これから透析治療を始めるにあたり、多くの不安を感じていることでしょう。血液透析は、腎臓の働きを代替する重要な治療法です。
治療を安全かつ効果的に続けるためには、体に血液を出し入れするための出入り口、血管アクセスが大事な役割を果たします。血管アクセスにはいくつかの種類があり、ご自身の体の状態や生活に合わせて選ぶことが大切です。
この記事では、透析 シャント、透析 グラフト、透析 カテーテルという3つの主な血管アクセスの種類とそれぞれの特徴について、解説していきます。
透析治療と血管アクセスについて
血液透析を始める上で、まず理解しておきたいのが血管アクセスの役割です。なぜ透析治療に特別な血液の出入り口が必要で、どのように治療を支えるのでしょうか。
なぜ血管アクセスが必要なのか
血液透析では、1分間に約200mlという大量の血液を体から取り出し、ダイアライザーと呼ばれる透析器できれいにしてから、再び体内に戻す必要があります。
しかし、通常の静脈は、大量の血液を安定して流すには細すぎ、また毎週3回もの穿刺(針を刺すこと)に耐えることができません。
何度も同じ血管に針を刺すと、血管が硬くなったり詰まったりして、治療が困難になるため、血液透析を長期間にわたって安全に行うために、十分な血液量を確保できる丈夫な血管の出入り口、それが血管アクセスです。
血液透析の基本的な流れ
血液透析は、血管アクセスに2本の針を刺すことから始まり、1本目の針(脱血側)から血液を体外に取り出し、血液ポンプを通ってダイアライザーへ送ります。
ダイアライザー内部では、半透膜を介して透析液と接することで、物質の濃度差を利用して血液中の老廃物や余分な水分、ミネラルを取り除き、きれいに浄化された血液は、2本目の針(返血側)を通って、再び穏やかに体内へ戻されます。
一連の流れを1回の治療で4時間から5時間ほどかけて行い、週に2回から3回通院するのが一般的です。循環を常にスムーズに行うために、血管アクセスは生命線ともいえます。
血液透析で血液アクセスが必要な理由
- 大量の血液流量の確保
- 繰り返しの穿刺に耐える強度
- 長期的な治療の安定性
- 感染リスクの低減
- 確実な脱血と返血
血管アクセスの重要性
血管アクセスは、単に血液を出し入れするだけの通路ではなく、透析治療の効果や日々の生活の質に直接影響します。良好な状態の血管アクセスがあれば、毎回の穿刺がスムーズに行え、必要な透析量を確実に確保しやすくなります。
アクセスの状態が悪化すると、透析が十分に行えなくなったり、修理のための治療や再手術が必要になったりすることもあります。
自分に合った種類のアクセスを選び、日頃から自分の体の一部として大切に管理していくことが、長期にわたる透析治療をより良く続ける上で非常に重要です。
自己血管内シャント(AVF)の詳細
血管アクセスの中でも、多くの患者さんで第一に検討されるのが自己血管内シャントで、ご自身の血管を使って作成する方法で、長期的に使用できる可能性が高いです。
内シャントの仕組みと作製手術
自己血管内シャント(Arteriovenous Fistula, AVF)は、一般的に利き腕ではない方の手首や肘の近くで、動脈と静脈を手術で直接つなぎ合わせることで作製します。
動脈は心臓から送り出される圧力の高い血液が流れているため、血液が静脈に流れ込むことで静脈は太く発達し、血流量も増加し、太くなった静脈が、透析治療の際の穿刺部位です。
手術は局所麻酔で行い、通常1時間から2時間程度で終了し、皮膚を数センチ切開し、血管を露出させてから動脈と静脈を慎重に吻合します。術後は、吻合部に血液が勢いよく流れるのを感じるでしょう。
内シャントの長所と短所
内シャントは、自分の血管を利用するため、異物に対する体の反応が少なく、長期的に安定して使用できる可能性が高い方法で、感染症や閉塞(詰まること)のリスクが他の方法に比べて低いことが最大の長所です。
一方で、いくつかの短所もあり、手術後にシャント血管が透析に使える太さと血流量になるまで、数週間から数ヶ月の成熟期間が必要になります。
