舌癌(ぜつがん)

舌癌(Tongue cancer)は、口の中にできるがんの一種で、舌に発生する悪性腫瘍です。口腔がんの中で舌癌の割合は高く、4分の1から3分の1を占めています。

舌に痛みやしこりができたり、潰瘍ができて出血したりするのが代表的な症状です。進行すると、物を飲み込むのが難しくなったり、言葉がはっきり話せなくなったりします。

この記事では、舌癌の症状や治療法、原因を解説します。

目次

舌癌(ぜつがん)の病型

舌癌の病型は、腫瘍の発生部位や進展様式によって分類されます。

大きく分けると、外向型(外向発育型)、内向型(内向発育型)、表在型、混合型の4つに分類できます。

外向型(外向発育型)舌癌

外向型舌癌は、腫瘍が舌表面に向かって突出するように発育する型です。

腫瘍は比較的早期から視認可能であり、自覚症状も現れやすいため、比較的早期に発見される場合が多い病型と言えます。

内向型(内向発育型)舌癌

内向型舌癌は、腫瘍が舌の深部に向かって浸潤性に発育する型です。表面からは腫瘍の存在が分かりにくく、自覚症状も現れにくいため、発見が遅れがちな病型となります。

予後は外向型と比較して不良となる傾向があります。

表在型舌癌

表在型舌癌は、腫瘍が舌表面に沿って広がるように発育する型です。早期では白斑や紅斑として認められるケースが多く、進行すると潰瘍を形成します。

リンパ節転移の頻度は比較的低いとされています。

以下は、舌癌の病型とその特徴をまとめた表です。

病型発育様式早期発見の難易度予後
外向型舌表面に突出比較的容易比較的良好
内向型舌深部に浸潤困難不良傾向
表在型舌表面に沿って広がる比較的容易比較的良好
混合型外向型と内向型の混在症例による症例による

また、舌癌の病期分類(TNM分類)も重要です。

  • T(原発腫瘍の大きさ):T1〜T4
  • N(所属リンパ節転移の有無・程度):N0〜N3
  • M(遠隔転移の有無):M0またはM1

TNM分類に基づいて病期(ステージ)が決定され、治療方針や予後の推測に役立てられます。

混合型舌癌

混合型舌癌は、外向型と内向型の発育様式が混在する型です。

腫瘍の一部が外向性に発育し、一部が内向性に発育するため、その特徴は症例によって異なります。

舌癌(ぜつがん)の症状

舌癌は、口腔・咽頭疾患の一種であり、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、病状が進行するにつれて、様々な症状が現れ始めます。

舌の腫瘍や潰瘍

舌癌の最もよくある症状は、舌の表面や裏側にできる腫瘍や潰瘍です。最初は小さな白い斑点や赤い斑点として現れ、次第に大きくなっていきます。

腫瘍や潰瘍は痛みを伴う場合もありますが、初期の段階では痛みを感じないのが特徴です。

症状特徴
白斑舌の表面に現れる白い斑点
紅斑舌の表面に現れる赤い斑点
腫瘍舌の表面や裏側に現れる隆起性病変
潰瘍舌の表面や裏側に現れる陥凹性病変

舌の痛みや不快感

舌癌が進行してくると、舌に痛みや不快感が生じてきます。特に食事をしたり、会話をしたりする際に、この痛みが強くなる傾向にあります。

さらに、舌の動きが制限されるため、発音や嚥下にも支障をきたす場合があります。

リンパ節の腫脹

舌癌が進行すると、頸部のリンパ節が腫れてくることがあります。これは、癌細胞がリンパ系を通って拡散した結果であり、転移の兆候である可能性が高いです。

リンパ節の腫脹は、触診によって確認できます。

出血

進行した舌癌では、腫瘍や潰瘍から出血が起こる場合があります。出血は、食事中や歯磨き時に特に起こりやすくなります。

出血が止まらない場合や、大量の出血が見られる場合は、すぐに医療機関を受診しなければなりません。

舌癌の症状まとめ

症状詳細
舌の腫瘍や潰瘍舌の表面や裏側に現れる白斑、紅斑、隆起性病変、陥凹性病変
舌の痛みや不快感食事や会話の際に特に強くなる痛みや不快感、舌の動きの制限
リンパ節の腫脹頸部のリンパ節の腫れ、転移の兆候である可能性
出血腫瘍や潰瘍からの出血、食事中や歯磨き時に起こりやすい

舌癌の症状の特徴

  • 初期段階では自覚症状に乏しい
  • 進行すると様々な症状が現れ始める
  • 症状の早期発見と適切な診断・治療が予後改善に不可欠

舌癌の症状は多岐にわたり、人によって異なるため、少しでも異変を感じたら迷わずに医療機関を受診し、専門医の診察を受けましょう。

舌癌(ぜつがん)の原因

喫煙や過度の飲酒といった生活習慣、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染、そして慢性的な刺激などが主な舌癌の原因として挙げられます。

