人工透析を受けながら仕事を続けることは、多くの患者さんにとって大きな課題です。体力的な負担、時間的な制約、周囲の理解など、乗り越えるべき壁は少なくありません。
しかし、適切な透析方法を選び、職場や社会のサポートを活用し、ご自身の工夫次第で、仕事と治療を両立させる道は開けます。この記事では、
透析患者さんが仕事に関する制限や悩みに向き合い、ご自身の状況に合った働き方を見つけるための情報を提供します。透析治療と仕事の両立を目指すすべての方々を応援します。
透析治療が仕事に与える影響とは?
透析治療を開始すると、生活に様々な変化が生じます。特に仕事においては、これまで通りの働き方が難しくなる場面も出てくるでしょう。具体的にどのような影響があるのかを理解し、事前に対策を考えることが大切です。
体力面、時間面、精神面、そして日常生活の管理という側面から、仕事への影響を見ていきましょう。
体力的な変化と仕事への影響
透析治療は、体内の老廃物や余分な水分を除去するために体に一定の負担をかけます。透析導入初期や、透析後には、倦怠感、疲労感、血圧の変動などを感じることがあります。
これらの体調変化は、集中力や持続力の低下につながり、仕事のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。特に、長時間の立ち仕事や、重い物を持つ作業、高い集中力を要する業務などは、負担が大きくなるかもしれません。
ご自身の体力レベルを把握し、無理のない範囲で業務内容や量を調整することが必要になります。
体力維持のためのポイント
項目 | 内容 | 仕事への影響 |
---|---|---|
適度な運動 | 医師の指導のもと、ウォーキングなど軽い運動を継続する | 基礎体力の維持・向上、疲労感の軽減 |
十分な睡眠 | 質の高い睡眠を確保し、体を休める | 集中力・注意力の維持、日中の眠気防止 |
バランスの取れた食事 | 管理栄養士の指導に基づき、必要な栄養素を摂取する | 体調安定、貧血予防 |
時間的な制約:通院と治療時間
血液透析の場合、一般的に週3回、1回あたり4〜5時間程度の治療時間を要します。これに通院時間を加えると、透析日は半日近く時間を確保する必要があります。
この時間的な制約は、勤務時間や勤務形態に直接影響します。フルタイム勤務の場合、早退や遅刻、あるいは休暇を取得する必要が出てくるかもしれません。
また、残業や急な出張への対応が難しくなることも考えられます。働き方を維持するためには、透析スケジュールと勤務時間をどのように調整するかが重要な課題となります。
精神的な負担と向き合う
透析治療を生涯続けることへの不安、将来への心配、病状の変化によるストレスなど、透析患者さんは様々な精神的な負担を抱えることがあります。
また、仕事と治療の両立に対するプレッシャーや、職場で病気への理解が得られないことへの悩みも、精神的な負担を増大させる要因となり得ます。
これらの精神的な負担は、仕事への意欲低下や、集中力の散漫につながる可能性があります。一人で抱え込まず、家族、医療スタッフ、あるいは同じ病気を持つ仲間など、信頼できる人に相談することが大切です。
必要であれば、心理的なサポートを受けることも考えましょう。
食事制限や水分管理の工夫
透析患者さんは、塩分、カリウム、リン、水分の摂取制限が必要になることが一般的です。これらの制限を守ることは、体調管理と合併症予防のために重要です。
しかし、職場での昼食や外食、会食などの場面では、食事制限を守ることが難しい場合もあります。メニュー選びに苦労したり、周囲に気を遣わせたりすることもあるかもしれません。
また、水分制限は、特に夏場や体を動かす仕事の場合、脱水症状のリスク管理とのバランスが求められます。事前にメニューを確認したり、お弁当を持参したり、水分補給のタイミングを工夫するなど、日常生活の中で無理なく続けられる管理方法を見つけることが重要です。
管理栄養士に相談し、具体的なアドバイスをもらうことも有効です。
職場での食事・水分管理のヒント
項目 | 工夫の例 | ポイント |
---|---|---|
昼食 | 弁当持参、低塩分・低カリウムメニューのある社員食堂利用、外食時は成分表示確認 | 無理なく継続できる方法を選ぶ |
飲み物 | 飲む量を決めておく、糖分の少ない飲み物を選ぶ、氷で口を潤す | 1日の総水分量を意識する |
間食・会食 | 成分を確認して選ぶ、食べ過ぎないように量を調整する、事前に幹事に相談する | 制限を意識しつつ、楽しむことも大切 |
仕事を続けるための透析方法の選択肢
