胆石症

胆石症(たんせきしょう, Cholelithiasis)とは、胆のうや胆管に石ができてしまう病気です。

肝臓で作られた胆汁(消化を助ける液体)に含まれるコレステロールや胆汁酸、カルシウムなどの成分が結晶化し、それが徐々に大きくなって石となります。

胆石症は決して珍しい病気ではなく、年齢を重ねるにつれて発症する可能性が高くなっていきます。

目次

胆石症の病型

胆石症(たんせきしょう)は、主に胆石の成分と部位によって分類されます。

胆石の成分による分類

胆石を成分によって分類すると、大きく「コレステロール結石」と「色素結石」に分かれます。

大分類細分類主な特徴関連する要因
コレステロール結石(約60%)純コレステロール石胆汁中のコレステロールが結晶化食生活、肥満、遺伝的要因
混成石コレステロールと胆汁色素が層状食生活、胆汁組成の変化
混合石コレステロールと胆汁色素が混合食生活、胆汁うっ滞
色素結石(約40%)ビリルビンカルシウム石細菌感染による胆汁うっ滞が原因胆道感染、胆道系の手術歴
黒色石ビリルビンが酸化重合溶血性貧血、肝硬変

コレステロール結石は全胆石の約60%を占める最も一般的な胆石で、純コレステロール石、混成石、混合石の3つ種類があります。

色素結石にはビリルビンカルシウム石と黒色石があり、ビリルビンカルシウム石は主に細菌感染によって、黒色石は溶血性貧血や肝硬変によって起こります。

胆石の部位による分類

胆石症は、胆石が形成される場所によっても分類できます。

  1. 胆嚢結石
  2. 総胆管結石
  3. 肝内結石

胆嚢結石

胆嚢結石は最も発生頻度が高く、胆嚢内に石が形成されるものです。多くの場合は無症状で経過しますが、急性胆嚢炎(胆嚢の急性炎症)などの合併症を引き起こすこともあります。

総胆管結石

総胆管(肝臓から十二指腸へ胆汁を運ぶ管)内に石が存在するものを総胆管結石と呼び、胆嚢から落下したものや、総胆管内で形成されたものがあります。

総胆管結石は、胆汁の流れを妨げ、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)や胆管炎の原因となります。

肝内結石

肝内結石は、肝臓内の胆管にできた石です。治療が難しい場合が多く、慢性的な胆管炎や肝膿瘍などの重篤な合併症が起こる危険性があります。

胆石症の症状

胆石症(たんせきしょう)の主な症状は、右上腹部の激しい痛みや背中への放散痛、吐き気・嘔吐、発熱などです。

ただし、中には全く症状がなく、健康診断で偶然発見される無症候性胆石症の方もいます。

典型的な痛みのパターン

胆石症では、「胆石発作」と呼ばれる急性の痛みの発作が現れます。痛みは右上腹部や心窩部(しんかぶ:みぞおちのあたり)に起こり、背中や右肩甲骨の下部にまで広がることもあります。

食事の後、特に脂っこいものを食べた後に痛みが起こるのが特徴で、発作の持続時間は数分から数時間つづき、少しずつ和らいでいきます。

痛みの特徴詳細
場所右上腹部、心窩部(みぞおち)
広がり背中、右肩甲骨の下
強さ軽度〜激しい痛み
続く時間数分〜数時間

消化器系の症状

吐き気や嘔吐は胆石発作に伴ってよく見られる症状です。また、食欲が落ちる方もよくみられます。

胆石症の患者さんは、特に脂っこい食事を取った後に不快感が出るため、食事の量が減ったり、特定の食べ物を避けるようになるのです。

胃もたれや膨満感などの消化不良の症状も報告されており、症状が続くと、食生活や栄養状態に影響が出てきます。

全身症状・合併症

発熱は胆道感染の兆候であり、38度以上の高熱が続く場合、早急な医療処置が必要です。また、胆石が胆管を完全に塞いだ場合には、黄疸(おうだん:皮膚や白目が黄色くなる症状)が現れます。

その他の症状

  • 体全体のだるさ
  • 体重が減る
  • 体がかゆくなる
  • 尿の色が濃くなる
  • 便の色が灰白色になる(胆汁が腸まで届かないため)

全身症状は、胆石症の重症化や他の病気の併発を示している可能性があるため、このような症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが大切です。

