血液透析(HD)と腹膜透析(PD)どちらを選ぶ?違いと特徴を徹底比較

血液透析(HD)と腹膜透析(PD)どちらを選ぶ?違いと特徴を徹底比較

腎臓の機能が低下した際に検討する透析療法には、血液透析(HD)と腹膜透析(PD)があります。どちらの治療法も、体内の老廃物や余分な水分を取り除き、生命を維持するために重要です。しかし、治療方法や生活への影響は異なります。

この記事では、血液透析と腹膜透析の違いと特徴を詳しく比較し、ご自身やご家族にとってより良い選択をするための一助となる情報を提供します。

目次

透析療法とは 腎臓の役割と透析の必要性

私たちの体にとって、腎臓は生命維持に欠かせない臓器の一つです。腎臓の機能が著しく低下すると、体内に様々な問題が生じるため、透析療法が必要となる場合があります。

ここでは、腎臓の働きと透析療法の基本的な考え方について解説します。

腎臓が担う大切な働き

腎臓は、単に尿を作るだけの臓器ではありません。以下のような、生命を維持するための多様な働きを担っています。

  • 老廃物の排泄(尿として体外へ)
  • 体内の水分量の調節
  • 電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランス維持
  • 血液のpHバランス(酸性・アルカリ性)の調節
  • 血圧をコントロールするホルモンの産生
  • 赤血球を作るホルモンの産生
  • ビタミンDを活性化し、骨を丈夫にする働き

これらの働きが正常に行われることで、私たちの体は健康な状態を保つことができます。

腎機能が低下するとどうなるか

腎臓の機能が慢性的に低下した状態を慢性腎臓病(CKD)と呼びます。初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると様々な症状が現れます。例えば、老廃物が体内に蓄積すると尿毒症の症状(吐き気、食欲不振、倦怠感など)が出現します。

水分や塩分の調節がうまくいかないと、むくみや高血圧を引き起こします。また、貧血や骨がもろくなるなどの問題も生じます。これらの状態がさらに進行し、生命に危険が及ぶ状態が末期腎不全です。

透析療法が必要になるタイミング

腎機能がある程度まで低下し、薬物療法や食事療法だけでは生命の維持が困難になった場合に、透析療法や腎移植といった腎代替療法を検討します。

透析療法を開始する具体的なタイミングは、残っている腎機能の程度、尿毒症の症状、全身状態などを総合的に判断して、医師が決定します。

一般的には、腎機能の指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)が15mL/分/1.73m²未満になったあたりで、透析導入の準備や検討を始めることが多いです。

腎機能低下の一般的な目安

腎機能の段階 (eGFR)状態一般的な対応
60以上正常または軽度低下危険因子の管理、生活習慣の改善
30-59中等度低下専門医による治療、合併症の管理
15-29高度低下腎代替療法の準備検討
15未満末期腎不全腎代替療法(透析・移植)の開始

eGFR値はあくまで目安であり、個々の状態によって判断は異なります。

透析療法の基本的な目的

透析療法は、低下した腎臓の機能の一部を代替する治療法です。その主な目的は、血液中から老廃物や余分な水分を取り除き、電解質やpHのバランスを整えることです。

これにより、尿毒症の症状を軽減し、心不全などの合併症を防ぎ、生命を維持します。透析療法は腎臓の機能を完全に回復させる治療法ではありませんが、腎機能が著しく低下した方々が元気に社会生活を送るために、とても大切な治療法です。

血液透析(HD)の仕組みと特徴

血液透析(Hemodialysis: HD)は、腎臓の代わりに機械を使って血液をきれいにする治療法です。多くの場合、医療機関で行われます。ここでは、血液透析の具体的な仕組みや特徴について詳しく見ていきましょう。

血液透析とはどのような治療法か

血液透析では、まず腕の血管に針を刺し(通常はシャントと呼ばれる、手術で作製した太い血管部分)、血液を体外に取り出します。取り出された血液は、ダイアライザー(透析器)という人工の腎臓ともいえる装置に送られます。

ダイアライザーの中には、半透膜という特殊な膜で隔てられたたくさんの細い管があり、その管の中を血液が、外側を透析液が流れます。

この半透膜を通して、血液中の老廃物や余分な水分が透析液側に移動し、逆に不足している物質が透析液から血液に補充されます。こうして浄化された血液は、再び体内に戻されます。

