「まだ小学生なのに、子どもの顔にニキビが…」とお悩みの保護者の方も多いのではないでしょうか。
近年、食生活の変化や成長の早期化により、小学生でもニキビに悩むお子さんが増えています。子どものデリケートな肌は、大人と同じケアではかえって悪化させてしまうこともあります。
この記事では、小学生のニキビの特有の原因から、ご家庭でできる正しいスキンケア、生活習慣の見直し、そしてお子さんの肌に合った安全な薬の選び方まで、皮膚科の観点から分かりやすく解説します。
大切な思春期を健やかな肌で迎えられるよう、今から正しい知識を身につけて、お子さんの肌を一緒に守っていきましょう。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
小学生のニキビ、大人のニキビと何が違うの?
小学生にできるニキビは「思春期ニキビ」の始まりと考えられます。しかし、大人のニキビとは肌の状態や原因が少し異なります。お子さんの肌の特徴を理解することが、正しいケアへの第一歩です。
思春期の入り口で起こる皮脂の増加
小学校高学年ごろになると、性ホルモンの分泌が少しずつ活発になり始めます。この性ホルモンが皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌量を増やすため、毛穴が詰まりやすくなりニキビの最初の原因となります。
これは成長過程における自然な体の変化です。
まだ未熟でデリケートな子どもの肌
小学生の皮膚は、大人に比べてまだ薄く、外部からの刺激に弱い状態です。肌の水分と油分のバランスを保つ機能(バリア機能)も発達途中のため、少しの刺激でも肌トラブルにつながりやすいという特徴があります。
小学生と大人の肌の比較
項目 | 小学生の肌 | 大人の肌 |
---|---|---|
皮膚の厚さ | 薄い | 厚い |
バリア機能 | 発達途中 | 完成している |
刺激への耐性 | 弱い | 比較的強い |
間違ったスキンケアが刺激になることも
ニキビを気にするあまり、ゴシゴシと強く洗いすぎたり、洗浄力の強すぎる洗顔料を使ったりすると、未熟な肌のバリア機能を壊してしまいます。
その結果、肌が乾燥し、かえって皮脂が過剰に分泌されてニキビを悪化させる原因になることがあります。
小学生のニキビの主な原因
小学生のニキビは、ホルモンの影響だけでなく、日常生活の中に潜むさまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。主な原因を知り、対策を考えましょう。
ホルモンバランスの変化の始まり
前述の通り、成長に伴うホルモン分泌の増加が、皮脂分泌を活発にする最大の要因です。特にTゾーン(おでこ、鼻)は皮脂腺が多いため、ニキビができやすくなります。
皮脂や汚れによる毛穴の詰まり
増えた皮脂が、古い角質や汗、ほこりなどと混じり合って毛穴を塞いでしまうことがニキビの直接的な始まりです。また、シャンプーやリンスのすすぎ残しが髪の生え際に付着することも、毛穴詰まりの原因になります。
睡眠不足や食生活の乱れ
健やかな肌を育むためには、規則正しい生活習慣が重要です。特に、睡眠中に分泌される成長ホルモンは、肌のターンオーバー(生まれ変わり)を促す働きがあります。睡眠不足は、この働きを妨げ、ニキビの悪化につながります。
ニキビにつながる可能性のある生活習慣
習慣 | 内容 | 肌への影響 |
---|---|---|
睡眠 | 夜更かし、不規則な就寝時間 | 成長ホルモンの分泌が減り、肌の修復が遅れる |
食事 | スナック菓子や甘いものの食べ過ぎ | 皮脂の分泌を増やす可能性がある |
運動 | 運動不足 | 血行が悪くなり、肌のターンオーバーが乱れる |
ストレスが肌に与える影響
勉強や友人関係など、小学生でもさまざまなストレスを感じることがあります。ストレスはホルモンバランスを乱し、皮脂の分泌を過剰にしたり、肌の抵抗力を弱めたりする原因となることがあります。
まずはニキビの種類を知ろう
ニキビは進行度によって見た目や状態が異なります。種類を見分けることで、適切なケアの方法が見えてきます。
ニキビの始まり「白ニキビ」
