お湯をこぼしてやけどを負った際、生死を分けるのは直後の15分から30分間に行う適切な冷却処置です。流水で患部を冷やすことで、熱の深部浸透を防ぎ、組織の損傷を最小限に食い止めることができます。
痛みを即座に緩和し、将来的な色素沈着やケロイドなどの跡を残さないためには、正しい冷却法と水ぶくれの保護、そして専門医による診断が欠かせません。
この記事では、家庭で誰でも実践できる緊急救護の手順から、病院を受診すべき判断基準まで解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
お湯でやけどした直後の緊急対応で最も優先すべき正しい冷却方法
お湯を被ってしまった際、何よりも先に実行すべきは水道水による患部の冷却です。15分から30分程度、痛みを感じなくなるまで冷やし続けることで、皮膚の深部まで熱が伝わることを防ぎ、炎症の拡大を強力に抑制できます。
水道水の流水を使い続けることで得られる痛み緩和と炎症抑制の効果
突然の熱いお湯によるトラブルに直面したとき、皮膚は急激な温度上昇によって組織が破壊され始めます。この破壊活動を止める唯一の手段が、物理的な冷却です。
水道から流れる水は、一定の温度を保ちながら熱を効率的に奪い去ってくれます。ただし、冷たすぎる水は逆に血管を収縮させすぎて血流障害を引き起こすリスクがあるため、心地よいと感じる程度の温度で十分です。
冷却を途中で止めてしまうと、皮膚の内部に残った残熱がじわじわと周囲の健康な組織を侵食し、やけどの範囲や深さを広げてしまいます。痛みが引いたと感じても、最低15分は継続してください。
粘り強い初期対応が、後の治癒スピードを劇的に変えることになります。焦らず、まずは水道まで移動して水をかけ続けることに集中してください。
冷却中は、患部をこすったり刺激したりしないように気をつける必要があります。水の勢いが強すぎると皮膚を傷める可能性があるため、優しく当てるように調整しましょう。
また、冷却によって痛みを感じる感覚が麻痺してくることもあります。これは正常な反応ですが、皮膚の色が白くなるほど冷やしすぎるのは避けるべきです。
服を着たままお湯を浴びた場合に注意すべき脱ぎ方と処置の順番
衣類の上から熱湯がかかった場合、無理に服を脱ごうとしてはいけません。慌てて脱ごうとすると、熱によって柔らかくなった皮膚が衣類と一緒に剥がれてしまい、重篤な損傷を招く恐れがあります。
まずは服を着た状態のまま、その上から冷水をかけ続けてください。水の浸透を利用して、皮膚の温度を下げることが最優先です。このとき、熱がこもらないようにたっぷりと水を使います。
十分に冷やし、皮膚の温度が下がったことを確認してから、ハサミなどで衣類を切り開くようにして優しく取り除きます。無理に引っ張る動作は厳禁です。
皮膚と布が密着している部分は、無理に剥がさずそのままにして、すぐに医療機関を受診することが賢明です。専門医が適切な溶剤などを用いて処理を行います。
靴下やタイツなどの密着度の高い衣類は、特に注意が必要です。熱湯が繊維の間に保持されるため、冷却が遅れると深刻なダメージになりやすい傾向があります。
冷却の最中に、時計や指輪などのアクセサリー類も忘れずに外しておきましょう。後で患部が腫れてくると、圧迫されて取り外しが困難になるだけでなく、血流を阻害する原因となります。
衣服の素材が化学繊維の場合、熱で溶けて皮膚に付着している可能性も考えられます。その場合は自己判断で処置せず、冷却だけを続けて病院へ向かってください。
衣類着用時の冷却手順
| 状況 | 優先アクション | 注意点 |
|---|---|---|
| 服の上から熱湯 | 服の上から直接流水 | 無理に脱がない |
| 靴下やタイツ | 脱がずにそのまま冷却 | 皮膚剥離を防ぐ |
