透析患者さんによくある胃腸障害|吐き気・便秘・下痢などの原因と対策

透析患者さんによくある胃腸障害|吐き気・便秘・下痢などの原因と対策

透析中や通院の合間に起きる胃腸障害は、腎不全の影響に加え、血圧の変化や薬、胃の動きなどが重なって生じます。吐き気や胃もたれを透析のせいと決めつけず、いつ始まったかと、食べたり飲んだりできるかを手がかりに相談する姿勢が大切です。

吐血、黒く粘りのある便、強い腹痛、繰り返す嘔吐があれば、次の透析日まで待たずに連絡してください。治療中に気持ち悪くなったときも、その場でスタッフへ伝える必要があります。

この記事では透析中と日常生活で起きる胃腸の不調の背景、吐き気への備え、受診を急ぐ目安をまとめています。

目次

透析で胃腸の不調が重なる背景

胃腸の不調には、腎臓の働きが低下した影響と、透析や日々の治療に伴う影響が関わります。原因が1つに絞れず、複数の条件が重なる場合もあります。

老廃物の蓄積と続く食欲低下

腎臓から排出されるはずの老廃物などが体にたまり、吐き気や食欲低下を起こす状態を尿毒症と呼びます。透析はこうした体内の環境を整える治療ですが、通院を続けていても胃腸の症状が残る場合があります。

透析を始めた人の症状を追った米国の調査でも、吐き気や食欲低下が導入後に続く様子が報告されています。症状が残るからといって直ちに透析不足とは判断できず、食事や薬との関係も含めた評価が必要です。

食べられない日が続くなら、体重だけでなく食事量の変化を伝えると診察の助けになります。

水分を取り除く治療と血圧の変化

透析で余分な水分を取り除く操作を除水と呼び、その途中で血圧が下がると吐き気や冷や汗が出る場合があります。胃だけの不調に見える症状にも、全身を巡る血液の状態が関わることもあります。

透析中の血圧低下は珍しくない現象として研究されていますが、どの程度の低下を数えるかで報告される頻度は大きく変わります。血圧低下の割合を、そのまま吐き気が起きる割合として扱うのは不適切です。

治療中の気持ち悪さをその場で伝えると、症状が出た時点の血圧と照らし合わせて状態を確認できます。

薬・神経・食事制限の重なり

胃腸の働きを無意識に調整している自律神経が障害されると、食べ物を先へ送る動きが乱れる場合があります。糖尿病などの持病に加え、服用する薬や食事内容も一緒に確認する背景です。

食事中のリンを体に吸収されにくくするリン吸着薬、鉄剤、鎮痛薬は、種類によって胃腸症状を左右します。また、水分やカリウムの制限で食べる物が偏ると、便通や食事量にも影響が及びます。

便秘や下痢が吐き気と同時に起きているなら、胃の症状だけでなく便の変化も伝えると全体像がつかみやすくなります。薬や制限を自己判断で変える前に、何が重なっているかを確認する順序が大切です。

吐き気が出る時刻を手がかりにします

同じ吐き気でも、治療中に突然出る場合と、食後に長く続く場合では確認する点が違います。起きた時刻は原因を絞る手がかりになり、診断そのものではありません。

透析中に突然気持ち悪くなったとき

透析中に吐き気が出たら、強くなるのを待たず、その場でスタッフへ伝えてください。冷や汗やあくび、目の前が暗くなる感じが伴えば、それらも一緒に伝えると血圧変化の確認につながります。

吐きそうなときに1人でトイレへ歩くと、ふらついて転ぶ危険があるので、まず呼び出しボタンなどで知らせ、移動や姿勢の変更はスタッフの介助を受けるほうが安全です。

以前と似た症状でも、その日の原因は改めて確認する必要があります。強い腹痛や胸の痛みを伴うときは、痛みを最初に伝えてください。

透析後から帰宅後に続く場合

透析が終わってからの吐き気は、治療中の経過と、終了後に食事や水分を取れたかを合わせて確認します。帰宅時には落ち着いていても、立ち上がった際のめまいや強いだるさが加われば、医療機関に連絡してください。

