人工透析生活において、血液の出入り口となるシャントの健康管理は生命維持に直結する極めて重要な要素です。
VAエコー検査は、超音波の力を借りて血管の内部を可視化し、痛みを伴わずに血流の状態や血管の細まりを詳しく調べることができます。
本記事では、シャントトラブルを未然に防ぐための検査の目的から、当日の流れ、結果の読み解き方までを解説しています。
透析患者さんの命綱を守るVAエコー検査の役割と意義
VAエコー検査は、透析に必要な血管の状態をリアルタイムで画像化し、血流の量や速さを精密に測定することでトラブルを未然に防ぐために行います。
針を刺さずに血管の深さや走行を把握できるため、毎日の透析を安全に進めるための指針として機能し、急な閉塞のリスクを最小限に抑えます。
血管の内部構造をミリ単位で可視化して異変を見つけ出す
透析治療を継続する上で、シャント血管はまさに命綱と呼べる存在です。この大切な血管がいつまでも元気に働き続けるためには、外側から触れるだけでなく、血管の中がどうなっているかを詳しく知る必要があります。
VAエコー検査は超音波を腕に当てることで、皮膚の上からは見ることができない血管の壁の厚みや、内腔の広さを鮮明に映し出します。血管が細くなっている箇所はないか、血栓と呼ばれる血の塊ができていないかを詳細に観察できる検査です。
肉眼では確認できないミリ単位の小さな変化を捉えることで、血管が完全に詰まってしまう前に適切な処置を検討できます。この早期発見の仕組みが整っているからこそ、安心して日々の透析に臨むことができると言っても過言ではありません。
画像として自分の血管の状態を確認できることは、患者さん自身の安心感にも繋がります。医師や技士と画面を共有しながら説明を受けることで、現在のご自身の体がどのような状態にあるのかを、深く納得して理解できるはずです。
血液の流れるスピードと量を数値化して客観的に判定する
血管の形が綺麗であっても、そこを流れる血液の質が十分でなければ、透析効率は上がりません。VAエコー検査の最大の特徴は、血流量という目に見えないエネルギーを具体的な数値として算出できる点にあります。
1分間に何ミリリットルの血液が流れているかを計測し、透析を回すのに十分なパワーがあるかを客観的に評価します。この数値は、主観的な判断を排除し、科学的なデータに基づいてシャントの健康度を測るための基準となります。
血流が速すぎる場所がある場合、そこは血管が狭くなっている可能性が高く、圧力が上昇しているサインです。逆に全体の血流量が低下しているときは、透析中に血液が十分に引けなくなったり、再循環が起きたりするリスクが高まります。
こうした状況を数字で把握することで、次回の透析条件をどう調整すべきか、あるいは血管を広げる治療が必要かを論理的に判断できます。感覚に頼らない精密な管理が、シャントの長期維持を実現する強固な土台となっているのです。
血管壁の柔軟性や周囲の組織に潜むトラブルを精査する
血管の健康度は、単なる血流の良し悪しだけでは決まりません。血管の壁がどれほどしなやかさを保っているか、あるいは周囲に余計な水分が溜まっていないかといった多角的な視点での観察が求められます。
VAエコー検査では、血管を軽くプローブで圧迫し、その弾力性を確認します。動脈硬化が進んで血管がカチカチに硬くなっていないか、あるいは内膜が厚くなって通路を狭めていないかを、立体的な視点で分析できるのです。
また、シャント瘤と呼ばれるコブのような膨らみがある場合、その壁が薄くなって破裂の危険がないかも慎重に精査します。周囲組織に炎症の兆候がないかを確認することは、感染症などの重大な合併症を予防する上でも欠かせません。
このように血管そのものだけでなく、それを取り巻く環境全体をケアするのがエコー検査の役割です。
血管評価の主なチェックリスト
