透析中でも入所できる施設はある?種類や探し方、注意点を解説

透析中でも入所できる施設はある?種類や探し方、注意点を解説

腎臓の機能が低下し、透析治療が必要になった方やそのご家族にとって、今後の生活環境は大きな関心事の一つです。

特に、ご自宅での生活が難しくなってきた場合、「透析を受けながら入所できる施設はあるのだろうか」「どのような施設を選べば良いのか」といった疑問や不安を抱える方も少なくありません。

この記事では、透析治療中の方が入所できる施設の種類や、施設探しの具体的な方法、入所する際の注意点などを分かりやすく解説します。

目次

透析治療と施設入所の現状

透析治療は、腎臓の機能が著しく低下した方にとって、生命を維持するために重要な治療法です。近年、高齢化の進展に伴い、透析患者さんの数も増加傾向にあります。

それに伴い、透析治療を受けながら施設での生活を希望する方や、その必要性が高まっているのが現状です。ここでは、透析治療の概要と、施設入所を検討する背景について説明します。

透析治療が必要となる主な原因

透析治療が必要になる最も多い原因は、糖尿病性腎症です。長期間にわたる高血糖状態が腎臓の血管を傷つけ、徐々に腎機能が低下します。その他、慢性糸球体腎炎や腎硬化症なども透析導入の主な原因疾患として挙げられます。

これらの疾患により腎機能が一定以下になると、体内の老廃物や余分な水分を十分に排泄できなくなるため、透析治療によってその機能を代替する必要が生じます。

主な原因疾患

原因疾患概要腎機能への影響
糖尿病性腎症糖尿病の合併症の一つ腎臓のろ過機能が低下
慢性糸球体腎炎糸球体に慢性的な炎症が起こる徐々に腎機能が悪化
腎硬化症高血圧などによる動脈硬化が原因腎臓の血管が硬化し機能低下

高齢化と透析患者の増加

日本の高齢化は急速に進んでおり、それに伴い透析患者さんの平均年齢も上昇しています。高齢になると、複数の疾患を抱える方が増え、身体機能の低下も見られるため、ご自宅での自己管理や通院が困難になるケースも少なくありません。

このような背景から、透析治療を受けながら生活をサポートしてくれる施設への入所ニーズが高まっています。

施設入所を検討する背景

透析患者さんが施設入所を検討する背景には、様々な理由があります。例えば、独居で身の回りのことが難しくなった、家族の介護負担が大きい、医療的なケアが必要になった、などが挙げられます。

また、透析治療は週に数回の通院が必要であり、その送迎や付き添いが困難になることも、施設入所を考えるきっかけの一つです。ご本人やご家族の状況、そして必要なサポートの内容を考慮し、施設入所がより良い選択となる場合があります。

透析患者受け入れ施設の必要性

透析患者さんは、定期的な透析治療に加え、食事管理やシャント管理など、特有の医療的ケアを必要とします。そのため、透析患者さんを受け入れる施設には、これらのケアに対応できる体制が求められます。

具体的には、透析クリニックへの送迎サービス、看護師による体調管理、栄養士による食事指導などが挙げられます。透析患者さんが安心して生活できる環境を提供するため、受け入れ可能な施設の存在は社会的にとても重要です。

透析患者さんが入所できる施設の種類

透析治療を受けながら入所できる施設には、いくつかの種類があります。それぞれの施設で提供されるサービスや入所条件、費用などが異なりますので、ご自身の状況や希望に合った施設を選ぶことが大切です。

ここでは、主な施設の種類とその特徴について解説します。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設(老健)は、病状が安定期にある要介護者に対し、医学的管理のもとで看護、介護、リハビリテーションを提供し、在宅復帰を目指す施設です。

入所期間は原則として3ヶ月から6ヶ月程度とされていますが、施設によっては透析患者さんの長期的な受け入れを行っている場合もあります。

老健での透析対応

老健の中には、透析クリニックが併設されている施設や、近隣の透析クリニックと連携して送迎サービスを提供している施設があります。入所前に、透析治療の継続が可能かどうか、送迎体制は整っているかなどを確認することが重要です。