喫煙と飲酒による発癌リスクの増大

喫煙は舌癌の主要な原因の一つで、喫煙者は非喫煙者と比べて発症リスクが数倍高くなります。 タバコに含まれる発癌物質が口の粘膜に直接作用し、DNAに損傷を与えるためです。

また、過度の飲酒も発癌リスクを高め、喫煙と飲酒を併せて行うと、発癌リスクが相乗的に上昇するという報告があります。

原因リスク増大の程度
喫煙非喫煙者の数倍
過度の飲酒中程度のリスク増大
喫煙と飲酒の併用相乗的にリスク増大

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の影響

最近の研究で、舌癌の発症にHPV感染が関与していることが明らかになってきました。

HPVは性行為で感染するウイルスで、子宮頸癌の原因としても知られています。HPV感染により舌の粘膜細胞に異常が生じ、癌化につながる可能性があり、特にHPV16型とHPV18型が舌癌と強く関連していると考えられています。

慢性的な刺激による発癌リスクの上昇

舌の同じ部位に長期間にわたって慢性的な刺激が加わると、舌癌のリスクが高まる場合があります。

例えば、以下のような要因が挙げられます。

  • 不適合な義歯による舌への持続的な圧迫や擦過
  • 歯の鋭利な端による、舌の繰り返しの損傷
  • 口腔内のアフタ性潰瘍や、扁平苔癬などの慢性炎症性疾患

これらの慢性的な刺激により、舌の粘膜に異形成(前癌状態)が生じ、やがて癌化する可能性があります。

その他の原因と発癌リスク

原因詳細
年齢高齢になるほど発症リスクが上昇する
性別男性の方が女性よりも発症率が高い
遺伝的素因特定の遺伝子変異が発癌リスクを上昇させる可能性がある
免疫抑制状態臓器移植や HIV感染などによる免疫抑制が発癌リスクを高める

このように、舌癌の原因は多岐にわたります。 喫煙や過度の飲酒といった生活習慣の改善や、HPV感染の予防、口の中の慢性的な刺激を取り除く習慣が舌癌の予防のために重要です。

舌癌(ぜつがん)の検査・チェック方法

検査方法内容
視診・触診舌の表面や裏側を目視で確認し、腫瘍や潰瘍の有無を調べます。また、舌の硬さや可動性も触診で確認します。
生検腫瘍が疑われる部位から組織を採取し、顕微鏡で詳細に調べます。舌癌の確定診断に必要不可欠な検査です。
画像検査CT、MRI、PET-CTなどの画像検査で、腫瘍の広がりや深さ、リンフ節転移の有無を調べます。

日常生活では、以下のようなセルフチェックを習慣づけましょう。

  • 舌の表面や裏側を鏡で確認し、腫瘍や潰瘍、白斑、赤斑などの異常がないか確認する
  • 舌の痛みや違和感、しびれ、腫れなどの症状に注意する
  • 喫煙や飲酒など、舌癌のリスク因子を避ける

定期的な歯科検診の重要性

舌癌の早期発見には、定期的な歯科検診が欠かせません。少なくとも年に1度は歯科検診を受けるように心がけると、舌癌の兆候を早期に発見できます。

検診間隔対象者
3〜6ヶ月高リスク群(喫煙者、飲酒者、口腔内に異常を感じる人)
6〜12ヶ月一般的なリスク群

舌癌(ぜつがん)の治療方法と治療薬について

舌癌の治療法は、がんの進行度や患者様の全身状態などを総合的に判断し、外科手術、放射線療法、化学療法、あるいはこれらを組み合わせた集学的治療が選択されます。

早期発見・早期治療が極めて重要であり、治療後も再発予防のために定期的な経過観察が必要です。

外科手術による治療

舌癌の外科手術では、がんの部位や広がりに応じて舌の一部または全部を切除します。

リンパ節転移が疑われる場合は、頸部リンパ節郭清術も併せて行われる可能性があります。

術後は、言語聴覚士による発音やえん下機能の訓練が必要となるケースもあります。

放射線療法による治療

放射線療法は、がん細胞に高エネルギーのX線やガンマ線を照射し、がん細胞のDNAを損傷させて増殖を抑制する治療法です。

外部照射と小線源治療(組織内照射)があり、舌癌では主に外部照射が用いられます。

治療法概要
外部照射体外から放射線を照射する方法
小線源治療放射性同位元素を用いて体内から照射する方法

化学療法による治療

化学療法は、抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑制する全身療法です。

舌癌の化学療法では、シスプラチンやカルボプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ドセタキセルなどの薬剤が単独または併用で使用されます。

