健康診断などで「eGFR(推算糸球体濾過量)が低い」と指摘されたことはありませんか。eGFRは腎臓の働きを示す重要な指標の一つです。この値が低いということは、腎機能が低下している可能性を示唆しています。
この記事では、eGFRとは何か、なぜ低下するのか、そして腎機能の低下に対してどのような対策を講じることができるのかを、分かりやすく解説します。
eGFRとは何か?腎臓の働きと合わせて理解する
私たちの体にとって、腎臓は生命維持に欠かせない重要な臓器です。eGFRについて理解を深める前に、まずは腎臓がどのような働きをしているのかを知っておきましょう。
腎臓の主な役割
腎臓は、そら豆のような形をした握りこぶし程度の大きさの臓器で、腰のやや上に左右一つずつあります。主な役割は以下の通りです。
- 老廃物の排泄
- 体液のバランス調整
- 血圧の調整
- ホルモンの産生
これらの働きを通じて、私たちの体内の環境を一定に保っています。
老廃物のろ過と尿の生成
腎臓の最も重要な働きの一つが、血液をろ過して体内で不要になった老廃物や余分な水分、塩分を尿として体外に排泄することです。このろ過機能は、腎臓内部にある「糸球体(しきゅうたい)」という毛細血管の塊で行われます。
eGFR(推算糸球体濾過量)とは
eGFRは「estimated Glomerular Filtration Rate」の略で、日本語では「推算糸球体濾過量」といいます。これは、腎臓の糸球体が1分間にどれくらいの血液をろ過できるかを示す値です。
直接測定することも可能ですが、煩雑なため、一般的には血清クレアチニン値と年齢、性別から計算式を用いて推算します。健康診断などではこの推算値が用いられることがほとんどです。
eGFRの計算に用いられるクレアチニン
クレアチニンは、筋肉運動のエネルギー源となるクレアチンという物質が代謝された後にできる老廃物です。通常、クレアチニンは腎臓でろ過されて尿中に排泄されます。
腎機能が低下すると、クレアチニンを十分に排泄できなくなり、血液中のクレアチニン濃度が上昇します。この性質を利用して、eGFRを算出します。
項目 | 説明 | 腎機能との関連 |
---|---|---|
クレアチニン | 筋肉運動により産生される老廃物 | 腎機能低下で血中濃度が上昇 |
eGFR | 血清クレアチニン値などから推算される糸球体のろ過能力 | 腎機能低下で数値が低下 |
eGFRで何がわかるのか
eGFRの値は、現在の腎臓のろ過能力がどの程度であるかを示します。この値が低いほど、腎臓の働きが悪くなっていると考えられます。
eGFRは、慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)の診断や重症度分類にも用いられる重要な指標です。
eGFRの基準値とステージ分類
eGFRの基準値は、一般的に60mL/分/1.73m²以上とされています。ただし、年齢とともに腎機能は自然と低下する傾向があるため、高齢者の場合は多少低い値でも直ちに問題があるとは限りません。
慢性腎臓病(CKD)は、eGFRの値などに基づいて病気の進行度(ステージ)が分類されます。
CKDのステージ分類(eGFRによる)
ステージ | eGFR (mL/分/1.73m²) | 腎機能の状態 |
---|---|---|
G1 | 90以上 | 正常または高値 |
G2 | 60~89 | 軽度低下 |
G3a | 45~59 | 軽度~中等度低下 |
G3b | 30~44 | 中等度~高度低下 |
G4 | 15~29 | 高度低下 |
G5 | 15未満 | 末期腎不全 (ESKD) |
この表はあくまで目安です。個々の状態については、必ず医師の判断を仰いでください。
eGFRが低いと言われたら考えるべきこと
健康診断などでeGFRの低下を指摘された場合、不安を感じるかもしれません。しかし、慌てずに冷静に状況を把握し、適切な対応をとることが大切です。
検査結果の受け止め方
eGFRが低いという結果は、腎機能が低下している可能性を示唆するものですが、それだけで直ちに重篤な病気であると断定されるわけではありません。まずは、検査結果を正確に理解し、過度に悲観的にならないようにしましょう。
一時的な低下の可能性
eGFRの値は、体調や検査時の状況によって変動することがあります。例えば、脱水状態や特定の薬剤の使用、激しい運動後などでは、一時的にeGFRが低く出ることがあります。
そのため、一度の検査結果だけで判断せず、再検査を行うことが重要です。
再検査の重要性
