腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物や余分な水分が溜まってしまいます。透析治療は、この腎臓の働きを人工的に補う治療法です。
この記事では、透析治療の根幹をなす「拡散」と「限外ろ過」という化学的な原理について、できるだけ専門用語を避け、分かりやすく解説します。
透析がどのようにして血液をきれいにするのか、その基本的な仕組みを理解することで、治療への理解を深める一助となれば幸いです。
透析治療の基本を理解する
透析治療は、腎不全の患者さんにとって重要な治療法です。まずは、なぜ透析治療が必要になるのか、腎臓の本来の役割と合わせて基本的な知識を整理しましょう。
透析治療が必要となる背景
私たちの体内で不要になった老廃物や余分な水分は、通常、腎臓の働きによって尿として排出されます。しかし、腎臓の機能が著しく低下すると、これらの物質を十分に排出できなくなり、体内に蓄積してしまいます。
この状態が続くと、尿毒症などの深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。このような場合に、腎臓の機能を代替する治療法として透析治療が行われます。
腎臓の役割と機能低下
腎臓は、単に尿を作るだけでなく、私たちの体が正常に機能するために多くの重要な役割を担っています。
腎臓の主な働き
- 老廃物の排出
- 体液量の調節
- 電解質バランスの維持
- 血圧の調整
- ホルモンの産生(赤血球を作るホルモンなど)
腎機能が低下すると、これらの働きが十分に果たせなくなります。例えば、老廃物が溜まると体調不良の原因となり、水分が過剰になるとむくみや心臓への負担増加につながります。
電解質のバランスが崩れると、不整脈などを引き起こすこともあります。
透析治療の目的と意義
透析治療の主な目的は、機能が低下した腎臓に代わって、血液中から老廃物や余分な水分を取り除き、血液をきれいにすることです。また、体液の電解質バランスや酸性・アルカリ性のバランスを正常に保つことも重要な目的の一つです。
これにより、尿毒症の症状を改善し、生命を維持し、QOL(生活の質)の向上を目指します。
透析治療開始の一般的な目安
透析治療を開始するタイミングは、患者さんの腎機能の状態、自覚症状、合併症の有無などを総合的に評価して医師が判断します。
一般的には、腎機能の指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)が一定の値以下になった場合や、尿毒症による症状(食欲不振、吐き気、全身倦怠感など)が強く現れた場合に検討されます。
個々の状態によって異なるため、医師との十分な相談が大切です。
透析の核心「拡散」の化学
透析治療において、血液中から老廃物を除去する主要な原理の一つが「拡散」です。ここでは、拡散がどのように機能するのか、その化学的な側面を見ていきましょう。
拡散とは何か?基本的な考え方
拡散とは、物質が濃度の高い方から低い方へ自然に移動する現象を指します。例えば、コップの水にインクを一滴落とすと、何もしなくてもインクが水全体に広がっていきます。これも拡散の一例です。
透析治療では、この拡散の原理を利用して、血液中の老廃物を透析液側へ移動させます。
半透膜が果たす重要な役割
透析治療では、「ダイアライザー」と呼ばれる透析器(人工腎臓)を使用します。ダイアライザーの内部には、血液と透析液を隔てる「半透膜」という特殊な膜がたくさん入っています。
半透膜は、小さな物質(老廃物や電解質、水分など)は通しますが、大きな物質(タンパク質や血球など)は通さない性質を持っています。この半透膜を介して、血液中の老廃物が透析液へと移動するのです。
半透膜の選択透過性
物質の種類 | 半透膜の透過性 | 具体例 |
---|---|---|
小さな老廃物 | 通す | 尿素、クレアチニン |