また、元々の血管が細い方や動脈硬化が進んでいる方では、シャントが十分に発達しない(成熟不全)、あるいは作製自体が難しい場合があり、成熟不全の場合は、再度手術が必要になることもあります。
内シャントの利点と注意点
| 項目 | 長所(利点) | 短所(注意点) |
|---|---|---|
| 開存期間 | 他の方法より長く使える傾向がある | 成熟不全で使えないことがある |
| 感染リスク | 異物を使わないため感染しにくい | 手術創の感染リスクは存在する |
| 合併症 | 閉塞や狭窄のリスクが比較的低い | スチール症候群などを起こす可能性がある |
シャント作成後の成熟期間
シャント手術が終わっても、すぐに透析治療に使えるわけではなく、吻合部から流れ込んだ動脈血によって、静脈が徐々に太く、壁が厚くなり、穿刺しやすいように成長していく時間が必要です。
この期間を成熟期間と呼び、個人差はありますが、通常は2週間から1ヶ月以上かかり、シャント血管がしっかりと発達することが、その後の安定した透析治療につながります。
医師や看護師の指示に従い、シャントの発達を促すための自己管理を行うことが大事です。
シャントの成熟を促す運動例
- ハンドグリップやゴムボールを握る運動
- 腕の曲げ伸ばし
- 指の開閉運動
シャントの自己管理と注意点
シャントが完成して透析が始まった後も、機能を長く保つためには日々の管理が欠かせません。最も大切なのは、シャントの状態を毎日自分で確認する習慣をつけることです。
シャント部分に耳を当てたり、そっと手を触れたりして、血液が流れる音(スリル)や振動を感じることで、シャントが正常に機能しているかを確認できます。「シャントの音を聞く」という行為は、自分の体を守るための重要な日課です。
また、シャント側の腕で重いものを持ったり、腕枕をしたり、血圧を測ったりすることは、シャントを圧迫して血流を悪くする原因になるため避けましょう。清潔を保つことも感染予防の観点から重要です。
人工血管内シャント(AVG)の詳細
自己血管の状態がシャント作製に適していない場合に選択されるのが、人工血管内シャント(Arteriovenous Graft, AVG)、いわゆる透析 グラフトで、人工の管を使って動脈と静脈をつなぐ方法です。
グラフトの仕組みと使用されるケース
人工血管グラフトは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの柔らかい医療用素材でできた、直径6mm程度の管です。
管を、動脈と静脈の間にトンネルのように皮下に埋め込み、血流のバイパスを作り、手術は自己血管内シャントと同様に局所麻酔で行われることが多く、腕の形状に合わせて直線状やループ状に留置します。
この方法は、自己血管が細い、あるいは既にシャント作製や閉塞を繰り返しているために使える血管がない、といった場合に主に選択され、自己血管の代わりにこの人工血管が穿刺の場所です。
グラフトの長所と短所
グラフトの大きな長所は、手術後比較的早い時期(約2週間から3週間)から使用を開始できる点で、自己血管のように成熟を待つ必要がありません。また、血管が細い患者さんでも安定した血流量を確保しやすいということも利点です。
ただし、人工物であるため、自己血管内シャントに比べると感染や閉塞を起こすリスクが高くなり、閉塞した場合は、血栓を取り除く治療や、再手術が必要になることもあります。
人工血管グラフトの利点と注意点
| 項目 | 長所(利点) | 短所(注意点) |
|---|---|---|
| 使用開始時期 | 手術後2~3週間と比較的早い | 自己血管より開存期間が短い傾向 |
| 適応 | 自己血管が細い人でも作製可能 | 感染や閉塞のリスクが比較的高い |
| 穿刺 | 穿刺部位が分かりやすい | 繰り返し穿刺による劣化の可能性がある |
グラフト手術後の経過と管理
手術後は、創部の腫れや痛みが数日間続くことがありますが、徐々に和らいでいき、シャントと同様に、グラフトが閉塞しないように日々のセルフチェックが重要です。