eGFRの低下が一時的なものなのか、あるいは持続的な腎機能の低下を示しているのかを確認するためには、再検査が欠かせません。医師の指示に従い、適切なタイミングで再検査を受けましょう。
再検査でもeGFRが低い場合は、さらに詳しい検査が必要になることがあります。
医師との相談
検査結果について不安や疑問がある場合は、必ず医師に相談しましょう。医師は、あなたの年齢、性別、既往歴、他の検査結果などを総合的に考慮して、eGFRの低下が何を意味するのか、今後どのような対応が必要なのかを判断します。
自己判断せずに、専門家である医師の指示を仰ぐことが最も大切です。かかりつけ医がいる場合は、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて腎臓専門医を紹介してもらうと良いでしょう。
腎機能が低下する主な原因
腎機能が低下する原因は様々です。代表的なものとしては、生活習慣病、腎臓自体の病気、薬剤の影響、加齢などが挙げられます。
生活習慣病との関連
近年、腎機能低下の最大の原因として注目されているのが生活習慣病です。特に糖尿病と高血圧は、腎臓に大きな負担をかけ、腎機能を徐々に悪化させる可能性があります。
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症の一つです。長期間にわたる高血糖状態が続くと、腎臓の糸球体の血管が傷つき、ろ過機能が低下します。
初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行するとタンパク尿が出始め、やがて腎不全に至ることもあります。
高血圧性腎硬化症
高血圧もまた、腎臓に悪影響を及ぼします。血圧が高い状態が続くと、腎臓の血管に動脈硬化が起こり、血液の流れが悪くなります。その結果、糸球体が硬化し、ろ過機能が低下します。これも初期には自覚症状が乏しいことが多いです。
脂質異常症
血液中のコレステロールや中性脂肪が多い状態である脂質異常症も、動脈硬化を促進し、間接的に腎機能に影響を与える可能性があります。生活習慣病は互いに関連し合っているため、総合的な管理が重要です。
腎臓自体の病気
腎臓そのものに起こる病気も、腎機能低下の原因となります。
慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎は、糸球体に慢性的な炎症が起こる病気の総称です。IgA腎症などが代表的で、タンパク尿や血尿が見られます。原因は様々で、免疫系の異常などが関与していると考えられています。
徐々に腎機能が低下していくことがあります。
腎臓の病気 | 主な特徴 | eGFRへの影響 |
---|---|---|
慢性糸球体腎炎 | 糸球体の慢性的な炎症、タンパク尿、血尿 | 徐々に低下する可能性 |
多発性のう胞腎 | 腎臓に多数ののう胞(液体がたまった袋)が発生・増大 | 進行すると腎機能が低下 |
多発性のう胞腎
多発性のう胞腎は、遺伝性の病気で、腎臓に多数の「のう胞」と呼ばれる液体がたまった袋ができ、それらが徐々に大きくなることで正常な腎組織を圧迫し、腎機能が低下していく病気です。
その他の腎疾患
上記以外にも、ループス腎炎などの膠原病に伴う腎障害、間質性腎炎、腎盂腎炎の繰り返しなども腎機能低下の原因となることがあります。
薬剤性の腎障害
一部の薬剤は、腎臓に負担をかけ、腎機能を低下させることがあります。特に、消炎鎮痛薬(NSAIDs)の長期・大量使用や、一部の抗生物質、造影剤などが原因となることがあります。
市販薬やサプリメントであっても、腎機能が低下している方が使用する際には注意が必要です。新しい薬を始める際や、長期間薬を服用している場合は、定期的に腎機能検査を受けることが勧められます。
加齢による影響
年齢を重ねるとともに、腎臓の機能も徐々に低下していくのが一般的です。これは生理的な変化であり、ある程度は避けられないものです。
しかし、生活習慣病など他の危険因子が加わると、その低下のスピードが速まることがあります。
eGFR低下を放置するリスク
eGFRの低下は、腎臓の機能が弱っているサインです。これを放置すると、様々な健康上の問題を引き起こす可能性があります。
慢性腎臓病(CKD)への進行
eGFRの低下が持続する場合、慢性腎臓病(CKD)と診断されることがあります。CKDは、腎障害を示す所見(タンパク尿など)やeGFRの低下が3ヶ月以上続く状態を指します。
CKDは自覚症状が出にくいまま進行することが多く、気づいた時には腎機能がかなり低下しているケースも少なくありません。
CKDが進行するとどうなるか