体調が悪いまま帰宅せず、施設を出る前に症状を伝えると、その場で状態を確認できます。帰宅後に繰り返し吐く、立っていられないといった状態になった場合は、次の通院まで待たず連絡が必要です。

数十分で収まる不調であっても治療のたびに繰り返すなら、どれくらい続くかを次回の開始前に共有しましょう。

食後や透析のない日に出る場合

食後に胃が重くなる、少量で満腹になるといった症状では、食べ物が胃から腸へ送られるまでの時間に注目します。透析のない日にも続くなら、透析中の血圧変化だけで説明せず、食事や服薬との関係を確かめる必要があります。

たとえば、食べ始めてすぐなのか数時間後なのかでは、伝わる情報が異なります。毎食後のむかつきや、夜まで残る胃の重さも、診察時には具体的な時間に置き換えると伝えやすくなります。

起きる場面一緒に確認したい変化伝える内容
透析中冷や汗・めまい治療開始からの時間
透析終了後立った際のふらつき帰宅前後の経過
食後・透析のない日少量での満腹感食事から症状までの時間

食後の胃もたれは食べる量にも響く

食後の胃もたれが続くと、必要な栄養を取りにくくなります。食べられない理由を確かめながら、負担の少ない食べ方を個別に調整する必要があります。

胃から食べ物が出るまでの遅れ

胃排出遅延とは、食べ物が胃から先へ進むのに時間がかかる状態です。食後のむかつきや張り、食べ物が長く残る感じの背景になり、食欲があっても量を食べられなくなる場合があります。

糖尿病がない末期腎不全の人でも胃の排出の遅れを認めた小規模な研究がありますが、胃もたれを訴えるだけで、胃の動きが著しく弱くなる胃不全麻痺という病名が決まるわけではありません。

胃の動き以外の病気も含め、症状の経過と食べられている量に応じて、検査の要否や治療を考えます。

1回量と食べ方を相談する目安

1度に食べる量が多いとつらい場合は、1日の必要量を保ちながら食事を分ける方法が検討されます。食事の形や量の調整は、主治医・管理栄養士から受けている指示を優先し、自分の制限に合う方法を相談するのが基本です。

食べやすい物だけに絞ると、エネルギーやたんぱく質が不足するおそれがあります。おかゆやスープ中心に変える際も食事に含まれる水分が増えるため、食べやすさだけでは決められない点に注意が必要です。

食事を残した割合と、食べられた物を記録すると相談しやすくなります。「半分で満腹になる」といった情報があれば、食事量の調整と原因の確認を並行して進めやすいです。

食欲と実際に食べた量の違い

食欲があるかどうかと、実際に食べられた量は分けて伝えると役立ちます。空腹なのに気持ち悪くて箸が止まる場合も、食べ物を見ても欲しくならない場合も、栄養不足につながるので注意してください。

一方、体重の変化には体の水分も関わるため、体重が減っていないだけでは十分に食べられていると判断できません。食事量が減った期間や服が緩くなった感じも、診察時に伝えられる情報です。

困っている場面記録する内容
少量ですぐ満腹いつもの食事の何割か
食べた後に吐く食後からの時間と回数
食事全体が減った続いている日数

出血や強い腹痛があれば連絡を急いでください

吐血や黒く粘る便、強い腹痛は、単なる胃もたれとして様子を見る症状ではありません。反応が鈍い、失神するなど全身状態が悪い場合は、透析施設への連絡を待たず119番で救急要請してください。

赤い吐物や黒く粘る便

胃や腸の中で起きる出血を消化管出血と呼び、赤い血を吐くほか、コーヒーかすのような吐物や黒く粘りのある便として現れる場合があります。出血に腹痛が伴うとは限らず、痛みが弱いから安全とは判断できません。

こうした変化があれば、症状が出た時刻と量の見当を伝えて、直ちに医療機関へ連絡してください。出血量が多い、冷や汗や失神があるなどの状態なら救急要請が必要です。

鉄剤で便が黒くなる場合もありますが、薬の影響と自己判断して、新たな黒い便や強いだるさを見過ごすのは危険です。

腹部の張りと繰り返す嘔吐

強い腹痛に加えてお腹が張り、便もガスも出ずに吐く場合は、腸の中身が先へ進めなくなる腸閉塞などが疑われます。普段の便通の乱れとは異なる状態として、症状がそろいきる前でも強い痛みがあれば連絡が必要です。

