ふとした瞬間にニキビに触れてしまい「痛い!」と感じた経験はありませんか。その痛みは、ニキビが炎症を起こしているサインかもしれません。痛みを伴うニキビは見た目だけでなく、気分も沈ませてしまいます。
この記事では、なぜニキビが触ると痛むのか、その原因となる炎症の仕組みから、悪化させないための応急処置、そして痛いニキビを作らないための予防法まで、詳しく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
触ると痛いニキビの正体とは
触るとズキッとしたり、ジンジンしたりする痛みを伴うニキビ。その多くは、毛穴の中で炎症が起きている状態です。炎症の程度や状態によって、ニキビの種類や呼び方が異なります。
ここでは、痛みを引き起こす代表的なニキビの種類について解説します。
赤ニキビ(炎症性ニキビ)の可能性
触ると痛いニキビの初期段階としてよく見られるのが「赤ニキビ」です。これは、毛穴に詰まった皮脂を栄養源としてアクネ菌が増殖し、炎症を引き起こしている状態です。皮膚が赤く盛り上がり、触れると痛みを感じることが特徴です。
この段階では、まだ膿は溜まっていません。炎症が始まったばかりなので、適切なケアをすれば比較的早く改善する可能性があります。
赤ニキビの痛みは、炎症反応によって神経が刺激されるために起こります。炎症が強くなると、痛みも増す傾向があります。無理に潰そうとすると、炎症をさらに悪化させたり、ニキビ跡の原因になったりするため注意が必要です。
赤ニキビの主な特徴
項目 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
見た目 | 赤く盛り上がっている | 中心に膿は見られない |
痛み | 触れると痛む、ジンジンする | 炎症の度合いによる |
原因 | アクネ菌の増殖、炎症 | 皮脂詰まりが前提 |
黄ニキビ(化膿性ニキビ)への進行
赤ニキビの炎症がさらに進行すると、「黄ニキビ」と呼ばれる状態に発展することがあります。黄ニキビは、毛穴の中でアクネ菌と戦った白血球の死骸などが膿となって溜まり、黄色や白っぽく見えるのが特徴です。
赤ニキビよりも炎症が強く、痛みも強いことが多いです。時には、ズキズキとした拍動性の痛みを感じることもあります。
黄ニキビは、毛穴の壁が破壊されやすく、炎症が周囲の組織に広がりやすい状態です。そのため、ニキビ跡(特にクレーター状の跡)を残すリスクが高まります。
自己判断で潰してしまうと、細菌が入り込んでさらに悪化したり、炎症が深部に及んでしまったりする可能性があります。
しこりニキビ(硬結ニキビ)の特徴
炎症が毛穴の奥深くまで進行し、皮膚の下で硬く盛り上がった状態を「しこりニキビ(硬結ニキビ)」と呼びます。触ると硬いしこりとして感じられ、強い痛みを伴うことが多いです。時には、熱感を持つこともあります。
しこりニキビは、炎症が慢性化しやすく、治りにくい傾向があります。
このタイプのニキビは、毛包壁が破壊され、炎症が真皮層にまで達しているため、治癒後も跡が残りやすいのが特徴です。特に、ケロイド状の盛り上がった跡や、色素沈着を引き起こすことがあります。
しこりニキビができてしまった場合は、早めに専門医に相談することを検討しましょう。
その他の痛みを伴う皮膚トラブル
ニキビ以外にも、触ると痛みを伴う皮膚のできものは存在します。例えば、「毛嚢炎(もうのうえん)」は、毛穴の奥にある毛包という部分が細菌感染によって炎症を起こすもので、見た目や痛みがニキビと似ていることがあります。
また、「粉瘤(ふんりゅう)」という皮膚の下に袋状の構造物ができ、そこに角質や皮脂が溜まる良性腫瘍も、炎症を起こすと赤く腫れて痛むことがあります。
これらの症状はニキビとは治療法が異なるため、自己判断せずに、気になる場合は皮膚科医の診察を受けることが大切です。
なぜニキビは触ると痛むのか 炎症の仕組み
