透析での「除水」とは?体内の余分な水分を取り除く仕組みと量の決め方

透析での「除水」とは?体内の余分な水分を取り除く仕組みと量の決め方

透析治療を受けている方やこれから受ける方にとって、除水という言葉はよく耳にするかもしれません。

透析治療における除水とは、体内に溜まった余分な水分を取り除くことで、体のむくみ(浮腫)を防ぎ、心臓や肺への負担を軽減します。

この記事では、透析における除水とは何か、仕組み、そして透析 除 水量の決め方について、詳しく解説していきます。

目次

透析における除水とは なぜ必要なのか

透析治療において「除水」は、老廃物を取り除くことと並んで、治療の根幹をなす重要な目的の一つです。まずは、除水とは何か、そしてなぜ透析患者さんにとって除水が必要なのか、見ていきましょう。

腎臓の役割と水分の調節

健康な腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排出するだけでなく、体内の水分バランスを精密に調節する役割も担っています。

私たちは毎日、飲み水や食事から水分を摂取しますが、腎臓は体の状態に合わせて尿の量を増やしたり減らしたりして、体内の水分量を常に一定に保ちます。

暑い日や運動をして汗をかいた時は尿が濃く少なくなり、水分を多く摂った時は尿が薄く多くなるのは、腎臓の調節機能が働いているためです。

透析治療における除水の定義

透析治療が必要になるということは、腎臓のこの水分調節機能が著しく低下している状態です。尿として水分を十分に排出できなくなると、摂取した水分が体内に溜まり続けてしまいます。

透析治療における除水とは、腎臓の代わりに、透析の仕組みを利用して体内に溜まった余分な水分を取り除く治療操作で、透析除水は、透析患者さんの体内の水分バランスを正常に保つために行います。

除水を行わないとどうなるか

もし除水を行わずに水分が体内に溜まり続けると、さまざまな問題が生じ、まず現れやすいのがむくみ(浮腫)です。特に足や顔がむくみやすくなります。

さらに水分が溜まると、血液の全体量(循環血液量)が増加し、血管にかかる圧力が強くなり、これが高血圧の原因です。高血圧が続くと、心臓は常に強い力で血液を送り出さなければならず、大きな負担がかかり続けます。

心臓や肺への負担軽減

除水を行わないことによる最大のリスクの一つが、心臓や肺への深刻な影響です。体内の水分量が過剰になると、心臓への負担が増大し心不全を起こす可能性があります。

心不全は、心臓がポンプとしての役割を十分に果たせなくなった状態で、息切れや動悸などの症状が現れます。

さらに深刻な状態として肺水腫があり、これは、肺に水が溜まってしまう状態で、呼吸が極端に苦しくなり、命に関わることもあります。透析における除水は、心臓や肺への負担を取り除き、生命を守るためにも極めて重要です。

除水の基本的な仕組み どのように水分を取り除くのか

透析治療で水分を取り除くと言っても、どのような方法で行うのでしょうか。透析治療には大きく分けて「血液透析(HD)」と「腹膜透析(PD)」があり、それぞれ除水の仕組みが異なります。

血液透析(HD)での除水の原理

血液透析では、血液を体外に取り出し、ダイアライザ(人工腎臓)と呼ばれるフィルターを通して浄化し、除水は、ダイアライザで行います。血液透析における除水は、主に限外濾過(UF)という原理を利用します。

