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シラミ症

シラミ症

シラミ症(pediculosis)とは、ヒトシラミという微小な寄生虫が人体の頭皮や体毛に付着し増殖することで発症する感染症です。

シラミ症では、シラミが皮膚を刺して吸血するため、強烈な掻痒感や皮疹が生じます。

シラミは肉眼で確認できる大きさですが、俊敏な動きゆえに発見が困難な場合もあり、感染経路は、感染者との接触や、感染者が使用した帽子・櫛などの共用品です。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

シラミ症の病型

シラミ症は、アタマジラミ症、コロモジラミ症、ケジラミ症に分類されます。

アタマジラミ症

アタマジラミ症は、頭部に寄生するアタマジラミが原因となる病型です。

頭皮や髪の毛にアタマジラミが寄生し、頭髪に卵を産み、卵は髪の根元にしっかりと付着します。

特徴内容
寄生部位頭皮、髪の毛
主な対象幼児、学童期の児童
感染経路頭部の直接接触、共用品

アタマジラミ症は、集団生活を送る環境で急速に広がります。

コロモジラミ症

コロモジラミ症は、衣服に寄生するコロモジラミが起こす病型です。

衣服の縫い目や襟元にコロモジラミが潜み、衣服の繊維に卵を産み付け、孵化して成長していきます。

ケジラミ症

ケジラミ症は、陰毛に寄生するケジラミが原因となる病型です。

陰部周辺の体毛にケジラミが寄生し、陰毛や場合によっては脇毛、胸毛などの体毛に卵を産み付けます。

特徴内容
寄生部位陰毛、脇毛、胸毛
主な対象性的活動期の成人
感染経路性的接触、密接な身体接触

ケジラミ症は性感染症の一種として認識されることがありますが、必ずしも性的接触のみで感染するわけではなく、密接な身体接触や共用品を介しても感染します。

シラミ症の症状

シラミ症の症状は、強い痒みや皮膚の赤み、湿疹状の発疹です。

主な症状と特徴

シラミ症の代表的な症状は寄生虫のシラミが皮膚から吸血することで起き、最も顕著なのは強烈な痒みで、夜間に増悪すします。

この痒みは、シラミの唾液に対する人体のアレルギー反応が原因です。

多くの患者さんは、頭皮や後頸部、耳周囲に赤い発疹や小さな傷が生じ、掻破により二次感染を起こす恐れがあります。

症状特徴
痒み強烈で、夜間に悪化
発疹赤く、小さな傷を伴う
皮膚の色調変化掻破による色素沈着

部位別にみる症状

シラミ症の症状は、寄生部位によって異なる症状が現れます。

頭シラミ

  • 頭皮全体の激しい掻痒感
  • 耳後部や頸部の発赤
  • 毛髪根元に付着したシラミや卵(フケとの区別が肝要)

体シラミ

  • 体幹部、特に衣服の縫い目に沿った痒みや皮疹
  • 腋窩や鼠径部の皮膚色調の変化

陰部シラミ

  • 陰部周辺の強い掻痒感
  • 青みがかった皮膚の斑点(マキューラセルーレア)

症状の経過と合併症

シラミ症の症状は感染初期には軽微で気づきにくいことがありますが、時間とともに症状は悪化します。

  • 二次性細菌感染:掻破による皮膚の傷から細菌が侵入
  • 不眠症:夜間の強い痒みによる睡眠障害
  • 貧血:重度の感染による慢性的な失血
合併症原因
二次感染掻破による皮膚の損傷
睡眠障害夜間の強い痒み
貧血慢性的な出血