透析治療にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴やライフスタイルへの影響が異なります。ご自身の仕事内容や勤務形態、生活リズムに合わせて最適な透析方法を選択することが、仕事と治療の両立において非常に重要です。
ここでは、主な透析方法である血液透析(HD)、腹膜透析(PD)、在宅血液透析(HHD)について解説します。
血液透析(HD)の特徴と働き方
血液透析(HD)は、医療機関に通院し、専用の装置(ダイアライザー)を使って血液中の老廃物や余分な水分を除去する方法です。通常、週に3回、1回あたり4〜5時間の治療を行います。
医療スタッフが治療を管理するため、安心感がある一方、通院時間の確保が必要です。仕事との両立においては、透析スケジュールに合わせて勤務時間を調整する必要があります。
例えば、夜間透析や早朝透析を実施している施設を利用すれば、日中の勤務時間を確保しやすくなります。また、勤務先の近くのクリニックを選ぶことで、通院の負担を軽減できます。
血液透析(HD)のメリット・デメリット
項目 | 内容 | 仕事への影響 |
---|---|---|
メリット | 医療機関で管理される安心感、確実な毒素除去 | 治療は専門家に任せられる |
デメリット | 週3回の通院が必要、1回あたりの拘束時間が長い、穿刺の痛み | 時間的制約が大きい、体力的な負担 |
働き方の工夫 | 夜間・早朝透析の利用、勤務時間調整、時短勤務、通院しやすい職場選び | 柔軟な働き方の検討が必要 |
腹膜透析(PD)の柔軟性と仕事
腹膜透析(PD)は、自分自身のお腹の中にある腹膜を利用して透析を行う方法です。自宅や職場など、清潔な環境があればどこでも透析液の交換(バッグ交換)が可能です。通常、1日に数回のバッグ交換を自分で行います。
通院は月1〜2回程度で済むため、血液透析に比べて時間的な自由度が高いのが特徴です。日中のバッグ交換が必要な場合でも、職場の休憩時間などを利用して行うことができます。
デスクワーク中心の方や、勤務時間の調整が比較的容易な方にとっては、仕事との両立がしやすい透析方法と言えるでしょう。ただし、自己管理能力が求められ、腹膜炎などの合併症リスクもあります。
在宅血液透析(HHD)という選択
在宅血液透析(HHD)は、自宅に血液透析の装置を設置し、患者さん自身や家族の介助によって透析を行う方法です。医療機関への通院は月1〜2回程度で、透析の時間や頻度をライフスタイルに合わせて比較的自由に設定できます。
例えば、夜間の睡眠時間を利用して長時間透析を行ったり、週4〜5回など頻回に透析を行ったりすることも可能です。これにより、日中の時間を有効活用でき、フルタイム勤務や活動的なライフスタイルを維持しやすくなります。
ただし、導入には一定の条件があり、自己穿刺や機械操作の習得、介助者の協力、自宅内のスペース確保などが必要です。
透析方法による働き方の違い
透析方法 | 主な特徴 | 働き方への適合性 |
---|---|---|
血液透析(HD) | 週3回通院、医療機関で実施 | 夜間・早朝透析利用で日中勤務可能、時間的制約あり |
腹膜透析(PD) | 自宅・職場で自己管理、通院月1-2回 | 時間的自由度高い、デスクワーク等に向く |
在宅血液透析(HHD) | 自宅で実施、時間・頻度の自由度高い | フルタイム勤務や活動的な仕事も可能、自己管理・環境整備必要 |
自分に合った透析方法を見つける
どの透析方法が最適かは、個々の患者さんの病状、ライフスタイル、価値観、そして仕事の内容によって異なります。それぞれの透析方法のメリット・デメリットを十分に理解した上で、主治医や医療スタッフとよく相談することが重要です。
仕事内容、通勤時間、勤務形態、体力的な負担、自己管理能力、家族の協力体制などを総合的に考慮し、ご自身にとって最も仕事と両立しやすい方法を選択しましょう。セカンドオピニオンを聞くことも有効な手段です。
職場への伝え方と理解を得るポイント
透析治療を受けながら仕事を続ける上で、職場の理解と協力は非常に重要です。しかし、病気のことをどこまで、どのように伝えるべきか悩む方も多いでしょう。
適切なタイミングで、必要な情報を具体的に伝え、良好な関係を築きながら協力を得るためのポイントを解説します。
病状と必要な配慮を伝えるタイミング
病状や治療について職場に伝えるタイミングは、状況によって異なります。透析導入が決まった時点、体調の変化で業務に支障が出始めた時点、あるいは転職活動中の面接時などが考えられます。
基本的には、業務への影響が出始める前や、配慮が必要になった段階で伝えるのが望ましいでしょう。伝える相手は、まずは直属の上司に相談するのが一般的です。