限外濾過(UF)の役割

限外濾過とは、圧力をかけて液体(この場合は血液)から水分を押し出す方法です。ダイアライザの中には、血液が通る細い管と、その外側を透析液が流れる空間があります。

透析装置が血液側に陽圧をかけたり、透析液側に陰圧(吸引する力)をかけたりすることで、血液側から透析液側へと圧力の差(圧較差)を生み出します。

圧力差によって、血液中の余分な水分が、ダイアライザの膜(半透膜)を通して押し出され、体外へ排出され、これが血液透析における除水の基本的な仕組みです。

浸透圧と静水圧

透析では浸透圧と静水圧という二つの力が働き、老廃物の除去は、主に物質の濃度差による浸透圧(拡散)を利用します。

一方、除水は、物理的な圧力差による静水圧(限外濾過)を主として利用します。

透析装置は、静水圧を精密にコントロールすることで、1時間あたりにどれくらいの水分を取り除くか(除水速度)を調整し、目標とする透析 除 水量を達成します。

腹膜透析(PD)での除水の原理

腹膜透析は、患者さん自身のお腹の中にある腹膜を利用する透析方法です。

お腹に挿入したカテーテルから透析液(腹膜透析液)を注入し、一定時間お腹に溜めておくことで、腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分が透析液側に移動し、その後、透析液を体外へ排出します。

浸透圧を利用した除水

腹膜透析での除水は血液透析とは異なり、主に浸透圧を利用し、腹膜透析液には、水分を引き寄せるための物質(浸透圧物質)として、一般的にブドウ糖(グルコース)が使われます。

ブドウ糖濃度が高い透析液をお腹に入れると、腹膜を隔てて接している血液との間に浸透圧の差が生じ、体は、濃度差を薄めようとして、血液側(濃度の低い方)から透析液側(濃度の高い方)へと水分を移動させます。

この原理によって、血液中の余分な水分が腹膜透析液側に引き寄せられ、除水が行われるのです。

腹膜の性質

腹膜は、人によって水や物質を通す能力(透過性)が異なり、腹膜の性質によって、除水効率も変わってきます。

腹膜透析では、定期的に腹膜の機能を評価し、その人に合ったブドウ糖濃度の透析液や、透析液をお腹に溜めておく時間(貯留時間)を選択することが大切です。

血液透析と腹膜透析の除水の違い

どちらの透析方法も体内の余分な水分を取り除くという目的は同じですが、方法と特徴には違いがあります。

血液透析は、週に数回、医療機関などで比較的短時間(1回4〜5時間程度)に集中的に除水を行い、腹膜透析は、自宅などで毎日、持続的に(1日中または睡眠中)緩やかに除水を行います。

透析方法による除水の特徴

特徴血液透析(HD)腹膜透析(PD)
除水の原理主に静水圧(限外濾過)主に浸透圧(ブドウ糖濃度)
除水速度短時間で比較的多い量を除水持続的・緩やかに除水
実施場所主に医療機関主に自宅(または職場)

血液透析では透析と透析の間に増えた水分を一度に引くため、体への負担(特に血圧の変動など)が大きくなる可能性があります。

腹膜透析は、持続的に除水するため、血圧の変動が比較的少ないとされていますが、日々の自己管理がより重要です。

透析で除水が必要になる理由

透析患者さんが除水を必要とするのは、体内に余分な水分が溜まってしまうからです。背景には、腎機能の低下と日常生活が深く関係しています。

腎機能低下による尿量の減少

最も直接的な理由は、腎臓の機能が著しく低下し、尿をほとんど、あるいは全く作れなくなることです。

健康な腎臓は1日に1〜2リットルの尿を作り、体内の余分な水分を排出しますが、透析が必要な段階になると、この機能が失われるため、摂取した水分がそのまま体内に蓄積してしまいます。

透析治療を開始した後も、残っている腎機能(残存腎機能)によってある程度の尿量が保たれることもありますが、多くの場合、時間とともに尿量は減少していきます。

水分摂取と排出のアンバランス

尿量がほぼゼロになると、体外への水分の排出は、透析による除水に頼ることになり、水分摂取は日々続きます。飲み水はもちろんのこと、食事にも多くの水分が含まれています。

「入る水分(摂取)」と「出る水分(排出)」のバランスが、尿の減少によって極端に崩れることが、水分の蓄積、すなわち除水が必要となる根本的な原因です。

体内水分蓄積の要因

  • 腎臓からの尿排出の著しい減少
  • 水、お茶、ジュースなどの飲水
  • 食事に含まれる水分(汁物、米、野菜など)
  • 塩分摂取による水分の貯留(喉の渇き)