| 評価ポイント | 確認内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 狭窄の有無 | 血管内腔の直径計測 | 閉塞の未然防止 |
| 血流量測定 | 1分間の通過血液量 | 透析効率の最適化 |
| 血管の深さ | 皮膚表面からの距離 | 穿刺の成功率向上 |
シャントの状態が悪化する前に検査を受けるべき合図
シャントの異常は、自覚症状が現れる頃には深刻化していることが多いため、定期的なエコー検査の実施が必要です。透析中に静脈圧が上昇したり、返血に時間がかかったりするなどの変化を感じた際は、迷わず検査を依頼してください。
日常的な違和感を放置せず、画像診断で原因を特定することがシャント寿命の鍵を握ります。
透析中の機械のアラームが頻繁に鳴り始めたとき
透析中に血液がうまく引けなかったり、返血する際の圧力が高いと警告音が鳴ったりすることがあります。これは血管のどこかで渋滞が起きている物理的な証拠であり、シャント内部で狭窄が進んでいる可能性を強く示唆しています。
一度のアラームであれば体位の影響も考えられますが、数回にわたって同じ現象が続く場合は注意が必要です。血管の奥深くで何が起きているのか、エコー検査を使って速やかに確認するべきタイミングと言えるでしょう。
こうした機械的なトラブルは、放置すると次の透析日に完全に血管が詰まってしまうという最悪の結果を招きかねません。異常の予兆を機械が教えてくれていると前向きに捉え、早めにプロのチェックを受けることが大切です。
早期に対応すれば、大がかりな処置をせずとも、穿刺の位置を少し変えたり、設定を見直したりするだけで改善することもあります。
自宅でのセルフチェックでスリルや音が弱まったと感じるとき
毎日ご自身でシャントを触っているときに、いつも感じているザーザーという震えが弱くなったと感じることはありませんか。このスリルと呼ばれる感覚の減弱は、血流が低下している非常に危険なサインの一つです。
また、シャント音を聴診器や耳で確認した際、音が以前より高く響いたり、ブツブツと途切れたりする場合も要注意です。これは血管の壁が狭まり、血液が無理やりそこを通り抜けようとしているときの叫び声かもしれません。
こうした変化は、朝起きたときや夜寝る前など、静かな環境で気づくことが多いものです。少しでもいつもと違うと感じたら、クリニックのスタッフへ相談し、エコー検査をスケジュールに組み込んでもらいましょう。
ご自身の直感は、時にどの検査機器よりも早く異変を察知することがあります。
シャントがある側の腕に強いむくみや痛みが出たとき
血管の詰まりだけでなく、シャント側の腕全体が腫れぼったくなったり、特定の場所に赤みや熱感が出たりする場合も検査の合図です。これは深部にある太い静脈が狭くなっているか、あるいは感染症を引き起こしている可能性があります。
特に腕を上げたときにむくみが取れにくいといった症状は、中枢側の血管トラブルでよく見られる現象です。放置すると透析そのものが困難になるだけでなく、心臓への負担が増大することもあるため、早急な画像診断が求められます。
痛みについても同様で、穿刺部位ではない場所が痛むときは、血管壁に無理な圧力がかかっているサインかもしれません。エコー検査なら、痛みの原因が血管そのものなのか、それとも周囲の炎症なのかを瞬時に判別できます。
体の表面に現れるサインは、内部で起きている深刻なトラブルを知らせるSOSです。
日常生活で意識すべき観察ポイント
- シャントの震えが弱くなっていないか指先で確認する
- 血管の上に不自然な赤みや腫れが出ていないか鏡で見る
- 腕を上げたときに重だるい感じがしないかチェックする
- 穿刺した後の止血にいつもより時間がかかっていないか計る
VAエコー検査当日の具体的な進み方と準備すること
VAエコー検査は、予約から終了まで非常にスムーズに進む検査であり、痛みや食事の制限もありません。