伝える内容としては、病名(差し支えなければ)、治療内容(通院頻度や時間)、それによって業務上どのような影響が出る可能性があるか、そしてどのような配慮が必要かを具体的に説明します。
上司や同僚への具体的な説明方法
上司や同僚に説明する際は、感情的にならず、客観的な事実を伝えることを心がけましょう。
「週に3回、〇曜日の午後は透析治療のため早退する必要があります」「透析後は体調が不安定になることがあるため、〇〇のような業務は負担が大きいかもしれません」「〇〇のような配慮をいただけると大変助かります」など、具体的に伝えることで、相手も状況を理解しやすくなります。
透析治療について詳しくない人も多いため、必要であれば簡単な説明資料を用意するのも良いでしょう。誤解や偏見を招かないよう、丁寧なコミュニケーションが大切です。できないことだけでなく、これまで通りできること、貢献できることも合わせて伝えましょう。
伝える内容の整理
- 病状と治療の概要(例:腎不全で週3回血液透析が必要)
- 具体的な制約(例:通院のための早退、体力的な配慮)
- 依頼したい配慮(例:勤務時間の調整、業務内容の変更)
- これまで通り貢献できること
理解と協力を得るための心構え
職場の理解と協力を得るためには、まず自分自身が病気と向き合い、前向きに仕事に取り組む姿勢を示すことが大切です。体調管理に努め、できる範囲で最大限のパフォーマンスを発揮しようとする姿は、周囲の信頼を得ることにつながります。
また、感謝の気持ちを忘れずに伝えることも重要です。「いつも配慮いただきありがとうございます」「〇〇さんのおかげで助かっています」といった言葉は、良好な人間関係を築く上で効果的です。
一方的に配慮を求めるだけでなく、自分にできる範囲で周囲をサポートする姿勢も大切です。お互いに助け合う気持ちが、働きやすい環境を作ります。
プライバシーへの配慮と伝え方のバランス
病気の情報は非常にデリケートな個人情報です。どこまで開示するかは、最終的には本人の判断に委ねられます。必ずしも全ての同僚に伝える必要はありません。業務上関わりの深い人や、信頼できる人に限定して伝えるという選択肢もあります。
伝える範囲や内容については、事前に上司と相談しておくと良いでしょう。会社によっては、人事部や産業医などが間に入って調整してくれる場合もあります。
プライバシーに配慮しつつ、業務に必要な範囲で情報を共有し、円滑なコミュニケーションを図るバランス感覚が求められます。
透析患者が働きやすい職場の探し方
これから仕事を探す方や、転職を考えている方にとって、透析治療への理解があり、働きやすい環境の職場を見つけることは重要な課題です。どのような点に注意して求人情報を探し、面接に臨めば良いのでしょうか。
働きやすい職場を見つけるためのポイントを紹介します。
求人情報のチェックポイント
求人情報を探す際には、勤務時間や勤務形態の柔軟性に注目しましょう。「フレックスタイム制度あり」「時短勤務可能」「在宅勤務・リモートワーク相談可」といった記載がある企業は、比較的働き方の調整がしやすい可能性があります。
また、福利厚生欄に「通院休暇制度」や「健康サポート体制」に関する記述があるかも確認しましょう。
企業のウェブサイトなどで、ダイバーシティ推進や健康経営への取り組みを積極的にアピールしている企業も、従業員の健康や多様な働き方に対する理解があると考えられます。
求人情報で確認したい項目
項目 | チェックポイント | 期待できること |
---|---|---|
勤務時間 | フレックスタイム、時短勤務、裁量労働制など | 通院時間の確保、体調に合わせた勤務調整 |
勤務場所 | 在宅勤務、リモートワーク、サテライトオフィス | 通勤負担の軽減、休憩の取りやすさ |
福利厚生・制度 | 通院休暇、傷病休暇、健康相談窓口、産業医 | 治療と仕事の両立支援、健康面のサポート |
面接で確認すべき事項
面接は、企業が応募者を選ぶだけでなく、応募者が企業を見極める場でもあります。透析治療について伝える場合は、正直に状況を説明した上で、働き方に関する希望や必要な配慮を具体的に伝えましょう。その上で、企業側の受け入れ体制や、同様の事例があるかなどを質問します。
「透析治療のため、週に数回の通院が必要です。勤務時間の調整は可能でしょうか?」「体調によって急な欠勤や早退の可能性がありますが、サポート体制はありますか?」といった具体的な質問を通じて、企業の柔軟性や理解度を確認できます。
面接官の反応や回答から、入社後に安心して働ける環境かどうかを判断する材料にします。
フレックスタイムや在宅勤務の可能性
フレックスタイム制度は、始業・終業時間を自分で決められるため、通院時間の確保に有効です。コアタイム(必ず勤務しなければならない時間帯)の設定によっては、透析のない日に長く働き、透析日の勤務時間を短縮するといった調整も可能です。