痛みの強さが増している、吐く回数が増えているときは、朝まで待たず医療機関に相談してください。自分で食べ物や薬を追加して様子を見るより、受診先と移動方法を確認する段階です。

電話では、食後だったか透析後だったかより先に、強く痛んでいる場所と始まった時刻を伝えましょう。

飲めない状態や意識の変化

嘔吐が続いて飲んだ物を保てないと、水分や体内の塩分のバランスが崩れるおそれがあります。透析を受けていても脱水は起こりうるため、水分制限がある人も飲めない状態を連絡してください。

普段から尿がほとんど出ない人では、尿量の減少を脱水の目安にしにくい点も注意が必要です。口の乾きだけで判断せず、立てないほどのふらつきや反応の鈍さを重いサインとして扱います。

症状連絡・受診の目安
吐血・黒く粘る便直ちに医療機関へ連絡
強い腹痛・腹部の張り・嘔吐次の透析を待たず連絡
繰り返し吐いて飲めない当日中に連絡
失神・反応が鈍い・著しい衰弱119番で救急要請

透析施設へ伝える記録と相談の順序

軽い症状でも、繰り返す場合や食事量が減る場合は評価が必要です。症状の名前を正確に言うより、日常生活で何ができなくなったかを伝えると相談につながります。

短時間で収まっても繰り返す不調

軽いむかつきが短時間で収まり、食事や水分を普段どおり取れている場合は、経過を記録して次回の透析時に伝える対応が考えられます。記録中に症状が強まったり、繰り返し吐いたりした場合は、その時点で連絡へ切り替えます。

毎回同じ時刻に気持ち悪くなるなら、透析開始前に伝えると治療中の経過と照らし合わせやすくなります。終了間際まで我慢するより、症状が出る前から情報を共有するほうが相談の時間を確保できます。

「いつもの症状だから」と慣れてしまっていても、食べる量や外出が減るほどの負担なら相談してください。

時刻・回数・生活への影響

手帳やスマートフォンには、症状が始まった時刻と吐いた回数、食べられた量を残すと役立ちます。すべてを細かく書こうとせず、普段との違いが分かる程度の記録で十分です。

相談しづらい胃腸の話も、食べられず困っているなら遠慮せず伝えましょう。吐き気が続くつらさに加え、食事が怖くなっているなど気持ちへの影響も、対応を検討する材料になります。

記録する項目伝え方の例
時間と場面透析の終了前からむかつく
回数と経過夕食後に2回吐いた
食事への影響朝食が普段の半分になった
伴う変化冷や汗とふらつきがあった

便秘・下痢は普段との違いを添える

便通の記録は、出た回数だけでなく、いつもの状態から何が変わったかを書き残します。「便秘気味」という言葉だけでは、何日も出ていないのか、毎日出ても硬くてつらいのかが伝わりません。

最後に便が出た日、便の硬さ、いきむときのつらさ、出した後も残る感じを、分かる範囲で書いておきましょう。下痢についても、柔らかい便が1回出た場合と、水のような便が何度も続く場合を分けて伝えます。

始まった日と1日の回数に加え、夜中にトイレへ起きた、外出を控えたなど生活への影響も相談の材料になります。便の状態をうまく表現できなければ、「形がある」「形がなく水っぽい」といった言い方で構いません。

吐き気もあるときは、便通の変化とどちらが先だったかを添えると経過を共有しやすくなります。たとえば「月曜から便が硬く、火曜の夕食後からむかつく」と1つのメモにまとめます。思い出せない部分は無理に埋めず、確認できた事実だけを伝えてください。

便通のために使っている薬があれば、お薬手帳に加えて、実際に飲んだ日と回数も知らせます。毎日飲む薬と、必要なときだけ飲む薬では、処方内容だけで使用状況が分からない場合があります。便の記録と服用の記録を一緒に見せると、薬を使った前後の変化を説明できます。