電解質・水分 | 通す | ナトリウム、カリウム、水 |
大きな物質 | 通さない | タンパク質、赤血球、白血球 |
濃度勾配と物質移動の化学
拡散による物質移動は、「濃度勾配」によって駆動されます。濃度勾配とは、ある物質の濃度が高い場所と低い場所の差のことです。透析治療では、血液中の老廃物濃度は高く、透析液中の老廃物濃度は低く(またはゼロに)設定されています。
この濃度差があるため、老廃物は血液側から透析液側へと半透膜を通って移動します。
逆に、体に必要な電解質(ナトリウムやカルシウムなど)は、透析液中の濃度を適切に調整することで、血液中から過剰に失われるのを防いだり、不足している場合は補充したりします。
拡散によって除去される主な老廃物
拡散の原理によって、血液中から効率的に除去される主な老廃物には以下のようなものがあります。これらは主にタンパク質が代謝された結果生じる物質です。
主な尿毒症性物質
老廃物の名称 | 主な発生源 | 体内に蓄積した場合の影響 |
---|---|---|
尿素(BUN) | タンパク質の代謝産物 | 食欲不振、吐き気、倦怠感など |
クレアチニン(Cr) | 筋肉運動の代謝産物 | 腎機能低下の指標となる |
尿酸(UA) | プリン体の代謝産物 | 痛風の原因となることがある |
これらの老廃物を定期的に除去することが、透析治療の重要な目的の一つです。
もう一つの柱「限外ろ過」の化学
透析治療におけるもう一つの重要な原理が「限外ろ過」です。これは主に体内の余分な水分を除去するために用いられます。拡散とは異なる仕組みで機能します。
限外ろ過とは?水と溶質の分離
限外ろ過とは、半透膜を介して、圧力差を利用して溶液から水分と一部の小さな溶質(溶けている物質)を分離する方法です。コーヒーフィルターでコーヒーを淹れるのをイメージすると分かりやすいかもしれません。
フィルター(半透膜)を介して、コーヒー液(水分と風味成分)は下に落ちますが、コーヒー豆の粉(大きな粒子)はフィルター上に残ります。透析では、この原理で血液から余分な水分を取り除きます。
静水圧と浸透圧のバランス
限外ろ過は、主に「静水圧」の差によって行われます。血液透析の場合、血液側に陽圧(プラスの圧力)をかけるか、透析液側に陰圧(マイナスの圧力)をかけることで、血液中の水分を半透膜を通して透析液側へ押し出します。
このとき、半透膜の孔よりも小さな溶質も水分と一緒に移動します。 一方、「浸透圧」も水分移動に関与します。浸透圧は、濃度の薄い方から濃い方へ水が移動しようとする力です。
透析液の浸透圧を血液より高く設定することで、水分を血液側から透析液側へ引き込むこともできます。しかし、血液透析における水分除去は、主に静水圧のコントロールによって行われます。
体内の余分な水分を除去する仕組み
腎機能が低下すると、尿として水分を十分に排泄できなくなるため、体内に余分な水分が溜まりやすくなります(体液過剰)。これは、むくみ、体重増加、高血圧、心不全などの原因となります。
限外ろ過によって、この余分な水分を物理的に除去し、適正な体液量を維持します。除去する水分量(除水量)は、患者さんのドライウェイト(透析後の目標体重)や透析間の体重増加量などを考慮して、個別に設定されます。
限外ろ過で調整される電解質
限外ろ過では、水分と一緒に一部の電解質も除去されます。しかし、主な電解質の調整は拡散の原理によって行われます。透析液の電解質濃度を適切に調整することで、血液中の電解質濃度を正常範囲に近づけます。
例えば、血液中のカリウム濃度が高い場合は、透析液のカリウム濃度を低く設定し、拡散によってカリウムを除去します。限外ろ過による電解質の除去は、拡散に比べると補助的な役割と言えます。
拡散と限外ろ過の比較
項目 | 拡散 | 限外ろ過 |
---|---|---|
主な目的 | 老廃物の除去、電解質調整 | 余分な水分の除去 |
