腎機能を知るための採血|主要な検査項目(クレアチニン等)と見方

腎機能を知るための採血|主要な検査項目(クレアチニン等)と見方

健康診断や病院での診察で「腎機能」について指摘され、不安に感じていませんか。腎臓は自覚症状が出にくい臓器のため、定期的な検査による状態の把握がとても重要です。

この記事では、腎機能の状態を調べるために行う「採血」に焦点を当てます。

なぜ採血で腎臓の状態がわかるのか、主要な検査項目であるクレアチニンやeGFRなどがどのような意味を持つのか、そして検査結果をどう解釈すればよいのかを、できるだけ分かりやすく解説します。

目次

腎臓の働きと腎機能低下のサイン

私たちの体の中で、腎臓は生命維持に欠かせない多くの役割を担っています。しかし、その機能は静かに低下していくことがあり、早期に気づくことが難しい場合も少なくありません。

まずは、腎臓の基本的な働きと、機能が低下したときに見られるサインについて理解を深めましょう。

体の浄水場「腎臓」の重要な役割

腎臓は、腰のあたりに左右一つずつある、そら豆のような形をした臓器です。その最も重要な働きは、血液をろ過して老廃物や余分な水分、塩分を体外に排出することです。

心臓から送り出された血液の約5分の1が常に腎臓を通過しており、ここで血液はきれいに浄化され、不要なものが尿として作られます。この働きのおかげで、体内の環境は常に一定に保たれています。

また、腎臓は単に尿を作るだけでなく、血圧を調整するホルモンや、赤血球の生成を促すホルモンを分泌したり、ビタミンDを活性化させて骨を丈夫に保ったりするなど、多彩な機能を持っています。

腎機能が低下するとどうなるか

腎臓の働きが悪くなることを「腎機能低下」と呼びます。この状態になると、老廃物や毒素が体内に蓄積し、さまざまな不調を引き起こします。

例えば、余分な水分を排出できなくなることで「むくみ」が生じたり、血圧のコントロールがうまくいかなくなり高血圧になったりします。

さらに進行すると、貧血や骨がもろくなるなどの症状も現れます。腎機能の低下が深刻なレベルになると、自分の腎臓だけでは生命を維持できなくなり、透析治療や腎移植が必要になることもあります。

だからこそ、機能が大きく損なわれる前に状態を把握することが大切なのです。

気づきにくい初期症状と注意すべきサイン

腎機能低下の難しい点は、初期段階ではほとんど自覚症状がないことです。

夜間の頻尿、尿の泡立ち、貧血による動悸や息切れ、足のむくみなどがサインとして挙げられますが、これらは他の病気でも見られる症状のため、腎臓の問題とは結びつきにくいかもしれません。

症状がはっきりと現れたときには、すでに腎機能がかなり低下しているケースも珍しくありません。「なんとなく体調が悪い」「疲れやすい」といった漠然とした不調が、実は腎臓からのSOSである可能性も考慮に入れる必要があります。

  • 夜中に何度もトイレに起きる
  • 尿に細かい泡が立ち、なかなか消えない
  • 足や顔がむくむ
  • 貧血を指摘された

定期的な検査がなぜ大切なのか

自覚症状に頼っていては発見が遅れがちな腎臓の病気だからこそ、定期的な検査が非常に重要です。特に、健康診断などで行う採血や尿検査は、腎機能の状態を客観的な数値で評価する貴重な機会となります。

症状がなくても、検査結果のわずかな異常から腎機能低下の初期段階を発見できる可能性があります。早期に発見できれば、生活習慣の改善や適切な治療によって、機能低下の進行を遅らせたり、他の合併症を防いだりすることにつながります。

自分の体を守るために、検査の機会を大切にしましょう。

腎機能検査の中心となる採血

腎臓の状態を評価するために、採血は非常に有効な手段です。血液中の特定の物質の濃度を測定することで、腎臓が老廃物をどの程度効率よく排出できているかを知ることができます。