胆石症の原因

胆石症の主な原因は、胆汁(胆のう内にある消化液)中のコレステロールや胆汁酸、ビリルビン(赤血球の分解産物)のバランスが崩れることです。

胆石形成のしくみ

胆石症は、胆汁の構成成分が結晶化して石となる病態です。胆汁中のコレステロールが過剰になると、胆汁酸との均衡が崩れ、コレステロール結晶が析出します。

この過程が進行すると、最終的に胆石が形成されるのです。

胆汁の組成異常には、遺伝的素因、食生活、肥満、急激な体重減少、妊娠などが関係しています。

リスク因子影響
遺伝的素因胆汁組成に影響
食生活コレステロール過剰摂取
肥満胆汁酸代謝異常
急激な体重減少コレステロール排泄増加

年齢と性別の影響

加齢に伴い、胆汁中のコレステロール濃度は上昇します。

特に女性は、エストロゲン(女性ホルモン)の影響でコレステロール合成が促進されるため、胆石形成のリスクが高いと言われています。また、閉経後の女性ホルモン補充療法も胆石症のリスクが増加する原因です。

一方、男性は胆石症の発症率が低いのですが、加齢とともにリスクは上昇します。

生活習慣

不規則な食事、高脂肪食、運動不足などは、胆汁の組成異常につながります。特に、短期間の極端なダイエットは胆汁中のコレステロール濃度が上昇し、胆石形成が促進されてしまいます。

医療関連因子

長期の絶食や、経静脈栄養管理を要する患者さんは胆石症の発症率が高いことが分かっています。これは、胆嚢の収縮不全や胆汁うっ滞(胆汁の流れが滞ること)が原因と考えられます。

また、エストロゲン含有薬、降コレステロール薬の一部、特定の抗生物質など、特定の薬剤の使用も胆石形成に影響があります。

医療関連因子胆石形成への影響
長期絶食胆嚢収縮不全
経静脈栄養胆汁うっ滞
特定薬剤胆汁組成変化

その他のリスク因子

  • 胆嚢管狭窄
  • 胆嚢憩室
  • クローン病
  • 潰瘍性大腸炎

胆石症の検査・チェック方法

胆石症の検査では、腹部超音波検査を行って胆石の有無や大きさを確認していきます。

問診・身体診察のポイント

胆石症の診断では、まず患者さんの症状や病歴を詳しくお聞きし、典型的な症状である右上腹部痛や背部痛、発熱、吐き気などの有無を確認します。

また、過去の胆石の既往や家族歴、食生活や生活習慣などもお伺いします。

身体診察では、腹部の触診を行い、圧痛の有無や程度を評価します。特に、マーフィー徴候(右上腹部を押さえながら深呼吸させると痛みが増強する現象)がある場合、胆嚢炎が起きていることを疑います。

血液検査

検査項目主な目的
肝機能検査 (AST, ALT, ALP, γ-GTP)肝臓や胆道系の障害を評価
炎症マーカー (CRP, 白血球数)炎症の程度を確認
膵酵素 (アミラーゼ, リパーゼ)膵炎(膵臓の炎症)の合併を評価
総ビリルビン黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)の有無を確認

ただし、血液検査の結果だけでは確定診断には至らず、画像検査と併せて診断します。

画像診断

画像診断によって、胆石の種類(コレステロール石、ビリルビン石など)や存在部位(胆嚢結石、胆管結石)診断していきます。

  • 腹部超音波検査:胆石の有無や大きさ、数、胆嚢壁の肥厚などを調べます。
  • CT検査:胆石の位置や周囲の臓器との関係、合併症の有無を確認します。
  • MRI/MRCP:胆道系の詳細な評価が可能で、特に胆管結石(胆管内にできた石)の診断に優れています。
  • 内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP):診断と治療を同時に行えるため、胆管結石の診断と除去に有用です。

鑑別診断

胆石症の症状は、他の消化器疾患とも類似するため、鑑別診断が必要です。以下の表は、胆石症と症状が似ている疾患とその鑑別ポイントをまとめたものです。

疾患類似点鑑別のポイント
急性膵炎上腹部痛血中膵酵素の上昇、CT所見
十二指腸潰瘍心窩部痛内視鏡検査、上部消化管造影
急性虫垂炎右側腹部痛痛みの部位、CT所見
急性心筋梗塞胸痛、上腹部痛心電図、心筋マーカー

胆石症の治療方法と治療薬について

胆石症の治療法は、胆石の大きさや場所、患者の症状によって異なります。主なものに外科手術(胆嚢摘出術)、薬物治療(胆石溶解剤)、内視鏡治療などがあり、近年では腹腔鏡下手術が主流となっています。