当日は腕を出しやすい服装で来院し、リラックスした状態でベッドに横になっていただくだけで、専門のスタッフが血管の状態を詳しく調査します。検査時間は20分前後で終わることが多いため、気軽に受けられます。
検査室への案内と腕を出しやすくするための服装の工夫
検査当日は、まず受付を済ませた後に検査室へと案内されます。VAエコー検査では肩に近い部分の血管まで広く観察するため、腕をスムーズに根元まで露出できる服装で来院していただくことが望ましいです。
冬場などで厚着をしている場合は、脱ぎ着が簡単な前開きの服や、伸縮性のある柔らかい生地のインナーを着用しておくと準備が楽になります。袖がタイトな服だと血管を圧迫して、正確な数値が出ないこともあるため注意しましょう。
ベッドに横になったら、リラックスして腕を投げ出した状態を作ります。緊張して体に力が入ってしまうと血管が収縮し、本来の血流の状態を測れなくなる可能性があるため、深呼吸をしてゆったりとした気持ちで過ごしてください。
スタッフが声をかけながら準備を進めてくれますので、もし不安なことがあればその場で遠慮なく質問して構いません。
専用ゼリーの塗布とプローブを使った精密なスキャン
準備が整うと、スタッフが皮膚に少しひんやりとした透明のゼリーを塗布します。ゼリーは超音波を血管内に効率よく伝えるために必要なもので、肌荒れなどの心配はほとんどありませんので安心して身を委ねてください。
その後、プローブと呼ばれる小さなセンサーを腕の上で滑らせ、血管の走行に沿ってスキャンを開始します。画面にはリアルタイムで血管の断面や血流の様子が映し出され、必要に応じて血流速度を測るための音が流れます。
このとき、スタッフが特定の箇所でプローブを止め、画像を保存したり数値を記録したりします。血管を軽く押さえる動作が含まれることもありますが、これは血管の壁の柔軟性や血栓の有無を確認する重要なプロセスです。
検査中に痛みを感じることはありませんので、画面を眺めながらご自身の血管がどのように映っているかを確認するのも良いでしょう。
検査後のゼリーの拭き取りと結果説明までの流れ
スキャンがすべて終了したら、肌についたゼリーを温かいタオルやティッシュで丁寧に拭き取ります。ゼリーは水溶性ですので、ベタつきが残ることもなく、検査後はすぐに普段通りの生活や透析治療に戻ることが可能です。
検査の結果については、その場ですぐに技士から概要が伝えられることもあれば、医師による診察の中で詳しく説明されることもあります。画像や計測された数値は電子データとして保存され、過去の記録と照合されます。
もし緊急を要する異常が見つかった場合は、その日のうちに治療のスケジュール調整が行われることもあります。特に問題がなかったとしても、今回のデータを保存しておくことが、将来の自分を守るための貴重な基準です。
スムーズな検査のためのセルフチェック表
| 確認項目 | 準備の目安 | 目的 |
|---|---|---|
| 衣類 | ゆったりした袖の服 | 肩付近の血管露出のため |
| 肌の状態 | 清潔にする | ゼリーの密着度を高めるため |
| 体調 | 通常通りでOK | 自然な血流状態を測るため |
エコーの数値から見極めるシャントの健康度と警戒レベル
エコー検査で算出される血流量や最高血流速度などの数値は、シャントの寿命を測るバロメーターであり、異常値を早期に察知することで重篤なトラブルを回避できます。
血管径が以前より細くなっていないか、あるいは抵抗指数が上昇していないかを定点観測することが重要です。
1分間の血流量(FV)が示す透析効率の真実
VAエコー検査において最も注目される指標の一つが、1分間に血管を流れる血液の量を示すFVという数値で、一般的には400ミリリットルから800ミリリットル程度が、安定して透析を行える良好な範囲とされます。
もしこの数値が200ミリリットルを下回るようなことがあれば、透析を回すためのパワーが不足していることを意味します。そのままでは血液を十分に浄化できず、体の中に老廃物が残ってしまうリスクが高まります。