塩分摂取と水分の関係

水分が溜まるもう一つの大きな要因は、塩分(ナトリウム)の摂取です。塩辛いものを食べると、喉が渇いて水が飲みたくなります。これは、体内の塩分濃度が上がると、薄めようとして体が水分を要求するためです。

また、体は塩分濃度を一定に保とうとするため、摂取した塩分を排出できない場合、塩分に見合った水分を体内に溜め込もうとします。

塩分を多く摂るほど、水分も溜まりやすくなり、結果として透析で取り除かなければならない除水量も増えてしまうのです。

体内に水分が溜まった時のサイン

透析と透析の間に水分が溜まってくると、体はさまざまなサインを出し、除水が必要な状態であることを示していて、最も分かりやすいサインは体重の増加です。

透析間の体重増加は、ほとんどが水分(水)の重さで、水分が溜まりすぎると、体に悪影響が及び始めます。

水分が溜まった時の主な症状

症状の場所具体的なサイン
全身体重の急激な増加(1日で1kg以上など)
足・すねむくみ(指で押すと皮膚がへこんで戻らない)
息切れ、咳、横になると呼吸が苦しい
心臓・血管動悸、血圧の上昇

横になると苦しい(起坐呼吸)や、息切れがひどくなる場合は、肺に水が溜まっている(肺水腫)可能性があり、注意が必要です。

除水量の決め方

透析治療では、毎回どれくらいの水分を取り除くか、透析除水量を適切に設定することが非常に重要で、除水量を決める上で、最も基本的な指標となるのがドライウェイト(DW)です。

ドライウェイト(DW)とは何か

ドライウェイト(Dry Weight:DW)とは、透析患者さんにとって「体内の水分量が適正で、体に余分な水分が溜まっていない状態の体重」です。

日本語では「基礎体重」や「目標体重」と呼ばれることもあり、むくみがなく、血圧が安定し、心臓への負担が最も少ないと想定される体重の目安です。

透析治療では、ドライウェイトを目標体重として設定し、透析終了時にその体重になるように除水量を調整します。

体にとって最適な水分量の目安

ドライウェイトは、単に痩せていた時の体重ではなく、現在の筋肉量や脂肪量に見合った、適正な水分量を反映した体重です。

この状態では、透析と透析の間(非透析日)に血圧が過度に上昇せず、かといって透析後に血圧が下がりすぎたり、脱水症状(倦怠感や足のつり)が起きたりしない、バランスの取れた状態が期待されます。

どのように設定するか

ドライウェイトの設定は、医師や医療スタッフが患者さんの状態を総合的に評価して決定します。

血圧の変動、むくみの有無、透析中の症状(血圧低下やこむら返りなど)のほか、胸部レントゲン写真での心臓の大きさ(心胸郭比)や、体成分分析装置による水分量の評価、血液検査データといった客観的な指標も参考にします。

透析ごとの除水量の計算方法

毎回の透析で取り除くべき除水量は、ドライウェイトを基準にして計算します。基本的な計算式は以下の通りです。

総除水量 =(透析前の体重)-(ドライウェイト)+(透析中に摂取する水分・食事量)

ドライウェイトが60.0kgの患者さんが、透析当日の朝、病院で測定した体重(透析前体重)が62.5kgだったとします。この場合、前回の透析終了時から2.5kg(=2500mL)の水分が体内に溜まったと考えられます。

もし、この患者さんが透析中に水分補給やお茶菓子などで0.2kg(=200mL)を摂取する予定であれば、それも合わせて取り除く必要があり、この日の総除水量は、2.5kg + 0.2kg = 2.7kg(2700mL)です。

