思春期になると多くの人が経験するニキビ。「このニキビ、いつになったら治るの?」と鏡を見るたびにため息をついている方もいるのではないでしょうか。
思春期ニキビは、ホルモンバランスの変化や皮脂の増加などが主な原因で発生しますが、正しい知識を持ってケアをすれば、改善が期待できます。
この記事では、思春期ニキビが治る時期の目安や原因、ご自身でできる正しいスキンケア方法、そして皮膚科での専門的な治療法について、分かりやすく解説します。
ニキビの悩みから解放され、健やかな肌を取り戻すための一助となれば幸いです。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
思春期ニキビとは?
思春期ニキビは、主に10代の男女に多く見られる皮膚の症状です。おでこや鼻(Tゾーン)といった皮脂の分泌が多い部分にできやすいという特徴があります。
見た目だけでなく、時には痛みやかゆみを伴うこともあり、悩みの種となることも少なくありません。まずは、思春期ニキビの基本的な特徴について理解を深めましょう。
思春期ニキビの特徴
思春期ニキビの最も大きな特徴は、成長期におけるホルモンバランスの変化が深く関わっている点です。特に、性ホルモンの分泌が活発になることで皮脂腺が刺激され、皮脂の分泌量が過剰になります。
この過剰な皮脂が毛穴に詰まり、アクネ菌が増殖することでニキビが発生します。また、大人になってからできるニキビ(いわゆる大人ニキビ)と比較して、炎症が強く出やすい傾向も見られます。
思春期ニキビと大人ニキビの主な違い
項目 | 思春期ニキビ | 大人ニキビ |
---|---|---|
主な原因 | ホルモンバランスの変化(成長ホルモン、性ホルモン)、皮脂の過剰分泌 | 生活習慣の乱れ、ストレス、乾燥、ホルモンバランスの乱れ(生理周期など) |
できやすい場所 | Tゾーン(おでこ、鼻)、頬の上部 | Uゾーン(あご、口周り)、首、デコルテ |
皮脂の量 | 多い | 部分的に多い、または乾燥している |
一般的なニキビとの違い
「ニキビ」と一言で言っても、その原因や症状は様々です。思春期ニキビは、主にホルモンの影響で皮脂分泌が活発になることが引き金となります。
一方、大人ニキビは、ストレスや不規則な生活、乾燥、間違ったスキンケアなど、複数の要因が複雑に絡み合って発生することが多いです。そのため、ケアの方法もそれぞれ異なります。
思春期ニキビは皮脂対策が中心となるのに対し、大人ニキビは保湿や生活習慣の見直しも重要になります。
思春期ニキビができやすい年齢
思春期ニキビは、一般的に第二次性徴が始まる10歳頃から出始め、10代後半にピークを迎えることが多いです。男子では13歳~19歳頃、女子では12歳~18歳頃が特にできやすい時期と言われています。
ただし、これはあくまで目安であり、個人差があります。早い人では小学校高学年から、遅い人では20歳を過ぎても思春期ニキビに悩まされるケースも見られます。
思春期ニキビはいつ治るの?
「このニキビ、一体いつになったら治るのだろう?」というのは、思春期ニキビに悩む多くの方が抱く切実な疑問でしょう。ニキビが治る時期には個人差がありますが、一般的な目安や、なぜ個人差が生じるのかについて解説します。
治る時期の目安
多くの場合、思春期ニキビはホルモンバランスが安定してくる20歳前後には自然と軽快していく傾向があります。皮脂の分泌量が落ち着き、肌の状態が安定してくるためです。
しかし、これはあくまで一般的な傾向であり、すべての人に当てはまるわけではありません。適切なケアを行わずに放置したり、生活習慣が乱れていたりすると、20代以降もニキビが長引いたり、ニキビ跡として残ってしまったりする可能性があります。
個人差が大きい理由
思春期ニキビが治る時期に個人差が大きいのは、いくつかの要因が関係しています。
- 遺伝的な体質(皮脂の分泌量や肌質など)
- ホルモンバランスの変動の度合い
- スキンケアの方法(正しいケアができているか)
- 生活習慣(食事、睡眠、ストレスなど)
これらの要因が複雑に絡み合い、ニキビの治癒期間に影響を与えます。例えば、両親が思春期にニキビで悩んだ経験がある場合、その子どももニキビができやすい体質を受け継いでいる可能性があります。
また、不規則な生活や偏った食事は、ホルモンバランスをさらに乱し、ニキビを悪化させる原因となります。
放置するとどうなる?