毛穴に皮脂が詰まっただけの初期段階のニキビです。皮膚の内側で毛穴が閉じているため、白っぽくポツンと小さく盛り上がって見えます。この段階ではまだ炎症は起きていません。
毛穴が開いて黒く見える「黒ニキビ」
白ニキビの毛穴が開き、詰まった皮脂が空気に触れて酸化し、黒く見える状態です。これもまだ炎症は起こしていませんが、放置すると炎症を起こす赤ニキビに進行しやすくなります。
炎症を起こしてしまった「赤ニキビ」
毛穴の中でアクネ菌が増殖し、炎症を起こして赤く腫れあがった状態です。痛みやかゆみを伴うこともあり、無理に潰すとニキビ跡が残る原因になるため、特に注意が必要です。
ニキビの種類と主な特徴
種類 | 見た目 | 炎症の有無 |
---|---|---|
白ニキビ | 白く小さな盛り上がり | なし |
黒ニキビ | 毛穴が黒い点に見える | なし |
赤ニキビ | 赤く腫れている | あり |
家庭でできる正しいスキンケア方法
小学生のニキビケアの基本は、肌を清潔に保ち、うるおいを守ることです。毎日の正しいスキンケアを親子で習慣にしましょう。
優しく洗うが基本の洗顔
洗顔の目的は、余分な皮脂や汚れを落とすことです。しかし、洗いすぎは禁物です。肌に必要なうるおいまで奪ってしまい、乾燥を招きます。
正しい洗顔料の選び方
ポイント | 説明 | 選び方の例 |
---|---|---|
洗浄力 | マイルドなもの | 子ども用、敏感肌用、低刺激性の表示があるもの |
成分 | 肌に優しい成分 | 無香料、無着色、アルコールフリーなど |
泡立ち | よく泡立つもの | 泡で出てくるポンプタイプも便利 |
洗顔は、朝と夜の2回が基本です。以下の点に注意して、優しく洗いましょう。
- ぬるま湯(32〜34度程度)で顔を予洗いする
- 洗顔料をしっかり泡立て、泡で顔をなでるように洗う
- すすぎ残しがないように、丁寧に洗い流す
- 清潔なタオルで、こすらずに優しく水分を押さえる
洗顔後の保湿で肌のバリア機能を守る
「ニキビ肌はベタつくから保湿は不要」というのは大きな間違いです。洗顔後の肌は水分が蒸発しやすく、乾燥しがちです。乾燥すると肌は自らを守ろうとして、かえって皮脂を多く分泌してしまいます。
化粧水や乳液、クリームなどでしっかり保湿し、肌の水分と油分のバランスを整えることが大切です。
保湿剤選びのポイント
肌質 | おすすめの保湿剤 | ポイント |
---|---|---|
乾燥しやすい肌 | クリームタイプ | 油分でしっかりフタをする |
ベタつきやすい肌 | ジェル、ローションタイプ | さっぱりとした使用感のもの |
敏感な肌 | 低刺激性のもの | アレルギーテスト済みなどの表示を確認 |
紫外線対策もニキビケアの一環
紫外線は肌のバリア機能を低下させ、ニキビの炎症を悪化させる原因になります。また、ニキビ跡がシミとして残りやすくなることも。日頃から日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。
子どもでも使いやすい、石けんで落とせるタイプの日焼け止めがおすすめです。
髪の毛や寝具の清潔を保つ
おでこやフェイスラインのニキビは、髪の毛の刺激が原因になることがあります。髪が顔にかからないように結んだり、ピンで留めたりする工夫も有効です。
また、枕カバーやシーツなどの寝具は、汗や皮脂が付着しやすいため、こまめに洗濯して清潔に保ちましょう。
ニキビを悪化させないための生活習慣
スキンケアと合わせて、体の内側から肌の健康をサポートする生活習慣も非常に重要です。親子で一緒に生活を見直してみましょう。
バランスの取れた食事を心がける
特定の食べ物が直接ニキビの原因になるという科学的根拠は明確ではありませんが、栄養バランスの偏りは肌の状態に影響を与えます。
特に、脂肪分や糖分の多いスナック菓子、ジュース、ファストフードの摂りすぎは、皮脂の分泌を増やす可能性があるため注意が必要です。
肌の材料となるタンパク質や、肌の調子を整えるビタミン、ミネラルをバランス良く摂ることを意識しましょう。
ニキビケアで意識したい栄養素と食品
栄養素 | 働き | 多く含まれる食品 |
---|---|---|