透析除水量の計算例

項目
透析前の体重62.5 kg
ドライウェイト(DW)60.0 kg
体重増加(水分増加)2.5 kg (2500 mL)
透析中の飲食分(予測)0.2 kg (200 mL)
総除水量(目標)2.7 kg (2700 mL)

ドライウェイトの見直しと調整

ドライウェイトは、一度決めたら永久に変わらないものではなく、定期的に見直す必要があるものです。

定期的な評価の必要性

夏場で汗を多くかく時期と、冬場で汗をかきにくい時期とでは、体内の水分バランスが変わることがあり、また、食欲が落ちて食事が摂れなくなると、筋肉や脂肪が減って体重(ドライウェイト)自体が減少することもあります。

食欲が回復し、栄養状態が良くなって筋肉や脂肪が増えれば、ドライウェイトは増やすことが必要です。

ドライウェイトが適切でないと、除水不足や除水過多の原因となるため、医療スタッフは患者さんの状態を注意深く観察し、定期的にドライウェイトの評価と調整を行います。

体調や食欲の変化による影響

体重が減ったからといって、それが必ずしもドライウェイトの減少を意味するとは限りません。単に食事が摂れず、水分も摂れていない脱水状態である可能性もあります。

自己判断でドライウェイトを変更するのではなく、体調の変化や食欲の変化があれば、医療スタッフに相談することが大切です。

除水が不十分・過剰な場合のリスク

透析治療において、除水量は多すぎても少なすぎても体に良くありません。透析除水とは、適切な量を確実に取り除くことが求められる治療で、除水のバランスが崩れると、さまざまなリスクが生じます。

除水が不十分な場合(水分過多)

透析で設定した除水量が、体内に溜まった水分量よりも少なかった場合、あるいはドライウェイトの設定が甘く、常に水分が多めの状態(水分過多)が続くと、体に大きな負担がかかります。

高血圧や心不全のリスク

体内の水分量が多いと、血液の全体量(循環血液量)が増加し、血管の壁にかかる圧力が強くなり、高血圧を起こします。透析患者さんの高血圧の多くは、この水分過多(体液過剰)が原因です。

高血圧の状態が続くと、心臓は常に強い力で血液を送り出す必要があり、次第に心臓の筋肉が厚く、硬くなってしまい(心肥大)、進行すると、心臓のポンプ機能が低下し、心不全に至るリスクが高まります。

肺水腫(肺に水が溜まる)

水分過多がさらに進行し、心臓の機能が追いつかなくなると、血液中の水分が肺の組織(肺胞)に漏れ出すことがあり、これが肺水腫です。肺水腫になると、溺れているような極度の呼吸困難に陥り、緊急の処置が必要となります。

除水が過剰な場合(脱水)

逆に、ドライウェイトを低く設定しすぎたり、透析間の体重増加が少ないにもかかわらず多くの除水を行ったりすると、体は水分不足(脱水)の状態になります。

低血圧やこむら返り

除水によって循環血液量が急激に減少すると、血圧が維持できなくなり、透析中に血圧が低下(透析時低血圧)することがあります。血圧が下がると、めまい、ふらつき、吐き気、冷や汗などの不快な症状が現れます。

また、急激な除水によって筋肉への血流が不足したり、電解質のバランスが崩れたりすることで、足の筋肉がけいれんするこむら返りが起こりやすいです。

倦怠感やめまい

透析終了後にドライウェイトを除水しすぎた状態になると、帰宅後も倦怠感が強く残ったり、立ち上がった時にめまい(起立性低血圧)が起きたりすることがあり、体が脱水状態にあるサインです。

長期的な影響

短期的な症状だけでなく、除水のアンバランスは長期的に見ても体に悪影響を及ぼします。

除水不足が慢性的に続けば心血管系への負担が蓄積し、逆に除水過多による頻繁な血圧低下は、心臓や脳への血流不足を起こし、また残っている腎機能(残存腎機能)をさらに低下させる一因です。