血液透析の基本的な流れ

手順主な内容備考
1. 準備体重測定、体温・血圧測定など治療前の状態を確認します
2. 穿刺(せんし)シャントへ2本の針を刺します1本は血液を取り出すため、もう1本はきれいな血液を戻すためです
3. 透析開始血液ポンプを作動させ、血液をダイアライザーへ送ります治療が始まります
4. 透析中血圧や体調の変化を監視し、除水量を調整します通常3~5時間程度かかります
5. 透析終了血液を体内に戻し(返血)、針を抜いて止血します治療が完了します

血液透析のメリット

血液透析には、以下のようなメリットがあります。

  • 医療スタッフが治療を直接管理するため、緊急時の対応が迅速に行える安心感があります。
  • ダイアライザーを通して効率的に老廃物や水分を除去できます。
  • 通常、週に数回の通院で治療が完結するため、透析を行わない日は比較的自由な時間を確保できます(ただし、通院時間は拘束されます)。

特に、医療従事者による管理下で治療を受けたい方や、透析手技を自身で行うことに不安がある方にとっては、心強い治療法と言えるでしょう。

血液透析のデメリットと注意点

一方で、血液透析にはいくつかのデメリットや注意すべき点もあります。まず、治療のために週に2~3回、医療機関に通院する必要があります。1回の治療時間は3~5時間程度と長く、その間はベッドの上で過ごすことになります。

また、血液を体外循環させるため、血圧の変動や不均衡症候群(頭痛、吐き気など)が起こることがあります。シャントの管理も重要で、閉塞や感染を防ぐための日常的なケアが必要です。

食事や水分、カリウム、リンなどの摂取制限が比較的厳しい傾向にあります。

血液透析を行う場所と頻度

血液透析は、主に病院の透析室や透析クリニックなどの医療機関で行われます。治療の頻度は、患者さんの状態や生活習慣によって異なりますが、一般的には週に2回または3回です。1回の治療時間は、通常3時間から5時間程度です。

通院日や時間は、医療機関と相談して決定します。最近では、夜間に透析を行う施設や、条件によっては在宅血液透析という選択肢もありますが、まだ一般的ではありません。

腹膜透析(PD)の仕組みと特徴

腹膜透析(Peritoneal Dialysis: PD)は、自分自身の腹膜(お腹の中の臓器を覆っている薄い膜)を利用して血液をきれいにする治療法です。主に自宅で行うことができるため、ライフスタイルに合わせた治療が可能です。

腹膜透析とはどのような治療法か

腹膜透析を行うためには、まずお腹にカテーテルと呼ばれる細い管を埋め込む簡単な手術を受けます。このカテーテルを通して、透析液をお腹の中(腹腔内)に入れます。

腹腔内に透析液を一定時間貯めておくと、腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分が透析液側に移動します。その後、老廃物を含んだ透析液をカテーテルから排出し、新しい透析液と交換します。

この透析液の交換作業を、患者さん自身やご家族が行います。

腹膜透析の主な種類

種類特徴透析液交換の概要
CAPD (連続携行式腹膜透析)日中、活動している間に数回、手動で透析液を交換します。1日に3~5回程度、1回の交換に約30分かかります。
APD (自動腹膜透析)夜間、睡眠中に専用の機械が自動で透析液を交換します。就寝前に機械に接続し、起床時に離脱します。夜間に8~10時間程度かかります。

どちらの種類を選択するかは、ライフスタイルや医学的な状態などを考慮して医師と相談します。

腹膜透析のメリット

腹膜透析には、以下のようなメリットがあります。

  • 主に自宅で治療を行うため、通院の負担が少なく、時間的な制約も比較的少ないです。
  • 血液透析に比べて、持続的にゆっくりと老廃物や水分を除去するため、体への急激な変化が少なく、血圧の変動も起こりにくい傾向があります。
  • 食事制限(特にカリウム)が血液透析に比べて緩やかな場合があります。
  • 残存腎機能(自分の腎臓がまだ持っている機能)が比較的長く保たれやすいと言われています。

通院の頻度を減らしたい方、社会活動や学業、趣味などを続けたい方、比較的緩やかな食事制限を望む方などにとって、魅力的な治療法となることがあります。

腹膜透析のデメリットと注意点

腹膜透析にもデメリットや注意点があります。透析液の交換操作を毎日、清潔な環境で行う必要があります。この操作を誤ると、腹膜炎やカテーテル出口部感染といった感染症のリスクがあります。