また、看護師によるシャント管理や体調管理を受けられるかどうかもポイントになります。

老健の入所条件

老健の入所対象者は、原則として要介護1以上の認定を受けている65歳以上の方です。ただし、40歳から64歳の方でも、特定疾病により介護が必要と認定された場合は入所可能です。入所には、病状が安定していることが条件となります。

老健の費用目安

老健の費用は、要介護度や部屋のタイプ(多床室、個室など)、提供されるサービスによって異なります。月額費用の目安としては、介護保険の自己負担分、食費、居住費などを合わせて10万円から20万円程度となることが多いです。

その他、日常生活費などが別途かかる場合があります。

老健の主なサービス内容

サービス項目内容透析患者への配慮
医学的管理・看護医師による健康管理、看護師によるケアシャント管理、体調変化への対応
介護サービス食事、入浴、排泄などの介助透析後の安静確保など
リハビリテーション理学療法士などによる機能訓練体力維持、ADL向上支援

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、介護が必要な高齢者が、食事や入浴、排泄などの介護サービスや、健康管理、生活支援サービスを受けながら生活する施設です。

24時間体制で介護スタッフが常駐している施設が多く、看取りまで対応しているところもあります。透析患者さんの受け入れに積極的な施設も増えています。

透析クリニック併設型

一部の介護付き有料老人ホームには、透析クリニックが併設されている場合があります。この場合、施設内で透析治療を受けられるため、通院の負担が大幅に軽減されます。

移動距離が短く、体調が不安定な方にとっては大きなメリットとなります。

外部クリニック連携型

多くの介護付き有料老人ホームでは、近隣の透析クリニックと連携し、送迎サービスを提供しています。定期的な通院が必要な透析患者さんにとって、送迎体制の有無や内容は重要な確認ポイントです。

連携先のクリニックの情報や、送迎の頻度、費用なども確認しましょう。

有料老人ホームの費用目安

介護付き有料老人ホームの費用は、施設の種類や立地、居室の広さ、提供されるサービス内容によって大きく異なります。入居一時金が必要な場合と不要な場合があります。

月額費用は、家賃相当額、管理費、食費、介護保険の自己負担分などを合わせて、15万円から30万円以上と幅広いです。

有料老人ホームのメリット・デメリット

項目メリットデメリット
サービス手厚い介護、多様なレクリエーション施設により差が大きい
医療連携看護師常駐、協力医療機関との連携透析対応は要確認
費用選択肢が豊富比較的高額になる場合がある

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

グループホームは、認知症の診断を受けた高齢者が、少人数(5人から9人程度)のユニット単位で共同生活を送る施設です。家庭的な雰囲気の中で、専門スタッフによるケアを受けながら、自立した生活を目指します。

透析治療が必要な認知症の方の受け入れについては、施設の方針や体制によります。

グループホームでの透析対応

グループホームで透析患者さんを受け入れる場合、近隣の透析クリニックへの通院が必要となります。施設によっては送迎サービスを行っている場合もありますが、基本的にはご家族の協力や外部の介護タクシーなどを利用することが多いです。

入所前に、透析治療の継続が可能か、通院のサポート体制について十分に確認することが大切です。

グループホームの入所条件

グループホームの入所対象者は、要支援2または要介護1以上の認定を受け、医師から認知症の診断を受けている方です。また、施設と同じ市区町村に住民票があることが原則となります。

共同生活を送るため、ある程度の身の回りのことができる方が対象となることが多いです。

グループホームの費用目安

グループホームの費用は、家賃、食費、水道光熱費、介護保険の自己負担分などで構成されます。月額費用の目安は、15万円から25万円程度です。その他、医療費やおむつ代などが別途かかる場合があります。

その他の施設(サービス付き高齢者向け住宅など)

上記以外にも、透析患者さんが利用できる可能性のある施設として、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)やケアハウスなどがあります。

これらの施設は、比較的自立度の高い方向けの住まいですが、外部の介護サービスや医療サービスを利用することで、透析治療を継続しながら生活できる場合があります。

サ高住での透析対応

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者向けの賃貸住宅で、安否確認や生活相談サービスが提供されます。介護サービスは併設されている場合や、外部の事業者と契約して利用する形になります。

