「毎日しっかり洗顔しているのに、なぜかおでこやフェイスラインのニキビが治らない」「仕事が忙しくなると、決まって同じ場所に吹き出物ができる」このようにお悩みではありませんか?
それは単なる肌荒れではなく、心と体の疲れがサインとして現れる「ストレスニキビ」の可能性が高いです。
特に社会人女性にとって、職場や家庭でのプレッシャーは避けて通れないものであり、鏡を見るたびに憂鬱な気分になり、それがさらなるストレスを生むという悪循環に陥りがちです。
本記事では、ストレスがニキビを引き起こす深い理由から、特におでこにできやすい原因、そして場所別の適切なケア方法までを網羅しました。今日からできる具体的な対策を実践し、自信の持てる素肌を取り戻しましょう。
ストレスがニキビを引き起こす体の内部事情とは
過度なストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、皮脂の過剰分泌や肌のバリア機能低下を直接的に招くため、ニキビの発生原因となります。
心に負荷がかかると、体は防御反応を示し、その影響は肌へとダイレクトに伝わります。
単に「疲れが顔に出る」というレベルではなく、体内では複雑な化学反応が起きており、これが頑固なニキビの根本原因となっています。なぜイライラや不安が肌荒れにつながるのか、その仕組みを正しく理解することが解決への第一歩となります。
ホルモンバランスの乱れと皮脂分泌の増加
人がストレスを感じると、脳からの指令により副腎皮質ホルモンの一種である「コルチゾール」が分泌されます。
このコルチゾールは体をストレスから守るために必要な物質ですが、同時に男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌を刺激する作用も持ち合わせています。
男性ホルモンには皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌量を急激に増やす働きがあるため、これが毛穴詰まりの直接的な引き金となります。
普段は乾燥肌の方でも、強いプレッシャーを感じる時期だけ肌が脂っぽくなったり、Tゾーンがテカリやすくなったりするのはこのためです。
過剰に出た皮脂は、毛穴の中に潜むアクネ菌のエサとなり、炎症を伴う赤ニキビへと発展させてしまいます。
自律神経の乱れによる血行不良
ストレスは自律神経のバランス、特に交感神経と副交感神経の切り替えを阻害します。緊張状態が続くと交感神経が優位になりっぱなしになり、血管が収縮して血行が悪化します。
血液は肌細胞へ酸素や栄養を届ける重要な役割を担っているため、血流が滞ると肌のターンオーバー(生まれ変わり)が正常に行われなくなります。その結果、古い角質が肌表面に留まり、毛穴を塞いでしまうのです。
肌のバリア機能低下と免疫力のダウン
精神的な負荷がかかり続けると、肌表面を外部刺激から守る「バリア機能」が著しく低下します。
健康な肌であれば跳ね返せるような些細な刺激、例えば髪の毛の接触や衣類の摩擦、紫外線、空気中のほこりなどに対して過敏に反応するようになります。バリア機能が弱まった肌は水分を保持する力が弱いため、乾燥が進みます。
肌が乾燥すると、体は「もっと潤いが必要だ」と勘違いし、防衛反応としてさらに皮脂を分泌しようとします。この「乾燥しているのに脂が出る」というインナードライ状態こそが、大人のストレスニキビを長引かせる大きな要因です。
また、ストレスは免疫力そのものを低下させるため、一度できたニキビの炎症が治まりにくく、化膿しやすくなるのも特徴です。
ストレスホルモンによる生体反応
心身の緊張状態が肌にどのような具体的な変化をもたらすのか、主な反応を整理します。
| 反応の種類 | 具体的な現象 | 肌への影響 |
|---|---|---|
| 交感神経の過活動 | 血管収縮、覚醒状態の持続 | 血行不良によりターンオーバーが遅れ、角質が肥厚し毛穴が詰まる |
| コルチゾール分泌 | 男性ホルモンの刺激 | 皮脂腺が活性化し、通常時よりも大量の皮脂が分泌される |
| 免疫機能の低下 | 白血球の働きが鈍化 | アクネ菌の増殖を抑えきれず、炎症が悪化・長期化する |