在宅勤務は、通勤の負担がなく、休憩や体調管理がしやすいというメリットがあります。腹膜透析(PD)のバッグ交換なども、自宅であれば気兼ねなく行えます。
これらの制度が導入されているか、また実際に利用しやすい環境であるかを、求人情報や面接で確認することが重要です。
企業の健康経営への取り組みを確認する
近年、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」に取り組む企業が増えています。
健康経営を推進している企業は、従業員の健康維持・増進に積極的であり、病気を抱える従業員へのサポート体制が整っている可能性が高いと言えます。
経済産業省が認定する「健康経営優良法人」などの認定を受けているかどうかも、参考になる指標の一つです。
企業のウェブサイトや採用情報で、健康経営に関する具体的な取り組み内容(健康診断の充実、相談窓口の設置、治療と仕事の両立支援制度など)を確認してみましょう。
利用できる社会保障制度とサポート
透析治療を受けながら仕事を続けるにあたっては、様々な社会保障制度や支援サービスを活用できます。これらの制度を理解し、適切に利用することで、経済的な負担や就労に関する不安を軽減できます。
ここでは、主な制度やサポートについて紹介します。
障害年金制度の概要と申請
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限される場合に受け取ることができる年金です。人工透析療法を行っている方は、原則として障害等級2級に認定され、障害基礎年金または障害厚生年金の受給対象となる可能性があります。
受給額は、加入している年金制度や家族構成などによって異なります。申請には、診断書や病歴・就労状況等申立書などの書類が必要です。
手続きが複雑な場合もあるため、年金事務所や社会保険労務士に相談することをおすすめします。障害年金を受給することで、経済的な基盤が安定し、無理のない働き方を選択しやすくなります。
障害年金の種類と対象者
年金の種類 | 主な対象者 | 等級(透析の場合) |
---|---|---|
障害基礎年金 | 国民年金加入中の方、20歳前に初診日がある方など | 原則2級 |
障害厚生年金 | 厚生年金加入中の方 | 原則2級(+3級や障害手当金の可能性も) |
傷病手当金について知っておくこと
傷病手当金は、健康保険の被保険者が、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給される手当金です。透析導入に伴う入院や、体調不良で仕事を休まざるを得ない場合に活用できます。
支給を受けるには、「療養のため労務に服することができないこと」「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと」「休んだ期間について給与の支払いがないこと」などの条件を満たす必要があります。
支給期間は、支給開始日から最長1年6ヶ月です。申請手続きは、勤務先の担当部署または加入している健康保険組合に行います。
自立支援医療(更生医療)の活用
自立支援医療(更生医療)は、身体障害者手帳を持つ18歳以上の方が、その障害を除去・軽減する効果が期待できる医療を受ける場合に、医療費の自己負担を軽減する制度です。人工透析療法も対象となります。
この制度を利用すると、所得に応じて定められた自己負担上限額までの支払いで済み、医療費の負担を大幅に軽減できます。申請は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。
申請には、医師の意見書などが必要です。毎年更新手続きが必要となります。
ハローワークや支援機関の活用
ハローワーク(公共職業安定所)には、障害のある方の就職を専門にサポートする窓口があります。
専門の相談員が、職業相談、職業紹介、就職後の定着支援など、きめ細やかなサポートを提供します。透析治療による制約などを考慮した求人情報の提供や、面接への同行、就職後のフォローアップなども行っています。
また、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなどの支援機関でも、就労に関する相談や支援を受けることができます。これらの機関を積極的に活用し、自分に合った仕事探しや職場定着を目指しましょう。
主な支援機関
- ハローワーク(専門援助部門)
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
仕事と治療のバランスを取るための工夫
