大腸ポリープ

大腸ポリープ(Colonic polyp)とは、大腸内壁に形成される隆起性の組織変化です。大腸粘膜から発生し、大きさや形状は多岐にわたります。

多くのケースでは初期に症状が現れないため、定期検診を通じて発見されるのが一般的です。

ポリープの性質や規模によっては将来大腸がんへと進行する可能性があるため、早期の発見と対応が重要です。

目次

大腸ポリープの病型

大腸ポリープは、腫瘍性と非腫瘍性の2つに大きく分けられます。

腫瘍性ポリープ

腫瘍性ポリープの代表的なものは、「腺腫」と「癌」です。

腺腫は良性の腫瘍で、大腸癌へと進展する可能性がある前駆病変として認識されています。また、一部の早期癌は大腸ポリープとして切除され、切除後に癌だったと分かるケースがあります。

これら以外にも、消化管神経内分泌腫瘍、悪性リンパ腫、脂肪腫などの粘膜下腫瘍も腫瘍性ポリープに含まれます。

腫瘍性ポリープの種類特徴
腺腫良性、癌化の可能性あり
悪性、早期発見が重要
消化管神経内分泌腫瘍ホルモン産生の可能性
悪性リンパ腫免疫系の腫瘍
脂肪腫良性の脂肪組織腫瘍

非腫瘍性ポリープ

非腫瘍性ポリープには過形成性ポリープ、過誤腫性ポリープ、炎症性ポリープなどが含まれ、これらは通常良性であり、癌化のリスクは低いと考えられています。

非腫瘍性ポリープの種類特徴
過形成性ポリープ腸粘膜が過剰に成長し形成される
過誤腫性ポリープ正常な組織が通常とは異なる成長をしたもの
炎症性ポリープ長期にわたる炎症が原因で生じる

また、リンパ濾胞性ポリープも非腫瘍性ポリープの一種として分類されます。

大腸ポリープの症状

大腸ポリープは多くの場合無症状ですが、大きくなると下血や腹痛、便秘、下痢などを引き起こします。

無症状が一般的

大腸ポリープは、ほとんどの場合で症状を示しません。

そのため、定期的な検診が早期発見と予防に大きな役割を果たします。症状が出ないために、多くの方が気づかないうちにポリープが大きくなってしまうことがあります。

血便

ポリープが腸壁の血管を傷つけ、便に血が混じったり、便器に血が付着したりする症状がみられます。

血便の種類特徴
鮮血便明るい赤色
暗赤色便消化管上部からの出血

腹痛と不快感

大きなポリープの場合はポリープが腸管を塞ぐために、腹痛や腹部の不快感を引き起こす場合があります。

  • 鈍い痛み
  • 腹部のむくみ感
  • ガスがたまる感覚 など

排便習慣の変化

ポリープの大きさや位置によっては、下痢と便秘を繰り返すなど、通常とは異なる排便パターンが続く場合があります。

貧血

長期間にわたり少量の出血が続く場合、貧血を引き起こし、疲労感や息切れなどが起こる可能性があります。

貧血の症状説明
疲労感日常的な活動でも疲れやすい
息切れ軽い運動でも息苦しくなる
顔色の悪化皮膚や粘膜が蒼白になる

体重減少

まれに、大腸ポリープが原因で食欲不振や体重減少が起こります。これは、ポリープが大きくなり、腸の機能に影響を与える場合に生じます。

大腸ポリープの原因

大腸ポリープの原因は、主に遺伝子の異常と加齢、食生活などの生活習慣の複合的な要因と考えられています。

遺伝的要因

家族性大腸腺腫症(FAP)やLynch症候群といった遺伝性疾患では、大腸ポリープが頻繁に見られます。

遺伝性疾患特徴
家族性大腸腺腫症(FAP)大腸に数百から数千個のポリープが発生
Lynch 症候群大腸がんのリスクが高く、ポリープも発生しやすい

このような遺伝性疾患を有する人は、定期的な健康診断が重要です。

生活習慣の影響

不健康な食事、運動不足、喫煙、アルコールの過剰摂取など、日々の生活習慣も原因です。

以下の要因が大腸ポリープのリスクを高めると考えられています。

  • 高脂肪・低繊維の食事
  • 肥満
  • 運動不足
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

年齢と性別の影響

通常、50歳を超えるとポリープが発見される可能性が高くなります。 また、男性は女性よりもポリープが形成されやすい傾向です。

年齢ポリープ発生リスク
50歳未満
50歳以上中~高
70歳以上

炎症性腸疾患との関連

長期にわたる腸の炎症も大腸ポリープの原因となります。

例えば、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を長年抱えている人は、慢性的な炎症が腸粘膜の細胞に異常を引き起こすため、大腸ポリープのリスクが上昇します。

その他の要因

  • ホルモンバランスの乱れ
  • 特定の薬剤の長期使用 など

大腸ポリープの検査・チェック方法

大腸ポリープの検査では、主に便潜血検査と大腸内視鏡検査が行われます。

スクリーニング検査の種類と特徴

スクリーニング検査とは、症状がない人を対象に、病気の早期発見を目的として行われる検査です。大腸ポリープの場合、便潜血検査がスクリーニング検査として広く行われています。