除水コントロールと長期的リスク

状態短期的な症状長期的なリスク
除水不足(慢性)むくみ、高血圧、息切れ心肥大、心不全、動脈硬化、脳卒中
除水過剰(頻回)低血圧、倦怠感、こむら返り心血管への負担、残存腎機能の低下促進

安定した透析生活を送るためには、日々の体重管理と適切なドライウェイト設定により、除水不足と除水過剰のどちらにも偏らない、バランスの取れた水分管理を維持することが極めて重要です。

透析中の除水に伴う症状と対処法

血液透析では、中1日や中2日で溜まった水分を、4〜5時間という比較的短い時間で取り除きますが、急激な水分の移動は、時に体に不快な症状を起こすことがあります。

透析中に起こりやすい症状

透析中の除水に関連して起こりやすい症状には、以下のようなものがあります。

除水に関連する透析中の症状

  • 血圧低下(めまい、ふらつき、吐き気、冷や汗)
  • こむら返り(足のつり)
  • 吐き気・嘔吐
  • 頭痛
  • 胸痛、動悸

症状は、除水速度が速い場合や、その日の体調、透析間の体重増加(除水量)が多い場合などに起こりやすいです。

血圧低下の原因と対応

透析中に最も注意が必要な症状の一つが血圧低下で、主な原因は、除水によって血管内の水分(循環血液量)が減少するスピードに、体が対応しきれなくなることです。

通常、血管内の水分が減っても、末梢の血管が収縮することで血圧を維持しようとしますが、この代償機能が追い付かないと血圧が低下します。

透析間の体重増加が多く、除水速度を速く設定しなければならない日は、血圧が下がりやすくなります。症状(めまい、吐き気など)を感じたら、すぐに医療スタッフに伝えることが重要です。

対応としては、除水速度を一時的に緩めたり、停止したり、血圧を上げる薬を使用したり、足を上げる(下肢挙上)などの処置を行います。

こむら返りの原因と対応

こむら返りも、透析中によく見られる症状で、急激な除水による循環血液量の減少で、筋肉への血流が不足することが一因です。また、水分と共に電解質(ナトリウムやカリウムなど)も変化することも影響している可能性があります。

こむら返りが起きた場合も、我慢せずにすぐに医療スタッフに知らせてください。マッサージや、除水速度の調整、場合によっては電解質を補正する注射などを行うことで症状が和らぎます。

透析中の不快症状と主な原因

症状主な原因(推定)対処法(例)
血圧低下急激な除水による循環血液量減少除水速度の調整、補液、昇圧剤
こむら返り筋肉への血流低下、電解質変化マッサージ、除水速度の調整、補液

症状が出た時の伝え方

透析中に「少し気分が悪い」「足がつりそうだ」といった違和感を覚えたら、症状がひどくなる前に、早めに医療スタッフに伝えることが何よりも大切です。

我慢していると、急に血圧が下がって意識が遠のくなど、より強い症状につながる可能性があります。早めに対応することで、症状を最小限に抑え、安全に透析治療を続けることができます。

日常生活で注意すべき水分管理

透析治療と除水を円滑に進め、透析中の不快な症状や合併症を防ぐためには、医療機関での治療だけでなく、日常生活での自己管理が重要です。

水分摂取量の管理

腎臓から尿として水分を排出できないため、透析患者さんは水分摂取量を制限する必要があります。これは、次の透析までに体内に溜まる水分(体重増加)を、体に負担がかからない範囲に抑えるためです。

適切な水分摂取量の目安

1日の水分摂取量の目安は、患者さん個々の状態(尿量、体格、心臓の機能など)によって異なります。

一般的には「尿量+500〜700mL程度」と言われることもありますが、自己判断せず、必ず主治医や医療スタッフの指示に従ってください。

水分としてカウントするもの

水分と聞くと飲み物だけを想像しがちですが、食べ物にも多くの水分が含まれているので、すべてを水分摂取量として考慮する必要があります。

飲水以外の水分源

種類具体例注意点
飲み物水、お茶、ジュース、コーヒー、牛乳など当然ながら水分として計算します
汁物味噌汁、スープ、ラーメンのつゆ、鍋物予想以上に水分量が多い食品です
食品果物、野菜、ゼリー、アイス、ヨーグルト、豆腐食品自体に含まれる水分も考慮します