ニキビが触ると痛むのは、皮膚の内部で「炎症」という防御反応が起きているためです。この炎症がどのようにして起こり、なぜ痛みを引き起こすのか、その仕組みを詳しく見ていきましょう。
アクネ菌の増殖と炎症物質
私たちの皮膚には、アクネ菌(Propionibacterium acnes)という常在菌が存在します。アクネ菌自体は必ずしも悪者ではなく、普段は皮脂を分解して皮膚を弱酸性に保つ役割も担っています。
しかし、毛穴が詰まり、皮脂が過剰に溜まると、酸素の少ない環境を好むアクネ菌が異常に増殖しやすくなります。
増殖したアクネ菌は、リパーゼという酵素を放出して皮脂を分解し、遊離脂肪酸などを産生します。
これらの物質や、アクネ菌自体が持つ成分が、毛穴の周囲の組織を刺激し、炎症を引き起こすさまざまな化学物質(炎症性サイトカインなど)の放出を促します。これらの炎症物質が、赤み、腫れ、そして痛みの原因となるのです。
炎症を引き起こす主な流れ
段階 | 主な出来事 | 結果 |
---|---|---|
1. 毛穴の詰まり | 角質肥厚、皮脂の過剰分泌 | 皮脂が毛穴に溜まる |
2. アクネ菌の増殖 | 嫌気的環境でアクネ菌が異常繁殖 | リパーゼ放出、遊離脂肪酸産生 |
3. 炎症反応 | 炎症性サイトカイン等の放出 | 赤み、腫れ、痛みが発生 |
毛穴の詰まりと皮脂の過剰分泌
ニキビの始まりは、多くの場合、毛穴の出口が詰まることです。毛穴の出口部分の角質が厚くなる「角化異常(かくかいじょう)」や、皮脂の過剰な分泌が主な原因です。
ホルモンバランスの乱れ(特に男性ホルモンの影響)、ストレス、睡眠不足、食生活の偏り、不適切なスキンケアなどが、これらの状態を引き起こす要因と考えられています。
毛穴が詰まると、皮脂がスムーズに排出されず、毛穴の中に溜まっていきます。
この溜まった皮脂が、アクネ菌にとって格好の栄養源となり、増殖を助長します。これが、面皰(めんぽう)、いわゆる白ニキビや黒ニキビと呼ばれる状態で、炎症を起こす前の段階です。
炎症反応と白血球の働き
アクネ菌が増殖し、炎症物質が放出されると、私たちの体はそれを異物や危険信号と捉え、防御反応を開始します。その主役となるのが白血球です。特に好中球などの白血球が、炎症の起こっている場所に集まってきます。
白血球は、アクネ菌を攻撃したり、損傷した組織を取り除いたりする働きをします。この過程で、さらに多くの炎症物質が放出され、血管が拡張して血流が増加します。これにより、皮膚が赤く腫れ上がり、熱を持つようになります。
また、これらの炎症物質が知覚神経を刺激することで、痛みを感じるのです。膿が溜まる黄ニキビは、この白血球と細菌の戦いの結果、生じた死骸などが集まったものです。
痛みの種類と強さの違い
ニキビの痛みの種類や強さは、炎症の深さや範囲、進行度合いによって異なります。
初期の赤ニキビでは、触れると軽い痛みを感じる程度ですが、炎症が強くなるとジンジンとした持続的な痛みや、ズキズキとした拍動性の痛みに変わることがあります。
しこりニキビのように炎症が深部に及ぶと、より強い痛みを感じ、日常生活に支障をきたすこともあります。
また、痛みの感じ方には個人差もあります。同じ程度の炎症でも、痛みを強く感じる人もいれば、それほど感じない人もいます。しかし、痛みが強い場合は炎症も強いサインである可能性が高いため、注意が必要です。
炎症のサインを見逃さない
ニキビの痛みは、体が発している重要なサインです。「ただのニキビ」と軽視せず、痛みの変化に注意を払いましょう。痛みが強くなったり、範囲が広がったり、熱感が出てきたりした場合は、炎症が悪化している可能性があります。
触ると痛いニキビを悪化させるNG行動
痛みを伴うニキビは、つい気になって触ってしまったり、早く治したい一心で間違ったケアをしてしまったりしがちです。
しかし、良かれと思って行った行動が、かえってニキビを悪化させ、治りを遅らせたり、ニキビ跡の原因になったりすることがあります。ここでは、痛いニキビに対して避けるべきNG行動について解説します。
ニキビを潰す・頻繁に触る
