腎臓の働きが低下した腎不全や、人工透析を受けている方にとって、毎日の食事は治療そのものと言えるほど重要です。
正しい食事療法を行うことで、体調を整え、透析治療の効果を最大限に引き出し、合併症を予防することができますが、食べてはいけないものや厳しい制限ばかりが強調され、食べる楽しみを失ってしまう方も少なくありません。
この記事では、腎不全や透析治療中の方が、なぜ食事制限が必要なのか、何をどのように食べれば良いのかを、日々の生活に取り入れやすい工夫とともに分かりやすく解説します。
腎不全と透析における食事療法の目的
腎臓は、体内の老廃物や余分な水分を尿として排出し、体液のバランスを保つ重要な役割を担っていて、腎不全になると、体内に有害な物質が蓄積してしまいます。
人工透析は、完全に腎臓の代わりができるわけではないため、食事から摂取する成分を調整し、体内に溜まる老廃物や水分の量をコントロールすることが、体調維持と合併症予防のために必要不可欠です。
体内に溜まる毒素や老廃物を減らす
タンパク質は、体内で利用された後、尿素窒素などの老廃物になり、健康な腎臓であれば尿として排出できますが、腎機能が低下すると体内に蓄積し、尿毒症という深刻な状態を起こす原因となります。
食事療法では、体に必要なタンパク質を確保しつつ、過剰な摂取を控えることで、尿毒症毒素の蓄積を抑え、体調不良を防ぎます。
体液バランスと血圧を適正に保つ
腎臓は、体内の水分量や塩分（ナトリウム）のバランスを調整し、血圧を一定に保つ働きもしており、腎機能が低下すると、余分な水分や塩分を排出できなくなり、むくみ（浮腫）や高血圧を起こします。
高血圧は、心臓や血管に大きな負担をかけ、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気のリスクを高めるので、水分・塩分管理は、合併症を予防し、心臓を守るために極めて重要です。
電解質異常による合併症を防ぐ
カリウムやリンといった電解質は、体の機能維持に欠かせないミネラルですが、腎機能が低下すると排出が滞り、体内に蓄積しやすくなります。
血中のカリウム濃度が高くなりすぎると、不整脈や心停止を起こす危険があり、また、リンが蓄積すると、骨がもろくなったり、血管の石灰化（動脈硬化）を進めたりする原因となります。
食事療法によってこれらの摂取量をコントロールし、危険な電解質異常を防ぐことが必要です。
腎不全・透析患者が注意すべき主な栄養素と影響
| 栄養素 | 体内での主な働き | 過剰蓄積時のリスク |
| タンパク質 | 体を作る材料、エネルギー源 | 尿毒症毒素の蓄積、腎機能悪化（保存期） |
| 塩分（ナトリウム） | 体液量・血圧の調整 | 高血圧、むくみ、心不全、口渇 |
| カリウム | 神経・筋肉の働きを調整 | 高カリウム血症、致死性不整脈 |
| リン | 骨や歯を形成 | 高リン血症、骨粗鬆症、血管石灰化 |
透析導入前（保存期）と透析中の食事の違い
腎不全の食事療法は、透析をまだ始めていない保存期と、すでに透析治療を受けている透析期で、目的と内容が大きく異なります。
保存期では、残っている腎臓の機能を少しでも長く維持し、透析導入を遅らせることが最大の目標で、透析期では、透析治療で失われる栄養を補いつつ、次回の透析までの間に体調が悪化しないようコントロールします。
保存期は腎機能の保護が最優先
保存期の食事療法では、腎臓への負担を極力減らすことが重要で、特にタンパク質の摂取制限は、腎臓の糸球体にかかる負担を軽減し、腎機能低下のスピードを緩やかにするために有効です。
また、高血圧は腎機能を急速に悪化させるため、厳格な減塩が必要になります。エネルギー摂取量が不足すると、自分の筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとし、かえって老廃物が増えてしまうため、十分なエネルギー確保も大切です。
透析期は栄養状態の維持と合併症予防
透析が始まると、タンパク質制限は保存期よりも緩和されますが、これは、透析によって老廃物がある程度除去されることと、透析の過程でアミノ酸などの栄養素も一緒に抜けてしまうため、栄養不足（低栄養）を防ぐ必要があるからです。
しかし食べ過ぎは禁物であり、適正量の摂取が求められ、また、水分・塩分管理は引き続き重要であり、カリウムとリンの制限は、透析前よりも厳格に行う必要があります。
透析間の体重増加量（ドライウエイトからの増加）を適切に保つことが、心臓への負担を減らす鍵です。
ステージに応じた栄養摂取基準の目安