睡眠の質低下とターンオーバーの停滞
悩み事やプレッシャーがあると、布団に入ってもなかなか寝付けなかったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりすることがあります。
睡眠中、特に深い眠りの間には「成長ホルモン」が分泌され、日中に受けた肌ダメージの修復や新しい皮膚細胞の生成が行われます。しかし、ストレスによって睡眠の質が下がると、この修復作業が十分に行われません。
未熟な細胞のまま肌表面に押し上げられたり、剥がれ落ちるべき古い角質が残ったりすることで、肌のごわつきや毛穴の閉塞が起こります。
どんなに高価な美容液を使っていても、睡眠という土台が崩れていては、その効果を十分に発揮させることは難しいのです。
おでこにストレスニキビが集中する理由
おでこは皮脂腺が多く、ストレスによるホルモン影響を受けやすい場所であると同時に、前髪や汗などの物理的刺激が重なりやすいため、ニキビが多発します。
顔の中でも特におでこ(前額部)は「Tゾーン」と呼ばれ、もともと皮脂の分泌量が非常に多いエリアです。
ここにストレスという要因が加わることで、なぜ爆発的にニキビが増えてしまうのか、その特有の事情を深掘りしていきます。
皮脂腺の密度とホルモン感受性
おでこの皮膚には、頬や口周りに比べて皮脂腺が密集しています。先述した通り、ストレスを感じると男性ホルモンの影響で皮脂分泌が促進されますが、もともと皮脂腺が多いおでこは、その影響を最も受けやすい場所と言えます。
少しのストレス変化であっても、おでこの皮脂量は敏感に反応し、毛穴のキャパシティを超えてあふれ出してしまうのです。
さらに、思春期ニキビの名残と思われがちですが、大人になってもホルモンバランスの乱れが最初に現れやすいのがこの部位です。
「最近おでこがテカる」と感じたら、それはスキンケア不足ではなく、ストレス過多のサインである可能性が高いと考えましょう。
前髪や整髪料による物理的刺激
おでこ特有の原因として見逃せないのが、髪の毛による接触刺激です。ストレスを感じているときは、無意識に髪を触ったり、おでこを隠そうと前髪を下ろしたりする傾向があります。
髪の毛には目に見えないほこりや雑菌が付着しており、それが常に肌に触れることで毛穴を刺激し、炎症を誘発します。
また、シャンプーやトリートメント、整髪料の洗い残しもおでこニキビの大きな原因です。疲れて帰宅し、入浴や洗顔が雑になってしまうと、生え際に洗浄成分が残り、それが化学的な刺激となって肌荒れを引き起こします。
おでこ環境の悪化要因
おでこで起こりやすいトラブル要因を整理すると、複合的な要素が絡み合っていることがわかります。
| 要因 | 詳細 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 過剰な皮脂 | 皮脂腺が多く、ストレスホルモンの影響で分泌が加速する | 油分を取りすぎず、水分を与える保湿ケアの徹底 |
| 物理的接触 | 前髪の毛先が肌をチクチク刺激し、角質を傷つける | 自宅では前髪をアップにし、肌への接触時間を減らす |
| 洗い残し | 生え際に洗顔料やシャンプーが残留しやすい | すすぎの回数を増やし、鏡で生え際をチェックする |
表情筋の緊張と老廃物の蓄積
意外に知られていないのが、おでこの「凝り」です。PC作業やスマートフォンの長時間使用、そして精神的な緊張状態が続くと、人は無意識に眉間にシワを寄せたり、おでこの筋肉を緊張させたりします。
筋肉が硬直すると、その周辺の血流やリンパの流れが滞ります。
老廃物がスムーズに排出されずに蓄積すると、肌の代謝機能が落ち、ニキビができやすい土壌を作ってしまいます。
おでこを指で触ったときに硬いと感じる場合や、皮膚が動きにくい場合は、緊張による血行不良がニキビの背景にあると考えられます。
場所別で見るストレスニキビの特徴と原因
ニキビができる場所は、体のどの部分がSOSを出しているかのサインであり、場所ごとに特有の内部要因や生活習慣の乱れが隠されています。
「いつも同じ場所にできる」という経験は誰にでもあるはずです。顔のパーツはそれぞれ異なる内臓の不調や生活習慣の乱れを反映しやすいと言われています。