透析クリニックへの通院は、ご自身で行うか、家族の送迎、介護タクシーなどを利用するのが一般的です。施設によっては送迎サービスを提供しているところもあります。

サ高住の費用目安

サ高住の費用は、敷金(または保証金)、月額の家賃、共益費、生活支援サービス費などがかかります。介護サービスを利用する場合は、別途介護保険の自己負担分が必要です。月額費用の目安は、10万円から30万円程度と幅広いです。

ケアハウスについて

ケアハウス(軽費老人ホームC型)は、家庭環境や住宅事情により居宅での生活が困難な高齢者が、低額な料金で入所できる施設です。

自立型と介護型があり、介護型の場合は特定施設入居者生活介護の指定を受けていれば、施設内で介護サービスを受けられます。透析治療との両立については、個別の施設に確認が必要です。

施設選びで重視すべきポイント

透析患者さんが施設を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。透析治療を安全かつ継続的に受けられることはもちろん、日々の生活を安心して送れる環境であるかを見極めることが大切です。

ここでは、施設選びで特に重視すべき点を解説します。

透析クリニックへの通院方法

透析治療は週に数回の通院が基本となるため、通院の利便性は非常に重要です。施設から透析クリニックまでの距離や所要時間、送迎サービスの有無などを事前にしっかりと確認しましょう。

施設送迎の有無

施設によっては、透析クリニックへの送迎サービスを提供している場合があります。送迎の範囲や頻度、費用(無料か有料か)、利用条件などを詳しく確認します。

また、車椅子のまま乗車できる福祉車両があるかなども、必要な方にとっては重要なポイントです。

通院距離と時間

送迎サービスがない場合や、ご自身で通院する場合は、施設から透析クリニックまでの距離と所要時間を確認します。通院に時間がかかると、体への負担が大きくなる可能性があります。

また、交通手段や交通費も考慮に入れる必要があります。

付き添い体制

通院時に付き添いが必要な場合、施設スタッフが対応してくれるのか、家族が付き添う必要があるのか、あるいは外部のヘルパーサービスを利用するのかなど、付き添い体制についても確認しておきましょう。

通院に関する確認事項

確認項目内容重要度
送迎サービス有無、範囲、費用、頻度
通院手段公共交通機関、タクシー、自家用車など
所要時間施設からクリニックまでの片道時間

医療ケア体制の充実度

透析患者さんは、シャント管理や血圧管理、貧血管理など、日常的な医療ケアが必要です。また、合併症のリスクもあるため、施設の医療ケア体制が充実しているかを確認することは非常に重要です。

看護師の配置状況

看護師が24時間常駐しているか、日中のみの配置かなど、看護師の配置状況を確認します。透析日はもちろん、それ以外の日でも体調変化があった場合に、迅速に対応してもらえる体制が整っていると安心です。

緊急時の対応

透析患者さんは、急な体調変化が起こることもあります。夜間や休日に体調が悪くなった場合の対応フロー(協力医療機関への連絡体制、救急搬送の手順など)が明確になっているかを確認しましょう。

協力医療機関との連携

施設がどのような医療機関と連携しているかを確認します。特に、透析治療を受けているクリニックや、専門的な治療が必要になった場合に対応できる総合病院などとの連携体制は重要です。

日常生活のサポート体制

透析治療を受けながら快適な生活を送るためには、日常生活におけるサポート体制も大切です。食事や入浴、リハビリテーションなど、ご自身の状況に合ったサポートを受けられるかを確認しましょう。

食事の配慮

透析患者さんには、塩分やカリウム、リンなどの制限が必要な場合があります。施設で提供される食事が、個々の状態に合わせた栄養管理や形態(刻み食、ミキサー食など)に対応しているかを確認します。

管理栄養士が常駐している施設であれば、より専門的なアドバイスを受けられる可能性があります。

入浴介助

シャントのある腕の保護や、透析後の体調に配慮した入浴介助が受けられるかを確認します。浴室の設備(手すりの有無、個浴か大浴場かなど)も確認しておくと良いでしょう。

リハビリテーション

透析患者さんは体力が低下しやすいため、適度な運動やリハビリテーションが重要です。施設内でリハビリテーションを受けられるか、どのようなプログラムがあるかなどを確認します。

