透析治療を検討している方やすでに治療を受けている方の中には、どのくらいの透析時間が必要か悩むケースが少なくありません。体の状態や日常生活とのバランスを踏まえたうえで、適切な時間を決めることが大切です。
医療スタッフとのコミュニケーションを十分に取りながら、自分に合った治療の進め方を考えてみましょう。
この記事では、透析時間決め方の基本や日常生活との両立を図るための留意点など、知っておきたい情報を詳しく解説します。
透析治療の目的と基本的な考え方
十分に機能しなくなった腎臓の代わりに、体内の老廃物や過剰な水分を除去することを目指すのが透析です。血液透析や腹膜透析などの方法が存在し、それぞれに特徴や利点があります。
医師と相談しながら治療を選び、体調維持を図ることが重要です。
腎機能低下と透析の必要性
健康な腎臓は、血液中の老廃物や余分な水分・塩分などを排出し、体内環境のバランスを整えています。しかし、慢性的な腎機能低下が進むと、その機能が著しく下がり、体内に有害物質が蓄積しやすくなります。
透析治療は、人工的に血液を浄化することで腎臓の機能を補い、体調を維持しやすくするために行います。
血液透析と腹膜透析
血液透析は、血液を体外に取り出してダイアライザーと呼ばれる装置を用いて血液浄化を行います。週に数回の通院や在宅での実施方法が一般的です。
一方、腹膜透析はお腹の中にカテーテルを入れ、透析液を注入して老廃物や余分な水分を引き出す方法です。どちらの方法にもメリットと課題があるため、医師や看護師と十分に相談して選択します。
人それぞれの治療方針
腎機能や合併症の有無だけでなく、ライフスタイルや通院のしやすさも考慮したうえで治療方針を決めることが大切です。自宅での管理のしやすさや通院負担、治療費などを総合的に比較しながら決定すると、より安心感を持って治療に臨めます。
透析治療の主な特徴一覧
治療法 | 方法 | 頻度 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
血液透析 | 血液を体外に取り出し装置で浄化 | 週に3回程度 | 医療スタッフのサポートが受けやすい |
腹膜透析 | 腹腔内に透析液を入れて交換 | 1日数回から夜間連続など | 在宅で行うことができ、時間調整がしやすい |
混合療法 | 血液透析と腹膜透析を併用 | 個々の状態に合わせて調整 | 両方の長所を組み合わせて行う |
透析時間の重要性
透析時間をどう設定するかによって、血液中の老廃物の除去率や余分な水分の排出量が大きく変わります。時間が短いと治療効果が不十分になりやすく、長すぎると疲労や低血圧などが生じやすいです。
適切な時間を見極めるためには、血液データや全身状態、生活リズムを総合的に考慮します。
透析時間が及ぼす影響
治療時間が短いと、血液内に残る老廃物や水分が増えやすく、体調不良や合併症の進行リスクが高まります。逆に長過ぎる治療は、疲労感の増強や血圧低下によるめまいが起こりやすいです。
医師や看護師との話し合いの中で、透析何時間が望ましいかを決めることが大切になります。
生活や仕事との両立
治療時間をどのくらい設定するかは、日常生活や仕事との兼ね合いも考慮する必要があります。仕事の都合で通院しづらい場合や家庭の事情がある場合は、腹膜透析や在宅血液透析を検討することも選択肢のひとつです。
自分のライフスタイルに合わせた治療計画を立てることで、負担を減らしながら継続しやすくなります。
医師やスタッフとの協力
医療スタッフは血液検査の結果や合併症の状況などを踏まえ、患者さんがより安定して過ごせる時間設定を提案しています。一方、患者さん自身の希望や体感を医師に伝えることも欠かせません。
互いに情報を共有しながら、透析時間決め方を検討すると納得感のある治療を進めやすくなります。
透析時間を決める際に意識したい点
- 血圧や脈拍などのバイタルサイン
- 食事や運動などの日常生活パターン
- 体重増加や体内水分バランス
- 仕事や家事との両立
- 精神的ストレスや疲労度合
透析時間と合併症リスク
腎臓の機能が低下すると、体内にさまざまな影響が出ます。特に心臓や血管系に負担がかかりやすく、透析中や透析直後に血圧の変動が大きくなる場合があります。
透析時間を調整することで、合併症の発生を抑えたり、症状を緩和したりする効果が期待できます。
心血管系への影響
透析によって急激に水分や老廃物が排出されると、心臓や血管にかかる負荷が変動しやすくなります。高齢の方や心疾患の既往がある方は、短い治療時間で急激に除水すると不整脈や血圧低下につながりやすいです。
そのため、余裕を持った時間設定が必要とされます。
