長期留置カテーテルによる血液透析|種類・管理方法と感染対策

長期留置カテーテルによる血液透析|種類・管理方法と感染対策

血液透析治療には、体から血液を取り出し、浄化して体内に戻すための経路(バスキュラーアクセス)が必要です。

長期留置カテーテルは、そのバスキュラーアクセスの一つであり、特に血管の状態などからシャントの作製が難しい方や、緊急で透析を開始する必要がある場合に用いられます。

この記事では、長期留置カテーテルの種類、日々の管理方法、そして最も重要な感染対策について、詳しく解説します。安心して治療に取り組むための一助となれば幸いです。

目次

長期留置カテーテルとは

長期留置カテーテルは、血液透析を行う際に、首や胸、脚の付け根などの太い静脈に挿入し、長期間留置して使用する特殊なチューブです。このカテーテルを通じて、血液を体外に取り出し、透析器で浄化した後に体内に戻します。

安定した透析治療を継続するために、正しい知識と管理が求められます。

血液透析におけるカテーテルの役割

血液透析では、1分間に約200mlという大量の血液を体外循環させる必要があります。長期留置カテーテルは、この血液量を確保するための「命綱」とも言える役割を担います。

カテーテルには通常、血液を取り出すための「脱血用」ルーメン(内腔)と、浄化した血液を体内に戻すための「返血用」ルーメンの2つがあります。これにより、効率的で安定した血液透析治療を可能にします。

長期留置カテーテルが必要となるケース

長期留置カテーテルは、主に以下のような場合に選択されます。まず、自己血管内シャント(自己の動脈と静脈をつなぎ合わせて作成するアクセス)の作製が困難な方です。

血管が細い、あるいは血管の状態が良くないためにシャントが長持ちしない場合などです。また、シャントは作製してから実際に使用できるまで数週間から数ヶ月かかるため、その間の透析治療が必要な場合にも用いられます。

さらに、心臓機能が低下している方や、全身状態が不安定でシャント手術のリスクが高いと判断される場合も、長期留置カテーテルが適応となることがあります。

長期留置カテーテル選択の主な理由

理由説明
シャント作製困難血管が細い、過去の手術歴など
シャント成熟までの期間作製後、使用可能になるまでのつなぎ
全身状態シャント手術のリスクが高い場合

シャントとの違いとそれぞれの特徴

血液透析のバスキュラーアクセスには、主に自己血管内シャント、人工血管内シャント、そして長期留置カテーテルの3種類があります。シャントは、手術で自己の血管や人工血管を用いて作成し、皮膚の上から針を刺して血液をやり取りします。

一方、長期留置カテーテルは、カテーテル本体が直接血管内に留置され、体外に出ている接続部から透析回路に接続します。シャントは感染のリスクが比較的低いとされますが、作製と成熟に時間が必要です。

カテーテルはすぐに使用開始できますが、感染管理がより重要になります。

長期留置カテーテルのメリットとデメリット

長期留置カテーテルの最大のメリットは、手術後すぐに透析治療を開始できる点です。また、シャントのように穿刺の痛みがありません。しかし、デメリットも存在します。最も注意すべきはカテーテル関連血流感染症(CRBSI)のリスクです。

カテーテルが体内に直接挿入されているため、細菌が侵入しやすく、厳重な管理が必要です。また、カテーテルが閉塞したり、血栓が形成されたりする可能性もあります。入浴に制限があるなど、日常生活での注意点もいくつかあります。

メリットとデメリットの比較

項目メリットデメリット
使用開始時期即時使用可能
穿刺不要(痛みなし)
感染リスク比較的高い(特にCRBSI)
閉塞・血栓リスクあり
日常生活入浴制限など一部あり

長期留置カテーテルの種類と特徴

長期留置カテーテルには、素材や形状、留置する部位によっていくつかの種類があります。患者さんの状態や血管の状況、予測される使用期間などを考慮して、適切なカテーテルを選択します。