透析治療を受けながら仕事を長く続けていくためには、日々の生活の中で様々な工夫が必要です。
無理のないスケジュール管理、体調管理とセルフケア、ストレス対策、そして周囲のサポートを得ることが、仕事と治療の良好なバランスを保つ鍵となります。
無理のないスケジュール管理術
透析日は治療に時間がかかるため、仕事やプライベートの予定を詰め込みすぎないことが大切です。事前に週や月のスケジュールを立て、通院日、勤務時間、休息時間を明確にしましょう。
タスクに優先順位をつけ、無理のない範囲で業務量を調整することも重要です。スマートフォンのカレンダーアプリや手帳などを活用し、スケジュールを可視化すると管理しやすくなります。
また、通勤時間を短縮したり、家事の負担を軽減したりするなど、生活全体の時間を見直すことも有効です。完璧を目指さず、余裕を持ったスケジュールを心がけましょう。
スケジュール管理のポイント
ポイント | 具体的な方法 | 効果 |
---|---|---|
可視化 | カレンダーアプリ、手帳活用 | 予定の把握、調整のしやすさ |
優先順位付け | タスクリスト作成、重要度・緊急度で分類 | 効率的な業務遂行、負担軽減 |
余裕を持つ | 予定を詰め込みすぎない、休息時間を確保 | 突発的な事態への対応、疲労蓄積防止 |
体調管理とセルフケアの重要性
透析患者さんにとって、日々の体調管理は仕事のパフォーマンスを維持する上で非常に重要です。医師や管理栄養士の指示に従い、食事制限や水分管理をきちんと守りましょう。
血圧や体重の記録をつけ、変化があれば早めに医療スタッフに相談することが大切です。十分な睡眠をとり、適度な運動を心がけることも体力維持につながります。
また、シャント管理(血液透析の場合)や、出口部ケア(腹膜透析の場合)など、透析に関するセルフケアも怠らないようにしましょう。自分の体調の変化に気を配り、無理をしないことが、結果的に長く仕事を続けることにつながります。
ストレス軽減とリフレッシュ方法
仕事と治療の両立は、時に大きなストレスとなることがあります。ストレスを溜め込まないように、自分なりのリフレッシュ方法を見つけることが大切です。
趣味に没頭する時間を作る、好きな音楽を聴く、軽い運動をする、友人と話す、自然に触れるなど、気分転換になることなら何でも構いません。意識的にリラックスする時間を取り、心身のバランスを整えましょう。
また、悩みや不安を一人で抱え込まず、家族や友人、医療スタッフ、患者会などで話を聞いてもらうこともストレス軽減につながります。必要であれば、専門家のカウンセリングを受けることも検討しましょう。
ストレス軽減のヒント
- 趣味の時間
- 軽い運動
- リラックスできる音楽
- 友人や家族との会話
家族や周囲のサポートを得る
仕事と治療の両立には、家族や職場の同僚など、周囲の人の理解とサポートが大きな力になります。家族には、病状や治療について正直に話し、どのようなサポートが必要かを伝えましょう。
家事の分担や、通院の送迎など、具体的な協力を依頼することも大切です。職場では、上司や同僚に状況を理解してもらい、必要な配慮を得られるようにコミュニケーションを図りましょう。
感謝の気持ちを忘れずに、良好な関係を築くことが重要です。一人で全てを背負おうとせず、頼れる人には頼る勇気を持ちましょう。周囲のサポートを上手に活用することが、無理なく両立を続けるための秘訣です。
よくある質問
透析治療と仕事の両立に関して、患者さんから寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
- 透析中でもできる仕事の種類は?
-
透析治療を受けているからといって、特定の仕事ができないということはありません。しかし、体力的な負担が大きい仕事(重量物の運搬、長時間の立ち仕事、交代勤務など)や、厳密な時間管理が求められる仕事は、負担が大きくなる可能性があります。
一方、デスクワーク、事務職、専門職、軽作業など、比較的体力的な負担が少なく、勤務時間の調整がしやすい仕事は、両立しやすいと言えるでしょう。腹膜透析や在宅血液透析を選択すれば、働き方の選択肢はさらに広がります。
最終的には、ご自身の体力、病状、ライフスタイル、そして仕事内容を総合的に考慮して、主治医や職場と相談しながら判断することが重要です。
仕事選びの考慮点
考慮点 ポイント 例 体力的な負担 重労働、立ち仕事、交代勤務の有無 事務職、プログラマー、軽作業 時間的な柔軟性 フレックスタイム、時短勤務、休暇の取りやすさ 裁量労働制の職種、在宅勤務 通勤負担 通勤時間、通勤手段 自宅近くの職場、リモートワーク - 夜間透析や早朝透析は仕事と両立しやすい?