思春期ニキビを「そのうち治るだろう」と放置してしまうのは危険です。
適切なケアを怠ると、ニキビは悪化しやすくなります。炎症が長引いたり、化膿したりすると、ニキビが治った後も肌に凹凸や赤み、色素沈着といった「ニキビ跡」が残ってしまうことがあります。
ニキビ跡は一度できてしまうと、セルフケアだけで完全に消すのは難しく、治療にも時間と費用がかかる場合があります。そのため、ニキビができた早い段階から正しいケアを行い、悪化させないことが重要です。
ニキビを放置した場合に起こりうること
問題点 | 具体的な内容 | 影響 |
---|---|---|
症状の悪化 | 炎症の拡大、化膿 | 痛み、赤みの増加、治癒の遅延 |
ニキビ跡の形成 | クレーター状の凹み、色素沈着、赤み | 肌の見た目の問題、精神的なストレス |
治癒期間の長期化 | 慢性的なニキビ | 継続的な肌トラブル、ケアの負担増 |
思春期ニキビの主な原因
思春期ニキビの発生には、いくつかの要因が複雑に関わっています。主な原因を理解することで、より効果的な対策を立てることができます。
ホルモンバランスの変化
思春期に入ると、男女ともに性ホルモンの分泌が活発になります。特に男性ホルモンの一種であるアンドロゲンは、皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を促進する働きがあります。
女性でも、副腎や卵巣から少量のアンドロゲンが分泌されており、思春期にはその影響が顕著になります。
皮脂の過剰分泌
アンドロゲンの影響で皮脂腺が発達し、皮脂の分泌量が急増します。この過剰な皮脂が毛穴の出口を塞ぎやすくなり、ニキビの最初の段階である「コメド(面皰)」を形成する原因となります。
特にTゾーン(おでこ、鼻)は皮脂腺が多いため、ニキビができやすい部位です。
毛穴の詰まり
過剰に分泌された皮脂や、古い角質、メイク汚れなどが毛穴に詰まることも、ニキビの大きな原因です。毛穴が詰まると、皮脂がスムーズに排出されなくなり、毛穴の中に溜まってしまいます。
ターンオーバーの乱れ
肌は一定の周期で新しい細胞に生まれ変わる「ターンオーバー」を繰り返しています。しかし、思春期はホルモンバランスの影響や、睡眠不足、ストレスなどによってターンオーバーが乱れやすくなります。
ターンオーバーが乱れると、古い角質が自然に剥がれ落ちにくくなり、毛穴を塞いでしまうことがあります。
アクネ菌の増殖
アクネ菌(Propionibacterium acnes)は、誰の肌にも存在する常在菌の一種です。普段は特に問題を起こしませんが、毛穴が詰まり、皮脂が溜まった環境を好みます。
毛穴の中で皮脂を栄養源として増殖し、炎症を引き起こす物質を産生することで、赤ニキビや黄ニキビといった炎症性のニキビへと進行させます。
その他の要因
ホルモンバランスの変化、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖以外にも、思春期ニキビを悪化させる要因はいくつかあります。
生活習慣の乱れ
睡眠不足、不規則な食事、偏った栄養バランスなどは、ホルモンバランスを乱したり、肌の抵抗力を低下させたりして、ニキビを悪化させる可能性があります。特に、脂質の多い食事や糖質の過剰摂取は、皮脂の分泌を増やすと言われています。
間違ったスキンケア
ニキビを気にするあまり、一日に何度も洗顔したり、ゴシゴシと強くこすったりするような間違ったスキンケアは、肌に必要な皮脂まで奪い、乾燥を招いたり、バリア機能を低下させたりして、かえってニキビを悪化させることがあります。
また、油分の多い化粧品の使用も毛穴を詰まらせる原因となり得ます。
ストレス
学業や友人関係など、思春期は何かとストレスを感じやすい時期です。過度なストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、皮脂の分泌を促進したり、免疫力を低下させたりして、ニキビの発生や悪化につながることがあります。
適度な休息やリフレッシュを心がけることが大切です。
思春期ニキビの主な原因まとめ
原因 | 詳細 | 対策の方向性 |
---|---|---|
