし、くっついた部分の周囲をハサミで切って、そのまま医療機関を受診してください。

やけどの応急処置 NG例

やってはいけないことその理由危険性
氷・保冷剤を直接当てる冷えすぎて血流が悪くなる凍傷、損傷の悪化
アロエ、味噌、油などを塗る傷口に異物を塗布することになる感染のリスク、炎症の悪化
くっついた服を無理に剥がす水ぶくれや皮膚を一緒に剥がす損傷の悪化、感染のリスク増大

水ぶくれは破るべきか?

2度熱傷でできる水ぶくれ(水疱)は、どう扱うべきか迷うことが多いですが、自己判断で破るべきではありません。

水ぶくれの皮(表皮)は、その下の真皮を外部の細菌から守る天然の絆創膏のような役割を果たしていて、また、内部の浸出液には、傷の治癒を助ける成分も含まれています。 無理に破ると、傷口が露出し、細菌感染のリスクが高まります。

水ぶくれが非常に大きくパンパンに張って痛みが強い場合や、関節部にあって動きにくい場合、医療機関では清潔な操作(滅菌)のもとで、中の液体だけを抜く(穿刺)処置を行うことはありますが、ご自宅では触らずに保護してください。

もし自然に破れてしまった場合は、水道水で優しく洗い流し、清潔なガーゼや絆創膏で覆って、皮膚科を受診することをお勧めします。

2度・3度のやけどで皮膚科を受診すべきタイミング

浅い1度のやけどや、ごく狭い範囲の2度熱傷であれば自宅でのケアも可能かもしれませんが、2度や3度のやけどが疑われる場合は、専門的な治療が必要です。

2度熱傷(水ぶくれ)ができたら受診を検討

やけどの目安として、水ぶくれ(水疱)ができたら受診を検討する、と覚えておくと良いでしょう。 水ぶくれができるということは、少なくとも真皮にまで損傷が及ぶ2度熱傷であることを意味します。

2度熱傷は、感染を起こしやすく、また、深さ(浅達性か深達性か)によって、痕が残るかどうかが大きく変わってきます。

水ぶくれが大きい場合や、複数の水ぶくれができている場合、あるいはすぐに破れてしまった場合は、ご自宅での管理が難しくなります。

皮膚科を受診し、やけどの深さを正確に診断してもらい、適切な処置(軟膏や創傷被覆材の選択)を受けることが、感染を防ぎ、きれいに治すための近道です。

2度熱傷で受診を推奨するケース

  • 水ぶくれが破れてしまった
  • 水ぶくれの大きさが500円玉より大きい
  • 水ぶくれが複数ある
  • 痛みが非常に強い、または数日続く

緊急で受診が必要なやけどのサイン

以下のような場合は、やけどの重症度が高く、緊急の治療が必要な可能性が高いので、夜間や休日であっても、救急外来を受診することが大切です。

まず、3度熱傷が疑われる場合です。皮膚が白くなっている、黒く焦げている、硬くなって痛みを感じない、といった症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。

次に、やけどの範囲が広い場合で、2度熱傷や3度熱傷が、患者さん自身の手のひらサイズ(体表面積の1%)を超える場合は、専門的な管理が必要で、やけどをした部位も重要です。

特に受診を急ぐべきやけどの部位

部位受診を急ぐ理由
傷跡が目立ちやすい。まぶたや唇は変形しやすい。
腫れによって気道が圧迫される危険性。
手・指・足日常生活に重要。関節の拘縮(ひきつれ)で機能障害が残りやすい。
関節部(肘、膝など)治癒の過程で皮膚がひきつれ、曲げ伸ばしが困難になるリスク。
陰部・会陰部感染を起こしやすい。排泄に影響が出る。

また、口の中や鼻の中をやけどした場合(熱い蒸気を吸い込んだなど)は、気道(空気の通り道)もやけどしている可能性(気道熱傷)があり、呼吸困難に陥る危険があるため、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。