CKDが進行し、腎機能が著しく低下すると、体内に老廃物や余分な水分が蓄積し、様々な症状が現れます。これを尿毒症といいます。また、CKDは心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の重要な危険因子でもあります。
尿毒症の症状
腎機能が正常の15%以下程度になると、以下のような尿毒症の症状が現れることがあります。
- 全身倦怠感、疲労感
- 食欲不振、吐き気
- むくみ(浮腫)
- 息切れ、呼吸困難
- 皮膚のかゆみ
- 貧血
心血管疾患のリスク上昇
CKD患者さんは、そうでない人と比べて心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を発症するリスクが高いことがわかっています。
これは、腎機能低下に伴い、動脈硬化が進行しやすくなることや、高血圧、貧血、ミネラルバランスの異常などが複合的に関与するためと考えられています。
CKD進行によるリスク | 具体的な内容 |
---|---|
尿毒症 | 老廃物蓄積による全身症状 |
心血管疾患 | 心筋梗塞、脳卒中など |
末期腎不全 | 透析や腎移植が必要な状態 |
末期腎不全と透析・移植
腎機能が極度に低下し、eGFRが15 mL/分/1.73m²未満になると末期腎不全(ESKD: End Stage Kidney Disease)と呼ばれます。
この状態になると、自分の腎臓だけでは生命を維持することが困難になるため、透析療法(血液透析や腹膜透析)や腎移植といった腎代替療法が必要になります。
腎機能低下の進行を遅らせるためにできること
一度低下した腎機能を完全に元に戻すことは難しい場合が多いですが、適切な対策を講じることで、腎機能低下の進行を遅らせたり、現状を維持したりすることは可能です。早期発見・早期対応が何よりも重要です。
生活習慣の改善
腎機能を守るためには、日々の生活習慣を見直すことが基本となります。特に、食事療法、運動、禁煙、体重管理は重要な柱です。
食事療法(塩分・タンパク質制限など)
腎機能が低下している場合、食事内容に注意が必要です。特に塩分の過剰摂取は血圧を上昇させ、腎臓に負担をかけます。また、タンパク質の摂りすぎも、老廃物の産生を増やし、腎臓に負荷をかけることがあります。
医師や管理栄養士の指導のもと、適切な食事療法を行うことが大切です。
生活習慣の改善点 | 具体的な内容・目標 |
---|---|
食事療法 | 減塩(1日6g未満目標)、タンパク質制限(医師の指示による)など |
適度な運動 | ウォーキングなどの有酸素運動を継続的に |
禁煙 | 喫煙は腎機能低下を早めるため必須 |
適度な運動
適度な運動は、血圧や血糖値のコントロールに役立ち、肥満の予防・改善にもつながります。ウォーキングや水泳などの有酸素運動を、無理のない範囲で継続することが推奨されます。
ただし、腎機能の状態によっては運動が制限される場合もあるため、医師に相談してから始めましょう。
禁煙
喫煙は、血管を収縮させ、動脈硬化を促進するため、腎機能低下を早める大きな危険因子です。腎臓を守るためには、禁煙が強く推奨されます。
適切な体重管理
肥満は、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のリスクを高め、間接的に腎臓に負担をかけます。適切な体重を維持することも、腎機能保護には重要です。
薬物療法
生活習慣の改善と並行して、必要に応じて薬物療法が行われます。原因となっている病気の治療や、腎臓を保護するための薬が用いられます。
原因疾患の治療薬
糖尿病が原因であれば血糖値をコントロールする薬、高血圧が原因であれば降圧薬が処方されます。これらの基礎疾患をしっかりと治療することが、腎機能の悪化を防ぐ上で非常に重要です。医師の指示通りに服薬を続けましょう。
腎保護作用のある薬
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)といった種類の降圧薬は、血圧を下げる効果に加えて、腎臓の糸球体にかかる圧力を下げたり、タンパク尿を減らしたりする腎保護作用があることが知られています。
また、近年ではSGLT2阻害薬という種類の糖尿病治療薬にも、優れた腎保護効果があることが分かり、糖尿病の有無にかかわらず使用されることがあります。
定期的な検査と医師の指導
腎機能は一度低下すると、自覚症状がないまま進行することが多いため、定期的に血液検査や尿検査を受け、腎機能の状態を把握することが大切です。
検査結果に基づいて、医師から適切なアドバイスを受け、治療方針を決定していきます。自己判断で治療を中断したり、薬の量を調整したりすることは絶対に避けましょう。