ここでは、採血で腎機能がわかる理由や、検査を受ける際の注意点について解説します。

なぜ採血で腎機能がわかるのか

腎臓は血液中の老廃物をろ過するフィルターの役割を担っています。もし腎臓のフィルター機能が低下すると、本来であれば尿として排出されるはずの老廃物が血液中に溜まってしまいます。

そのため、血液検査でこれらの老廃物の血中濃度を測定すれば、腎臓の働き具合を間接的に評価できるのです。

代表的な検査項目として、筋肉で作られる老廃物である「クレアチニン」や、タンパク質が分解されてできる「尿素窒素(BUN)」などがあります。これらの数値が高い場合、腎臓のろ過機能が低下している可能性を示唆します。

採血前に知っておきたいこと(食事・運動など)

腎機能検査の採血は、多くの場合、特別な食事制限は必要ありません。ただし、検査項目によっては直前の食事内容が影響することがあります。例えば、尿素窒素(BUN)はタンパク質の摂取量によって変動する可能性があります。

また、激しい運動の直後にはクレアチニンの値が一時的に上昇することがあります。検査の正確性を高めるため、採血前日は過度な運動や暴飲暴食は避け、普段通りの生活を心がけることが望ましいです。

もし検査に関して医師から特別な指示があった場合は、それに従ってください。

採血以外に行う腎機能検査

腎機能の評価は、採血だけで完結するわけではありません。

尿検査も同様に重要な検査です。尿検査では、尿中にタンパク質や血液が漏れ出ていないかを調べます。これらは健康な腎臓ではほとんど見られないものであり、尿中に現れる場合は腎臓に何らかの障害があるサインと考えます。

特に「尿タンパク」は、腎機能低下の早期発見において非常に重要な指標です。このほか、必要に応じて腎臓の形や大きさを調べる超音波(エコー)検査や、より詳細な評価のための画像検査を行うこともあります。

採血と尿検査は、いわば車の両輪のような関係で、両方の結果を合わせて総合的に腎機能を判断します。

検査結果を受け取るまでの流れ

健康診断や医療機関で採血を行った後、血液検体は検査室に送られ、専門の機器で分析します。結果が出るまでの時間は検査施設によって異なりますが、通常は数日から1週間程度です。

結果は、後日改めて医療機関を訪れて医師から説明を受けるか、健康診断の場合は郵送などで通知されます。結果を受け取ったら、各項目の数値を基準値と照らし合わせ、自分の体の状態を確認することが大切です。

もし異常を指摘された場合は、必ず専門の医療機関を受診するようにしましょう。

主要な検査項目① 血清クレアチニン(Cr)

採血による腎機能検査において、最も基本的で重要な項目の一つが「血清クレアチニン(Cr)」です。この数値は、腎臓のろ過能力を評価するための鍵となります。

クレアチニンが何を意味し、どのように解釈すればよいのかを詳しく見ていきましょう。

クレアチニンとは何か

クレアチニンは、私たちが筋肉を動かすためのエネルギー源として使われる「クレアチン」という物質が分解された後にできる老廃物です。

クレアチニンは体内で常に一定の量が作られ、そのほとんどが腎臓の糸球体というフィルターでろ過されて尿中に排出されます。したがって、腎臓の機能が正常であれば、クレアチニンは血液中に溜まることなくスムーズに体外へ排出されます。

しかし、腎機能が低下すると、この排出能力が落ちてしまうため、血液中のクレアチニン濃度が上昇します。この性質を利用して、血清クレアチニン値を腎機能の指標として用いるのです。

基準値と性別・筋肉量による違い

クレアチニンの値は、筋肉の量に比例して作られるため、その基準値は性別や年齢、体格によって異なります。一般的に、筋肉量が多い男性の方が女性よりも高い値を示す傾向があります。

また、高齢になると筋肉量が減少するため、クレアチニンの産生量も減ります。このため、高齢者ではクレアチニンの値が基準範囲内であっても、実は腎機能が低下している「隠れ腎臓病」の場合があり注意が必要です。