駆動する力 | 濃度勾配 | 圧力勾配(静水圧差) |
半透膜の役割 | 物質の選択的透過 | 水と小分子溶質の濾過 |
透析治療の主な種類とそれぞれの特徴
透析治療には、大きく分けて「血液透析(HD)」と「腹膜透析(PD)」の2種類があります。どちらの治療法も、拡散と限外ろ過の原理を利用していますが、その方法や実施場所に違いがあります。
血液透析(HD)の化学的アプローチ
血液透析は、体から血液を取り出し、ダイアライザー(人工腎臓)に通して浄化し、再び体内に戻す治療法です。通常、週に2~3回、医療機関に通院して行います。1回の治療時間は4~5時間程度が一般的です。
血液透析の仕組み
血液透析では、腕の血管に穿刺して血液を体外循環させます。ダイアライザー内で、血液と透析液が半透膜を介して接触し、拡散によって老廃物が除去され、限外ろ過によって余分な水分が取り除かれます。
透析液は、患者さんの状態に合わせて電解質濃度などが調整されたものが使用されます。
血液透析のメリット・デメリット
メリットとしては、医療スタッフによって治療が行われるため、管理が確実であること、比較的短時間で効率よく老廃物や水分を除去できることなどが挙げられます。
一方、デメリットとしては、週に数回の通院が必要であること、穿刺の痛みや血管アクセスの管理が必要であること、食事制限が比較的厳しいことなどがあります。
腹膜透析(PD)の化学的アプローチ
腹膜透析は、自分自身の腹膜(お腹の中の臓器を覆っている薄い膜)を半透膜として利用する治療法です。
お腹にカテーテルを留置し、そこから透析液を腹腔内に入れ、一定時間貯留することで、腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分を透析液に移動させます。
その後、老廃物を含んだ透析液を排出し、新しい透析液と交換します。これは主に自宅や職場で行うことができます。
腹膜透析の仕組み
腹膜も半透膜としての性質を持っており、毛細血管が豊富に分布しています。腹腔内に注入された透析液と血液との間で、拡散により老廃物が、浸透圧差(透析液中のブドウ糖濃度を高めることで生じる)により水分が除去されます。
透析液の交換は、1日に数回、自分自身または介助者が行います。
腹膜透析のメリット・デメリット
メリットとしては、通院回数が血液透析に比べて少ないこと、時間や場所に比較的縛られずに治療ができること、食事制限が血液透析に比べて緩やかな場合があることなどが挙げられます。
デメリットとしては、自己管理が重要であること、カテーテル出口部の感染や腹膜炎のリスクがあること、腹膜の機能が経年的に低下する可能性があることなどがあります。
血液透析と腹膜透析の比較
どちらの治療法を選択するかは、患者さんの医学的な状態、ライフスタイル、価値観などを総合的に考慮して、医師と十分に相談して決定します。
治療法の選択における考慮点
- 医学的状態(心機能、血管の状態など)
- ライフスタイル(仕事、学業、家庭環境など)
- 自己管理能力
- 通院の利便性
透析治療のプロセスと化学的管理
透析治療を安全かつ効果的に行うためには、治療前後の準備や治療中の管理が重要です。ここでも化学的な視点が関わってきます。
透析導入前の準備と検査
透析治療を開始する前には、全身状態の評価や必要な検査が行われます。血液透析の場合は、血液を効率よく取り出すための血管アクセス(シャントなど)を作成する手術が必要です。
腹膜透析の場合は、腹腔内にカテーテルを留置する手術を行います。また、感染症の有無や貧血の状態、栄養状態なども評価し、必要に応じて治療や指導が行われます。
透析中のモニタリングと調整
血液透析中は、血圧、脈拍、体温などのバイタルサインを定期的に測定し、患者さんの状態を注意深く観察します。また、透析装置のモニターで、血液流量、透析液流量、除水速度などが適切にコントロールされているかを確認します。