食事療法で気をつけるポイント
腎機能が低下した場合の食事療法は、病気の進行を遅らせるために非常に重要です。ただし、自己流で行うのではなく、必ず医師や管理栄養士の指導のもとで行うようにしてください。
塩分制限の重要性と工夫
塩分の摂りすぎは高血圧を引き起こし、腎臓に大きな負担をかけます。また、体内に水分がたまりやすくなり、むくみや心不全の原因にもなります。そのため、塩分制限は腎臓病の食事療法の基本中の基本です。
減塩目標
日本高血圧学会では、高血圧治療における減塩目標を1日6g未満としています。腎臓病の場合も、多くはこの基準に準じますが、個々の状態によって目標値は異なりますので、医師の指示に従ってください。
調味料 | 塩分量(目安) | 減塩の工夫 |
---|---|---|
食塩(小さじ1杯) | 約6g | だしや香辛料、香味野菜を活用 |
醤油(大さじ1杯) | 約2.5g | 減塩醤油やかけすぎない工夫 |
味噌(大さじ1杯) | 約2.2g | 具だくさんにして汁を減らす |
具体的な減塩方法
加工食品や外食には塩分が多く含まれていることが多いので注意が必要です。
自炊を基本とし、だし(昆布、かつお節など)の風味を活かしたり、香辛料(こしょう、カレー粉など)や香味野菜(しょうが、にんにく、ねぎ、ハーブなど)、柑橘類(レモン、ゆずなど)を上手に使ったりすることで、薄味でも美味しく食べられるように工夫しましょう。
麺類の汁は残す、漬物は控えるなどの心がけも大切です。
タンパク質制限の考え方
タンパク質は体を作る上で必要な栄養素ですが、摂りすぎると体内で老廃物となり、腎臓に負担をかけます。そのため、腎機能が低下している場合には、タンパク質の摂取量を制限することがあります。
制限の必要性
タンパク質制限の必要性や程度は、腎機能のステージや個々の状態によって異なります。医師が判断しますので、自己判断で極端な制限をしないようにしましょう。
特に高齢者の場合、過度なタンパク質制限は筋肉量の減少や低栄養を招くリスクもあるため、慎重な判断が必要です。
適切な摂取量
タンパク質の摂取目標量は、医師や管理栄養士から指示されます。良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)をバランス良く摂り、エネルギー不足にならないように、炭水化物や脂質で十分なカロリーを確保することが大切です。
栄養素 | 制限のポイント | 注意点 |
---|---|---|
タンパク質 | 医師の指示に基づき量を調整 | エネルギー不足にならないようにする |
カリウム | 高カリウム血症の場合に制限 | 生野菜や果物の摂取方法に工夫 |
リン | 高リン血症の場合に制限 | 加工食品に多く含まれるため注意 |
カリウム・リンの管理
腎機能が低下すると、カリウムやリンといったミネラルの排泄もうまくできなくなり、血液中の濃度が高くなることがあります(高カリウム血症、高リン血症)。
これらは不整脈や骨の異常などを引き起こす可能性があるため、必要に応じて摂取制限を行います。
カリウム制限が必要な場合
カリウムは、生野菜や果物、いも類、豆類などに多く含まれます。高カリウム血症を指摘された場合は、これらの食品の摂取量や調理法(茹でこぼす、水にさらすなど)に工夫が必要です。
ただし、全ての腎臓病患者さんにカリウム制限が必要なわけではありません。
リン制限が必要な場合
リンは、タンパク質の多い食品(肉、魚、卵、乳製品、大豆製品)や加工食品、インスタント食品に多く含まれています。高リン血症の場合は、これらの食品の摂取に注意が必要です。
特に食品添加物として含まれる無機リンは吸収されやすいため、加工食品の成分表示を確認する習慣も大切です。
水分摂取について
水分摂取に関しては、腎機能の状態やむくみの有無、尿量などによって指示が異なります。「水分をたくさん摂った方が良い」とは限らず、逆に制限が必要な場合もあります。医師の指示に従い、適切な水分量を心がけましょう。
腎機能を守るための日常生活の注意点
食事療法や薬物療法以外にも、日常生活で腎臓に負担をかけないように注意すべき点がいくつかあります。
市販薬やサプリメントの利用
風邪薬や痛み止めなどの市販薬、あるいは健康食品やサプリメントの中には、腎臓に影響を与える成分が含まれていることがあります。
特に、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の長期連用は腎機能障害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。市販薬やサプリメントを利用する際は、必ず事前に医師や薬剤師に相談し、自己判断での使用は避けましょう。