痛いニキビを自分で潰すのは絶対に避けましょう。指や爪で無理に押し出すと、毛穴の壁が壊れて炎症が周囲に広がり、さらに悪化する可能性が高いです。
また、手には目に見えない雑菌がたくさん付着しており、潰した傷口から細菌が侵入して二次感染を引き起こし、化膿を招くこともあります。
同様に、気になってニキビを頻繁に触ることもNGです。触れることによる物理的な刺激が炎症を助長し、手の雑菌がニキビに付着する機会を増やしてしまいます。痛みがあるときは特に、できるだけ触らないように意識することが大切です。
ニキビを潰すリスク
リスク | 説明 | 結果として起こりうること |
---|---|---|
炎症の悪化 | 毛穴の壁が破壊され、炎症が広がる | より大きく、より痛いニキビになる |
二次感染 | 指や爪の雑菌が侵入する | 化膿が進み、治りが遅れる |
ニキビ跡 | 真皮層にダメージが及び、跡が残る | 色素沈着、クレーター、しこり |
間違ったスキンケア
ニキビを早く治したいからといって、ゴシゴシと強く洗顔したり、一日に何度も洗顔したりするのは逆効果です。過度な洗顔は、肌に必要な皮脂まで奪い去り、皮膚のバリア機能を低下させます。
バリア機能が弱まると、外部からの刺激に敏感になり、乾燥を招いてかえって皮脂分泌を過剰にさせてしまうこともあります。
また、アルコール濃度の高い収れん化粧水や、スクラブ入りの洗顔料なども、炎症を起こしているニキビには刺激が強すぎることがあります。
肌の状態に合わないスキンケア製品の使用は、ニキビを悪化させる原因となるため、注意が必要です。
- 洗浄力の強すぎる洗顔料
- 頻繁すぎる洗顔
- ゴシゴシこする洗い方
- 刺激の強い化粧品の使用
不規則な生活習慣
睡眠不足、偏った食事、ストレスなどは、ホルモンバランスの乱れや免疫力の低下を引き起こし、ニキビを悪化させる要因となります。
特に睡眠中は、肌のターンオーバーを促す成長ホルモンが分泌されるため、質の高い睡眠を十分にとることが重要です。
脂質の多い食事や糖分の多い食事、刺激物などは、皮脂の分泌を増やしたり、炎症を悪化させたりする可能性があります。バランスの取れた食事を心がけ、野菜や果物も積極的に摂取しましょう。
また、ストレスは自律神経のバランスを崩し、皮脂腺の活動を活発にすることが知られています。自分なりのストレス解消法を見つけ、心身ともに健康な状態を保つことが、ニキビの改善にもつながります。
メイクによる刺激や毛穴詰まり
痛いニキビがあるときは、できるだけメイクを控えるのが理想です。しかし、仕事や外出などでどうしてもメイクが必要な場合は、ニキビへの負担が少ない製品を選び、厚塗りを避けるようにしましょう。
油分の多いファンデーションやコンシーラーは毛穴を塞ぎやすく、ニキビを悪化させる可能性があります。
また、メイクを落とす際のクレンジングも重要です。メイクが残っていると毛穴詰まりの原因になるため、丁寧に、しかし肌に負担をかけないように優しく洗い流しましょう。
パフやブラシなどのメイク道具もこまめに洗浄し、清潔に保つことが大切です。
触ると痛いニキビの応急処置とセルフケア
触ると痛いニキビができてしまった場合、悪化させずに少しでも早く症状を和らげるためには、適切な応急処置とセルフケアが重要です。
ただし、これらの方法はあくまで一時的な対処であり、症状がひどい場合や改善が見られない場合は、皮膚科医に相談することを推奨します。
清潔を保つ
ニキビケアの基本は、肌を清潔に保つことです。しかし、前述の通り、洗いすぎは禁物です。洗顔は朝晩の2回程度とし、低刺激性の洗顔料をよく泡立てて、泡で優しく包み込むように洗います。
すすぎは、洗顔料が残らないようにぬるま湯で丁寧に行いましょう。熱いお湯は肌の乾燥を招くため避けます。
洗顔後は、清潔なタオルで優しく押さえるように水分を拭き取ります。ゴシゴシこするのは肌への刺激となるため注意してください。
また、髪の毛がニキビに触れないように、ヘアスタイルを工夫したり、家では髪をまとめたりするのも良いでしょう。