異常が見られた場合は、速やかに対応し、透析条件を調整します。これにより、安全で効果的な透析治療の実施を目指します。
透析液の組成とその化学的重要性
透析液は、単なる水ではなく、体液に近い電解質濃度に調整された液体です。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、重炭酸イオン、ブドウ糖などが含まれています。
これらの濃度は、患者さんの血液検査の結果に基づいて個別に調整されます。
例えば、血液中のカリウム値が高い患者さんにはカリウム濃度の低い透析液を使用し、アシドーシス(体が酸性に傾く状態)がある患者さんには重炭酸イオン濃度を高めに設定した透析液を使用するなど、化学的なバランスを整える役割があります。
透析液に含まれる主な電解質とその役割
電解質 | 主な役割 | 調整の目的 |
---|---|---|
ナトリウム | 体液量の維持、浸透圧調整 | 血圧の安定、適切な水分バランス |
カリウム | 神経・筋肉機能の維持 | 不整脈の予防、高カリウム血症/低カリウム血症の是正 |
カルシウム | 骨の健康、血液凝固 | 骨代謝異常の改善、低カルシウム血症の是正 |
重炭酸イオン | 酸塩基平衡の維持 | アシドーシスの是正 |
ドライウェイト(目標体重)の考え方
ドライウェイトとは、透析治療によって余分な水分が除去された後の、適正な体水分量を保った状態の体重のことです。
透析後の目標体重として設定されます。ドライウェイトが適切でないと、高すぎればむくみや高血圧、心不全の原因となり、低すぎれば低血圧や倦怠感、足のつりなどを引き起こすことがあります。
定期的な胸部レントゲン検査、心胸郭比、血圧、自覚症状などを総合的に評価し、医師が判断します。ドライウェイトの適切な管理は、透析患者さんのQOLを維持する上で非常に重要です。
透析治療と上手に付き合うために
透析治療を受けながらも、より良い生活を送るためには、食事療法や薬物療法、自己管理が大切になります。これらの背景にも化学的な根拠があります。
食事療法と栄養管理の化学的根拠
透析患者さんの食事療法は、エネルギーやタンパク質を適切に摂取しつつ、カリウム、リン、水分、塩分などの摂取量をコントロールすることが基本です。
これは、腎機能が低下しているため、これらの物質の排泄が十分にできず、体内に蓄積しやすいためです。
カリウム制限の理由
カリウムは、筋肉や神経の働きに重要なミネラルですが、血液中の濃度が高くなりすぎると(高カリウム血症)、不整脈や心停止を引き起こす危険性があります。
腎機能が低下するとカリウムの排泄能力が落ちるため、食事からの摂取量を制限する必要があります。カリウムは、野菜、果物、いも類、豆類などに多く含まれます。
リン制限の理由
リンも骨や歯の形成に必要なミネラルですが、血液中の濃度が高くなりすぎると(高リン血症)、骨がもろくなったり、血管壁にカルシウムと共に沈着して動脈硬化を進行させたりする原因となります。
腎機能が低下するとリンの排泄が困難になるため、食事からの摂取制限が必要です。リンは、乳製品、肉類、魚介類、加工食品などに多く含まれます。
水分・塩分管理の重要性
水分や塩分(ナトリウム)の摂りすぎは、体液量の増加につながり、むくみ、高血圧、心臓への負担増大を招きます。透析間の体重増加を抑え、ドライウェイトを適切に保つために、水分と塩分の摂取量を管理することが重要です。
特に塩分は水分を引き込む性質があるため、減塩を心がけることが水分管理にもつながります。
食事療法のポイント
栄養素 | 管理のポイント | 注意点 |
---|---|---|
エネルギー | 十分に摂取する | 低栄養を防ぎ、体力を維持する |
タンパク質 | 適量を摂取する(医師・栄養士の指示に従う) | 制限しすぎると低栄養に、摂りすぎると老廃物が増加 |
カリウム | 摂取を制限する | 生野菜や果物の摂取方法に工夫が必要 |
