目尻のシワ解消に用いられる治療のひとつ、ボトックス。この記事では、目尻のボトックスについて、効果やデメリット、打つ場所などを解説しました。
「笑顔が不自然になる」「笑えなくなる」「効かない」などの気になる噂についても触れていますので、ボトックスを検討されている方はぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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目尻のボトックス注射の効果
ボトックスには筋肉の動きを抑える作用があります。この特性を利用すると、表情筋によってできる顔のシワを和らげる効果が期待できます。
通常、注射後1週間程度で目尻のシワが目立ちにくくなり始めます。効果は個人差がありますが、一般的に数ヶ月持続するとされています。
目尻の“笑いジワ”が目立たなくなる
目尻のシワは、主に眼輪筋と呼ばれる目の周りの筋肉の動きによって生じます。この筋肉の動きで皮膚が引っ張られ、折りたたまれたような形でシワができます。
ボトックス注射は、この筋肉の動きを緩和し、シワの形成を抑える可能性があります。また、長期的には細かなシワ(ちりめんジワ・カラスの足跡と呼ばれるようなシワ)の予防にも役立つ可能性があります。
いつから効果を実感できる?
個人差はありますが、早い方だと3日ほどで効果を実感できる場合もあります。
効果の持続期間は?
ただし、患者様の体質、注入する薬の量や治療の継続期間によって個人差があります。
代謝の速い人や筋肉の強い人では効果が早く薄れる傾向があり、逆に代謝の遅い人や筋肉の弱い人では、効果が長く続くことがあります。
ボトックスで目が大きくなるってほんと?
ボトックス注射自体に目を直接大きくする効果はありません。ただし、以下のような副次的な効果により、目が大きく見える印象を受ける場合があります。
- シワが和らぐことによる視覚効果
- 周辺の筋肉のリラックスによる目の開き具合の変化
- 表情の変化による印象の違い
これらの効果は個人差が大きいため、必ずしも全ての方に当てはまるわけではありません。ボトックス注射の主な目的はシワの改善となります。
ボトックスの効果や目的、副作用を動画(Youtube)で解説
目尻ボトックスを打つ場所
目尻のボトックスを打つ場所は、目の周りにある眼輪筋と呼ばれる部位です。
目の周りの眼輪筋に注射する
目の周りにある眼輪筋は外眼角付近を中心に、Oc(outer canthus=目尻)1~4に分けられています。
外眼角付近(目尻から1.5cm~2.0cm外)…Oc1
外眼角の上周辺…Oc2
外眼角の下周辺…Oc3
まぶた付近…Oc4
目尻のボトックスの場合、Oc1~Oc3の左右6か所に注射する場合が多いです。(治療によってはOc4に注射する場合もあります。)
状態や患者様の要望に応じて細かな部位を選定する
Oc1~Oc3の部位のどの場所にボトックスを注入するかは、患者様の要望や目の形、筋肉の状態を考慮し判断します。
眼輪筋は皮膚の中でも比較的浅い層にあるため、真皮層を中心に注入しますが、シワの状態によっては皮下組織に注入する場合もあります。
単位数の目安
ボトックス注射の量は「単位(U)」で表されます。
単位(U)とは
単位(U)とは、製剤に配合されているA型ボツリヌストキシンの量を、国際単位で換算したものです。
目尻ボトックスの場合の目安
目尻のボトックスを行う場合、1回の施術で注入できるのは最大合計24単位までとなっており、1か所あたりでは1~5単位です。
ただし、シワの深さや範囲、筋肉の強さ、希望する効果などによって個人差があります。医師とのカウンセリングで相談し、一人ひとりに合わせた単位数を決定することが大切です。