理学療法士や作業療法士などの専門職が配置されていると、より質の高いリハビリが期待できます。

費用と契約内容の確認

施設に入所する際には、費用や契約内容を十分に理解しておくことがトラブルを避けるために重要です。月額利用料の内訳や、追加でかかる可能性のある費用、契約期間や解約条件などをしっかりと確認しましょう。

月額利用料の内訳

月額利用料には、何が含まれていて、何が含まれていないのかを明確に把握します。家賃、管理費、食費、水道光熱費、介護サービス費などが主な内訳ですが、施設によって異なります。

追加費用が発生するケース

おむつ代、医療費(往診費、薬代など)、理美容代、レクリエーション参加費など、月額利用料以外にどのような費用が別途かかる可能性があるのかを確認します。透析クリニックへの送迎が有料の場合もあります。

契約期間と解約条件

契約期間や、途中解約する場合の条件(違約金の有無など)についても確認が必要です。また、入居一時金がある場合は、その償却期間や返還条件なども理解しておきましょう。

費用関連の確認ポイント

  • 入居一時金の有無と金額、償却・返還条件
  • 月額利用料の内訳(家賃、食費、管理費など)
  • 介護保険自己負担額
  • 別途かかる費用(医療費、消耗品費、送迎費など)

透析可能な施設を探す具体的な方法

透析治療を受けながら入所できる施設を探すには、いくつかの方法があります。情報収集を効率的に行い、ご自身に合った施設を見つけるために、様々な窓口やツールを活用しましょう。

ここでは、具体的な探し方について解説します。

ケアマネジャーへの相談

介護保険サービスを利用している方であれば、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に相談するのが最初のステップとして有効です。

ケアマネジャーは、地域の介護施設に関する情報を持っており、ご本人の心身の状態や希望に合った施設を紹介してくれます。

ケアマネジャーの役割

ケアマネジャーは、介護サービスの計画(ケアプラン)を作成する専門職です。利用者の状況を把握し、必要なサービスを調整する役割を担っています。

施設探しにおいても、利用者の意向を尊重しながら、適切なアドバイスや情報提供を行います。

情報提供とアドバイス

ケアマネジャーは、担当地域内の透析患者受け入れ可能な施設の情報や、各施設の特徴、空き状況などを把握している場合があります。また、施設選びのポイントや、見学時の注意点などについてもアドバイスをもらえます。

施設見学の調整

気になる施設が見つかった場合、ケアマネジャーが施設見学の日程調整や同行をしてくれることもあります。専門的な視点からのアドバイスを受けながら見学できるため、より詳細な情報を得やすくなります。

地域包括支援センターの活用

地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口として、各市町村に設置されています。介護保険サービスを利用していない方や、どこに相談すれば良いか分からない場合に活用できます。

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターには、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、高齢者の健康、福祉、医療、権利擁護などに関する様々な相談に対応しています。相談は無料です。

提供される情報

地域包括支援センターでは、地域の介護施設や医療機関に関する情報提供を行っています。透析患者さんの受け入れ可能な施設の情報や、入所手続きに関するアドバイスなども受けられます。

相談の流れ

まずは電話や窓口で相談の予約をします。相談時には、ご本人の状況や希望する条件などを詳しく伝えましょう。必要に応じて、適切な専門機関やサービスを紹介してくれます。

相談窓口の比較

相談窓口主な対象者特徴
ケアマネジャー要介護・要支援認定者ケアプラン作成、施設紹介
地域包括支援センター地域の高齢者全般総合相談、情報提供
医療ソーシャルワーカー入院・通院中の患者退院支援、福祉制度案内

インターネットでの情報収集

インターネットを活用すれば、自宅にいながら多くの施設情報を収集できます。介護施設の検索サイトや、各施設の公式ウェブサイトなどを利用して、候補となる施設を絞り込みましょう。