お薬による治療

症状が軽く、胆石が小さい場合には、お薬を中心とした治療方法を選びます。薬物療法では、胆石を溶かしたり、体の外に出したりするお薬を使います。

お薬の名前主な働き
ウルソデオキシコール酸コレステロール胆石を溶かす
ケノデオキシコール酸胆汁酸の分泌を促す

ウルソデオキシコール酸は胆汁酸(胆のうから分泌される消化液の成分)の一種で、コレステロールでできた胆石を溶かす効果があります。

長い期間飲む必要がありますが、副作用が比較的少ないので、ご高齢の方や手術が難しい患者さんに適しています。

胆石を溶かす治療

胆石を溶かす治療は、主にコレステロールでできた胆石に効果があります。

治療期間は通常6か月から2年程度必要で、定期的に超音波検査で胆石の状態を確認しながら進めていきます。

手術による治療

お薬による治療で効果が見られない場合や、胆石が大きい場合、また急性胆嚢炎(きゅうせいたんのうえん:胆のうに急に炎症が起こる状態)などの合併症がある場合には、手術による治療を考えます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術は、現在最もよく行われている手術方法です。お腹に小さな穴をあけて行うため、患者さんの負担が少なく、回復も早いです。

治療法特徴
腹腔鏡下胆嚢摘出術体への負担が少なく、回復が早い
開腹胆嚢摘出術複雑な症例にも対応できる

ESWL・経口胆石溶解療法

最近では、体外衝撃波結石破砕療法(ESWL:体の外から衝撃波を当てて結石を砕く方法)や経口胆石溶解療法など、体への負担がより少ない治療法の研究が進んでいます。

従来の方法では治療が難しかった患者さんにも適応となる可能性があります。

胆石症の治療期間

胆石症(たんせきしょう)の治療期間は、腹腔鏡下手術であれば数日間の入院で済みますが、薬物治療の場合は数ヶ月かかる場合もあります。

治療方法による期間の違い

治療法によって、回復に要する期間が異なります。主な治療法と一般的な治療期間は以下の通りです。

治療法一般的な治療期間
経過観察1〜3ヶ月
薬物療法3週間〜3ヶ月
内視鏡的治療1〜2週間
腹腔鏡下胆嚢摘出術2〜4週間

治療中の生活と回復過程

治療中は、脂肪分の多い食事を控えめにし、消化にやさしい食事を心がけることで、症状の軽減と治療効果の向上が期待できます。

回復過程で注意したいこと

  • 十分な休養と睡眠をとる
  • バランスの取れた食事を心がける
  • 医師の指示に従って適度な運動を行う
  • 定期的な経過観察を受ける

薬の副作用や治療のデメリットについて

胆石症(たんせきしょう)の治療における薬の副作用には下痢や腹痛などがあり、外科手術では出血や感染症、内視鏡治療では膵炎などの合併症のリスクがあります。

薬物療法における副作用

ウルソデオキシコール酸(胆汁酸の一種で、胆石を溶かす効果がある薬)を用いた治療では、消化器系の副作用が起こることがあります。

副作用頻度
下痢5-10%
便秘2-5%
吐き気1-3%
腹痛1-2%

副作用の症状は軽度であり、多くの場合、時間とともに改善します。ただし、重度の症状や長期間持続する場合は、医師に相談するようにしてください。

内視鏡的治療のリスク

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:内視鏡を用いて胆管や膵管を調べる検査法)を用いた治療では、合併症のリスクがあります。

合併症発生率
膵炎3-5%
出血1-2%
穿孔0.1-0.5%
胆管炎1-3%

手術療法のリスク

  • 胆管損傷
  • 出血
  • 感染
  • 麻酔関連の合併症
  • 術後の腹痛や肩の痛み

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

胆石症の治療費は、保険適用となります。通常、医療費の7割が保険でカバーされ残りの3割が患者の自己負担となります。

治療法や入院期間によっては総額が高額になる可能性があり、高額療養費制度を利用すれば、月ごとの自己負担額に上限が設定されます。

胆石症の治療法別の概算費用

治療法概算費用(3割負担時)
内視鏡的治療5〜10万円
腹腔鏡下胆嚢摘出術15〜25万円
開腹手術20〜30万円

入院期間と追加費用について

内視鏡的治療では数日、腹腔鏡下手術では1週間程度、開腹手術では2週間程度の入院が必要です。

  • 個室利用時の追加費用(1日あたり5,000〜20,000円)
  • 食事代(1日あたり約460円)
  • リハビリテーション費用(必要時1回5,000〜10,000円)
  • 術後の定期検査費用(1回3,000〜8,000円)

治療後の定期的な検査にかかる費用

退院後も定期的な検査や投薬を行います。

フォローアップ項目概算費用(3割負担時)
定期検査(血液検査、超音波検査など)5,000〜10,000円/回
投薬治療(胆石溶解薬など)3,000〜8,000円/月

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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