シラミ症の原因

シラミ症は、ヒトシラミ属(Pediculus)およびケジラミ属(Phthirus)に属する微小な昆虫が人体に寄生することで起こります。

シラミの生物学的特徴

シラミは、人間の血液を栄養源とする外部寄生虫です。

体長は2〜4mm程度で肉眼でも確認できますが、見つけにくいことがあり、シラミの生活環は、卵、幼虫、成虫の3段階で構成されています。

発育段階期間特徴
7〜10日髪の毛や衣服の繊維にしっかりと付着
幼虫約7日3回の脱皮を経て成虫になる
成虫約30日雌は1日に数個の卵を産む

シラミは、人間の体温と湿度を好み、条件が揃った環境で増殖します。

シラミ症の原因種

シラミ症を起こす原因種

  1. アタマジラミ(Pediculus humanus capitis)
  2. コロモジラミ(Pediculus humanus corporis)
  3. ケジラミ(Phthirus pubis)

それぞれのシラミは異なる部位に寄生し、独特の感染経路を持っています。

感染経路と伝播要因

シラミの感染経路は、直接的な接触や共用品を介した間接的な接触によるものです。

アタマジラミは、頭部の直接接触や帽子、タオルなどの共用で広がります。

感染経路
直接接触頭と頭の接触、抱擁
間接接触帽子、ブラシ、タオルの共用

コロモジラミは、不衛生な環境下で蔓延し、以下のような状況で感染リスクが上昇します。

  • 避難所や難民キャンプ
  • ホームレスの方々の生活環境
  • 衛生設備が整っていない地域

ケジラミは性的接触を通じて広がりますが、身体接触や共用のベッドリネンでも感染します。

シラミ症の発生要因

シラミ症の発生と拡大には、いくつかの要因が関わっています。

  1. 衛生状態の悪化
  2. 人口密度の高い環境
  3. 共用品の不適切な管理
  4. 感染者との密接な接触
  5. 衛生教育の不足

シラミ症の検査・チェック方法

シラミ症の診断は視診や触診、顕微鏡検査などを組み合わせて行われ、臨床症状の確認とシラミや卵(ニット)の発見により確定診断が下されます。

初期診断

シラミ症の診断は視診と問診から始まり、患者さんの症状や経過、生活環境などの情報収集が欠かせません。

視診では頭皮や体毛が生えている部位を観察し、シラミや卵の存在を確認します。

問診で重視する点

  1. 症状が現れた時期と経過
  2. 痒みの強さと場所
  3. 家族や周囲の人の類似症状の有無
  4. 最近の旅行歴や集団生活の経験

精密検査

視診で疑わしい所見が得られると、顕微鏡検査を行います。

検査方法特徴
顕微鏡検査シラミや卵を直接観察
ウッドランプ検査蛍光反応でニットを発見
櫛検査特殊な櫛でシラミを捕獲
  • 顕微鏡検査 疑わしい部位から採取した検体(毛髪や皮膚の削片)を顕微鏡で観察
  • ウッドランプ検査 特殊な紫外線ランプを使用して行い、ニット(シラミの卵)が蛍光反応を示す
  • 櫛検査 特殊な細かい櫛(シラミコーム)を用いて頭髪や体毛をとかし、シラミを捕獲

自己チェックの手法と留意点

シラミ症の早期発見には、定期的な自己チェックも大切です。

自己チェックの方法

  • 鏡を使った頭皮の観察:特に耳の後ろや首筋を入念に見る
  • 白い紙の上で髪をとかす:落下したシラミや卵を確認する
  • 家族や友人に頭皮を見てもらう:自分では見えにくい部分のチェック