ビタミンB群 | 皮脂の分泌を調整する | 豚肉、レバー、納豆、卵 |
ビタミンC | 炎症を抑え、肌の再生を助ける | ピーマン、ブロッコリー、果物 |
食物繊維 | 腸内環境を整える | 野菜、きのこ、海藻 |
質の良い睡眠を確保する
肌のゴールデンタイムといわれる夜10時から深夜2時を含む時間帯に、しっかり睡眠をとることが理想です。
成長ホルモンが十分に分泌されることで、日中に受けた肌ダメージの修復や、肌のターンオーバーが促進されます。
- 就寝前はスマートフォンやゲームを控える
- 毎日同じ時間に寝て、起きる習慣をつける
- リラックスできる寝室環境を整える
ニキビを潰さない、触らない
ニキビが気になって、つい触ったり潰したりしたくなる気持ちは分かりますが、絶対にやめましょう。
手についた雑菌がニキビに入り込んで炎症を悪化させたり、無理に潰すことで皮膚を傷つけ、クレーターのようなニキビ跡が残ってしまったりする原因になります。
小学生でも使える?安全なニキビ薬の選び方
セルフケアで改善が見られない場合、薬の使用を検討することもあるでしょう。しかし、子どもの肌に使う薬は慎重に選ぶ必要があります。
市販薬を選ぶ際のポイント
ドラッグストアなどでは多くのニキビ治療薬が販売されています。小学生のお子さんに使用する場合は、刺激の少ないものを選ぶことが大切です。購入する際は、薬剤師に相談することをおすすめします。
市販薬の主な有効成分
成分名 | 主な働き | 注意点 |
---|---|---|
イオウ | 角質を柔らかくする、殺菌 | 乾燥や赤みが出ることがある |
レゾルシン | 殺菌、角質を溶かす | 刺激を感じることがある |
イブプロフェンピコノール | 炎症を鎮める | 赤ニキビに有効 |
使用前には必ずパッチテスト(腕の内側などの目立たない場所に少量塗り、1日様子を見ること)を行い、肌に異常が出ないか確認しましょう。
皮膚科で処方される薬の種類
皮膚科では、ニキビの種類や肌の状態に合わせて、さまざまな薬を処方します。市販薬よりも効果の高い治療が期待できます。
毛穴の詰まりを改善する塗り薬や、炎症を抑える塗り薬、抗生物質の飲み薬などが中心となります。
子どもに使う際の注意点
薬を使用する際は、必ず用法・用量を守りましょう。塗り薬は、ニキビの部分だけに綿棒などで薄く塗るのが基本です。広範囲に塗り広げると、健康な肌まで乾燥させてしまうことがあります。
また、お子さんが自分で薬を管理するのは難しいため、保護者の方が塗ってあげるようにしてください。
皮膚科を受診するタイミング
セルフケアで対応できるニキビもありますが、専門家である医師に相談した方が良いケースもあります。受診を迷ったときの目安を知っておきましょう。
セルフケアで改善しないとき
正しいスキンケアや生活習慣の見直しを1ヶ月ほど続けても、ニキビが減らなかったり、新しいニキビが次々とできたりする場合は、一度皮膚科を受診することをおすすめします。
炎症が強い赤ニキビが多いとき
赤く腫れて痛みを伴うような炎症性のニキビが多い場合は、セルフケアだけでは改善が難しく、ニキビ跡が残りやすい状態です。早めに皮膚科で適切な治療を受けることが、きれいな肌を保つために重要です。
ニキビ跡が心配なとき
お子さんがニキビを潰してしまったり、炎症が長引いたりして、跡にならないか心配なときも受診のタイミングです。
ニキビ跡の治療は、ニキビそのものの治療よりも時間と費用がかかることが多いため、跡になる前に治療を始めることが大切です。
皮膚科受診の目安チェック
チェック項目 | 詳細 |
---|---|
□ ニキビの数が増え続けている | セルフケアの効果が出ていない可能性がある |
□ 赤く腫れて痛いニキビがある | 炎症が強く、跡に残りやすい |
□ ニキビの範囲が広がっている | 症状が進行しているサイン |
名古屋のニキビ治療なら【こばとも皮膚科】栄駅すぐ|保険診療・美容皮膚科対応
小学生のニキビに関するよくある質問
最後に、保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
- ニキビは皮膚科と小児科、どちらに行くべき?