一般的には、初めての方や、自然な仕上がりにしたい方は、少なめの単位数から始めることが多いです。効果が不十分な場合は、後日追加することも可能です。
目尻のボトックスの値段
目尻のボトックス注射の費用は、医療機関や治療範囲によって異なります。一般的な価格帯や影響する要因について解説します。
平均的な価格帯
目尻のボトックス注射の費用は、通常1回あたり数万円から10万円程度の範囲内であることが一般的です。
※あくまで目安であり、実際の費用は様々な要因により変動します。
費用に影響する要因
目尻だけでなく、額や眉間など他の部位も同時に治療する場合は費用が増加します。また、シワの程度や希望する効果によって、必要な薬剤の量が変わります。
当院のボトックスの料金
1部位 | ¥22,000(税込) |
---|---|
2部位 | ¥38,500(税込) |
3部位 | ¥49,500(税込) |
スキンボトックス
全顔 | ¥55,000(税込) |
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Tゾーンのみ | ¥38,500(税込) |
エラボトックス
¥49,500(税込) |
ボトックスリフト
¥38,500(税込) |
脇ボトックス
¥49,500(税込) |
間隔・頻度
ボトックスはあくまでも一時的な効果をもたらす対処療法であるため、効果を維持させるためには継続的な治療が必要です。
注射の間隔や頻度には個人差があるものの、一般的には3~6ヶ月おきの注射がすすめられます。
注入部位の状態を観察しつつ、医師と相談しながらベストなタイミングを決めていきます。
推奨される注射間隔
多くのクリニックで3〜6ヶ月ごとの注射を推奨しています。これは、効果が薄れ始める前に再度注射を行うことで、継続的な効果を維持するためです。
ただし、個人の状態や希望する効果によって間隔を調整します。
施術の間隔・頻度に影響を与える要因
- 年齢: 若い人ほど筋肉の再生が早いため、効果の持続期間が短くなる傾向です。
- 表情の癖: よく目を細める習慣がある人は、効果が早く薄れる可能性があります。
- 代謝速度: 代謝が速い人は、ボトックスの分解も早くなります。
- 筋肉の強さ: 表情筋が発達している人は、効果が短期間で薄れやすいです。
- 生活習慣: 運動、ストレス、日光暴露などの要因も効果の持続に影響を与えます。
過度な施術には注意
ボトックス注射を頻繁に繰り返すと、筋肉が萎縮し、かえって老けて見える可能性があります。また、抗体ができて効果が薄れる「ボトックス耐性」のリスクも高まります。
そのため、必要以上に頻繁な注射は避けるべきです。
年齢による調整が必要
加齢とともに、皮膚の弾力性が低下し、シワの形成が加速します。そのため、年齢が上がるにつれて、ボトックス注射の頻度を徐々に増やす必要があります。
ただし、過度な注射は避け、自然な表情を維持することが重要となります。
ボトックスの頻度を抑えるためには
ボトックス注射の効果を最大限に引き出し、頻度を抑えるためには、日常生活での対策も重要です。
十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事、十分な水分摂取、紫外線対策などを心がけることで、肌の状態を改善し、シワの形成を遅らせることができます。
- 紫外線対策
- 保湿を入念にする
- バランスのいい食事
- 十分な睡眠
紫外線や乾燥はシワを悪化させる原因になるため、特に気を付けていただきたいケアです。
また、食事や睡眠を管理できると正常な肌のターンオーバーが促され、シワが目立ちにくい健康的な肌の維持にも繋がります。
目尻のボトックスの痛みは?
