腎機能が低下すると、生活の質や体調管理に大きく影響を及ぼします。腎不全人工透析を検討する段階になると、治療のタイミングや準備に対する不安を抱える方が多いかもしれません。
病院での定期的な検査や専門医の相談によって透析開始時期を見極めることが大切です。
本記事では、腎不全から透析導入へ至る経過や具体的な準備について詳しく解説し、人工透析を始めるかどうかの判断を支援する情報をまとめます。
腎不全とは何かと人工透析の役割
腎臓は血液をろ過し、体内の老廃物や余分な水分を尿として排出します。腎不全の状態になると、この機能が大幅に弱まります。腎不全には急性と慢性のタイプがありますが、慢性的に進行した場合は早期からのケアが重要です。
人工透析は衰えた腎臓の代わりに血液をろ過する方法で、腎不全人工透析の導入を検討する場面もあります。
腎臓の基本的な働き
腎臓は左右に2つあり、それぞれが毎日数百リットルの血液をろ過します。尿は体に不要な物質や水分を排出する大きな役割を担います。血圧の調節にもかかわっており、体内の塩分バランスや血液量を適切に保つ働きを果たしています。
血圧の上昇やタンパク質の摂取量が増えすぎると腎臓に過度の負担がかかり、機能の低下を招きます。
腎臓はホルモン分泌にも関与します。赤血球を増やすエリスロポエチンやカルシウムの代謝を助ける活性型ビタミンDなどを産生します。
これらの働きが十分に行われないと貧血や骨密度の低下に結びつくため、腎不全の状態が続くと全身に多彩な症状が表れます。
腎不全が進行した場合の影響
腎機能が著しく落ちると、体内の老廃物がうまく排出されず血液中に蓄積します。尿の量が減るだけでなく、むくみや倦怠感、吐き気などが出現して日常生活に支障が出る場合があります。
さらに血圧が上昇しやすくなり、心臓への負担が増えることで心不全や脳血管障害のリスクが高くなります。
腎不全が進行すると、貧血や骨粗鬆症などの合併症が増えます。こうした状態を放置すると、慢性期であってもさまざまな悪影響が広がりやすくなります。医師は定期的な血液検査や尿検査で腎機能の変化を追い、透析開始時期を考慮するかどうかを検討します。
人工透析が担う機能
人工透析とは、ろ過機能を代替する方法です。血液透析では体外に血液を導いて人工腎臓(ダイアライザ)で老廃物や余分な水分を除去し、ろ過した血液を体内に戻します。
一方、腹膜透析は自分の腹膜をろ過膜として利用し、腹腔内に透析液を出し入れします。いずれも腎臓のろ過機能を補う手段であり、腎不全人工透析の段階に至った患者のQOL向上に大きく寄与します。
腎機能を簡単に示す指標
指標 | 概要 | 注意点 |
---|---|---|
血清クレアチニン | 腎臓のろ過機能が低下すると上昇しやすい | 筋肉量により変動しやすい |
eGFR | 推定糸球体濾過量 | 腎機能の状態を把握する目安 |
尿蛋白 | 腎臓のフィルター機能が低下すると増えやすい | アルブミンなどの濃度も確認が必要 |
血清尿素窒素(BUN) | タンパク質代謝産物の老廃物 | 値が急激に上がる場合は注意が必要 |
人工透析は、一度始めると継続的に行う必要があります。とはいえ、日常生活の充実や合併症リスクの低減に役立つ治療です。腎臓の状態が著しく低下したと感じる場合は、医師や専門スタッフと相談することをおすすめします。
人工透析導入を考えるときの確認要素
- 血液検査の結果(eGFRやクレアチニンなど)
- 日常生活の質(疲労感や食欲不振、むくみの度合い)
- 他の合併症の有無(心臓病や糖尿病など)
- 医師や看護師からの指摘やアドバイス
腎不全人工透析を検討する目安
腎臓の機能低下の進行度合いは人によって異なります。血液検査の結果や生活の質、合併症の状況を総合的に判断しながら、治療方針を決めることが大切です。
医師は検査データだけでなく患者の症状や希望も踏まえて、腎不全人工透析の開始を視野に入れる時期を見極めます。
腎不全のステージごとの特徴
慢性腎臓病(CKD)は、eGFRを基準に病期を分類します。進行するごとに症状が出やすくなり、透析開始時期を考えるケースが増えていきます。初期は自覚症状が乏しい場合もあるため、定期的な受診が重要です。