カテーテルの素材による分類

カテーテルの素材は、生体適合性や柔軟性、耐久性に優れたものが使用されます。主にシリコーン製やポリウレタン製のカテーテルが用いられます。シリコーン製は柔軟性に富み、長期使用に適しているとされます。

一方、ポリウレタン製は挿入時には硬さがありますが、体温で軟化する性質を持ち、血栓が付着しにくいとされるものもあります。それぞれの素材には特徴があり、医師が総合的に判断して選択します。

カテーテルの先端形状と機能

カテーテルの先端形状は、血流を効率よく確保し、血管壁への刺激を少なくするために工夫されています。スプリット型(先端が二股に分かれている)、ステップ型(脱血口と返血口が段違いになっている)、対称型など、様々なデザインがあります。

これらの形状の違いは、再循環(浄化された血液が再び脱血されること)を減らし、透析効率を高めることにも寄与します。また、カテーテル内部には、感染予防のために抗菌薬がコーティングされたものや、血栓予防のためにヘパリンがコーティングされたものもあります。

留置部位による分類(例 内頸静脈 大腿静脈)

長期留置カテーテルを挿入する血管は、主に首の付け根にある内頸静脈、鎖骨の下にある鎖骨下静脈、脚の付け根にある大腿静脈などが選択されます。内頸静脈は、比較的太く、カテーテルの長期留置に適しているとされています。

鎖骨下静脈は、カテーテルが屈曲しやすく、血管狭窄のリスクがあるため、第一選択とはなりにくい傾向があります。

大腿静脈は、緊急時や上半身の血管が使用できない場合に選択されることがありますが、感染のリスクが他の部位より高いとされるため、管理には一層の注意が必要です。

主なカテーテル留置部位

留置部位特徴注意点
内頸静脈(首)太く、比較的長期留置に適す美容的な問題、可動制限の可能性
鎖骨下静脈(鎖骨下)カテーテル屈曲、血管狭窄リスク第一選択となりにくい
大腿静脈(脚の付け根)緊急時、上半身血管使用不可時感染リスクが比較的高く、衛生管理が重要

各種類のカテーテルの選択基準

どの種類のカテーテルを選択するかは、患者さんの血管の状態(太さ、走行)、予測される使用期間、全身状態、さらには生活スタイルなどを総合的に評価して決定します。

例えば、長期間の使用が見込まれる場合は、耐久性や生体適合性の高い素材のカテーテルが選ばれる傾向にあります。また、感染のリスクが高いと考えられる患者さんには、抗菌コーティングされたカテーテルが検討されることもあります。

医師や医療スタッフと十分に話し合い、納得のいくカテーテル選択をすることが大切です。

長期留置カテーテルの挿入手術と術後管理

長期留置カテーテルの使用を開始するためには、まずカテーテルを血管内に挿入する手術が必要です。手術は局所麻酔下で行われることが一般的で、比較的短時間で終了します。

術後の管理も、カテーテルの安定した使用と合併症予防のために重要です。

カテーテル挿入手術の概要

カテーテル挿入手術は、清潔な手術室や処置室で行われます。まず、超音波(エコー)装置を用いてカテーテルを挿入する血管の位置や状態を確認します。皮膚を消毒し、局所麻酔を行った後、針で血管を穿刺します。

ガイドワイヤーという細い針金を血管内に挿入し、それに沿ってカテーテルを目的の位置まで進めます。カテーテルの先端が適切な位置にあることをX線透視などで確認した後、カテーテルを皮膚に固定し、出口部を消毒・保護して終了です。

多くのカテーテルには、皮下トンネルを作成し、カフと呼ばれる部分を皮下に埋め込むことで、カテーテルの安定性を高め、感染のリスクを低減する工夫がされています。

手術前の準備と注意点

手術前には、医師から手術の内容やリスク、合併症について十分な説明を受けます。

血液をサラサラにする薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を服用している場合は、手術前に一時的に中止または変更することがありますので、必ず医師に申告してください。アレルギー歴や既往歴も重要な情報です。手術当日は、指定された時間まで飲食を控えるなどの指示がある場合があります。