腎臓病の進行度（ステージ）や透析の有無によって、推奨される栄養摂取量は異なります。
あくまで一般的な目安であり、個々の患者さんの体格、活動量、合併症の有無、血液検査の結果などに基づいて、医師や管理栄養士が個別の摂取基準を設定します。
自己判断で極端な制限を行うことは危険を伴うため、必ず専門家の指導のもとで行うことが大切です。
保存期と透析期の栄養素摂取基準の比較
| 栄養素 | 保存期（ステージG3〜G5） | 透析期（血液透析） |
| エネルギー | 25〜35 kcal/kg標準体重/日 | 30〜35 kcal/kg標準体重/日 |
| タンパク質 | 0.6〜0.8 g/kg標準体重/日 | 0.9〜1.2 g/kg標準体重/日 |
| 塩分 | 3g/日以上 6g/日未満 | 6g/日未満 |
| カリウム | 2000mg/日以下（ステージG4〜） | 2000mg/日以下 |
| リン | タンパク質摂取量×15以下 | 700〜900mg/日（目安） |
命に関わるカリウム制限の重要ポイント
カリウムは、野菜、果物、芋類、豆類など、多くの食品に含まれているミネラルです。健康な人であれば、余分なカリウムは尿から排出されますが、腎不全や透析患者さんでは排出能力が低下しているため、体内に溜まりやすくなります。
血中のカリウム濃度が基準値を超えて高くなると、自覚症状がほとんどないまま突然、致死的な不整脈を起こし、心停止に至ることもあるため、非常に危険です。
カリウムを多く含む食品と食べてはいけないもの
カリウムは水に溶けやすい性質があるため、生野菜や生の果物には特に多く含まれていて、ほうれん草、春菊、アボカド、バナナ、メロンなどはカリウム含有量が非常に高いため、一度に食べる量に注意が必要です。
また、ドライフルーツや干し芋などの乾物、野菜ジュースや青汁などの濃縮還元飲料も、少ない量で多量のカリウムを摂取してしまうため、避けましょう。
インスタントコーヒーや日本茶（玉露）なども、飲み過ぎるとカリウム過多の原因となります。
調理法によるカリウム除去のテクニック
カリウムは水溶性であるという性質を利用して、調理の工夫である程度取り除くことができます。
野菜類は、食べる前に細かく切ってからたっぷりの水にさらす（水さらし）、または沸騰したお湯で茹でてからお湯を捨てる（茹でこぼし）といった下処理を行うことで、カリウムを減らすことができます。
茹でることでカリウムは3割から5割程度減少すると言われています。煮汁やスープには溶け出したカリウムが多く含まれているため、飲まずに残すようにしましょう。
摂取量の目安と日常での注意点
1日のカリウム摂取量の目安は2000mg以下とされていますが、これはかなり厳しい制限です。
3度の食事でバランスよく配分し、1食で大量に摂取しないように注意が必要で、生野菜のサラダや果物は、1日に小鉢1杯程度、または果物なら握り拳半分程度を目安にするなど、量を決めておくと管理しやすくなります。
外食やコンビニ食を利用する際は、カリウム表示がないことが多いため、野菜の多いメニューや生野菜の摂取には特に注意を払いましょう。
カリウム含有量が多い要注意食品リスト
| 食品カテゴリー | 具体的な食品例 |
| 野菜類（特に生） | ほうれん草、小松菜、春菊、アボカド、トマト |
| 芋類 | さつまいも、里芋、長芋、じゃがいも |
| 果物類 | バナナ、メロン、キウイフルーツ、干し柿 |
| 豆類・その他 | 納豆、枝豆、きな粉、昆布、わかめ、インスタントコーヒー |
骨と血管を守るリン制限
リンは、カルシウムとともに骨や歯を形成する重要なミネラルであり、肉、魚、卵、乳製品などのタンパク質を多く含む食品に広く存在しています。
腎機能が低下すると、リンを尿中に排泄できなくなり、血中のリン濃度が上昇し（高リン血症）、骨からカルシウムが溶け出して骨がもろくなったり、溶け出したカルシウムとリンが結合して血管の壁に沈着し、動脈硬化を起こしたりします。
リンを多く含む食品と加工食品の危険性
リンは、タンパク質を含むあらゆる食品に含まれており、特にレバー、魚卵（いくら、たらこなど）、しらす干し、プロセスチーズなどに多く含まれています。
さらに注意が必要なのが、加工食品や清涼飲料水に含まれる食品添加物としてのリン（無機リン）です。
ハム、ソーセージ、練り製品、インスタントラーメン、スナック菓子などに使われている添加物のリンは、生の食材に含まれるリン（有機リン）に比べて体への吸収率が非常に高いため、血中リン濃度を急上昇させる原因となります。