検査結果を見るときは、単に基準値の範囲内かどうかだけでなく、ご自身の年齢や性別を考慮して解釈することが重要です。

クレアチニンの基準値目安

項目性別基準値(mg/dL)
血清クレアチニン(Cr)男性0.61 ~ 1.04
女性0.47 ~ 0.79

※基準値は検査施設により多少異なることがあります。

クレアチニン値が高い場合に考えられること

血清クレアチニン値が基準値を超えて高い場合、第一に考えられるのは腎機能の低下です。慢性腎臓病(CKD)、急性腎障害、腎炎など、さまざまな腎臓の病気が原因となりえます。

数値が高いほど、腎臓のろ過能力が低下していることを示唆します。ただし、前述の通りクレアチニンは筋肉量の影響を受けるため、ボディビルダーのように極端に筋肉量が多い人は、腎機能に問題がなくても高い値を示すことがあります。

逆に、長期の寝たきりなどで筋肉量が著しく減少している場合は、腎機能が低下していてもクレアチニン値がそれほど高くならないこともあり、解釈には注意が必要です。

数値の変動に影響を与える要因

クレアチニンの値は、腎機能や筋肉量の他にもいくつかの要因で変動する可能性があります。例えば、脱水状態になると血液が濃縮されるため、一時的にクレアチニン値が上昇することがあります。

また、一部の薬剤がクレアチニンの排出に影響を与え、数値を変動させることもあります。検査結果の解釈にあたっては、これらの要因も考慮に入れる必要があります。

一つの時点の数値だけで判断するのではなく、過去の検査結果と比較したり、定期的に検査を受けて数値の推移を追ったりすることが、より正確な状態把握につながります。

主要な検査項目② eGFR(推算糸球体濾過量)

血清クレアチニン値は腎機能の重要な指標ですが、年齢や性別、筋肉量の影響を受けるという弱点があります。その弱点を補い、より正確に腎臓の働き具合を評価するために用いられるのが「eGFR(推算糸球体濾過量)」です。

eGFRが示す腎臓の「働き具合」

eGFRは「estimated Glomerular Filtration Rate」の略で、日本語では「推算糸球体濾過量」といいます。

これは、腎臓の中にある糸球体が1分間にどれくらいの血液をろ過できるかを示した値で、腎臓の働きそのものをパーセンテージ(%)に近い形で評価する指標です。

具体的には、血清クレアチニン値、年齢、性別の3つの情報から計算式を用いて算出します。健康な人のeGFRは100 mL/分/1.73m² 前後であり、この数値が低いほど腎臓の働きが悪いことを意味します。

eGFRを用いることで、筋肉量の影響を受けやすいクレアチニン値だけでは見逃されがちな腎機能の低下を、より早期に、より正確に捉えることが可能になります。

年齢と性別を考慮した評価の重要性

eGFRの計算式には年齢と性別が含まれています。これは、腎機能が加齢とともに自然に低下していく傾向があることや、男女間の筋肉量の差を補正するためです。

例えば、同じクレアチニン値「1.0 mg/dL」であっても、20歳男性と70歳女性ではeGFRの値は大きく異なります。高齢の女性では、クレアチニン値が基準範囲内でもeGFRが60を下回り、腎機能低下と判断されることがあります。

このように、年齢や性別といった個人の背景を考慮して評価することで、一人ひとりの状態に合わせた、より精度の高い腎機能評価が実現します。

eGFRによる慢性腎臓病(CKD)のステージ分類

eGFRの数値は、慢性腎臓病(CKD)の進行度を判断するためのステージ分類に用いられます。CKDは、腎臓の障害(尿タンパクなど)か、eGFRが60 mL/分/1.73m²未満の状態が3ヶ月以上続くことで診断されます。

eGFRの値によって、ステージG1(正常または高値)からG5(末期腎不全)までの5段階に分けられ、ステージが進むほど腎機能が低下していることを示します。

この分類により、現在の腎臓の状態を客観的に把握し、今後の治療方針や生活上の注意点を考える上での重要な目安となります。

CKD重症度分類(eGFR区分)