また、透析液にはブドウ糖が含まれているため、長期間続けるとブドウ糖の吸収により体重増加や血糖値の上昇、脂質異常症などが起こることがあります。

腹腔内に常に透析液を貯留するため、腹満感や、まれに腹圧上昇によるヘルニア(脱腸)や腰痛が起こることもあります。定期的な通院(通常月1~2回)は必要です。

腹膜透析の準備と日常生活

腹膜透析を始めるには、まずカテーテルをお腹に埋め込む手術が必要です。手術後、カテーテルの出口部が安定し、操作のトレーニングを受ければ、自宅での透析を開始できます。

透析液や関連物品の保管場所を自宅に確保する必要があります。日常生活では、カテーテル出口部の清潔保持と、毎日の透析液交換が重要です。

入浴も可能ですが、出口部の保護など注意が必要です。旅行も可能ですが、透析液などの運搬について事前に計画を立てることが大切です。

血液透析と腹膜透析の主な違いを比較

血液透析(HD)と腹膜透析(PD)は、どちらも腎臓の機能を代替する大切な治療法ですが、いくつかの点で大きな違いがあります。ご自身の生活や価値観に合った治療法を選ぶために、これらの違いを理解することが重要です。

治療場所と時間の比較

治療を行う場所と、治療にかかる時間は、日常生活に大きな影響を与えます。HDは医療機関での治療が基本ですが、PDは自宅での治療が中心となります。

治療場所と時間の比較表

項目血液透析(HD)腹膜透析(PD)
主な治療場所医療機関(病院、クリニック)自宅(職場や学校でも可能)
治療頻度通常 週2~3回毎日(CAPD:1日数回交換、APD:夜間)
1回あたりの時間通常 3~5時間(+通院時間)CAPD:1回約30分、APD:夜間約8~10時間

日常生活への影響の比較

透析療法は長期間にわたるため、日常生活への影響も考慮すべき大切な点です。治療方法によって、時間の使い方や活動の自由度が異なります。

日常生活の自由度

項目血液透析(HD)腹膜透析(PD)
時間的拘束通院日・透析時間は拘束される透析液交換時以外は比較的自由
社会活動(仕事・学業)通院との調整が必要比較的両立しやすい
旅行透析施設との連携が必要透析液の運搬など準備すれば可能

食事制限と水分管理の比較

透析療法を受けている間は、食事や水分の管理が重要になります。HDとPDでは、制限の厳しさや内容に違いが見られることがあります。

食事・水分制限の一般的な傾向

項目血液透析(HD)腹膜透析(PD)
水分比較的厳しい制限が必要比較的緩やか(ただし自己管理は重要)
塩分どちらも厳しい制限が必要どちらも厳しい制限が必要
カリウム比較的厳しい制限が必要比較的緩やか
リンどちらも制限が必要(吸着薬の使用が多い)どちらも制限が必要
タンパク質適量の摂取が必要腹膜から喪失するため、やや多めの摂取を推奨される場合がある

食事制限の具体的な内容は、個々の状態や検査結果によって異なります。必ず医師や管理栄養士の指示に従ってください。

残存腎機能への影響の比較

残存腎機能とは、透析導入後もわずかに残っている自分自身の腎臓の機能のことです。この機能が少しでも長く保たれることは、体調管理や生命予後にとって良い影響があると考えられています。

一般的に、腹膜透析は血液透析に比べて、残存腎機能を比較的長く保ちやすいと言われています。これは、腹膜透析が持続的に穏やかに透析を行うため、腎臓への負担が少ないことなどが理由として考えられています。

ただし、個人差が大きく、必ずしも全ての人に当てはまるわけではありません。

透析方法の選択で考慮すべきこと

血液透析と腹膜透析、どちらの治療法を選ぶかは、ご自身の人生に関わる大きな決断です。

医学的な側面だけでなく、生活スタイルや価値観など、様々な要素を総合的に考慮して、医師や医療スタッフと十分に話し合い、納得のいく選択をすることが大切です。

ご自身のライフスタイルとの適合性

まず、ご自身の生活スタイルや大切にしたいことを整理してみましょう。仕事や学業、趣味、家族との時間など、治療とどのように両立させていきたいかを考えることが重要です。