骨・ミネラル代謝への影響
慢性腎臓病が進行すると、骨やミネラルバランスの維持が難しくなります。リンやカルシウム、パラトルモンなどの値をコントロールするために透析が役立ちますが、短時間で大きく補正すると体への負担が大きいケースがあります。
医師の指示に基づいて透析時間を調整し、急激な変動を避けることが大切です。
神経障害など他の合併症
尿毒症性の神経障害や貧血など、腎臓の働きが低下した結果として現れる症状にも注意が必要です。透析時間を適切に確保し、体内バランスを整えることで、こうした症状の進行をある程度防ぎやすくなります。
合併症と主なリスク要因の一覧
合併症 | 主なリスク要因 | 考慮すべきポイント |
---|---|---|
心血管系疾患 | 急激な除水量、血圧変動 | 徐々に除水を行う、長めの治療時間を確保する |
骨ミネラル代謝異常 | リン・カルシウム・PTHの乱れ | 短時間透析だと急激な補正が必要になり負担増 |
神経障害 | 尿毒症による神経への影響 | 安定した血中成分の維持を意識する |
透析時間決め方の目安と個別調整
透析何時間が適切かを一律に示すことは難しく、個人差が非常に大きいです。一般的に週に3回の血液透析であれば1回あたり4時間前後、腹膜透析であれば1日あたりの総時間が8~10時間程度になることが多いです。
ただし、年齢や体格、合併症、生活スタイルなどによって最適な時間は変動します。
血液データからみる時間の決め方
BUN(尿素窒素)やクレアチニン、カリウムなどの値を定期的にチェックし、体内の老廃物がどれくらい溜まっているかを把握します。
これらの数値が慢性的に高めになる場合、もしくは透析後でも高止まりしている場合は、治療時間の延長や頻度増加を検討することも方法のひとつです。
透析中の体調変化を確認
透析中に血圧が下がりやすい人や不整脈を起こしやすい人は、急激な除水が原因のことがあります。短時間で大量の除水を行うよりも、少し長めの時間を確保して除水ペースを緩やかにするほうが体への負担を減らしやすいです。
反対に、透析後の疲労感が強い場合は治療時間そのものが長すぎる可能性があります。
日常生活との兼ね合い
治療と生活を両立するためには、透析時間だけでなく透析日の過ごし方や頻度も調整が必要です。週に3回の血液透析だと、それぞれの曜日に大きく時間を取る必要がありますが、夜間透析を選ぶと日中の時間を活用しやすくなります。
また、腹膜透析では在宅で行うため、作業の合間や就寝中に交換するなど柔軟に対応できる点が特徴です。
代表的な透析時間と頻度の一覧
治療法 | 1回あたりの時間 | 週あたりの回数 | 特徴 |
---|---|---|---|
血液透析(通院型) | 4時間程度 | 3回 | 定期的に病院へ通う安心感 |
血液透析(夜間型) | 5~6時間 | 3回 | 日中の時間を活用しやすい |
在宅血液透析 | 3~4時間 | 週5~6回 | 高頻度で少量除水を行い負担軽減 |
腹膜透析 | 1回あたり30分~ | 1日数回 | 在宅で行いやすい |
透析時間と栄養管理・生活習慣
透析で老廃物や水分を排出しても、普段の食事や水分摂取量を適切に管理しなければ透析効果を十分に得にくいです。透析時間の長さとともに、食生活や生活習慣全体を見直すことが大切です。
食事管理のポイント
タンパク質やリン、カリウム、塩分など、注意すべき栄養素がいくつかあります。過剰摂取すると体内での老廃物が増え、透析時間を延ばす必要に迫られる場合があります。
栄養管理の専門家である管理栄養士からアドバイスを受けると、無理なく継続しやすい方法を見つけやすいです。
透析中に意識したい栄養素と食事調整
栄養素 | 役割 | 過剰摂取によるリスク |
---|---|---|
タンパク質 | 筋肉や臓器の維持 | 老廃物が増えやすく透析負担増 |
リン | 骨やエネルギー代謝に関与 | 骨ミネラル代謝異常やかゆみ |
カリウム | 筋肉や神経の機能維持 | 不整脈、心停止 |
塩分 | 体内の水分バランス維持 | 血圧上昇、むくみ |
運動や休養の取り方
適度な運動は血液循環を良くし、体力維持に役立ちます。透析が終わったあとに疲れが残る場合でも、無理のない範囲で体を動かすことが回復を促進することがあります。
ただし、透析直後は貧血気味になりやすいので、医師と相談しながら運動量を調整してください。
ストレスマネジメント
透析のスケジュールや食事制限によって、ストレスがたまりやすくなることがあります。趣味やリラクゼーション法を取り入れて心の負担を減らし、安定した日常生活を送ることが大切です。
ストレスが過度になると食欲不振や睡眠障害などを引き起こし、透析効果にも影響が出やすいです。