冷却する
炎症を起こして赤く腫れ、熱感やズキズキとした痛みを伴うニキビには、冷却が有効な場合があります。清潔なガーゼやハンカチで保冷剤を包み、ニキビとその周辺を数分間冷やします。
これにより、血管が収縮して炎症が一時的に和らぎ、痛みが軽減されることがあります。
ただし、冷やしすぎは凍傷のリスクがあるため、保冷剤を直接肌に当てたり、長時間冷やし続けたりするのは避けましょう。あくまで心地よいと感じる程度に留めることが大切です。
冷却は、特に炎症が強く、痛みが気になる場合の応急処置として試してみてください。
冷却時のポイント
ポイント | 具体的な方法・注意点 |
---|---|
準備するもの | 保冷剤、清潔なガーゼや薄手のハンカチ |
冷やし方 | 保冷剤をガーゼで包み、優しく患部に当てる |
時間 | 1回あたり数分程度、長くても5~10分以内 |
注意点 | 直接当てない、冷やしすぎない、痛みが増す場合は中止 |
市販薬の活用
痛みを伴う炎症性のニキビには、抗炎症成分や殺菌成分が配合された市販のニキビ治療薬を使用することも一つの方法です。イブプロフェンピコノールやイソプロピルメチルフェノールなどが代表的な有効成分です。
使用する際は、必ず用法・用量を守り、ニキビとその周辺のみに塗布するようにしましょう。広範囲に塗り広げると、健康な皮膚に刺激を与える可能性があります。
数日間使用しても改善が見られない場合や、かえって症状が悪化するような場合は、使用を中止し、皮膚科医に相談してください。
- イブプロフェンピコノール:抗炎症作用
- イソプロピルメチルフェノール:殺菌作用
- レゾルシン:角質軟化作用、殺菌作用
これらの成分が含まれているか、薬局の薬剤師に相談して選ぶと良いでしょう。
刺激を避ける保護
ニキビが衣類や寝具、マスクなどと擦れることで刺激を受け、悪化することがあります。特に痛みを伴うニキビは敏感になっているため、物理的な刺激を極力避けることが大切です。
ニキビができている場所に絆創膏や保護パッチを貼ることも考えられますが、通気性が悪くなるとかえってアクネ菌が増殖しやすくなる場合もあるため、長時間の使用は避け、蒸れにくい製品を選びましょう。
マスクを着用する場合は、肌触りの良い素材のものを選び、こまめに取り替えるなどして清潔を保つことが重要です。また、寝具、特に枕カバーは定期的に洗濯し、清潔な状態を維持するよう心がけましょう。
セルフケアの限界を知る
これらの応急処置やセルフケアは、あくまで症状を緩和したり、悪化を防いだりするためのものです。根本的な治療や、重症化したニキビへの対応は、皮膚科医の指導のもとで行うことが最も確実で安全な方法です。
自己判断で長期間対処せず、改善が見られない場合は早めに専門医を受診しましょう。
ニキビの種類別 痛みの特徴と対処法
一口に「痛いニキビ」と言っても、その種類によって痛みの質や強さ、そして適切な対処法が異なります。
ここでは、代表的な炎症性ニキビである赤ニキビ、黄ニキビ、しこりニキビについて、それぞれの痛みの特徴と、悪化させないための注意点を解説します。
赤ニキビの痛みとケア
赤ニキビは、毛穴の中で炎症が始まった段階のニキビです。皮膚が赤く盛り上がり、触れると痛みを感じます。この段階では、まだ膿は溜まっていません。
赤ニキビの痛みの原因
赤ニキビの痛みは、主にアクネ菌の増殖によって引き起こされる炎症反応によるものです。アクネ菌が産生する物質や、それに対抗しようとする体の免疫反応が、神経を刺激して痛みを発生させます。
炎症の範囲や強さによって、軽い圧痛からジンジンとした持続的な痛みまで様々です。
赤ニキビの応急処置
赤ニキビの段階では、まず患部を清潔に保ち、刺激を与えないことが基本です。洗顔は優しく行い、抗炎症成分を含む市販薬を試してみるのも良いでしょう。冷却することで、一時的に痛みや赤みが和らぐこともあります。
重要なのは、絶対に潰さないことです。無理に潰すと炎症が悪化し、黄ニキビに進行したり、ニキビ跡の原因になったりします。