ホルモンバランスの変化 | 性ホルモンの影響で皮脂分泌が活発化 | 生活習慣の見直し、皮膚科での相談 |
毛穴の詰まり | 過剰な皮脂、古い角質、汚れなど | 正しい洗顔、適切な角質ケア |
アクネ菌の増殖 | 毛穴の中で皮脂を栄養に増殖し炎症を誘発 | 清潔な肌環境の維持、抗菌作用のあるケア |
思春期ニキビの正しいケア方法
思春期ニキビを改善し、悪化させないためには、毎日の正しいスキンケアが非常に重要です。ここでは、基本的なケア方法と、ニキビを悪化させないための生活習慣について解説します。
毎日の洗顔
洗顔は、余分な皮脂や汚れを落とし、毛穴を清潔に保つための基本です。しかし、洗いすぎや間違った方法は逆効果になることもあります。
洗顔料の選び方
思春期の肌は皮脂分泌が活発なため、余分な皮脂をきちんと落とせる洗浄力がありつつ、肌への刺激が少ない洗顔料を選びましょう。ニキビ肌向けの製品や、ノンコメドジェニックテスト済み(ニキビができにくいことを確認した製品)のものを選ぶのも良いでしょう。
スクラブ入りの洗顔料は、炎症を起こしているニキビには刺激が強すぎる場合があるので、使用を控えるか、肌の状態が良い時に限定するなど注意が必要です。
正しい洗顔の手順
以下の手順で、優しく丁寧に洗顔を行いましょう。
- 手をきれいに洗います。
- 洗顔料をよく泡立てます。泡立てネットなどを使うと、きめ細かい泡が簡単に作れます。
- 泡をクッションにして、肌を直接こすらないように優しく洗います。特にTゾーンなど皮脂の多い部分は丁寧に。
- すすぎは、ぬるま湯(32~34℃程度)で、洗顔料が残らないように十分に行います。熱すぎるお湯は肌の乾燥を招き、冷たすぎる水は皮脂が落ちにくいです。
- 清潔なタオルで、肌をこすらずに優しく押さえるように水分を拭き取ります。
洗顔の回数は、朝晩の1日2回が基本です。汗をたくさんかいた後など、必要に応じて追加しても良いですが、洗いすぎは肌の乾燥を招き、かえって皮脂分泌を過剰にすることがあるため注意しましょう。
保湿の重要性
「ニキビ肌はオイリーだから保湿は不要」と思っている方もいるかもしれませんが、それは間違いです。洗顔後の肌は水分が失われやすく、乾燥しがちです。
肌が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなったり、かえって皮脂が過剰に分泌されたりすることがあります。そのため、洗顔後は必ず保湿を行い、肌の水分と油分のバランスを整えることが大切です。
保湿剤の選び方
ニキビ肌向けの、油分が少なくさっぱりとした使用感の保湿剤を選びましょう。化粧水で水分を補給した後、乳液やジェルなどで水分が蒸発しないように蓋をします。オイルフリーやノンコメドジェニックテスト済みの製品がおすすめです。
自分の肌質に合った、刺激の少ないものを選びましょう。
ニキビを悪化させない生活習慣
スキンケアだけでなく、日々の生活習慣もニキビの状態に大きく影響します。バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスを溜めない工夫などが重要です。
食事のポイント
特定の食品が直接ニキビの原因になるという科学的根拠はまだ十分ではありませんが、栄養バランスの偏りは肌の状態を悪化させる可能性があります。以下の点に注意して、バランスの取れた食事を心がけましょう。
- ビタミン類(特にビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE)を積極的に摂取する。
- 食物繊維を多く含む野菜や海藻類をしっかり摂る。
- 脂肪分の多い食事や甘いもの、スナック菓子などの過剰摂取は控える。
食事で意識したい栄養素と食品例
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品例 |
---|---|---|
ビタミンB2 | 皮脂の分泌をコントロールする | レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品 |
ビタミンB6 | タンパク質の代謝を助け、肌の健康を保つ | マグロ、カツオ、鶏肉、バナナ、さつまいも |