タンパク質摂取とリン管理のバランス
リンはタンパク質とセットで存在しているため、タンパク質を摂れば摂るほどリンの摂取量も増えてしまいます。
透析患者さんは、栄養状態を維持するために十分なタンパク質が必要ですが、同時にリンの制限も行わなければならないというジレンマがあります。
良質なタンパク質（肉、魚、卵、大豆製品）を選びつつ、リンの含有量が特に多い食品（骨ごと食べられる小魚、乳製品の過剰摂取など）を控える工夫が必要です。
リン吸着薬を服用している場合は、食事の直前や食事中に正しく服用することで、食事からのリン吸収を抑えることができます。
加工食品を避けるための選び方
加工食品に含まれる添加物のリンを避けることは、リン制限において非常に効果的です。
買い物をする際は、食品の裏にある原材料表示を確認する習慣をつけましょう。「リン酸塩」「pH調整剤」「乳化剤」「結着剤」などの表示がある食品には、リンが多く含まれている可能性があります。
可能な限り、加工度の低い新鮮な食材を選び、自分で調理することを心がけましょう。練り製品を使う場合は、下茹でをして添加物を減らす工夫も有効です。
食品中のリン含有量と吸収率の違い
| リンの種類 | 主な食品源 | 体への吸収率 | 特徴 |
| 有機リン（植物性） | 豆類、穀類、ナッツ類 | 低い（約20〜40%） | 植物繊維が吸収を妨げる |
| 有機リン（動物性） | 肉、魚、卵、乳製品 | 中程度（約40〜60%） | タンパク質源として重要 |
| 無機リン（添加物） | 加工食品、清涼飲料水 | 非常に高い（90%以上） | 吸収されやすく要注意 |
血液透析患者の水分・塩分コントロール
透析患者さんにとって、水分と塩分の管理は日々の体調を左右する最も重要な課題の一つで、腎臓の働きがほとんどないため、摂取した水分や塩分は次の透析まで体内に留まることになります。
水分や塩分を摂り過ぎると、体内の血液量が増えて心臓に負担がかかり、高血圧、むくみ、肺水腫（肺に水が溜まり呼吸が苦しくなる状態）などを起こします。
ドライウエイトと透析間の体重増加率
ドライウエイトとは、透析終了時に目指すべき、体内の余分な水分が取り除かれた適正体重のことです。透析と透析の間に増えた体重は、ほぼ全て摂取した水分によるものと考えます。
次回の透析までに体重が増えすぎると、短時間の透析で大量の水分を除去しなければならず、透析中に血圧が急激に下がったり、足がつったりする原因になります。
透析間の体重増加率は、中1日の場合でドライウエイトの3%以内、中2日（週末など）の場合で5%以内を目安に抑えることが重要です。
隠れ水分に注意すべき食品と飲料
水分制限というと、飲み水やお茶の量だけを気にしがちですが、食品に含まれる水分にも注意が必要で、ご飯や麺類などの主食も半分以上は水分ですし、果物、豆腐、ゼリー、ヨーグルトなども水分が多い食品です。
汁物（味噌汁、スープ、ラーメンのつゆなど）は、塩分も水分も多いため、原則として控えるか、具だけを食べて汁は残すようにします。
喉が渇いてどうしても何か飲みたいときは、氷をひとかけら口に含んでゆっくり溶かすと、少ない水分量で口渇感を和らげることができます。
美味しく減塩するための工夫と調味料
塩分を摂り過ぎると喉が渇き、結果として水分摂取量が増えてしまうので、減塩は水分管理の基本でもあります。1日の塩分摂取量は6g未満が目標ですが、これは日本人の平均摂取量の半分程度であり、意識的な努力が必要です。
味付けには、減塩しょうゆや減塩味噌を使うだけでなく、酢、レモン、ゆずなどの酸味、カレー粉、こしょう、七味唐辛子などの香辛料、しそ、みょうが、ネギなどの香味野菜を上手に利用することで、満足感のある味付けにすることができます。
出汁をしっかりとることも、薄味を美味しく感じるコツです。
水分管理を助ける日常生活でのヒント
- 毎日決まった時間に体重を測定し、記録する習慣をつける。
- 飲み物は小さめの湯呑みやコップを使い、一度に飲む量を減らす。
- 食事の際の汁物は、1日1杯まで、または具だくさんにして汁を残す。
- 喉の渇きを癒やすために、うがいをしたり、冷やしたおしぼりで顔を拭いたりする。
エネルギー不足を防ぐための食事戦略
腎不全の食事療法において、タンパク質やミネラルの制限ばかりに気を取られていると、知らないうちに摂取エネルギー全体が不足してしまうことがあります。
エネルギーが不足すると、体は自分の筋肉や脂肪を分解してエネルギーを作り出そうとし、筋肉量が減少し体力が低下するだけでなく、筋肉の分解によって老廃物である尿素窒素が増え、腎臓にさらなる負担をかけてしまうという悪循環に陥ります。