ステージeGFR (mL/分/1.73m²)腎機能の状態
G190以上正常または高値
G260~89軽度低下
G3a45~59軽度~中等度低下
G3b30~44中等度~高度低下
G415~29高度低下
G515未満末期腎不全(ESKD)

eGFRの数値から生活で意識すべきこと

自分のeGFRの数値を知ることは、腎臓を守るための生活習慣を見直す良いきっかけになります。特にeGFRが60未満(ステージG3a以降)と診断された場合は、腎機能低下の進行を防ぐための対策が重要です。

具体的には、塩分を控えた食事を心がける、血圧を適切に管理する、医師の指示に従って適切な薬を服用する、などが挙げられます。また、市販の痛み止めの中には腎臓に負担をかけるものもあるため、薬を使用する際は医師や薬剤師に相談することが大切です。

eGFRの数値を定期的に確認し、自分のステージに合った対策を継続していきましょう。

  • 塩分の摂取を控える
  • 血圧を管理する
  • 適切な水分摂取
  • 薬の使用に注意する

主要な検査項目③ 尿素窒素(BUN)

クレアチニンと並んで、腎機能の評価に用いられることが多い項目が「尿素窒素(BUN)」です。この項目は、体内のタンパク質代謝の状態を反映しており、腎機能だけでなく全身の状態を把握する手がかりにもなります。

尿素窒素(BUN)とは何か

尿素窒素(BUN:Blood Urea Nitrogen)は、食事で摂取したタンパク質や体内のタンパク質が分解される過程で生成される「尿素」に含まれる窒素の量を測定したものです。

尿素は肝臓で作られた後、血液によって腎臓に運ばれ、クレアチニンと同様に糸球体でろ過されて尿中に排出されます。そのため、腎機能が低下してろ過能力が落ちると、尿素を十分に排出できなくなり、血液中の尿素窒素の値が高くなります。

このように、BUNもクレアチニンと同様に、腎臓の排出能力を示す指標として利用します。

基準値とクレアチニンとの関係

BUNの基準値も、検査施設によって若干の違いはありますが、一般的には8~20 mg/dL程度とされています。BUNはクレアチニンと合わせて評価することが一般的です。多くの場合、腎機能が低下するとBUNとクレアチニンの両方が上昇します。

しかし、BUNはクレアチニンと異なり、食事や体の状態によって変動しやすいという特徴があります。そのため、BUN単独で腎機能を判断するのではなく、クレアチニンやeGFRと併せて総合的に解釈することが重要です。

尿素窒素(BUN)の基準値目安

項目基準値(mg/dL)
尿素窒素(BUN)8 ~ 20

※基準値は検査施設により多少異なることがあります。

BUN値が高くなる原因(腎機能低下以外も)

BUNの値は、腎機能低下以外にもさまざまな要因で上昇します。例えば、高タンパク食の摂取、消化管での出血、脱水、甲状腺機能亢進症、重度の火傷、ステロイド薬の使用などです。

これらは腎臓自体の問題ではなく、体内で尿素が多く作られたり、血液が濃縮されたりすることによってBUN値が上昇するケースです。

逆に、タンパク質の摂取が極端に少ない場合や、重い肝臓の病気がある場合には、尿素の産生が減るためBUN値が低くなることもあります。このように、BUNは腎機能以外の体の状態も反映する項目といえます。

BUN/クレアチニン比からわかること

BUNとクレアチニンの比率(BUN/Cr比)を見ることで、BUNが上昇している原因を推測する手がかりが得られます。通常、この比率は10~20程度です。

腎機能が低下している場合は、BUNとクレアチニンがともにおおよそ同じ割合で上昇するため、比率は正常範囲内に収まることが多いです。

一方で、消化管出血や脱水など、腎機能低下以外の原因でBUNだけが著しく上昇した場合は、BUN/Cr比が20を超えて高値になります。このように、2つの数値を組み合わせて見ることで、より深く体の状態を分析することができます。