不安な点や疑問点は、遠慮なく医師や看護師に質問しましょう。

術後の経過と観察項目

手術直後は、挿入部位の痛みや出血、腫れなどが起こることがあります。これらは通常、数日で軽快します。

医療スタッフは、カテーテル挿入部の状態(出血、腫れ、感染兆候の有無)、カテーテルの固定状態、血流の確保状況などを注意深く観察します。痛みがある場合は、鎮痛薬を使用することもあります。

術後は、カテーテルが安定するまで、急激な体動を避けるよう指示されることがあります。

術後の主な観察ポイント

  • 挿入部の出血・腫れ・熱感・発赤・疼痛の有無
  • カテーテルの固定状態
  • カテーテルからの血液の引きと返りのスムーズさ
  • 全身状態(発熱、悪寒など)

退院後の初期管理

退院後、カテーテル挿入部が完全に治癒するまでは、特に慎重な管理が必要です。医師や看護師から指導された通りに、出口部の消毒や保護材の交換を行います。出血や感染の兆候が見られた場合は、速やかに医療機関に連絡することが重要です。

また、カテーテルが引っ張られたり、ねじれたりしないように、日常生活でも注意が必要です。透析施設での定期的なチェックを受け、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

日常生活におけるカテーテル管理のポイント

長期留置カテーテルを安全に長期間使用するためには、日々の正しい管理が欠かせません。特にカテーテル出口部の清潔保持と、日常生活での取り扱いには注意が必要です。

カテーテル出口部の清潔保持

カテーテル出口部は、細菌が体内に侵入する入り口となりやすいため、常に清潔に保つことが最も重要です。通常、透析施設で定期的に、あるいは汚染時に消毒と保護ドレッシングの交換を行います。

自宅での処置が必要な場合は、医療スタッフから正しい手順の指導を受け、厳密に実行する必要があります。消毒液の種類やドレッシング材の種類も、医師の指示に従います。

出口部周囲の皮膚に赤み、腫れ、痛み、膿などの異常がないか、毎日観察する習慣をつけましょう。

出口部ケアの基本

項目ポイント
観察毎日、発赤・腫脹・疼痛・滲出液の有無を確認
消毒医療スタッフの指示に従った消毒薬と方法で実施
保護清潔なドレッシング材で確実に保護

入浴時の注意点と保護方法

カテーテル挿入中の入浴は、感染予防の観点から慎重に行う必要があります。原則として、カテーテル出口部やカテーテル本体を濡らさないようにします。シャワー浴が推奨されることが多いです。

入浴前には、カテーテル出口部を防水性のフィルムなどで確実に保護します。保護方法については、医療スタッフから具体的な指導を受けましょう。湯船に浸かることは、感染のリスクを高める可能性があるため、医師の許可が必要です。

万が一、出口部が濡れてしまった場合は、速やかに乾燥させ、消毒とドレッシング交換を行う必要があります。

衣類や寝具との接触に関する注意

カテーテルが衣類や寝具に引っかかったり、圧迫されたりしないように注意が必要です。ゆったりとした前開きの衣服を選ぶと、カテーテルの観察や着替えがしやすくなります。就寝時は、カテーテルを圧迫しないような体勢を心がけ、寝返りなどで無意識に引っ張らないように工夫しましょう。

カテーテル固定用のベルトやテープを使用することも有効です。カテーテルや接続部が汚染されないよう、清潔な衣類や寝具を使用することも大切です。

日常活動の範囲と制限

長期留置カテーテルを使用していても、多くの日常活動は可能です。しかし、カテーテルに負担がかかるような激しい運動や、カテーテル挿入部を汚染する可能性のある活動(例:水泳、公衆浴場での入浴)は制限されることが一般的です。