治療効果を高めるための工夫
透析時間を有効に活用するためには、さまざまな取り組みが考えられます。日頃の通院準備をしっかり行うことや、治療中にリラックスできる環境を整えることなどによって、負担感を軽減しつつ治療効果を向上させることができます。
透析前後の水分・塩分管理
大量に水分を摂ると、次回透析時の除水量が増えて心血管系への負担が大きくなるおそれがあります。
特に高齢の方や心疾患のある方は、毎日の体重変化をこまめにチェックしながら塩分や水分の摂取量を管理すると、透析中の不快症状を減らしやすいです。
透析の前後に意識したい行動
- 透析前の適度な水分制限
- 自宅での体重測定と記録
- 塩分過多にならない食事計画
- 透析後の水分補給はこまめに少量ずつ
- 医療スタッフとのコミュニケーション
血圧と体重の変動チェック
透析時間中に除水を行うことで、体重は減少しますが、血圧が下がる人もいます。個々のペースに合わせて除水スピードや時間を微調整するためには、透析前後の血圧と体重の計測結果をしっかり把握すると役立ちます。
看護師や臨床工学技士との連携も大切です。
治療環境の整備
長時間ベッドに横たわる血液透析では、快適な姿勢を保つ工夫が必要です。クッションを使ったり、音楽や読書などリラックスできるアイテムを活用したりすると、ストレスや退屈感が軽減します。
腹膜透析の場合でも、交換作業を行う場所を清潔に整えておくことや交換時間をきちんと確保することが重要です。
治療環境を整える工夫の一覧
対策 | 具体例 | 期待できる効果 |
---|---|---|
体勢のサポート | クッション、枕などを調整 | 腰痛や肩こりの軽減 |
娯楽の導入 | 音楽、読書、映画鑑賞 | 治療中のストレス緩和 |
衛生管理 | 使用器具の消毒、清潔なシーツの使用 | 感染リスクの低減 |
適度な会話 | 看護師や家族との交流 | 気分転換と孤独感の緩和 |
長期透析の継続で意識したいこと
腎不全が進行しやすい慢性疾患では、治療が長期化する傾向があります。透析時間を含め、定期的な見直しや継続的な調整を行いながら進めることが大切です。治療と並行して生活の質を高めるための方法も探してみましょう。
定期検査とフォローアップ
透析治療を受けている方は定期的に血液検査や心エコーなどを行い、体内の状態や合併症の有無を確認します。治療が長期化すると体の変化も起こりやすくなるため、検査結果を基に医師と相談し、必要に応じて時間や方法を変更していきます。
定期検査でチェックしたい項目
- 血液検査(BUN、クレアチニン、電解質など)
- X線やCTによる心臓・肺の状態確認
- 骨密度検査や骨代謝関連ホルモン検査
- 血圧測定・心電図検査
メンタルケアの大切さ
長期にわたる治療によって、心身の疲れが蓄積する場合があります。家族や友人、医療スタッフと悩みを共有したり、必要に応じてカウンセリングを受けたりして気持ちを整理することが大切です。
治療そのものだけでなく、患者さん自身の心の健康を保つことが継続のカギとなります。
定期的な目標設定
通院頻度や透析時間だけでなく、趣味や仕事などの活動に関する目標を設定すると、治療へのモチベーションを維持しやすいです。
たとえば「1日○分ウォーキングをする」や「週に○回、友人と交流する」など、小さな目標を重ねていくことで充実感を得られます。
よくある質問
- 透析時間が長くなれば効果は高くなりますか?
-
ある程度時間を確保すると、しっかりと老廃物や水分を除去できるメリットがあります。ただし、過度に長い時間を続けると疲労や血圧低下などが起こりやすくなり、逆に体に負担をかける恐れがあります。
自分の体調や血液データを考慮し、医師と話し合って最も安定した時間を探すことが大切です。
- 透析何時間行っても血圧が下がるのですが、対策はありますか?
-
除水ペースが急激だと血圧の急降下が起きやすいです。時間を長めに設定して除水をゆっくり進めたり、透析前に塩分や水分を摂りすぎていないか再確認したりすることで、血圧低下を緩和できる可能性があります。
また、透析中の定期的な体位変換や暖かい毛布などで体を保温する工夫も効果的です。
- 透析時間決め方は自分でコントロールできますか?
-
基本的には血液検査や合併症のリスクなど、医療的根拠をもとに主治医が判断します。しかし、患者さんのライフスタイルや希望も重要な検討要素です。
自分の体調や生活上の事情をしっかり伝えて、医師や看護師と相談しながら柔軟に調整することが望ましいです。
以上
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