リン | 摂取を制限する | 加工食品のリン含有量に注意 |
水分・塩分 | 摂取を制限する | 透析間の体重増加をコントロールする |
薬物療法の役割と注意点
透析患者さんは、腎機能低下に伴うさまざまな合併症を予防・治療するために、多くの薬を服用することが一般的です。
例えば、リンの吸収を抑える薬(リン吸着薬)、血圧を下げる薬(降圧薬)、貧血を改善する薬(ESA製剤、鉄剤)、ビタミンD製剤などがあります。
これらの薬は、医師の指示通りに正しく服用することが重要です。自己判断で中断したり、量を変更したりしないようにしましょう。
定期的な検査と体調管理
透析治療を継続していく上で、定期的な血液検査や画像検査は欠かせません。これらの検査結果に基づいて、透析条件や食事療法、薬物療法などが調整されます。
また、日頃から自身の体調変化に注意を払い、体重、血圧、食事内容、排便状況などを記録することも大切です。何か異常を感じた場合は、早めに医師や医療スタッフに相談しましょう。
透析生活における注意点と合併症
透析治療は生命を維持するために重要な治療ですが、長期間にわたる治療の中で、いくつかの注意点や合併症が生じる可能性もあります。これらを理解し、適切に対処することが大切です。
透析治療に伴う可能性のある身体的変化
透析治療を開始すると、体調が改善する一方で、いくつかの身体的変化を感じることがあります。例えば、透析後の倦怠感、血圧の変動、皮膚のかゆみなどです。
これらの症状の多くは、治療条件の調整や薬物療法、生活習慣の工夫などで軽減できる場合があります。気になる症状があれば、遠慮なく医療スタッフに相談してください。
注意すべき合併症とその予防策
長期透析患者さんでは、心血管系の合併症(心不全、心筋梗塞、脳卒中など)、骨・ミネラル代謝異常(腎性骨症)、感染症、アミロイドーシス(アミロイドという異常タンパク質が全身に沈着する病気)などの合併症に注意が必要です。
これらの合併症を予防するためには、適切な透析治療を受けることに加え、食事療法、薬物療法、適度な運動、禁煙などの自己管理が重要です。
主な合併症と対策のポイント
合併症 | 主な原因・誘因 | 予防・対策のポイント |
---|---|---|
心血管疾患 | 高血圧、脂質異常症、糖尿病、リン・カルシウム代謝異常、動脈硬化 | 血圧管理、脂質管理、血糖管理、リン・カルシウム管理、禁煙 |
腎性骨症 | リン・カルシウム・ビタミンD代謝異常 | リン・カルシウム管理、適切な薬物療法 |
感染症 | 免疫力低下、シャント・カテーテル管理不備 | シャント・カテーテル管理の徹底、手洗い、うがい、ワクチン接種 |
シャント管理の重要性(血液透析の場合)
血液透析を受けている患者さんにとって、シャント(またはグラフト、動脈表在化)は「命綱」とも言える非常に大切なものです。
シャントを長持ちさせるためには、日頃の管理が重要です。シャント肢を圧迫しない、ぶつけない、清潔に保つ、毎日シャント音を確認するなどの注意点を守りましょう。
シャントに異常(腫れ、赤み、痛み、スリルの減弱・消失など)を感じたら、すぐに医療機関に連絡してください。
感染症対策と日常生活での工夫
透析患者さんは免疫力が低下している場合があり、感染症にかかりやすい傾向があります。特にシャントやカテーテルからの感染には注意が必要です。手洗いやうがいを励行し、人混みを避けるなど、日常生活での感染予防策を心がけましょう。
また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの予防接種も、医師と相談の上で検討することが推奨されます。
透析治療に関するよくある質問(Q&A)
透析治療に関して、患者さんやご家族からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 透析治療は痛いですか?