検索サイトの利用

「透析 施設 (地域名)」などのキーワードで検索すると、透析患者さんの受け入れが可能な施設の情報が見つかることがあります。介護施設のポータルサイトでは、地域や条件を指定して施設を検索できるため便利です。

施設のウェブサイト確認

気になる施設が見つかったら、その施設の公式ウェブサイトを確認します。施設の方針やサービス内容、費用、医療体制などが詳しく掲載されていることが多いです。写真や動画で施設の雰囲気を確認することもできます。

口コミ情報の参考

インターネット上には、施設の利用者やその家族による口コミ情報が掲載されていることもあります。ただし、口コミは個人の主観的な意見であるため、あくまで参考程度にとどめ、鵜呑みにしないように注意が必要です。

医療ソーシャルワーカーへの相談

現在入院中の方や、定期的に病院に通院している方は、病院内にいる医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談することも有効です。

医療ソーシャルワーカーは、患者さんやご家族が抱える経済的、社会的、心理的な問題の解決を支援する専門職です。

病院内での相談窓口

多くの病院には、医療相談室や患者支援センターといった名称で、医療ソーシャルワーカーが配置されています。入院中の場合は、病棟の看護師に相談すれば取り次いでもらえます。

退院支援と施設探し

医療ソーシャルワーカーは、退院後の生活に関する相談にも対応しており、必要に応じて施設探しをサポートしてくれます。地域の施設情報や、利用できる社会資源についての知識も豊富です。

経済的な相談

施設入所には費用がかかります。医療ソーシャルワーカーは、医療費助成制度や高額療養費制度、介護保険制度など、利用できる可能性のある公的な支援制度について情報提供し、手続きのサポートも行います。

施設入所までの流れと準備

希望する施設が見つかったら、次はいよいよ入所に向けての手続きを進めます。情報収集から契約、入所準備まで、いくつかの段階があります。スムーズに入所できるよう、事前に流れを把握しておきましょう。

情報収集と候補施設の選定

まずは、ご自身の希望条件(立地、費用、医療体制、居室のタイプなど)を整理し、それに合った施設の情報収集を行います。複数の施設を比較検討し、見学する候補を絞り込みます。

希望条件の整理

譲れない条件と、ある程度妥協できる条件を明確にしておくと、施設を選びやすくなります。例えば、「透析クリニックへの送迎は必須」「個室が良い」など、優先順位をつけましょう。

複数施設の情報比較

パンフレットやウェブサイトの情報だけでなく、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーからの情報も参考に、複数の施設を比較検討します。費用だけでなく、サービス内容や雰囲気なども考慮しましょう。

見学候補の絞り込み

情報収集と比較検討の結果、実際に見てみたいと思う施設を2~3ヶ所に絞り込みます。あまり多くの施設を見学すると、かえって迷ってしまうこともあります。

情報収集のポイント

  • 施設の立地、周辺環境
  • 費用(入居一時金、月額利用料、追加費用)
  • 居室の設備、広さ
  • 介護・医療体制(看護師の配置、協力医療機関)
  • 食事の内容、レクリエーション

施設見学と面談

候補の施設が決まったら、必ず事前に予約をして見学に行きましょう。実際に施設を訪れることで、パンフレットだけでは分からない雰囲気や、スタッフの対応などを確認できます。

見学時のチェックポイント

見学時には、居室だけでなく、共用スペース(食堂、浴室、談話室など)の清潔さや使いやすさ、入居者の表情や施設の雰囲気などを注意深く観察します。また、防災設備や避難経路なども確認しておくと安心です。

スタッフとの面談

施設長や相談員など、担当のスタッフと面談し、疑問点や不安な点を質問します。透析治療に関する具体的な対応(送迎、シャント管理、食事療法など)について、詳しく確認しましょう。

疑問点の解消

見学や面談で生じた疑問点は、その場で解消するように心がけましょう。後で後悔しないためにも、納得いくまで質問することが大切です。持ち帰って検討したい場合は、その旨を伝えましょう。

見学時の確認事項リスト

カテゴリ確認事項チェック
施設全体清潔感、明るさ、臭い、バリアフリー
居室広さ、日当たり、収納、トイレ・洗面所の使いやすさ
スタッフ入居者への接し方、言葉遣い、身だしなみ
透析対応送迎方法、シャント管理、緊急時対応