ビタミンC | コラーゲンの生成を助け、抗酸化作用がある | パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ、いちご、柑橘類 |
睡眠の重要性
睡眠不足は、肌のターンオーバーを乱し、ホルモンバランスにも悪影響を与えます。成長ホルモンは睡眠中に多く分泌され、肌の修復や再生を促します。毎日同じ時間に寝起きするなど、質の高い睡眠を十分にとるように心がけましょう。
一般的に、中高生では7~9時間程度の睡眠時間が必要です。
やってはいけないNGケア
良かれと思ってやっているケアが、実はニキビを悪化させていることもあります。以下の行為は避けましょう。
- ニキビを自分で潰す・触る:雑菌が入り炎症が悪化したり、ニキビ跡が残ったりする原因になります。
- ゴシゴシ洗顔:肌を傷つけ、バリア機能を低下させます。
- 油分の多い化粧品や整髪料の使用:毛穴を詰まらせる可能性があります。整髪料が顔につかないように注意しましょう。
- 不潔な手や寝具:雑菌が肌に付着し、ニキビを悪化させることがあります。手はこまめに洗い、枕カバーなどの寝具は清潔に保ちましょう。
思春期ニキビの段階と種類
思春期ニキビは、進行度合いによっていくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解し、自分のニキビがどの段階にあるのかを知ることは、適切なケアや治療を選択する上で役立ちます。
初期段階のニキビ(白ニキビ・黒ニキビ)
これらは炎症が起きていない、ニキビの初期段階です。「コメド(面皰)」とも呼ばれます。この段階で適切なケアを行えば、炎症を起こす前に改善できる可能性があります。
白ニキビ(コメド)とは
毛穴に皮脂や古い角質が詰まり、毛穴の出口が閉じている状態です。皮膚の表面が小さく盛り上がり、白っぽく見えます。まだ炎症は起きていませんが、放置するとアクネ菌が増殖し、炎症性のニキビに進行することがあります。
黒ニキビとは
毛穴に詰まった皮脂や角質が、毛穴の出口が開いているために空気に触れて酸化し、黒っぽく見える状態です。白ニキビ同様、まだ炎症は起きていません。
無理に押し出そうとすると、肌を傷つけたり、炎症を引き起こしたりする可能性があるので注意が必要です。
炎症を起こしたニキビ(赤ニキビ)
白ニキビや黒ニキビが悪化し、毛穴の中でアクネ菌が増殖して炎症を起こした状態です。赤く腫れ上がり、触ると痛みを感じることがあります。
この段階になると、セルフケアだけでは改善が難しくなることもあり、ニキビ跡を残さないためにも早めの対処が重要です。
化膿したニキビ(黄ニキビ)
赤ニキビの炎症がさらに進行し、毛穴の中に膿が溜まって黄色っぽく見える状態です。ニキビの中でも症状が重く、治った後もニキビ跡(特に凹みやしこり)が残りやすいタイプです。
自分で潰すと、さらに炎症を広げたり、雑菌が入ったりするリスクが高いため、絶対に避けましょう。この段階のニキビは、皮膚科での専門的な治療が必要です。
ニキビの進行段階と主な特徴
ニキビの種類 | 見た目の特徴 | 主な状態 |
---|---|---|
白ニキビ(閉鎖面皰) | 小さく白い点状の盛り上がり | 毛穴が詰まり、皮脂が溜まっている(炎症なし) |
黒ニキビ(開放面皰) | 毛穴の先が黒く見える | 詰まった皮脂が酸化している(炎症なし) |
赤ニキビ(紅色丘疹) | 赤く腫れ上がり、触ると痛むことがある | 毛穴でアクネ菌が増殖し、炎症が起きている |
黄ニキビ(膿疱) | 中心に黄色い膿が見える | 炎症が悪化し、膿が溜まっている |
ニキビ跡の種類
ニキビの炎症が長引いたり、無理に潰したりすると、ニキビが治った後も跡が残ってしまうことがあります。ニキビ跡にはいくつかの種類があります。
- 赤み:炎症が治まった後も、毛細血管が拡張して赤みが残る状態。
- 色素沈着:炎症によってメラニン色素が過剰に作られ、茶色っぽいシミのような跡が残る状態。
- クレーター(凹み):炎症が真皮層にまで及び、皮膚組織が破壊されて肌表面が凹んでしまう状態。
- ケロイド・肥厚性瘢痕:ニキビの炎症が強く、傷を修復する過程でコラーゲンが過剰に作られ、赤く盛り上がった状態。