どの程度の活動が可能かは、個々の状態やカテーテルの種類、留置部位によって異なりますので、必ず主治医に相談し、指示に従ってください。無理のない範囲で活動し、QOL(生活の質)を維持することが大切です。

カテーテル関連感染症の予防と対策

長期留置カテーテル使用における最大の課題の一つが、カテーテル関連感染症です。これを予防し、万が一発生した場合に早期に対処することが、安全な透析治療の継続には重要です。

感染症の主な原因と症状

カテーテル関連感染症の主な原因は、細菌がカテーテル出口部から侵入する、あるいはカテーテルの接続部や内腔で繁殖することです。主な感染症として、カテーテル出口部感染とカテーテル関連血流感染症(CRBSI、敗血症)があります。

出口部感染の症状は、出口部の発赤、腫れ、痛み、熱感、膿などです。CRBSIはより重篤で、発熱、悪寒、戦慄、倦怠感などの全身症状が現れます。早期発見と早期治療が非常に重要です。

感染症のサイン

感染の種類主な症状
出口部感染出口部の発赤、腫れ、痛み、熱感、膿
カテーテル関連血流感染症 (CRBSI)発熱、悪寒、戦慄、倦怠感、血圧低下

出口部感染の予防策

出口部感染を予防するためには、日々のケアが最も大切です。医療スタッフの指示に従い、出口部を清潔に保ち、正しく消毒・保護します。手洗いや手指消毒を徹底し、清潔な手でカテーテル周囲に触れるようにします。

ドレッシング材は、汚れたり濡れたりしたら速やかに交換します。また、カテーテルを不必要に触ったり、引っ張ったりしないように注意します。出口部の状態を毎日観察し、わずかな変化も見逃さないようにしましょう。

カテーテル敗血症の予防策

カテーテル敗血症(CRBSI)は、カテーテル内腔の細菌汚染が原因となることが多いため、透析治療時のカテーテル接続部の取り扱いが重要です。透析施設の医療スタッフは、厳格な無菌操作でカテーテルと透析回路を接続・離脱します。

患者さん自身も、カテーテル接続部やキャップなどを清潔に保つ意識を持つことが大切です。また、透析日以外でも、原因不明の発熱や体調不良があった場合は、CRBSIの可能性も考えて速やかに医療機関に連絡する必要があります。

感染予防のための日常の心がけ

  • 手洗いの徹底(石鹸と流水、またはアルコール手指消毒剤)
  • カテーテル出口部の毎日の観察
  • 指示された通りの出口部ケアの実施
  • カテーテルや接続部への不必要な接触を避ける

感染兆候発見時の早期対応

カテーテル出口部に赤み、腫れ、痛み、熱感、膿などの異常が見られた場合や、原因不明の発熱、悪寒、倦怠感などの全身症状が現れた場合は、自己判断せずに直ちに医療機関に連絡し、指示を仰いでください。

早期に適切な治療(抗菌薬投与など)を開始することで、重症化を防ぐことができます。感染が進行すると、カテーテルの抜去が必要になることもあります。日頃から、緊急時の連絡先や対応方法を確認しておくことが大切です。

定期的なカテーテルメンテナンスと交換

長期留置カテーテルを長期間安全に使用するためには、定期的なメンテナンスと、必要に応じたカテーテルの交換が重要です。これにより、カテーテルの機能不全や合併症を未然に防ぐことを目指します。

定期検査の重要性と内容

透析施設では、定期的にカテーテルの状態をチェックします。

これには、カテーテル出口部の視診、カテーテルからの血液の引きと返りの状態(血流量)の確認、必要に応じて超音波検査やX線検査によるカテーテルの位置や血栓の有無の確認などが含まれます。