| 時計や指輪 | 冷却しながら外す | 腫れる前に取り除く |
広範囲にお湯がかかった際の全身の冷やしすぎと低体温症の回避
全身にお湯を浴びてしまった場合、広範囲を長時間冷やし続けると、体温が奪われすぎて低体温症を引き起こす危険があります。特にお子さんや高齢者の場合は、体温調節機能に注意が必要です。
患部以外の場所は乾いたタオルや毛布で保温し、意識が朦朧としていないか確認しながら進めてください。冷やす部位を限定し、順繰りに冷やすなどの工夫も検討します。
広範囲のやけどは、家庭での処置には限界があります。冷却を開始すると同時に、周囲の人に助けを求めたり、救急車を要請したりすることを検討してください。
冷却は移動中も保冷バッグや濡れタオルなどを活用して継続することが重要です。救急隊が到着するまでの間も、できる限りの冷却を続けてください。
病院に到着した際、どのくらいの時間、どのような方法で冷やしたかを医師に伝えると、その後の診断がスムーズになります。
お湯によるやけどの深さを正しく見極めて病院へ行くべきか判断する基準
やけどの重症度は、皮膚の色や水ぶくれの有無、そして痛みの強さによって判断できます。特に顔面や関節、広範囲の損傷は、将来的な機能障害や跡を残さないためにも、早期の専門的治療が必要です。
ヒリヒリとした赤みが出る1度熱傷の症状と自宅でのケア方法
お湯がかかった場所が赤くなり、ヒリヒリとした痛みがある状態は、1度熱傷と呼ばれ、皮膚の最も外側にある表皮のみが損傷を受けている状態で、日焼けに近い現象です。
適切に冷やした後は、清潔を保ち、低刺激の保湿剤で保護することで、通常は数日から1週間程度で跡を残さず自然に治癒します。特別な処置が不要なことも多いです。
ただし、赤みが引かない場合や、後から水ぶくれが出てきた場合は、深さが2度へ移行している可能性があります。数日間は患部の状態を注意深く観察してください。
変化があれば速やかに医療機関に相談してください。1度熱傷であっても、範囲が非常に広い場合や、痛みが我慢できないほど強い場合は、受診をためらう必要はありません。
自宅でケアをする際は、石鹸をよく泡立てて、こすらずに優しく洗うことが基本です。その後、ワセリンなどを薄く塗って乾燥を防ぐと、治りが早くなります。
寝ている間に無意識に患部を触ってしまう恐れがあるなら、ゆったりとした包帯やガーゼで軽く保護しておくと安心です。通気性は確保するようにしましょう。
水ぶくれができる2度熱傷の種類と皮膚科受診を推奨する理由
水ぶくれが形成されるのは、真皮と呼ばれる皮膚の深い層まで熱が達した証拠です。2度熱傷はさらに浅いものと深いものに分けられますが、いずれにしても細菌感染のリスクが高まります。
水ぶくれは天然の絆創膏として機能するため、絶対に自分で潰してはいけません。万が一破れた場合は、中の真皮が露出して非常に強い痛みを感じることになります。
皮膚科では、専用の被覆材や軟膏を使用して、感染を防ぎながら皮膚の再生を促す治療を行い、痛みを大幅に和らげることができます。
自己流の処置で感染を起こすと、傷跡が深く残りやすくなるため、水ぶくれを確認した時点で専門医の診察を受けることが、最も確実な跡を残さない方法です。
受診するまでの間は、水ぶくれが破れないように清潔なガーゼでふわっと覆い、テープで固定しておきます。このとき、テープを患部に直接貼らないよう注意してください。
2度熱傷の深いタイプになると、治癒に時間がかかり、色素沈着や肥厚性瘢痕といった跡が残りやすくなります。初期の治療介入がその後の経過を大きく左右します。
また、関節部分に水ぶくれができると、動かすたびに痛みが走り、無理に動かすと皮膚が裂けることもあります。固定が必要なケースもあるため、専門的な判断が欠かせません。