  • シスプラチン:代表的な白金製剤の一つで、DNAと結合することでがん細胞の増殖を阻害します。
  • カルボプラチン:シスプラチンの誘導体であり、同様の作用機序を持ちます。
  • 5-フルオロウラシル(5-FU):ピリミジン代謝拮抗剤で、DNAとRNAの合成を阻害します。
  • ドセタキセル:タキサン系の抗がん剤で、微小管の脱重合を阻害してがん細胞の分裂を抑制します。

治療法と治療薬の一覧

治療法治療薬
外科手術
放射線療法
化学療法シスプラチン、カルボプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ドセタキセルなど

舌癌(ぜつがん)の治療期間と予後

舌癌の治療期間と予後は、がんの進行度(病期)や選択された治療方法によって異なりますが、早期に発見し、適切な治療を行えば、高い生存率が期待できます。

舌癌の治療期間と予後の概要

舌癌の治療期間と予後は、病期と治療方法に大きく依存します。

早期発見された舌癌は、手術や放射線療法で治療でき、比較的短期間で良好な予後が見込めます。

しかし、進行癌の場合は、手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療が必要となり、治療期間は長くなり、予後も悪化する傾向があります。

早期発見された舌癌の治療期間と予後

病期治療方法治療期間5年生存率
I期手術または放射線療法1~2ヶ月80~90%
II期手術または放射線療法2~3ヶ月60~80%

早期発見された舌癌(I期およびII期)の場合、手術または放射線療法による治療期間は1~3ヶ月程度です。

I期の5年生存率は80~90%、II期では60~80%と、いずれも良好な予後が期待できます。

進行癌の治療期間と予後

進行癌(III期およびIV期)の場合、治療期間は長期化し、予後も悪化する傾向にあります。

  • III期:手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療が必要となり、治療期間は6ヶ月以上に及ぶ場合があります。5年生存率は30~50%程度です。
  • IV期:遠隔転移を伴う場合、治療は長期化します。治療期間は1年以上に及ぶ可能性もあり、全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2021年11月集計)によると、5年生存率は50.1%と報告されています。

舌癌の治療後のフォローアップ

舌癌の治療後は、再発や転移の早期発見のために定期的な受診が欠かせません。

通院の期間と頻度は、病期や治療方法によって異なりますが、一般的には以下のようなスケジュールで行われます。

治療後の期間通院間隔の目安
1~2年目1~3ヶ月ごと
3~5年目3~6ヶ月ごと
5年以降6~12ヶ月ごと

定期的な通院を通じて、再発や転移の早期発見に努めることが、良好な予後を維持するために重要です。

薬の副作用や治療のデメリットについて

舌癌の治療には、様々な副作用が伴います。

治療に伴う副作用

治療法副作用
手術疼痛、腫れ、感染症、出血、嚥下障害、発音障害
放射線治療口内炎、味覚障害、口腔乾燥、皮膚炎、疲労感
化学療法吐き気、嘔吐、食欲不振、脱毛、免疫力低下

症状に応じた薬物療法や口腔ケア、リハビリテーションなどの組み合わせにより、副作用を最小限に抑え、苦痛を和らげていきます。

長期的な影響

手術によって舌の一部を失った場合、発音や嚥下機能の回復には時間がかかります。

また、放射線治療による口腔乾燥や味覚障害も、長期間続くケースがあります。

保険適用の有無と治療費の目安について

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

口腔・咽頭疾患の一種である舌癌の治療には、基本的に健康保険が適用されます。

舌癌の保険適用について

保険が適用されるためには、医学的に必要と認められた治療であることが条件です。 保険適用の可否は、担当医師の判断に基づいて決まります。

舌癌の一般的な治療費の目安

舌癌の治療費は、病期や治療方法によって大きく変わってきます。

病期治療方法治療費の目安
I期手術50~100万円
II期手術+放射線療法100~200万円
III期・IV期手術+化学放射線療法200~500万円

これらはあくまで一般的な目安であり、個々の症例によって治療費が大きく上下する可能性があります。

舌癌の治療費に影響を与える要因

舌癌の治療費は、病期の進行度、腫瘍の大きさや位置、転移の有無、患者の全身状態、選択する治療方法などにより変わります。

舌癌の治療費の自己負担額

舌癌の治療費の自己負担額は、次の表のように計算されます。

治療費の区分自己負担額
高額療養費の上限額未満治療費の3割
高額療養費の上限額以上高額療養費の上限額

高額療養費制度を利用すれば、自己負担額を一定の上限に抑えられます。 制度を利用するには一定の条件があります。詳細は担当医師や医療機関の相談窓口に確認してください。

上記の治療費は目安であり、実際にはより高額になる可能性もあります。 また、保険適用の可否については、診察時に担当医師にご確認ください。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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