これらの検査を通じて、カテーテルの機能が十分に保たれているか、感染や閉塞の兆候がないかを評価します。定期的な検査は、問題の早期発見と対処につながります。

カテーテルの閉塞予防と対処法

カテーテルは、血液が凝固して血栓ができたり、フィブリンという膜がカテーテルの先端や内腔に付着したりすることで閉塞することがあります。

閉塞を予防するため、透析終了時にはヘパリンやクエン酸などの抗凝固薬をカテーテル内に充填(ロック)します。それでも血流が悪くなった場合は、血栓溶解薬をカテーテル内に注入して閉塞を解除する処置を行うことがあります。

頻繁に閉塞する場合は、カテーテルの位置異常や狭窄なども考慮し、精密検査を行うことがあります。

カテーテル閉塞の主な原因と予防

原因予防・対処法
血栓形成抗凝固薬によるカテーテルロック、適切な水分摂取
フィブリンシース形成定期的なフラッシュ、必要時血栓溶解療法
カテーテルの位置異常・キンク体位の工夫、X線等での確認、再固定や交換

カテーテル交換の目安と手順

長期留置カテーテルには明確な交換時期が定められているわけではありませんが、以下のような場合には交換を検討します。まず、解決困難なカテーテル関連感染症が起きた場合です。

また、カテーテルの閉塞が頻繁に起こり、血栓溶解療法などでも改善しない場合や、カテーテル自体が破損した場合も交換が必要です。

交換は、通常、ガイドワイヤーを用いて既存の経路を利用して行われるため、初回挿入時よりも身体的負担は少ないことが多いですが、状態によっては新たな部位に挿入することもあります。

自己管理と医療スタッフとの連携

長期留置カテーテルの管理は、患者さん自身による日々の注意深い観察とケア、そして医療スタッフとの密な連携が両輪となって初めてうまくいきます。

少しでも異常を感じたり、不安なことがあったりした場合は、遠慮なく医師や看護師、臨床工学技士に相談してください。

定期的な受診と検査を欠かさず、指導された管理方法を遵守することが、カテーテルを長持ちさせ、合併症を防ぐための鍵となります。

長期留置カテーテル使用者のための生活上の工夫

長期留置カテーテルとともに生活を送る上で、いくつかの工夫をすることで、より快適に、そして安心して過ごすことができます。精神的なサポートや情報収集も大切です。

精神的なサポートと情報収集

長期にわたる透析治療やカテーテル管理は、時に精神的な負担となることもあります。不安や悩みを一人で抱え込まず、家族や医療スタッフ、同じようにカテーテルを使用している患者仲間などに相談することも一つの方法です。

信頼できる情報源から、カテーテル管理に関する知識を積極的に得ることも、不安の軽減につながります。患者会などのサポートグループに参加することも有益な場合があります。

旅行や外出時の準備と注意点

長期留置カテーテルを使用していても、体調が安定していれば旅行や外出も可能です。事前に主治医に相談し、許可を得ることが大切です。旅行先で透析を受ける場合は、事前に受け入れ施設との連携が必要になります。

外出時には、カテーテル出口部の保護を確実に行い、万が一のトラブルに備えて、緊急連絡先や予備の保護材、消毒用品などを携帯すると安心です。長時間の移動でカテーテルが圧迫されたり、引っ張られたりしないように注意しましょう。

旅行・外出時の携帯品リスト例

  • 緊急連絡先(主治医、透析施設)
  • 予備のドレッシング材、テープ
  • 消毒用品(指示されたもの)
  • 清潔なガーゼ

栄養管理と水分摂取のポイント

透析治療を受けている方は、食事療法(たんぱく質、塩分、カリウム、リンなどの制限)と水分管理が重要です。これは長期留置カテーテル使用者も同様です。適切な栄養状態を保つことは、感染抵抗力を維持するためにも大切です。