一般的にeGFRが30mL/分/1.73㎡を下回る頃から、腎機能の深刻な低下が疑われるようになります。さらに15mL/分/1.73㎡未満になると、老廃物や毒素の排出が難しくなり、日常生活に支障が出るリスクが高まります。
透析開始を検討するタイミング
透析開始時期は検査数値だけでなく、本人が感じる体調や症状、合併症の有無を総合的に見て判断します。
血液中のカリウム値が高すぎて不整脈が出やすくなったり、むくみが急激に増えて息苦しさが強くなったりする状況では透析導入を早める選択が大切です。
疲れやすさや食欲不振が続くと栄養不足を起こし、治療効果を得にくくなります。腎不全人工透析のタイミングを遅らせると合併症のリスクも高まります。
医師は患者と相談しながら、早めに導入することで体調を保ちやすくする方法を選びます。
生活状況や合併症を踏まえた判断
高血圧や糖尿病をはじめ、心臓病や脳血管疾患などを併発している場合は、腎機能が低下しているとリスクが上がりやすくなります。
透析開始時期をあらかじめ想定して適切なタイミングで治療を始めることで、合併症の重症化を抑えることが可能です。
CKDステージと主な特徴
ステージ | eGFR値(mL/min/1.73㎡) | 主な特徴 |
---|---|---|
G1 | ≧90 | 軽度の腎機能低下。自覚症状はほぼなし。 |
G2 | 60~89 | 軽度~中等度の腎機能低下。定期的な検診が必要。 |
G3 | 30~59 | 中等度の低下。疲れやすさや血圧上昇が目立つ。 |
G4 | 15~29 | 高度の低下。透析導入の検討が近づく。 |
G5 | <15 | 末期腎不全。透析導入または腎移植を検討。 |
腎不全人工透析は身体的・経済的・心理的負担が大きい治療ですが、生活の質を保つために不可避と感じる方もいます。リスクやメリットを正しく理解し、医療チームと協力しながら方針を立てることが大切です。
透析開始時期を判断する検査と経過観察
病院では血液や尿の検査を定期的に行い、腎機能の推移を見ます。その上で、むくみや血圧、心臓への負担などの状態を総合的に判断し、透析導入のタイミングを見極めます。
早期発見・早期対策が治療の要となり、進行を抑えるうえで重要です。
血液検査で着目するポイント
腎不全人工透析の時期を判断するうえで、血清クレアチニンやeGFRが特に重視されます。BUN(尿素窒素)の値やカリウム濃度、リンやカルシウムのバランスなども重要です。
例えば、カリウムが過剰に上昇すると不整脈を起こしやすくなり、命にかかわる恐れがあります。
血液中のアルブミン値が下がると栄養状態が悪化している可能性が高まります。腎臓病が進行すると低栄養状態に陥りやすいため、食事指導や補助食品の使用も検討します。
継続的な検査によって経時的な変化を把握し、透析開始時期を考える判断材料とします。
尿検査や画像診断の活用
尿検査では尿蛋白や尿潜血などを確認します。腎臓のフィルター機能が低下している場合、蛋白や血液が混じる度合いが高くなります。尿量が日常的にどの程度あるのかも大切です。
さらに、腎臓の形態異常や血流状態を確認するためにエコー(超音波)検査やCT、MRIなどを使うことがあります。
腎臓の大きさが極端に小さくなっている場合、機能を回復させることが難しくなります。画像検査の結果と血液・尿検査の結果を合わせて考えることで、腎不全の進行具合や透析導入のタイミングをより正確に見いだすことができます。
定期的な経過観察の意義
腎臓病は早期には自覚症状が出にくい特徴があります。一度症状が出ると、機能が大きく低下している場合があります。定期的に病院へ足を運び、診察を受けることで腎臓の状態を把握できます。
症状が軽度な段階で生活習慣を見直す機会を得られ、透析開始時期を先送りできる可能性もあります。
検査結果を評価する観点
項目 | チェック内容 | 関連する合併症 |
---|---|---|
血清クレアチニン | 腎機能低下の度合いを把握 | 腎性貧血など |
BUN | タンパク質摂取や老廃物の排出状況 | 心不全リスク |
カリウム | 電解質バランスの指標 | 不整脈 |
尿蛋白 | フィルター機能障害を示唆 | ネフローゼ症候群 |
尿量 | 排出能力の推定 | 浮腫・肺水腫 |