痛みを感じない3度熱傷の恐ろしさと緊急搬送が必要なケース
意外かもしれませんが、最も重症な3度熱傷では、痛みを感じないことがあります。これは熱によって痛みを感じる神経まで破壊されてしまったためであり、非常に深刻な事態です。
皮膚が白っぽく変色したり、黒く焦げたようになったり、革のような質感になった場合は、極めて危険な状態で、自力での回復は期待できません。
このレベルになると、皮膚の自然再生は難しく、植皮手術などの高度な医療処置が必要になることもあります。痛くないから大丈夫、と放置することは絶対に避けてください。
一刻も早い救命処置と専門的な外科的治療が必要です。すぐに救急車を呼ぶか、高度な治療が可能な総合病院の救急外来へ向かってください。
3度熱傷は皮膚だけでなく、その下の皮下脂肪や筋肉にまでダメージが及んでいることがあります。全身的な管理が必要になるケースも珍しくありません。
特に低温のお湯に長時間触れていたことで起きる低温やけども、見た目以上に深く進行していることが多く、3度に近い状態になることがあります。
やけどの深度による判別と対応
| 深度 | 主な症状 | 推奨される対応 |
|---|---|---|
| 1度熱傷 | 赤み、軽い痛み | 十分な冷却と保湿 |
| 2度熱傷 | 水ぶくれ、強い痛み | 皮膚科を受診 |
| 3度熱傷 | 白・黒変、無痛 | 直ちに救急外来へ |
絶対にやってはいけないお湯のやけどに対する間違った処置の数々
パニックになると、つい昔ながらの民間療法や間違った知識に頼ってしまいがちですが、症状を悪化させる原因になります。正しい医学的根拠に基づいた処置を選択することが、早期回復への最短距離です。
アロエや味噌などの民間療法が皮膚の感染症を招くリスク
かつてはアロエを貼るなどの方法が推奨された時代もありましたが、現代の医学では否定されています。植物や食品には雑菌が多く含まれており、皮膚に塗ることは細菌を植え付けているようなものです。
感染が起きると炎症が長引き、本来残らなくて済んだはずの跡が一生残る原因となります。自然由来のものが必ずしも安全であるとは限らないことを理解しましょう。
また、油分を塗ってしまうと、熱を皮膚内部に閉じ込めてしまう効果があり、冷却を妨げます。これは初期のダメージをさらに深くしてしまう悪手と言わざるを得ません。
医療機関での診察時にも、これらを除去するために患部を拭い取らなければならず、余計な痛みを与えることになります。清潔な水以外は何もつけないのが正解です。
他にもマヨネーズやオリーブオイルを塗るという話もありますが、同様に不衛生であり、医学的には全く推奨されません。皮膚の呼吸や再生を妨げるだけです。
万が一、何かを塗ってしまった場合は、流水で優しく洗い流せる範囲で取り除きます。無理にこすり取ろうとすると皮膚を傷めるため、医師に正直に伝えて処置を任せましょう。
傷口を消毒液で消毒しすぎることも、最近では避けるべきとされています。消毒液は細菌だけでなく、再生しようとしている細胞まで攻撃してしまうからです。
水ぶくれを自分で潰すと治癒が遅くなり跡が残りやすくなる理由
膨らんだ水ぶくれが気になって、針で突いて中身を出したくなる気持ちは分かりますが、水ぶくれの中にある液体には、皮膚の再生を助ける成長因子が豊富に含まれています。
同時に外部の菌から傷口を守る役割を果たしているため、壊すことはバリアを自ら破壊することに他なりません。治癒速度を著しく低下させてしまいます。
無理に潰して中の生身の皮膚を露出させると、激しい痛みとともに乾燥が進み、細胞の修復がストップしてしまい、深い傷跡になる可能性が高まります。