  • 仕事や学業を続けたいか、その内容はどうか(例:肉体労働、デスクワーク、勤務時間の柔軟性)
  • 通院に割ける時間や曜日の制約はあるか
  • 旅行や外出の頻度、希望する活動範囲はどうか
  • 自己管理(手技の実施、記録、体調管理)への意欲や能力はどうか

例えば、日中の時間を有効に使いたい、通院の頻度を減らしたいという方には腹膜透析が、医療機関で専門スタッフによる管理を希望する方には血液透析が、それぞれ選択肢の一つとなるかもしれません。

医学的な状態と合併症のリスク

現在の医学的な状態や、将来起こりうる合併症のリスクも、治療法を選択する上で重要な要素です。心臓や血管の状態、糖尿病の有無とコントロール状況、腹部の手術歴、視力や手指の巧緻性(腹膜透析の手技に関連)などを考慮します。

それぞれの治療法には、特有の合併症リスクがあります。

主な合併症リスクの傾向

リスクの種類血液透析(HD)で比較的注意腹膜透析(PD)で比較的注意
感染症シャント関連感染、全身感染腹膜炎、カテーテル出口部感染
循環器系急激な血圧変動、不均衡症候群体液過多による心負荷(自己管理が重要)
腹部関連特になし腹膜劣化、ヘルニア、被嚢性腹膜硬化症(EPS)
その他かゆみ、骨関節障害ブドウ糖負荷による代謝異常(体重増加、高血糖など)

これらのリスクについては、医師から詳しい説明を受け、ご自身の状態に照らし合わせて理解を深めることが大切です。どちらの治療法が絶対的に安全ということはなく、個々の状態に応じたリスク管理が求められます。

ご家族や介護者のサポート体制

透析療法を継続していく上で、ご家族や周囲の方々の理解とサポートは大きな力となります。特に腹膜透析の場合、手技の習得や毎日の管理、物品の整理などで家族の協力が必要になることがあります。

また、血液透析の場合でも、通院の送迎や体調変化時の対応などでサポートが求められる場面があります。どのようなサポートが得られるのか、あるいは得られそうか、事前に話し合っておくことが望ましいでしょう。

介護が必要な方の場合は、介護者の負担も考慮して治療法を選択することが重要です。

精神的な負担と自己管理能力

透析療法は長期にわたるため、精神的な側面も無視できません。治療法によって、感じるストレスや負担の種類が異なることがあります。

血液透析では、通院の拘束や集団での治療環境がストレスになる方もいれば、医療スタッフがそばにいる安心感を覚える方もいます。

腹膜透析では、自己管理の責任や感染への不安がストレスになる場合もあれば、自宅での自由な治療が精神的な安定につながることもあります。

ご自身の性格や価値観、自己管理への意欲や能力を客観的に見つめ、どちらの治療法が精神的に受け入れやすいかを考えることも大切です。

血液透析と腹膜透析の費用と医療制度

透析治療は長期間にわたるため、経済的な負担も考慮すべき点です。幸い、日本では透析治療に関する医療費助成制度が充実しており、患者さんの負担を軽減する仕組みが整っています。

透析治療にかかる費用の概要

透析治療にかかる費用は高額ですが、健康保険に加え、特定疾病療養受療制度や各自治体の医療費助成制度を利用することで、自己負担額は一定の上限額(所得によって異なる)に抑えられます。

血液透析と腹膜透析では、費用の内訳や発生の仕方に若干の違いがあります。

費用に関連する主な要素

費用項目血液透析(HD)腹膜透析(PD)
定期的な医療費医療機関での治療費(技術料、薬剤費など)透析液、関連衛生材料費、定期受診時の診察・検査費
通院交通費週2~3回の通院で発生月1~2回の定期受診時に発生
自宅での経費基本的には少ないAPDの場合、機械の電気代。物品保管スペース。