医師はこれらの結果だけでなく、患者の生活状況や主観的な体調も総合的にみて透析導入の可否を判断します。患者自身も検査内容を知り、数値変動を追うことで意識を高めやすくなります。
定期診察を続ける上で気をつけたい点
- 自己判断で薬の量を変えずに医師に相談する
- 疲れが続いたり食欲が落ちたりしたときは早めに受診する
- 血圧や体重を自宅で記録し、変化を医師に伝える
- 心配や疑問がある場合は遠慮なく質問して解消する
透析導入前の準備と心構え
透析導入が必要と判断された場合、治療に向けた準備が始まります。血液透析を選択するか、腹膜透析を選択するかによって必要な手順が異なりますが、どちらも腎臓の代替機能を担う点は同じです。
患者に合った方法を医療スタッフと検討しながら、体調面や精神面での準備を進めることが大切です。
血液透析と腹膜透析の違い
血液透析は血管にシャントと呼ばれる血液の出入口を作り、体外に血液を導いてダイアライザでろ過します。週に3回程度、1回あたり4時間前後の通院が基本となります。
腹膜透析は自分の腹膜をろ過膜として使う方法で、自宅でできる利点がありますが、衛生管理が重要になります。
患者のライフスタイルや全身状態、合併症の有無などを考慮して選ぶ必要があります。血液透析のように施設に通うのが難しい方や、在宅での治療を希望する方は腹膜透析を検討することが多いです。
ただし腹膜透析では透析液の入れ替えを毎日行うことになるため、本人や家族の手間を考える必要があります。
血液透析と腹膜透析の特徴
透析法 | メリット | 留意点 |
---|---|---|
血液透析 | 専門スタッフが常駐する施設で安全に実施できる | 週3回の通院が必要で拘束時間が長い |
腹膜透析 | 自宅で実施可能で生活の自由度が高い | 感染予防や自己管理が欠かせない |
シャント作成やカテーテル挿入の準備
血液透析を行う場合、腕の血管を手術でつなぎ合わせて血流を増やすシャント作成が必要です。透析導入前に計画的に行い、血管が十分に育った状態で透析を始めることが望ましいです。
シャントの作成部位や状態を定期的にチェックし、詰まらないように管理します。
腹膜透析では、お腹にカテーテルを挿入して透析液の出し入れを行う準備をします。感染リスクを減らすため、衛生環境を整えておきます。
カテーテルの位置が安定するまで一定期間が必要で、その間は自分でケア方法を学びながら生活に慣れていきます。
心理的な準備と生活調整
透析導入という治療法を選ぶ場面では、不安や抵抗感が強まるケースもあります。初めて経験する治療に対しては、成功例や同じ疾患を持つ方々の意見が心の支えになります。
医療スタッフは患者の気持ちに寄り添いながら、必要な知識や心のケアを提供します。
ライフスタイルの調整も大切です。特に血液透析を選択した場合は週3回の通院が生活のリズムになるため、家族や職場の理解を得る必要があります。
腹膜透析でも、在宅で行う分こまめな透析液交換が求められるため、スケジュール管理や衛生管理に注意が必要です。
生活のリズムを作るために意識したいこと
- 通院日や透析時間を前提にした1週間の計画を立てる
- 食事や水分制限に合わせた調理や買い物の予定を組む
- 体調が優れない日のために、休養できる時間やサポート体制を用意する
- 家族や周囲の支えを得て孤立感を減らす
日常生活と食事管理のポイント
腎臓の機能を補う人工透析に入っても、日常生活は続きます。体調を守りながら合併症を防ぐためには、適切な食事管理や水分制限、運動習慣が欠かせません。医師や管理栄養士、看護師と連携して自分に合う形で実践することが大切です。
塩分や水分の管理方法
塩分の過剰摂取は血圧上昇やむくみを引き起こしやすく、腎臓への負担が高まります。特に透析導入前後は塩分制限が必要になります。加工食品や外食には塩分が多く含まれがちなので、成分表示をしっかり確認しながら調整します。
水分制限は病状や透析法によって異なります。血液透析中に水分を急激に引きすぎると、血圧低下やけいれんを起こしやすくなるため、日常生活での水分摂取量がポイントとなります。
腹膜透析を行う場合も、透析液の濃度や交換回数と合わせて水分のバランスを考えます。
生活習慣を整える上で意識する栄養素