赤ニキビケアのポイント | 具体的な行動 |
---|---|
清潔保持 | 低刺激の洗顔料で優しく洗顔する |
刺激回避 | 触らない、潰さない、髪の毛などが触れないようにする |
炎症抑制 | 抗炎症成分配合の市販薬を試す、必要に応じて冷却する |
黄ニキビの痛みとケア
黄ニキビは、赤ニキビの炎症がさらに進行し、毛穴の中に膿が溜まった状態です。黄色や白っぽい膿が透けて見えるのが特徴です。
黄ニキビの痛みの特徴
黄ニキビの痛みは、赤ニキビよりも強いことが多く、ズキズキとした拍動性の痛みを伴うこともあります。これは、毛穴内部の圧力が上昇し、炎症が周囲の組織に強く影響しているためです。
膿が溜まっているため、破裂しやすい状態でもあります。
黄ニキビへの注意点
黄ニキビも、自分で潰すのは厳禁です。潰すと細菌が周囲に広がり、新たなニキビの原因になったり、炎症が深部に及んでニキビ跡が残りやすくなったりします。黄ニキビはニキビ跡のリスクが特に高い状態なので、慎重な対応が必要です。
市販薬を使用しつつ、数日経っても改善しない場合や、痛みが非常に強い場合は、皮膚科を受診することを強く推奨します。皮膚科では、適切な排膿処置や抗生物質の内服・外用など、専門的な治療を受けることができます。
しこりニキビの痛みとケア
しこりニキビは、炎症が皮膚の深い部分(真皮層)まで達し、硬いしこりとなった状態です。触るとゴリゴリとした感触があり、強い痛みを伴うことが多いです。
しこりニキビの痛みの深刻さ
しこりニキビの痛みは、炎症が深部で慢性化しているために持続的で、時には何もしていなくても痛むことがあります。熱感を持つこともあり、日常生活に影響を与えるほどの強い痛みになることも少なくありません。
このタイプのニキビは、治癒後もケロイド状の跡や色素沈着など、目立つニキビ跡を残しやすい傾向があります。
しこりニキビで気をつけること
しこりニキビはセルフケアでの改善が難しく、無理に対処しようとすると症状を悪化させる可能性が高いです。市販薬の効果も限定的であることが多いため、しこりニキビができてしまった場合は、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。
皮膚科では、ステロイドの局所注射や抗生物質の内服、ケミカルピーリングなど、状態に合わせた治療法を提案してくれます。早期の適切な治療が、痛みや炎症を抑え、ニキビ跡のリスクを最小限にするために重要です。
ニキビ以外の痛みを伴うできもの
顔や体にできる痛みを伴う赤いできものは、必ずしもニキビとは限りません。ニキビと似た症状を示す他の皮膚疾患も存在するため、自己判断は禁物です。
毛嚢炎(もうのうえん)
毛嚢炎は、毛穴の奥にある毛包という部分に細菌(主に黄色ブドウ球菌など)が感染して炎症を起こす病気です。見た目は赤いブツブツや中心に膿を持ったものができ、ニキビと区別がつきにくいことがあります。
ヒゲ剃り後やムダ毛処理後、汗をかきやすい部位などにできやすい傾向があります。痛みや痒みを伴うことがあります。
粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に垢(角質)や皮脂などの老廃物が溜まってできる良性の腫瘍です。アテロームとも呼ばれます。
通常は痛みはありませんが、細菌感染を起こすと炎症性粉瘤となり、赤く腫れ上がり、強い痛みや熱感を生じることがあります。この状態になると、ニキビと間違われることもあります。
疾患名 | 主な原因 | 特徴的な症状 |
---|---|---|
毛嚢炎 | 細菌感染(黄色ブドウ球菌など) | 毛穴に一致した赤いブツブツ、膿、軽度の痛み・痒み |
炎症性粉瘤 | 粉瘤の袋に細菌が感染 | 急な腫れ、強い痛み、熱感、時に膿が出る |
これらの疾患はニキビとは治療法が異なるため、疑わしい場合は皮膚科を受診し、正確な診断を受けることが大切です。
痛いニキビを作らないための予防策