-
血液透析の場合、治療のたびにシャントへ針を刺すため、その際に痛みを感じることがあります。痛みの感じ方には個人差がありますが、穿刺時の痛みを和らげるために、局所麻酔のテープやクリームを使用することができます。
腹膜透析の場合は、カテーテルを留置する手術の際に痛みがありますが、日常の透析液交換自体に痛みはありません。
治療中に不快な症状(頭痛、吐き気、血圧低下など)が現れることもありますが、これらは透析条件の調整などで改善できる場合がありますので、我慢せずに医療スタッフに伝えてください。
- 透析治療中は何ができますか?
-
血液透析の場合、治療時間は4~5時間程度と比較的長いため、この時間を有効に活用することが推奨されます。
多くの施設では、ベッドサイドで読書をしたり、テレビを見たり、音楽を聴いたり、睡眠をとったりすることができます。
Wi-Fi環境が整っている施設では、パソコンやタブレットで仕事をしたり、インターネットを利用したりすることも可能です。ただし、安静を保つ必要があり、大きな動きは制限されます。
腹膜透析の場合は、透析液の交換手技(通常20~30分程度)以外は、日常生活を比較的自由に送ることができます。
- 透析治療を始めたら旅行はできませんか?
-
A. 透析治療を始めても、旅行をすることは可能です。血液透析の場合は、旅行先の透析施設にあらかじめ予約を取り、そこで臨時透析を受けることができます(トラベル透析)。
腹膜透析の場合は、透析液や関連物品を旅行先に持参または配送することで、旅行先でも治療を継続できます。いずれの場合も、事前に主治医や医療スタッフに相談し、適切な準備をすることが大切です。
体調管理をしっかり行い、無理のない計画を立てましょう。
旅行時の透析
- 血液透析:旅行先の施設での臨時透析
- 腹膜透析:透析液・物品を持参して自己管理
- 透析治療の時間はどのくらいですか?
-
血液透析の場合、1回の治療時間は通常4~5時間程度で、これを週に2~3回行います。患者さんの体格や残存腎機能、除去すべき老廃物の量などによって、適切な透析時間や回数が決定されます。
十分な透析量を確保することが、合併症予防や生命予後の改善につながると考えられています。
腹膜透析の場合は、1日に3~5回程度の透析液交換を行うCAPD(連続携行式腹膜透析)や、夜間睡眠中に機械が自動的に透析液交換を行うAPD(自動腹膜透析)などがあり、ライフスタイルに合わせて選択できます。
以上
透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )
参考文献
LUO, Jingyi, et al. Diffusion dialysis-concept, principle and applications. Journal of Membrane Science, 2011, 366.1-2: 1-16.
MAHER, John F. Principles of dialysis and dialysis of drugs. The American journal of medicine, 1977, 62.4: 475-481.
DEPNER, Thomas; GARRED, Laurie. Solute transport mechanisms in dialysis. In: Replacement of Renal Function by Dialysis. Dordrecht: Springer Netherlands, 2004. p. 73-93.
SARGENT, John A.; GOTCH, Frank A. Principles and biophysics of dialysis. Replacement of renal function by dialysis, 1979, 38-68.
CLARK, William R.; RONCO, Claudio. The biology of dialysis. Pediatric Dialysis, 2021, 17-33.
GAO, D., et al. The biology of dialysis. In: Pediatric Dialysis. Dordrecht: Springer Netherlands, 2004. p. 13-34.
KREDIET, R. T. The physiology of peritoneal solute transport and ultrafiltration. In: Textbook of peritoneal dialysis. Dordrecht: Springer Netherlands, 2000. p. 135-172.
DE CASTRO, Maria Dolores Luque. Membrane-based separation techniques: dialysis, gas diffusion and pervaporation. In: Comprehensive analytical chemistry. Elsevier, 2008. p. 203-234.
CRAIG, Lyman C. [89] Techniques for the study of peptides and proteins by dialysis and diffusion. In: Methods in enzymology. Academic Press, 1967. p. 870-905.
HAMILTON, Robert W. Principles of dialysis: diffusion, convection, and dialysis machines. Atlas of Diseases of the Kidney, 1999, 5.s 1: 3-4.