場所ごとの特徴を知ることで、スキンケアだけでなく、根本的な生活改善のヒントを得ることができます。
眉間・鼻周り(Tゾーン)のトラブル
眉間や鼻は、おでこと同様に皮脂分泌が活発なエリアですが、ここへのニキビ発生は「肝機能の低下」や「アルコールの摂取過多」「油っぽい食事」と関連深い場合があります。
ストレス解消のために暴飲暴食をしたり、脂っこいおつまみでお酒を飲んだりした翌日にできやすいのがこのゾーンです。
また、鼻の毛穴は深いため、汚れが溜まりやすく、一度炎症を起こすと赤く腫れて目立ちやすい特徴があります。洗顔時の力の入れすぎによる摩擦刺激も原因となりやすいため、注意が必要です。
頬(Uゾーン)と乾燥ストレス
頬は顔の中で最も範囲が広く、乾燥しやすい部分です。ここにできるニキビは、胃腸の疲れや便秘、そして極度の乾燥が原因であることが多いです。ストレスで自律神経が乱れると胃腸の働きが弱まり、消化不良や便秘を引き起こします。
腸内環境が悪化すると、有害物質が血液中に巡り、それが肌荒れとして頬に現れます。
さらに、頬杖をつく癖や、清潔でない寝具(枕カバーなど)との接触も頬ニキビを悪化させます。片方の頬だけにニキビができる場合は、寝る向きやスマートフォンの画面接触が影響している可能性が高いです。
部位別トラブルマップ
顔のエリアごとに、考えられる主な不調の原因と見直すべきポイントをまとめます。
| 発生場所 | 主な内部要因 | 見直すべき生活習慣 |
|---|---|---|
| 生え際 | 睡眠不足、ホルモンバランス | シャンプーのすすぎ残し、整髪料の使用量 |
| 口周り | 胃腸の不調、食べ過ぎ | 暴飲暴食を控え、消化の良いものを摂る |
| フェイスライン | 冷え、婦人科系の乱れ | 首元を温める、ホルモン周期に合わせたケア |
顎・フェイスライン(大人ニキビの代表格)
顎やフェイスラインは、典型的な「大人ニキビ」「ストレスニキビ」の発生地帯です。この部分は男性ホルモンの受容体が多く、ストレスによるホルモンバランスの乱れの影響を最も受けやすい場所の一つです。
また、リンパの流れが滞りやすい場所でもあり、老廃物が蓄積しやすいことも要因です。
冷え性もフェイスラインのニキビに大きく関わっています。体が冷えて血行が悪くなると、肌の代謝が落ち、硬くて治りにくいしこりのようなニキビができやすくなります。
生理前にこの部分が悪化するのも、ホルモンの変動が直接的に影響している証拠です。
ストレスニキビを悪化させない正しいスキンケア
ストレスで敏感になった肌には、徹底した「摩擦レス」と「高保湿」によるバリア機能の修復を行うことが、治癒への最短ルートとなります。
ニキビができると、どうしても「洗浄力の強い洗顔料で皮脂を根こそぎ落としたい」「殺菌効果のある薬をたっぷり塗りたい」と考えがちですが、ストレスニキビに対してそれは逆効果になることが多いです。
弱った肌をいたわり、本来の力を取り戻させるための優しいケアが必要です。
クレンジングと洗顔の見直し
仕事で疲れて帰宅した際、クレンジングをゴシゴシと雑に行っていませんか?摩擦は炎症を起こしているニキビにとって最大の敵です。
クレンジング剤は肌への負担が少ないクリームタイプやミルクタイプを選び、たっぷりの量を使って指がお肌に直接触れないように優しく馴染ませます。
洗顔に関しても同様です。洗顔料をしっかり泡立て、手と顔の間に泡のクッションを作り、泡を転がすようにして洗います。熱いお湯は必要な皮脂まで奪ってしまうため、32度から34度程度のぬるま湯ですすぐことが重要です。
特に生え際や顎下はすすぎ残しが多いので、鏡で確認しながら丁寧に行います。
保湿重視のシンプルケア
「ニキビ=脂」というイメージから乳液やクリームを避ける方がいますが、大人ニキビの原因の多くは乾燥によるバリア機能の低下です。化粧水で水分を補給した後は、必ず油分を含む乳液やクリームで蓋をして、水分の蒸発を防ぎます。
使用するアイテムは、「ノンコメドジェニックテスト済み(ニキビのもとになりにくい処方)」のものを選ぶと安心です。