便潜血検査で陽性の場合、精密検査として大腸内視鏡検査が行われます。

検査名特徴
便潜血検査体への負担が少なく簡単、定期的に受けるのが望ましい
大腸内視鏡検査精度が高く直接観察できる、ポリープの切除も可能
CT大腸造影検査体への負担が少なく全大腸を観察できるが、放射線被曝の問題がある

確定診断

大腸ポリープを確実に診断するには、内視鏡を使ってポリープを直接観察し、組織を採取して調べます。

診断段階実施内容
内視鏡観察大きさ、形、色の評価
色素内視鏡表面の詳しい構造の観察
拡大内視鏡小さな血管や粘膜の模様の観察
生検組織を採取して顕微鏡で調べる

大腸ポリープの治療方法と治療薬について

大腸ポリープの治療は内視鏡を用いた切除が一般的で、治療薬は基本的に使用されません。

内視鏡的切除:主要な治療法

内視鏡的切除は大腸ポリープに対する標準的な治療法であり、負担が少なく、効果も高いのが特徴です。

ポリープの大きさや形によって、切除法は使い分けられます。

切除法適応
ポリペクトミー小型ポリープ
内視鏡的粘膜切除術(EMR)中型ポリープ
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)大型ポリープ

内視鏡的切除により、多くの大腸ポリープを開腹手術することなく取り除くことができます。

治療後の定期観察

ポリープを切除した後も定期的に内視鏡検査を受けることで、新たなポリープを早期に発見し、治療できます。

ポリープのタイプフォローアップ間隔
腺腫性ポリープ(低リスク)5-10年
腺腫性ポリープ(高リスク)3年
鋸歯状ポリープ3-5年

生活習慣の改善

大腸ポリープが再び発生するリスクを減らすには、治療に加えて生活習慣の改善が大切です。

  • バランスの良い食事を心がける
  • 定期的に運動する
  • たばこを控える

大腸ポリープの治療期間と予後

大腸ポリープの治療期間は、内視鏡的切除であれば入院の必要はなく、日帰りまたは1泊2日で退院可能です。

切除後の経過観察は数年単位で必要となり、予後はポリープの種類や大きさ、切除後の経過によって異なります。

治療期間の目安

内視鏡的切除術であれば、日帰りまたは1泊2日の短期入院で対応できるケースがほとんどです。一方で、大型のポリープや複数のポリープが見つかった際には、入院期間が延びる場合があります。

治療後の回復期間

個人差がありますが、通常は1〜2週間ほどで普段の生活に戻れます。ただし、大きなポリープを取り除いた場合や、合併症が起きた場合には、回復に時間を要することもあります。

治療法一般的な回復期間
内視鏡的切除術1〜2週間
腹腔鏡手術2〜4週間
開腹手術4〜6週間

予後と再発リスク

大腸ポリープの予後は一般的に良好です。しかしながら、再発の可能性があるため、定期的な経過観察が重要となります。

再発のリスクは、最初の治療時におけるポリープの特徴や数によって変わってきます。

再発リスクを高める要因

  • ポリープの数が多い
  • ポリープのサイズが大きい(1cm以上)
  • 家族歴がある
  • 喫煙習慣や過度の飲酒がある

薬の副作用や治療のデメリットについて

大腸ポリープの治療で行われる内視鏡的切除には、出血や穿孔などの合併症のリスクがあります。

主な治療法と関連リスク

治療法主なリスク
内視鏡的切除術出血、穿孔、感染
外科的切除術麻酔合併症、手術部位感染、腸閉塞

内視鏡的切除術は比較的負担が少ないものの、出血や腸壁穿孔のリスクがあります。

一方、外科的切除術はより広範囲のポリープ除去が可能ですが、麻酔や手術に伴うリスクが高くなります。

出血リスクとその管理

治療後の出血は最も一般的な副作用の一つで、特に内視鏡的切除術後24時間以内に発生することが多いため、慎重な経過観察が必要です。

  • 軽度の出血:自然に止血するケースが多い
  • 中等度から重度の出血:内視鏡的止血術や輸血が必要になる場合がある
  • 遅発性出血:治療後数日から2週間程度経過してから発生する可能性がある

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

大腸ポリープの検査・治療は基本的に保険適用です。治療費はポリープの数や大きさ、切除方法などによって異なり、3割負担で数千円から数万円程度が目安となります。

初診料と再診料

  • 初診料:3,000円から5,000円程度
  • 再診料:1,000円から3,000円程度

検査費用の目安

検査項目費用
大腸内視鏡検査10,000円〜30,000円
CT検査15,000円〜30,000円

治療費用の目安

治療方法費用
内視鏡的ポリープ切除術30,000円〜100,000円
腹腔鏡下手術500,000円〜1,000,000円

入院費用

入院が必要となる場合、1日あたり10,000円から30,000円程度が一般的な目安です。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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