目尻のボトックスは比較的痛みが少ないとされています。注射針を刺す際にチクッとした痛み、薬剤が皮膚内に入って行く際にツーンとした痛みをやや感じる程度です。
また、目尻は注入する単位が多くないため、他の部位のボトックスと比較すると痛みを感じにくいです。
痛みの程度
一般的に、目尻へのボトックス注射の痛みは軽度から中程度と言われています。多くの患者さんは、「ちくっとした」感覚と表現します。
痛みの感じ方には個人差があり、痛みに敏感な人もいれば、ほとんど痛みを感じない人もいます。
また、目尻のボトックス注射は、通常1回につき2〜3箇所に注射します。注射回数が少ないため、全体的な痛みの経験は比較的短時間で済みます。
年齢による違い
一般的に、若い人のほうが皮膚の弾力性が高く、注射時の痛みをやや強く感じる傾向です。
一方、年齢を重ねると皮膚の感覚が鈍くなり、痛みを感じにくくなる場合があります。
注射部位の特性
目尻は顔の中でも比較的敏感な部位です。皮膚が薄く神経終末が多いため、他の部位と比べてやや痛みを感じやすい傾向です。
ただ、注射に使用する針は非常に細いため、痛みは最小限に抑えられます。
麻酔の使用
多くの場合、ボトックス注射前に局所麻酔クリームを塗布します。これにより、注射時の痛みをさらに軽減できます。
注射後の痛み
注射直後は、軽度の痛みや不快感が続く場合があります。これは通常、数時間から1日程度で自然に軽減します。
まれに、注射部位に軽度の腫れや赤みが出ることもありますが、これらも短期間で改善します。
経過とダウンタイム
目尻のボトックス注射は、基本的にダウンタイムが短い治療法です(個人差はあるものの、長くとも一週間程度です)。治療直後から通常の生活に戻ることができます。
治療直後
治療直後は、注射部位に軽度の赤みや腫れが見られることがあります。これは通常の反応で、ほとんどの場合数時間以内に落ち着きます。
- 赤み:注射針による刺激で一時的に生じます。
- 腫れ:軽度の浮腫が起こる場合がありますが、多くの場合わずかです。
- 小さな出血点:まれに、注射部位に小さな出血点が見られることがあります。
治療後24時間
最初の24時間は、以下の点に注意が必要です。
- 注射部位をこすらない
- 激しい運動を避ける
- アルコール摂取を控える
- サウナやホットヨガなど、高温環境を避ける
治療後2〜3日
多くのケースでこの時期に効果を実感できます。
まれに、筋肉が動きにくくなる感覚や、効果の現れ方に左右差があることがありますが、一時的なものです。
治療後4〜7日
ボトックスの効果が顕著になる時期です。
- 目尻のしわの減少を実感できる
- 表情を作った時のしわの形成が抑えられる
- 目元全体がスッキリとした印象に感じられる
まれに、この時期に軽度の頭痛を感じる方もいますが、通常は短期間で解消します。
治療後1〜2週間
ボトックスの効果が最大になる時期です。自然な表情を保ちながらしわの形成が抑えられ、目元全体が若々しく見える実感があります。
治療後1ヶ月〜3ヶ月
効果が安定し、最も満足度の高い時期です。
治療後3ヶ月以降
個人差はありますが、3〜6ヶ月程度で徐々に効果が薄れ始めます。
わずかにしわが戻り始め、表情を作った時のしわが以前より目立つようになります。効果を維持したい場合は、この時期に再治療を検討します。
ダウンタイムについて
目尻のボトックス注射は、ダウンタイムがほとんどない治療として知られています。しかし、完全にゼロというわけではありません。
治療当日から通常の仕事に戻ることができます。デスクワークなどでは全く問題ありません。また、治療直後から外出可能です。ただし、注射部位の赤みが気になる場合は、メイクでカバーすることをお勧めします。
治療翌日からウォーキングなどの軽い有酸素運動は問題ありません。ジョギング、ウェイトトレーニング、ヨガなどの激しい運動は、治療後24〜48時間は避けるべきです。
- 洗顔:治療当日は優しく洗顔し、こすらないようにします。翌日からは通常通りのスキンケアが可能です。
- メイク:治療直後からメイクは可能ですが、優しく行うようにしましょう。
- 日焼け対策:治療後は日焼けに注意が必要です。日焼け止めの使用を心がけましょう。
- 入浴:シャワーは問題ありませんが、治療当日の長時間の入浴や高温の湯は避けましょう。
- 飲酒:治療当日は避けるようにしましょう。
注意すべき症状
以下の症状が現れた場合は、施術を受けたクリニックへ相談してください。
- 持続する強い痛み
- 著しい腫れや赤み
- まぶたの下垂感