その他の重要な検査項目

腎機能の評価では、クレアチニンやeGFR、BUNだけでなく、他の採血項目も合わせて確認します。

腎臓は電解質のバランス調整や造血ホルモンの産生など、多くの働きを担っているため、機能が低下するとこれらの項目にも異常が現れるからです。

尿酸(UA)と痛風の関係

尿酸(UA)は、プリン体という物質が分解されてできる老廃物で、これも腎臓から排出されます。腎機能が低下すると尿酸の排出が滞り、血液中の尿酸値が高くなる「高尿酸血症」をきたすことがあります。

尿酸値が高い状態が続くと、関節の中で尿酸が結晶化して激しい痛みを引き起こす「痛風」発作の原因となります。また、高尿酸血症は腎機能低下をさらに悪化させる可能性も指摘されており、注意が必要です。

尿酸(UA)の基準値目安

項目性別基準値(mg/dL)
尿酸(UA)男性3.7 ~ 7.0
女性2.5 ~ 7.0

電解質(ナトリウム・カリウム・クロール)のバランス

腎臓は、体内の水分量や電解質(ナトリウム、カリウム、クロールなど)の濃度を一定に保つ重要な役割を持っています。腎機能が著しく低下すると、この調整機能がうまく働かなくなります。

特に、カリウムは排出が滞ると血中濃度が上昇しやすく、高カリウム血症になると不整脈など心臓に重篤な影響を及ぼすことがあるため厳重な管理が必要です。ナトリウムやクロールの異常も、体の不調につながります。

主要な電解質の基準値目安

項目基準値
ナトリウム (Na)136 ~ 145 mEq/L
カリウム (K)3.5 ~ 5.0 mEq/L
クロール (Cl)98 ~ 108 mEq/L

貧血に関連する項目(赤血球・ヘモグロビン)

腎臓は、赤血球を作るように骨髄に指令を出す「エリスロポエチン」というホルモンを産生しています。腎機能が低下すると、このホルモンの分泌が減少し、赤血球が十分に作られなくなって貧血(腎性貧血)になります。

採血では、赤血球の数や、血液の赤色の素であるヘモグロビンの濃度を調べることで貧血の有無を確認します。疲れやすさや動悸、めまいなどの症状は、この腎性貧血が原因である可能性も考えます。

貧血関連項目の基準値目安

項目性別基準値
ヘモグロビン (Hb)男性13.1 ~ 16.3 g/dL
女性12.1 ~ 14.5 g/dL

骨の健康に関わる項目(カルシウム・リン)

腎臓は、ビタミンDを活性化させることで、腸からのカルシウムの吸収を助け、骨を丈夫に保つ働きも担っています。また、血液中のカルシウムとリンのバランスを調整する役割も持っています。

腎機能が低下すると、リンの排出がうまくいかなくなり血中濃度が上昇する一方、カルシウム濃度は低下しがちです。このバランスの乱れは、骨がもろくなるだけでなく、血管の石灰化を進めて心臓や血管の病気を引き起こす原因にもなります。

骨代謝関連項目の基準値目安

項目基準値
カルシウム (Ca)8.6 ~ 10.2 mg/dL
リン (P)2.7 ~ 4.6 mg/dL

検査結果の見方と今後の対応

健康診断などで採血の検査結果を受け取ったとき、その数値をどのように理解し、次へとつなげていけばよいのでしょうか。ここでは、検査結果の解釈の仕方と、異常が見つかった場合の対応について解説します。

検査結果の数値をどう解釈するか

検査結果の報告書には、各項目の測定値とともに「基準値」や「基準範囲」が記載されています。まずは自分の数値がこの範囲内にあるかを確認しましょう。

ただし、前述のようにクレアチニンなどは年齢や性別によって解釈が異なるため、eGFRの値を重視することが大切です。eGFRが60を下回っている場合は、腎機能が健康な人の60%未満に低下していることを意味し、注意が必要です。

また、一つの項目だけでなく、関連する複数の項目を総合的に見ることが重要です。例えば、クレアチニンが高く、貧血やカリウム値の上昇も見られる場合は、腎機能低下が背景にある可能性が高まります。