また、炎症を抑える成分(グリチルリチン酸ジカリウムなど)や、バリア機能をサポートする成分(セラミド、ヒアルロン酸など)が配合されたものを取り入れることで、肌の回復力を高めることができます。
おすすめの成分と役割
スキンケア製品を選ぶ際に注目したい成分と、その働きについて理解を深めましょう。
| 成分名 | 主な役割 | こんな肌状態におすすめ |
|---|---|---|
| セラミド | 角質層の水分保持、バリア機能強化 | 乾燥して敏感になっている肌、繰り返しできるニキビ |
| ビタミンC誘導体 | 皮脂分泌抑制、抗酸化作用 | 皮脂によるテカリが気になる肌、ニキビ跡が心配な方 |
| グリチルリチン酸2K | 抗炎症作用 | 赤く腫れて痛みや熱を持っているニキビ |
紫外線対策とメイクの工夫
紫外線はニキビの炎症を悪化させ、色素沈着(ニキビ跡)の原因となるため、一年を通して対策が必要です。
ただし、強力すぎる日焼け止めは肌の負担になるため、紫外線吸収剤不使用(ノンケミカル)のものや、石鹸で落とせるタイプのものを選ぶと良いでしょう。
ファンデーションは、油分の多いリキッドやクリームタイプよりも、パウダータイプの方が肌への密着度が低く、毛穴を塞ぎにくいためおすすめです。
ニキビを隠そうとして厚塗りすると、クレンジングでの負担が増えてしまうため、コンシーラーをポイント使いするなどして、ベースメイクはできるだけ薄く仕上げることを意識します。
体の内側からストレスニキビを治す食事と栄養
腸内環境を整え、皮脂コントロールや肌の修復を助けるビタミン類を積極的に摂取することで、ストレスに負けない強い肌を内側から作ります。
私たちの体は食べたもので作られています。特にストレスがかかると、体内で大量のビタミンが消費されてしまいます。通常の食事だけでは不足しがちな栄養素を意識的に補うことで、ニキビの改善スピードを早めることができます。
積極的に摂りたい栄養素
ニキビケアにおいて特に重要なのが「ビタミンB群」と「ビタミンC」です。ビタミンB2やB6は「脂質代謝のビタミン」とも呼ばれ、過剰な皮脂の分泌をコントロールし、皮膚の健康を保つ働きがあります。
これらが不足すると、皮脂が毛穴に詰まりやすくなります。
ビタミンCは、ストレスに対抗する副腎皮質ホルモンの合成を助けるとともに、コラーゲンの生成を促してニキビ跡の修復をサポートします。
また、便秘はニキビの大敵であるため、食物繊維や発酵食品(納豆、ヨーグルト、キムチなど)を摂取し、腸内環境を整えることも非常に重要です。
肌のために意識したい食材リスト
日々の食事に取り入れやすい食材と、その栄養効果をまとめます。
| 栄養素 | 多く含む食材 | ニキビへの効果 |
|---|---|---|
| ビタミンB2 | レバー、納豆、卵、アーモンド | 皮脂の過剰分泌を抑え、細胞の再生を助ける |
| ビタミンB6 | カツオ、マグロ、バナナ、鶏ささみ | タンパク質の代謝を促し、健康な肌を作る |
| 食物繊維 | きのこ類、海藻、玄米、ごぼう | 腸内の有害物質を排出し、便秘による肌荒れを防ぐ |
避けるべき食事と注意点
一方で、ニキビを悪化させる可能性のある食事も存在します。糖質や脂質の摂りすぎは、皮脂の成分を変質させ、アクネ菌が増殖しやすい環境を作ってしまいます。
特にスナック菓子や甘いケーキ、インスタント食品、ファストフードなどは、酸化した油や添加物が多く含まれていることが多いため、頻繁な摂取は控えるべきです。
カフェインの摂りすぎも交感神経を刺激し、ビタミンやミネラルの吸収を阻害することがあるため、コーヒーやエナジードリンクの常飲には注意が必要です。
無理に我慢してストレスを溜めるのも良くありませんが、肌の調子が悪い時期は、和食中心のメニューにするなど少しの工夫を取り入れます。
生活習慣を整えてストレスを解消する方法
良質な睡眠と自分なりのリラックス方法を確立し、副交感神経を優位にする時間を意識的に作ることで、ホルモンバランスを正常化させます。
ストレスを完全になくすことは現代社会において困難ですが、ストレスを溜め込まずに上手に発散し、体を「休息モード」に切り替える技術を身につけることは可能です。
生活のリズムを少し変えるだけで、肌の調子は劇的に変わります。