- 視力の変化
- 強い頭痛
目尻ボトックスのデメリット・副作用
目尻のボトックスの副作用には、注射部位の痛みや腫れ、頭痛や吐き気といった身体の不調、不自然な仕上がりなどがあります。
65歳の方はボトックスの有効性が低いと報告されているほか、副作用の影響を受けやすくなる可能性が高い点からボトックス治療を受けられません。
注射部位の痛み、腫れ、内出血
注射部位が痛んだり腫れたりする場合があります。赤みや熱を帯びるケースもありますが、いずれも2~3日程度で消失してき、1週間ほどで落ち着きます。
身体の不調
注射後に頭痛、吐き気、筋肉痛、アレルギー反応などを起こす場合があります。身体の不調を感じた際には速やかに医師に相談するようにしましょう。
頭痛は額周辺の筋肉にボトックスが効きすぎてしまうことによって起こりやすい副作用ですが、目周辺の治療時、まぶたが重くなることでも起こる可能性があります。
特に40代以降の方ではじめてボトックスを受けられる方、体質や加齢によりまぶたが下がり気味の方は注意が必要です。
ボトックスの効きすぎを避けるため、他の治療方法を組み合わせる、ほどほどの量にとどめておく、などの方法が選択されます。
不自然な仕上がり
誤った場所にボトックスを打ってしまったり、薬剤の量が多すぎてしまうと不自然な仕上がりになってしまったりする可能性があります。
- 不自然な笑顔になる
- 眉毛が下がる
- 左右の目の大きさが非対称になる
目尻ボトックスが不自然にならないためには、注入量や注入部位を正しく選定する必要があります。
耐性ができる
耐性とは、ボトックスを受け続けるとだんだんと効かなくなる現象です。これはボトックスに対する中和抗体であると言われています。
具体的には一度に100単位異所のボトックスを受ける際は、中和抗体ができやすい傾向があると言われています。
また、高頻度でボトックスを受けたり、高濃度のボトックスを注入したりする行為も中和抗体ができやすくすると言われています。
ボトックスの耐性ができる減少は稀ではあるものの、もし、ボトックスを何か所か希望されている方は、できるだけ一度にまとめて受けられるようおすすめします。
「笑顔が不自然になる」「笑えなくなる」「効かない」などの噂について
目尻のボトックス注射に関する噂の多くは、不適切な施術や誤解に基づいています。
「笑顔が不自然になる」
この噂の背景は、過剰な施術や不適切な注射位置が原因であると考えられます。過剰な注射や不適切な位置への注射は、確かに表情の不自然さを引き起こす可能性があります。
- 経験豊富な医師による施術を受ける
- 自然な仕上がりを希望する旨を医師に伝える
- 段階的な施術を検討し、効果を見ながら調整する
「笑えなくなる」
この噂は、ボトックスの筋肉弛緩効果を過大解釈したものと考えられます。
ボトックスは筋肉の動きを完全に止めるわけではなく、過度の収縮を抑制するものです。正しく施術された場合、笑顔をつくることは可能です。
- 施術直後は若干の違和感を感じる可能性がありますが、これは一時的なものです。
- 極端に大量の注射を受けた場合、表情筋の動きが制限される可能性があります。
「効果がない」
この噂には、いくつかの要因が考えられます。可能性のある原因は以下のとおりです。
- 個人の体質による効果の差
- 施術者の技術不足
- 期待と現実のギャップ
- 偽造品や希釈されすぎた製品の使用
多くの場合、ボトックスは目に見える効果をもたらします。ただし、効果の持続期間や程度には個人差があり、初回の施術では控えめな量から始めることが多く、劇的な変化を感じにくい場合もあります。
- 信頼できる医療機関で施術を受ける
- 効果について現実的な期待を持つ
- 必要に応じて追加施術や他の治療法との併用を検討する
まとめ
目尻のボトックス注射は、眼輪筋の働きを抑制することで表情シワを改善する効果的な美容処置です。比較的痛みが少なく、短期間で効果を実感できる利点があります。
ただし、効果は4〜5ヶ月程度と一時的なため、継続的な治療が必要です。
一般的な副作用は軽微ですが、稀に不自然な仕上がりや耐性といった問題が生じる可能性もあります。初めての方は控えめな量から始め、経験豊富な医師に相談することが重要です。
施術を希望される場合は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
目尻ボトックスでよくある質問
参考文献
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