痛いニキビのつらさを経験すると、二度と繰り返したくないと思うものです。ニキビは一度できてしまうと治すのに時間がかかり、跡が残る可能性もあります。
そのため、日頃からニキビができにくい肌環境を整える「予防」が非常に重要です。ここでは、痛いニキビを作らないための具体的な予防策を紹介します。
正しいスキンケア習慣
毎日のスキンケアは、ニキビ予防の基本です。以下のポイントを押さえて、肌を健やかに保ちましょう。
- 優しい洗顔: 1日2回、低刺激性の洗顔料をよく泡立て、肌をこすらず優しく洗いましょう。皮脂や汚れをきちんと落とすことは大切ですが、洗いすぎは禁物です。
- 十分な保湿: 洗顔後は、肌が乾燥しないうちに化粧水や乳液でしっかりと保湿します。肌の水分と油分のバランスを整えることが、バリア機能の維持につながります。ニキビ肌向けやノンコメドジェニックテスト済みの製品を選ぶのも良いでしょう。
- 紫外線対策: 紫外線は肌のバリア機能を低下させ、角質を厚くする原因となり、ニキビを悪化させる可能性があります。季節を問わず、日焼け止めなどで紫外線対策を行いましょう。
スキンケア製品選びのポイント
ポイント | 説明 | 選び方の例 |
---|---|---|
低刺激性 | 肌への負担が少ないもの | 敏感肌用、無香料、無着色など |
ノンコメドジェニック | ニキビの元(コメド)ができにくい処方 | 製品に表示があるか確認 |
保湿力 | 肌の水分を補い、保持するもの | セラミド、ヒアルロン酸など保湿成分配合 |
バランスの取れた食事
食生活の乱れは、皮脂の過剰分泌や肌のターンオーバーの乱れにつながり、ニキビの原因となることがあります。特定の食品が直接ニキビを引き起こすとは限りませんが、健康な肌を育むためにはバランスの取れた食事が重要です。
ビタミンB群(皮脂分泌のコントロール)、ビタミンC(コラーゲン生成、抗酸化作用)、ビタミンE(血行促進、抗酸化作用)、食物繊維(腸内環境改善)などを意識して摂取しましょう。
脂質の多い食事や糖分の多いお菓子、インスタント食品の摂りすぎには注意し、野菜や果物、海藻類なども積極的に取り入れることが望ましいです。
質の高い睡眠
睡眠不足は、肌のターンオーバーを乱し、ホルモンバランスにも影響を与え、ニキビを悪化させる大きな要因の一つです。肌の修復や再生は主に睡眠中に行われるため、質の高い睡眠を十分な時間確保することが大切です。
毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンの長時間の使用は避け、リラックスできる環境を整えることが、質の高い睡眠につながります。
理想的な睡眠時間は個人差がありますが、一般的には6~8時間程度を目安にすると良いでしょう。
ストレスマネジメント
過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、男性ホルモンの分泌を促して皮脂腺を刺激したり、免疫力を低下させたりして、ニキビができやすい状態を招きます。
現代社会においてストレスを完全になくすことは難しいですが、自分に合った方法で上手にストレスをコントロールすることが重要です。
適度な運動、趣味の時間を楽しむ、リラックスできる音楽を聴く、瞑想やヨガを取り入れるなど、心身をリフレッシュできる習慣を見つけましょう。友人や家族と話すことも、ストレス軽減に役立つことがあります。
ストレスを溜め込まないように意識することが、健やかな肌を保つためにも大切です。
ストレス軽減のためのヒント
- 軽い運動(ウォーキング、ストレッチなど)
- 趣味や好きなことに没頭する時間を作る
- 十分な休息とリラックス
予防は継続が力
ニキビ予防は、一朝一夕に効果が出るものではありません。正しいスキンケア、バランスの取れた食事、質の高い睡眠、ストレスマネジメントといった生活習慣を継続することが、ニキビのできにくい健やかな肌への近道です。
焦らず、根気強く取り組んでいきましょう。