小児、高齢者、持病がある場合の注意点

やけどをしたのが小児や高齢者の場合は、特に注意が必要です。 小児(特に乳幼児)は、成人に比べて皮膚が非常に薄いため、同じ温度の熱源でも、より深い損傷(深達性2度熱傷や3度熱傷)になりやすい傾向があります。

また、体重あたりの体表面積が大きいため、比較的狭い範囲のやけどでも全身状態(脱水など)が悪化しやすいです。 高齢者も、皮膚が薄くなり、血流が悪くなっていることが多いため、やけどが重症化しやすく、治りにくい傾向があります。

さらに、糖尿病、膠原病(こうげんびょう)、腎不全などの持病がある方や、ステロイド薬や免疫抑制剤を内服している方は、免疫力が低下しており、感染症を起こしやすく傷の治りも悪いので、念のため早めに皮膚科を受診してください。

低温やけどや化学熱傷、電撃傷

特殊なやけどの場合も、必ず医療機関の受診が必要です。 低温やけど は、見た目の症状(赤みや水ぶくれ)が軽いのに、実際には皮膚の奥深くまで損傷が及んでいる(深達性2度熱傷や3度熱傷)ことが多いため、専門医による診断が重要です。

化学熱傷 は、酸やアルカリなどの化学薬品が皮膚に付着することで生じていて、水で洗い流すだけでなく、原因となる化学物質に応じた特殊な処置や中和が必要な場合があります。

電撃傷(でんげきしょう) は、感電によって生じるやけどです。

電気が体内を通過するため、皮膚の入り口と出口のやけど(小さいことが多い)だけでなく、体の内部(筋肉、神経、心臓など)にも深刻な損傷を起こしている可能性があり、必ず救急受診してください。

皮膚科で行う2度・3度熱傷の専門的な治療

医療機関では、やけどの深さと範囲を正確に診断し、感染を防ぎ、できるだけ早く、きれいに治すための専門的な治療を行います。

2度熱傷(浅達性)の治療法

浅達性2度熱傷は、毛包や汗腺などの皮膚付属器が残存しているため、皮膚の再生能力が保たれているため、治療の主な目的は、感染の予防と治癒に適した環境を整えることです。

まずは、創部を水道水や生理食塩水で十分に洗浄し、汚れや細菌を洗い流し、水ぶくれの処置は、医師の判断によります。

小さな水ぶくれは破らずに温存することもありますが、大きい場合や感染のリスクが高い場合は、清潔な操作で内部の液体を抜いたり、水ぶくれの皮(水疱蓋)を除去したりすることもあります。

その後、創部を保護し、適度な湿潤環境を保つために、抗菌作用のある軟膏(スルファジアジン銀クリーム)や、創傷被覆材(ドレッシング材)を使用します。

浅達性2度熱傷の治療のポイント

治療のポイント具体的な処置・薬剤の例
感染予防十分な洗浄、抗菌軟膏、抗生物質の(必要な場合の)内服
湿潤環境の維持創傷被覆材(ハイドロコロイド、ポリウレタンフォームなど)
疼痛管理鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬など)の処方

2度熱傷(深達性)の治療法

深達性2度熱傷は、皮膚の再生に必要な毛包や汗腺などの多くが破壊されているため、治癒までに時間がかかります(通常3週間以上)。 基本的な治療は浅達性2度熱傷と同様に、感染予防と湿潤環境の維持(保存的治療)から開始します。

治癒が遅れると、その間に傷跡が硬く盛り上がる 肥厚性瘢痕や、ケロイド になるリスクが非常に高いです。治癒の経過を見ながら、保存的治療を続けるか、あるいは外科的治療(手術)に切り替えるかを判断します。

手術を行う場合は、治癒しない皮膚の表面を削り取る処置(デブリードマン)や、3度熱傷と同様に植皮術が選択されることもあります。

3度熱傷の治療法 壊死組織の除去と植皮術

3度熱傷は、皮膚の全層が壊死しており、皮膚の再生能力が完全に失われているため、保存的治療(軟膏やドレッシング)だけでは治癒せず、治療の基本は、外科的治療(手術)です。