もし自然に破れてしまった場合は、清潔なガーゼで優しく保護し、早めに皮膚科で適切な処置を受けてください。医師が必要と判断した場合には、適切な方法で穿刺を行います。
水ぶくれが大きすぎて破れそうな場合は、ドーナツ状に厚みをつけたガーゼを周囲に置いて保護するなど、物理的な刺激を回避する工夫が有効です。
衣類との摩擦で破れることも多いため、ゆったりとした服装を心がけることも大切です。保護用のハイドロコロイド材などを使用する場合は、必ず医師の指導を仰ぎましょう。
中身の液体が濁ってきたり、周囲の赤みが広がってきたりした場合は、感染の兆候です。早急な抗生物質の投与が必要になることもあるため、放置は厳禁です。
氷や強力な保冷剤を直接当てることで起こる凍傷と組織壊死
早く冷やしたい一心で、冷凍庫の氷や保冷剤をダイレクトに肌に当てるのは避けてください。やけどでダメージを受けた皮膚は非常にデリケートになっており、極端な低温にさらされると凍傷を引き起こします。
凍傷は細胞を凍結させ、血流を完全に止めてしまうため、結果としてやけどを深くするのと同じような組織壊死を招きます。冷やす強さよりも、持続的な冷却が重要です。
冷やす際は、必ず水道水にするか、保冷剤を使用する場合でも厚手のタオルでくるみ、冷たすぎないように調整することが重要です。氷水に直接手を入れるのも短時間にとどめましょう。
特に感覚が鈍くなっている部位では、凍傷に気づくのが遅れがちです。定期的に皮膚の状態を確認し、異変があれば当てる位置をずらしたり、冷却を弱めたりしてください。
冷却シートのような製品も便利ですが、ひんやり感を感じるだけで内部の熱を奪う力は流水に劣ります。初期の緊急対応としては、あくまで流水を第一選択としてください。
また、冷やす時間は長ければ長いほど良いわけではありません。30分程度しっかり冷やした後は、患部を清潔に保つことにシフトしていくのが、標準的な医学的判断です。
禁止されているNG行動の確認
- アロエや味噌などの食品を患部に直接塗布する
- 氷や保冷剤を直接肌に長時間密着させて冷やす
- 自分自身で水ぶくれを針などで穿刺して潰す
- 消毒液を患部に繰り返し使用して乾燥させる
お湯でのやけど跡を残さないために実践すべき治療期間中の遮光と保湿
やけどの痛みや腫れが引いた後のケアこそが、跡を残さないための勝負どころです。徹底したUVカットと、十分な保湿を継続することが、綺麗な状態を取り戻すための最短ルートとなります。
色素沈着を防ぐための徹底した紫外線対策と日焼け止めの使い方
やけどの後の皮膚は、メラニン細胞が活性化しやすい状態にあり、ここで日光を浴びてしまうと、炎症後色素沈着と呼ばれる茶色い跡が長く残ってしまいます。
外出時はもちろん、家の中にいる時でも、窓からの光には注意してください。患部が露出している場合は、紫外線対策が必須です。物理的な遮断が最も効果的です。
皮膚が完全に閉じ、医師の許可が出てからは、低刺激の日焼け止めを毎日塗りましょう。PAやSPFの値よりも、肌に負担をかけないノンケミカルな製品が推奨されます。
この努力を最低でも半年は続けることで、跡が目立たなくなる確率が飛躍的に高まります。油断して数日日光に当たるだけで、これまでのケアが台無しになることもあります。
衣服で隠す場合も、薄手の夏服などは紫外線を透過させやすいため注意が必要です。遮光性の高い保護テープやサポーターを併用すると、より確実な防御が可能です。
曇りの日や雨の日でも、地上にはかなりの量の紫外線が降り注いでいます。季節を問わず、やけど跡のケア期間中は徹底したガードを心がけましょう。
皮膚のバリア機能を助けるワセリンや低刺激クリームによる保湿
再生したての皮膚は水分を保持する力が弱く、放っておくとすぐに乾燥して硬くなってしまいます。乾燥はかゆみを引き起こし、患部を掻いてしまうことでさらに跡を悪化させます。