電話で最初に伝えたい情報

急な不調で電話する際は、血液透析を受けていると伝え、現在いちばんつらい症状から説明します。続けて最後に透析を受けた日と、食事や水分を保てるかを伝えると受診の判断に役立ちます。家族が代わりに連絡するときは、本人が話せる状態かどうかも大切な情報です。

意識がはっきりしない人を無理に電話へ呼ぶ必要はなく、反応の異常があれば救急要請を優先します。日中と夜間で窓口が違う施設もあるため、通常の相談先と時間外の連絡先は手元に控えておくと安心です。救急受診になった際に備え、お薬手帳なども一緒に持ち出せるようにします。

自己調整を避けながら日常の負担を減らす

食事や薬との関連が疑われても、制限や処方をまとめて変えると体調の評価が難しくなります。いまの治療内容を共有し、症状に応じて調整を受けるのが基本です。

処方薬と市販薬を一緒に伝える

新しい薬を始めた後のむかつきは、薬の名前と飲み始めた日を伝えると確認しやすいです。処方された薬だけでなく、市販の胃薬や鎮痛薬を使っている場合も、製品名が分かる箱や写真が役立ちます。

薬との関連が疑わしくても、処方薬を自己判断で中止せず処方元へ相談してください。飲む時刻や量の変更が必要かどうかは、薬の目的と腎臓からの排出のされ方を踏まえて判断されます。

吐いた直後に同じ薬を追加で飲むと、すでに吸収された分と重なるおそれがあります。飲み直すか迷った場合は、服用から嘔吐するまでの時間を伝えて確認するほうが安全です。

食べられない日の水分と食事

吐いた分を取り戻そうとして、水やスポーツ飲料を一度に大量に飲む対応は避ける必要があります。必要な水分量は普段の制限や体調によって異なるため、飲めない状態が続くときは施設へ連絡して指示を受けます。

また、食欲が落ちたからといって、カリウムを含む食品を一律に増減すると栄養の偏りにつながります。普段食べている物と残した量をもとに、制限の範囲内で食べやすい組み合わせを相談しましょう。

受診を急ぐ症状がない日も、特定の食品だけで補おうとせず、食べられる量の変化を医療機関と共有することが大切です。

腸によいとされる食品への期待

腸内細菌に働きかける食品やサプリメントについては、腎臓病の症状をどの程度軽くするかの根拠が十分に確かとはいえません。胃腸の不調が続くときに、製品を足すだけで原因の確認を先延ばしにしない姿勢が大事です。

乳酸菌などを含む製品も、成分や量によっては食事の制限と合わせた確認が必要です。使いたい製品があるなら成分表示を見せ、いまの薬や食事との組み合わせについて相談できます。

よくある質問

吐き気があると、透析が足りていないのでしょうか?

吐き気だけで透析が足りているかどうかは判断できません。血圧の変化や胃の動き、薬なども関わるため、起きる時刻と食事への影響を伝えて評価を受ける必要があります。

透析中に少し気持ち悪い程度でも伝えてよいですか?

軽い吐き気の段階で伝えて大丈夫です。症状が出た時点の血圧や様子を確認できるため、我慢して終了まで待つより、その場で知らせるほうが役立ちます。

冷や汗や目の前が暗くなる感じがあれば一緒に伝え、1人で立ち上がらずスタッフの介助を受けてください。

胃もたれがある日は食事を抜いたほうがよいですか?

胃もたれだけを理由に食事を抜き続ける対応は勧められません。食べられる量と続いている日数を伝え、必要な栄養を保ちながら1回量などを調整できるか相談するのが基本です。

強い腹痛や繰り返す嘔吐がある場合は、食べ方の工夫を続ける段階ではなく、医療機関へ連絡して受診の指示を受ける必要があります。

夜に吐き気が出たら次の透析日まで待てますか?

繰り返し吐いて飲めない、強い腹痛や吐血がある場合は、次の透析日まで待たずに時間外の医療機関へ連絡してください。失神や反応の鈍さがある場合は119番で救急要請する状態です。

軽く短時間で収まり、食事や水分を普段どおり取れているなら、時刻と経過を記録して次の透析時に伝える対応が考えられます。判断に迷う場合も、施設から案内された時間外の連絡先へ相談できます。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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