入所申し込みと審査

見学の結果、入所を希望する施設が決まったら、入所申し込みの手続きを行います。申し込み後、施設による入所判定(審査)が行われます。

必要書類の準備

入所申し込みには、申込書や健康診断書、診療情報提供書、介護保険被保険者証のコピーなど、いくつかの書類が必要です。施設によって必要な書類が異なるため、事前に確認し、早めに準備しましょう。

入所判定会議

提出された書類や、場合によっては本人との面談結果などをもとに、施設内で入所判定会議が開かれます。ご本人の心身の状態や、施設で対応可能な医療・介護の範囲などが総合的に判断されます。

審査結果の通知

審査の結果は、通常、数日から数週間程度で通知されます。入所が決定した場合は、契約手続きに進みます。残念ながら入所が見送りとなった場合は、その理由を確認し、他の施設を探すことになります。

契約と入所準備

入所が決定したら、施設と入所契約を結びます。契約内容を十分に理解した上で署名・捺印しましょう。その後、入居一時金の支払いや、入所に向けて身の回り品の準備を行います。

契約内容の確認

契約書には、提供されるサービス内容、費用、権利義務、解約条件などが記載されています。不明な点や疑問点は必ず確認し、納得してから契約を結びましょう。重要事項説明書も併せて確認します。

入居一時金や月額費用の支払い

入居一時金が必要な場合は、契約時に支払います。月額費用は、入所後に毎月支払うことになります。支払い方法や期日などを確認しておきましょう。

身の回り品の準備

衣類、洗面用具、タオル、普段使っている薬、杖や車椅子など、入所後に必要な身の回り品を準備します。施設によって持ち込めるもの、持ち込めないものがあるため、事前に確認が必要です。

入所後の生活と注意点

施設に入所してからも、透析治療は継続します。新しい環境での生活に慣れ、安心して治療を続けられるように、いくつかの注意点があります。ご本人だけでなく、ご家族も理解しておくことが大切です。

新しい生活への適応

新しい環境での生活は、誰にとっても不安や戸惑いがあるものです。焦らず、少しずつ慣れていくことが大切です。施設スタッフや他の入居者との関わりも、生活を豊かにする要素となります。

環境の変化への対応

自宅とは異なる生活リズムやルールに、最初は戸惑うかもしれません。施設のスタッフに相談しながら、自分のペースで新しい環境に慣れていきましょう。趣味や好きなことを続けるのも良いでしょう。

スタッフや他の入居者との関係

施設スタッフは、生活全般をサポートしてくれる頼れる存在です。困ったことや不安なことがあれば、遠慮なく相談しましょう。また、他の入居者との交流も、新しい生活の楽しみの一つになるかもしれません。

精神的なサポート

環境の変化や病気に対する不安などから、精神的に不安定になることもあります。そのような場合は、我慢せずに家族や施設スタッフ、医師などに相談しましょう。専門的なカウンセリングが必要な場合もあります。

入所後の心構え

ポイント具体的な行動
焦らない自分のペースで新しい環境に慣れる
積極的に関わるスタッフや他の入居者とコミュニケーションを取る
相談する不安や困り事は遠慮なく伝える

透析治療の継続と体調管理

施設に入所しても、透析治療はこれまで通り継続する必要があります。日々の体調管理をしっかりと行い、異変を感じたらすぐに施設スタッフや医師に伝えましょう。

定期的な通院の重要性

透析クリニックへの定期的な通院は、生命を維持するために欠かせません。施設の送迎サービスを利用する場合も、時間通りに通院できるように協力しましょう。体調が悪くても自己判断で休まず、必ず医師の指示に従ってください。

食事療法と水分管理

透析患者さんにとって、食事療法と水分管理は非常に重要です。施設の食事も、医師や管理栄養士の指示に基づいて提供されますが、間食や持ち込みの食品には注意が必要です。水分摂取量も守りましょう。

日々の体調チェック

血圧、体重、シャントの状態など、日々の体調チェックを怠らないようにしましょう。施設スタッフも観察を行いますが、ご自身でも体調の変化に気を配り、気になることがあればすぐに報告することが大切です。