ワセリンなどの油分を主成分とした保湿剤で、皮膚に膜を張ってあげることが大切です。こまめに塗ることで、外部刺激からデリケートな肌を守るバリア機能を補えます。
保湿をしっかり行うことで、皮膚の柔軟性が保たれ、肥厚性瘢痕と呼ばれる盛り上がった跡になるリスクを下げることができます。肌がしっとりしている状態を維持してください。
お風呂上がりだけでなく、乾燥を感じる前に塗り直す習慣をつけてください。外出先でもケアできるよう、小さな容器に小分けにして持ち歩くのがおすすめです。
クリームを塗る際は、強くすり込むのではなく、ポンポンと置くように優しくなじませます。摩擦自体が炎症を再燃させる火種になりかねません。
ヘパリン類似物質を含む保湿剤などは、血行を促進しすぎる場合もあるため、使用時期については主治医に確認してから使い始めるのが賢明です。
かゆみが強くて眠れないようなときは、保冷剤をタオルで巻いて一時的に冷やすと落ち着きます。絶対に爪を立てて掻きむしらないように自制心が必要です。
傷跡を平らにならすための圧迫療法とシリコンシートの活用
万が一、跡が赤く盛り上がり始めた場合は、皮膚科で相談の上、シリコンシートや圧迫療法を導入することがあります。
過剰な血管の増殖やコラーゲンの過形成を抑える効果があり、見た目を平らに整えるだけでなく、引きつれ感などの違和感を軽減する目的でも行われます。
市販の保護テープよりも専門的なケアが必要な場合が多いため、医療用の製品を正しく使用してください。24時間に近い時間装着し続けることで、高い効果を発揮します。
根気強くケアを続けることで、数年かけて跡は徐々に白く平らになっていきます。焦らず、専門医と二人三脚で治療に取り組む姿勢が何よりも大切です。
シリコンシートは洗って繰り返し使えるものが多いですが、衛生面には十分に配慮しましょう。かぶれなどの肌トラブルが起きたら、すぐに使用を中断して医師に相談します。
圧迫用の包帯やサポーターも、締め付けが強すぎると血流障害の原因になります。適切な強さを指導してもらい、定期的に装着状態をチェックすることが推奨されます。
跡を残さないためのケア期間の目安
| 時期 | ケアの目的 | 具体的な内容 |
|---|---|---|
| 受傷〜2週間 | 皮膚の再生促進 | 軟膏と被覆材での密閉 |
| 2週間〜3ヶ月 | 炎症の沈静化 | 保湿と遮光の徹底 |
| 3ヶ月〜1年 | 跡の成熟 | 必要に応じた圧迫ケア |
お子さんがお湯でやけどをした際に大人が落ち着いて対処すべき手順
お子さんのやけどは、大人以上に深刻な影響を及ぼす可能性があります。泣き叫ぶお子さんを前にしても、大人が冷静に冷却処置を行い、迅速に医療機関へと繋げてください。
泣いて嫌がるお子さんを安全に冷やし続けるための工夫と注意点
じっとしていられないお子さんを15分間冷やし続けるのは至難の業なので、お風呂場でシャワーを浴びせながらお気に入りのおもちゃで気を引くなど、工夫が必要です。
冷たすぎて痛みを感じる場合は、水温を微調整してあげてください。キンキンの冷水である必要はなく、20度程度の水でも持続的にかければ十分な冷却効果が得られます。
無理やり押さえつけるとパニックになり、かえって危険な場合もあります。濡れタオルを数枚用意し、頻繁に交換しながら患部を覆う方法も、心理的な負担を軽減できます。
冷却中は、お子さんの顔色や呼吸の状態を常に観察してください。寒さで震え始めたら、患部以外をしっかり温めるようにタオルでくるんであげることが大切です。
子供のやけどで夜間や休日に救急外来を迷わず受診すべきサイン
夜間や休日にお湯でやけどをした場合、翌朝まで待つべきか悩むこともあるでしょう。しかし、お子さんの場合は判断を急ぐべきケースが多く、躊躇は禁物です。