水分摂取量については、透析間の体重増加や血圧などを考慮して、医師や管理栄養士から具体的な指示がありますので、それを守りましょう。

便秘は腹圧を上昇させ、カテーテルに影響を与える可能性もあるため、食物繊維の摂取など便通を整える工夫も大切です。

緊急時の連絡体制と準備

カテーテルからの大量出血、カテーテルの破損や自己抜去、急な高熱や体調不良など、緊急事態が発生する可能性もゼロではありません。

そのような場合に備えて、事前に緊急連絡先(夜間や休日も含む)と、どのような状況で連絡すべきかを医療スタッフと確認しておくことが非常に重要です。家族にも緊急時の対応について情報を共有しておきましょう。

また、保険証やお薬手帳、カテーテルの種類がわかる情報などを常に携帯しておくと、万が一の際に役立ちます。

緊急時対応の確認事項

確認項目具体的な内容
緊急連絡先病院代表電話、透析室直通、夜間・休日連絡先
連絡する状況大量出血、カテーテル破損、高熱、意識障害など
持参品保険証、お薬手帳、カテーテル情報カードなど

よくある質問 (FAQ)

長期留置カテーテルに関して、患者さんやご家族からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。ここに記載されていないことでも、疑問や不安があれば遠慮なく医療スタッフにご相談ください。

カテーテル留置中の痛みはありますか

カテーテル挿入手術直後は、挿入部位に多少の痛みや違和感を感じることがありますが、通常は数日で軽快し、鎮痛薬でコントロールできます。カテーテルが安定して留置された後は、日常生活で常に痛みを感じることは稀です。ただし、カテーテル出口部に感染が起きると、痛みや腫れが出ることがあります。

また、体動時や特定の姿勢でカテーテルが引っ張られるような感覚や軽い痛みを感じることがあるかもしれません。痛みが続く場合や、急に強い痛みが出た場合は、我慢せずに医療スタッフに相談してください。

カテーテルが抜けたりしないか心配です

長期留置カテーテルは、皮膚の下にカフという部分を埋め込み、組織と癒着させることで抜けにくく工夫されています。さらに、体表に出ている部分はテープやドレッシング材でしっかりと固定します。

そのため、通常の日常生活で簡単に抜け落ちることはありません。しかし、カテーテルを強く引っ張ったり、何かに引っ掛けたりすると、抜けたり位置がずれたりする危険性があります。着替えの際や就寝時など、カテーテルに不必要な力がかからないように注意することが大切です。

万が一、カテーテルが抜けかかっている、あるいは抜けてしまった場合は、慌てずに出血部位を清潔なガーゼやタオルで強く圧迫し、直ちに医療機関に連絡してください。

スポーツはできますか

カテーテルを留置している間の運動については、種類や強度によって可否が異なります。

ウォーキングなどの軽い運動は、体調が安定していれば問題ないことが多いですが、カテーテル挿入部に直接衝撃が加わるような激しいスポーツ(例:格闘技、接触の多い球技)や、カテーテルを汚染するリスクの高い水中での運動(水泳など)は避けるべきです。

どのような運動であれば安全に行えるか、どの程度までなら可能かについては、必ず主治医に確認し、その指示に従ってください。無理のない範囲で体を動かすことは、体力維持や気分転換にもつながります。

運動に関する一般的な注意点

推奨される運動(医師確認の上)避けるべき運動の例
ウォーキング、軽い体操水泳、格闘技、激しい接触プレーのあるスポーツ
ストレッチカテーテル挿入部に負担がかかる筋力トレーニング
カテーテル交換は頻繁に必要ですか

長期留置カテーテルは、問題なく機能し、感染などの合併症がなければ、長期間(数ヶ月から数年)使用することが可能です。そのため、「定期的に必ず交換しなければならない」というものではありません。

交換が必要になるのは、主にカテーテル関連感染症がコントロールできない場合、カテーテルの閉塞が繰り返される場合、あるいはカテーテル自体が破損してしまった場合などです。カテーテルの状態は定期的に医療スタッフがチェックし、交換の必要性はその都度判断されます。

日頃から適切な自己管理を行い、カテーテルを大切に扱うことが、交換の頻度を減らすことにもつながります。

以上

透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )

血液透析

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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