家族との連携

施設に入所した後も、家族との連携は重要です。定期的な面会や施設との情報共有を通じて、ご本人が安心して生活できるようサポートしましょう。

定期的な面会

家族の面会は、入所者にとって大きな心の支えとなります。可能な範囲で定期的に面会し、コミュニケーションを取るようにしましょう。施設のイベントなどに一緒に参加するのも良いでしょう。

施設との情報共有

ご本人の体調変化や、施設での様子について、施設スタッフと情報を共有することが大切です。気になることがあれば、遠慮なく施設に問い合わせましょう。逆に、家族が気づいた変化なども施設に伝えることが重要です。

緊急時の連絡体制

緊急時の連絡先や連絡方法を、事前に施設と確認しておきましょう。万が一の事態に備えて、迅速に対応できるようにしておくことが大切です。

施設との良好な関係構築

施設は、ご本人にとって新しい生活の場となります。施設スタッフと良好な関係を築くことで、より快適で安心な生活を送ることができます。

要望や相談の伝え方

何か要望や相談がある場合は、感情的にならず、具体的に伝えるようにしましょう。まずは担当のスタッフに相談し、それでも解決しない場合は、施設長や相談員に相談するなど、段階を踏むと良いでしょう。

イベントへの参加

施設によっては、季節ごとの行事やレクリエーションが企画されています。可能な範囲で参加することで、他の入居者やスタッフとの交流が深まり、生活にメリハリが生まれます。

感謝の気持ちを伝える

日々のケアに対して、感謝の気持ちを伝えることは、スタッフのモチベーション向上にもつながり、より良い関係を築く上で大切です。言葉や態度で示すように心がけましょう。

施設とのコミュニケーションポイント

  • 定期的な面談や連絡
  • 要望は具体的に、建設的に
  • 感謝の気持ちを忘れない

よくある質問

透析患者さんの施設入所に関して、多くの方が疑問に思うことや不安に感じる点をまとめました。施設選びや入所後の生活の参考にしてください。

透析施設が併設されている施設は多いですか?

透析クリニックが併設されている施設は、まだそれほど多くはありません。しかし、近年その需要は高まっており、徐々に増えてきている傾向にあります。介護付き有料老人ホームなどで見られることがあります。

併設されていない場合でも、近隣の透析クリニックと連携し、送迎サービスを提供している施設は多くありますので、探す際にはそうした連携体制も確認すると良いでしょう。

入居一時金は必ず必要ですか?

施設の種類やプランによって異なります。介護付き有料老人ホームなどでは、入居一時金が必要な場合と不要な場合があります。

入居一時金が必要な場合でも、その金額や償却期間、返還条件などは施設によって大きく異なりますので、契約前に必ず詳細を確認することが大切です。

介護老人保健施設やグループホームでは、原則として入居一時金はかかりません。

入居一時金の有無(目安)

施設種類入居一時金の有無備考
介護老人保健施設原則なし
介護付き有料老人ホーム施設による(あり・なし)金額・条件は様々
グループホーム原則なし(保証金の場合あり)
サービス付き高齢者向け住宅敷金・保証金の場合が多い賃貸契約が基本
施設の見学はどのように申し込めば良いですか?

施設の見学は、事前に電話やウェブサイトから予約するのが一般的です。ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーに相談している場合は、その方を通じて予約を依頼することも可能です。

見学時には、ご本人の状態や希望する条件を伝え、疑問点を解消できるように質問事項をまとめておくとスムーズです。複数の施設を見学し、比較検討することをおすすめします。

緊急時の対応はどのようになっていますか?

透析患者さんの受け入れを行っている施設では、緊急時の対応マニュアルが整備されていることが一般的です。具体的には、看護師による迅速な初期対応、協力医療機関への連絡体制、救急搬送の手順などが定められています。

入所前に、夜間や休日を含めた緊急時の具体的な対応フローについて、施設側に詳しく確認しておくことが重要です。協力医療機関がどこか、どのような連携体制になっているかも確認しておくと安心です。

以上

透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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