まず、壊死した組織(死んだ皮膚)は感染の温床となり、また、新しい皮膚の再生を妨げるため、切除する手術(デブリードマン、または壊死組織切除術)を行います。

壊死組織を除去してきれいになった傷口(創床)を、何で覆うかが問題になります。

範囲が狭ければ周囲の皮膚が伸びてきて閉じることもありますが、多くの場合、自分の体の他の部位(太ももや頭皮など)から健康な皮膚を薄く採取し、移植する 植皮術(しょくひじゅつ) が必要です。

やけどの痕(瘢痕)のケアと治療

やけどの治療は、傷がふさがったら終わりではありません。特に深達性2度熱傷や3度熱傷の後は、やけどの痕(あと)=瘢痕(はんこん) の管理が非常に重要です。 治癒後の皮膚は、乾燥しやすく、かゆみが出たり、紫外線に弱かったりします。

また、数ヶ月かけて傷跡が赤く盛り上がったり(肥厚性瘢痕)、硬くひきつれたり(拘縮)することがあるので、後遺症を最小限に抑えるため、治癒直後からアフターケアを開始します。

アフターケアーは、保湿剤によるスキンケア、日焼け止めによる遮光、傷跡を物理的に圧迫するシリコンジェルシートの使用やサポーターの着用(圧迫療法)、かゆみや盛り上がりを抑えるための内服薬や外用薬の使用などです。

それでも瘢痕が目立つ場合には、ステロイドの局所注射、レーザー治療、あるいはひきつれを解除するための形成外科的な手術(瘢痕形成術)など、さらなる治療を行うこともあります。

やけどの2度・3度に関するよくある質問

ここでは、やけどの重症度や対処法に関して、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。

水ぶくれが破れたらどうすればいいですか?

無理に皮を取り除かないでください。破れてしまった場合、残っている皮(水疱蓋)は、できるだけピンセットなどで取り除いたりせず、そのままにしておくと感染源になることがあります。

まずは、水道水などの流水でやさしく洗い流し、清潔なガーゼやタオルで上から押さえるように水分を拭き取ります。その後、清潔なガーゼや絆創膏で傷口を保護し、できるだけ早く皮膚科を受診してください。

2度やけどの痕は必ず残りますか?

必ず残るとは限らず、やけどの深さによります。

浅達性2度熱傷(水ぶくれの底がピンク色)であれば、感染などのトラブルがなく順調に治癒すれば、1~2週間程度で、傷跡を残さずに(あるいは一時的な色素沈着のみで)治ることが多いです。

深達性2度熱傷(水ぶくれの底が白っぽい)の場合は、治癒までに3週間以上かかることが多く、その過程で皮膚が硬くなったり、盛り上がったりする傷跡(肥厚性瘢痕)や、ひきつれ(拘縮)が残る可能性が高くなります。

やけどの範囲が狭ければ3度でも病院に行かなくてもいいですか?

必ず受診してください。3度熱傷は、たとえ範囲が1cm四方と非常に狭くても、皮膚の全層が壊死しており、皮膚の再生能力が失われている状態なので、放置しても自然には治りません。

壊死した組織が感染源となり、炎症が周囲に広がる危険性もあります。多くの場合、壊死した組織を取り除き、場合によっては植皮術(皮膚移植)や、傷口を縫い合わせる(縫縮)といった外科的な処置が必要です。

治るまでの期間はどれくらいですか?

目安として、1度熱傷は数日~1週間程度で、浅達性2度熱傷は1~2週間程度で治癒することが多いです。深達性2度熱傷は治癒までに時間がかかり、3週間から数ヶ月を要することもあります。

3度熱傷は、保存的には治癒しないため、手術(植皮術など)が必要になります。

手術のタイミングや、移植した皮膚が生着するまでの期間、その後のリハビリテーションを含めると、治療期間は数ヶ月単位になることも珍しくありません。

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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