十分なエネルギー確保の重要性
体調を維持し、元気に日常生活を送るためには、活動量に見合った十分なエネルギーが必要です。保存期でタンパク質制限を行っている場合は、食事全体のボリュームが減りがちなので、意識的にエネルギーを補わなければなりません。
適正なエネルギー摂取量は、年齢、性別、標準体重、身体活動レベルによって異なりますが、一般的に標準体重1kgあたり30〜35kcal程度が目安です。体重が減ってきている、疲れやすいと感じる場合は、エネルギー不足の可能性があります。
脂質と炭水化物を上手に活用する源
エネルギーを効率よく確保するためには、タンパク質を含まない、または少ない食品である脂質（油）と炭水化物（糖質）を上手に活用することがポイントです。
揚げ物や炒め物を取り入れたり、サラダにマヨネーズやドレッシングをかけたりすることで、手軽にエネルギーをアップできます。植物油（オリーブオイル、ごま油など）は少量でも高カロリーで、効率的なエネルギー源です。
炭水化物では、ご飯やパン、麺類をしっかり食べるほか、間食におにぎりや餅などを取り入れるのも良いでしょう。
エネルギー補給食品の利用方法
食事の量が多く食べられない高齢の方や、食欲がない時などは、市販のエネルギー補給食品を利用するのも一つの方法で、タンパク質や電解質を抑えつつ、高エネルギーを摂取できるように設計されています。
粉飴（マルトデキストリン）やMCTオイル（中鎖脂肪酸油）などを料理や飲み物に混ぜることで、味や量を大きく変えずにエネルギーを付加することができ、また、腎臓病食専用のクッキーやゼリーなども販売されています。
補給食品を活用する際は、主治医や管理栄養士に相談し、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
手軽にエネルギーを増やせる高カロリー食品例
| 食品カテゴリー | 具体的な食品例と特徴 |
| 油脂類 | 植物油、バター、マヨネーズ、ドレッシング（少量で高カロリー） |
| 炭水化物 | ご飯、パン、餅、芋類（主食をしっかり摂る） |
| 甘味類 | はちみつ、ジャム、砂糖（カリウムを含まない甘味を活用） |
| 特殊食品 | 粉飴、MCTオイル、腎臓病用高カロリーゼリー（料理に混ぜやすい） |
外食・中食の賢い利用法とメニュー選択
仕事や生活スタイルによっては、毎日手作りの食事を続けることが難しい場合もあります。外食やコンビニエンスストア、スーパーの惣菜（中食）を利用することは、気分転換にもなり、決して悪いことではありません。
大切なのは、特徴を理解し、自分の食事制限に合わせて賢く選択することで、外食や中食は一般的に味が濃く、塩分やリンが多くなりがちなので、注意点を知っておくことが重要です。
外食時のメニュー選びのポイント
外食では、単品料理（丼もの、ラーメン、カレーライスなど）よりも、主食・主菜・副菜が揃った定食メニューを選ぶ方が、栄養バランスを整えやすくなります。
注文の際は、「味薄めでお願いします」「ドレッシングは別添えで」など、可能な範囲でリクエストしてみましょう。
麺類は汁を残すこと、漬物や佃煮は控えること、醤油やソースはかけずに小皿に入れて少しずつつけることで、塩分摂取を抑えられ、揚げ物の衣や、肉の脂身を残すこともカロリー調整やリン摂取の抑制につながります。
コンビニ・スーパー惣菜の活用術
最近のコンビニやスーパーの食品には、栄養成分表示が記載されているものが増えています。
購入する前に必ずパッケージの裏面などを確認し、塩分（食塩相当量）、タンパク質、カリウム、リンの量（表示がある場合）をチェックする習慣をつけましょう。
おにぎりやサンドイッチを選ぶ際は、具材がシンプルなものの方が添加物が少ない傾向にあり、サラダを選ぶ際は海藻やコーンなどが少ないものを選び、ドレッシングはノンオイルや減塩タイプを少量使うことが大切です。
冷凍食品やレトルト食品も、塩分が少ないものを選べば手軽な一品として活用できます。
栄養成分表示の見方とチェック項目
栄養成分表示を見る際、まず確認すべきは「熱量（エネルギー）」「たんぱく質」「食塩相当量」で、自分の1食あたりの摂取目安量を超えていないか確認します。
カリウムとリンについては表示義務がないため、記載されていないことが多いですが、原材料名を見て、食品添加物（リン酸塩など）が使われていないかチェックすることは可能です。
お弁当などを選ぶ際は、全体の塩分量を確認し、多い場合は全て食べずに残すなどの調整が必要です。