水ぶくれの範囲が手のひらサイズ以上ある、顔や手足の指、陰部などに及んでいる場合は、緊急性が高く、これらは機能的な後遺症のリスクがあるためです。
また、元気がない、尿が出ない、水分を全く摂れないなどの症状があれば、脱水症状や全身への影響が疑われます。迷わず夜間救急を受診するか、119番通報を検討しましょう。
子供の皮膚は再生能力が高い反面、炎症の進行も驚くほど早いです。早期に適切な軟膏治療を開始することで、将来の成長に伴う皮膚のひきつれなどを防ぐことができます。
病院へ行く車中でも、冷やしたタオルなどで患部の冷却を止めないように注意してください。移動中のダメージ進行を最小限に抑えることが、医師へのタスキを繋ぐ行為です。
家庭内でお湯による事故を防ぐための安全対策と環境づくり
やけどは起きてからの処置も大切ですが、起こさない環境づくりが一番の治療で、炊飯器の蒸気、テーブルクロスの端に置かれたカップ、ポットのコードなどは危険の宝庫です。
お子さんの目線に潜む熱湯の危険を、大人の目で今一度点検してみてください。チャイルドロックの活用はもちろん、熱いものを置く場所を徹底的に高くすることが基本です。
一度起きてしまった事故を教訓に、家族全員で安全意識を高めることが、再発防止に繋がります。キッチンにゲートを設置するなど、物理的な距離を保つ工夫も有効です。
来客時などは注意が散漫になりやすいため、特に注意が必要です。熱い飲み物を運ぶときは、お子さんが周囲にいないか、足元にまとわりついていないか確認しましょう。
お風呂の温度設定も、給湯器のパネルで直接管理する習慣をつけます。蛇口からお湯を出す際、最初に熱湯が出るタイプのものもあるため、必ず大人が確認してから入浴させます。
万が一に備えて、応急処置の方法を冷蔵庫の目立つ場所に貼っておくなど、いざという時に誰でも動ける準備をしておくことも、家庭の安全管理の一環です。
子供のやけど緊急度チェックリスト
- 範囲が子供の体の10%(片腕全体など)を超えている
- 顔、手、足、関節、生殖器にやけどを負った
- 水ぶくれが白っぽく、本人が痛みを感じていない
- 冷却を続けても激しく泣き続け、なだめることができない
よくある質問
- お湯でやけどした時の応急処置として、流水で冷やす時間はどのくらいが目安ですか?
-
最低でも15分、できれば30分程度は冷やし続けてください。
痛みが和らぐまでが目安となりますが、途中でやめてしまうと残熱でやけどが深くなるため、しっかりと時間をかけることが大切です。
- お湯でやけどした時にできた水ぶくれは、跡を残さないために潰しても良いのでしょうか?
-
いいえ、絶対に潰さないでください。
水ぶくれは外部の刺激や細菌から傷口を守る役割を果たしています。中にある液体には皮膚の再生を助ける成分が含まれているため、そのまま保護して皮膚科を受診してください。
- お湯でやけどした後に皮膚が赤くなった場合、市販の薬を塗っても大丈夫ですか?
-
赤みがあるだけの軽い1度熱傷であれば、市販의ワセリンなどで保湿しても構いません。
しかし、痛みが強い場合や水ぶくれがある場合に、自己判断でステロイド軟膏などを使用すると悪化することもあるため、皮膚科での処方を受けることをお勧めします。
- お湯でやけどした箇所が治った後、茶色い跡にならないようにするにはどうすれば良いですか?
-
徹底した紫外線対策と保湿を数ヶ月継続してください。
新しくできた皮膚は弱く、日光を浴びると色素沈着を起こしやすいため、日焼け止めや被覆材を使って患部を日光から遮断することが跡を残さないための秘訣です。
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