グラフト上に手を置き、血流の振動(スリル)があることを毎日確認しましょう。もし振動が弱くなったり、感じられなくなったりした場合は、閉塞のサインかもしれないため、時間を置かずにすぐに医療機関に連絡する必要があります。
また、グラフト部分の皮膚に赤み、腫れ、痛み、熱感などがある場合は感染の兆候です。この場合も速やかな対応が大事です。透析治療で針を刺した後は、止血を確実に行い、穿刺部位を清潔に保つことを心がけてください。
グラフト閉塞の兆候
- スリル(血流の振動)が弱くなる、または消失する
- グラフト部分の拍動がなくなる
- 腕が冷たく感じる
長期留置カテーテルについて
シャントやグラフトの作製が困難な場合や、緊急で透析を始める必要がある場合に用いられるのが、長期留置カテーテルです。
これは、首や胸、足の付け根などにある太い静脈にカテーテルという管を留置する方法で、透析 カテーテルと呼ばれています。
カテーテルの仕組みと留置場所
長期留置カテーテルは、柔らかい合成樹脂でできた管で、先端が2つに分かれています(脱血用と返血用)。
局所麻酔下で、首の付け根(内頸静脈)、胸(鎖骨下静脈)、または足の付け根(大腿静脈)のいずれかから太い静脈に挿入し、カテーテルの先端を心臓近くの太い血管(上大静脈)まで進めて留置します。
体の外に出ている部分は皮膚に縫合固定され、感染を防ぐための特別な出口(カフ)が皮下に埋め込まれ、カフが皮膚と癒着することで、細菌が体内に侵入するのを防ぐ壁の役割を果たします。
カテーテルを通して血液の出し入れを行うため、透析のたびに針を刺す必要がありません。
カテーテルの主な留置部位
| 留置部位 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 内頸静脈(首) | 比較的安全に挿入しやすい | カテーテルの固定や管理に注意が必要 |
| 鎖骨下静脈(胸) | カテーテルが目立ちにくい | 中心静脈狭窄のリスクがある |
| 大腿静脈(足) | 上半身に問題がある場合に選択 | 感染リスクが高く、長期使用は避ける |
カテーテルが選択される状況
長期留置カテーテルは、いくつかの状況で選択されます。まず、腎不全が急激に進行し、シャントやグラフトを作製して成熟を待つ時間的な余裕がない緊急透析導入の場合でカテ、ーテルは留置後すぐに使用できます。
次に、心臓の機能が著しく低下しているなど、シャント作製による心臓への負担が懸念される場合です。
また、高齢や他の病気のためにシャントやグラフトの手術が困難な患者さんや、自己血管・人工血管のいずれも使い果たしてしまった場合の最終的な手段としても用いられます。
カテーテルの長所と短所
カテーテルの最大の長所は、留置後すぐに透析を開始でき、穿刺の痛みがないことです。
また、シャントやグラフトが作れない患者さんにとっても貴重な治療手段となりますが、重大な短所として感染症のリスクが非常に高いことが挙げられます。
カテーテルが体外と体内をつなぐ通り道になるため、細菌が侵入しやすく、カテーテル関連血流感染症という重篤な状態を起こすことがあります。
また、カテーテルそのものが血の塊(血栓)で詰まったり、血管を狭くしたりする原因にもなり得るため、永続的なアクセスとしては第一選択になりにくいのが現状です。
長期留置カテーテルの利点と注意点
| 項目 | 長所(利点) | 短所(注意点) |
|---|---|---|
| 穿刺 | 穿刺の痛みがない | 感染のリスクが非常に高い |
| 使用開始 | 留置後すぐに使用可能 | 血栓による閉塞や血管狭窄のリスク |
| 生活上の制限 | 腕を自由に使いやすい | 入浴が制限される(シャワーのみなど) |
カテーテル使用中の生活上の注意
カテーテルを安全に使い続けるためには、厳重な管理が欠かせません。カテーテルの出口部分は、細菌の侵入口にならないよう、常に清潔で乾燥した状態に保つ必要があります。
透析施設で定期的に消毒とドレッシング材の交換を行いますが、自宅でも汚れたり濡れたりしないように注意し、入浴は大きな制限となり、湯船に浸かることはできません。
シャワーの際も、出口部分を保護フィルムで覆い、絶対に濡らさないように工夫が必要です。