汁物や麺類のつゆは、塩分も水分も多いため、できるだけ残す習慣をつけることが大切です。また、ご飯やパン、肉や魚にも水分は含まれています。

塩分摂取量の管理

水分管理と表裏一体で、それ以上に重要とも言えるのが塩分管理です。塩分(ナトリウム)を多く摂ると、体は塩分濃度を薄めようとして水分を欲します(喉が渇く)。

塩分と水分の深い関係

塩分を制限することで、喉の渇きを抑え、結果として水分摂取量を減らしやすくなり、水分だけを我慢しようとしても、塩分を多く摂っていれば喉の渇きは強くなり、水分管理は非常に困難になります。

「水分を制するには、まず塩分を制す」と言われるほど、減塩は透析患者さんにとって重要で、透析患者さんの塩分摂取の目標は1日6g未満です。

減塩の工夫

塩分を控えるためには、日々の食事で工夫が必要で、単に味を薄くするだけでなく、他の方法で美味しさを補うことが長続きのコツです。

日常でできる減塩の工夫

  • 香辛料(こしょう、カレー粉など)や香味野菜(しそ、みょうが、ねぎなど)を利用する
  • 酢やレモンなどの酸味でアクセントをつける
  • 加工食品(ハム、ソーセージ、練り物)やインスタント食品を控える
  • 汁物は具だくさんにして、汁を飲む量を減らす
  • 醤油やソースは「かける」のではなく、小皿に入れて「つけて」使う

体重測定の習慣化

透析間の体重増加は、水分がどれだけ溜まったかを知るための最も客観的で重要なバロメーターです。毎日決まった時間に体重を測定し、記録する習慣をつけましょう。

毎日の体重チェックの重要性

体重測定により、自分の水分・塩分管理がうまくいっているかどうかが一目でわかります。体重の増え方が多ければ「昨日は塩分が多かったかな」「水分を摂りすぎたかな」と振り返ることができ、次の日の行動を修正することにつながります。

推奨される体重測定のタイミング

タイミング目的・理由
起床後・排尿後毎日の基準となる体重(変動)を知るため(服は常に同じもの)
透析前(病院で)透析間の体重増加(=水分増加量)を正確に把握するため
透析後(病院で)ドライウェイト(DW)が達成できたかを確認するため

透析間の体重増加の目安

次の透析までに増える体重は、少ないに越したことはありません。体重増加が多いと、それだけ多くの除水が必要になり、透析中の血圧低下やこむら返りなどの症状が起こりやすくなります。

透析間の体重増加は、ドライウェイト(DW)に対して、中1日(月曜から水曜など)で3%以内、中2日(金曜から月曜など)で5%以内が目安です。

透析間の望ましい体重増加の目安

透析間隔体重増加の目安(ドライウェイト比)
中1日(例:月→水)ドライウェイト(DW)の 3%以内
中2日(例:金→月)ドライウェイト(DW)の 5%以内

ドライウェイトが60kgの人であれば、中1日では 60kg × 3% = 1.8kg まで、中2日では 60kg × 5% = 3.0kg までの体重増加に抑えることが目標です。

透析での「除水」に関するよくある質問

最後に、透析の除水に関して、患者さんからよく寄せられる質問と回答をまとめます。

除水は痛いですか?

除水自体が直接痛みを起こすことは通常ありません。除水は、血液から水分だけをゆっくりと取り除く操作です。

ただし、除水量が多かったり、体調が万全でなかったりすると、透析中に血圧が下がったり、足がつったり(こむら返り)することがあり、不快感や痛みとして感じられる場合があります。

ドライウェイト(DW)は一度決めたら変わりませんか?