ただし自己チェックには限界があり、シラミや卵は非常に小さく、見逃すことがあります。

シラミ症の治療法と治療薬について

シラミ症の治療は、駆除用シャンプーや軟膏などの外用薬を用いた局所療法と、イベルメクチンによる全身療法を組み合わせて行います。

局所療法

局所療法はシラミ症治療の第一選択で、駆除用シャンプーや軟膏などの外用薬を使います。

薬剤名主成分使用法
スミスリンシャンプーフェノトリン頭髪に塗り、10分後に洗い流す
スミスリンローションフェノトリン患部に塗り、24時間後に洗い流す

全身療法

症状が重い場合や局所療法で効果が見られないときは内服薬による全身療法を考慮し、全身療法で主に使う薬剤は、イベルメクチンです。

イベルメクチンは、広く虫を駆除する薬で、シラミにも高い効果を示します。

薬剤名主成分投与方法
ストロメクトール錠イベルメクチン体重に応じて1回飲み、7日後に再度飲む

治療期間と経過観察

シラミ症の治療期間は、約1〜2週間です。

完全に駆除するための注意点

  • 薬剤を再度塗ったり飲んだりする
  • 定期的に経過を見る
  • 感染源を特定し対策を立てる
  • 家族や親しく接触した人も同時に治療する

治療を始めてから数日間は生きたシラミが見つかることもありますが、これは普通の経過です。

再発防止と衛生管理

シラミ症の治療後は、再び感染しないよう衛生管理に気をつけてください。

  1. 寝具や衣類を高温(60℃以上)で洗う
  2. 使った櫛やブラシを消毒する
  3. 帽子やタオルを他の人と共用しない
  4. 定期的に頭皮や体をチェックする
  5. 制限があることもあります。

薬の副作用や治療のデメリットについて

シラミ症の治療に用いられる薬剤は、皮膚への刺激や神経系への影響、薬剤耐性の出現など、副作用やリスクを伴います。

殺虫剤系薬剤の副作用

シラミ症の治療で使用されるのはペルメトリンやマラチオンといった殺虫剤系薬剤ですが、高い効果を示す一方で、いくつかの副作用が報告されています。

  1. 皮膚刺激: 殺虫剤系薬剤の使用後、一時的な皮膚の発赤やかゆみ、刺激感が生じ、薬剤の刺激性に起因。
  2. アレルギー反応: 稀に、薬剤に対するアレルギー反応が起こり、症状には発疹、呼吸困難、めまいなどが含まれる。
  3. 頭皮の乾燥: 殺虫剤の使用により、頭皮が乾燥し、フケやかゆみが増加。
副作用症状頻度
皮膚刺激発赤、かゆみ比較的高い
アレルギー反応発疹、呼吸困難
頭皮の乾燥フケ、かゆみ中程度

神経系への影響

殺虫剤系薬剤のマラチオンは、神経系に影響を及ぼす可能性があります。

  1. 神経毒性: 過剰摂取や不適切な使用により、神経毒性症状が現れ、症状は頭痛、めまい、吐き気。
  2. 認知機能への影響: 長期的な曝露や高濃度の使用により、記憶力や集中力に一時的な影響。
  3. 運動機能への影響: 稀に、手の震えや協調運動の障害。

影響は一時的であり、薬剤の使用を中止すると改善します。

耐性の発現

シラミ症の治療における重要な問題の一つに、薬剤耐性の発現があります。

  1. 耐性メカニズム: シラミは遺伝的変異により、特定の薬剤に対する耐性を獲得し、同じ薬剤を繰り返し使用することで加速。
  2. 治療の困難化: 耐性シラミの出現により、従来の治療法が効果を失い、治療が困難に。
  3. 新薬開発の必要性: 耐性の発現で、新しい治療法や薬剤の開発が常に必要。
耐性の影響結果
治療効果の低下症状の持続
薬剤の変更治療期間の延長
新薬開発コスト治療費の上昇

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

シラミ症治療の費用

シラミ症の治療費は診察料と薬剤費から構成され、外来診療になります。

項目保険適用費用(3割負担の場合)
診察料あり1,000円〜1,500円
外用薬(シャンプー・軟膏)あり500円〜1,500円
内服薬(重症例の場合)あり1,000円〜3,000円

治療期間と総費用

シラミ症の治療期間は1〜2週間程度ですが、症状の程度や治療効果によって変動します。

  • 短期治療(1週間以内):3,000円〜5,000円
  • 標準的治療(1〜2週間):5,000円〜10,000円
  • 長期治療(2週間以上):10,000円〜20,000円以上

以上

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