注意が必要な市販薬・サプリメントの例
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
- 一部の漢方薬
- 成分不明の健康食品
脱水に注意する
脱水状態になると、腎臓への血流が減少し、腎機能が悪化する可能性があります。特に夏場の暑い時期や、発熱・下痢・嘔吐などで体から水分が失われやすい時は、こまめな水分補給を心がけましょう。
ただし、前述の通り水分制限がある場合は医師の指示に従ってください。
感染症の予防
感染症にかかると、体力が消耗し、腎臓にも負担がかかることがあります。インフルエンザや肺炎などの感染症は、腎機能を悪化させる引き金になることもあります。
普段から手洗いやうがいを徹底し、人混みを避けるなど、感染予防に努めましょう。予防接種も有効な手段の一つです。医師と相談の上、適切な予防策を講じましょう。
日常生活での注意点 | 具体的な対策 |
---|---|
市販薬・サプリメント | 使用前に医師・薬剤師に相談 |
脱水予防 | こまめな水分補給(医師の指示範囲内で) |
感染症予防 | 手洗い、うがい、予防接種など |
ストレス管理と十分な睡眠
過度なストレスや睡眠不足は、自律神経のバランスを乱し、血圧の上昇などを介して間接的に腎臓に影響を与える可能性があります。
趣味やリラックスできる時間を持つ、十分な睡眠時間を確保するなど、心身の健康を保つことも大切です。
よくある質問
eGFRの低下や腎機能について、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- eGFRが低いと診断されたら、もう腎臓は治らないの?
-
一度障害を受けた腎臓の組織が完全に元通りになることは難しい場合が多いですが、原因や進行度によっては、進行を遅らせたり、現状を維持したりすることは十分に可能です。
例えば、薬剤性が原因で一時的にeGFRが低下した場合は、原因薬剤の中止により改善することもあります。大切なのは、早期に原因を特定し、適切な治療と生活習慣の改善に取り組むことです。
- 運動はしても良いの?
-
適度な運動は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の改善に繋がり、腎機能保護にも役立つと考えられています。ただし、腎機能の程度や合併症によっては、運動の種類や強度を制限する必要がある場合もあります。
自己判断せず、必ず医師に相談し、メディカルチェックを受けた上で、適切な運動プログラムについて指導を受けるようにしてください。
- 食事制限はいつから始めるべき?
-
食事制限の開始時期や内容は、eGFRの値だけでなく、尿タンパクの有無、原因疾患、年齢、全身状態などを総合的に評価して医師が判断します。
eGFRが軽度低下(ステージG2など)の段階では、厳格な食事制限は必要ない場合もありますが、塩分控えめなど、一般的な健康に良い食生活を心がけることは重要です。
eGFRの低下を指摘されたら、まずは医師や管理栄養士に相談し、自分に合った食事療法についてアドバイスを受けましょう。
質問 簡単な回答 腎臓は治らない? 完全な回復は難しいが、進行抑制は可能 運動は? 医師に相談の上、適度な運動は推奨 食事制限はいつから? 医師・管理栄養士の指示に従う 遺伝は関係する? 多発性のう胞腎など一部遺伝性の病気あり - 遺伝は関係するの?
-
腎臓病の中には、遺伝が関与するものもあります。代表的なものに「多発性のう胞腎」があります。
また、糖尿病や高血圧といった生活習慣病も家族歴(血縁者に同じ病気の人がいること)が発症に関わることがあり、これらが原因で腎機能が低下することもあります。
家族に腎臓病の方がいる場合は、定期的な腎機能検査を受けるなど、より早期からの注意が望ましいでしょう。気になる場合は医師に相談してください。
この記事を読んで、eGFRや腎機能について少しでも理解を深めていただけたでしょうか。eGFRが低いと指摘された方は、不安を感じるかもしれませんが、まずは落ち着いて医療機関を受診し、医師に相談することが大切です。
適切な検査と診断を受け、医師の指導のもとで必要な対策を講じることで、腎機能の悪化を防ぎ、より良い生活を送ることが期待できます。
この記事が、皆さまの健康管理の一助となれば幸いです。ご自身の状態を正確に把握し、最寄りの医療機関にご相談ください。
以上
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