よくある質問
触ると痛いニキビに関して、多くの方が疑問に思うことや不安に感じる点をQ&A形式でまとめました。ニキビケアの参考にしてください。
- 痛いニキビは皮膚科に行くべきか
-
痛みが強い場合、広範囲に広がっている場合、市販薬を数日使用しても改善しない場合、またはしこりニキビのように硬くなっている場合は、皮膚科を受診することを強く推奨します。
炎症が強いニキビや深部に達しているニキビは、自己判断で対処すると悪化させたり、ニキビ跡を残したりするリスクが高まります。
皮膚科では、ニキビの種類や状態に合わせた専門的な治療(外用薬、内服薬、面皰圧出、ケミカルピーリング、レーザー治療など)を受けることができます。
早期に適切な治療を開始することが、きれいに治すための鍵となります。
皮膚科受診を検討する目安
症状・状況 受診の推奨度 軽い赤み、少し触ると痛む程度 セルフケアで様子を見ても良いが、悪化すれば受診 強い痛み、ズキズキする痛み 高い(早めの受診を推奨) 膿が目立つ(黄ニキビ) 高い(特に数が多い、大きい場合) 硬いしこりがある(しこりニキビ) 非常に高い(速やかな受診を推奨) 市販薬で改善しない、または悪化する 高い - ニキビ跡の痛みは治るのか
-
通常、ニキビが治癒した後の「ニキビ跡」自体が痛むことは稀です。
もしニキビ跡が痛むと感じる場合、それはまだ炎症が完全に治まっていないか、あるいはニキビ跡の組織が周囲の神経に影響を与えている可能性などが考えられます。
例えば、炎症後の赤みが残っている段階では、まだ微細な炎症が続いていることもあります。また、ケロイド状のニキビ跡では、引きつれ感や痒み、稀に痛みを伴うこともあります。
痛みが続く場合は、自己判断せずに皮膚科医に相談し、原因を特定してもらうことが大切です。適切な診断と治療により、痛みは改善する可能性があります。
- 食べ物でニキビの痛みは変わるのか
-
特定の食べ物が直接的にニキビの「痛み」を増減させるという医学的な根拠は明確ではありません。しかし、食生活全体がニキビの発生や炎症の程度に影響を与える可能性は指摘されています。
例えば、高GI値の食品(血糖値を急上昇させやすい食品)や乳製品の一部、脂質の多い食事が、皮脂の分泌を増やしたり炎症を促進したりする可能性が研究されています。
炎症が強くなれば、結果として痛みも増すことが考えられます。
バランスの取れた食事を心がけ、特定の食品に偏らず、野菜や果物を多く摂ることは、肌の健康全般にとって有益です。
もし特定の食品を摂取した後にニキビが悪化したり痛みが増したりすると感じる場合は、一時的にその食品を控えて様子を見るのも一つの方法ですが、過度な食事制限は栄養バランスを崩す可能性もあるため、気になる場合は医師や管理栄養士に相談しましょう。
- 痛いニキビを早く治す方法は
-
痛いニキビを最も早く、かつ安全に治す方法は、皮膚科で適切な治療を受けることです。特に炎症が強い場合や化膿している場合、しこりになっている場合は、専門医による診断と治療が不可欠です。
セルフケアでできることとしては、以下の点が挙げられます。
- 触らない・潰さない: これが最も重要です。刺激を与えないことで悪化を防ぎます。
- 清潔を保つ: 低刺激の洗顔料で優しく洗顔し、肌を清潔に保ちます。
- 適切な市販薬の使用: 抗炎症成分や殺菌成分配合のニキビ治療薬を、用法・用量を守って使用します。
- 生活習慣の見直し: 十分な睡眠、バランスの取れた食事、ストレス軽減を心がけ、肌の治癒力を高めます。
- 冷却: 炎症が強く熱感がある場合は、一時的に冷やすことで痛みが和らぐことがあります。
しかし、これらはあくまで補助的な手段であり、根本的な解決や迅速な改善を望む場合は、やはり皮膚科医の診察を受けることが最善の策です。
自己流のケアで悪化させてしまう前に、専門家のアドバイスを求めましょう。
以上
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