カテーテルの出口部に赤み、腫れ、痛み、膿などが見られたり、原因不明の発熱があったりする場合は、感染のサインなので、直ちに医療機関に知らせてください。
カテーテル感染の兆候
- カテーテル出口の赤み、腫れ、痛み、熱感、膿
- 原因不明の発熱や悪寒、震え
各血管アクセスの比較と選択
透析 シャント、透析 グラフト、透析 カテーテルには、それぞれ異なる特徴があります。どの方法が自分にとって最も良い選択なのかを考えるために、それぞれの違いを整理し、どのような基準で選ばれるのかを理解しておきましょう。
シャント・グラフト・カテーテルの総合比較
これまでの説明をまとめると、長期的な安定性と安全性の観点からは自己血管内シャントが最も優れていますが、血管の状態によっては作製が難しく、その場合は人工血管グラフトが良い選択肢です。
緊急性や手術のリスクが高い場合には、長期留置カテーテルが命をつなぐ重要な役割を果たします。それぞれのメリット・デメリットを総合的に比較し、理解することが後悔のない選択につながります。
血管アクセス方法の総合比較
| 種類 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 自己血管内シャント(AVF) | 長持ちする、感染や閉塞が少ない | 使えるまで時間がかかる、作れない場合がある |
| 人工血管グラフト(AVG) | 早く使える、血管が細くても可能 | シャントより詰まりやすく感染しやすい |
| 長期留置カテーテル | すぐ使える、穿刺の痛みがない | 感染リスクが高い、生活に制限がある |
患者の状態に合わせた選択基準
血管アクセスの選択は、画一的なものではなく、患者さん一人ひとりの状態を総合的に判断して決定し、考慮される主な要素は、年齢、全身の健康状態、心臓の機能、腕の血管(動脈と静脈)の状態などです。
超音波検査などで血管の太さや走行、血流の状態を詳しく調べ、シャント作製が可能かどうかを評価します。糖尿病や動脈硬化が進行している場合は、血管が脆くなっていることもあります。
医学的な評価に加え、患者さん本人の生活スタイルや価値観、治療に対する考え方も尊重しながら、医師と十分に話し合って最終的な方針を決定していくことが重要です。
将来的なアクセスの変更可能性
最初に選択した血管アクセスが、生涯にわたって使用できるわけではなく、長年使用するうちに、シャントやグラフトは狭窄や閉塞といったトラブルを起こすことがあります。
その場合は、PTA(経皮的血管形成術)と呼ばれる風船治療で修理したり、場合によっては別の場所に新しいアクセスを作り直したりすることが必要です。
カテーテルを使用している場合でも、状態が安定すればシャントやグラフトの作製を検討することもあります。
透析治療は長い付き合いになるため、将来的なアクセスの変更や再建の可能性も常に視野に入れながら、長期的な視点で治療計画を立てていくことが大事です。
血管アクセスの合併症と対策
どの血管アクセス方法を選択しても、長期間使用する中では様々な合併症が起こる可能性がありますが、合併症の多くは、早期に発見し適切に対処することで、アクセスの寿命を延ばすことができます。
狭窄と閉塞
最も頻度の高い合併症が、血管が狭くなる狭窄と、完全に詰まってしまう閉塞で、シャントやグラフトでは、血管の吻合部や穿刺を繰り返す部位の内壁が厚くなることで起こりやすくなります。
狭窄が進行すると、透析に必要な血流量が確保できなくなったり、止血に時間がかかったり、腕が腫れたりといった症状が現れ、閉塞するとシャント音が聞こえなくなります。兆候に気づいたら、すぐに医療機関に相談してください。
治療としては、カテーテルを使って狭くなった血管を内側から風船(バルーン)で広げるPTAが主流です。
感染症のリスクと予防
感染症は、特に人工物であるグラフトや、体外と交通しているカテーテルで注意が必要な合併症で、グラフトの場合、穿刺部位から細菌が侵入することがあります。
カテーテルの場合は、出口部や接続部からの細菌侵入が問題となり、血流に乗って全身に広がる敗血症という危険な状態に至ることもあります。予防のためには、毎日の観察と清潔操作が最も重要です。