入浴によるリラックス効果
忙しいからといってシャワーだけで済ませていませんか?湯船に浸かることは、最も手軽で効果的なストレス解消法の一つです。38度から40度のぬるめのお湯に15分から20分程度浸かることで、副交感神経が優位になり、全身の血行が促進されます。
血流が良くなると、肌の隅々まで栄養が行き渡り、老廃物の回収もスムーズになります。また、入浴によって一時的に体温を上げると、その後体温が下がるときに深い眠りに入りやすくなるというメリットもあります。
好きな香りの入浴剤を使用すれば、嗅覚からのリラックス効果も期待できます。
質の高い睡眠を確保するテクニック
睡眠は最強の美容液です。入眠直後の3時間に分泌される成長ホルモンを最大限に活用するために、就寝前の環境を整えます。スマートフォンのブルーライトは脳を覚醒させてしまうため、寝る1時間前には手放すのが理想です。
また、寝室の照明を暗くしたり、肌触りの良いパジャマを選んだりすることも有効です。睡眠時間は個人差がありますが、翌朝に疲れが残っていないと感じられるだけの時間を確保するよう努めます。
休日の寝だめは体内時計を狂わせるため、できるだけ毎日同じ時間に起床し、朝日を浴びて体内時計をリセットすることが重要です。
今日からできるメンタルケア
大掛かりなことをしなくても、日常の小さな行動で心の緊張をほぐすことができます。
- 深くゆっくりとした腹式呼吸を数回行う
- 軽いストレッチやウォーキングで体を動かす
- 寝る前にその日あった良かったことを3つ書き出す
皮膚科での治療という選択肢
セルフケアで改善が見られない場合は、迷わず専門家である皮膚科を頼ることが、ニキビ跡を残さずきれいに治すための最善策です。
「たかがニキビで病院に行くなんて」と躊躇する方もいますが、ニキビは医学的に「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚の病気です。
こじらせてクレーターのような跡になってしまうと、元の肌に戻すには多大な時間と費用がかかります。早めに適切な医療介入を行うことで、治癒までの期間を大幅に短縮できます。
皮膚科で処方される主な薬剤
皮膚科では、市販薬にはない作用機序を持つ薬を処方してもらうことができます。例えば、毛穴の詰まりを取り除く作用のある「アダパレン」や、アクネ菌を殺菌する「抗菌薬」、角質を剥がれやすくする「過酸化ベンゾイル」などが代表的です。
これらを患者さんの肌質やニキビの状態に合わせて組み合わせることで、効率的に治療を行います。
また、漢方薬を併用することもあります。
漢方は体質改善を得意とし、ホルモンバランスの乱れや冷え、ストレスによるイライラなど、ニキビの背景にある全身の不調にアプローチできるため、繰り返すストレスニキビには特に有効な場合があります。
医療機関を受診するタイミング
「ニキビが痛くて眠れない」「赤みが引かない」「数が急に増えた」といった場合は、すぐに受診すべきサインです。また、炎症自体は軽くても、同じ場所に何度も繰り返しできて憂鬱だと感じるならば、それも立派な受診理由になります。
医師は肌の状態を診るだけでなく、生活習慣のアドバイスも行ってくれます。自己流のケアで悪化させてしまう前に、プロの診断を仰ぐことは、自分自身を大切にする行為でもあります。
薬の塗り方や副作用についても正しい指導を受けることで、安心して治療に取り組むことができます。
主な治療アプローチの違い
セルフケアと医療機関での治療には、アプローチの強さと目的に大きな違いがあります。
| 区分 | 主なアプローチ | 期待できること |
|---|---|---|
| セルフケア | 洗浄、保湿、生活習慣の改善 | 予防、軽度のニキビの沈静化、肌体力の向上 |
| 皮膚科治療(外用薬) | 毛穴詰まりの改善、強力な殺菌 | 今あるニキビの治療、新しいニキビの抑制 |
| 皮膚科治療(内服薬) | 抗生物質、ビタミン剤、漢方 | 体の中から炎症を抑える、体質改善 |
ストレスニキビに関するFAQ
多くの女性が疑問に抱く、日常のちょっとした不安や対処法についてお答えします。
- チョコレートを食べるとニキビができるって本当ですか?