ドライウェイトは変動することがあります。ドライウェイトは、その時点での適正な水分量の体重であり、筋肉や脂肪の量が変われば、ドライウェイトも見直す必要があります。

夏場に食欲が落ちて体重が減った場合や、栄養状態が良くなり筋肉がついて体重が増えた場合などです。

定期的に血圧やむくみの状態、レントゲンでの心臓の大きさなどを評価し、医療スタッフが最適なドライウェイトを判断し、調整を行います。

水分を我慢するのがつらいです。どうすればよいですか?

まず試していただきたいのは減塩です。塩辛いものを食べると喉が渇き、水分が欲しくなります。食事の塩分を控えることで、喉の渇きそのものが軽減され、飲水量を抑えやすくなる場合があります。

除水がうまくいかないとどうなりますか?

除水が不十分で体内に水分が溜まりすぎると(水分過多)、むくみ、高血圧、息切れ(心不全や肺水腫)などの症状が出やすくなります。

除水が多すぎると(脱水)、低血圧、めまい、こむら返り、倦怠感などが起こりやすくなります。安定した透析生活を長く続けるためには、適切な除水量を維持し、合併症を防ぐことが非常に重要です。

以上

参考文献

Kawanishi H, Moriishi M, Takahashi N, Tsuchiya S. The central dialysis fluid delivery system (CDDS): is it specialty in Japan?. Renal Replacement Therapy. 2016 Jan 28;2(1):1.

Mineshima M, Kawanishi H, Ase T, Kawasaki T, Tomo T, Nakamoto H, Subcommittee on the Function and Efficacy of Blood Purification Therapy, the Scientific Academic Committee of the Japanese Society for Dialysis Therapy. 2016 update Japanese Society for Dialysis Therapy Standard of fluids for hemodialysis and related therapies. Renal Replacement Therapy. 2018 Mar 21;4(1):15.

Kawasaki T, Uchino J, Shinoda T, Kawanishi H. Guidance of technical management of dialysis water and dialysis fluid for the Japan Association for Clinical Engineering Technologists. Blood purification. 2009 Jun 26;27(1):41.

Hasegawa T, Nakai S, Masakane I, Watanabe Y, Iseki K, Tsubakihara Y, Akizawa T. Dialysis fluid endotoxin level and mortality in maintenance hemodialysis: a nationwide cohort study. American Journal of Kidney Diseases. 2015 Jun 1;65(6):899-904.

Kashiwagi T, Sato K, Kawakami S, Kiyomoto M, Enomoto M, Suzuki T, Genei H, Nakada H, Iino Y, Katayama Y. Effects of reduced dialysis fluid flow in hemodialysis. Journal of Nippon Medical School. 2013;80(2):119-30.

Nakayama M. Fluid status and its management in Japanese peritoneal dialysis patients. Peritoneal dialysis international. 2006 Mar;26(2):144-9.

Flythe JE, Kimmel SE, Brunelli SM. Rapid fluid removal during dialysis is associated with cardiovascular morbidity and mortality. Kidney international. 2011 Jan 2;79(2):250-7.

Ateş K, Nergızoğlu G, Keven K, Şen A, Kutlay S, Ertürk Ş, Duman N, Karatan O, Ertuğ AE. Effect of fluid and sodium removal on mortality in peritoneal dialysis patients. Kidney international. 2001 Aug 1;60(2):767-76.

ISPD Adequacy of Peritoneal Dialysis Working Group. Guideline on targets for solute and fluid removal in adult patients on chronic peritoneal dialysis. Peritoneal dialysis international. 2006 Sep;26(5):520-2.

Fischbach M, Schmitt CP, Shroff R, Zaloszyc A, Warady BA. Increasing sodium removal on peritoneal dialysis: applying dialysis mechanics to the peritoneal dialysis prescription. Kidney international. 2016 Apr 1;89(4):761-6.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次