透析前の穿刺部位の消毒、透析後の確実な止血と保護、カテーテル出口部の厳重な管理など、医療スタッフの指示を確実に守ることが自分自身を守ることに直結します。
血管アクセスを守るための日常の注意点
- シャント側の腕で重い荷物を持たない
- シャント側の腕で血圧測定や採血をしない
- シャント側の腕を圧迫する衣服や腕時計を避ける
- アクセス部分を掻いたり、傷つけたりしない
- 毎日のスリル(振動)や音の確認を習慣にする
静脈高血圧症とスチール症候群
まれな合併症として、静脈高血圧症とスチール症候群があります。
静脈高血圧症は、シャント血管の心臓側が狭窄することで、血液が逆流して手の甲や腕が腫れ、皮膚の色が悪くなるなどの症状が出ます。
スチール症候群は、シャントへ流れる血液量が多すぎることにより、指先への血流が不足してしまう状態で、指の冷たさ、しびれ、痛みといった症状が現れます。
症状に気づいた場合も、アクセスの血流を調整する治療が必要になることがあるため、医師に相談することが大切です。
主な合併症とその症状
| 合併症 | 主な症状 | 考えられる原因 |
|---|---|---|
| 狭窄・閉塞 | 腕の腫れ、止血困難、スリルの減弱・消失 | 血管内膜の肥厚、血栓形成 |
| 感染 | 発赤、腫れ、痛み、熱感、膿、発熱 | 穿刺部やカテーテル出口からの細菌侵入 |
| スチール症候群 | 指先の冷感、しびれ、痛み | シャントへの過剰な血流による末梢血流低下 |
定期的な検査とメンテナンスの重要性
血管アクセスのトラブルを未然に防ぎ、長く使い続けるためには、症状が現れる前の定期的な検査(サーベイランス)が非常に重要です。
透析中の血流量や静脈圧のモニタリング、定期的な超音波検査などによって、自覚症状のない初期の狭窄を発見することができます。問題が小さいうちに対処すれば、体への負担が少ないPTAなどの治療で解決できることがほとんどです。
透析血管アクセスのよくある質問
最後に、これから血管アクセスを作製する方や、現在使用している方からよく寄せられる質問と回答をまとめました。
- シャント手術は痛いですか?
-
手術は局所麻酔で行いますので、手術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。麻酔の注射の際にチクっとした痛みはあります。
手術後、麻酔が切れると傷口の痛みが出ることがありますが、痛み止めの薬で対応でき、痛みは数日から1週間程度で徐々に和らいでいきます。
- シャントやグラフトを作った腕で重いものを持っても大丈夫ですか?
-
シャントやグラフトがある腕に過度な負担をかけると、血管を圧迫して血流が悪くなり、閉塞の原因になることがあるので、買い物袋など、重いものを持つ際はシャントのない方の腕を使うように習慣づけましょう。
ただし、日常生活における軽い動作まで過度に制限する必要はありません。
- シャントのある腕で運動はできますか?
-
シャントの状態が安定すれば、多くの運動は可能です。ただし、シャント部分を直接ぶつけたり、強く圧迫したりするような激しいスポーツ(柔道やレスリングなど)は避けてください。
ウォーキングや水泳など、全身を使う運動は血行を良くする効果も期待できます。どのような運動が可能か、どの程度までなら大丈夫かについては、事前に主治医や透析施設のスタッフに相談することをお勧めします。
- 穿刺の痛みは毎回ありますか?
-
痛みの感じ方には個人差がありますが、透析のたびに針を刺すので、ある程度の痛みは伴いますが、多くの施設では痛みを和らげる工夫をしています。
穿刺前に痛み止めのテープを貼ったり、局所麻酔のスプレーや注射をしたりする方法があります。痛みが強い場合は、我慢せずに医療スタッフに相談してください。
また、同じ場所に繰り返し穿刺しないように、穿刺部位を少しずつずらしていくことも痛みの軽減につながります。
以上
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