栄養素 | 役割 | 具体的な食品例 |
---|---|---|
タンパク質 | 筋肉や酵素などの合成 | 卵、大豆製品、魚、肉 |
カリウム | 電解質バランス維持 | 果物、野菜、芋類 |
リン | 骨や細胞膜の材料 | 乳製品、豆類、加工肉 |
ナトリウム(塩分) | 体液バランスや神経調節 | 漬物、加工食品、スナック類 |
タンパク質は腎不全の段階で摂取制限が必要な場合がありますが、不足しすぎると体力や免疫力が低下するため、個別の指導が大切です。カリウムやリンの摂取量も合わせて管理しながら、栄養バランスを保ちます。
適度な運動と体調管理
透析導入後も、可能な範囲で運動を取り入れることが推奨されます。ウォーキングや軽いストレッチなど、無理のない運動を続けると筋力や血流が保たれやすくなります。
ただし貧血が強かったり、心臓に負担がかかりやすい方は医師と相談しながら運動量を調整します。
運動に加えて、体重や血圧を毎日記録すると腎不全人工透析の効果や体調の変化を早めに察知しやすくなります。急激な体重増加や血圧変動があれば、医療スタッフに相談するきっかけとなります。
合併症を防ぐためのセルフケア
腎臓以外にも、心臓や血管、骨などに負荷がかかる状況が腎不全には生じやすいです。塩分や水分を控えめにするほかに、喫煙習慣や過度の飲酒を避けることが大切です。血糖値が高い方は糖尿病のコントロールを徹底する必要があります。
生活習慣を見直すヒント
- 薬の服用時間や回数をきちんと守る
- 加工食品よりもなるべく手作りの食事を増やす
- 飲酒は控えめにし、喫煙はやめる
- 食事記録をつけて管理栄養士と相談する
透析導入後の通院とフォローアップ
透析導入を開始した後も、定期的な通院や検査が続きます。治療を続けるうえで体調管理や社会生活のバランスをとる方法を見つけることが課題になります。
血液透析でも腹膜透析でも、医師や看護師、管理栄養士、薬剤師などの専門家と連携して日常を維持することが不可欠です。
血液透析の場合の通院スケジュール
血液透析は基本的に週3回、1回4時間前後かけて実施することが多いです。毎回透析前後に体重測定や血圧測定を行い、除水量(不要な水分をどの程度抜くか)を決めます。
さらに月1回程度は血液検査を行い、透析効率や体内の電解質バランスをチェックします。
定期的にシャントの状態を確認し、血流が十分に保たれているかを確認します。シャントが詰まったり血管が弱くなったりすると治療効果が落ちるため、問題があれば早期に対処します。
血液透析の通院例
時期 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
毎回透析前後 | 体重測定・血圧測定 | 除水量や透析条件の設定 |
月1回 | 血液検査 | 透析効率や電解質の評価 |
適宜 | シャントのエコー・診察 | 血管トラブルの早期発見 |
定期的 | 心電図・胸部X線 | 心臓や肺の状態確認 |
血液透析を受ける日は通院で半日近く時間を使うため、職場や家族の協力が重要です。朝から通院するのか、夕方から夜にかけて透析を行うのかなど、自分の生活リズムに合った通院計画を検討します。
腹膜透析の場合のフォローアップ
腹膜透析では、自宅で毎日の透析液交換を行うため医療機関への通院頻度は血液透析ほど高くありません。しかし、月1回程度の外来受診で血液検査や栄養状態、カテーテルの状態などをチェックします。
感染予防やトラブルの早期発見がポイントです。
腹膜透析を行う方は常に透析液を扱うため、器具の取り扱いや衛生管理を徹底する必要があります。自宅での管理に不安がある場合は、訪問看護やヘルパーを利用したサポート体制を構築します。
社会生活との両立
透析導入後も仕事や家庭の事情などで外せない予定がある方は多いです。職場と相談して通院日や在宅治療の時間を確保する、周囲に協力を依頼するなど、社会生活を続けるための調整が求められます。
フルタイム勤務を続けながら血液透析を受ける方もいますし、リタイア後は家族との時間を大事にしながら腹膜透析で自宅生活を重視する方もいます。一人ひとりの事情に合わせたフォローアップが欠かせません。
社会との両立で意識したい項目