一方で、1500ミリリットルを超えるような過剰な血流も心臓に大きな負担をかけるため注意が必要で、血流が多すぎれば良いというわけではなく、ご自身の心臓や全身の状態に見合った適正な範囲を維持することが大切です。
検査結果を聞く際は、単に数値が高いか低いかだけでなく、前回の検査からどのように変化したかという推移を重視してください。急激な低下が見られる場合は、自覚症状がなくても血管内部で深刻な変化が起きている可能性があります。
最高血流速度(PSV)で特定する血管内の渋滞箇所
血液が血管の中を流れるスピード、特に最も速い地点の速度を測るPSVという指標も、シャント管理には欠かせません。川の流れが急に細くなると水の勢いが増すように、血管が狭くなっている場所では血流速度が跳ね上がります。
エコーでこの速度のピークを探ることで、血管のどこが狭くなっているかをピンポイントで特定できます。特定の地点で速度が著しく速い場合、そこが将来的に詰まってしまう第一候補となり、治療が必要なターゲット箇所です。
速度の異常をキャッチすることは、目に見えない血管の疲れを音と数字で捉えるようなものです。このデータがあるからこそ、医師は闇雲に処置を行うのではなく、本当に必要な場所に対して的確な治療計画を立てることが可能になります。
患者さんにとっても、スピードという直感的な指標で自分の血管の状態を知ることは、納得感のある治療選択に繋がります。
抵抗指数(RI)が教える血管のしなやかさと末梢の状態
血管の硬さや、その先の血液の通りやすさを測るための指標としてRI(抵抗指数)が用いられ、数値が高い場合、血管が柔軟性を失っていたり、戻ってくる血液の通り道が塞がれがちであったりすることを示しています。
RIの変化を追うことで、単なる血管の細さだけでなく、血管そのものの老化度合いを推測できます。透析歴が長くなると血管壁が厚くなったり石灰化したりすることがありますが、エコーはこの変化を数値として如実に描き出します。
末梢血管の抵抗が強いと、せっかくシャントを流れる血液が心臓に戻りにくくなり、腕が腫れたり心負荷が増したりする要因となります。見た目には分からない血管のストレスを数値化できるのが、この検査の素晴らしい点です。
しなやかな血管を保つための努力が、どのように数値に現れているかを確認できるのは非常に励みになります。RIを良好な範囲に保つことは、シャントの寿命を延ばすだけでなく、全身の血管ケアを考える上でも重要な指標です。
判定基準の目安一覧
- FV(血流量):400〜800ml/minが標準。300以下は精密検査。
- PSV(最高速度):400cm/sを超える場合は高度な狭窄を疑う。
- RI(抵抗指数):0.6以下が理想。0.8以上は流出障害の可能性。
- 血管径:自己血管であれば4ミリ以上を維持できていると安心。
日常生活の中でシャントの寿命を延ばすセルフケアの極意
VAエコー検査の効果を最大化するためには、日々のセルフチェックを通じた小さな変化の発見が不可欠です。毎日決まった時間にシャントの感触を確かめ、異常を感じたらすぐに専門家へ繋ぐというリズムを生活の一部にしてください。
ご自身の手と目で自分の体を見守る習慣こそが、どんな医療機器よりも早くあなたの命綱を守る楯となります。
朝一番のルーティンとして取り入れたい指先でのスリル確認
目が覚めたらまず、シャントがある場所にそっと手を当ててみてください。猫が喉を鳴らすようなザーザーという心地よい震えが伝わってくるでしょうか。これがスリルと呼ばれる、血液が勢いよく流れている健全な証拠です。
スリルの強さには個人差がありますが、あなたにとっての平常時を知っておくことが最も重要です。もしこの震えが感じられず、ドクンドクンという脈打つような感触だけになっていたら、血管が詰まりかけている可能性があります。