ニキビ跡は、種類によってはセルフケアでの改善が難しく、皮膚科での治療が必要になります。ニキビ跡を作らないためにも、ニキビの初期段階からの適切なケアと、悪化させないことが何よりも大切です。
皮膚科での思春期ニキビ治療
セルフケアだけではなかなか改善しないニキビや、炎症が強いニキビ、広範囲にできているニキビの場合は、皮膚科を受診することを検討しましょう。皮膚科では、ニキビの状態や肌質に合わせた専門的な治療を受けることができます。
皮膚科を受診するタイミング
以下のような場合は、早めに皮膚科医に相談することをおすすめします。
- セルフケアを続けても、2週間~1ヶ月程度で改善が見られない。
- 赤ニキビや黄ニキビなど、炎症が強いニキビが多い。
- ニキビが広範囲にできている。
- ニキビによる痛みやかゆみが強い。
- ニキビ跡が心配な場合。
特に、炎症が強い黄ニキビはニキビ跡になりやすいため、自己判断で放置せず、専門医の診断と治療を受けることが重要です。
保険診療で行われる治療
皮膚科でのニキビ治療は、基本的に健康保険が適用される保険診療が中心となります。医師がニキビの状態を診断し、適切な治療法を選択します。
外用薬(塗り薬)
ニキビ治療の基本となるのが外用薬です。毛穴の詰まりを改善する薬、アクネ菌の増殖を抑える抗菌薬、炎症を抑える薬など、様々な種類の薬があります。
代表的なものには、アダパレン、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン、ナジフロキサシンなどがあります。これらの薬を、ニキビの種類や重症度に応じて単独で、あるいは組み合わせて使用します。
効果が出るまでには数週間から数ヶ月かかる場合があるため、根気強く治療を続けることが大切です。
内服薬(飲み薬)
炎症が強いニキビや、外用薬だけでは効果が不十分な場合には、内服薬が処方されることがあります。アクネ菌に対する抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリン、ロキシスロマイシンなど)や、皮脂の分泌を抑えるビタミン剤、漢方薬などが用いられます。
抗菌薬は、長期間使用すると耐性菌が出現するリスクがあるため、医師の指示に従い、適切な期間使用することが重要です。
面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)
白ニキビや黒ニキビ(コメド)の内容物を、専用の器具を使って押し出す治療法です。毛穴の詰まりを物理的に取り除くことで、ニキビの進行を抑え、炎症性のニキビへの悪化を防ぐ効果が期待できます。
皮膚科医や看護師などの専門家が行う処置であり、自分で行うと肌を傷つけたり、細菌感染を起こしたりするリスクがあるため、絶対にやめましょう。
保険診療で行われる主な治療法
治療法 | 主な目的・効果 | 対象となるニキビ |
---|---|---|
外用薬(アダパレン、過酸化ベンゾイルなど) | 毛穴の詰まり改善、角化抑制、抗菌作用 | 白ニキビ、黒ニキビ、軽症~中等症の赤ニキビ |
外用抗菌薬(クリンダマイシンなど) | アクネ菌の殺菌、炎症抑制 | 赤ニキビ、黄ニキビ |
内服抗菌薬 | アクネ菌の殺菌、炎症抑制(広範囲、重症例) | 中等症~重症の赤ニキビ、黄ニキビ |
面皰圧出 | 毛穴の詰まり除去、ニキビの進行予防 | 白ニキビ、黒ニキビ |
自由診療で行われる治療(代表的なもの)
保険診療で十分な効果が得られない場合や、より積極的にニキビ跡の改善を目指したい場合には、自由診療(自費診療)の治療法も選択肢となります。
ただし、費用が高額になる場合があるため、医師とよく相談し、納得した上で治療を受けることが大切です。
ケミカルピーリング
皮膚の表面に特殊な薬剤を塗り、古い角質や毛穴の詰まりを取り除く治療法です。肌のターンオーバーを促し、ニキビやニキビ跡の改善、肌質の改善効果が期待できます。使用する薬剤の種類や濃度によって、効果や刺激の強さが異なります。
レーザー治療
レーザー光線を照射することで、アクネ菌を殺菌したり、皮脂腺の働きを抑制したり、コラーゲンの産生を促してニキビ跡の凹凸を改善したりする治療法です。