上記の表は一般的な傾向であり、具体的な費用は医療機関や個人の状況により異なります。詳細は医療機関のソーシャルワーカーや事務担当者にご相談ください。

利用できる医療費助成制度

透析療法を受けている患者さんは、以下のような医療費助成制度を利用できる場合があります。

  • 特定疾病療養受療制度:健康保険の高額療養費制度の特例で、透析治療などの高額な治療を長期間継続して受ける必要がある場合に、自己負担限度額が通常よりも低く設定されます(通常月額1万円または2万円。所得により異なる)。
  • 重度心身障害者医療費助成制度(またはそれに類する自治体独自の制度):身体障害者手帳の等級など一定の条件を満たす場合に、医療費の自己負担分が助成されます。お住まいの市区町村によって制度内容が異なります。
  • 自立支援医療(更生医療):身体障害者手帳を所持している方が、その障害を除去・軽減するための治療に対して医療費の自己負担を軽減する制度です。透析療法も対象となります。

これらの制度を利用するためには申請手続きが必要です。医療機関のソーシャルワーカーや市区町村の担当窓口に相談し、必要な手続きを確認しましょう。

身体障害者手帳と受けられる支援

腎機能障害が一定の基準に該当する場合、身体障害者手帳の交付を受けることができます。手帳の等級によって、医療費助成のほか、税金の控除や減免、公共料金の割引、福祉サービスの利用など、様々な支援を受けられる場合があります。

身体障害者手帳の申請についても、主治医や医療機関のソーシャルワーカーにご相談ください。

治療選択と経済的側面

血液透析と腹膜透析のどちらを選択しても、上記の医療費助成制度は基本的に利用可能です。そのため、治療法選択において、どちらかが著しく経済的負担が大きいということは通常ありません。

ただし、通院にかかる交通費や、腹膜透析における消耗品の管理、APD(自動腹膜透析)装置の電気代など、細かな点で差が出る可能性はあります。

経済的な側面についても、疑問や不安があれば遠慮なく医療スタッフに相談し、情報を得ることが大切です。

血液透析と腹膜透析に関するよくある質問(FAQ)

血液透析と腹膜透析について、多くの方が抱く疑問にお答えします。ここに記載する内容は一般的なものであり、個々の状況によって異なる場合がありますので、詳細は必ず主治医にご確認ください。

どちらの治療法が優れていますか

血液透析と腹膜透析のどちらか一方が絶対的に優れているということはありません。

それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、患者さんの医学的な状態、ライフスタイル、価値観、サポート体制などによって、どちらがより適しているかが異なります。

「どちらが良いか」ではなく、「どちらが自分に合っているか」という視点で、医師や医療スタッフと十分に話し合い、ご自身で納得して選択することが最も重要です。

透析を開始したら一生続けないといけませんか

慢性腎不全に対する透析療法は、基本的に生涯にわたって継続する必要があります。腎臓の機能が回復することはまれであり、透析を中止すると生命維持が困難になるためです。

ただし、腎移植という選択肢もあります。腎移植が成功すれば、透析療法から離脱できる可能性があります。腎移植に関心がある場合は、主治医に相談し、詳しい情報を得ることが大切です。

旅行や外出はできますか

はい、血液透析、腹膜透析のどちらの治療法でも、計画を立てることで旅行や外出は可能です。

血液透析の場合、旅行先の透析施設と事前に連携を取り、臨時透析の予約をする必要があります。国内だけでなく、海外旅行も可能です。医療機関のスタッフが連携をサポートしてくれることもあります。

腹膜透析の場合、透析液や関連物品を旅行先に持参するか、事前に配送する手配をします。CAPDであれば場所を選ばずに透析液交換ができますし、APD用の小型機械も登場しています。航空機への透析液の持ち込みなども、事前に航空会社に確認することで対応可能です。

どちらの治療法でも、無理のない範囲で計画し、主治医に相談しながら楽しむことが大切です。

シャントやカテーテルの管理で気をつけることは何ですか

血液透析におけるシャントや、腹膜透析におけるカテーテルは、治療を継続するための「命綱」とも言える大切なものです。日常的な管理が非常に重要です。

シャント・カテーテル管理のポイント

管理対象主な注意点具体的なケア例
血液透析のシャント閉塞、感染、出血の予防シャント肢の清潔保持、圧迫しない、毎日スリル(シャント音)を確認する、異常があればすぐに連絡
腹膜透析のカテーテル出口部感染予防、カテーテルの損傷予防毎日の観察と消毒、清潔操作の徹底、カテーテルを引っ張らない、固定を確実にする

シャントやカテーテル出口部に赤み、腫れ、痛み、熱感、分泌物などの異常が見られた場合は、速やかに医療機関に連絡してください。自己判断せずに、指示を仰ぐことが重要です。

透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )

血液透析

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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