-
ニキビは皮膚の病気ですので、専門である皮膚科の受診をおすすめします。ニキビ治療の経験が豊富な医師が、お子さんの肌の状態に合わせた適切な診断と治療を行ってくれます。
- 大人用のニキビケア用品を使ってもいい?
-
大人用の製品は、洗浄力や配合されている成分が強く、子どものデリケートな肌には刺激が強すぎることがあります。
肌荒れの原因になる可能性もあるため、子ども用や敏感肌用と表示されている、刺激の少ない製品を選ぶのが安全です。
- ニキビ跡を残さないためにはどうすればいい?
-
最も大切なことは、ニキビを潰したり、いじったりしないことです。そして、炎症が起きている赤ニキビは、できるだけ早く炎症を鎮める治療を行うことが重要です。
症状がひどい場合は、自己判断で様子を見ずに皮膚科に相談しましょう。
- 食べ物でニキビが悪化することはある?
-
チョコレートやナッツ類がニキビを悪化させるという話をよく聞きますが、医学的に証明されているわけではありません。
ただし、脂肪分や糖分の多い食品の摂りすぎは、皮脂の分泌を増やすことにつながるため、どんな食品でもバランス良く食べることが基本です。
特定の食品を食べた後にニキビが悪化するようであれば、その食品を控えてみるのも一つの方法です。
参考文献
USATINE, Richard, et al. Common Skin Conditions in Children and Adolescents. FP Essentials, 2024, 541.
BHATE, Ketaki; WILLIAMS, H. C. Epidemiology of acne vulgaris. British Journal of Dermatology, 2013, 168.3: 474-485.
COYLE, Meaghan; LIANG, Haiying. Evidence-based Clinical Chinese Medicine-Volume 11: Acne Vulgaris. World Scientific, 2019.
FRANÇA, Katlein, et al. Medical ethics and bioethics in pediatric dermatology. Pediatric dermatologic surgery, 2019, 303-313.
COYLE, Meaghan; LIANG, Haiying. Evidence-based Clinical Chinese Medicine.
GEORGE, Elisabeth A., et al. Disorders in Children. Dermatologic Clinics, 2023, 41.3: 491-507.
SILVERBERG, Nanette B. Pediatric vitiligo. Pediatric Clinics, 2014, 61.2: 347-366.
FARAG, Samah Saad Mostafa Abo Zaied; EL MALKY, Maaly Ibrahim; IBRAHIM, Samah Ramdan. Psychological Problems among Adolescent with Acne Vulgaris.
SILVERBERG, Nanette B. Dermatologic disorders in children of color. In: Skin of color: a practical guide to dermatologic diagnosis and treatment. New York, NY: Springer New York, 2012. p. 327-350.
BROUGH, Helen A.; NATARAJA, Ram. Rapid paediatrics and child health. John Wiley & Sons, 2011.