基準値から外れていた場合にすべきこと

もし検査結果のいずれかの項目で基準値から外れていた場合、まずは冷静に結果を受け止めることが大切です。一度の検査だけでは、体調や直前の食事などの影響で一時的に数値が変動している可能性もあります。

しかし、「そのうち正常に戻るだろう」と自己判断で放置することは避けるべきです。特にeGFRの低下や尿タンパクの陽性を指摘された場合は、腎臓専門の医療機関を早めに受診し、精密検査を受けることを強く推奨します。

再検査や追加の検査を行い、本当に腎臓に問題があるのかを正確に診断する必要があります。

専門医への相談が必要なケース

以下のような場合は、腎臓内科などの専門医への相談を検討しましょう。

  • 健康診断でeGFRの低下(60未満)を指摘された
  • 尿タンパクが陽性(特に2+以上)であった
  • クレアチニン値が年々上昇傾向にある
  • 高血圧や糖尿病があり、腎機能が心配な方

専門医は、採血や尿検査の結果を総合的に判断し、必要に応じて超音波検査などを追加して、腎臓の状態を正確に評価します。

そして、その結果に基づいて、今後の治療方針や生活習慣の改善点について具体的なアドバイスを行います。

腎臓を守るための生活習慣の基本

腎機能の低下を指摘された場合でも、そうでなくても、腎臓を健やかに保つための生活習慣を心がけることは誰にとっても重要です。特に、塩分の過剰摂取は腎臓に負担をかけ、高血圧の原因ともなるため、減塩が基本となります。

また、肥満や運動不足も腎臓病のリスクを高めるため、バランスの取れた食事と適度な運動を習慣づけましょう。喫煙は腎臓の血流を悪化させるため、禁煙も非常に大切です。

これらの健康的な生活習慣は、腎臓だけでなく、全身の健康維持につながります。

よくある質問

腎機能検査に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。

採血はどのくらいの頻度で受けるべきですか?

健康な方であれば、年に一度の健康診断で腎機能を確認するのが一般的です。

ただし、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある方や、家族に腎臓病の人がいる方、過去に腎機能の異常を指摘されたことがある方は、リスクが高いため、医師の指示に従ってより頻繁に(例えば半年に一度など)検査を受けることが望ましいです。

ご自身の健康状態やリスクに応じて、適切な検査頻度を主治医と相談してください。

数値が少し基準値から外れているだけなら大丈夫ですか?

たとえわずかであっても、基準値から外れている場合は注意が必要です。特に腎機能は一度失われると回復が難しい臓器です。

eGFRが正常範囲の下限に近かったり、クレアチニン値が基準値の上限に近かったりする場合は、腎機能低下の初期サインである可能性があります。

「少しだけだから」と軽視せず、まずはその結果を記録しておき、次回の検査で数値がどのように変化するかを確認することが大切です。不安な場合は、医療機関で相談しましょう。

食生活で腎臓のためにできることはありますか?

腎臓を守る食生活の基本は「減塩」です。塩分の摂りすぎは高血圧を招き、腎臓に大きな負担をかけます。加工食品や外食を控え、だしや香辛料をうまく利用して薄味に慣れることが重要です。

また、タンパク質の摂りすぎも腎臓に負担をかけることがあるため、腎機能が低下している場合はタンパク質の摂取量を調整する必要が出てきます。

ただし、自己判断での極端な食事制限は栄養不足を招く危険もあるため、必ず医師や管理栄養士の指導のもとで行ってください。

薬が腎臓に影響することはありますか?

はい、一部の薬は腎臓に負担をかける可能性があります。代表的なものに、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる種類の解熱鎮痛薬があります。

市販の風邪薬や痛み止めにも含まれていることが多いため、長期間にわたって自己判断で使用し続けることは避けるべきです。腎機能が低下している方は特に注意が必要です。

医療機関で薬を処方してもらう際や、市販薬を購入する際には、ご自身の腎臓の状態を伝え、医師や薬剤師に相談することが安全につながります。

以上

参考文献

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医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

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