-
チョコレートそのものが直接的な原因というよりは、それに含まれる糖分や脂質の過剰摂取が皮脂分泌を促す要因となります。
カカオ純度の高いものであれば影響は少ないと言われていますが、糖分たっぷりのミルクチョコレートなどを食べ過ぎると、血糖値が急上昇し、ホルモンバランスに影響を与える可能性があります。
食べたからといってすぐにニキビができるわけではありませんが、肌の調子が悪いときは量を控えるのが無難です。
- 膿を持ったニキビは潰してもいいですか?
-
絶対に自分で潰してはいけません。指や爪には多くの雑菌が付着しており、潰すことで傷口から細菌が入り込み、炎症をさらに悪化させる恐れがあります。
また、無理に押し出すと皮膚の奥の組織(真皮)を傷つけ、クレーター状のニキビ跡として一生残ってしまうリスクが高まります。
膿が気になる場合は、皮膚科で清潔な器具を用いて処置してもらうことを強く推奨します。
- ニキビがあるときのメイクはどうすればいいですか?
-
メイクをすること自体は禁止ではありませんが、肌への負担を最小限に抑える工夫が必要です。
油分の多いリキッドファンデーションやコンシーラーの厚塗りは毛穴を塞ぐため避け、パウダータイプのファンデーションを薄く塗る程度に留めましょう。
また、アイメイクやリップメイクをしっかり行うことで視線をそちらに誘導し、ニキビを目立たなくさせるというテクニックも有効です。帰宅後はすぐに落とすことを心がけてください。
- ストレスニキビはどれくらいの期間で治りますか?
-
個人差や症状の重さによりますが、肌のターンオーバーは約28日周期(年齢やストレスでさらに遅れることもあります)で行われるため、目に見える改善を感じるまでには最低でも1ヶ月から3ヶ月程度はかかると考えてください。
即効性を求めすぎず、生活習慣の改善とスキンケアを継続することが大切です。数日で治そうとして過剰なケアをすると、かえってこじらせる原因になります。
参考文献
JOVIĆ, Anamaria, et al. The impact of psychological stress on acne. Acta Dermatovenerologica Croatica, 2017, 25.2: 133-133.
SIDDIQUI, Ifrah; RAIS, Ubaid; TAHIR, Mehak. Exploring Stress-Induced Mechanisms in Acne Pathogenesis. 2024.
GRADOWICZ-PRAJSNAR, Barbara. Stress and skin diseases. Overview using acne vulgaris as an example. Aesth Cosmetol Med, 2023, 12.6: 207-212.
DRENO, Brigitte, et al. Female type of adult acne: Physiological and psychological considerations and management. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft, 2018, 16.10: 1185-1194.
CARNICIU, Simona; JAFFERANY, Mohammad. Psychophysiological disorders and the skin. Dermatological Reviews, 2023, 4.4: 147-151.
YOSIPOVITCH, Gil, et al. Study of psychological stress, sebum production and acne vulgaris in adolescents. Acta dermato-venereologica, 2007, 87.2: 135-139.
LAZÃR, LOREDANA-GEORGIANA, et al. PSYCHOLOGICAL STRESS AND DERMATOLOGICAL DISORDERS. Romanian Journal of Child & Adolescent Psychiatry, 2023, 11.
MADEJSKA, Maria, et al. The influence of stress and other behavioural factors on the onset and exacerbation of acne-a review of pathogenetic mechanisms, interactions between body systems and directions for therapeutic strategies. 2025.
WORKS, How Pricing, et al. The connection between stress and acne. Dermatology, 2024.
PATHAK, Y.; JACOB, A.; JACOB, A. B Sneed K. Healing beyond the surface: Unraveling the psycho-dermatological link between mental health, hormones, and skin wellness. J Clin Images Med Case Rep, 2025, 6.4: 3566.