腎臓を守るための継続可能な食事の工夫
厳しい食事制限を完璧に守り続けることは、誰にとっても容易なことではなく、ストレスが溜まって反動で暴飲暴食してしまっては元も子もありません。
大切なのは、完璧を目指すことよりも、長く続けられる自分なりのスタイルを見つけることで、日々の食事を楽しみながら、腎臓を守るための小さな工夫を積み重ねていくことが、長期的な健康維持につながります。
完璧を目指さず、調整する習慣をつける
食事療法は、1日単位あるいは数日単位でバランスをとることが大切です。
昼食で塩分を摂り過ぎたと感じたら、夕食は塩分控えめのメニューにする、外食の予定がある日は、前後の食事でカリウムやリンの少ないものを選ぶといった具合に、柔軟に調整する習慣をつけましょう。
「食べてはいけない」と禁止するのではなく、「量と頻度をコントロールする」という意識を持つことが、ストレスを減らすコツです。
医師・管理栄養士との連携と相談
自己流の食事療法は、栄養バランスが崩れたり、誤った制限をしてしまったりするリスクがあります。
定期的に行われる血液検査の結果は、食事の内容が体にどのように影響しているかを示す重要な通知表で、結果をもとに、主治医や管理栄養士と相談し、現在の食事内容が適切かどうか、改善すべき点はないかを確認しましょう。
生活スタイルや嗜好に合わせた具体的なアドバイスを受けることで、無理なく食事療法を続けることができます。疑問や不安なことは、専門家に相談することが大切です。
食事を楽しむための心の持ち方
食事は単なる栄養補給ではなく、人生の楽しみの一つでもあります。制限の中にも、旬の食材を取り入れたり、盛り付けを工夫したり、家族や友人と楽しく食卓を囲んだりすることで、食事の満足度は高まります。
制限されているものに目を向けるのではなく、「食べられるもの」や「美味しく食べる工夫」に目を向けるポジティブな姿勢が、食事療法を長続きさせる秘訣です。
透析食のレシピ本や料理教室などを活用し、新しいメニューに挑戦してみるのも良いでしょう。
よくある質問
- 透析を受けていれば、好きなものを自由に食べても良いですか？
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透析は腎臓の働きの一部を代行するものであり、健康な腎臓のように24時間絶え間なく働いているわけではありません。
透析と透析の間に食べたものや飲んだものは体内に蓄積されるため、食事管理を怠ると、カリウムやリンの値が高くなったり、体重が増えすぎて心臓に負担がかかったりします。
合併症を防ぎ、元気に透析生活を続けるためには、適切な食事療法が必要です。
- 野菜は全て茹でこぼさないといけませんか？
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必ずしも全ての野菜を茹でこぼす必要はありません。カリウムの値が落ち着いていて、1日の摂取目安量（約2000mg以下）の範囲内に収まっていれば、生野菜を食べることも可能です。
ただし、ほうれん草や芋類などカリウム含有量が非常に多い野菜は、茹でこぼすなどの下処理をすることが望ましいです。血液検査の結果を見ながら、主治医や管理栄養士と相談して、調理法や摂取量を調整しましょう。
- 水分制限が辛いです。喉が渇いたときの良い対策はありますか？
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喉の渇きを癒やすには、冷たい刺激が効果的です。氷をひとかけら口に含んでゆっくり溶かす、冷やしたおしぼりで顔や首筋を拭く、うがいをする、レモンの輪切りを口にくわえるなどの方法を試してみてください。
また、塩分を摂り過ぎると喉が渇くため、まずは日頃の食事で減塩を徹底することが根本的な対策になります。ガムを噛んで唾液の分泌を促すのも一つの方法です。
- 外食時に最も気をつけるべきことは何ですか？
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最も注意すべきは「塩分」と「量」です。外食のメニューは一般的に塩分が多く、1食で1日の摂取目標量を超えてしまうことも珍しくありません。
麺類の汁は飲まない、定食の漬物は残す、醤油やソースはかけすぎないといった工夫で減塩を心がけましょう。また、丼ものや大盛りは避け、自分にとって適量を選び、食べきれない場合は無理せず残すことも大切です。
以上
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