ニキビの種類やニキビ跡の状態に合わせて、様々な種類のレーザーが用いられます。複数回の治療が必要となることが一般的です。
治療期間と費用の目安
ニキビ治療にかかる期間は、ニキビの重症度や治療法、個人の肌質によって大きく異なります。一般的に、効果を実感するまでには数週間から数ヶ月、場合によってはそれ以上の期間が必要になることもあります。
根気強く治療を続けることが大切です。
費用については、保険診療の場合、初診料・再診料、薬剤費などを合わせて、1回の受診で数千円程度が目安となります(3割負担の場合)。
自由診療の場合は、治療内容やクリニックによって費用が大きく異なり、1回あたり数万円から数十万円かかることもあります。治療を始める前に、必ず費用について確認しましょう。
皮膚科治療の一般的な流れと期間のイメージ
段階 | 主な内容 | 期間の目安 |
---|---|---|
初期(急性期) | 炎症を抑え、新たなニキビの発生を防ぐ | 数週間~3ヶ月程度 |
維持期 | 良い状態を保ち、再発を予防する | 3ヶ月~半年以上 |
ニキビ跡治療(必要な場合) | 凹みや色素沈着の改善 | 半年~数年(治療法による) |
思春期ニキビに関するよくある質問
思春期ニキビに関して、多くの方が疑問に思うことや不安に感じる点について、Q&A形式で解説します。
- ニキビは潰してもいいですか?
-
自分でニキビを潰すのは避けるべきです。無理に潰すと、指や爪についた雑菌が毛穴に入り込み、炎症を悪化させたり、化膿させたりする可能性があります。
また、皮膚組織を傷つけてしまい、ニキビ跡(特に凹みや色素沈着)が残りやすくなります。どうしても気になる場合は、皮膚科で面皰圧出などの適切な処置を受けるようにしましょう。
- メイクはしてもいいですか?
-
ニキビがあるからといって、完全にメイクを諦める必要はありません。しかし、ニキビを悪化させないためには、いくつかの点に注意が必要です。まず、油分の少ない、ノンコメドジェニックテスト済みの化粧品を選びましょう。
厚塗りは避け、なるべく薄化粧を心がけてください。帰宅後は、クレンジング剤を使ってメイクをしっかりと落とし、肌を清潔に保つことが大切です。
炎症がひどい場合や、皮膚科で治療中の場合は、医師の指示に従いましょう。
メイクをする際の注意点
ポイント 具体的な注意内容 化粧品選び ノンコメドジェニックテスト済み、オイルフリーなど、ニキビ肌向けの製品を選ぶ メイク方法 厚塗りを避け、薄化粧を心がける。ニキビを隠そうとコンシーラーを重ねすぎない クレンジング 帰宅後はすぐに、肌に優しいクレンジング剤で丁寧にメイクを落とす メイク道具 パフやブラシはこまめに洗い、清潔に保つ - 食生活で気をつけることは?
-
特定の食品が直接ニキビの原因になるという明確な証拠はありませんが、バランスの悪い食事は肌の状態に影響を与える可能性があります。
脂肪分の多い食事や糖質の多いお菓子、インスタント食品などの摂りすぎは、皮脂の分泌を増やしたり、腸内環境を乱したりして、ニキビを悪化させる一因となることがあります。
野菜や果物を積極的に摂り、ビタミンやミネラル、食物繊維をバランス良く摂取することを心がけましょう。また、十分な水分補給も大切です。
- 市販薬と皮膚科の薬の違いは?
-
市販のニキビ治療薬にも、殺菌成分や抗炎症成分、角質軟化成分などが含まれており、軽度のニキビであれば効果が期待できる場合があります。
しかし、市販薬はあくまで症状を緩和する対症療法が中心であり、根本的な原因にアプローチするものではありません。一方、皮膚科で処方される薬は、医師が患者さん一人ひとりのニキビの状態や肌質を診断した上で選択する医療用医薬品です。
より効果の高い成分が含まれていたり、複数の薬を組み合わせて治療したりすることができます。また、ニキビの原因や悪化因子に対する指導も受けられます。
セルフケアで改善しない場合や、症状が重い場合は、自己判断せずに皮膚科を受診することをおすすめします。
以上
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