-
血液透析の場合、夜間透析(夕方から夜にかけて行う透析)やオーバーナイト透析(睡眠時間を利用して行う透析)、早朝透析(早朝に行う透析)は、日中の時間を仕事や学業、家事などに充てることができるため、仕事との両立を図りやすい選択肢です。
これらの透析方法を利用することで、フルタイム勤務を継続できる可能性が高まります。ただし、実施している医療機関が限られていることや、生活リズムへの影響(睡眠不足など)も考慮する必要があります。
ご自身のライフスタイルや勤務形態に合わせて、主治医や医療スタッフと相談し、利用可能かどうか、メリット・デメリットを確認しましょう。
- 転職活動で透析のことは伝えるべき?
-
転職活動において、透析治療を受けていることをどのタイミングで、どこまで伝えるかは非常に悩ましい問題です。法律上、応募者から自発的に病歴を申告する義務はありません。
しかし、入社後に通院のための配慮(勤務時間の調整、休暇取得など)が必要になる場合は、正直に伝えておく方が、後々のトラブルを避け、円滑な就労につながる可能性が高いでしょう。
伝えるタイミングとしては、内定後や、面接の最終段階などが考えられます。伝える際は、病状の説明とともに、必要な配慮、そして仕事への意欲や貢献できることを具体的に説明することが大切です。
企業の理解度や対応を見極める機会にもなります。ハローワークの専門窓口や転職エージェントに相談するのも良いでしょう。
- 体調が悪くなった時の対応は?
-
透析治療中は、予期せぬ体調不良が起こる可能性もあります。仕事中に体調が悪くなった場合に備えて、事前に対策を考えておくことが重要です。
まずは、無理をせず、早めに上司や同僚に状況を伝え、休憩を取るか、必要であれば早退・欠勤しましょう。緊急連絡先(家族、主治医、透析施設など)を職場に伝えておくと、万が一の場合にスムーズな対応が可能です。
また、普段から自分の体調を把握し、どのような時に体調が悪くなりやすいかを知っておくことも大切です。
職場には、体調不良の可能性について事前に理解を求めておくとともに、日頃から自身の健康管理に努める姿勢を示すことが、信頼関係の構築につながります。
以上
透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )
参考文献
ALQUWEZ, Nahed A. Employment status and sustainability of work among haemodialysis patients in Saudi Arabia. University of Salford (United Kingdom), 2017.
GAUDET, Keira, et al. The Strategies Used to Balance Health and Work Across the Solid Organ Transplantation Trajectory. Progress in Transplantation, 2024, 34.1-2: 32-40.
MOBARAK, Hassnaa Shaban, et al. Insomnia among intensive care unit nurses in the United Arab Emirates and its association to work productivity and quality of life. The open nursing journal, 2023, 17.1.
BOTTEGA, Michela, et al. Why nurses discontinue practice in hospitals? Insights from a qualitative study. International Nursing Review, 2025, 72.1: e13083.
DE LA CUESTA-BENJUMEA, Carmen; HERNÁDEZ-IBARRA, Luis Eduardo; ARREDONDO-GONZÁLEZ, Claudia P. Living normally without being oneself: A qualitative study on the experience of living with advanced chronic kidney disease. Plos one, 2023, 18.12: e0295506.
BADU, Eric, et al. Workplace stress and resilience in the Australian nursing workforce: A comprehensive integrative review. International journal of mental health nursing, 2020, 29.1: 5-34.
ZHENG, Qin; LIU, Shihua; ZHANG, Yanyan. Coping Measures for Hospital Nurses’ Turnover: A Qualitative Meta‐Aggregation (2018–2023). Journal of Clinical Nursing, 2025, 34.1: 268-286.
NOWROUZI, Behdin. Quality of work life: Investigation of occupational stressors among obstetric nurses in Northeastern Ontario. Unpublished Ph. D. thesis in Interdisciplinary Rural and Northern Health, School of Graduate Studies, Laurentian University Sudbury, Ontario, Canada, 2013.
QUIGLEY, Leo; SALSBERG, E.; COLLINS, A. Early Career Nephrologists: Results of a 2017 Survey. 2017. PhD Thesis. George Washington University.
AL-SAAIDI, Ahmed Said. Work-life balance and the role of self-leadership. 2022. PhD Thesis. University of Iowa.