- 仕事や学校のスケジュールに合わせた通院日の調整
- 自宅療養の場合の感染対策や衛生管理
- 公的支援(障害年金や医療費控除など)の情報収集
- 家族や職場の理解を得るためのコミュニケーション
その他の治療選択肢と専門医への相談
腎不全人工透析は一般的な治療法ですが、透析以外にも腎移植などの選択肢が存在します。患者の年齢や合併症、生活環境などを総合的に判断しながら、最適とは言わずとも自分に合った治療法を検討していくことが大切です。
腎移植という選択肢
腎移植は提供者(ドナー)から健康な腎臓を移植することで、人工透析に頼らない生活を目指す方法です。ただし提供者との適合性や待機期間、移植後の拒絶反応対策などクリアすべき課題があります。
移植が成功すると腎機能が回復する可能性は高まりますが、長期的な免疫抑制剤の服用が必要になる場合もあります。
高齢の方や重い合併症を抱える方は移植のリスクが上がるため、透析導入を選択する例も少なくありません。一方で比較的若い年齢層で合併症が少ない方は、移植のメリットが期待できます。
保存的治療で進行を抑える方法
腎不全が進行しても、すぐに透析導入に至らず保存的治療を続けるケースもあります。厳格な食事管理や血圧管理、薬物療法を組み合わせて腎機能の低下を抑え、合併症の進行を防ぐアプローチです。
保存的治療だけで十分に対応できない状態に近づくと、透析開始時期を検討する必要が出てきます。日常生活に負担がかかったり、検査数値が危険域に近づいたりする段階で、腎臓内科や透析専門医との話し合いが不可欠になります。
医療チームとの連携
腎臓病の治療は多職種連携が基本です。腎臓内科医や看護師だけでなく、管理栄養士、薬剤師、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカーなどと相談する場面が増えます。
自分が抱える不安や悩みを遠慮なく伝え、必要に応じたサポートを受けることで治療の継続がしやすくなります。
治療法を検討するときの専門家の役割
専門家 | 主な役割 | 相談の例 |
---|---|---|
腎臓内科医 | 腎不全に関する診断・治療方針の決定 | 透析導入か腎移植かの選択 |
看護師 | 日常ケアや治療補助の実施、患者相談 | シャント管理やカテーテルケア |
管理栄養士 | 栄養指導や献立提案 | 塩分・カリウム・リンの調整 |
薬剤師 | 処方薬の選択と副作用のモニタリング | 免疫抑制剤の飲み合わせ |
医療ソーシャルワーカー | 経済面や社会保障の案内 | 障害年金や医療費助成 |
腎不全人工透析は社会生活と並行して続く治療です。家族や友人、職場の協力も大切になります。多職種の専門家を味方にして、暮らしと治療をバランスよく進める視点を意識してください。
よくある質問
腎臓病に関する不安や疑問は多岐にわたります。透析開始時期や透析導入に向けた準備、日常生活での注意点など、患者やご家族が抱えやすい質問をまとめます。
- 透析導入の前に試せる治療はある?
-
厳格な食事療法や血圧管理、薬物療法で腎機能の低下を抑えられる場合があります。ただし進行が止まらない場合は腎不全人工透析の導入を検討する必要があります。
- 透析開始時期はどの数値で決まる?
-
eGFRや血清クレアチニンの値、さらに症状の程度、合併症の有無などを総合的に考えます。単に数値だけではなく、むくみや貧血、倦怠感の強さなど体感的な指標も判断に含みます。
- 透析導入後の仕事や家事はどうなる?
-
血液透析の場合は週3回4時間ほどかかるので、勤務形態や家事の分担を再調整する必要があります。腹膜透析であれば通院回数は減りますが、毎日の透析液交換が必要です。
状況に応じて周囲の協力を得てスケジュールを立てます。
- 透析以外に治療の選択肢はある?
-
腎移植や保存的治療などが考えられます。年齢や合併症、生活スタイルなどを総合的に見て決めます。移植ではドナーとの適合性が必要で、術後の管理も欠かせません。
以上
透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )
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