また、触れる場所によって震えの強さが違うこともありますので、吻合部から上流に向かって指を滑らせて確認するのも良い方法です。全体的に以前より震えが弱くなったと感じたら、血管が疲れているSOSかもしれません。
鏡を使って血管の走行と皮膚の状態をチェックする重要性
指先だけでなく、視覚による観察も非常に大きな役割を果たします。鏡の前に立ち、シャント側の腕を反対側の腕と見比べてみてください。不自然に血管が膨らんでいたり、皮膚がテカテカと薄くなってきたりしていないでしょうか。
特に穿刺を繰り返している場所は、皮膚が傷みやすくトラブルの起点になりがちで、傷の治りがいつもより遅い、あるいは周囲が赤く腫れているといった兆候を見逃さないでください。これらは感染症や瘤の肥大を知らせる重要なサインです。
また、腕全体の色の変化にも注意を払いましょう。一部だけが紫っぽくなっていたり、白く冷たくなっていたりする場合は、血流のバランスが崩れている恐れがあります。
シャントの異常を察知したときに慌てず行動するためのメモ術
違和感に気づいた際、大切なのは冷静に行動することです。そのためには、気づいた内容を簡単なメモに残しておく習慣が役に立ちます。何時に、どのような感触だったかを記すだけで、診断の精度は飛躍的に高まります。
例えば、透析中に血圧が下がったタイミングでスリルが弱まったのか、それとも平常時でも聞こえる音が変わったのかといった情報は、原因を特定する上で欠かせません。主観的な不安をデータ化することで、医療チームも迅速に動けます。
また、過去のエコー検査の結果数値と自分の感覚を照らし合わせておくことも効果的です。血流量がこれくらいのときに、自分のスリルはこれくらいの強さだったという基準を持てれば、自己管理のレベルは一段と引き上がります。
家庭でできる簡易チェック表
| 確認手法 | チェックすべき現象 | 危険なサイン |
|---|---|---|
| 触診 | 震えの強さと範囲 | スリルが消失し、拍動のみになる |
| 視診 | 赤み、腫れ、皮膚の光沢 | 穿刺部位以外の急激な膨らみ |
| 聴診 | 音の高さと連続性 | 高音の笛のような音や断続音 |
検査結果に基づいた血管内治療(VAIVT)の概要と期待できる効果
VAエコー検査で狭窄が確認された場合、多くのケースで血管内治療が検討されますが、これは体を大きく傷つけることなくシャント機能を回復させるための優れた手法です。
局所麻酔下で行われ、カテーテルを用いて血管を内側から広げることで、透析困難な状況を劇的に改善します。早期に適切な治療を受けることで、シャントの全壊を防ぎます。
風船(バルーン)を使って血管の渋滞を解消する拡張術
エコー検査で特定された狭窄部位に対し、カテーテルという細い管を通して風船を運び、内側から膨らませて血管を広げる治療が一般的に行われていて、VAIVT(バスキュラーアクセス介入治療)と呼びます。
この治療の素晴らしい点は、切開を必要としないため体へのダメージが少なく、処置の直後から血流が改善したことを実感できる点にあります。エコー画像で見えていた細い通路が、元の広さを取り戻す様子は非常に心強いものです。
処置中は、エコーやX線透視装置を使いながら慎重に作業が進められ、医師はリアルタイムで血管の広がりを確認し、血流量が適正な範囲まで回復したかを判定します。
患者さんは意識がある状態で受けられるため、進行状況を確認しながら安心して臨めます。
狭窄を放置して完全に詰まってからでは、再開通させるためのハードルがぐんと上がってしまいます。エコー検査で見つかった小さな芽のうちに摘んでおくと、体に負担が少ないです。
血栓を取り除き血管の再開通を試みる専門的な手技
もし血管が完全に詰まってしまい、血流が停止してしまった場合でも、血栓除去術という手法で復活させることが可能です。カテーテルから特殊な器具を挿入し、詰まった血の塊を溶かしたり、吸い出したりして通路を確保します。
この際、エコー検査がガイド役となり、血栓の範囲や血管の健康度を事前に把握しておくことで、より安全に処置を進めることができます。完全に諦めて新しくシャントを作り直す前に、今の命綱を救うための最善の努力が行われます。
再開通に成功すれば、その日の透析を予定通り行える可能性もありますが、一度詰まった血管は再び詰まりやすいため、治療後はこれまで以上に丁寧なエコー管理が必要となります。詰まった原因を画像で分析し、再発防止策を練ることも重要です。
血管の詰まりは緊急事態であるものの、現代の医療技術とエコーによる精密な診断があれば、乗り越えられる壁はたくさんあります。
治療後の経過観察とエコーによるメンテナンスの継続
血管を広げる治療を受けた後は、その良好な状態がどれくらい持続しているかをエコーで追跡することが欠かせません。拡張した部位は時間の経過とともに再び狭くなる傾向があるため、定点観測でその速度を測っておく必要があります。
前回の治療から何ヶ月で数値が下がってきたかというデータが蓄積されれば、あなた専用のメンテナンス周期が見えてきます。例えば半年に一回、定期的に風船治療を行うことで、一度も血管を詰まらせることなく過ごせるようになります。
こうした計画的なメンテナンスこそが、シャント寿命を劇的に延ばす究極の秘訣です。トラブルが起きてから慌てて治療するのではなく、エコーを武器に先回りして対処する姿勢を持つことで、精神的な不安も大幅に軽減されます。
治療後のフォローアップスケジュール案
- 処置直後:エコーで血流量(FV)の回復を確認
- 1ヶ月後:再狭窄の兆候がないか断面画像を精査
- 3ヶ月後:血流速度の推移を計測し、次回の治療時期を予測
- 日常:治療前後のスリルの強さの変化をご自身で体感しておく
Q&A
- VAエコー検査中に痛みを感じることはありますか?
-
VAエコー検査は、超音波を皮膚の上から当てるだけの検査ですので、基本的に痛みを感じることはありません。
プローブを血管に沿って滑らせる際に、血管を圧迫して硬さを確認することがありますが、その時に少し押される感覚がある程度です。
注射や切開を伴うものではないため、痛みに敏感な方でもリラックスして受けていただける安全な検査です。
- VAエコー検査を受けるために食事を抜く必要はありますか?
-
VAエコー検査において、食事の制限を設ける必要は全くありません。
胃や腹部のエコー検査とは異なり、腕の血管を対象とするため、食事の内容やタイミングが結果に影響を与えることはありません。お薬も通常通り服用していただいて構いません。
ただし、極端な脱水状態は血流の数値を正確に測れなくなる可能性があるため、適度な水分補給は心がけてください。
- VAエコー検査で異常が見つかったらすぐに手術になりますか?
-
VAエコー検査で異常が見つかったからといって、必ずしもすぐに大きな手術が必要になるわけではありません。多くの場合は、まずはカテーテルを用いた風船による拡張術(VAIVT)などの低侵襲な治療が検討されます。
また、軽微な狭窄であれば、次回の透析から穿刺位置を工夫したり、経過観察の頻度を上げたりすることで対応することもあります。医師と相談し、最適な対応策を一緒に考えていくことになります。
- VAエコー検査の結果はどのくらい保存され比較されますか?
-
VAエコー検査で得られた画像データや計測数値は、医療機関の電子カルテシステムに長期間保存されます。
前回の数値、あるいは1年前の数値と比較することで、血管の劣化スピードや治療後の維持率を客観的に評価できます。
定期的に同じ施設で検査を受けることで、自分専用の血管履歴が作成され、より精度の高い将来予測が可能になります。気になる方は、過去の数値との推移を主治医に見せてもらうことも可能です。
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